説明

神経変性疾患治療剤

【課題】 神経変性疾患治療剤を提供すること。
【解決手段】 式(1)
【化6】


で表される化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する神経変性疾患治療剤;該化合物を有効成分として含有するドーパミン神経変性疾患治療剤;該化合物を有効成分として含有するアルツハイマー病、進行性核上性麻痺、AIDS脳症、伝播性海綿状脳症、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、脳虚血、および注意欠陥多動性障害から選ばれる疾患の治療剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は神経変性疾患治療剤(例えば、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、AIDS脳症、伝播性海綿状脳症、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、脳虚血、注意欠陥多動性障害などの治療剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の化合物の多くは公知化合物であり、アデノシンA受容体拮抗作用、抗パーキンソン病作用、抗うつ作用、抗喘息作用、骨吸収抑制作用および中枢興奮作用を有することが知られている(特許文献1〜7および非特許文献1〜2参照)。
【0003】
しかし、該化合物が神経変性抑制作用を有していることは知られていない。
【特許文献1】特公昭47-26516号公報
【特許文献2】国際公開第92/06976号パンフレット
【特許文献3】特開平6-211856号公報
【特許文献4】特開平6-239862号公報
【特許文献5】国際公開第WO95/23165号パンフレット
【特許文献6】特開平6-16559号公報
【特許文献7】国際公開第WO94/01114号パンフレット
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、34巻、1431頁、1991年
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、36巻、1333頁、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する神経変性疾患治療剤などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I)
【0006】
【化2】

【0007】
{式中、R1、R2およびR3は同一または異なって水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、R4はシクロアルキル、-(CH2)n-R5(式中、R5は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0〜4の整数を表す)または
【0008】
【化3】

【0009】
[式中、Y1およびY2は同一または異なって水素、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリール、
【0010】
【化4】

【0011】
(式中、R6は水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノを表し、mは1〜3の整数を表す)または置換もしくは非置換の複素環基を表す]を表し、X1およびX2は同一または異なってOまたはSを表す}で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする神経変性疾患治療剤に関する。
神経変性疾患治療剤の有効成分としては、式(I)において、X1およびX2がOである化合物またはその薬理的に許容される塩、あるいはR4
【0012】
【化5】

【0013】
(式中、Zは前記と同義である)である化合物またはその薬理的に許容される塩が好ましく、特にX1およびX2がOで、R4が該基で表される化合物またはその薬理的に許容される塩が好ましい。
また、本発明は、式(I)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与することからなる神経変性疾患の治療方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、神経変性疾患治療に有用な薬理学的組成物の製造のための式(I)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用に関する。
以下、式(I)で表される化合物を化合物(I)と称する。
化合物(I)の定義において、低級アルキルおよび低級アルコキシの低級アルキル部分は、直鎖または分岐状の炭素数1〜6の、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等を表し、低級アルケニルは、直鎖または分岐状の炭素数2〜6の、例えばビニル、アリル、メタクリル、クロチル、3-ブテニル、2-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、5-ヘキセニル等を表し、低級アルキニルは、直鎖または分岐状の炭素数2〜6の、例えばエチニル、プロパルギル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、5-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニル等を表し、アリールは、フェニルまたはナフチルを表し、シクロアルキルは、炭素数3〜8のシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等を表し、複素環基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピラニル、チオピラニル、ピリジル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジル、トリアジニル、インドリル、キノリル、プリニル、ベンゾチアゾリル等を表し、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。置換アリールおよび置換複素環基の置換基としては、同一または異なって置換数1〜3の、例えば低級アルキル、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ベンジルオキシ、フェニル、フェノキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、アロイルオキシ、アルアルカノイルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、スルフォ、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイル、ジ低級アルキルスルファモイル等があげられる。低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイル、およびジ低級アルキルスルファモイルのアルキル部分は、前記低級アルキルと同意義を表し、ハロゲンは前記と同義である。置換低級アルコキシの置換基としては、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アジド、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル等があげられる。ここで、低級アルコキシおよび低級アルコキシカルボニルのアルキル部分は、前記低級アルキルと同意義を表し、ハロゲンは前記と同義である。アロイルオキシのアロイル部分はベンゾイルおよびナフトイルがあげられる。アルアルカノイルオキシのアルアルキル部分は、ベンジル、フェネチル等があげられる。
【0015】
化合物(I)の薬理学的に許容される塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、リジン、グリシン、フェニルアラニン等の付加塩があげられる。
【0016】
化合物(I)は新規化合物を含め、前記刊行物に開示された方法あるいはそれに準じて製造することができる。製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離塩基の形で得られる場合には、適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加え塩を形成させればよい。
【0017】
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明の治療剤として用いることができる。
化合物(I)の中には光学異性体が存在し得るものもあるが、全ての可能な立体異性体およびそれらの混合物も本発明の治療剤として用いることができる。
【0018】
次に、化合物(I)の具体例を第1表に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
化合物1: (E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチルキサンチン(特開平6-211856号公報)
融点:190.4-191.3℃
元素分析値:C20H24N4O4として
理論値(%):C 62.48, H 6.29, N 14.57
実測値(%):C 62.52, H 6.53, N 14.56
IR(KBr) νmax(cm-1) :1697, 1655, 1518
NMR(CDCl3, 270MHz) δ(ppm) :7.74(1H, d, J=15.5Hz), 7.18(1H, dd, J=8.3, 1.9Hz), 7.08(1H, d, J=1.9Hz), 6.89(1H, d, J=8.3Hz), 6.77(1H, d, J=15.5Hz), 4.21(2H, q, J=6.9Hz), 4.09(2H, q, J=6.9Hz), 4.06(3H, s), 3.96(3H, s), 3.93(3H, s), 1.39(3H, t, J=6.9Hz), 1.27(3H, t, J=6.9Hz)
化合物2: (E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジプロピル-7-メチルキサンチン(WO92/06976)
融点:164.8-166.2℃(2-プロパノール−水より再結晶)
元素分析値:C22H28N4O4として
理論値(%):C 64.06, H 6.84, N 13.58
実測値(%):C 64.06, H 6.82, N 13.80
IR(KBr) νmax(cm-1) :1692, 1657
NMR(DMSO-d6, 270MHz) δ(ppm) :7.60(1H, d, J=15.8Hz), 7.04(1H, d, J=2.0Hz), 7.28(1H, dd, J=2.0, 8.4Hz), 7.18(1H, d, J=15.8Hz), 6.99(1H, d, J=8.4Hz), 4.02(3H, s), 3.99(2H, t), 3.90-3.80(2H, m), 3.85(3H, s), 3.80(3H, s), 1.85-1.50(4H, m), 1.00-0.85(6H, m)
化合物3: (E)-1,3-ジエチル-8-(3-メトキシ-4,5-メチレンジオキシスチリル)-7-メチルキサンチン(特開平6-211856)
融点:201.5-202.3 ℃
元素分析値:C20H22N4O5として
理論値(%):C 60.29, H 5.57, N 14.06
実測値(%):C 60.18, H 5.72, N 13.98
IR(KBr) νmax(cm-1) :1694, 1650, 1543, 1512, 1433
NMR(DMSO-d6, 270MHz) δ(ppm) :7.58(1H, d, J=15.8Hz), 7.23(1H, d, J=15.8Hz), 7.20(1H, d, J=1.0Hz), 7.09(1H, d, J=1.0Hz), 6.05(2H, s), 4.09-4.02(2H, m), 4.02(3H,s), 3.94-3.89(2H, m), 3.89(3H, s), 1.25(3H, t, J=7.2Hz), 1.13(3H, t, J=6.9Hz)
化合物4: (E)-8-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-カフェイン(特公昭47-26516)
IR(KBr) νmax(cm-1) :1702, 1667, 1508, 1432
NMR(DMSO-d6, 270MHz) δ(ppm):7.61(1H, d, J=16.0Hz), 7.25(1H, d, J=16.0Hz), 7.09(2H, s), 4.03(3H, s), 3.85(6H, s), 3.71(3H, s), 3.45(3H, s), 3.21(3H, s)
MS(EI) 386(M+)
次に、化合物(I)の薬理作用を試験例で説明する。
試験例1: 神経変性抑制作用
実験は、サンドストローム(Sundstrom)らの方法[ブレイン・リサーチ・ブルテン(Brain. Res. Bulletin)、21巻、257-263頁、1988年]に準じて行った。
【0021】
実験には、雄性C57BL/6NCrjマウス9-10週令(日本チャールズリバー供給)を使用した。予備飼育期間中は、室温22〜24℃、湿度50〜60%の実験室で飼育し、食餌および水は自由に与えた。
1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンヒドロクロリド(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine hydrochloride、以下MPTP・HClと略す、RBI社製)は4mg/mLになるよう生理食塩水に溶解した。試験化合物は1mg/mLになるよう0.3%ジメチルスルホキシド(DMSO)に懸濁した。試験群は1群9〜10匹とし、コントロール群には生理食塩水、MPTP・HCl投与群およびMPTP HCl+試験化合物投与群にはMPTP HCl(40mg/kg)をそれぞれ腹腔内投与した。
【0022】
1時間後、コントロール群およびMPTP・HCl投与群には0.3%トゥイーン(Tween)を、MPTP・HCl+試験化合物投与群には試験化合物(10mg/kg)をそれぞれ経口投与した。1週間後断頭し、氷冷下、線条体を摘出した。線条体は結合実験までディープフリーザー(<-80℃)で保存した。
[3H]−マジンドール(mazindol)結合実験は以下の方法で行った。マイクロ遠心チューブに各々の線条体と緩衝液(120mM NaCl、5mM KCl、50mM Tris、pH=7.9)300μLを入れ、ホモジナイズ(卓上ホモジナイザーS-203、(株)池田理化製)し、4℃下、15,000rpm/分、5分遠心分離(KUBOTA 1710)した。沈渣に緩衝液300μLを加え懸濁した後、再度4℃下、15,000rpm/分、5分で遠心分離した。沈渣に緩衝液500μLを加え、懸濁したものを4本の試験管に100μLずつ分注した。残りの100μLは、タンパク定量に使用した。4本中2本には非特異的結合を求めるため、ドーパミン取り込み阻害剤であるマレイン酸ノミフェンシン(nomifensine maleate、RBI 社製)(最終濃度10μM)を加えた。結合反応は、[3H]-mazindol(NET社製、Spec. Act. 888GBq/mmol)25μL(最終濃度10nM)を加えて開始させた。氷冷下、1時間反応させたのち、セルハーベスターで線条体ホモジネートをガラスフィルター(Whatman、GF/B)に吸着させ、5mLの緩衝液で3回洗った。ガラスフィルターの放射活性は、液体シンチレーションカウンターで測定した。それぞれの線条体につき、全[3H]-mazindol結合の平均から非特異的[3H]-mazindol 結合の平均を差し引いたものを特異的[3H]-mazindol結合として求めた。
【0023】
タンパク定量は、バイオ−ラッドDCプロテインアッセイキット[Bio-Rad DC protein assay kit(Bio-Rad 社製)]を用い、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、Sigma社製)を標準として行った。特異的[3H]-mazindol結合は、蛋白量当たりの結合量に換算し、群ごと(9〜10匹)に平均±標準誤差を求めた。
結果は、第2表に線条体における[3H]-mazindolの特異的結合量(fmol/mg protein)で示す。
【0024】
【表2】

【0025】
試験結果によれば、化合物1は、MPTP・HCl投与によって起きる[3H]-mazindolの特異的結合量の低下を抑制した。すなわち、化合物1はドーパミン神経の変性抑制作用を示すことが明らかとなった。
試験例2: 急性毒性試験
dd系雄性マウス(体重20±1g)を1群3匹用い、試験化合物を経口または腹腔内投与した。投与後7日目の死亡状況を観察し、最小致死量(MLD)値を求めた。
【0026】
その結果、化合物1のMLDは、経口投与で>1000mg/kgであった。
化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、神経変性抑制作用を有しており、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、AIDS脳症、伝播性海綿状脳症、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、脳虚血、注意欠陥多動性障害などの神経変性疾患の治療剤として有用である。
【0027】
化合物(I)またはその薬理的に許容される塩はそのままあるいは各種の製薬形態で使用することができる。本発明の製薬組成物は、活性成分として、有効な量の化合物(I)またはその薬理的に許容される塩を薬理的に許容される担体と均一に混合して製造できる。これらの製薬組成物は、例えば直腸投与、経口または非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)などの投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。
【0028】
経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理的に許容される担体が使用できる。例えば懸濁剤およびシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。粉剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、でん粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であるという理由で、最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセル剤を製造する際には固体の製薬担体が用いられる。
【0029】
また、注射剤は、蒸留水、塩溶液、グルコース溶液または塩水とグルコース溶液の混合物から成る担体を用いて調製することができる。この際、常法に従い適当な助剤を用いて、溶液、懸濁液または分散液として調製される。
化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、上記製薬形態で経口的にまたは注射剤として非経口的に投与することができ、その有効容量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、1〜900mg/60kg/日、好ましくは1〜200mg/60kg/日が適当である。
【0030】
以下に、実施例によって本発明の様態を説明する。
【実施例1】
【0031】
錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製した。
化合物1の40g、ラクトース286.8gおよび馬鈴薯でんぷん60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加えた。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とした。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵を持った打錠機(菊水社製RT-15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得た。
【0032】
処方を第3表に示す。
第3表
処方 化合物1 20 mg
ラクトース 43.4 mg
馬鈴薯でんぷん 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6 mg
200 mg
【実施例2】
【0033】
カプセル剤
常法により、次の組成からなるカプセル剤を調製した。
化合物1の200g、アビセル995gおよびステアリン酸マグネシウム5gを常法により混合した。この混合物をカプセル充填機(Zanasi社製、LZ-64型)により、ハードカプセル4号(1カプセルあたり120mg容量)に充填し、カプセル剤(1カプセルあたり活性成分20mgを含有する)を得た。
【0034】
処方を第4表に示す。
第4表
処方 化合物1 20 mg
アビセル 99.5 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5 mg
120 mg
【実施例3】
【0035】

注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製した。
化合物1の1gを精製ダイズ油100gに溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加えた。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mlとして練合・乳化した。得られた分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mlずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得た。
【0036】
処方を第5表に示す。
第5表
処方 化合物1 2 mg
精製ダイズ油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72mL
2.00mL
【実施例4】
【0037】
肛門坐剤
常法により、次の組成からなる直腸投与の製剤を調製した。
ウィテプゾールTMH15(ダイナマイトノーベル社製)678.8gおよびウィテプゾールTME75(ダイナマイトノーベル社製)290.9gを40〜50℃で溶融させた。これに化合物1の2.5g、第一リン酸カリウム13.6gおよび第二リン酸ナトリウム14.2gをそれぞれ均一に混合分散させた。ついで該混合分散したものをプラスチック製の坐剤の型に充填した後、徐々に冷却して肛門坐剤(1製剤あたり活性成分2.5mgを含有する)を得た。
【0038】
処方を第6表に示す。
第6表
処方 化合物1 2.5 mg
ウィテプゾールH15 678.8 mg
ウィテプゾールE75 290.9 mg
第一リン酸カリウム 13.6 mg
第二リン酸ナトリウム 14.2 mg
1,000 mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する神経変性疾患治療剤。
【請求項2】
神経変性疾患がドーパミン神経変性疾患である請求項1記載の剤。
【請求項3】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、AIDS脳症、伝播性海綿状脳症、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、脳虚血、および注意欠陥多動性障害から選ばれる疾患である請求項1記載の剤。

【公開番号】特開2009−102334(P2009−102334A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307355(P2008−307355)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【分割の表示】特願2000−510443(P2000−510443)の分割
【原出願日】平成10年9月4日(1998.9.4)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】