神経障害のための治療
本発明は、酸化ストレスによって媒介される疾患、例えば運動ニューロン疾患の治療に適しているNrf2−ARE経路活性剤である治療化合物に関する。また本発明は、神経変性病の治療のために本発明の方法によって同定される化合物を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ストレスによって媒介されることが知られる神経障害の治療、特に運動ニューロン疾患および筋萎縮性側索硬化症の治療のための治療薬に関する。本発明は、とりわけ神経障害の治療のための製品を含有する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、遊離基の産生およびそれらに対して防御する細胞の性質の間で、不適当な組み合わせの細胞病理学的な結果とする。実験モデルおよびヒトの脳の研究からの増大するデータは、酸化ストレスが、重要な役割を神経変性疾患において果たすことを示唆する。酸化ストレスは、正常な老化および様々な神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症の両方において関係し、壊死、アポトーシス、および興奮毒性を含有する細胞死の様々な形態の基礎をなす共通の機構である可能性がある。
【0003】
運動ニューロン疾患(MND)は、一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と米国にて称し、運動皮質、脳幹および脊髄における運動ニューロンの欠如を特徴とする進行性且つ致命的な神経変性疾病であり、これは衰弱および萎縮を導く。ALSは、診断から2〜3年以内に死亡を通常導く。ALSは、散発的(全症例の90%)および家族型(全症例の10%)の両方で生ずる。家族性のALSの20%において、突然変異は、銅、亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子(SOD1)で見出された。散在の症例および家族性の症例の残りの80%において含む遺伝子は、依然同定されていない。現在、疾患の進行を防ぐまたは後退させる治療は全く存在しない。利用可能な治療(例えばリルゾールおよび酸化防止剤)は、せいぜい生存を適度に延長するのみである。
【0004】
疾患の基礎をなす機構は、完全には理解されていない。しかしながら、ALSの家族性症例の割合における原因としてSOD1突然変異体の同定は、疾患機構の理解を非常に向上させた疾患の細胞およびマウスのモデルの両方の生成を可能とした。前記モデルならびに患者からの証拠は、疾患病因における酸化ストレスの役割で非常に優れる証拠を提供した。酸化ストレスは、ニューロン損傷の他の潜在的機構、例えばミトコンドリア機能不全、興奮毒性、タンパク質凝集、細胞骨格機能不全および膠細胞活性化に、著しい相互干渉を有する。それはこれら機構内に供給することができるか、または次にそれらによって向上させる。病因におけるこの中心的役割が、メタ分析研究のALSの最も一般的に使用されるマウスモデル(ヒトSOD1のG93A突然変異体形状を発現するトランスジェニックマウス)で反映され、酸化ストレスを標的とする治療を、最も重要な所見として疾患進行の遅延において強調した。
【0005】
この中心的役割にも関わらず、ALSにおいて標的とする酸化ストレスを患者で臨床利点に解釈できず、CNSに接近することが可能である十分に有力な酸化防止剤の不足による可能性が多少ある。神経変性疾患における酸化ストレスを制限する新規な方法は、転写制御因子、NEF2関連因子2(Nrf2)の活性化を促進する。Nrf2は、一連の第二段階の解毒および酸化防止剤酵素の発現を、それの相互作用により抗酸化反応要素(ARE)で促進する。活性化するとき、この「プログラム細胞寿命」反応は、神経保護作用であり、逆にこの経路の減衰は、ニューロン感度を神経毒性の難問の範囲対して向上させることができる。前記経路の調節不全が、ALS細胞モデルにおいて観測され、ヒト組織において確認された。Nrf2そのものおよび複数の標的遺伝子が、突然変異体(G93A)ヒトSOD1を発現する運動ニューロン細胞株において抑制される。さらにミトコンドリア抗酸化防止剤において重要な役割を果たす前記経路の標的であるペルオキシレドキシン3(PRDX3)が、前記細胞モデルならびに家族性および散発的なALSからのヒト組織の両方において下方制御された。G93A SOD1トランスジェニックマウスを、AREリポータマウスと交配したとき、Nrf2−ARE経路の活性化を、30日齢からの筋肉にて、90日目で脊髄に重要でない活性化およびより強い活性化を110日目の時点で示した。90日齢で、マウスは既に筋衰弱および運動ニューロン欠如を示し始め、110日目にそれらは著しい運動ニューロンの病状を示した。これは、前記ネズミモデルにおけるNrf2−ARE経路の活性化が、質的に不十分であるか、または著しい損傷からの運動ニューロンの保護には非常に遅延する可能性があることを示唆する。他の報告と組み合わせて解釈すると、これは、突然変異体SOD1を発現する細胞の性質における欠陥を反映して、前記経路を活性化する可能性がある。
【0006】
Nrf2−ARE経路は、ALSにおいて関心のある治療標的であり、それが小分子による活性化および細胞防衛の活性化が、例えば直接的な捕捉方法より酸化ストレスに対して持続的な保護を与えることができることに従い、明確に規定されるためである。それは緑茶カテキン−(−)エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)由来のフラボノイドが、突然変異体(G93A)ヒトSOD1を発現する運動ニューロン細胞株において神経保護作用効果を示す従来技術から知られている。前記細胞株は、H2O2誘導された細胞死から、20μMを超えるEGCG濃度で、部分的に保護された。前記化合物を、またALSのG93Aマウスモデルに服用量の範囲にて、一日一度、経口で60日齢から試験した。比較的高い服用量において、生存における著しい延長が、上昇した平均生存率と見られた。前記治療効果は、EGCGがそれ自身の酸化促進剤で、それの治療領域を狭め、高度に極性であり、有意な濃度にて血液脳関門へ移行する可能性を低くする事実にかかわらず見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化ストレスによる媒介が知られる疾患、特に運動ニューロン疾患、ALS、パーキンソンおよび他の神経変性疾患等の疾患の治療において効果的である治療薬の必要性がある。
【0008】
最小の毒性を有し、血液脳関門へ移行する性能を有するとともに、CNSを通過することができる神経変性疾患を治療する治療薬の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によると、運動ニューロン疾患を治療する治療薬が提供され、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である。
【0010】
運動ニューロン疾患(NMD)は、運動ニューロンの数々の疾患に及ぶように使用した全てを包含する用語である。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、原発性側索硬化(PLS)は、全てサブタイプである。MNDはヨーロッパにて頻繁に使用される総称であるとともに、ALSは米国にてより一般的に時々使用される。当業者は、運動ニューロン疾患(NMD)による関係が、またALS、PMA、PBPおよびPLSの関連に及び、これらの挙げた疾患の状態は交互に使用することが可能であることを理解するだろう。
【0011】
本明細書の記載および請求項の全体を通じて、「含有する(compriseおよびcontain)」という単語および単語の語尾変化、例えば「含有する(comprisingおよびcomprises)」は、「含有するが、制限しない」ことを意味するが、他の部分、添加、成分、整数または工程を排除することを意図するものではない(排除しない)。
【0012】
本明細書の記載および請求項の全体を通じて、単数形は、文脈が他に要求しない限り複数形を包含する。特に、不定冠詞を使用する場合、この記載は、文脈が他に要求しない限り複数形ならびに単数形として考えるとして理解される。
【0013】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と共に記載した特性、整数、特徴、化合物、化学的部分または群は、それと互換性がない限り、本明細書に記載のあらゆる他の態様、実施形態または実施例に適応することが可能であると理解される。
【0014】
本発明は、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンが、CNSを移行する性能を有する、有力且つ「薬物のような」Nrf2−ARE活性剤であるスクリーンおよび試験のカスケードを通して論証した。
【0015】
本発明の化合物は、それら単独または治療療法の一部のいずれかに、予防的または治療的に使用することができる。
【0016】
いうまでもなく、本明細書において使用するように「治療(treatment)」および「治療すること(treating)」という用語は、状態、例えば疾患または障害を予防する目的で、患者の処置および管理を意味する。この用語は、患者が患う所定の状態で十分な薬効範囲の治療、例えば症状または合併症を軽減や、疾患、障害または状態の進行を遅延や、症状および合併症を軽減または緩和、および/または、疾患、障害または状態を治療または除去ならびに状態を防ぐために活性化合物の投与を含有することを意図し、予防は疾患、状態または障害を予防する目的のために患者の処置および管理として理解され、症状または合併症の発症を予防する活性化合物の投与を含有する。治療される患者は好ましくは哺乳類、特に人間であるが、それはまた動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジおよびブタを含有することができる。
【0017】
本発明のさらなる態様によると、運動ニューロン疾患の治療に対する薬剤を製造するために、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路活性剤の使用を提供する。
【0018】
アポモルヒネは、間欠注射または持続注入として通常皮下に投与されるドーパミン作動薬である。それは、進行したパーキンソン病の処置において実用的であり、神経外科処置に選択肢を提供する。[S]+鏡像異性体の化合物が、ALSまたは他の病状の治療において実用的であることができる、従来の臨床徴候にも全く存在しない。結果は、特にドーパミン作動薬活性を有さないS鏡像異性体が、本発明の方法に規定され、上記のように示したALS治療のために正しい基準を有する。従って、本発明は、アポモルヒネの[S]+鏡像異性体の新規な治療有効性を認識する。
【0019】
アポモルヒネの化学構造を、以下に記載し、[S]+鏡像異性体のあらゆる変異体および置換物を、本発明の化合物の範囲内に包含することを認めるだろう。さらに[S]+鏡像異性体のあらゆる誘導体または塩を、本発明の範囲に含み、国際出願PCT/US03/08448号明細書の内容を、本明細書に参考文献として組み込むものとする。
【0020】
【化1】
【0021】
アンドログラホリドは、植物アンドログラフィスパニクラータのジテルペノイドラクトンであり、ある特定の癌、例えば乳癌で抗腫瘍活性を有し、抗炎症剤効果を有することが知られている。前記化合物が、例えば限定されないがALS酸化ストレスと関連のある疾患の治療において、実用的である可能性がある過去の臨床徴候は全く存在しない。従って本発明は、アンドログラホリドの新規な治療有効性を認識する。
【0022】
アンドログラホリドの化学構造を、以下に記載し、あらゆる変異および置換物を、本発明の化合物の範囲内に包含すると認めるだろう。例えば、アンドログラホリドおよびその誘導体は、R.sub.1、R.sub.2およびR.sub.3が独立して水素、アシル、フェニル、モノリン酸塩、ポリリン酸塩、モノ硫酸塩、ポリ硫酸塩、グリコシル、環状アルキル、非環状アルキル、アルケニルまたはアルキニルを示すことができる一般式であり、前記リン酸塩もしくは硫酸塩の誘導体は、遊離酸もしくは塩の形態であることができる。
【0023】
【化2】
【0024】
好ましくは、本発明の化合物を、治療を必要とする患者への投与で適切な薬剤形態に処方することできる。
【0025】
医薬品組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、眼、耳、直腸または経皮の投与で適切なあらゆる形態であることができる。前記組成物が非経口投与を意図する場合、それらを静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下の投与、標的器官または組織内へ注射、点滴もしくは送達の他の手段によって直接的な送達で処方することができる。前記送達は、大量瞬時投与、短期注入または長期注入によることが可能であり、受動デリバリーまたは適切な薬物注入ポンプの利用により可能である。
【0026】
従って、本発明の化合物は、製薬成分または賦形剤をさらに含有する。
【0027】
「製薬成分」または「賦形剤」は、本発明の化合物に添加される薬理的に不活性な製薬学的に許容される化合物を意味する。前記成分または賦形剤は、薬理学的特性を全く有さない。
【0028】
本発明のさらなる態様によると、酸化ストレスの結果として生じる神経変性状態を治療する治療薬を提供し、前記治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である。
【0029】
好ましくは、酸化ストレスによって媒介されることが知られている神経変性状態は、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的手法のための臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される。
【0030】
本発明のさらなる他の態様によると、酸化ストレスの結果として生じる疾患または状態を治療するアンドログラホリドの使用を提供し、前記疾患または状態は、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的方法のため臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される。
【0031】
本発明のさらなる他の態様によると、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択される、Nrf2−ARE経路の活性剤の治療の有効量を投与することを含有する酸化ストレスの結果として生じる神経変性疾患を患う個体の治療法を提供する。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、候補治療薬のライブラリのスクリーニングを行う生体外の方法を、酸化ストレスによって媒介されることが知られている疾患を治療するそれらの安定性に関して提供し、前記方法は:(i)非神経細胞に由来のコントロールまたは正常の細胞を候補の治療にさらし、Nrf2−ARE経路を活性化する性質を有する候補薬を同定する工程と、(ii)神経細胞に由来の細胞を、工程(i)において陽性の効果を有する候補薬とさらし、Nrf2−ARE経路を活性化するそれらの性能を評価する工程と、(iii)神経細胞由来の細胞を保護する候補薬の性能を、酸化ストレス障害に対して評価する工程と、(iv)物理的および化学的パラメータを確認する一連のコンピュータの試験を実行する工程を含有し、陽性の結果を工程(i〜iii)において有し、適切な物理−化学特性を有する治療候補は、酸化ストレスによって媒介されることが知られている疾患の治療に適切である可能性がある。
【0033】
本発明は、CNSを透過する性能をも有するより有力且つ「薬物類似の」Nrf2−ARE活性剤を同定するスクリーニング法として便利なカスケードの試験を提供する。本発明の方法は、さらなる生体内試験で期待のできる少数の分子を選択する強力なスクリーニングカスケードを提供する。これらの「ヒット」分子を、最初にNrf2−ARE経路を正常な非ヒトの動物由来の細胞株およびヒト発生の細胞株において活性化するそれら性能を試験し、その後経路が非ヒトの動物のCNSから一次培養由来の神経細胞にて活性化できるか決定する「ツール」分子として使用する。
【0034】
好ましくは、細胞が由来する非ヒトの動物を、サル、イヌ、ネコ、ラビット、ラットおよびマウスを含有する群から選択する。齧歯目の動物が好ましく、マウスが最も好ましい種である。
【0035】
好ましくは、本発明の一実施形態において、細胞をAREレポータコンストラクトで安定してトランスフェクションして、任意にリポータは蛍光薬品、例えば限定されないがGFP等である。
【0036】
好ましくは、細胞をNrf調節遺伝子の増加した発現で分析する。活性化を検出するための適切な方法を、本明細書の以下に記載する。
【0037】
好ましくは、神経細胞由来の細胞は、CNS細胞であり、特に星状細胞である。本発明の一実施形態において、それらがヒトSOD1のG93A突然変異体形態を発現するトランスジェニック非ヒトの動物から由来するものである。
【0038】
好ましくは、工程(iii)の酸化ストレス試験は、血清の回収、酸化ストレスを、任意にジクロロフルオレッセインもしくは誘導体との測定、ミトコンドリア毒素(メナジオン)とインキュベーションおよび細胞生存率の測定を含有する。しかしながら、他のストレス試験を本発明の方法において用いることができることを認識するだろう。
【0039】
好ましくは、工程(iv)の適切な物理的および化学的パラメータは、cLogP<5、分子量<500、<5水素結合供与体(OH+NH数)および<10水素結合受容体(O+N原子)である。適切な物理学的および化学的パラメータは、典型的にLipinskiの法則の5とする。さらにAlogPが4未満であるが1を超え、分子極性表面積100(理想80)未満は、血液脳関門(BBB)を通る受動拡散に最適であるが、さらなる好ましい特徴を、候補治療薬を最も良好に選択するためにまた利用することができる。
【0040】
本発明の特定の態様に起因するあらゆる特徴は、必要な変更に加える各々およびいずれかの態様にも適応することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明において使用したNRF2−ARE分析の概略図を示す図である。
【図2】分析検証の結果を示すグラフである。図2aは、CHO−4xARE−TK細胞株におけるtBHQ(白丸)およびEGCG(黒丸)の濃度反応曲線を示すグラフである。両方の分子は、それぞれ10μMおよび100μMで、ARE活性ピークの制限された領域を有する。図1bは、Z’スコア測定の結果を示すグラフである。単一の384穴プレートから賦形剤(192穴)および陽性対象(10μMエブセレン、192穴)に対する平均±SDを示す。この分析のZ’スコアは、0.51であり、シグナルのノイズに対する比率(S/N)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B)は、それぞれ12.8および2.9を有する。
【図3】一つの384穴プレートのスペクトルライブラリスクリーニングデーターの例を示すグラフである。GFP蛍光対穴の数である。穴1〜24および360〜384は交互の陽性(10μMエブセレン)および陰性(賦形剤)コントロールを含有する。点線は陰性対象の平均+3SDを示し、この線を越える全ての化合物は、「ヒット」として計数される。いくつかの穴は減少した蛍光を示し、おそらく毒性によるものである。
【図4a】46個のヒットの化合物全てに関するオーバーレイ濃度反応曲線を示すグラフである。多くのヒット化合物に関するプロフィールは、高い濃度における毒性のため減少した蛍光で円錐形の用量反応曲線の結果になり、ARE誘導の制限された領域を有することに示す。
【図4b】高濃度またはARE誘導の広い範囲にて最小の毒性を有する化合物の例を示し、該化合物のほとんどは、多少の毒性を100μMで示すグラフである。
【図5】A/一次スクリーン(EC50<5μMを有する化合物)およびB/星状細胞酸化的ストレス分析を1321N1細胞(EC50<3μMを有する化合物)からの化合物のファーマコフォアモデルおよび配列を示す図である。芳香族/疎水性の特徴を緑色、水素結合受容体の特徴を青色で示す。(B)に関して、塩基性ファーマコフォアは、水素結合受容体と関連する2つの疎水性特徴で現れる。これはKEAP1にメルカプト基の求核攻撃によって作用することができる既知のNRF2活性剤である細胞質NRF2調節因子と一致する。
【図6】AREリポータ分析の結果を、C6星状細胞の細胞株において17の最もヒット化合物およびS[+]アポモルヒネで示すグラフである。全体として反応は、CHO細胞株において見られるものと同程度であり、R[−]およびS[+]アポモルヒネの両方は、この活性がR[−]アポモルヒネのドーパミン作動薬活性に無関係であることを示唆するNrf2−ARE経路を同程度誘導する。NSC34細胞株における反応は、実質的に減少したか、大部分の化合物で存在しない(図示せず)。
【図7】NRF2調節因子遺伝子をラットC6星状細胞の細胞株(C6星状細胞、図7aおよび図7b)および一次マウス星状細胞(図7cおよび図7d)において、24時間アンドログラホリド(Andro)およびS[+]アポモルヒネ(Apo S)のEC50とEC90濃度にて処理した後に、定量的RT−PCR分析を示すグラフである。マルチプレックスPCRを使用して、Nrf2そのものを含有する関連の9つ遺伝子の発現レベルを、C6細胞において薬物治療後に調べた。2つの遺伝子、Haemオキシゲナーゼ1およびNQO1のみが、(a)および(b)にそれぞれ示すように、統計学的に有意な差を遺伝子発現において示した。一次マウス星上細胞における同じ条件下にて、これら2つの遺伝子の標準の定量RT−PCRを、また(c)および(d)で実行した。星印は、をDMSOコントロールにおける有意な差を一元配置分散分析で示す。
【図8】NRF2誘導物質は、運動ニューロン(MN)を一次マウス星状細胞/MNの共培養にてメナジオンストレスから保護することを示すグラフである。共培養を、24時間、S[+]アポモルヒネ(Apo S)およびアンドログラホリド(Andro)と、それらのEC50およびEC90にてそれぞれ、ラットC6 4×ARE−TKリポータ細胞にて測定したように前処理した。その後共培養を、6時間10μMメナジオンで行い、酸化ストレスを誘導した。DMSOコントロール細胞において、運動ニューロン数における約25%の減少を、いずれかの薬物で処理した穴においては見られなかったことで観測した。
【図9】一次マウス星状細胞におけるNrf2誘導物質とEc50およびEC90濃度にて処理した後の、Haemオキシゲナーゼ1で染色する免疫蛍光を示す図である。面積および染色強度を、Image Jを使用して定量化し、染色指数を算出するために使用した。
【図10A】総グルタチオンレベルを、一次マウス星状細胞にて、Nrf2誘導物質とEC50およびEC90濃度にて処理した後のグラフを示す。総グルタチオンレベルを標準の方法を使用して、Nrf2誘導物質で24時間前処理した後に測定した。全ての処理は、グルタチオンレベルをDMSOコントロールに対する星状細胞にて有意に上昇させ、両方の薬物のEC90濃度は、細胞外グルタチオンレベルを有意に上昇させた(*p値<0.005)。データは、3つの独立した実験の平均である。
【図10B】総グルタチオンレベルを、一次マウス星状細胞から収集されて調製された培地にて、Nrf2誘導物質とEC50およびEC90濃度にて処理した後のグラフを示す。総グルタチオンレベルを標準の方法を使用し、Nrf2誘導物質と24時間前処理した後測定した。全ての処理は、グルタチオンレベルを星状細胞にて、DMSOコントロールに対して有意に上昇させ、両方の薬物EC90濃度は、細胞外グルタチオンレベルを有意に上昇させた(*p値<0.005)。データは、3つの独立した実験の平均である。
【図11】Nrf調節遺伝子NQO1(a)およびHaemオキシゲナーゼ1(HOX1)で、G93A突然変異体SOD1を過剰発現する一次マウス星状細胞において、アンドログラホリド(Andro)およびS[+]アポモルヒネ(Apo S)とEC50およびEC90濃度にて24時間処理した後の、定量的RT−PCR分析を示すグラフである。星印は著しい差をDMSOコントロールから一元配置分散分析で示す。
【図12A】S[+]アポモルヒネ(Apo S)に関する生体内薬物動態学的時間的経過を示すグラフである。
【図12B】相当するPKパラメータをマウスにおいて示す表である(時点あたりのn=3または4)。
【図12C】マウスにおける一回の皮下注射後6,24および48時間で、2.5または5.0mg/kgのS[+]アポモルヒネ(Apo S)のいずれかの、HO−1およびNQO−1に関するQRT−PCRを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
細胞培養
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NSC34マウス運動ニューロン細胞、C6(ラット)および1321N1(ヒト)星状細胞株を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンで補うDMEM中に、通常保持した。TK−EGFPリポータコンストラクトは、pEGFP(Clontech)の多重クローニング部位で挿入される123bpチミジンキナーゼプロモータからなり、ARE−TK−EGFPは、また41bp GST AREモチーフ(TAGCTTGGAAATGACATTGCTAATCGTGACAAAGCAACTTT) (SEQ ID NO: 1) 3’の4つの繰り返しをTKプロモーターに含有する。これらプラスミドをCHO、C6および1321N1細胞株内に、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、0.5mg/mLのG418において10〜14日の選択後、トランスフェクションし、それらをそれぞれの細胞株に関する2つの一連の細胞分取で蛍光活性細胞分取(BD、FACSAria)を使用して、基底eGFP発現で拡大および選択した。基底eGFP発現を有する安定したトランスフェクションのこれらの混合集団を、その後の分析に使用し、AREを含有する株で4×ARE−TK−GFPおよびコントロール細胞株でTK−GFPを指定した。NSC34細胞株をG93A突然変異体SOD1でトランスフェクションし、安定してトランスフェクションした単一細胞のクローンを250μg/mLのG418において選択および限界希釈法によるクローニングによって分離した。
【0043】
AREリポータ分析−スペクトルライブラリスクリーン検証
2000個の小分子薬物および天然産物のスペクトルライブラリをスクリーンするため、TK−GFP CHO AREリポータ細胞株は、384穴プレートにおいて(Greiner Bio−one, μClear, black)、表面被覆密度の範囲(分析の24時間前に5〜20×104/ウェルにて播種した)および異なる培地を使用してZ’スコア分析を受けた。交互の穴は、0.3μMエチジウムホモ二量対(EthD1)を含むPBSを有する培地を交換した24時間後に、10μMのエブセレンおよび賦形剤(0.1%DMSO)とインキュベートした。このエブセレン濃度は、この薬剤に関してはおおよそのEC90を示す。その後GFP蛍光(ARE誘導)を、Ex485nm/Em530nmにおいてFusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。zスコアを以下のように算出した:
【0044】
【数1】
【0045】
SD+=陽性対照穴の標準偏差
3SD−=陰性対照穴の標準偏差
Ave+=陽性対象穴の平均蛍光測定値
Ave−=陰性対象穴の平均蛍光測定値
【0046】
シグナルのノイズに対する比率(S/N=Ave+/SD+)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B=Ave+/Ave−)をまた異なる分析条件で測定した。許容できるZ’スコアは>0.5である。ライブラリスクリーンでは、細胞を20×104の密度で、10%FBSを含有する通常のDMEM培地中に、−1日目および0日目に播種し、細胞を24時間無血清培地で薬物にてインキュベートした。培地を手動で取り除き0.1%DMSO中に、10μMまで希釈したスペクトルライブラリで、Q−bot liquid handlingシステム(Genetix, New Milton, UK)を使用して置換した(1化合物/穴)。前記培地を24時間後取り除き、同じ体積の0.3μMのEthD1を含有するPBSで置換した。その後GFP蛍光(ARE誘導、EX485nm/EM530nm)およびEth D1蛍光(毒性Ex530nm/EM645nm)を、Fusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。TK−GFP CHO ARE細胞株を単一時点分析にて二度スクリーンし、コントロールTK−GFP CHO細胞株を1度スクリーンし、偽陽性を排除した。図1は、NRF2−ARE分析の概略図を示す。
【0047】
AREリポータ分析−EC50の測定
4×ARE−TK−GFP CHOまたはTK−GFP CHOを発現する細胞の密集培養物を96または384穴組織培養プレートにて、FCSを含まないDMEM中に薬物(0.01〜100□Mを三回繰り返し)または賦形剤(0.1〜1%DMSO)と、三回繰り返して24時間処理した。前記培地を取り除き、0.3μMEthD1を含有するPBSの同じ容量と置換した。その後GFP蛍光(ARE誘導、Ex485nm/EM530nm)およびEth D1蛍光(毒性Ex530nm/Em645nm)を、Fusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。非線形回帰を使用して、片対数プロットにS字状の用量反応曲線を適合させ、GraphPad Prism(GraphPad Software)を使用してEC50を算出した。リポータ分析を、4×ARE−TK−GFPおよびTK−GFPコンストラクトと安定してトランスフェクションされたC6および1321N1星状細胞の細胞株にて、Eth D1を直接培地に添加して、細胞を1度洗浄し、DCFシグナルを読む前に読んだことを除いて、同様に実施した。
【0048】
酸化ストレス分析
簡単な酸化ストレス分析を使用して、NRF2−ARE誘導薬剤とのあらかじめ調整が、その後の酸化ストレス障害(血清回収)に対して予防することができるかを決定した。NSC34、C6および1321N1細胞を、96穴組織培養プレートにて播種し、30%の密集を達成した。それらは薬物と3重の穴で、9点滴定(100□M〜10nM)として24時間インキュベートした。細胞密度を観測して、生じた十分な毒性または成長阻害がないことを確認した。その後培地を、無血清のフェノールを含有しない培地と5時間で置換した。ジクロロフルオレセイン(DCF)およびエチジウムホモダイマー(EthD1)(Molecular Probes, Paisley, UK)を、最終濃度5μMおよび0.3μMまで細胞に添加し、DCFおよびEthD1蛍光をEx485nm/Em530nm、Ex530/Em645nmのそれぞれで、1時間後に読み込んだ。その後、細胞生存率分析を、保護が%減少としてDCFシグナルにて測定されるように細胞に実行し、従ってデータ点は細胞数の減少を測定した場合に除外した。
【0049】
細胞生存率分析
使用した方法は、基本的に上記従来技術に記載されるようなものである。簡潔には、メチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)は、細胞および空白の穴に最終濃度0.5mg/mLまで添加し、37℃にて1〜3時間、使用した細胞株に依存してインキュベートした。細胞および反応産物を、20%SDS/50%DMFにて1時間で、Ex595nmで吸光度を読み込む前に室温にて振盪して可溶化した。
【0050】
NSC34細胞を発現するG93A SOD1(ALS細胞モデル)における基底酸化ストレス分析
NSC34細胞を発現するG93A SOD1を、10%FBSを含むフェノールレッドを含有しないDMEMにて30〜40%密集まで、96穴組織培養プレートを播種した。その後それらを、0.01,0.1,1,10μMの薬物または賦形剤(0.1%DMSO)と3重の穴にて24時間インキュベートした。細胞質反応性酸素の種類のレベルを、DCFおよびEthD1を使用して酸化ストレス分析のように測定した。
【0051】
一次マウス運動ニューロン/星状細胞の共培養
マウス膠培養を、1〜2日齢の子犬のC57BI/6皮質から確立した。皮質を解剖し、細胞をDNaseI、コラゲナーゼおよびトリプシン中にてインキュベートした後、粉砕によって分離した。インキュベーションおよび粉砕の工程を、細胞の完全な分離を確実にするため繰り返した。細胞を、10%FBS、100U/mLペニシリン、10μg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM中に、45,000細胞/cm2にて播種した。24時間後、培養をPBSで洗浄し、2〜3週間、密集になるまで成長させ、1週間に一度培地を変えた。密集膠の培養を、振盪および軽度のトリプシン処理によって星状細胞で濃縮した。濃縮された星状細胞を密集するまで成長させ、ポリ−D−オルニチン(1.5 mg/mL; Sigma, Poole, UK)と40,000細胞/cm2まで被覆したカバーグラス上に播種し、1週間成長させた。
【0052】
一次脊髄運動神経細胞(MN)を、E13.5野生型C7BI/6マウス胚から培養した。簡潔には、脊髄調製を、トリプシンおよびDNaseIにてインキュベーションした後、粉砕によって分離した。その後MNを、密度勾配遠心分離によって分離した。共培養を、1%B27、2%ウマ血清、50mg/mLストレプトマイシン、50U/mLペニシリン、0.5mML−グルタミン、25mMグルタミン酸(全てInvitrogen, Paisley, UKからのものである)、1ng/mLBDNF、10ng/mLCNTF、および100pg/mLGDNF(全てR&D Systems, Abingdon, UKからのものである)で補足したNeurobasai培地中に、8000/cm2でMnを星状細胞に配置することによって確立した。
【0053】
共培養を2週間で確立したとき、神経保護分析を、6時間の10μMメナジオン酸化ストレスまたはグルタミン酸塩で処理した後、薬物または賦形剤に24時間さらすことによって実行した。ストレス処理後、カバーグラスを3回洗浄し、運動ニューロンをSMI32(Covance)で選択的に染色するため固定し、透過させた。
【0054】
全MNを、カバーグラスあたり1.5cm2面積において蛍光顕微鏡検査によって計数した。最低3回の繰り返し3回を1条件あたりに実行した。賦形剤および薬剤の処理の両方を、ストレス処理前および後に計数し、結果を二元配置分散分析によるボンフェローニのポスト試験を使用して統計学的に分析した。
【0055】
総グルタチオン分析
一次星状細胞を密集するまで24穴プレート内にて成長させ、その後10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むフェノールレッドを含有しないDMEMにおいて薬物(または0.05%DMSO賦形剤)と24時間処理した。調整した培地を収集し、その後星状細胞を、250μL/穴のスルホサリチル酸(SSA、5%(w/v))の添加前に氷冷PBSにて洗浄した。プレートを2回、−80℃にて凍結し、37℃にて解凍し、その後4℃にて15分間インキュベートした。上清を取り除き、13,000×gにて5分間遠心分離機で分離した。調整した培地サンプルを80℃にて15分間インキュベートし、その後13,000×gにて5分間遠心分離機で分離した。試料を直ちに使用するか、または−80℃で保存のいずれかとした。反応混合物(150μL/穴;100mMリン酸カリウム緩衝剤、pH 7.0、1mMEDTA、6単位/mLグルタチオン還元酵素、1.5mg/mL5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸))を、96穴プレート内の10μLのそれぞれの試料またはグルタチオン標準(0〜50μM還元グルタチオン)に添加し、NADPH溶液(0.16mg/mL)50μL/穴の添加前に、室温にて5分間インキュベートした。A412nmを毎分15分間測定し、総グルタチオン濃度(GSH+GSSG)を初期の量から算出した。試料を3回試験した。
【0056】
コンピュータ内分析
さらなるスクリーニングで薬物類似の分子を選択するために、Pipeline Pilot (SciTegic, London, UK)をコンピュータ内分析のために使用した。分子極性表面積(mPSA)を、SPECTRUM収集から全ての2000分子で、適当なCNS浸透{Ertl, 2000 #834}の粗分析の方法として算出し、Lipinskiのフィルターを、またどの分子が最も薬物類似であるかを決定するため適用した。フィルターは、cLogP<5、分子量<500、<5水素結合供与体(OH+NHカウント)および<10水素結合受容体(O+N原子)を有する化合物を選択する「ルールオブファイブ」を適応した。
【0057】
定量的RT−PCR
マルチプレックスPCRを使用して、標的遺伝子の発現レベルの変化を、アンドログラホリドおよびS(+)アポモルヒネとEC50およびEC90濃度にて、C6細胞のNRF2−AREレポータ分析において決定されるように処理した後、1321N1星状細胞の細胞株にて変化を検出した。GenomeLab(商標)GeXP Genetic Analysisシステム(Beckman Coulter)を使用して、9つの関連遺伝子(Hmoxi、FtM、Keapi、Gdc、Nfe2l2、Gsr、Nqo1、SqstmlおよびEphX1)および3つのハウスキーピング遺伝子(18s GAPDHおよびACTB)での多重化反応において、以下の表1に概説した次のプライマーを用いて遺伝子発現の変化を同定した。
【0058】
【表1】
【0059】
それらは、太字の隣接するイントロン配列であり、ゲノムバックグラウンドを防ぐものを示す。RT反応混合物を、96穴マイクロプレートに、以下の3μLDNase/RNaseを含有しないH2O、4μLのRT緩衝剤5×、2μLのRT Rev Primer Plex Reverse Transcriptase、5μLのKANr RNA、5μLの試料RNA(20ng/μL)を、20μLの総反応容量体積が得られるように調整した。その後試料を以下のようにインキュベートした;48℃で1分間、37℃で5分間、42℃で60分間、95℃で5分間、4℃で保持。PCR反応混合物を、以下の様に96穴試料マイクロプレート内で調整した;4.0μL PCR緩衝剤5×、4.0μL 25mMのMgCl2(Abgene)、2.0μLのPCR Fwd Primer Plex、0.7μのサーモスタートDNAポリメラーゼ、(ABgene AB−0908/A)、RT反応からの9.3μLのcDNA試料。PCRを、以下のように実行した;(1)95℃で10分、(2)94℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)70℃で1分、(5)工程2〜4をさらに34サイクル繰り返し、(6)4℃で保持。予備実験に基づいて、逆RTプライマー濃度を、全ての産物が単一の反応にて検出することを可能とするために最適化した。PCR反応産物をSLS(試料負荷溶液)中に希釈し、GeXP毛細血管電気泳動ユニットにて分離し、データをGeXPソフトウェアおよびMicrosoft Excelデータパッケージを使用して分析し、GAPDHおよびACTBに対する発現変化の倍率を得た。
【0060】
標準QPCR
QPCRを、刊行物Wood−Allumなど2005で前述したように、RNAが一次星状細胞または星状細胞の細胞株から、製造業者の説明書に従ってRNeayキット(Qiagen)を使用して分離した本質的な相違で実施した。cDNAを、製造業者の説明書に従ってオリゴdTに促進されるSuperscript II(Invitrogen)を使用し、調製した。定量的RT−PCR(Q−PCR)をcDNA25ng、1×SYBR Green PCR Master Mix(Stratagene)使用して実行し、前方および後方プライマー(表1)の濃度を、総体積20μLおよびそれぞれのサンプルで3回ずつ最適化した。95℃10分間の変性後、産物を95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクルによって、MX3000P Real Time PCR System (Stratagene)にて増幅した。単一の産物の増幅を確認するため、解離曲線をそれぞれの増幅に対して産生した。サンプル中の関連の遺伝子の相対的なレベルを、それぞれのサンプル中のgapdhのものの発現レベルを基準化し、ddCt算出を用いて(SYBR Green PCR mixおよびRT−PCRプロトコル, Applied Biosystems)測定した。関連の遺伝子の全体的総体濃度を、賦形剤中の細胞成長に対するデータを基準化することによって薬物治療後に算出した。
【0061】
統計分析
スペクトルライブラリスクリーンに関して、32穴を有するそれぞれ384個の穴プレートを、賦形剤のみでインキュベートした(培地中0.1%)。該穴の平均蛍光読み込みおよび標準偏差を、1つのプレートずつで算出した。ヒットを、賦形剤の平均+3つの標準偏差を超えるGFP蛍光値を有するものとして分類した。毒性を同様に規定した(即ち、賦形剤の平均+3つの標準偏差を超えるEthD1蛍光値)。
【実施例】
【0062】
実施例1
4×ARE−TK−GFPおよびTK−GFPリポータ細胞株を、既知のARE誘導物質であるtert−ブチルヒドロキノン(tBHQ)およびフラボノイドEGCGに対するそれら反応を範囲内の濃度で試験した。この化合物を、無血清培地中の96穴プレートの密集細胞へ24時間三回適用し、GFPの誘導を蛍光プレート読み込みによって測定した。両方の化合物は、制限された領域において、100μMでピークに達するEGCGおよび10μMでピークに達するtBHQ(図2a)で、GFP発現を誘導した。前記ピークの発現より高い濃度にて、両方の化合物は、毒性のサインを直接的な観察(細胞の欠如)または上昇したエチジウムホモダイマー蛍光によって示した。蛍光における上昇を、コントロールTK−GFP細胞株においては全く観測しなかった(図示せず)。
【0063】
実施例2
2000分子のスペクトル収集物をスクリーニングするため、レポータ分析を384穴プレートの形態に縮小した。ライブラリスクリーニングの分析の適合性を評価するため、Z’スコア算出を、賦形剤(0.1%DMSO)および10μMのエブセレンを陽性のコントロールとして代替の穴を処理することによって実行した(方法における算出を参考とする)。エブセレンは、強力な濃度反応曲線を該分析にて与えることを示した。算出したZ’スコアは、ライブラリスクリーニングで許容できる0.51(図2b)であった。さらにシグナルのノイズに対する比率(S/N)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B)は、それぞれ12.8および2.9にて許容できた。前記ライブラリをその後、10μMの化合物あたり単一の濃度でスクリーニングした。薬物ライブラリの希釈および播種を、Q−BOT液体取扱いシステムによって実行し、4×ARE−TK−GFPリポータ細胞株およびTK−GFPコントロール細胞株の両方を、化合物に対するそれらの反応で試験した。単一の384穴プレートからのARE−TK−GFP細胞株に関するデータセットの例を、図3に示す。ヒットを、バックグラウンドレベルを超える3つの標準偏差より多いデータ点として同定して、賦形剤(0.1%DMSO)のみで処理した24穴の平均値であった。ヒット化合物を、それらが反応を転写の非特異的活性化または化合物の自動蛍光のいずれかにより、コントロール細胞株にて生成した場合に認識して確認した。さらに、エチジウムホモダイマー蛍光を向上させることによる毒性のサインを示すあらゆる化合物を排除した。ライブラリスクリーンを4×ARE−TK−CHO細胞株のみで繰り返し、両方のスクリーンからヒットとして現れた化合物を、更なる評価を進めた。全46の化合物をこの基準で同定した。次の段階は、化合物の濃度がこれら46のヒット化合物に対して50%の反応(EC50)を生じるために必要とされるかを測定することである。それぞれの化合物を、2つの穴における7点の濃度反応曲線を対象とした。多くの化合物は、標準のARE誘導物質、例えばtBHQおよびEGCG1に見られるものと同様の円錐形用量反応曲線を、高い濃度で毒性により示した。図4aは、全46個の用量反応曲線を第一分析において示す。大多数の化合物は、比較的高い濃度にて毒性を有する円錐形用量反応曲線を示し、また多くはARE誘導の非常に制限された領域を有する。図4bは、レポータ発現の向上を幅広い濃度範囲(>1log単位)、または高い濃度にて最小の毒性を有する一組の化合物を示す。全46のヒットに関する濃度反応曲線を繰り返し、GFP蛍光の平均EC50および平均最大倍率誘導を測定した。毒性反応の原因となる最低濃度をまた留意して、データをこれらの化合物の既知の生物活性の簡単な説明と共に、表2(本明細書の下記に示すように)に要約した。毒性を観測した最も低い服用量をまた表に記載する。化合物を、レポータ分析における活性に従ってランク付けした。最も有力なARE誘導物質は、天然産物のアンドログラホリドで、サブマイクロモルEC50(740nM)を有する唯一の化合物であり、該化合物は天然産物アンドログラフィスパニクラータから由来するものであり、漢方薬およびインドの薬草剤において幅広く使用される。26個の他の天然産物のうち、さらに2つをヒトに使用した:セクリニン、GABAA受容体アンタゴニストおよびCNS刺激薬;およびイソリキリチゲニン、アルドース還元酵素抑制剤であるカンゾウの根の成分。残りの19個の産物は、合成の小分子または誘導体であり、これらのうちの全6つの分子は承認された薬物である。2つのアルキル化抗悪性腫瘍薬(ピポブロマンおよびメクロレタミン)、ドーパミン作動薬(アポモルヒネ塩酸塩)、局所皮膚漂白剤(ヒドロキノン)、ループ利尿薬(エタクリン酸)および血管拡張薬(イソクスプリン塩酸塩)。合成小分子のうちの1つが、第3相臨床試験を脳卒中にて達成した(エブセレン)。
【0064】
実施例3
運動ニューロンおよび星状細胞における血清回収に誘導される酸化ストレスに応じてヒット化合物を誘導するNrf2−AREの効果を調査した。この経路の活性化は細胞種に応じて異なることができるため、その後これらのヒット化合物が運動ニューロン細胞株(NSC34細胞)、ラット(C6)およびヒト(1321N1)星状細胞の細胞株を、血清回収による酸化ストレス誘導からどの程度保護することができるかのスクリーンを行った。細胞株を、ヒット化合物である範囲の濃度にて24時間前処理し、NRF2−ARE経路を活性化した。その後、化合物を取り除き、細胞は6時間血清回収を受けて酸化ストレスを誘導した。酸化ストレスの程度をジクロロフルオレセイン(DCF)蛍光を使用して測定し、保護の程度を、DCF蛍光におけるパーセント減少としてそれぞれ3つの細胞株に対して表3に示した。曲線を適合することが可能である場合、半数最大効果濃度(IC50)を生じるのに必要とされる濃度をまた提示した。一般的に、ヒット化合物は、星状細胞の細胞株にて保護効果を示す可能性が運動ニューロン細胞株より高かった。表3(本明細書の下記に示す)は、運動ニューロン細胞株における活性化によってランクを付けした全ての化合物に関する分析結果を示す。9/46の化合物のみが、血清回収により誘導される酸化ストレスDCFシグナルをNSC34細胞にて減少し、18/46の化合物が該分析において効果を全く有さず、残りの17個の化合物は該分析において酸化促進剤であった。即ち、血清回収が原因である酸化ストレスの減少に対して、それらはそれに寄与し、DCF蛍光を上昇させた。対照的に、1つの化合物のみが1321N1星状細胞の細胞株にて酸化促進剤であり、29/46はDCFシグナルを30%以上減少させた。C6細胞株に関しては、化合物は酸化促進剤ではなく、32/46の化合物は、DCFシグナルを30%以上減少させた。
【0065】
実施例4
得た生物学的結果を合理化するため、表1で報告した化合物に関する一般的なファーマコフォアを、MOE(Molecular Operating Environment) [Molecular Operating Environment (MOE 2007.09) Chemical Computing Group, Inc. Montreal, Quebec, Canada http://www.chemcomp.com]において実行したPharmacophore Elucidatorを使用して研究した。CHO4×ARE−TK細胞株において、10μM未満のEC50を有する24個の分子を、NRF2−ARE経路の誘導で考慮すると(表2)、配置に応じて、それら22は2つの共通特徴を示した:芳香族/疎水性部位および水素結合受容体部位(図5a)。EGCGはまたこれらの構造的特徴を有し、算出したファーマコフォアに明らかに適合することを留意すべきである。さらに1321N1星状細胞の酸化ストレス分析の結果(表3)を、3μMの活性閾値でファーマコフォアを構成するために使用したとき、1つのさらなる一般的な芳香族/疎水性の特徴を同定した(図5b)。これはKEAP1へメルカプト基の求電子攻撃によって作用することができる既知のNrf2活性剤である細胞質Nrf2調節因子と一致する。これら事前のモデリングデータを使用して、Nrf2−ARE経路の潜在的な活性剤の構造の必要条件を理解することができ、このクラスの化合物の新規構造のデザインとして考慮することができた。
【0066】
実施例5
化合物の物理学的/化学的な性質を評価した。関連した細胞型における機能効果で化合物をスクリーニングすることに加えて、また化学的/物理学的性質を算出する化学情報プログラムであるPipeline Pilotを、表3に示すように使用した。ALogP(オクタノール/水の分割の対数)および分子極性表面積(mPSA)は、化合物の親油性の相違の測定であり、可能性があるCNS浸透度の初期の予測を可能とする。CNS浸透度に関しては、AlogPが1を超えるが4未満、mPSAが100未満(理想的には80)は、BBBに通過する受動拡散のために最適である。さらにLipinskiのフィルターを使用して、非薬物類似分子を同定し、4つ(スィーテノリド三酢酸、エンデカフィリンX、ロバル酸およびオイホールアセタート)を排除した。
【0067】
不要な分子のみを濾過して取り除くため、NSC34酸化ストレス分析(表3)にて保護または中性の効果を有するものを選択し、既知の細胞分子を除外した(ピポブロマン、クロルデン、アラクロール、プロパクロル)。AlogPおよびmPSAの基準を残りの22の分子に適応すると、さらなる調査で17分子が残存した。前記分子を表3において太字で強調し、「最良のヒット」の分子として称する。さらに毒性を観測した最小の投薬量を示した。NA、適用できない(不十分なデータ、反応濃度なしまたは阻害なし)。表3で化合物を、NSC34細胞株における保護性能によって分類する。ARE誘導物質は、星状細胞の細胞株(1321N1およびC6)で酸化ストレスからの保護に、NSC34細胞と比較してはるかに効果的である。
【0068】
実施例6
神経細胞および星状細胞の細胞株における最もヒットの化合物のNRF2−ARE誘導活性を調査した。星状細胞および運動ニューロンの細胞株における保護における相違が、これら細胞種においてNRF2−ARE経路の活性化の程度での相違によるものであるかを決定するため、NRF2−AREレポータコンストラクトを、星状細胞(C6)および運動ニューロン(NSC34)細胞株にて安定して発現させた。その後17個の最良のヒットの分子を、それぞれの細胞株においてスクリーンした。またアポモルヒネのS[+]鏡像異性体をスクリーンし、それがR[−]またはS[+]鏡像異性体のいずれかとして存在することができるためである。R[+]鏡像異性体が、ドーパミン作動薬活性を有する一方、S[+]鏡像異性体は前記活性を欠如し、そのためそれがNRF2−ARE誘導活性を維持するかどうかを決定する必要性があった。C6レポータ細胞株での結果を図6に示した。一般的にC6細胞におけるNRF2−ARE経路の活性化は、CHO細胞株において見られるものと同様である。NSC34レポータ細胞株は、星状細胞の細胞株対初期に見られたNSC34細胞において酸化ストレスに対してより大きな保護のために、根本的な原因を示唆する同じセットの濃度反応曲線を有するあらゆる活性化が、星状細胞の細胞株におけるNRF2−ARE経路のより強い活性化による場合には、最小限を示した。さらに、アポモルヒネのS[+]鏡像異性体は、前記活性がドーパミン受容体作動薬に無関係なことを示すR[+]鏡像異性体と比較して、NRF2−ARE活性化に関して同様に有力であり、S[+]鏡像異性体はドーパミン作動薬でないためである。
【0069】
運動ニューロン疾患における臨床試験のために、急速な発展する可能性を有する分子を同定することが目的であった。これに関する重要な基準の一つは、分子がMNDのためでないがヒトにおける過去の使用を有することである。17個の最もヒットの分子の中、2つはヒトにおいて天然産物(セクリニン、アンドログラホリド)として過去の使用を有し、1つは症状の発現からパーキンソン病における「オフ」の事例の急性救済で使用される現在認可の薬物(R鏡像異性体としてのアポモルヒネ塩酸塩)である。さらにヒドロキノンは、局所塗布皮膚漂白剤としてではあるが、過去の使用がある。これら薬剤の中で、アンドログラホリドおよびアポモルヒネのS[+]鏡像異性体は、セクリニンがマウスおよびヒトにおいて痙攣薬特性を頻繁に記載するように、更なる評価で選択され、アポモルヒネのS[+]鏡像異性体におけるドーパミン作動薬の欠如を、明確な利点と考える。
【0070】
実施例7
C6細胞および一次マウス星状細胞におけるアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネによる、ARE標的遺伝子発現の誘導を調査した。これらの好ましいまたは「主要な」分子が、星状細胞における標的遺伝子発現を導くNRF2−ARE経路の活性化を可能とすることを確認するために、マルチプレックスRT−PCR分析をGenomeLab(商標)GeXP遺伝子分析システムに9つの関連遺伝子で開発した。C6細胞を、24時間アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネで、C6−4×ARE−TKレポータ細胞において測定したようにEC50およびEC80濃度にて処理した。2つの遺伝子Haemオキシゲナーゼ1およびNQO1のみが、遺伝子発現において、統計学的に有意な変化を示し、標準の定量RT−PCRによって確認した(図7Aおよび7B)。
【0071】
実施例8
主なNRF2誘導分子が、標的遺伝子の発現を一次マウス運動ニューロンにおいて上昇することが可能であるため、星状細胞フィーダーレイヤーに一次マウス運動ニューロン(MN)からなる共培養を、[S+]アポモルヒネのアンドログラホリドと前処理した後、酸化性外傷にさらした(図8)。その後共培養を、6時間の10μMメナジオンで与えて、酸化ストレスを誘導し、運動ニューロンを染色および計数した。DMSOコントロール細胞において、運動ニューロン数における約25%の減少を、いずれかの薬物で処理した穴において見られなかったことで観測した。これらの結果は、NRF2誘導物質が、一次マウス星上細胞/MNの共培養にて酸化ストレスから運動ニューロン(MN)を保護することを示す。
【0072】
また一次マウス星状細胞において同じ条件下で、NQO1およびHCMの遺伝子の標準定量RT−PCRは、有意な上昇を遺伝子発現において明らかにした(図7Cおよび7D)。遺伝子発現における変化が、タンパク質の発現で付随する増加を導くことを確認するために、一次マウス星状細胞を、服用量依存的な発現向上をDMSO処理した細胞において見られるものにわたって確認する免疫染色(図9)によって、HO−1の向上したレベルで評価した。またこの向上した抗酸化性能の機能的効果を、総グルタチオンレベルの同じ条件下における、一次星状細胞そのものと処理した星状細胞から収集した培地との両方において観測することによって見られた(図10)。これはグルタチオンレベルが、細胞そのものおよび培地において向上したことを示した−Nrf2に反応性の星状細胞が、隣接したAREに反応性ではないMNを酸化的攻撃から保護することが可能である1つの機構を提供する。
【0073】
実施例9
得られた生物学的結果を合理化にする試みから、一般的なファルマコフォアを表2に報告した化合物に対して、MOE(Molecular Operating Environment)[Molecular Operating Environment (MOE 2007.09) Chemical Computing Group, Inc. Montreal, Quebec, Canada http://www.chemcomp.com]において実行したPharmacophore Elucidatoを使用して同定することを試みた。CHO ARE−TK細胞株におけるNRF2−ARE経路の誘導に関する10μM未満のEC50で24個の分子を考慮すると(表2)、配置に応じて、それら22は2つの共通の特徴を示した:芳香族/疎水性部位および水素結合受容体部位(図4a)。EGCGは、またこれら構造的特徴を有し、算出したファーマコフォアに明らかに適合することに留意すべきである。さらに、1321N1星状細胞の酸化ストレス分析の結果(表3)を、3μMの活性閾値を使用して、ファルマコフォアを構成するために使用したとき、1つの余分な共通の芳香族/疎水性特徴を同定した(図5b)。これはKEAP1にメルカプト基の求核攻撃によって作用することができる既知のNRF2活性剤である、細胞質NRF2調節因子と一致する。これら事前のモデリングデータを使用して、NRF2−ARE経路の潜在的な活性剤の構造的な必要条件の理解することができ、このクラスの化合物で、新規構造のデザインで考慮することができる。
【0074】
実施例10
従来の研究が、突然変異体SODを発現する運動ニューロン細胞株、および家族性ヒトSOD1症例からの星状細胞における事後の材料において、弱いNrf2反応を示したため、主な誘導物質が依然としてG93A突然変異体SOD1を発現する星状細胞にてNrf2を活性化することができるかを調査した。Nrf2調節の遺伝子であるNAD(P)H:キニーネ酸化還元酵素(NQO1)およびヘムオキシゲナーゼ1(HOX1)が、G93A突然変異体SOD1トランスジェニックマウスからの、一次マウス星状細胞において誘導することができるかどうかを最初に決定した。定量的RT−PCRは、NQO1およびHO1に関する転写因子において、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネとそれらのEC90濃度で24時間の前処理後に有意な上昇を示した(図11)。
【0075】
実施例11
図12は、[S+]アポモルヒネの生体内における薬物動態学および薬力学を、雄C57BI/マウスにて示す。化合物の[S+]アポモルヒネレベルの、単一の静脈内への投薬を、血漿、脳および脳髄液(図12Aおよび12B)において検出した後、ならびに皮下の投薬後、QRT−PCRによって測定したHO−1およびNQO−1転写酵素の投与後24時間で、著しい誘導が存在した(図12C)。従って、[S+]アポモルヒネは、抗酸化酵素の発現における転写活性化にわたって、長期に渡る上昇を導くことができる。
【0076】
これらのデータは、いくつかの化合物を生体外におけるNF2−ARE経路の活性因子であることが同定し、それらがまた生体内にて前記経路を活性化することができることを示す。
【表2】
【表3−1】
【表3−2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ストレスによって媒介されることが知られる神経障害の治療、特に運動ニューロン疾患および筋萎縮性側索硬化症の治療のための治療薬に関する。本発明は、とりわけ神経障害の治療のための製品を含有する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、遊離基の産生およびそれらに対して防御する細胞の性質の間で、不適当な組み合わせの細胞病理学的な結果とする。実験モデルおよびヒトの脳の研究からの増大するデータは、酸化ストレスが、重要な役割を神経変性疾患において果たすことを示唆する。酸化ストレスは、正常な老化および様々な神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症の両方において関係し、壊死、アポトーシス、および興奮毒性を含有する細胞死の様々な形態の基礎をなす共通の機構である可能性がある。
【0003】
運動ニューロン疾患(MND)は、一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と米国にて称し、運動皮質、脳幹および脊髄における運動ニューロンの欠如を特徴とする進行性且つ致命的な神経変性疾病であり、これは衰弱および萎縮を導く。ALSは、診断から2〜3年以内に死亡を通常導く。ALSは、散発的(全症例の90%)および家族型(全症例の10%)の両方で生ずる。家族性のALSの20%において、突然変異は、銅、亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子(SOD1)で見出された。散在の症例および家族性の症例の残りの80%において含む遺伝子は、依然同定されていない。現在、疾患の進行を防ぐまたは後退させる治療は全く存在しない。利用可能な治療(例えばリルゾールおよび酸化防止剤)は、せいぜい生存を適度に延長するのみである。
【0004】
疾患の基礎をなす機構は、完全には理解されていない。しかしながら、ALSの家族性症例の割合における原因としてSOD1突然変異体の同定は、疾患機構の理解を非常に向上させた疾患の細胞およびマウスのモデルの両方の生成を可能とした。前記モデルならびに患者からの証拠は、疾患病因における酸化ストレスの役割で非常に優れる証拠を提供した。酸化ストレスは、ニューロン損傷の他の潜在的機構、例えばミトコンドリア機能不全、興奮毒性、タンパク質凝集、細胞骨格機能不全および膠細胞活性化に、著しい相互干渉を有する。それはこれら機構内に供給することができるか、または次にそれらによって向上させる。病因におけるこの中心的役割が、メタ分析研究のALSの最も一般的に使用されるマウスモデル(ヒトSOD1のG93A突然変異体形状を発現するトランスジェニックマウス)で反映され、酸化ストレスを標的とする治療を、最も重要な所見として疾患進行の遅延において強調した。
【0005】
この中心的役割にも関わらず、ALSにおいて標的とする酸化ストレスを患者で臨床利点に解釈できず、CNSに接近することが可能である十分に有力な酸化防止剤の不足による可能性が多少ある。神経変性疾患における酸化ストレスを制限する新規な方法は、転写制御因子、NEF2関連因子2(Nrf2)の活性化を促進する。Nrf2は、一連の第二段階の解毒および酸化防止剤酵素の発現を、それの相互作用により抗酸化反応要素(ARE)で促進する。活性化するとき、この「プログラム細胞寿命」反応は、神経保護作用であり、逆にこの経路の減衰は、ニューロン感度を神経毒性の難問の範囲対して向上させることができる。前記経路の調節不全が、ALS細胞モデルにおいて観測され、ヒト組織において確認された。Nrf2そのものおよび複数の標的遺伝子が、突然変異体(G93A)ヒトSOD1を発現する運動ニューロン細胞株において抑制される。さらにミトコンドリア抗酸化防止剤において重要な役割を果たす前記経路の標的であるペルオキシレドキシン3(PRDX3)が、前記細胞モデルならびに家族性および散発的なALSからのヒト組織の両方において下方制御された。G93A SOD1トランスジェニックマウスを、AREリポータマウスと交配したとき、Nrf2−ARE経路の活性化を、30日齢からの筋肉にて、90日目で脊髄に重要でない活性化およびより強い活性化を110日目の時点で示した。90日齢で、マウスは既に筋衰弱および運動ニューロン欠如を示し始め、110日目にそれらは著しい運動ニューロンの病状を示した。これは、前記ネズミモデルにおけるNrf2−ARE経路の活性化が、質的に不十分であるか、または著しい損傷からの運動ニューロンの保護には非常に遅延する可能性があることを示唆する。他の報告と組み合わせて解釈すると、これは、突然変異体SOD1を発現する細胞の性質における欠陥を反映して、前記経路を活性化する可能性がある。
【0006】
Nrf2−ARE経路は、ALSにおいて関心のある治療標的であり、それが小分子による活性化および細胞防衛の活性化が、例えば直接的な捕捉方法より酸化ストレスに対して持続的な保護を与えることができることに従い、明確に規定されるためである。それは緑茶カテキン−(−)エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)由来のフラボノイドが、突然変異体(G93A)ヒトSOD1を発現する運動ニューロン細胞株において神経保護作用効果を示す従来技術から知られている。前記細胞株は、H2O2誘導された細胞死から、20μMを超えるEGCG濃度で、部分的に保護された。前記化合物を、またALSのG93Aマウスモデルに服用量の範囲にて、一日一度、経口で60日齢から試験した。比較的高い服用量において、生存における著しい延長が、上昇した平均生存率と見られた。前記治療効果は、EGCGがそれ自身の酸化促進剤で、それの治療領域を狭め、高度に極性であり、有意な濃度にて血液脳関門へ移行する可能性を低くする事実にかかわらず見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化ストレスによる媒介が知られる疾患、特に運動ニューロン疾患、ALS、パーキンソンおよび他の神経変性疾患等の疾患の治療において効果的である治療薬の必要性がある。
【0008】
最小の毒性を有し、血液脳関門へ移行する性能を有するとともに、CNSを通過することができる神経変性疾患を治療する治療薬の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によると、運動ニューロン疾患を治療する治療薬が提供され、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である。
【0010】
運動ニューロン疾患(NMD)は、運動ニューロンの数々の疾患に及ぶように使用した全てを包含する用語である。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、原発性側索硬化(PLS)は、全てサブタイプである。MNDはヨーロッパにて頻繁に使用される総称であるとともに、ALSは米国にてより一般的に時々使用される。当業者は、運動ニューロン疾患(NMD)による関係が、またALS、PMA、PBPおよびPLSの関連に及び、これらの挙げた疾患の状態は交互に使用することが可能であることを理解するだろう。
【0011】
本明細書の記載および請求項の全体を通じて、「含有する(compriseおよびcontain)」という単語および単語の語尾変化、例えば「含有する(comprisingおよびcomprises)」は、「含有するが、制限しない」ことを意味するが、他の部分、添加、成分、整数または工程を排除することを意図するものではない(排除しない)。
【0012】
本明細書の記載および請求項の全体を通じて、単数形は、文脈が他に要求しない限り複数形を包含する。特に、不定冠詞を使用する場合、この記載は、文脈が他に要求しない限り複数形ならびに単数形として考えるとして理解される。
【0013】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と共に記載した特性、整数、特徴、化合物、化学的部分または群は、それと互換性がない限り、本明細書に記載のあらゆる他の態様、実施形態または実施例に適応することが可能であると理解される。
【0014】
本発明は、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンが、CNSを移行する性能を有する、有力且つ「薬物のような」Nrf2−ARE活性剤であるスクリーンおよび試験のカスケードを通して論証した。
【0015】
本発明の化合物は、それら単独または治療療法の一部のいずれかに、予防的または治療的に使用することができる。
【0016】
いうまでもなく、本明細書において使用するように「治療(treatment)」および「治療すること(treating)」という用語は、状態、例えば疾患または障害を予防する目的で、患者の処置および管理を意味する。この用語は、患者が患う所定の状態で十分な薬効範囲の治療、例えば症状または合併症を軽減や、疾患、障害または状態の進行を遅延や、症状および合併症を軽減または緩和、および/または、疾患、障害または状態を治療または除去ならびに状態を防ぐために活性化合物の投与を含有することを意図し、予防は疾患、状態または障害を予防する目的のために患者の処置および管理として理解され、症状または合併症の発症を予防する活性化合物の投与を含有する。治療される患者は好ましくは哺乳類、特に人間であるが、それはまた動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジおよびブタを含有することができる。
【0017】
本発明のさらなる態様によると、運動ニューロン疾患の治療に対する薬剤を製造するために、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路活性剤の使用を提供する。
【0018】
アポモルヒネは、間欠注射または持続注入として通常皮下に投与されるドーパミン作動薬である。それは、進行したパーキンソン病の処置において実用的であり、神経外科処置に選択肢を提供する。[S]+鏡像異性体の化合物が、ALSまたは他の病状の治療において実用的であることができる、従来の臨床徴候にも全く存在しない。結果は、特にドーパミン作動薬活性を有さないS鏡像異性体が、本発明の方法に規定され、上記のように示したALS治療のために正しい基準を有する。従って、本発明は、アポモルヒネの[S]+鏡像異性体の新規な治療有効性を認識する。
【0019】
アポモルヒネの化学構造を、以下に記載し、[S]+鏡像異性体のあらゆる変異体および置換物を、本発明の化合物の範囲内に包含することを認めるだろう。さらに[S]+鏡像異性体のあらゆる誘導体または塩を、本発明の範囲に含み、国際出願PCT/US03/08448号明細書の内容を、本明細書に参考文献として組み込むものとする。
【0020】
【化1】
【0021】
アンドログラホリドは、植物アンドログラフィスパニクラータのジテルペノイドラクトンであり、ある特定の癌、例えば乳癌で抗腫瘍活性を有し、抗炎症剤効果を有することが知られている。前記化合物が、例えば限定されないがALS酸化ストレスと関連のある疾患の治療において、実用的である可能性がある過去の臨床徴候は全く存在しない。従って本発明は、アンドログラホリドの新規な治療有効性を認識する。
【0022】
アンドログラホリドの化学構造を、以下に記載し、あらゆる変異および置換物を、本発明の化合物の範囲内に包含すると認めるだろう。例えば、アンドログラホリドおよびその誘導体は、R.sub.1、R.sub.2およびR.sub.3が独立して水素、アシル、フェニル、モノリン酸塩、ポリリン酸塩、モノ硫酸塩、ポリ硫酸塩、グリコシル、環状アルキル、非環状アルキル、アルケニルまたはアルキニルを示すことができる一般式であり、前記リン酸塩もしくは硫酸塩の誘導体は、遊離酸もしくは塩の形態であることができる。
【0023】
【化2】
【0024】
好ましくは、本発明の化合物を、治療を必要とする患者への投与で適切な薬剤形態に処方することできる。
【0025】
医薬品組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、眼、耳、直腸または経皮の投与で適切なあらゆる形態であることができる。前記組成物が非経口投与を意図する場合、それらを静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下の投与、標的器官または組織内へ注射、点滴もしくは送達の他の手段によって直接的な送達で処方することができる。前記送達は、大量瞬時投与、短期注入または長期注入によることが可能であり、受動デリバリーまたは適切な薬物注入ポンプの利用により可能である。
【0026】
従って、本発明の化合物は、製薬成分または賦形剤をさらに含有する。
【0027】
「製薬成分」または「賦形剤」は、本発明の化合物に添加される薬理的に不活性な製薬学的に許容される化合物を意味する。前記成分または賦形剤は、薬理学的特性を全く有さない。
【0028】
本発明のさらなる態様によると、酸化ストレスの結果として生じる神経変性状態を治療する治療薬を提供し、前記治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルフィンを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である。
【0029】
好ましくは、酸化ストレスによって媒介されることが知られている神経変性状態は、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的手法のための臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される。
【0030】
本発明のさらなる他の態様によると、酸化ストレスの結果として生じる疾患または状態を治療するアンドログラホリドの使用を提供し、前記疾患または状態は、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的方法のため臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される。
【0031】
本発明のさらなる他の態様によると、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択される、Nrf2−ARE経路の活性剤の治療の有効量を投与することを含有する酸化ストレスの結果として生じる神経変性疾患を患う個体の治療法を提供する。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、候補治療薬のライブラリのスクリーニングを行う生体外の方法を、酸化ストレスによって媒介されることが知られている疾患を治療するそれらの安定性に関して提供し、前記方法は:(i)非神経細胞に由来のコントロールまたは正常の細胞を候補の治療にさらし、Nrf2−ARE経路を活性化する性質を有する候補薬を同定する工程と、(ii)神経細胞に由来の細胞を、工程(i)において陽性の効果を有する候補薬とさらし、Nrf2−ARE経路を活性化するそれらの性能を評価する工程と、(iii)神経細胞由来の細胞を保護する候補薬の性能を、酸化ストレス障害に対して評価する工程と、(iv)物理的および化学的パラメータを確認する一連のコンピュータの試験を実行する工程を含有し、陽性の結果を工程(i〜iii)において有し、適切な物理−化学特性を有する治療候補は、酸化ストレスによって媒介されることが知られている疾患の治療に適切である可能性がある。
【0033】
本発明は、CNSを透過する性能をも有するより有力且つ「薬物類似の」Nrf2−ARE活性剤を同定するスクリーニング法として便利なカスケードの試験を提供する。本発明の方法は、さらなる生体内試験で期待のできる少数の分子を選択する強力なスクリーニングカスケードを提供する。これらの「ヒット」分子を、最初にNrf2−ARE経路を正常な非ヒトの動物由来の細胞株およびヒト発生の細胞株において活性化するそれら性能を試験し、その後経路が非ヒトの動物のCNSから一次培養由来の神経細胞にて活性化できるか決定する「ツール」分子として使用する。
【0034】
好ましくは、細胞が由来する非ヒトの動物を、サル、イヌ、ネコ、ラビット、ラットおよびマウスを含有する群から選択する。齧歯目の動物が好ましく、マウスが最も好ましい種である。
【0035】
好ましくは、本発明の一実施形態において、細胞をAREレポータコンストラクトで安定してトランスフェクションして、任意にリポータは蛍光薬品、例えば限定されないがGFP等である。
【0036】
好ましくは、細胞をNrf調節遺伝子の増加した発現で分析する。活性化を検出するための適切な方法を、本明細書の以下に記載する。
【0037】
好ましくは、神経細胞由来の細胞は、CNS細胞であり、特に星状細胞である。本発明の一実施形態において、それらがヒトSOD1のG93A突然変異体形態を発現するトランスジェニック非ヒトの動物から由来するものである。
【0038】
好ましくは、工程(iii)の酸化ストレス試験は、血清の回収、酸化ストレスを、任意にジクロロフルオレッセインもしくは誘導体との測定、ミトコンドリア毒素(メナジオン)とインキュベーションおよび細胞生存率の測定を含有する。しかしながら、他のストレス試験を本発明の方法において用いることができることを認識するだろう。
【0039】
好ましくは、工程(iv)の適切な物理的および化学的パラメータは、cLogP<5、分子量<500、<5水素結合供与体(OH+NH数)および<10水素結合受容体(O+N原子)である。適切な物理学的および化学的パラメータは、典型的にLipinskiの法則の5とする。さらにAlogPが4未満であるが1を超え、分子極性表面積100(理想80)未満は、血液脳関門(BBB)を通る受動拡散に最適であるが、さらなる好ましい特徴を、候補治療薬を最も良好に選択するためにまた利用することができる。
【0040】
本発明の特定の態様に起因するあらゆる特徴は、必要な変更に加える各々およびいずれかの態様にも適応することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明において使用したNRF2−ARE分析の概略図を示す図である。
【図2】分析検証の結果を示すグラフである。図2aは、CHO−4xARE−TK細胞株におけるtBHQ(白丸)およびEGCG(黒丸)の濃度反応曲線を示すグラフである。両方の分子は、それぞれ10μMおよび100μMで、ARE活性ピークの制限された領域を有する。図1bは、Z’スコア測定の結果を示すグラフである。単一の384穴プレートから賦形剤(192穴)および陽性対象(10μMエブセレン、192穴)に対する平均±SDを示す。この分析のZ’スコアは、0.51であり、シグナルのノイズに対する比率(S/N)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B)は、それぞれ12.8および2.9を有する。
【図3】一つの384穴プレートのスペクトルライブラリスクリーニングデーターの例を示すグラフである。GFP蛍光対穴の数である。穴1〜24および360〜384は交互の陽性(10μMエブセレン)および陰性(賦形剤)コントロールを含有する。点線は陰性対象の平均+3SDを示し、この線を越える全ての化合物は、「ヒット」として計数される。いくつかの穴は減少した蛍光を示し、おそらく毒性によるものである。
【図4a】46個のヒットの化合物全てに関するオーバーレイ濃度反応曲線を示すグラフである。多くのヒット化合物に関するプロフィールは、高い濃度における毒性のため減少した蛍光で円錐形の用量反応曲線の結果になり、ARE誘導の制限された領域を有することに示す。
【図4b】高濃度またはARE誘導の広い範囲にて最小の毒性を有する化合物の例を示し、該化合物のほとんどは、多少の毒性を100μMで示すグラフである。
【図5】A/一次スクリーン(EC50<5μMを有する化合物)およびB/星状細胞酸化的ストレス分析を1321N1細胞(EC50<3μMを有する化合物)からの化合物のファーマコフォアモデルおよび配列を示す図である。芳香族/疎水性の特徴を緑色、水素結合受容体の特徴を青色で示す。(B)に関して、塩基性ファーマコフォアは、水素結合受容体と関連する2つの疎水性特徴で現れる。これはKEAP1にメルカプト基の求核攻撃によって作用することができる既知のNRF2活性剤である細胞質NRF2調節因子と一致する。
【図6】AREリポータ分析の結果を、C6星状細胞の細胞株において17の最もヒット化合物およびS[+]アポモルヒネで示すグラフである。全体として反応は、CHO細胞株において見られるものと同程度であり、R[−]およびS[+]アポモルヒネの両方は、この活性がR[−]アポモルヒネのドーパミン作動薬活性に無関係であることを示唆するNrf2−ARE経路を同程度誘導する。NSC34細胞株における反応は、実質的に減少したか、大部分の化合物で存在しない(図示せず)。
【図7】NRF2調節因子遺伝子をラットC6星状細胞の細胞株(C6星状細胞、図7aおよび図7b)および一次マウス星状細胞(図7cおよび図7d)において、24時間アンドログラホリド(Andro)およびS[+]アポモルヒネ(Apo S)のEC50とEC90濃度にて処理した後に、定量的RT−PCR分析を示すグラフである。マルチプレックスPCRを使用して、Nrf2そのものを含有する関連の9つ遺伝子の発現レベルを、C6細胞において薬物治療後に調べた。2つの遺伝子、Haemオキシゲナーゼ1およびNQO1のみが、(a)および(b)にそれぞれ示すように、統計学的に有意な差を遺伝子発現において示した。一次マウス星上細胞における同じ条件下にて、これら2つの遺伝子の標準の定量RT−PCRを、また(c)および(d)で実行した。星印は、をDMSOコントロールにおける有意な差を一元配置分散分析で示す。
【図8】NRF2誘導物質は、運動ニューロン(MN)を一次マウス星状細胞/MNの共培養にてメナジオンストレスから保護することを示すグラフである。共培養を、24時間、S[+]アポモルヒネ(Apo S)およびアンドログラホリド(Andro)と、それらのEC50およびEC90にてそれぞれ、ラットC6 4×ARE−TKリポータ細胞にて測定したように前処理した。その後共培養を、6時間10μMメナジオンで行い、酸化ストレスを誘導した。DMSOコントロール細胞において、運動ニューロン数における約25%の減少を、いずれかの薬物で処理した穴においては見られなかったことで観測した。
【図9】一次マウス星状細胞におけるNrf2誘導物質とEc50およびEC90濃度にて処理した後の、Haemオキシゲナーゼ1で染色する免疫蛍光を示す図である。面積および染色強度を、Image Jを使用して定量化し、染色指数を算出するために使用した。
【図10A】総グルタチオンレベルを、一次マウス星状細胞にて、Nrf2誘導物質とEC50およびEC90濃度にて処理した後のグラフを示す。総グルタチオンレベルを標準の方法を使用して、Nrf2誘導物質で24時間前処理した後に測定した。全ての処理は、グルタチオンレベルをDMSOコントロールに対する星状細胞にて有意に上昇させ、両方の薬物のEC90濃度は、細胞外グルタチオンレベルを有意に上昇させた(*p値<0.005)。データは、3つの独立した実験の平均である。
【図10B】総グルタチオンレベルを、一次マウス星状細胞から収集されて調製された培地にて、Nrf2誘導物質とEC50およびEC90濃度にて処理した後のグラフを示す。総グルタチオンレベルを標準の方法を使用し、Nrf2誘導物質と24時間前処理した後測定した。全ての処理は、グルタチオンレベルを星状細胞にて、DMSOコントロールに対して有意に上昇させ、両方の薬物EC90濃度は、細胞外グルタチオンレベルを有意に上昇させた(*p値<0.005)。データは、3つの独立した実験の平均である。
【図11】Nrf調節遺伝子NQO1(a)およびHaemオキシゲナーゼ1(HOX1)で、G93A突然変異体SOD1を過剰発現する一次マウス星状細胞において、アンドログラホリド(Andro)およびS[+]アポモルヒネ(Apo S)とEC50およびEC90濃度にて24時間処理した後の、定量的RT−PCR分析を示すグラフである。星印は著しい差をDMSOコントロールから一元配置分散分析で示す。
【図12A】S[+]アポモルヒネ(Apo S)に関する生体内薬物動態学的時間的経過を示すグラフである。
【図12B】相当するPKパラメータをマウスにおいて示す表である(時点あたりのn=3または4)。
【図12C】マウスにおける一回の皮下注射後6,24および48時間で、2.5または5.0mg/kgのS[+]アポモルヒネ(Apo S)のいずれかの、HO−1およびNQO−1に関するQRT−PCRを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
細胞培養
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NSC34マウス運動ニューロン細胞、C6(ラット)および1321N1(ヒト)星状細胞株を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンで補うDMEM中に、通常保持した。TK−EGFPリポータコンストラクトは、pEGFP(Clontech)の多重クローニング部位で挿入される123bpチミジンキナーゼプロモータからなり、ARE−TK−EGFPは、また41bp GST AREモチーフ(TAGCTTGGAAATGACATTGCTAATCGTGACAAAGCAACTTT) (SEQ ID NO: 1) 3’の4つの繰り返しをTKプロモーターに含有する。これらプラスミドをCHO、C6および1321N1細胞株内に、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、0.5mg/mLのG418において10〜14日の選択後、トランスフェクションし、それらをそれぞれの細胞株に関する2つの一連の細胞分取で蛍光活性細胞分取(BD、FACSAria)を使用して、基底eGFP発現で拡大および選択した。基底eGFP発現を有する安定したトランスフェクションのこれらの混合集団を、その後の分析に使用し、AREを含有する株で4×ARE−TK−GFPおよびコントロール細胞株でTK−GFPを指定した。NSC34細胞株をG93A突然変異体SOD1でトランスフェクションし、安定してトランスフェクションした単一細胞のクローンを250μg/mLのG418において選択および限界希釈法によるクローニングによって分離した。
【0043】
AREリポータ分析−スペクトルライブラリスクリーン検証
2000個の小分子薬物および天然産物のスペクトルライブラリをスクリーンするため、TK−GFP CHO AREリポータ細胞株は、384穴プレートにおいて(Greiner Bio−one, μClear, black)、表面被覆密度の範囲(分析の24時間前に5〜20×104/ウェルにて播種した)および異なる培地を使用してZ’スコア分析を受けた。交互の穴は、0.3μMエチジウムホモ二量対(EthD1)を含むPBSを有する培地を交換した24時間後に、10μMのエブセレンおよび賦形剤(0.1%DMSO)とインキュベートした。このエブセレン濃度は、この薬剤に関してはおおよそのEC90を示す。その後GFP蛍光(ARE誘導)を、Ex485nm/Em530nmにおいてFusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。zスコアを以下のように算出した:
【0044】
【数1】
【0045】
SD+=陽性対照穴の標準偏差
3SD−=陰性対照穴の標準偏差
Ave+=陽性対象穴の平均蛍光測定値
Ave−=陰性対象穴の平均蛍光測定値
【0046】
シグナルのノイズに対する比率(S/N=Ave+/SD+)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B=Ave+/Ave−)をまた異なる分析条件で測定した。許容できるZ’スコアは>0.5である。ライブラリスクリーンでは、細胞を20×104の密度で、10%FBSを含有する通常のDMEM培地中に、−1日目および0日目に播種し、細胞を24時間無血清培地で薬物にてインキュベートした。培地を手動で取り除き0.1%DMSO中に、10μMまで希釈したスペクトルライブラリで、Q−bot liquid handlingシステム(Genetix, New Milton, UK)を使用して置換した(1化合物/穴)。前記培地を24時間後取り除き、同じ体積の0.3μMのEthD1を含有するPBSで置換した。その後GFP蛍光(ARE誘導、EX485nm/EM530nm)およびEth D1蛍光(毒性Ex530nm/EM645nm)を、Fusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。TK−GFP CHO ARE細胞株を単一時点分析にて二度スクリーンし、コントロールTK−GFP CHO細胞株を1度スクリーンし、偽陽性を排除した。図1は、NRF2−ARE分析の概略図を示す。
【0047】
AREリポータ分析−EC50の測定
4×ARE−TK−GFP CHOまたはTK−GFP CHOを発現する細胞の密集培養物を96または384穴組織培養プレートにて、FCSを含まないDMEM中に薬物(0.01〜100□Mを三回繰り返し)または賦形剤(0.1〜1%DMSO)と、三回繰り返して24時間処理した。前記培地を取り除き、0.3μMEthD1を含有するPBSの同じ容量と置換した。その後GFP蛍光(ARE誘導、Ex485nm/EM530nm)およびEth D1蛍光(毒性Ex530nm/Em645nm)を、Fusion万能型プレートリーダ(Packard Bioscience)を使用して測定した。非線形回帰を使用して、片対数プロットにS字状の用量反応曲線を適合させ、GraphPad Prism(GraphPad Software)を使用してEC50を算出した。リポータ分析を、4×ARE−TK−GFPおよびTK−GFPコンストラクトと安定してトランスフェクションされたC6および1321N1星状細胞の細胞株にて、Eth D1を直接培地に添加して、細胞を1度洗浄し、DCFシグナルを読む前に読んだことを除いて、同様に実施した。
【0048】
酸化ストレス分析
簡単な酸化ストレス分析を使用して、NRF2−ARE誘導薬剤とのあらかじめ調整が、その後の酸化ストレス障害(血清回収)に対して予防することができるかを決定した。NSC34、C6および1321N1細胞を、96穴組織培養プレートにて播種し、30%の密集を達成した。それらは薬物と3重の穴で、9点滴定(100□M〜10nM)として24時間インキュベートした。細胞密度を観測して、生じた十分な毒性または成長阻害がないことを確認した。その後培地を、無血清のフェノールを含有しない培地と5時間で置換した。ジクロロフルオレセイン(DCF)およびエチジウムホモダイマー(EthD1)(Molecular Probes, Paisley, UK)を、最終濃度5μMおよび0.3μMまで細胞に添加し、DCFおよびEthD1蛍光をEx485nm/Em530nm、Ex530/Em645nmのそれぞれで、1時間後に読み込んだ。その後、細胞生存率分析を、保護が%減少としてDCFシグナルにて測定されるように細胞に実行し、従ってデータ点は細胞数の減少を測定した場合に除外した。
【0049】
細胞生存率分析
使用した方法は、基本的に上記従来技術に記載されるようなものである。簡潔には、メチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)は、細胞および空白の穴に最終濃度0.5mg/mLまで添加し、37℃にて1〜3時間、使用した細胞株に依存してインキュベートした。細胞および反応産物を、20%SDS/50%DMFにて1時間で、Ex595nmで吸光度を読み込む前に室温にて振盪して可溶化した。
【0050】
NSC34細胞を発現するG93A SOD1(ALS細胞モデル)における基底酸化ストレス分析
NSC34細胞を発現するG93A SOD1を、10%FBSを含むフェノールレッドを含有しないDMEMにて30〜40%密集まで、96穴組織培養プレートを播種した。その後それらを、0.01,0.1,1,10μMの薬物または賦形剤(0.1%DMSO)と3重の穴にて24時間インキュベートした。細胞質反応性酸素の種類のレベルを、DCFおよびEthD1を使用して酸化ストレス分析のように測定した。
【0051】
一次マウス運動ニューロン/星状細胞の共培養
マウス膠培養を、1〜2日齢の子犬のC57BI/6皮質から確立した。皮質を解剖し、細胞をDNaseI、コラゲナーゼおよびトリプシン中にてインキュベートした後、粉砕によって分離した。インキュベーションおよび粉砕の工程を、細胞の完全な分離を確実にするため繰り返した。細胞を、10%FBS、100U/mLペニシリン、10μg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM中に、45,000細胞/cm2にて播種した。24時間後、培養をPBSで洗浄し、2〜3週間、密集になるまで成長させ、1週間に一度培地を変えた。密集膠の培養を、振盪および軽度のトリプシン処理によって星状細胞で濃縮した。濃縮された星状細胞を密集するまで成長させ、ポリ−D−オルニチン(1.5 mg/mL; Sigma, Poole, UK)と40,000細胞/cm2まで被覆したカバーグラス上に播種し、1週間成長させた。
【0052】
一次脊髄運動神経細胞(MN)を、E13.5野生型C7BI/6マウス胚から培養した。簡潔には、脊髄調製を、トリプシンおよびDNaseIにてインキュベーションした後、粉砕によって分離した。その後MNを、密度勾配遠心分離によって分離した。共培養を、1%B27、2%ウマ血清、50mg/mLストレプトマイシン、50U/mLペニシリン、0.5mML−グルタミン、25mMグルタミン酸(全てInvitrogen, Paisley, UKからのものである)、1ng/mLBDNF、10ng/mLCNTF、および100pg/mLGDNF(全てR&D Systems, Abingdon, UKからのものである)で補足したNeurobasai培地中に、8000/cm2でMnを星状細胞に配置することによって確立した。
【0053】
共培養を2週間で確立したとき、神経保護分析を、6時間の10μMメナジオン酸化ストレスまたはグルタミン酸塩で処理した後、薬物または賦形剤に24時間さらすことによって実行した。ストレス処理後、カバーグラスを3回洗浄し、運動ニューロンをSMI32(Covance)で選択的に染色するため固定し、透過させた。
【0054】
全MNを、カバーグラスあたり1.5cm2面積において蛍光顕微鏡検査によって計数した。最低3回の繰り返し3回を1条件あたりに実行した。賦形剤および薬剤の処理の両方を、ストレス処理前および後に計数し、結果を二元配置分散分析によるボンフェローニのポスト試験を使用して統計学的に分析した。
【0055】
総グルタチオン分析
一次星状細胞を密集するまで24穴プレート内にて成長させ、その後10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むフェノールレッドを含有しないDMEMにおいて薬物(または0.05%DMSO賦形剤)と24時間処理した。調整した培地を収集し、その後星状細胞を、250μL/穴のスルホサリチル酸(SSA、5%(w/v))の添加前に氷冷PBSにて洗浄した。プレートを2回、−80℃にて凍結し、37℃にて解凍し、その後4℃にて15分間インキュベートした。上清を取り除き、13,000×gにて5分間遠心分離機で分離した。調整した培地サンプルを80℃にて15分間インキュベートし、その後13,000×gにて5分間遠心分離機で分離した。試料を直ちに使用するか、または−80℃で保存のいずれかとした。反応混合物(150μL/穴;100mMリン酸カリウム緩衝剤、pH 7.0、1mMEDTA、6単位/mLグルタチオン還元酵素、1.5mg/mL5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸))を、96穴プレート内の10μLのそれぞれの試料またはグルタチオン標準(0〜50μM還元グルタチオン)に添加し、NADPH溶液(0.16mg/mL)50μL/穴の添加前に、室温にて5分間インキュベートした。A412nmを毎分15分間測定し、総グルタチオン濃度(GSH+GSSG)を初期の量から算出した。試料を3回試験した。
【0056】
コンピュータ内分析
さらなるスクリーニングで薬物類似の分子を選択するために、Pipeline Pilot (SciTegic, London, UK)をコンピュータ内分析のために使用した。分子極性表面積(mPSA)を、SPECTRUM収集から全ての2000分子で、適当なCNS浸透{Ertl, 2000 #834}の粗分析の方法として算出し、Lipinskiのフィルターを、またどの分子が最も薬物類似であるかを決定するため適用した。フィルターは、cLogP<5、分子量<500、<5水素結合供与体(OH+NHカウント)および<10水素結合受容体(O+N原子)を有する化合物を選択する「ルールオブファイブ」を適応した。
【0057】
定量的RT−PCR
マルチプレックスPCRを使用して、標的遺伝子の発現レベルの変化を、アンドログラホリドおよびS(+)アポモルヒネとEC50およびEC90濃度にて、C6細胞のNRF2−AREレポータ分析において決定されるように処理した後、1321N1星状細胞の細胞株にて変化を検出した。GenomeLab(商標)GeXP Genetic Analysisシステム(Beckman Coulter)を使用して、9つの関連遺伝子(Hmoxi、FtM、Keapi、Gdc、Nfe2l2、Gsr、Nqo1、SqstmlおよびEphX1)および3つのハウスキーピング遺伝子(18s GAPDHおよびACTB)での多重化反応において、以下の表1に概説した次のプライマーを用いて遺伝子発現の変化を同定した。
【0058】
【表1】
【0059】
それらは、太字の隣接するイントロン配列であり、ゲノムバックグラウンドを防ぐものを示す。RT反応混合物を、96穴マイクロプレートに、以下の3μLDNase/RNaseを含有しないH2O、4μLのRT緩衝剤5×、2μLのRT Rev Primer Plex Reverse Transcriptase、5μLのKANr RNA、5μLの試料RNA(20ng/μL)を、20μLの総反応容量体積が得られるように調整した。その後試料を以下のようにインキュベートした;48℃で1分間、37℃で5分間、42℃で60分間、95℃で5分間、4℃で保持。PCR反応混合物を、以下の様に96穴試料マイクロプレート内で調整した;4.0μL PCR緩衝剤5×、4.0μL 25mMのMgCl2(Abgene)、2.0μLのPCR Fwd Primer Plex、0.7μのサーモスタートDNAポリメラーゼ、(ABgene AB−0908/A)、RT反応からの9.3μLのcDNA試料。PCRを、以下のように実行した;(1)95℃で10分、(2)94℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)70℃で1分、(5)工程2〜4をさらに34サイクル繰り返し、(6)4℃で保持。予備実験に基づいて、逆RTプライマー濃度を、全ての産物が単一の反応にて検出することを可能とするために最適化した。PCR反応産物をSLS(試料負荷溶液)中に希釈し、GeXP毛細血管電気泳動ユニットにて分離し、データをGeXPソフトウェアおよびMicrosoft Excelデータパッケージを使用して分析し、GAPDHおよびACTBに対する発現変化の倍率を得た。
【0060】
標準QPCR
QPCRを、刊行物Wood−Allumなど2005で前述したように、RNAが一次星状細胞または星状細胞の細胞株から、製造業者の説明書に従ってRNeayキット(Qiagen)を使用して分離した本質的な相違で実施した。cDNAを、製造業者の説明書に従ってオリゴdTに促進されるSuperscript II(Invitrogen)を使用し、調製した。定量的RT−PCR(Q−PCR)をcDNA25ng、1×SYBR Green PCR Master Mix(Stratagene)使用して実行し、前方および後方プライマー(表1)の濃度を、総体積20μLおよびそれぞれのサンプルで3回ずつ最適化した。95℃10分間の変性後、産物を95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクルによって、MX3000P Real Time PCR System (Stratagene)にて増幅した。単一の産物の増幅を確認するため、解離曲線をそれぞれの増幅に対して産生した。サンプル中の関連の遺伝子の相対的なレベルを、それぞれのサンプル中のgapdhのものの発現レベルを基準化し、ddCt算出を用いて(SYBR Green PCR mixおよびRT−PCRプロトコル, Applied Biosystems)測定した。関連の遺伝子の全体的総体濃度を、賦形剤中の細胞成長に対するデータを基準化することによって薬物治療後に算出した。
【0061】
統計分析
スペクトルライブラリスクリーンに関して、32穴を有するそれぞれ384個の穴プレートを、賦形剤のみでインキュベートした(培地中0.1%)。該穴の平均蛍光読み込みおよび標準偏差を、1つのプレートずつで算出した。ヒットを、賦形剤の平均+3つの標準偏差を超えるGFP蛍光値を有するものとして分類した。毒性を同様に規定した(即ち、賦形剤の平均+3つの標準偏差を超えるEthD1蛍光値)。
【実施例】
【0062】
実施例1
4×ARE−TK−GFPおよびTK−GFPリポータ細胞株を、既知のARE誘導物質であるtert−ブチルヒドロキノン(tBHQ)およびフラボノイドEGCGに対するそれら反応を範囲内の濃度で試験した。この化合物を、無血清培地中の96穴プレートの密集細胞へ24時間三回適用し、GFPの誘導を蛍光プレート読み込みによって測定した。両方の化合物は、制限された領域において、100μMでピークに達するEGCGおよび10μMでピークに達するtBHQ(図2a)で、GFP発現を誘導した。前記ピークの発現より高い濃度にて、両方の化合物は、毒性のサインを直接的な観察(細胞の欠如)または上昇したエチジウムホモダイマー蛍光によって示した。蛍光における上昇を、コントロールTK−GFP細胞株においては全く観測しなかった(図示せず)。
【0063】
実施例2
2000分子のスペクトル収集物をスクリーニングするため、レポータ分析を384穴プレートの形態に縮小した。ライブラリスクリーニングの分析の適合性を評価するため、Z’スコア算出を、賦形剤(0.1%DMSO)および10μMのエブセレンを陽性のコントロールとして代替の穴を処理することによって実行した(方法における算出を参考とする)。エブセレンは、強力な濃度反応曲線を該分析にて与えることを示した。算出したZ’スコアは、ライブラリスクリーニングで許容できる0.51(図2b)であった。さらにシグナルのノイズに対する比率(S/N)およびシグナルのバックグラウンドに対する比率(S/B)は、それぞれ12.8および2.9にて許容できた。前記ライブラリをその後、10μMの化合物あたり単一の濃度でスクリーニングした。薬物ライブラリの希釈および播種を、Q−BOT液体取扱いシステムによって実行し、4×ARE−TK−GFPリポータ細胞株およびTK−GFPコントロール細胞株の両方を、化合物に対するそれらの反応で試験した。単一の384穴プレートからのARE−TK−GFP細胞株に関するデータセットの例を、図3に示す。ヒットを、バックグラウンドレベルを超える3つの標準偏差より多いデータ点として同定して、賦形剤(0.1%DMSO)のみで処理した24穴の平均値であった。ヒット化合物を、それらが反応を転写の非特異的活性化または化合物の自動蛍光のいずれかにより、コントロール細胞株にて生成した場合に認識して確認した。さらに、エチジウムホモダイマー蛍光を向上させることによる毒性のサインを示すあらゆる化合物を排除した。ライブラリスクリーンを4×ARE−TK−CHO細胞株のみで繰り返し、両方のスクリーンからヒットとして現れた化合物を、更なる評価を進めた。全46の化合物をこの基準で同定した。次の段階は、化合物の濃度がこれら46のヒット化合物に対して50%の反応(EC50)を生じるために必要とされるかを測定することである。それぞれの化合物を、2つの穴における7点の濃度反応曲線を対象とした。多くの化合物は、標準のARE誘導物質、例えばtBHQおよびEGCG1に見られるものと同様の円錐形用量反応曲線を、高い濃度で毒性により示した。図4aは、全46個の用量反応曲線を第一分析において示す。大多数の化合物は、比較的高い濃度にて毒性を有する円錐形用量反応曲線を示し、また多くはARE誘導の非常に制限された領域を有する。図4bは、レポータ発現の向上を幅広い濃度範囲(>1log単位)、または高い濃度にて最小の毒性を有する一組の化合物を示す。全46のヒットに関する濃度反応曲線を繰り返し、GFP蛍光の平均EC50および平均最大倍率誘導を測定した。毒性反応の原因となる最低濃度をまた留意して、データをこれらの化合物の既知の生物活性の簡単な説明と共に、表2(本明細書の下記に示すように)に要約した。毒性を観測した最も低い服用量をまた表に記載する。化合物を、レポータ分析における活性に従ってランク付けした。最も有力なARE誘導物質は、天然産物のアンドログラホリドで、サブマイクロモルEC50(740nM)を有する唯一の化合物であり、該化合物は天然産物アンドログラフィスパニクラータから由来するものであり、漢方薬およびインドの薬草剤において幅広く使用される。26個の他の天然産物のうち、さらに2つをヒトに使用した:セクリニン、GABAA受容体アンタゴニストおよびCNS刺激薬;およびイソリキリチゲニン、アルドース還元酵素抑制剤であるカンゾウの根の成分。残りの19個の産物は、合成の小分子または誘導体であり、これらのうちの全6つの分子は承認された薬物である。2つのアルキル化抗悪性腫瘍薬(ピポブロマンおよびメクロレタミン)、ドーパミン作動薬(アポモルヒネ塩酸塩)、局所皮膚漂白剤(ヒドロキノン)、ループ利尿薬(エタクリン酸)および血管拡張薬(イソクスプリン塩酸塩)。合成小分子のうちの1つが、第3相臨床試験を脳卒中にて達成した(エブセレン)。
【0064】
実施例3
運動ニューロンおよび星状細胞における血清回収に誘導される酸化ストレスに応じてヒット化合物を誘導するNrf2−AREの効果を調査した。この経路の活性化は細胞種に応じて異なることができるため、その後これらのヒット化合物が運動ニューロン細胞株(NSC34細胞)、ラット(C6)およびヒト(1321N1)星状細胞の細胞株を、血清回収による酸化ストレス誘導からどの程度保護することができるかのスクリーンを行った。細胞株を、ヒット化合物である範囲の濃度にて24時間前処理し、NRF2−ARE経路を活性化した。その後、化合物を取り除き、細胞は6時間血清回収を受けて酸化ストレスを誘導した。酸化ストレスの程度をジクロロフルオレセイン(DCF)蛍光を使用して測定し、保護の程度を、DCF蛍光におけるパーセント減少としてそれぞれ3つの細胞株に対して表3に示した。曲線を適合することが可能である場合、半数最大効果濃度(IC50)を生じるのに必要とされる濃度をまた提示した。一般的に、ヒット化合物は、星状細胞の細胞株にて保護効果を示す可能性が運動ニューロン細胞株より高かった。表3(本明細書の下記に示す)は、運動ニューロン細胞株における活性化によってランクを付けした全ての化合物に関する分析結果を示す。9/46の化合物のみが、血清回収により誘導される酸化ストレスDCFシグナルをNSC34細胞にて減少し、18/46の化合物が該分析において効果を全く有さず、残りの17個の化合物は該分析において酸化促進剤であった。即ち、血清回収が原因である酸化ストレスの減少に対して、それらはそれに寄与し、DCF蛍光を上昇させた。対照的に、1つの化合物のみが1321N1星状細胞の細胞株にて酸化促進剤であり、29/46はDCFシグナルを30%以上減少させた。C6細胞株に関しては、化合物は酸化促進剤ではなく、32/46の化合物は、DCFシグナルを30%以上減少させた。
【0065】
実施例4
得た生物学的結果を合理化するため、表1で報告した化合物に関する一般的なファーマコフォアを、MOE(Molecular Operating Environment) [Molecular Operating Environment (MOE 2007.09) Chemical Computing Group, Inc. Montreal, Quebec, Canada http://www.chemcomp.com]において実行したPharmacophore Elucidatorを使用して研究した。CHO4×ARE−TK細胞株において、10μM未満のEC50を有する24個の分子を、NRF2−ARE経路の誘導で考慮すると(表2)、配置に応じて、それら22は2つの共通特徴を示した:芳香族/疎水性部位および水素結合受容体部位(図5a)。EGCGはまたこれらの構造的特徴を有し、算出したファーマコフォアに明らかに適合することを留意すべきである。さらに1321N1星状細胞の酸化ストレス分析の結果(表3)を、3μMの活性閾値でファーマコフォアを構成するために使用したとき、1つのさらなる一般的な芳香族/疎水性の特徴を同定した(図5b)。これはKEAP1へメルカプト基の求電子攻撃によって作用することができる既知のNrf2活性剤である細胞質Nrf2調節因子と一致する。これら事前のモデリングデータを使用して、Nrf2−ARE経路の潜在的な活性剤の構造の必要条件を理解することができ、このクラスの化合物の新規構造のデザインとして考慮することができた。
【0066】
実施例5
化合物の物理学的/化学的な性質を評価した。関連した細胞型における機能効果で化合物をスクリーニングすることに加えて、また化学的/物理学的性質を算出する化学情報プログラムであるPipeline Pilotを、表3に示すように使用した。ALogP(オクタノール/水の分割の対数)および分子極性表面積(mPSA)は、化合物の親油性の相違の測定であり、可能性があるCNS浸透度の初期の予測を可能とする。CNS浸透度に関しては、AlogPが1を超えるが4未満、mPSAが100未満(理想的には80)は、BBBに通過する受動拡散のために最適である。さらにLipinskiのフィルターを使用して、非薬物類似分子を同定し、4つ(スィーテノリド三酢酸、エンデカフィリンX、ロバル酸およびオイホールアセタート)を排除した。
【0067】
不要な分子のみを濾過して取り除くため、NSC34酸化ストレス分析(表3)にて保護または中性の効果を有するものを選択し、既知の細胞分子を除外した(ピポブロマン、クロルデン、アラクロール、プロパクロル)。AlogPおよびmPSAの基準を残りの22の分子に適応すると、さらなる調査で17分子が残存した。前記分子を表3において太字で強調し、「最良のヒット」の分子として称する。さらに毒性を観測した最小の投薬量を示した。NA、適用できない(不十分なデータ、反応濃度なしまたは阻害なし)。表3で化合物を、NSC34細胞株における保護性能によって分類する。ARE誘導物質は、星状細胞の細胞株(1321N1およびC6)で酸化ストレスからの保護に、NSC34細胞と比較してはるかに効果的である。
【0068】
実施例6
神経細胞および星状細胞の細胞株における最もヒットの化合物のNRF2−ARE誘導活性を調査した。星状細胞および運動ニューロンの細胞株における保護における相違が、これら細胞種においてNRF2−ARE経路の活性化の程度での相違によるものであるかを決定するため、NRF2−AREレポータコンストラクトを、星状細胞(C6)および運動ニューロン(NSC34)細胞株にて安定して発現させた。その後17個の最良のヒットの分子を、それぞれの細胞株においてスクリーンした。またアポモルヒネのS[+]鏡像異性体をスクリーンし、それがR[−]またはS[+]鏡像異性体のいずれかとして存在することができるためである。R[+]鏡像異性体が、ドーパミン作動薬活性を有する一方、S[+]鏡像異性体は前記活性を欠如し、そのためそれがNRF2−ARE誘導活性を維持するかどうかを決定する必要性があった。C6レポータ細胞株での結果を図6に示した。一般的にC6細胞におけるNRF2−ARE経路の活性化は、CHO細胞株において見られるものと同様である。NSC34レポータ細胞株は、星状細胞の細胞株対初期に見られたNSC34細胞において酸化ストレスに対してより大きな保護のために、根本的な原因を示唆する同じセットの濃度反応曲線を有するあらゆる活性化が、星状細胞の細胞株におけるNRF2−ARE経路のより強い活性化による場合には、最小限を示した。さらに、アポモルヒネのS[+]鏡像異性体は、前記活性がドーパミン受容体作動薬に無関係なことを示すR[+]鏡像異性体と比較して、NRF2−ARE活性化に関して同様に有力であり、S[+]鏡像異性体はドーパミン作動薬でないためである。
【0069】
運動ニューロン疾患における臨床試験のために、急速な発展する可能性を有する分子を同定することが目的であった。これに関する重要な基準の一つは、分子がMNDのためでないがヒトにおける過去の使用を有することである。17個の最もヒットの分子の中、2つはヒトにおいて天然産物(セクリニン、アンドログラホリド)として過去の使用を有し、1つは症状の発現からパーキンソン病における「オフ」の事例の急性救済で使用される現在認可の薬物(R鏡像異性体としてのアポモルヒネ塩酸塩)である。さらにヒドロキノンは、局所塗布皮膚漂白剤としてではあるが、過去の使用がある。これら薬剤の中で、アンドログラホリドおよびアポモルヒネのS[+]鏡像異性体は、セクリニンがマウスおよびヒトにおいて痙攣薬特性を頻繁に記載するように、更なる評価で選択され、アポモルヒネのS[+]鏡像異性体におけるドーパミン作動薬の欠如を、明確な利点と考える。
【0070】
実施例7
C6細胞および一次マウス星状細胞におけるアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネによる、ARE標的遺伝子発現の誘導を調査した。これらの好ましいまたは「主要な」分子が、星状細胞における標的遺伝子発現を導くNRF2−ARE経路の活性化を可能とすることを確認するために、マルチプレックスRT−PCR分析をGenomeLab(商標)GeXP遺伝子分析システムに9つの関連遺伝子で開発した。C6細胞を、24時間アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネで、C6−4×ARE−TKレポータ細胞において測定したようにEC50およびEC80濃度にて処理した。2つの遺伝子Haemオキシゲナーゼ1およびNQO1のみが、遺伝子発現において、統計学的に有意な変化を示し、標準の定量RT−PCRによって確認した(図7Aおよび7B)。
【0071】
実施例8
主なNRF2誘導分子が、標的遺伝子の発現を一次マウス運動ニューロンにおいて上昇することが可能であるため、星状細胞フィーダーレイヤーに一次マウス運動ニューロン(MN)からなる共培養を、[S+]アポモルヒネのアンドログラホリドと前処理した後、酸化性外傷にさらした(図8)。その後共培養を、6時間の10μMメナジオンで与えて、酸化ストレスを誘導し、運動ニューロンを染色および計数した。DMSOコントロール細胞において、運動ニューロン数における約25%の減少を、いずれかの薬物で処理した穴において見られなかったことで観測した。これらの結果は、NRF2誘導物質が、一次マウス星上細胞/MNの共培養にて酸化ストレスから運動ニューロン(MN)を保護することを示す。
【0072】
また一次マウス星状細胞において同じ条件下で、NQO1およびHCMの遺伝子の標準定量RT−PCRは、有意な上昇を遺伝子発現において明らかにした(図7Cおよび7D)。遺伝子発現における変化が、タンパク質の発現で付随する増加を導くことを確認するために、一次マウス星状細胞を、服用量依存的な発現向上をDMSO処理した細胞において見られるものにわたって確認する免疫染色(図9)によって、HO−1の向上したレベルで評価した。またこの向上した抗酸化性能の機能的効果を、総グルタチオンレベルの同じ条件下における、一次星状細胞そのものと処理した星状細胞から収集した培地との両方において観測することによって見られた(図10)。これはグルタチオンレベルが、細胞そのものおよび培地において向上したことを示した−Nrf2に反応性の星状細胞が、隣接したAREに反応性ではないMNを酸化的攻撃から保護することが可能である1つの機構を提供する。
【0073】
実施例9
得られた生物学的結果を合理化にする試みから、一般的なファルマコフォアを表2に報告した化合物に対して、MOE(Molecular Operating Environment)[Molecular Operating Environment (MOE 2007.09) Chemical Computing Group, Inc. Montreal, Quebec, Canada http://www.chemcomp.com]において実行したPharmacophore Elucidatoを使用して同定することを試みた。CHO ARE−TK細胞株におけるNRF2−ARE経路の誘導に関する10μM未満のEC50で24個の分子を考慮すると(表2)、配置に応じて、それら22は2つの共通の特徴を示した:芳香族/疎水性部位および水素結合受容体部位(図4a)。EGCGは、またこれら構造的特徴を有し、算出したファーマコフォアに明らかに適合することに留意すべきである。さらに、1321N1星状細胞の酸化ストレス分析の結果(表3)を、3μMの活性閾値を使用して、ファルマコフォアを構成するために使用したとき、1つの余分な共通の芳香族/疎水性特徴を同定した(図5b)。これはKEAP1にメルカプト基の求核攻撃によって作用することができる既知のNRF2活性剤である、細胞質NRF2調節因子と一致する。これら事前のモデリングデータを使用して、NRF2−ARE経路の潜在的な活性剤の構造的な必要条件の理解することができ、このクラスの化合物で、新規構造のデザインで考慮することができる。
【0074】
実施例10
従来の研究が、突然変異体SODを発現する運動ニューロン細胞株、および家族性ヒトSOD1症例からの星状細胞における事後の材料において、弱いNrf2反応を示したため、主な誘導物質が依然としてG93A突然変異体SOD1を発現する星状細胞にてNrf2を活性化することができるかを調査した。Nrf2調節の遺伝子であるNAD(P)H:キニーネ酸化還元酵素(NQO1)およびヘムオキシゲナーゼ1(HOX1)が、G93A突然変異体SOD1トランスジェニックマウスからの、一次マウス星状細胞において誘導することができるかどうかを最初に決定した。定量的RT−PCRは、NQO1およびHO1に関する転写因子において、アンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネとそれらのEC90濃度で24時間の前処理後に有意な上昇を示した(図11)。
【0075】
実施例11
図12は、[S+]アポモルヒネの生体内における薬物動態学および薬力学を、雄C57BI/マウスにて示す。化合物の[S+]アポモルヒネレベルの、単一の静脈内への投薬を、血漿、脳および脳髄液(図12Aおよび12B)において検出した後、ならびに皮下の投薬後、QRT−PCRによって測定したHO−1およびNQO−1転写酵素の投与後24時間で、著しい誘導が存在した(図12C)。従って、[S+]アポモルヒネは、抗酸化酵素の発現における転写活性化にわたって、長期に渡る上昇を導くことができる。
【0076】
これらのデータは、いくつかの化合物を生体外におけるNF2−ARE経路の活性因子であることが同定し、それらがまた生体内にて前記経路を活性化することができることを示す。
【表2】
【表3−1】
【表3−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動ニューロン疾患を治療する治療薬において、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である治療薬。
【請求項2】
運動ニューロン疾患の治療のために、薬剤の製造でアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路活性剤の使用。
【請求項3】
酸化ストレスの結果として生じる神経変性の状態を治療する治療薬において、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である治療薬。
【請求項4】
酸化ストレスに媒介されることが知られる神経変性の状態が、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的方法のための臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化ならびに放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される、請求項3に記載の治療薬。
【請求項5】
運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢黄斑変性症、臓器の移植/外科的方法のための保護、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される疾患または状態である、酸化ストレスの結果として生じる疾患または状態の治療のための、アンドログラホリドの使用。
【請求項6】
付加的薬剤成分、賦形剤希釈剤またはキャリアをさらに含有する、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の治療薬、または請求項2または5に記載の使用。
【請求項7】
非経口、静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下の投与、または標的臓器、組織内への注射もしくは注入により直接的な送達のために処方した、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の治療薬、または請求項2または5に記載の使用。
【請求項1】
運動ニューロン疾患を治療する治療薬において、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である治療薬。
【請求項2】
運動ニューロン疾患の治療のために、薬剤の製造でアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路活性剤の使用。
【請求項3】
酸化ストレスの結果として生じる神経変性の状態を治療する治療薬において、治療薬はアンドログラホリドおよびS[+]アポモルヒネを含有する群から選択されるNrf2−ARE経路の活性剤である治療薬。
【請求項4】
酸化ストレスに媒介されることが知られる神経変性の状態が、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、加齢黄斑変性症、移植/外科的方法のための臓器の保持、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化ならびに放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される、請求項3に記載の治療薬。
【請求項5】
運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化(PLS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢黄斑変性症、臓器の移植/外科的方法のための保護、細胞培養の安定化、発光性酸化ストレス、皮膚老化および放射線障害性細胞損害の治療を含有する群から選択される疾患または状態である、酸化ストレスの結果として生じる疾患または状態の治療のための、アンドログラホリドの使用。
【請求項6】
付加的薬剤成分、賦形剤希釈剤またはキャリアをさらに含有する、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の治療薬、または請求項2または5に記載の使用。
【請求項7】
非経口、静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下の投与、または標的臓器、組織内への注射もしくは注入により直接的な送達のために処方した、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の治療薬、または請求項2または5に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11a】
【図11b】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11a】
【図11b】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【公表番号】特表2012−506410(P2012−506410A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532723(P2011−532723)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051432
【国際公開番号】WO2010/046710
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503420062)ユニバーシティ オブ シェフィールド (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SHEFFIELD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051432
【国際公開番号】WO2010/046710
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503420062)ユニバーシティ オブ シェフィールド (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SHEFFIELD
【Fターム(参考)】
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