説明

移動体位置検出装置

【課題】コンピュータに依存することなく、装置の故障を検出すること。
【解決手段】円筒状の磁石42が固定され傾倒可能に配設された移動体(シフトレバー4)と、磁石42の周面に対向配置され移動体の直交する方向の傾倒量を検知するGMRセンサ71、72と、磁石42の周面に対向配置されGMRセンサ71、72のいずれの検知面とも平行でない位置に検知面が配置されたGMRセンサ73と、GMRセンサ71、72による検知値と、GMRセンサ73による検知値とに基づいて少なくともGMRセンサ71〜73のいずれか1つの故障を判定する判定回路(加算回路74、比較回路75)とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体位置検出装置に関し、特に、車両に搭載される変速機を変速操作するためのシフトレバーのように移動する移動体の位置検出に好適な移動体位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される変速機を変速操作するシフトレバーの先端にマグネットを備えると共に、このマグネットから発生する磁気を検出する複数の磁気センサを備え、それぞれの磁気センサが検出するマグネットからの磁気の強度に基づいてシフトレバーの位置を判定する移動体位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この移動体位置検出装置においては、シフトレバーの初期状態において、複数の磁気センサの全てが磁気を強く検出し、オン状態となるように配置されている。このため、初期状態において、いずれかの磁気センサがオフ状態となっている場合には、当該磁気センサが故障していると判定し、その旨を報知するように構成されている。
【特許文献1】特開2001−301483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の移動体位置検出装置において、複数の磁気センサはコンピュータに接続されており、このコンピュータにて、各磁気センサで検出した磁気の強度に対応する電気信号に基づいて磁気センサの故障の有無を判定する構成を採ることから、磁気センサの故障の判定処理をコンピュータに依存することとなり、装置が高価になるだけでなく汎用性に乏しいという問題がある。一方、近年、シフトレバー装置において、複数の車両等への汎用性を確保すべく、コンピュータに依存することなく故障を検出することが要請されている。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、コンピュータに依存することなく、装置の故障を検出することができる移動体位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動体位置検出装置は、円筒状の磁石が固定され傾倒可能に配設された移動体と、前記磁石の周面に対向配置され前記移動体の直交する方向の傾倒量を検知する第1及び第2のGMRセンサと、前記磁石の周面に対向配置され前記第1及び第2のGMRセンサのいずれの検知面とも平行でない位置に検知面が配置された第3のGMRセンサと、前記第1及び第2のGMRセンサによる検知値と、前記第3のGMRセンサによる検知値とに基づいて少なくとも前記第1から第3のGMRセンサのいずれか1つの故障を判定する判定回路とを具備することを特徴とする。
【0007】
上記移動体位置検出装置によれば、判定回路により、第1及び第2のGMRセンサによる検知値と、第3のGMRセンサによる検知値とに基づいて少なくとも第1から第3のGMRセンサのいずれか1つの故障が判定されるので、高価なコンピュータに依存することなく、装置の故障を検出することが可能となる。また、コンピュータを依存することなく、判定回路でGMRセンサの故障を判定できるので、装置自体の製造コストを低減すると共に、その汎用性を確保することが可能となる。
【0008】
また、上記移動体位置検出装置において、前記判定回路は、前記第1及び第2のGMRセンサによる検知値を加算する加算回路と、前記加算回路により加算された値に所定の係数を乗算した値と、前記第3のGMRセンサによる検知値とを比較する比較回路とを具備することが好ましい。この場合には、加算回路と比較回路という簡単な構成を有する回路でGMRセンサの故障を検出することが可能となる。
【0009】
特に、上記移動体位置検出装置において、前記第3のGMRセンサを、前記第1及び第2のGMRセンサから同一の角度だけ離間した位置に配置することが好ましい。この場合には、比較回路で加算回路により加算された値に係数を乗算する際の演算処理を簡素化することが可能となる。
【0010】
また、上記移動体位置検出装置において、前記判定回路は、前記比較回路における比較結果が一致しない場合に少なくとも前記第1から第3のGMRセンサのいずれか1つが故障していると判定することが好ましい。この場合には、比較回路における比較結果の不一致に応じて、簡単にGMRセンサの故障を判定することが可能となる。
【0011】
上記移動体位置検出装置において、例えば、前記移動体は、車両に搭載される変速機を変速操作するシフトレバーで構成される。この場合、高価なコンピュータに依存することなく、シフトレバーを備える装置の故障を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、判定回路により、第1及び第2のGMRセンサによる検知値と、第3のGMRセンサによる検知値とに基づいて少なくとも第1から第3のGMRセンサのいずれか1つの故障が判定されるので、高価なコンピュータに依存することなく、装置の故障を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る移動体位置検出装置を、車両等に搭載されるシフトレバー装置に適用する場合について説明するが、本発明に係る移動体位置検出装置が適用される対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、ゲーム機等の操作レバー等に適用することも可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る移動体位置検出装置が適用されるシフトレバー装置1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係るシフトレバー装置1の内部の構成を示す斜視図である。なお、図1及び図2においては、所謂ティップシフト機構を採用しているシフトレバー装置1について示しているが、これに限定されるものではない。また、図2においては、説明の便宜上、後述する駆動体の内側の一部を示すと共に、その一部を省略している。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るシフトレバー装置1は、車両内の運転席近傍に配設されるパネル部2と、パネル部2の下方に配置され、車両のフレーム等に固定される筐体3と、筐体3の内部からパネル部2に形成されたスリット2aを通って上方側に延出するパイプ状のシフトレバー4と、シフトレバー4の下端部に取り付けられ、筐体3の内部で揺動可能に配設される駆動体5と、筐体3の上面に取り付けられ、駆動体5の内部側に配設されるセンサユニット6(図1及び図2に不図示、図5参照)とを含んで構成されている。
【0016】
パネル部2は、例えば、樹脂材料で成形されており、その中央近傍にシフトレバー4が挿通されるスリット2aが形成されている。このスリット2aは、予め設定されたシフトレンジにシフトレバー4を配置すると共に、運転者の意図しないシフトレバー4の移動を防止するように段階的に屈曲した形状を有している。このスリット2aに沿って変速操作される際、シフトレバー4は、車両の前後方向及び左右方向に移動する。
【0017】
筐体3は、例えば、金属材料で成形されており、固定面31と、この固定面31から上方側に垂直に立設された側面32a、32bと、この側面32a、32bの中央近傍で互いを連結するように設けられた連結面33とを有している。固定面31は、車両のフレーム等の平面に固定される部分である。側面32a、32bの上端部には、パネル部2が固定される。側面32a、32bの所定位置には、後述する駆動体5の軸部51cが挿通される円形状の穴32cが形成されている。連結面33には、矩形の開口部33aが形成され、この開口部33aをシフトレバー4が挿通するように構成されている(図1に不図示、図2参照)。
【0018】
シフトレバー4には、パネル部2の上方側に配置される上端部に、運転者の操作を受け付けるシフトノブ41が取り付けられている。また、連結面33の下方側に配置される下端部近傍には、概して円筒状の磁石42が固定され、この磁石42の周囲を囲むように駆動体5が取り付けられている。シフトレバー4は、後述するように、駆動体5が有する軸部51c、軸部52aを支点として、車両の前後方向及び左右方向に傾倒可能に構成されている。
【0019】
駆動体5は、樹脂材料等で成形された第1駆動部材51と、同じく樹脂材料等で成形された第2駆動部材52とから構成されている(図2において、第2駆動部材52は省略、図3参照)。詳細について後述するように、第1駆動部材51と、第2駆動部材52とは、直交する方向に揺動可能に連結されている。このように連結される駆動体5の内部に、シフトレバー4の下端部近傍に固定された磁石42が収容される。
【0020】
ここで、本実施の形態に係るシフトレバー装置1が有する駆動体5の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係るシフトレバー装置1が有する駆動体5の構成を説明するための斜視図である。なお、図3においては、本実施の形態に係るシフトレバー装置1における連結面33の下方側部分について示している。以下においては、図3の上方側が車両の前方側であり、下方側が車両の後方側であるものとする。
【0021】
図3に示すように、第1駆動部材51は、中央に矩形状の開口部51aを有する枠体51bで構成され、その開口部51a内で第2駆動部材52が連結されている。枠体51bにおける対向する一対の面は、筐体3の側面32a、32bの内壁と対向配置され、その中央近傍に、側面32a、32bに形成された穴32cに挿通される軸部51cが形成されている。第1駆動部材51は、この軸部51cを支点として車両の前後方向に揺動可能に構成されている。また、枠体51bにおける側面32a、32bと直交する一対の面には、後述する第2駆動部材52の軸部52aが挿通される円形状の穴51dが形成されている。
【0022】
第2駆動部材52は、下方に開口した形状を有し、第1駆動部材51の開口部51a内に配置されている。第2駆動部材52における側面32a、32bと直交する一対の面には、第1駆動部材51の穴51dに挿通される軸部52aが形成されている。第2駆動部材52は、この軸部52aを支点として車両の左右方向に揺動可能に構成されている。また、第2駆動部材52の上面の中央には、シフトレバー4が挿通される穴52bが形成されている。
【0023】
このように第2駆動部材52が第1駆動部材51に連結され、駆動体5は、シフトレバー4に対する変速操作に応じて車両の前後方向及び左右方向に揺動可能に構成されている。例えば、シフトレバー4が車両の後方側であって、左方側に変速操作された場合には、図4に示すように、第1駆動部材51の車両の後方側部分(図4に示す下方側部分)が下がると共に、第2駆動部材52の車両の左方側部分(図4に示す左方側部分)が下がるように揺動することとなる。
【0024】
このように配設される駆動体5の下方側にセンサユニット6が配設されている。図5は、本実施の形態に係るシフトレバー装置1が有するセンサユニット6の構成を説明するための斜視図である。図5に示すように、センサユニット6は、固定面31の上面であって、側面32aと側面32bとの間に配設されている。センサユニット6は、矩形状を有する土台61と、この土台61の四隅近傍から立設される支柱62a〜62dに固定される基板63とから構成されている。なお、基板63は、その上方側から支柱62a〜62dに対してネジにより固定されている。
【0025】
基板63には、円形状の開口部63aが形成されている。この開口部63aの近傍には、3つのGMRセンサ71〜73が固定されている。GMRセンサ71〜73は、下端部に設けられた端子部を基板63に形成された穴に差し込むと共に半田付けされることで基板63に対して固定されている。詳細について後述するように、GMRセンサ71は、シフトレバー4の変速操作に伴う磁石42における車両の前後方向の傾倒量を検知し、GMRセンサ72は、シフトレバー4の変速操作に伴う磁石42における車両の左右方向の傾倒量を検知するためのものである。GMRセンサ73は、GMRセンサ71〜73の故障を検知するためのものである。なお、GMRセンサ71〜73は、それぞれ第1から第3のGMRセンサを構成する。
【0026】
図6は、本実施の形態に係るシフトレバー装置1におけるセンサユニット6と、磁石42との関係を説明するための斜視図である。なお、図6においては、第1駆動部材51の上端部近傍の面における断面を示している。図6に示すように、シフトレバー4の下端部近傍に固定される磁石42は、基板63の開口部63aに収容される。なお、基板63の開口部63aは、磁石42の傾倒を許容するように、磁石42の周面の径よりも大きい径に設定されている。
【0027】
ここで、基板63の開口部63aに収容される磁石42の構成について説明する。上述したように、磁石42は、円筒形状を有しており、その中央部を貫通するようにシフトレバー4が固定されている。この磁石42においては、上方側がN極に着磁される一方、下方側がS極に着磁されており、図6における矢印で示すように、概して磁石42の上端部から下端部に向かう磁束が発生するように構成されている。
【0028】
このように配置される磁石42に対して、GMRセンサ71〜73は、検知面を磁石42の周面に対向させた状態で基板63に固定されている。このように検知面を磁石42の周面に対向させた状態で基板63に固定されているため、磁石42から発生する磁束は、これらのGMRセンサ71〜73の検知面を上方側から下方側に通過するものとなっている。
【0029】
ここで、センサユニット6におけるGMRセンサ71〜73の位置及び機能について説明する。図7は、図6に示すシフトレバー装置1の上面図である。なお、図7においては、説明の便宜上、基板63を省略すると共に、基板63上に実装される加算回路74及び比較回路75について示している。
【0030】
図7に示すように、GMRセンサ71、72は、初期状態(シフトレバー4の傾倒が行われていない状態)におけるシフトレバー4の軸中心を基準として90度離間した位置に配置され、磁石42(シフトレバー4)の直交する方向の傾倒量を検知する。具体的には、図7に示すように、GMRセンサ71が車両の前後方向であるX方向の傾倒量を検知し、GMRセンサ72が車両の左右方向であるY方向の傾倒量を検知する。また、GMRセンサ73は、GMRセンサ71、72から同一の角度(すなわち、135度)だけ離間した位置に配置され、磁石42(シフトレバー4)におけるX方向の傾倒量と、Y方向の傾倒量とを足し合わせた傾倒量(以下、適宜「X+Y方向の傾倒量」という)を検知する。
【0031】
本実施の形態に係るシフトレバー装置1においては、シフトレバー4に固定される磁石42からの磁束をGMRセンサ71〜73に作用させる。そして、GMRセンサ71〜73の電気抵抗値の変化を、磁石42からの磁束の向きにより生じさせ、当該GMRセンサ71〜73の出力信号(電圧信号)から磁石42の傾倒量を検知するものとなっている。
【0032】
ここで、磁石42からの磁束に感応して出力信号を出力するGMRセンサ71〜73は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層及びフリー層を基板(基板63と異なる)上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magnet Resistance)素子を備えたセンサとして構成されている。
【0033】
なお、GMRセンサ71〜73が備えるGMR素子が巨大磁気抵抗効果(GMR)を発揮するためには、例えば、反強磁性層がα−Fe層、ピン層がNiFe層、中間層がCu層、フリー層がNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、GMRセンサ71〜73が備えるGMR素子は、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0034】
また、基板63には、図7に示すように、判定回路を構成する加算回路74及び比較回路75が実装されている。加算回路74は、GMRセンサ71の出力信号の電圧値と、GMRセンサ72の出力信号の電圧値とを加算するものである。比較回路75は、加算回路74により加算された電圧値と、GMRセンサ73からの出力信号の電圧値とを比較するものである。
【0035】
なお、この場合において、比較回路75は、加算回路74で加算された電圧値に予め定められた係数を乗算した電圧値を、GMRセンサ73からの出力信号の電圧値との比較対象とする。ここで、比較回路75で用いられる係数は、GMRセンサ71、72に対するGMRセンサ73の位置に応じて変更される。図7に示すようにGMRセンサ71、72に対してGMRセンサ73の位置が設定されている場合、係数は、√2/2とされる。
【0036】
比較回路75における比較結果において、加算回路74により加算された電圧値(実際には上記係数を乗算した値)と、GMRセンサ73からの出力信号の電圧値とが一致しない場合には、少なくともGMRセンサ71〜73のいずれか1つが故障している旨を示す信号(例えば、オン信号)が出力される。一方、加算回路74により加算された電圧値(実際には上記係数を乗算した値)と、GMRセンサ73からの出力信号の電圧値とが一致する場合には、GMRセンサ71〜73が全て正常に動作していることを示す信号(例えば、オフ信号)が出力される。
【0037】
このように、比較回路75における比較結果が一致しない場合に少なくともGMRセンサ71〜73のいずれか1つが故障していると判定することから、比較回路75における比較結果の不一致に応じて、簡単にGMRセンサ71〜73の故障を判定することが可能となる。車両の制御部においては、このような出力信号に応じてGMRセンサ71〜73の状態(故障状態、正常状態)を判定することができ、例えば、その旨を運転者に報知することができる。
【0038】
ここで、本実施の形態に係るシフトレバー装置1において、シフトレバー4に対する変速操作に応じて磁石42が傾倒した場合における比較回路75の比較結果の具体例について説明する。図8は、本実施の形態に係るシフトレバー装置1の磁石42の傾倒を説明するための模式図である。図8においては、磁石42が初期状態から車両の右前方側45度の方向に傾倒した場合について示している。
【0039】
なお、ここでは、磁石42がX方向、Y方向にそれぞれ±30度の範囲内で傾倒可能に構成されているものとし、図8においては、車両の前方側、右方側にそれぞれ5度だけ傾倒した場合について示している。また、例えば、磁石42がX方向に30度傾倒した場合には、GMRセンサ71から+120mVの電圧値が出力されるものとし、磁石42がX方向に5度だけ傾倒した場合には+20mVの電圧値が出力されるものとする。なお、GMRセンサ72、73についても磁石42の傾倒角度に応じて同様の電圧値が出力されるものとする。
【0040】
図8に示す場合においては、GMRセンサ71〜73が正常に動作している場合には、GMRセンサ71から+20mVの電圧値が出力され、GMRセンサ72から+20mVの電圧値が出力されることとなる。また、GMRセンサ73からは、磁石42の傾倒量がX方向、Y方向よりも大きくなるため([√2/2]×2倍)、約+28mVの電圧値が出力されることとなる。GMRセンサ71、72から出力された電圧値は、加算回路74により加算される。これにより、加算回路74により加算された電圧値として40mVが得られる。
【0041】
比較回路75は、加算回路74により加算された電圧値である40mVに係数を乗算した電圧値を求めると共に、その電圧値とGMRセンサ73から出力された電圧値とを比較する。具体的には、加算回路74により加算された電圧値である40mVに、上述した係数√2/2を乗算して得られる、約28mVの電圧値と、GMRセンサ73から出力される約28mVの電圧値とを比較する。これらの電圧値が一致しているので、比較回路75からは、GMRセンサ71〜73が全て正常に動作していることを示す信号が出力される。
【0042】
一方、比較回路75による比較の結果、両者の電圧値が一致しない場合には、GMRセンサ71〜73のいずれかが故障している旨を示す信号が出力される。例えば、GMRセンサ71が故障しており、20mVよりも大きい電圧値、或いは、小さい電圧値が出力されるような場合には、比較回路75の比較結果が一致しないこととなり、GMRセンサ71〜73のいずれかが故障している旨を示す信号が出力されることとなる。
【0043】
このように本実施の形態に係るシフトレバー装置1においては、シフトレバー4に固定された磁石42の周面に対向配置され、シフトレバー4の直交する方向の傾倒量を検知するGMRセンサ71、72と、磁石42の周面に対向配置され、GMRセンサ71、72のいずれの検知面とも平行でない位置に検知面が配置されたGMRセンサ73とを備え、判定回路(加算回路74、比較回路75)により、GMRセンサ71、72による検知値と、GMRセンサ73による検知値とに基づいて少なくともGMRセンサ71〜73のいずれか1つの故障が判定されるので、高価なコンピュータに依存することなく、シフトレバー装置1の故障を検出することが可能となる。また、コンピュータを依存することなく、判定回路(加算回路74、比較回路75)でGMRセンサ71〜73の故障を判定できるので、シフトレバー装置1自体の製造コストを低減すると共に、その汎用性を確保することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態に係るシフトレバー装置1においては、上述した判定回路をGMRセンサ71、72による検知値を加算する加算回路74と、加算回路74により加算された値に所定の係数を乗算した値と、GMRセンサ73による検知値とを比較する比較回路75とで構成しているので、加算回路74と比較回路75という簡単な構成を有する回路でGMRセンサ71〜73の故障を検出することが可能となる。
【0045】
特に、本実施の形態に係るシフトレバー装置1においては、GMRセンサ73を、GMRセンサ71、72から同一の角度だけ離間した位置に配置しているので、比較回路75で、加算回路74により加算された電圧値に係数を乗算する際の演算処理を簡素化することが可能となる。例えば、GMRセンサ73が、GMRセンサ71、72から同一でない角度だけ離間している場合には、それぞれ異なる係数を乗算する演算処理が必要となり、処理が複雑化することとなる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態においては、GMRセンサ73を、GMRセンサ71、72から同一の角度だけ離間した位置に配置した場合について示しているが、GMRセンサ73の位置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。GMRセンサ71、72のいずれの検知面とも平行でない位置に検知面を配置させることを条件として、いかなる位置にGMRセンサ73を配置しても良い。なお、この場合には、比較回路75において、乗算する係数をGMRセンサ73と、GMRセンサ71、72との角度に応じて適宜変更する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る移動体位置検出装置が適用されるシフトレバー装置の外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るシフトレバー装置の内部の構成を示す斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るシフトレバー装置が有する駆動体の構成を説明するための斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係るシフトレバー装置が有する駆動体が揺動した場合の斜視図である。
【図5】上記実施の形態に係るシフトレバー装置が有するセンサユニットの構成を説明するための斜視図である。
【図6】上記実施の形態に係るシフトレバー装置におけるセンサユニットと、磁石との関係を説明するための斜視図である。
【図7】図6に示すシフトレバー装置の上面図である。
【図8】上記実施の形態に係るシフトレバー装置の磁石の傾倒を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 シフトレバー装置
2 パネル部
3 筐体
31 固定面
32a、b 側面
33 連結面
33a 開口部
4 シフトレバー
41 シフトノブ
42 磁石
5 駆動体
51 第1駆動部材
52 第2駆動部材
6 センサユニット
61 土台
62a〜d 支柱
63 基板
63a 開口部
71〜73 GMRセンサ
74 加算回路
75 比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の磁石が固定され傾倒可能に配設された移動体と、前記磁石の周面に対向配置され前記移動体の直交する方向の傾倒量を検知する第1及び第2のGMRセンサと、前記磁石の周面に対向配置され前記第1及び第2のGMRセンサのいずれの検知面とも平行でない位置に検知面が配置された第3のGMRセンサと、前記第1及び第2のGMRセンサによる検知値と、前記第3のGMRセンサによる検知値とに基づいて少なくとも前記第1から第3のGMRセンサのいずれか1つの故障を判定する判定回路とを具備することを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項2】
前記判定回路は、前記第1及び第2のGMRセンサによる検知値を加算する加算回路と、前記加算回路により加算された値に所定の係数を乗算した値と、前記第3のGMRセンサによる検知値とを比較する比較回路とを具備することを特徴とする請求項1記載の移動体位置検出装置。
【請求項3】
前記第3のGMRセンサは、前記第1及び第2のGMRセンサから同一の角度だけ離間した位置に配置されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の移動体位置検出装置。
【請求項4】
前記判定回路は、前記比較回路における比較結果が一致しない場合に少なくとも前記第1から第3のGMRセンサのいずれか1つが故障していると判定することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の移動体位置検出装置。
【請求項5】
前記移動体は、車両に搭載される変速機を変速操作するシフトレバーであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動体位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−115645(P2009−115645A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289553(P2007−289553)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】