説明

移動体用通信装置及び移動体用通信方法

【課題】誤った通信情報を検出し、通信システムの適正な作動を確保する移動体用通信装置及び移動体用通信方法を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、他の車両とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信装置であって、複数の他の車両から送信された送信信号が同時に受信されたか否かを判断し(S14)、複数の他の移動体から送信された送信信号が同時に受信された場合に送信信号の位置情報に基づいて複数の他の車両が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断し(S18)、複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいる場合少なくとも送信信号の位置情報の一部を誤情報として判定する(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の情報の通信を行う移動体用通信装置及び移動体用通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の情報の通信を行う移動体用通信に関するものとして、特開2001−45013号公報に記載されるように、キャリアセンスを行った後、通信チャネルがアイドル状態(空き状態)であった場合には自車両情報と自車両IDを送信し、通信チャネルがビジー状態であった場合には一定時間内に検出された他車両IDの数から通信を行う車両台数を推定し、その車両台数に基づいてキャリアセンスを行う時間間隔を設定するものが知られている。
【0003】
このような通信装置にあっては、車両情報として、自車両の位置情報を送信する場合がある。また、自車両の情報のほか、通信により取得した他車両の位置情報を送信する場合がある。
【特許文献1】特開2001−45013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような通信装置において、送信された車両位置情報が正確なものでない場合や架空の車両情報が送信された場合など、不適切な通信情報により通信情報を用いたアプリケーションが適切に実行できない。また、架空の車両情報が多数送信されることにより通信トラフィック及び架空の車両情報が増大し、通信システムが破綻するおそれもある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、誤った通信情報を検出し、通信システムの適正な作動を確保する移動体用通信装置及び移動体用通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る移動体用通信装置は、他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信装置において、複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したか否かを判断する通信衝突判断手段と、前記通信衝突判断手段により複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したと判断された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断手段と、前記通信エリア判断手段により前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいると判断された場合、少なくとも前記送信信号の位置情報の一部を誤情報として判定する情報判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また本発明に係る移動体用通信装置は、前記情報判定手段が、前記位置情報が示す位置に存在する移動体以外の移動体における送信信号の位置情報を誤情報として判定することを特徴とする。また本発明に係る移動体用通信装置は、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式により通信を行うものであることを特徴とする。
【0008】
これらの発明によれば、複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突しており、それらの送信信号の位置情報に基づいて複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する。その際、互いに通信可能な通信エリアにいる移動体の送信信号が通信衝突している場合には、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式に沿わないとして、位置情報の一部が誤った情報であると判定することができる。このように誤情報を信号送信する車両の位置情報と通信エリアに基づいて検出することができる。この誤情報を記憶情報から排除することにより、通信装置の適正な通信機能を維持することができる。
【0009】
また本発明に係る移動体用通信装置は、他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信装置において、前記他の移動体から送信された信号が受信された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記他の移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断手段と、前記通信エリア判断手段により前記他の移動体が前記通信エリア内にいないと判断された場合、前記他の移動体の位置情報を誤情報として判定する情報判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、他の移動体から送信された信号が受信された場合に送信信号の位置情報に基づいてその移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する。他の移動体が通信エリア内にいないと判断された場合、他の移動体の位置情報を誤情報として判定する。このように誤情報を信号送信する車両の位置情報と通信エリアに基づいて検出することができる。この誤情報を記憶情報から排除することにより、通信装置の適正な通信機能を維持することができる。
【0011】
また本発明に係る移動体用通信方法は、他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信方法において、複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したか否かを判断する通信衝突判断工程と、前記通信衝突判断工程にて複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したと判断された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断工程と、前記通信エリア判断工程にて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいると判断された場合、少なくとも前記送信信号の位置情報の一部を誤情報として判定する情報判定工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る移動体用通信方法は、前記情報判定工程が、前記位置情報が示す位置に存在する移動体以外の移動体における送信信号の位置情報を誤情報として判定することを特徴とする。また本発明に係る移動体用通信方法は、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式により通信を行うものであることを特徴とする。
【0013】
これらの発明によれば、複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突しており、それらの送信信号の位置情報に基づいて複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する。その際、互いに通信可能な通信エリアにいる移動体の送信信号が通信衝突している場合には、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式に沿わないとして、位置情報の一部が誤った情報であると判定することができる。このように誤情報を信号送信する車両の位置情報と通信エリアに基づいて検出することができる。この誤情報を記憶情報から排除することにより、通信装置の適正な通信機能を維持することができる。
【0014】
また本発明に係る移動体用通信方法は、他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信方法において、前記他の移動体から送信された信号が受信された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記他の移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断工程と、前記通信エリア判断工程にて前記他の移動体が前記通信エリア内にいないと判断された場合、前記他の移動体の位置情報を誤情報として判定する情報判定工程とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、他の移動体から送信された信号が受信された場合に送信信号の位置情報に基づいてその移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する。他の移動体が通信エリア内にいないと判断された場合、他の移動体の位置情報を誤情報として判定する。このように誤情報を信号送信する車両の位置情報と通信エリアに基づいて検出することができる。この誤情報を記憶情報から排除することにより、通信装置の適正な通信機能を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誤った通信情報を検出し、通信システムの適正な作動を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1に本実施形態に係る移動体用通信装置の概略構成図を示す。本実施形態に係る移動体用通信装置1は、車両(図示なし)に搭載され、他の車両と車両位置情報を含む車両情報の通信を行うための装置であり、通信情報に基づいて運転支援を行う運転支援アプリケーションに適用されるものである。
【0019】
移動体用通信装置1は、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式により通信を行う。通信方式としては、例えば、CSMA(CarrierSense Multiple Access)方式が用いられる。CSMA方式は、通信装置が通信路の空き状態(アイドル状態)を確認してから信号送信するものである。
【0020】
図1に示すように、移動体用通信装置1は、通信部2、アンテナ3及び制御部4を備えている。通信部2は、アンテナ3を通じて自車の情報を他の移動体に送信する送信手段として機能するとともに、アンテナ3を通じて他の移動体からの情報を受信する受信手段として機能するものである。この通信部2は、例えば制御部4から送られる送信情報に応じて搬送波を変調して送信信号を生成し、その送信信号をアンテナ3から送信する。また、通信部2は、例えば受信信号を復調して他の移動体の情報を抽出する。抽出された情報は、制御部4に入力される。
【0021】
制御部4は、装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。この制御部4は、通信部2と接続され、アンテナ3から受信される信号を通信部2を介して入力し、その信号に含まれる情報を記憶する。信号に含まれる情報には、例えば車両のID情報、車両の位置情報などがある。その信号受信の際、制御部4は、複数の他の車両から送信された送信信号が同時に受信されたか否かを判断する受信判断手段として機能する。
【0022】
また、制御部4は、複数の他の車両から送信された送信信号が同時に受信された場合に、その送信信号の位置情報に基づいて複数の他の車両が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断手段として機能する。また、制御部4は、複数の他の車両が互いに通信可能な通信エリア内にいる場合、少なくともそれらの他の車両の位置情報の一部を誤情報として判定する情報判定手段として機能する。
【0023】
また、制御部4は、通信部2に車両の情報を送信させる送信制御手段として機能する。例えば、キャリアセンスを行い、通信部2を通じて他車の信号送信状態を検知し、通信チャネルがアイドル状態となったときに車両の情報を送信させる。
【0024】
制御部4は、操作部5と接続されている。操作部5は、通信装置1の作動開始スイッチ、作動終了スイッチなどを含んで構成されている。また、制御部4は、ナビゲーション部6と接続されている。ナビゲーション部6は、自車の走行位置を地図上で検出可能な自車位置検出手段として機能するものであり、例えば予め地図情報を記憶しGPS(Global Positioning System)を用いて自車位置を検出するものが用いられる。制御部4には、ナビゲーション部6から自車の車両位置情報が入力される。なお、ナビゲーション部6としては、自車の位置情報、道路情報などを取得できるものであれば、GPS以外のものを用いるものであってもよい。
【0025】
制御部4は、情報提供部7と接続されている。情報提供部7は、自車両の運転者に運転に関する情報を提供する情報提供手段であり、例えば表示モニタ、ランプ、ブザー、スピーカなどが該当する。また、制御部4は、アクチュエータ8と接続されている。アクチュエータ8は、運転支援を行う駆動部であり、例えばブレーキ、スロットル、変速機などが該当する。
【0026】
さらに、制御部4は、通信に応じて実行されるアプリケーションを処理するアプリケーション処理手段としても機能する。例えば、制御部4は、通信部2から入力される受信情報を情報処理し、受信情報に基づいて運転支援などのアプリケーションを実行させる。運転支援アプリケーションは、他車の位置を認識し、自車が他車と衝突の危険性が高い場合にブザー、音声、ランプ表示、液晶表示などによってその危険性を報知し、または自車が他車と衝突するおそれのある場合に強制的にブレーキ作動制御を行うものである。
【0027】
次に、本実施形態に係る移動体用通信装置の動作及び移動体用通信方法について説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る移動体用通信装置1の動作についてのフローチャートである。この図2の制御処理は、例えば制御部4により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0029】
図2のS10に示すように、まず通信処理が行われる。通信処理は、自車の車両情報を送信信号として通信部2へ出力すると共に、他の車両の受信信号を受信情報として入力する処理である。制御部4から通信部2へ出力された送信信号は、アンテナ3を通じて送信される。入力した受信情報は、通信部2を通じて制御部4へ入力される。
【0030】
通信処理における信号送信は、通信エリア内の通信衝突を回避するように行われる。例えば、キャリアセンスが行われ、通信エリア内で他車が送信を行っておらず、通信路がアイドル状態になっていることを確認した後、信号送信が行われる。
【0031】
そして、S12に移行し、車両情報読み込み処理が行われる。車両情報読み込み処理は、受信信号に含まれる車両情報を読み込む処理である。その際、読み込まれる情報には、車両のID情報、車両位置情報が含まれる。
【0032】
そして、S14に移行し、通信衝突が発生しているか否かが判断される。例えば、複数の他の車両から送信された送信信号が同時に受信されたか否かが判断される。この場合、S10の通信処理において、異なる他車から同時に信号受信があった場合には通信衝突が発生していると判断される。一方、S10の通信処理において、異なる他車から同時に信号受信がない場合には通信衝突が発生していないと判断される。また、通信方式が周波数多重方式や符号多重方式の場合には、複数のチャネルのうち同じチャネルの送信信号を同時に受信した場合に通信衝突が発生していると判断される。また、通信方式が時間多重方式の場合には、送信信号を同時に受信した場合に通信衝突が発生していると判断される。
【0033】
S14にて通信衝突が発生していると判断されたときには、通信エリア演算処理が行われる(S16)。この通信エリア演算処理は、第一の通信エリア演算処理であって、通信衝突を起こしている車両の通信エリアを演算する処理である。例えば、通信衝突を起こしている車両のID情報、車両位置情報を取得し、車両位置情報から通信エリアを推定することにより演算処理が行われる。その際、車両の送信出力を加味して通信エリアを推定することが好ましい。推定された各車両の通信エリアは、例えば経度緯度の座標範囲で演算出力される。
【0034】
そして、S18に移行し、通信衝突を起こしている車両が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かが判断される。この判断処理は、送信信号に含まれる車両位置情報に基づいて行われる。すなわち、S16にて車両位置情報に基づいて演算された通信エリア内に他方の車両が互いに入っているか否かが判断される。
【0035】
S18において通信衝突を起こしている車両が互いに通信可能な通信エリア内にいない場合には、車両位置情報に誤りがないと判断され、制御処理を終了する。一方、S18において通信衝突を起こしている車両が互いに通信可能な通信エリア内にいる場合には、通信ルール上異常が生じているため、誤情報判定処理が行われる(S20)。
【0036】
誤情報判定処理は、通信衝突を起こしている車両の車両位置情報の少なくとも一部を誤情報と判定する処理である。例えば、通信衝突を起こしている車両のうち車両位置情報の示す位置に存在することが判明している車両については、その車両位置情報が正情報とされる。
【0037】
車両位置情報の示す位置に存在することは、例えば、インフラなどの他の手段による車両情報によって検知される。また、レーダやカメラなど車両に搭載される物体検出手段により他の車両の送信している車両位置情報が示す位置にその車両が存在していると判断できた場合には、その車両が車両位置情報に示す位置に存在すると判断してもよい。
【0038】
また、後述するS26の判断において過去に他の車両の送信している車両位置情報に誤りがないと判定されている場合に、その車両が車両位置情報に示す位置に存在すると判断してもよい。また、他の車両が車両位置情報の示す位置に存在することが判断できるものであれば、これらの手法に限られず、その他の手法又はその他の手段を用いて判断してもよい。
【0039】
一方、その車両位置情報の示す位置に存在する車両以外の車両については、その車両位置情報が誤情報とされる。
【0040】
そして、S22に移行し、誤情報処理が行われる。この誤情報処理は、誤情報に対する対応措置を行う処理であり、例えば誤情報として判定された情報について運転支援のアプリケーションで用いないようにする。これにより、不適切な運転支援が防止できる。また、他車の車両位置情報に誤りがある旨を他車に送信してもよい。この場合、適正な通信システムの稼働が図れる。
【0041】
ところで、S14にて通信衝突が発生していないと判断されたときには、通信エリア演算処理が行われる(S24)。この通信エリア演算処理は、第二の通信エリア演算処理であって、S16の処理と異なるものである。処理内容は、自車両の通信エリアを演算する処理である。例えば、車両位置情報、送信出力および受信感度に基づいて自車の通信エリアが推定される。推定された各車両の通信エリアは、例えば経度緯度の座標範囲で演算出力される。
【0042】
そして、S26に移行し、自車に信号送信してきた他の車両が自車の通信エリア内にいるか否かが判断される。この判断処理は、送信信号に含まれる他車の車両位置情報及び自車の通信エリア情報に基づいて行われる。すなわち、S24にて車両位置情報に基づいて演算された通信エリア内に他方の車両が入っているか否かが判断される。
【0043】
S26において自車に信号送信してきた他の車両が自車の通信エリア内にいる場合には、車両位置情報に誤りがないと判断され、制御処理を終了する。一方、S26において自車に信号送信してきた他の車両が自車の通信エリア内にいない場合には、通信ルール上異常が生じているため、誤情報判定処理が行われる(S28)。誤情報判定処理は、自車に信号送信してきた車両の車両位置情報を誤情報と判定する処理である。
【0044】
そして、S30に移行し、誤情報処理が行われる。この誤情報処理は、誤情報に対する対応措置を行う処理であり、例えば誤情報として判定された情報について運転支援のアプリケーションで用いないようにする。これにより、不適切な運転支援が防止できる。また、他車の車両位置情報に誤りがある旨を他車に送信してもよい。この場合、適正な通信システムの稼働が図れる。そして、制御処理を終了する。
【0045】
次に本実施形態に係る移動体用通信装置の動作及び移動体用通信方法について具体例を挙げて説明する。
【0046】
図3は、車両の位置関係と通信エリアを示した図である。自車10から所定距離範囲内は自車10と通信可能な通信エリア10aとなっている。また、他車20から所定距離範囲内はその他車20と通信可能な通信エリア20aとなっている。自車10は他車20の通信エリア20a内に入っており、他車20は自車10の通信エリア10aに入っており、互いに通信可能となっている。このとき、他車20は、自己の車両位置情報を誤りのない正確な情報として自車10に送信している。
【0047】
この状況において、通信エリア10a及び20aの双方の範囲内に入っている他車31があり、他車20と他車31の通信衝突が生じる場合、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う通信方式においては異常事態である。この場合、他車20の車両位置情報が正情報であるときには、他車31の車両位置情報が誤情報であると判断することができる。
【0048】
また、通信エリア10aの範囲内であるが通信エリア20aの範囲外である他車32があり、他車20と他車32の通信衝突が生じる場合、他車32はキャリアセンスで他車20の送信状態を検知できないため、通信方式に異常はない。このため、この場合は他車31の車両位置情報が誤情報であるとは判断できない。
【0049】
また、通信エリア10aの範囲外に他車33、34があり、これらの他車33、34が自車10に直接通信してくる場合、通信不可能な位置にいるのに通信していることは異常である。このため、この場合は他車33、34の車両位置情報が誤情報であると判断することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る移動体用通信装置1及び移動体用通信方法によれば、複数の他の車両から送信された送信信号が同時に受信され、それらの送信信号の位置情報に基づいて複数の他の車両が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する。その際、互いに通信可能な通信エリアにいる車両から同時に情報信号が送信された場合には、通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式に沿わないとして、位置情報の一部が誤った情報であると判定することができる。このように、誤った車両情報を検出し、誤情報を記憶情報から排除することにより、通信システムの適正な作動を確保することができる。
【0051】
また、誤情報を記憶情報から排除することによって、通信装置における記憶量の低減が図れ、円滑な記憶処理が行える。また、誤情報を情報処理対象から除くことにより、通信装置における円滑な情報処理が図れる。さらに、誤情報を除いた車両情報に基づいてアプリケーションを実行することにより、適切なアプリケーションの実行が図れる。
【0052】
また、本実施形態に係る移動体用通信装置1及び移動体用通信方法によれば、携帯電話などの別系統の通信手段や通信監視用の基地局、インフラを用いることなく、各車両が車々間通信を停止させることなく、自立的に情報の判断及び排除が可能である。また、誤情報を抑制する通信フォーマットや通信プロトコルなどを導入せずに情報の判断及び排除が可能である。また、異常な情報を送信する車両を探索し検出するために周辺監視センサなどを用いることなく、誤情報か否かを判断でき排除することができる。また、自車から異常な情報を送信する車両に対して問い掛け、情報要求又は通信要求を行うことなく、誤情報か否かの判断及び排除が可能である。
【0053】
また、本実施形態に係る移動体用通信装置1及び移動体用通信方法においては、GPSなど位置検出装置の作動異常により他車が誤情報を送信する場合のほか、他車が故意に架空情報(誤情報)を送信する場合にも対応することができる。この場合、架空情報により通信装置が混乱することが防止でき、正常な通信機能を維持することができる。
【0054】
また、誤情報を検出した際に、その車両が送信している位置情報が誤情報であることを他の他車に送信することにより、誤情報により通信システムが混乱することが防止でき、正常な通信機能を維持することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、車両と車両との間の通信のみを行うものについて説明したが、本発明に係る移動体用通信装置及び移動体用通信方法はこのようなものに限られるものではなく、自己が車両でない移動体であってもよく、また他の移動体が車両以外の移動体、例えば歩行者などと通信するものであってもよい。
【0056】
また、本実施形態は本発明に係る移動体用通信装置及び移動体用通信方法の最良な実施形態を説明したものであり、本発明に係る移動体用通信装置は本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る移動体用通信装置及び移動体用通信方法は、その趣旨に反しない範囲で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体用通信装置の構成概要図である。
【図2】図1の移動体用通信装置の動作及び実施形態に係る移動体用通信方法を示すフローチャートである。
【図3】図1の移動体用通信装置の動作及び実施形態に係る移動体用通信方法の具体的な説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1…移動体用通信装置、2…通信部、3…アンテナ、4…制御部、5…操作部、6…ナビゲーション部、7…情報提供部、8…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信装置において、
複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したか否かを判断する通信衝突判断手段と、
前記通信衝突判断手段により複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したと判断された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断手段と、
前記通信エリア判断手段により前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいると判断された場合、少なくとも前記送信信号の位置情報の一部を誤情報として判定する情報判定手段と、
を備えたことを特徴とする移動体用通信装置。
【請求項2】
前記情報判定手段は、前記位置情報が示す位置に存在する移動体以外の移動体における送信信号の位置情報を誤情報として判定することを特徴とする請求項1に記載の移動体用通信装置。
【請求項3】
通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式により通信を行うものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体用通信装置。
【請求項4】
他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信装置において、
前記他の移動体から送信された信号が受信された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記他の移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断手段と、
前記通信エリア判断手段により前記他の移動体が前記通信エリア内にいないと判断された場合、前記他の移動体の位置情報を誤情報として判定する情報判定手段と、
を備えたことを特徴とする移動体用通信装置。
【請求項5】
他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信方法において、
複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したか否かを判断する通信衝突判断工程と、
前記通信衝突判断工程にて複数の他の移動体から送信された送信信号が通信衝突したと判断された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断工程と、
前記通信エリア判断工程にて前記複数の他の移動体が互いに通信可能な通信エリア内にいると判断された場合、少なくとも前記送信信号の位置情報の一部を誤情報として判定する情報判定工程と、
を備えたことを特徴とする移動体用通信方法。
【請求項6】
前記情報判定工程は、前記位置情報が示す位置に存在する移動体以外の移動体における送信信号の位置情報を誤情報として判定することを特徴とする請求項5に記載の移動体用通信方法。
【請求項7】
通信エリア内の通信衝突を回避して送信を行う無線通信方式により通信を行うものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の移動体用通信方法。
【請求項8】
他の移動体とその位置情報を含む情報の通信を行う移動体用通信方法において、
前記他の移動体から送信された信号が受信された場合に、前記送信信号の位置情報に基づいて前記他の移動体が自己と通信可能な通信エリア内にいるか否かを判断する通信エリア判断工程と、
前記通信エリア判断工程にて前記他の移動体が前記通信エリア内にいないと判断された場合、前記他の移動体の位置情報を誤情報として判定する情報判定工程と、
を備えたことを特徴とする移動体用通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−246220(P2006−246220A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61216(P2005−61216)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】