移動体識別方法及び装置
【課題】移動体間の重なりが頻繁に生じても異なる移動体として識別可能にする。
【解決手段】移動体をメッシュのブロックに分割し、評価値に基づき、ブロック単位で追跡する。この評価値は、時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Nxとの差の絶対値の平方|VCm(t−1)−VBp(t−1)|2の平均値を含む。
【解決手段】移動体をメッシュのブロックに分割し、評価値に基づき、ブロック単位で追跡する。この評価値は、時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Nxとの差の絶対値の平方|VCm(t−1)−VBp(t−1)|2の平均値を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故の早期発見は、迅速な救助活動により人命救助の成功率を高めるだけでなく、警察の実地検分などを迅速にすることにより事故渋滞を緩和することもできるので、様々な交通事故の認識自動化が期待されている。
【0003】
本願発明者による下記特許文献1では、時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する移動体異常事象検出方法において、
(a)時刻(t−1)のフレーム画像と時刻tのフレーム画像との相関関係に基づき時刻tのフレーム画像中の移動体を識別し、
(b)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(c)該観測系列の参照系列に対する類似度を算出して移動体間動作を分類し、
(d)該観測系列の衝突参照系列に対する該類似度が設定値より大きい場合、衝突事故であると判定する。
【0004】
この方法によれば、衝突事故などの異常事象を自動検出することができる。
【0005】
上記公報では、上記ステップ(b)の観測量として、V/(d+ε)を量子化したスカラーを用いている。ここに相対動きベクトルVは、第1移動体に対する第2移動体の相対動きベクトルVであり、εは分母が0になるのを避けるための定数である。
【0006】
この観測量を用いれば、量子化していることから、少ない参照系列で様々な移動体間動作を分類することが可能になる。
【0007】
しかしながら、移動体間動作をより詳細に分類することができないという問題があった。
【0008】
上記公報では、上記ステップ(a)において、時刻(t−1)のフレーム画像中の移動体の識別結果を利用して上記相関関係から時刻tのフレーム画像中の移動体を容易に識別することができる。
【0009】
しかし、1台のカメラで広い領域を撮像して移動体を追跡するために、路面に対し低カメラアングルで移動体を正面から撮像した場合、図13に示すように移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる。時刻(t−1)で移動体M1とM2とが識別されずに1つのクラスタとして識別され、このクラスタの代表動きベクトルを用い、上記相関関係に基き時刻tでの移動体M1とM2を含むクラスタを識別しようとするが、移動体M1とM2の速度が異なるので、正確に識別することができない。次の時刻(t+1)では移動体M2が移動体M1から分離しているが、移動体M2がM3と重なっているので、移動体M2とM3とが1つのクラスタとして識別され、移動体M2とM3の各々を識別することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−148019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、移動体間の重なりが頻繁に生じても異なる移動体として識別することが可能な、移動体を含む画像の処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様では、時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する。
【0013】
この構成によれば、ブロック毎の動きベクトルを用いているので、異なる速度の複数の移動体を含む時刻tの1つのクラスタに含まれるブロックに複数の識別IDのいずれかを付与することが可能となり、これにより1つのクラスタを異なるIDのクラスタに分割することが可能になる。すなわち、従来では追跡できなかった移動体を追跡することが可能となり、衝突事故や交通違反などのより正確な検出に寄与するところが大きい。
【0014】
例えば、上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量(例えば|VCm(t−1)−VBp(t−1)|r、r>1)のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む。
【0015】
この構成によれば、ほぼ同一の画素値が分布しているために時刻(t−1)の動きベクトルの誤差が大きくても、ブロック識別IDの付与をより正確に行うことが可能となり、結果として、衝突事故や交通違反などのより正確な検出に寄与する。
【0016】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】交差点及びこれに配置された本発明の実施例1の装置の概略を示す図である。
【図2】図1中の移動体異常事象検出装置の機能ブロック図である。
【図3】図2の判定部の処理を示すフローチャートである。
【図4】交差点への4つの入口及び交差点からの4つの出口に設定されたスリット及びブロックに付された移動体のIDを示す説明図である。
【図5】図1中の観測量検出部での処理を説明するベクトル図である。
【図6】ベクトルV/Dの量子化説明図である。
【図7】相対位置ベクトルの量子化及び時系列分類の説明図である。
【図8】(A)及び(B)はいずれも互いにすれ違う移動体間動作の分類説明図である。
【図9】(A)及び(B)はいずれも互いにすれ違う移動体間動作の分類説明図である。
【図10】衝突事故時の時系列パターン説明図である。
【図11】交差点での移動体衝突事故判定説明図である。
【図12】交差点での移動体故障判定説明図である。
【図13】移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる場合の説明図である。
【図14】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図15】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図16】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図17】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図18】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図19】オブジェクトマップ作成説明図である。
【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。複数の図中の対応する同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の符号を付している。
【0019】
図1は、交差点及びこれに配置された本発明の実施例1の移動体異常事象検出装置の概略を示す。
【0020】
この装置は、交差点を撮像して画像信号を出力する電子カメラ10と、その画像を処理して移動体間衝突事故及び故障移動体を自動検出する移動体異常事象検出装置20とを備えている。
【0021】
図2は、この移動体異常事象検出装置20の機能ブロック図である。移動体異常事象検出装置20の構成要素のうち、記憶部以外はコンピュータによるソフトウェア又は専用のハードウェアで構成することもがきる。
【0022】
電子カメラ10で撮影された時系列画像は、例えば12フレーム/秒のレートで、画像メモリ21に格納される。
【0023】
背景画像生成部22は、記憶部と処理部とを備え、処理部は、画像メモリ21をアクセスし、例えば過去10分間の全フレームの対応するピクセルについて画素値のヒストグラムを作成し、その最頻値(モード)をそのピクセルの画素値とする画像を、移動体が存在しない背景画像として生成し、これを該記憶部に格納する。背景画像は、この処理が定期的に行われて更新される。
【0024】
ID生成/消滅部23には、図4に示す如く画像フレーム内の、交差点への4つの入口及び交差点からの4つの出口にそれぞれ配置されるスリットEN1〜EN4及びEX1〜EX4の位置及びサイズのデータが予め設定されている。ID生成/消滅部23は、画像メモリ21から入口スリットEN1〜EN4内の画像データを読み込み、これら入口スリット内に移動体が存在するかどうかをブロック単位で判定する。図4中のメッシュの升目はブロックであり、1ブロックは例えば8×8画素であり、1フレームが480×640画素の場合、1フレームは60×80ブロックに分割される。あるブロックに移動体が存在するかどうかは、このブロック内の各ピクセルと背景画像の対応するピクセルとの差の絶対値の総和が所定値以上であるかどうかにより判定する。この判定は、移動体追跡部25においても行われる。
【0025】
ID生成/消滅部23は、ブロック内に移動体が存在すると判定すると、このブロックに新たなクラスタ識別符号IDを付与する。ID生成/消滅部23は、ID付与済ブロックと隣接しているブロックに移動体が存在すると判定すると、この隣接ブロックに付与済ブロックと同一のIDを付与する。このID付与済ブロックは入口スリットに隣接しているブロックも含まれる。例えば図4中の入口スリットEN1内のブロックにはID=1が付与され、入口スリットEN4内の移動体存在ブロックにはID=5が付与される。
【0026】
IDの付与は、オブジェクトマップ記憶部24内の対応するブロックに対して行われる。オブジェクトマップ記憶部24は、上述の場合60×80ブロックの各々について、処理容易化のための情報(オブジェクトマップ)を記憶するためのものであり、この情報には、IDが付与されているかどうかのフラグ、IDが付与されている場合にはその番号と後述のブロック動きベクトルとが含まれる。なお、該フラグを用いずに、ID=0のときのIDが付与されていないと判定してもよい。また、IDの最上位ビットをフラグとしてもよい。
【0027】
入口スリットを通過したクラスタに対しては、移動体追跡部25により移動方向のブロックに対するIDの付与及び移動と反対方向のブロックに対するIDの消滅、すなわちクラスタの追跡処理が行われる。移動体追跡部25は、後述のように、時刻(t−1)のオブジェクトマップ及びフレーム画像と、時刻tのフレーム画像とに基づいて時刻tのオブジェクトマップを生成する。
【0028】
移動体追跡部25による追跡処理は、各クラスタについて出口スリット内まで行われる。
【0029】
ID生成/消滅部23はさらに、オブジェクトマップ記憶部24の内容に基づき出口スリットEX1〜EX4内のブロックにIDが付与されているかどうかを調べ、付与されていれば、出口スリットをクラスタが通過したときにそのIDを消滅させる。例えば図4中の出口スリットEX1内のブロックにIDが付されている状態から、IDが付されない状態に変化したときに、ID=3を消滅させる。消滅IDは、次の生成IDとして用いることができる。
【0030】
観測量検出部26は、オブジェクトマップ記憶部24の内容に基づいて各クラスタの平均動きベクトルをそのクラスタの動きベクトルとして求め、各クラスタ間について、相対動きベクトルV及び相対位置ベクトルを求め、さらにクラスタ間の最短距離dを求め、これらに基づいて以下のような観測量を求める。観測量検出部26はこの観測量を観測系列記憶部27に格納して、クラスタ間毎に観測系列を生成する。
【0031】
観測量として、相対動きベクトルに関するものを量子化した第1スカラーと、相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを考える。最初に、第1スカラーとその時系列について説明する。
【0032】
例えば、図5(A)に示す移動体移動体M1の動きベクトルV1と移動体移動体M2の動きベクトルV2の相対動きベクトルVは図5(B)に示す如くなる。図5(A)に示すように移動体M1とM2の間の最短距離をdとし、ベクトルV/Dを考える。ここに、D=d+εであり、εはd=0のときD>0を保証するための定数である。衝突時にはV=0、すなわちV/D=0となるが、その前後で|V/D|が大きな値になるので、V/Dの時系列から衝突を判断し易くなる。移動体M1とM2の相対的な多くの状態を簡単に分類するために、図6に示すようにベクトルV/Dを量子化しかつスカラー化する。すなわち、ベクトルV/Dの始点を中心として図6に示すように領域を分割し、各領域をスカラーで表し、ベクトルV/Dをその終点が属する領域のスカラーに量子化する。
【0033】
例えばV/D=vの時系列がv0→v1→v2である場合、{v0,v1,v2}と表記し、これを{0,1,2}と量子化する。量子化された観測量の時系列を観測系列と称す。図10に示す衝突事故時の時刻t=4〜9における観測系列は{1,2,3,0,8,7}となる。この量子化により、ある衝突パターンと類似の衝突パターンは同一観測系列となるので、様々な衝突事故を容易に認識可能になる。また、量子化により観測系列が簡単な数値列になるので、その後の認識処理が簡単になる。
【0034】
衝突事故であるかどうかの判断は、観測系列と衝突事故の参照系列(例えば実際に生じた衝突事故の観測系列)との類似度が所定値を越えるかどうかで行う。上記量子化により必要な参照系列の数を少なくすることができるが、さらにこれを少なくするために、静止座標系を回転させれば相対動作の時系列パターンが同一になる場合は観測系列も同一になるようにする。このため、例えば上記{v0,v1,v2}については、時系列の最初のベクトルv0の基準方向、例えば図6のX軸に対する角度θを求め、次に、v0,v1及びv2の各ベクトルを−θ回転させる。図5(C)はV/Dが時系列の最初のベクトルである場合の該回転を示す。この回転により、移動体M1に対する移動体M2の相対ベクトルV/Dの観測量と、移動体M2に対する移動体M1の相対ベクトル−V/Dの観測量とは同一になる。
【0035】
互いに離れた移動体移動体M1及びM2が接近してすれ違った後、互いに離れる場合は、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)のいずれかであり、点線は移動体の経路を示す。これらの場合の観測系列はそれぞれ、例えば次のようになる。
【0036】
図8(A):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
図8(B):{1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1}
図9(A):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
図9(B):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
これらの観測系列から明らかなように、図8(A)、図9(A)及び図9(B)の観測系列からこれらの相対動作を識別することができない。そこで、これらの相対動作を識別可能にするために、移動体M1に対する移動体M2の相対位置ベクトルを図7に示すように量子化して第2スカラーとする。すなわち、相対位置ベクトルP12の始点を中心とし、移動体M1の動きベクトルV1の方向を基準方向とし、図7に点線で示すように領域を分割し、各領域をスカラーで表し、相対位置ベクトルP12をその終点が属する領域のスカラーに量子化する。
【0037】
図8(A)に示すように互いに反対方向に進んでいる移動体M1とM2とがすれ違う場合、時刻tの相対位置ベクトルP12をP12(t)で表すと、移動体M1に対する移動体M2の相対位置ベクトルの時系列P12(t−1)、P12(t)、P12(t+1)は、{20,80,60}と量子化される。
【0038】
第1スカラーを1桁の数値とし、第2スカラーを2桁の数値かつ下位を0としたのは、両者を容易に合成可能にするためである。例えば第1スカラーが7で第2スカラーが20である場合、両者の和である26を観測量とする。第1スカラーと、移動体M2を基準にした第2スカラーとの和を観測量とすると、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)の観測系列はそれぞれ次のようになる。
【0039】
図8(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図8(B):{21,21,41,41,41,41,41,41,41,61,61}
図9(A):{61,61,42,42,43,41,41,41,41,21,21}
図9(B):{21,21,42,42,43,41,41,41,41,61,61}
第1スカラーと、移動体M1を基準にした第2スカラーとの和を観測量とすると、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)の観測系列はそれぞれ次のようになる。
【0040】
図8(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図8(B):{21,21,41,41,41,41,41,41,41,61,61}
図9(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図9(B):{61,61,82,82,83,81,81,81,81,21,21}
図7中に矢印付直線で示すように第2スカラーが、20→80→60のように変化する場合をPAS0、20→40→60のように変化する場合をPAS1、60→40→20のように変化する場合をPAS2、60→80→20のように変化する場合をPAS3と分類する。また、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化がPASkであり、移動体M2から見た移動体M1の相対位置の変化がPASmである場合、この変化をPASkmで表す。
【0041】
図8(A)及び(B)のいずれの場合も、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化と移動体M2から移動体M1を見た装置位置ベクトルの変化は同一であり、それぞれPAS00及びPAS11と分類される。これに対し、図9(A)及び(B)のいずれの場合も、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化と移動体M2から見た移動体M1の相対値ベクトルの変化は異なり、それぞれPAS20及びPAS13と分類される。
【0042】
このように、第2スカラーも用いて移動体の相対動作を分類することにより、第1スカラーのみでは区別して認識することができなかったものが認識可能となり、状態をより正確に把握することが可能となる。
【0043】
例えば、オブジェクトマップ上のクラスタ数が3で、IDが1、2及び3であり、ID=iとID=jのクラスタ間の観測系列をOSi,jで表すと、図2の観測系列記憶部27には観測系列OS1,2、OS2,1、OS2,3、OS3,1及びOS1,3が格納されている。OSi,jとOSj,iが格納されているのは、第2スカラーの時系列に着目して上記PASkmの分類を可能にするためである。観測系列記憶部27には、各観測系列は、所定個数、例えば24個の観測量からなり、時刻が1進む毎に最も古い観測量を削除し新しい観測量を付加する。
【0044】
分類部28は、観測系列記憶部27に格納されている各クラスタ間の観測系列を読み出し、予め定められた衝突事故及びその他の参照系列との類似度を算出し、これらを分類結果として判定部29に供給する。この観測系列は、上記第1スカラーと第2スカラーとの組み合わせの観測量の時系列であり、参照系列も同様である。なお、観測系列の第1スカラーに着目して、予め定められた衝突事故の参照系列との類似度を算出し、第2スカラーに着目して、予め定められた上記PASkmの各々の参照系列との類似度を算出し、これらを分類結果として判定部29に供給してもよい。
【0045】
公知のパターン類似度計算には、隠れマルコフモデル(HMM)法やパターンマッチング法などがあり、これらのいずれかを利用することができる。例えば、上記特開2001−148019号公報に開示されているように、具体的な衝突事故の観測系列を学習系列としてパラメータを決定したHMMにより、観測系列が生ずる確率を類似度として計算する。
【0046】
ここで、図11及び図12を参照して移動体の衝突事故及び故障の検出について説明する。
【0047】
図11において、移動体M1とM2の間に図10に示すような衝突シーケンスが生じ又はこれに類似した非衝突シーケンスが生じ、最終的に移動体M1とM2とが停止しているとする。このシーケンスは、移動体M3が右折待ちの時にその後方から移動体M4が近づいたために移動体M3が少し前に移動して停止した場合と類似している。路面に対し低カメラアングルで移動体を撮像した場合には、実際には移動体間が離れていても重なって見えるために、画像上では衝突と分類される場合がある。
【0048】
しかし、移動体M3及びM4は、右折待ちのために停止が許可されている領域に存在する。これに対し、移動体M1及びM2は、停止が禁止されている領域に存在しているので、移動体M1とM2の間に衝突が生じた可能性が高い。この場合、救急車などが交差点に接近しているために移動体M1とM2が停止している可能性もある。そこで、停止している移動体M1又はM2の横を通り過ぎる移動体があれば、移動体M1とM2の衝突の可能性はさらに高くなる。
【0049】
このようなことから、
(1)移動体M1とM2の相対動作が衝突と分類され、
(2)移動体M1又はM2が停止禁止領域内に停止しており、
(3)他の車が交差点で移動している
場合には、移動体M1とM2が衝突であると判定する。
【0050】
また、図12に示すように、移動体M1が他の車と衝突していないが、移動体M1が停止禁止領域内に停止している場合には、移動体M1が故障している可能性が高い。この場合、交差点で他の移動体が移動してれば、移動体M1が故障している可能性はさらに高くなる。そこで、上記(1)が否定判定され、上記(2)及び(3)が肯定判定された場合には、移動体が故障していると判定する。
【0051】
図3は、図2の判定部29の処理を示すフローチャートである。
【0052】
(S1)判定部29は、分類部28から1つのクラスタ間についての衝突類似度CSを読み込む。
【0053】
(S2〜S4)この衝突類似度CSが設定値CS0より大きければ、フラグFをセットし、そうでなければフラグFをリセットする。
【0054】
(S5)観測系列記憶部27から、ステップS1で読み込んだクラスタ間について、観測系列を読み込み、最も新しい時点から所定数の観測量の第1スカラーがすべて0である場合、すなわち、相対動きベクトルV=0の状態が所定時間を超えている場合、次に、オブジェクトマップ記憶部24を参照してそのIDを有するクラスタに属する全てのブロックの動きベクトルが0であるかどうかを調べ、0であればこの移動体が停止していると判定する。停止していなければステップS1へ戻って他の1つのクラスタ間について全ての分類結果を読み込み、そうでなければステップS6へ進む。
【0055】
(S6)この停止しているクラスタが、停止禁止領域記憶部30に予め格納されている停止禁止領域内に存在するかどうかを調べ、存在すればステップS7へ進み、そうでなければステップS1へ戻る。
【0056】
(S7)分類部28の分類結果に、他のクラスタとの間について上記PAS00、PAS11、PAS20又はPAS13のいずれかの参照系列との類似度が設定値を越えていれば、交差点内で移動している移動体が存在すると判定してステップS8へ進み、そうでなけれなステップS1へ戻る。
【0057】
(S8〜S10)F=1であれば事故と判定し、F=0であれば移動体故障であると判定し、その結果を出力し、ステップS1へ戻る。
【0058】
このような処理により、移動体の衝突事故及び故障を高確率で自動検出することができる。
【0059】
次に、図2の移動体追跡部25において、時刻(t−1)のオブジェクトマップ及びフレーム画像と、時刻tのフレーム画像とに基づいて時刻tのオブジェクトマップを生成する方法を詳説する。
【0060】
1台のカメラで広い領域を撮像して移動体を追跡するために、路面に対し低カメラアングルで移動体を正面から撮像した場合、図13(A)〜(C)に示すように移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる。
【0061】
図14及び図15はそれぞれ、図13(A)及び(B)の拡大画像を示す。点線は、画像をブロックに分割するものである。図14において、重なった移動体M1とM2は、図2のオブジェクトマップ記憶部24において1つのクラスタC12に対応しており、移動体M1とM2とが識別されていないとする。これに対し、クラスタC3は1つの移動体M3に対応している。
【0062】
時刻tでの第i行第j列のブロックをB(t:i,j)で表す。図14に示すように、ブロックB(t−1:11,13)及びB(t−1:14,13)の動きベクトルをそれぞれV2及びV3で表す。動きベクトルV2及びV3の先端はいずれもブロックB(t−1:18,11)内に存在している。図15に示す時刻tの画像中の枠SB2及びSB3はそれぞれ、図14の画像中のブロックB(t−1:11,13)及びB(t−1:14,13)をそれぞれ動きベクトルV1及びV2移動させた領域に対応している。
【0063】
次に、動きベクトルV2及びV3の先端がブロックB(18,11)の中心に一致するように動きベクトルV2及びV3を平行移動させ、動きベクトルV2及びV3の方向を逆にし、図16に示すように、ハッチングが施されたブロックB(t−1:18,11)を−V2及び−V3移動させた枠SBR2及びSBR3を求める。枠SBR2及びSBR3内の画像はそれぞれ、図17のブロックB(t:18,11)内の画像が図16の時刻(t−1)のクラスタC12及びC3に属していた仮定したときの推定画像である。クラスタC12及びC3のIDをそれぞれID12及びID3とする。
【0064】
図16中の枠SBR2内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値UDを次式で計算し、この値をUD(ID12)とする。
【0065】
UD=Σ|SP(t−1:i,j)−BP(t:i,j)| (1)
ここにSP(t−1:i,j)及びBP(t:i,j)はそれぞれ、図16の枠SBR2内及び図17のブロックB(t:18,11)内の第i行第j列のピクセルの値であり、Σはi=1〜8及びj=1〜8についての総和(ブロック内全画素についての総和)を意味している。評価値UDの値が小さいほど相関度が高い。
【0066】
同様に図16中の枠SBR3内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値UDを計算し、この値をUD(ID3)とする。
【0067】
図16と図17の場合には、UD(ID3)<UD(ID12)となり、ブロックB(t:18,11)にID3を付与する。
【0068】
このように、ブロック毎の動きベクトルを用いることにより、複数の移動体を含む時刻tのクラスタC123に含まれるブロックに異なるIDを付与することができ、これにより1つのクラスタC123を異なるIDのクラスタに分割することが可能になる。
【0069】
図15のクラスタC123に属するブロックB(t:18,11)に対応するクラスタC12内のブロックB(t−1:11,13)及びクラスタC3内のB(t−1:14,13)の見つけ方は次の通りである。すなわち、ブロックB(t−1:i,j)の中心からブロックB(t−1:18,11)の中心までのベクトルをV(18−i,11−j)、ブロックB(t−1:i,j)の動きベクトルをV(t−1:i,j)と表記すると、
|V(18−i,11−j)−V(t−1:i,j)|<ΔV
を満たすV(t−1:i,j)をもつブロックB(t−1:i,j)を見つければよい。ここにΔVは定数であり、例えばブロックの1辺の画素数の3倍の値である。ブロックB(t:18,11)に対応するクラスタC12内のブロックが複数有り、又は、ブロックB(t:18,11)に対応するクラスタクラスタC3内のブロックが複数有る場合には、その各々についての評価値を求め、最も小さい評価値に対応したIDをブロックB(t:18,11)に付与する。
【0070】
図15のクラスタC123に属する他のブロックについても上記同様である。
【0071】
ブロックB(t:18,11)にID3を付与する上記の場合、このブロックの動きベクトルはほぼ動きベクトルV3であると推定できる。ブロックB(t:18,11)の動きベクトルをより正確に求めるために、枠SBR3を、この位置を中心として所定範囲内で1画素ずつシフトさせ、このシフト毎に該評価値を求め、評価値が最小(相関度が最大)になったときの枠SBR3の中心からブロックB(t:18,11)の中心へ向かうベクトルを、ブロックB(t:18,11)の動きベクトルと決定する。時刻tでのブロックの動きベクトルは、このブロックにIDを付与する毎に、このようなブロックマッチングで決定される。
【0072】
類似度をより正確に見積もるために、以下のような量も考慮する。
【0073】
図16中の枠SBR3の一部はクラスタC3からはみ出しており、その面積が広いほど、図17のブロックB(t:18,11)のIDがID3である確率が低いと考えられる。そこで、ブロックB(t:18,11)のIDがID3であると仮定し、枠SBR3内の、クラスタC3に属する画素数S(t−1)を求め、図16中の枠SBR3内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値USを次式で計算し、この値をUS(ID3)とする。
【0074】
US=(S(t−1)−64)2 (2)
評価値UDの値が小さいほど相関度が高い。同様にブロックB(t:18,11)のIDがID12であると仮定し、枠SBR2内の、クラスタC12に属する画素数Sを求めて評価値USを計算し、この値をUS(ID12)とする。図16と図17の場合には、US(ID12)=0であり、US(ID3)>US(ID12)である。
【0075】
上式(1)と(2)の一次結合U=αUD+βUSを評価関数とし、評価値Uが小さいほど類似度が高いと判定する。ここにα及びβは正の定数であり、類似度の評価がより正確になるように経験的に定められる。
【0076】
図17の時刻tにおける各ブロックにつき、上記同様にしてID12を付与するかID3を付与するかを決定する。評価値の差の絶対値|U(ID12)−U(ID3)|が所定値以下の場合には誤判定される確率が大きいので、IDを付与しないで残しておき、時刻tの画像について次の量を考慮する。例えば、図17のブロックB(t:18,11)のIDが未定でこれがID3であると仮定した場合、ブロックB(t:18,11)に隣接した8個のブロックについて、ID3が付与されている個数N(t)を求め、評価値UNを次式で計算し、この値をUN(ID3)とする。
【0077】
UN=(N(t)−8)2 (3)
評価値UNの値が小さいほど相関度が高い。同様に図17中のブロックB(t:18,11)がID12であると仮定した場合、ブロックB(t:18,11)に隣接した8個のブロックについて、ID12が付与されている個数Nを求め、評価値UNを計算し、この値をUN(ID12)とする。
【0078】
また、ほぼ同一の画素値が分布しているためにブロックマッチングで求めた時刻(t−1)の動きベクトルの誤差が大きく、このため上式(1)〜(3)の一次結合U=αUD+βUS評価値の差の絶対値|U(ID12)−U(ID3)|が所定値以下になる場合も考えられるので、さらに、ブロックB(t:18,11)に対応するブロックB(t−1:14,13)及びB(t−1:11,13)の各々の周囲のブロックの動きベクトルに着目することにより、類似度の評価をより正確化する。すなわち、ブロックB(t:18,11)がID3であると仮定して求められた、時刻(t−1)の対応するブロックB(t−1:14,13)の動きベクトルVC(t−1)=V3と、このブロックB(t−1:14,13)に隣接した8個のブロックのうちIDがID3であるNX=NX3個のブロック(図16中の小黒点付ブロック)の動きベクトルVBi(t−1)、i=1〜NXについて、評価値UVを次式で計算し、この値をUV(ID3)とする。
【0079】
UV=Σ|VC(t−1)−VBi(t−1)|2/NX (4)
ここにΣはi=1〜NXについての総和を意味する。評価値UVの値が小さいほど相関度が高い。同様に、ブロックB(t:18,11)がID12であると仮定して求められた、時刻(t−1)の対応するブロックB(t−1:11,13)の動きベクトルVC=V2と、このブロックB(t−1:11,13)に隣接した8個のブロックのうちIDがID12であるNX=NX12個のブロック(図16中の×印付ブロック)の動きベクトルVBj(t−1)、j=1〜NXについて、評価値UVを計算し、この値をUV(ID12)とする。
【0080】
上式(1)〜(4)の一次結合
U=αUD+βUS+γUN+δUV (5)
を評価関数とし、評価値Uが小さいほど類似度が高いと判定する。ここにγ及びδも正の定数であり、類似度の評価がより正確になるように経験的に定められる。
【0081】
このようにして、図8のクラスタC123内のブロック毎にIDがID12であるかID3であるかが決定されるとともにその動きベクトルが決定される。すなわち、時刻tでのオブジェクトマップが決定され、図17に示すように、移動体M2が移動体M1とM3の両方に重なっていても、異なるIDをもつクラスタに分割することができる。
【0082】
同様にして、時刻tのフレーム画像とオブジェクトマップとから、時刻(t+1)でのオブジェクトマップが得られる。時刻tでC12とC3とが識別されていることと、時刻(t+1)のフレーム画像で移動体M1がM2から分離していることから、図19に示すように、時刻(t+1)では移動体M1〜M3に対応したC1〜C3が識別される。
【0083】
なお、式(5)を用いる場合、計算時間短縮のためにβ、γ及びδのうち、1つ以上を0にしてもよい。
【0084】
また、時刻tのオブジェクトマップ作成前に、時刻(t−1)のオブジェクトマップXをワークエリアにコピーしてオブジェクトマップYとし、オブジェクトマップX上でIDがIDαである各ブロックiの動きベクトルViを、オブジェクトマップY上の該ブロックiに対応したブロック及びこれに隣接したID=IDαの全てのブロックの動きベクトルVj、j=1〜pを平均化したベクトル(ΣVj)/pで置き換えてもよい。このようにすれば、ブロック内のテクスチャが隣接ブロックのそれと類似しているために動きベクトルの誤差が大きい場合、この誤差が低減される。ワークエリアへのコピーは、平均化ベクトルを一意的に定めるためである。
【0085】
次に、上記のようにして求めた時刻tのオブジェクトマップを初期条件とし、上式(5)の評価関数を用いてこのオブジェクトマップをより正確化する方法について説明する。この方法自体は、評価関数Uを除き上記公報に開示されているものと同一であるので、その概略を説明する。
【0086】
図18のクラスタC12及びC3内のブロックをBKi、i=1〜nで表す。ブロックBKiのIDが変数IDiであるとし、そのUをU(BKi,IDi)で表す。変数IDiはID12又はID3である。i=1〜nについての評価値Uの総和UT、
UT=ΣU(BKi,IDi)
が最小になるように、ID1〜IDnを決定する。ID1〜IDnの初期値は、上述のようにして求められた時刻tのオブジェクトマップにより与えられる。
【0087】
なお、本発明には外にも種々の変形例が含まれる。
【0088】
例えば、衝突事故や事故車両を自動検出する図2の装置は判定部29に特徴があり、観測量検出部26で検出する観測量は上記第1スカラーのみであってもよい。また、第1スカラーと第2スカラーを含む観測量を用いた構成は、衝突事故や事故車両の判定以外を行う装置、例えば移動体動作を自動的に分類して統計をとる装置に用いることができる。さらに、上記評価関数Uを用いた移動体追跡部25での処理方法は、各種移動体追跡装置に適用可能である。
【0089】
本発明には、以下の付記が含まれる。
【0090】
(付記1)時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する移動体異常事象検出方法において、
(a)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(b)該観測系列の、予め定められた衝突観測系列に対する類似度を算出し、
(c)該類似度が設定値より大きい場合、該第1移動体又は該第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、衝突事故であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする移動体異常事象検出方法。(1)
(付記2)上記ステップ(c)では、上記類似度が設定値より大きい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、衝突事故であると判定する、
ことを特徴とする付記1記載の移動体異常事象検出方法。(2)
(付記3)(d)上記類似度が上記設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、停止している移動体が故障であるかどうかを判定する、
ステップをさらに有することを特徴とする付記1又は2記載の移動体異常事象検出方法。(3)
(付記4)上記ステップ(d)では、上記類似度が設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、停止している移動体が故障であると判定する、
ことを特徴とする付記3記載の移動体異常事象検出方法。(4)
(付記5)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する画像処理部と、
を有する移動体異常事象検出装置において、該画像処理部は、
第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出する観測量検出部と、
該観測量の時系列を観測系列として記憶する観測系列記憶部と、
予め定められた停止禁止領域が格納される停止禁止領域記憶部と、
該観測系列の、予め定められた衝突観測系列に対する類似度を算出する類似度算出部と、
該類似度が設定値より大きい場合、該第1移動体又は該第2移動体が、該停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、衝突事故であるかどうかを判定し、その結果を出力する判定部と、
を有することを特徴とする移動体異常事象検出装置。(5)
(付記6)上記判定部は、上記類似度が設定値より大きい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、衝突事故であると判定することを特徴とする付記5記載の移動体異常事象検出装置。
【0091】
(付記7)上記判定部は、上記類似度が上記設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、停止している移動体が故障であるかどうかを判定し、その結果を出力することを特徴とする付記5又は6記載の移動体異常事象検出装置。
【0092】
(付記8)上記判定部は、上記類似度が設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、停止している移動体が故障であると判定することを特徴とする付記7記載の移動体異常事象検出装置。
【0093】
(付記9)時系列画像を処理して画像中の移動体間の動作を分類する移動体間動作分類方法において、
(a)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(b)該観測系列の参照系列に対する類似度を算出し、
(c)該類似度の値に応じて該第1移動体に対する該第2移動体の動作を分類し、
該観測量は、該第1移動体に対する該第2移動体の相対速度ベクトルVと両者間の距離dに関する量を量子化した第1スカラーと、該第1移動体に対する該第2移動体の相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを含むことを特徴とする移動体間動作分類方法。(6)
(付記10)上記第1スカラーは、V・f(d)を量子化したものであり、ここにf(d)は距離dの単調減少関数であることを特徴とする付記9記載の移動体間動作分類方法。
【0094】
(付記11)上記f(d)はk/(d+ε)であり、ε及びkは正の定数であることを特徴とする付記10記載の移動体間動作分類方法。
【0095】
(付記12)上記類似度は、隠れマルコフモデルに基づき算出された、上記観測系列が生ずる確率であり、上記参照系列はモデルパラメータを定めるための学習系列であることを特徴とする付記9乃至11のいずれか1つに記載の移動体間動作分類方法。
【0096】
(付記13)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像を処理して画像中の移動体間の動作を分類する画像処理部と、
を有する移動体間動作分類装置において、該画像処理部は、
第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出する観測量検出部と、
該観測量の時系列を観測系列として記憶する観測系列記憶部と、
該観測系列の参照系列に対する類似度を算出する類似度算出部と、
該類似度の値に応じて該第1移動体に対する該第2移動体の動作を分類する分類部とを有し、
該観測量は、該第1移動体に対する該第2移動体の相対速度ベクトルVと両者間の距離Dに関する量を量子化した第1スカラーと、該第1移動体に対する該第2移動体の相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを含むことを特徴とする移動体間動作分類装置。(7)
(付記14)上記第1スカラーは、V・f(d)を量子化したものであり、ここにf(d)は距離dの単調減少関数であることを特徴とする付記13記載の移動体間動作分類装置。
【0097】
(付記15)上記f(d)はk/(d+ε)であり、ε及びkは正の定数であることを特徴とする付記14記載の移動体間動作分類装置。
【0098】
(付記16)上記類似度は、隠れマルコフモデルに基づき算出された、上記観測系列が生ずる確率であり、上記参照系列はモデルパラメータを定めるための学習系列であることを特徴とする付記13乃至15のいずれか1つに記載の移動体間動作分類装置。
【0099】
(付記17)時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別方法。(8)
(付記18)上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む、
ことを特徴とする付記17記載の移動体識別方法。(9)
(付記19)上記時刻tのフレーム画像に対する処理の前に、上記時刻(t−1)のフレーム画像において、識別IDが付与されている各ブロックの動きベクトルを、該ブロック及びこのブロックと同一IDが付与され且つこのブロックに隣接するブロックの動きベクトルを平均化したもので置き換えることを特徴とする付記17記載の移動体識別方法。
【0100】
(付記20)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理し、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める画像処理部と、
を有する移動体識別装置において、該画像処理部は、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別装置。(10)
(付記21)上記処理(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの動きベクトルと、該時刻tでのブロックiと隣接するブロックの動きベクトルとの差の絶対値に関する量の値を含み、
上記処理(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの動きベクトルと、該時刻tでのブロックiと隣接するブロックの動きベクトルとの差の絶対値に関する量の値を含む、
ことを特徴とする付記20記載の移動体識別装置。
【符号の説明】
【0101】
10 カメラ
20 画像処理装置
21 画像メモリ
22 背景画像生成部
23 ID生成/消滅部
24 オブジェクトマップ記憶部
25 移動体追跡部
26 観測量検出部
27 観測系列記憶部
28 分類部
29 判定部
30 停止禁止領域記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故の早期発見は、迅速な救助活動により人命救助の成功率を高めるだけでなく、警察の実地検分などを迅速にすることにより事故渋滞を緩和することもできるので、様々な交通事故の認識自動化が期待されている。
【0003】
本願発明者による下記特許文献1では、時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する移動体異常事象検出方法において、
(a)時刻(t−1)のフレーム画像と時刻tのフレーム画像との相関関係に基づき時刻tのフレーム画像中の移動体を識別し、
(b)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(c)該観測系列の参照系列に対する類似度を算出して移動体間動作を分類し、
(d)該観測系列の衝突参照系列に対する該類似度が設定値より大きい場合、衝突事故であると判定する。
【0004】
この方法によれば、衝突事故などの異常事象を自動検出することができる。
【0005】
上記公報では、上記ステップ(b)の観測量として、V/(d+ε)を量子化したスカラーを用いている。ここに相対動きベクトルVは、第1移動体に対する第2移動体の相対動きベクトルVであり、εは分母が0になるのを避けるための定数である。
【0006】
この観測量を用いれば、量子化していることから、少ない参照系列で様々な移動体間動作を分類することが可能になる。
【0007】
しかしながら、移動体間動作をより詳細に分類することができないという問題があった。
【0008】
上記公報では、上記ステップ(a)において、時刻(t−1)のフレーム画像中の移動体の識別結果を利用して上記相関関係から時刻tのフレーム画像中の移動体を容易に識別することができる。
【0009】
しかし、1台のカメラで広い領域を撮像して移動体を追跡するために、路面に対し低カメラアングルで移動体を正面から撮像した場合、図13に示すように移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる。時刻(t−1)で移動体M1とM2とが識別されずに1つのクラスタとして識別され、このクラスタの代表動きベクトルを用い、上記相関関係に基き時刻tでの移動体M1とM2を含むクラスタを識別しようとするが、移動体M1とM2の速度が異なるので、正確に識別することができない。次の時刻(t+1)では移動体M2が移動体M1から分離しているが、移動体M2がM3と重なっているので、移動体M2とM3とが1つのクラスタとして識別され、移動体M2とM3の各々を識別することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−148019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、移動体間の重なりが頻繁に生じても異なる移動体として識別することが可能な、移動体を含む画像の処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様では、時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する。
【0013】
この構成によれば、ブロック毎の動きベクトルを用いているので、異なる速度の複数の移動体を含む時刻tの1つのクラスタに含まれるブロックに複数の識別IDのいずれかを付与することが可能となり、これにより1つのクラスタを異なるIDのクラスタに分割することが可能になる。すなわち、従来では追跡できなかった移動体を追跡することが可能となり、衝突事故や交通違反などのより正確な検出に寄与するところが大きい。
【0014】
例えば、上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量(例えば|VCm(t−1)−VBp(t−1)|r、r>1)のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む。
【0015】
この構成によれば、ほぼ同一の画素値が分布しているために時刻(t−1)の動きベクトルの誤差が大きくても、ブロック識別IDの付与をより正確に行うことが可能となり、結果として、衝突事故や交通違反などのより正確な検出に寄与する。
【0016】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】交差点及びこれに配置された本発明の実施例1の装置の概略を示す図である。
【図2】図1中の移動体異常事象検出装置の機能ブロック図である。
【図3】図2の判定部の処理を示すフローチャートである。
【図4】交差点への4つの入口及び交差点からの4つの出口に設定されたスリット及びブロックに付された移動体のIDを示す説明図である。
【図5】図1中の観測量検出部での処理を説明するベクトル図である。
【図6】ベクトルV/Dの量子化説明図である。
【図7】相対位置ベクトルの量子化及び時系列分類の説明図である。
【図8】(A)及び(B)はいずれも互いにすれ違う移動体間動作の分類説明図である。
【図9】(A)及び(B)はいずれも互いにすれ違う移動体間動作の分類説明図である。
【図10】衝突事故時の時系列パターン説明図である。
【図11】交差点での移動体衝突事故判定説明図である。
【図12】交差点での移動体故障判定説明図である。
【図13】移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる場合の説明図である。
【図14】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図15】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図16】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図17】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図18】オブジェクトマップ作成説明図である。
【図19】オブジェクトマップ作成説明図である。
【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。複数の図中の対応する同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の符号を付している。
【0019】
図1は、交差点及びこれに配置された本発明の実施例1の移動体異常事象検出装置の概略を示す。
【0020】
この装置は、交差点を撮像して画像信号を出力する電子カメラ10と、その画像を処理して移動体間衝突事故及び故障移動体を自動検出する移動体異常事象検出装置20とを備えている。
【0021】
図2は、この移動体異常事象検出装置20の機能ブロック図である。移動体異常事象検出装置20の構成要素のうち、記憶部以外はコンピュータによるソフトウェア又は専用のハードウェアで構成することもがきる。
【0022】
電子カメラ10で撮影された時系列画像は、例えば12フレーム/秒のレートで、画像メモリ21に格納される。
【0023】
背景画像生成部22は、記憶部と処理部とを備え、処理部は、画像メモリ21をアクセスし、例えば過去10分間の全フレームの対応するピクセルについて画素値のヒストグラムを作成し、その最頻値(モード)をそのピクセルの画素値とする画像を、移動体が存在しない背景画像として生成し、これを該記憶部に格納する。背景画像は、この処理が定期的に行われて更新される。
【0024】
ID生成/消滅部23には、図4に示す如く画像フレーム内の、交差点への4つの入口及び交差点からの4つの出口にそれぞれ配置されるスリットEN1〜EN4及びEX1〜EX4の位置及びサイズのデータが予め設定されている。ID生成/消滅部23は、画像メモリ21から入口スリットEN1〜EN4内の画像データを読み込み、これら入口スリット内に移動体が存在するかどうかをブロック単位で判定する。図4中のメッシュの升目はブロックであり、1ブロックは例えば8×8画素であり、1フレームが480×640画素の場合、1フレームは60×80ブロックに分割される。あるブロックに移動体が存在するかどうかは、このブロック内の各ピクセルと背景画像の対応するピクセルとの差の絶対値の総和が所定値以上であるかどうかにより判定する。この判定は、移動体追跡部25においても行われる。
【0025】
ID生成/消滅部23は、ブロック内に移動体が存在すると判定すると、このブロックに新たなクラスタ識別符号IDを付与する。ID生成/消滅部23は、ID付与済ブロックと隣接しているブロックに移動体が存在すると判定すると、この隣接ブロックに付与済ブロックと同一のIDを付与する。このID付与済ブロックは入口スリットに隣接しているブロックも含まれる。例えば図4中の入口スリットEN1内のブロックにはID=1が付与され、入口スリットEN4内の移動体存在ブロックにはID=5が付与される。
【0026】
IDの付与は、オブジェクトマップ記憶部24内の対応するブロックに対して行われる。オブジェクトマップ記憶部24は、上述の場合60×80ブロックの各々について、処理容易化のための情報(オブジェクトマップ)を記憶するためのものであり、この情報には、IDが付与されているかどうかのフラグ、IDが付与されている場合にはその番号と後述のブロック動きベクトルとが含まれる。なお、該フラグを用いずに、ID=0のときのIDが付与されていないと判定してもよい。また、IDの最上位ビットをフラグとしてもよい。
【0027】
入口スリットを通過したクラスタに対しては、移動体追跡部25により移動方向のブロックに対するIDの付与及び移動と反対方向のブロックに対するIDの消滅、すなわちクラスタの追跡処理が行われる。移動体追跡部25は、後述のように、時刻(t−1)のオブジェクトマップ及びフレーム画像と、時刻tのフレーム画像とに基づいて時刻tのオブジェクトマップを生成する。
【0028】
移動体追跡部25による追跡処理は、各クラスタについて出口スリット内まで行われる。
【0029】
ID生成/消滅部23はさらに、オブジェクトマップ記憶部24の内容に基づき出口スリットEX1〜EX4内のブロックにIDが付与されているかどうかを調べ、付与されていれば、出口スリットをクラスタが通過したときにそのIDを消滅させる。例えば図4中の出口スリットEX1内のブロックにIDが付されている状態から、IDが付されない状態に変化したときに、ID=3を消滅させる。消滅IDは、次の生成IDとして用いることができる。
【0030】
観測量検出部26は、オブジェクトマップ記憶部24の内容に基づいて各クラスタの平均動きベクトルをそのクラスタの動きベクトルとして求め、各クラスタ間について、相対動きベクトルV及び相対位置ベクトルを求め、さらにクラスタ間の最短距離dを求め、これらに基づいて以下のような観測量を求める。観測量検出部26はこの観測量を観測系列記憶部27に格納して、クラスタ間毎に観測系列を生成する。
【0031】
観測量として、相対動きベクトルに関するものを量子化した第1スカラーと、相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを考える。最初に、第1スカラーとその時系列について説明する。
【0032】
例えば、図5(A)に示す移動体移動体M1の動きベクトルV1と移動体移動体M2の動きベクトルV2の相対動きベクトルVは図5(B)に示す如くなる。図5(A)に示すように移動体M1とM2の間の最短距離をdとし、ベクトルV/Dを考える。ここに、D=d+εであり、εはd=0のときD>0を保証するための定数である。衝突時にはV=0、すなわちV/D=0となるが、その前後で|V/D|が大きな値になるので、V/Dの時系列から衝突を判断し易くなる。移動体M1とM2の相対的な多くの状態を簡単に分類するために、図6に示すようにベクトルV/Dを量子化しかつスカラー化する。すなわち、ベクトルV/Dの始点を中心として図6に示すように領域を分割し、各領域をスカラーで表し、ベクトルV/Dをその終点が属する領域のスカラーに量子化する。
【0033】
例えばV/D=vの時系列がv0→v1→v2である場合、{v0,v1,v2}と表記し、これを{0,1,2}と量子化する。量子化された観測量の時系列を観測系列と称す。図10に示す衝突事故時の時刻t=4〜9における観測系列は{1,2,3,0,8,7}となる。この量子化により、ある衝突パターンと類似の衝突パターンは同一観測系列となるので、様々な衝突事故を容易に認識可能になる。また、量子化により観測系列が簡単な数値列になるので、その後の認識処理が簡単になる。
【0034】
衝突事故であるかどうかの判断は、観測系列と衝突事故の参照系列(例えば実際に生じた衝突事故の観測系列)との類似度が所定値を越えるかどうかで行う。上記量子化により必要な参照系列の数を少なくすることができるが、さらにこれを少なくするために、静止座標系を回転させれば相対動作の時系列パターンが同一になる場合は観測系列も同一になるようにする。このため、例えば上記{v0,v1,v2}については、時系列の最初のベクトルv0の基準方向、例えば図6のX軸に対する角度θを求め、次に、v0,v1及びv2の各ベクトルを−θ回転させる。図5(C)はV/Dが時系列の最初のベクトルである場合の該回転を示す。この回転により、移動体M1に対する移動体M2の相対ベクトルV/Dの観測量と、移動体M2に対する移動体M1の相対ベクトル−V/Dの観測量とは同一になる。
【0035】
互いに離れた移動体移動体M1及びM2が接近してすれ違った後、互いに離れる場合は、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)のいずれかであり、点線は移動体の経路を示す。これらの場合の観測系列はそれぞれ、例えば次のようになる。
【0036】
図8(A):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
図8(B):{1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1}
図9(A):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
図9(B):{1,1,2,2,3,1,1,1,1,1,1}
これらの観測系列から明らかなように、図8(A)、図9(A)及び図9(B)の観測系列からこれらの相対動作を識別することができない。そこで、これらの相対動作を識別可能にするために、移動体M1に対する移動体M2の相対位置ベクトルを図7に示すように量子化して第2スカラーとする。すなわち、相対位置ベクトルP12の始点を中心とし、移動体M1の動きベクトルV1の方向を基準方向とし、図7に点線で示すように領域を分割し、各領域をスカラーで表し、相対位置ベクトルP12をその終点が属する領域のスカラーに量子化する。
【0037】
図8(A)に示すように互いに反対方向に進んでいる移動体M1とM2とがすれ違う場合、時刻tの相対位置ベクトルP12をP12(t)で表すと、移動体M1に対する移動体M2の相対位置ベクトルの時系列P12(t−1)、P12(t)、P12(t+1)は、{20,80,60}と量子化される。
【0038】
第1スカラーを1桁の数値とし、第2スカラーを2桁の数値かつ下位を0としたのは、両者を容易に合成可能にするためである。例えば第1スカラーが7で第2スカラーが20である場合、両者の和である26を観測量とする。第1スカラーと、移動体M2を基準にした第2スカラーとの和を観測量とすると、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)の観測系列はそれぞれ次のようになる。
【0039】
図8(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図8(B):{21,21,41,41,41,41,41,41,41,61,61}
図9(A):{61,61,42,42,43,41,41,41,41,21,21}
図9(B):{21,21,42,42,43,41,41,41,41,61,61}
第1スカラーと、移動体M1を基準にした第2スカラーとの和を観測量とすると、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)の観測系列はそれぞれ次のようになる。
【0040】
図8(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図8(B):{21,21,41,41,41,41,41,41,41,61,61}
図9(A):{21,21,82,82,83,81,81,81,81,61,61}
図9(B):{61,61,82,82,83,81,81,81,81,21,21}
図7中に矢印付直線で示すように第2スカラーが、20→80→60のように変化する場合をPAS0、20→40→60のように変化する場合をPAS1、60→40→20のように変化する場合をPAS2、60→80→20のように変化する場合をPAS3と分類する。また、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化がPASkであり、移動体M2から見た移動体M1の相対位置の変化がPASmである場合、この変化をPASkmで表す。
【0041】
図8(A)及び(B)のいずれの場合も、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化と移動体M2から移動体M1を見た装置位置ベクトルの変化は同一であり、それぞれPAS00及びPAS11と分類される。これに対し、図9(A)及び(B)のいずれの場合も、移動体M1から見た移動体M2の相対位置ベクトルの変化と移動体M2から見た移動体M1の相対値ベクトルの変化は異なり、それぞれPAS20及びPAS13と分類される。
【0042】
このように、第2スカラーも用いて移動体の相対動作を分類することにより、第1スカラーのみでは区別して認識することができなかったものが認識可能となり、状態をより正確に把握することが可能となる。
【0043】
例えば、オブジェクトマップ上のクラスタ数が3で、IDが1、2及び3であり、ID=iとID=jのクラスタ間の観測系列をOSi,jで表すと、図2の観測系列記憶部27には観測系列OS1,2、OS2,1、OS2,3、OS3,1及びOS1,3が格納されている。OSi,jとOSj,iが格納されているのは、第2スカラーの時系列に着目して上記PASkmの分類を可能にするためである。観測系列記憶部27には、各観測系列は、所定個数、例えば24個の観測量からなり、時刻が1進む毎に最も古い観測量を削除し新しい観測量を付加する。
【0044】
分類部28は、観測系列記憶部27に格納されている各クラスタ間の観測系列を読み出し、予め定められた衝突事故及びその他の参照系列との類似度を算出し、これらを分類結果として判定部29に供給する。この観測系列は、上記第1スカラーと第2スカラーとの組み合わせの観測量の時系列であり、参照系列も同様である。なお、観測系列の第1スカラーに着目して、予め定められた衝突事故の参照系列との類似度を算出し、第2スカラーに着目して、予め定められた上記PASkmの各々の参照系列との類似度を算出し、これらを分類結果として判定部29に供給してもよい。
【0045】
公知のパターン類似度計算には、隠れマルコフモデル(HMM)法やパターンマッチング法などがあり、これらのいずれかを利用することができる。例えば、上記特開2001−148019号公報に開示されているように、具体的な衝突事故の観測系列を学習系列としてパラメータを決定したHMMにより、観測系列が生ずる確率を類似度として計算する。
【0046】
ここで、図11及び図12を参照して移動体の衝突事故及び故障の検出について説明する。
【0047】
図11において、移動体M1とM2の間に図10に示すような衝突シーケンスが生じ又はこれに類似した非衝突シーケンスが生じ、最終的に移動体M1とM2とが停止しているとする。このシーケンスは、移動体M3が右折待ちの時にその後方から移動体M4が近づいたために移動体M3が少し前に移動して停止した場合と類似している。路面に対し低カメラアングルで移動体を撮像した場合には、実際には移動体間が離れていても重なって見えるために、画像上では衝突と分類される場合がある。
【0048】
しかし、移動体M3及びM4は、右折待ちのために停止が許可されている領域に存在する。これに対し、移動体M1及びM2は、停止が禁止されている領域に存在しているので、移動体M1とM2の間に衝突が生じた可能性が高い。この場合、救急車などが交差点に接近しているために移動体M1とM2が停止している可能性もある。そこで、停止している移動体M1又はM2の横を通り過ぎる移動体があれば、移動体M1とM2の衝突の可能性はさらに高くなる。
【0049】
このようなことから、
(1)移動体M1とM2の相対動作が衝突と分類され、
(2)移動体M1又はM2が停止禁止領域内に停止しており、
(3)他の車が交差点で移動している
場合には、移動体M1とM2が衝突であると判定する。
【0050】
また、図12に示すように、移動体M1が他の車と衝突していないが、移動体M1が停止禁止領域内に停止している場合には、移動体M1が故障している可能性が高い。この場合、交差点で他の移動体が移動してれば、移動体M1が故障している可能性はさらに高くなる。そこで、上記(1)が否定判定され、上記(2)及び(3)が肯定判定された場合には、移動体が故障していると判定する。
【0051】
図3は、図2の判定部29の処理を示すフローチャートである。
【0052】
(S1)判定部29は、分類部28から1つのクラスタ間についての衝突類似度CSを読み込む。
【0053】
(S2〜S4)この衝突類似度CSが設定値CS0より大きければ、フラグFをセットし、そうでなければフラグFをリセットする。
【0054】
(S5)観測系列記憶部27から、ステップS1で読み込んだクラスタ間について、観測系列を読み込み、最も新しい時点から所定数の観測量の第1スカラーがすべて0である場合、すなわち、相対動きベクトルV=0の状態が所定時間を超えている場合、次に、オブジェクトマップ記憶部24を参照してそのIDを有するクラスタに属する全てのブロックの動きベクトルが0であるかどうかを調べ、0であればこの移動体が停止していると判定する。停止していなければステップS1へ戻って他の1つのクラスタ間について全ての分類結果を読み込み、そうでなければステップS6へ進む。
【0055】
(S6)この停止しているクラスタが、停止禁止領域記憶部30に予め格納されている停止禁止領域内に存在するかどうかを調べ、存在すればステップS7へ進み、そうでなければステップS1へ戻る。
【0056】
(S7)分類部28の分類結果に、他のクラスタとの間について上記PAS00、PAS11、PAS20又はPAS13のいずれかの参照系列との類似度が設定値を越えていれば、交差点内で移動している移動体が存在すると判定してステップS8へ進み、そうでなけれなステップS1へ戻る。
【0057】
(S8〜S10)F=1であれば事故と判定し、F=0であれば移動体故障であると判定し、その結果を出力し、ステップS1へ戻る。
【0058】
このような処理により、移動体の衝突事故及び故障を高確率で自動検出することができる。
【0059】
次に、図2の移動体追跡部25において、時刻(t−1)のオブジェクトマップ及びフレーム画像と、時刻tのフレーム画像とに基づいて時刻tのオブジェクトマップを生成する方法を詳説する。
【0060】
1台のカメラで広い領域を撮像して移動体を追跡するために、路面に対し低カメラアングルで移動体を正面から撮像した場合、図13(A)〜(C)に示すように移動体同士の画像上での重なりが頻繁に生ずる。
【0061】
図14及び図15はそれぞれ、図13(A)及び(B)の拡大画像を示す。点線は、画像をブロックに分割するものである。図14において、重なった移動体M1とM2は、図2のオブジェクトマップ記憶部24において1つのクラスタC12に対応しており、移動体M1とM2とが識別されていないとする。これに対し、クラスタC3は1つの移動体M3に対応している。
【0062】
時刻tでの第i行第j列のブロックをB(t:i,j)で表す。図14に示すように、ブロックB(t−1:11,13)及びB(t−1:14,13)の動きベクトルをそれぞれV2及びV3で表す。動きベクトルV2及びV3の先端はいずれもブロックB(t−1:18,11)内に存在している。図15に示す時刻tの画像中の枠SB2及びSB3はそれぞれ、図14の画像中のブロックB(t−1:11,13)及びB(t−1:14,13)をそれぞれ動きベクトルV1及びV2移動させた領域に対応している。
【0063】
次に、動きベクトルV2及びV3の先端がブロックB(18,11)の中心に一致するように動きベクトルV2及びV3を平行移動させ、動きベクトルV2及びV3の方向を逆にし、図16に示すように、ハッチングが施されたブロックB(t−1:18,11)を−V2及び−V3移動させた枠SBR2及びSBR3を求める。枠SBR2及びSBR3内の画像はそれぞれ、図17のブロックB(t:18,11)内の画像が図16の時刻(t−1)のクラスタC12及びC3に属していた仮定したときの推定画像である。クラスタC12及びC3のIDをそれぞれID12及びID3とする。
【0064】
図16中の枠SBR2内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値UDを次式で計算し、この値をUD(ID12)とする。
【0065】
UD=Σ|SP(t−1:i,j)−BP(t:i,j)| (1)
ここにSP(t−1:i,j)及びBP(t:i,j)はそれぞれ、図16の枠SBR2内及び図17のブロックB(t:18,11)内の第i行第j列のピクセルの値であり、Σはi=1〜8及びj=1〜8についての総和(ブロック内全画素についての総和)を意味している。評価値UDの値が小さいほど相関度が高い。
【0066】
同様に図16中の枠SBR3内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値UDを計算し、この値をUD(ID3)とする。
【0067】
図16と図17の場合には、UD(ID3)<UD(ID12)となり、ブロックB(t:18,11)にID3を付与する。
【0068】
このように、ブロック毎の動きベクトルを用いることにより、複数の移動体を含む時刻tのクラスタC123に含まれるブロックに異なるIDを付与することができ、これにより1つのクラスタC123を異なるIDのクラスタに分割することが可能になる。
【0069】
図15のクラスタC123に属するブロックB(t:18,11)に対応するクラスタC12内のブロックB(t−1:11,13)及びクラスタC3内のB(t−1:14,13)の見つけ方は次の通りである。すなわち、ブロックB(t−1:i,j)の中心からブロックB(t−1:18,11)の中心までのベクトルをV(18−i,11−j)、ブロックB(t−1:i,j)の動きベクトルをV(t−1:i,j)と表記すると、
|V(18−i,11−j)−V(t−1:i,j)|<ΔV
を満たすV(t−1:i,j)をもつブロックB(t−1:i,j)を見つければよい。ここにΔVは定数であり、例えばブロックの1辺の画素数の3倍の値である。ブロックB(t:18,11)に対応するクラスタC12内のブロックが複数有り、又は、ブロックB(t:18,11)に対応するクラスタクラスタC3内のブロックが複数有る場合には、その各々についての評価値を求め、最も小さい評価値に対応したIDをブロックB(t:18,11)に付与する。
【0070】
図15のクラスタC123に属する他のブロックについても上記同様である。
【0071】
ブロックB(t:18,11)にID3を付与する上記の場合、このブロックの動きベクトルはほぼ動きベクトルV3であると推定できる。ブロックB(t:18,11)の動きベクトルをより正確に求めるために、枠SBR3を、この位置を中心として所定範囲内で1画素ずつシフトさせ、このシフト毎に該評価値を求め、評価値が最小(相関度が最大)になったときの枠SBR3の中心からブロックB(t:18,11)の中心へ向かうベクトルを、ブロックB(t:18,11)の動きベクトルと決定する。時刻tでのブロックの動きベクトルは、このブロックにIDを付与する毎に、このようなブロックマッチングで決定される。
【0072】
類似度をより正確に見積もるために、以下のような量も考慮する。
【0073】
図16中の枠SBR3の一部はクラスタC3からはみ出しており、その面積が広いほど、図17のブロックB(t:18,11)のIDがID3である確率が低いと考えられる。そこで、ブロックB(t:18,11)のIDがID3であると仮定し、枠SBR3内の、クラスタC3に属する画素数S(t−1)を求め、図16中の枠SBR3内の画像と図17中のブロックB(t:18,11)内の画像との相関度に関係した評価値USを次式で計算し、この値をUS(ID3)とする。
【0074】
US=(S(t−1)−64)2 (2)
評価値UDの値が小さいほど相関度が高い。同様にブロックB(t:18,11)のIDがID12であると仮定し、枠SBR2内の、クラスタC12に属する画素数Sを求めて評価値USを計算し、この値をUS(ID12)とする。図16と図17の場合には、US(ID12)=0であり、US(ID3)>US(ID12)である。
【0075】
上式(1)と(2)の一次結合U=αUD+βUSを評価関数とし、評価値Uが小さいほど類似度が高いと判定する。ここにα及びβは正の定数であり、類似度の評価がより正確になるように経験的に定められる。
【0076】
図17の時刻tにおける各ブロックにつき、上記同様にしてID12を付与するかID3を付与するかを決定する。評価値の差の絶対値|U(ID12)−U(ID3)|が所定値以下の場合には誤判定される確率が大きいので、IDを付与しないで残しておき、時刻tの画像について次の量を考慮する。例えば、図17のブロックB(t:18,11)のIDが未定でこれがID3であると仮定した場合、ブロックB(t:18,11)に隣接した8個のブロックについて、ID3が付与されている個数N(t)を求め、評価値UNを次式で計算し、この値をUN(ID3)とする。
【0077】
UN=(N(t)−8)2 (3)
評価値UNの値が小さいほど相関度が高い。同様に図17中のブロックB(t:18,11)がID12であると仮定した場合、ブロックB(t:18,11)に隣接した8個のブロックについて、ID12が付与されている個数Nを求め、評価値UNを計算し、この値をUN(ID12)とする。
【0078】
また、ほぼ同一の画素値が分布しているためにブロックマッチングで求めた時刻(t−1)の動きベクトルの誤差が大きく、このため上式(1)〜(3)の一次結合U=αUD+βUS評価値の差の絶対値|U(ID12)−U(ID3)|が所定値以下になる場合も考えられるので、さらに、ブロックB(t:18,11)に対応するブロックB(t−1:14,13)及びB(t−1:11,13)の各々の周囲のブロックの動きベクトルに着目することにより、類似度の評価をより正確化する。すなわち、ブロックB(t:18,11)がID3であると仮定して求められた、時刻(t−1)の対応するブロックB(t−1:14,13)の動きベクトルVC(t−1)=V3と、このブロックB(t−1:14,13)に隣接した8個のブロックのうちIDがID3であるNX=NX3個のブロック(図16中の小黒点付ブロック)の動きベクトルVBi(t−1)、i=1〜NXについて、評価値UVを次式で計算し、この値をUV(ID3)とする。
【0079】
UV=Σ|VC(t−1)−VBi(t−1)|2/NX (4)
ここにΣはi=1〜NXについての総和を意味する。評価値UVの値が小さいほど相関度が高い。同様に、ブロックB(t:18,11)がID12であると仮定して求められた、時刻(t−1)の対応するブロックB(t−1:11,13)の動きベクトルVC=V2と、このブロックB(t−1:11,13)に隣接した8個のブロックのうちIDがID12であるNX=NX12個のブロック(図16中の×印付ブロック)の動きベクトルVBj(t−1)、j=1〜NXについて、評価値UVを計算し、この値をUV(ID12)とする。
【0080】
上式(1)〜(4)の一次結合
U=αUD+βUS+γUN+δUV (5)
を評価関数とし、評価値Uが小さいほど類似度が高いと判定する。ここにγ及びδも正の定数であり、類似度の評価がより正確になるように経験的に定められる。
【0081】
このようにして、図8のクラスタC123内のブロック毎にIDがID12であるかID3であるかが決定されるとともにその動きベクトルが決定される。すなわち、時刻tでのオブジェクトマップが決定され、図17に示すように、移動体M2が移動体M1とM3の両方に重なっていても、異なるIDをもつクラスタに分割することができる。
【0082】
同様にして、時刻tのフレーム画像とオブジェクトマップとから、時刻(t+1)でのオブジェクトマップが得られる。時刻tでC12とC3とが識別されていることと、時刻(t+1)のフレーム画像で移動体M1がM2から分離していることから、図19に示すように、時刻(t+1)では移動体M1〜M3に対応したC1〜C3が識別される。
【0083】
なお、式(5)を用いる場合、計算時間短縮のためにβ、γ及びδのうち、1つ以上を0にしてもよい。
【0084】
また、時刻tのオブジェクトマップ作成前に、時刻(t−1)のオブジェクトマップXをワークエリアにコピーしてオブジェクトマップYとし、オブジェクトマップX上でIDがIDαである各ブロックiの動きベクトルViを、オブジェクトマップY上の該ブロックiに対応したブロック及びこれに隣接したID=IDαの全てのブロックの動きベクトルVj、j=1〜pを平均化したベクトル(ΣVj)/pで置き換えてもよい。このようにすれば、ブロック内のテクスチャが隣接ブロックのそれと類似しているために動きベクトルの誤差が大きい場合、この誤差が低減される。ワークエリアへのコピーは、平均化ベクトルを一意的に定めるためである。
【0085】
次に、上記のようにして求めた時刻tのオブジェクトマップを初期条件とし、上式(5)の評価関数を用いてこのオブジェクトマップをより正確化する方法について説明する。この方法自体は、評価関数Uを除き上記公報に開示されているものと同一であるので、その概略を説明する。
【0086】
図18のクラスタC12及びC3内のブロックをBKi、i=1〜nで表す。ブロックBKiのIDが変数IDiであるとし、そのUをU(BKi,IDi)で表す。変数IDiはID12又はID3である。i=1〜nについての評価値Uの総和UT、
UT=ΣU(BKi,IDi)
が最小になるように、ID1〜IDnを決定する。ID1〜IDnの初期値は、上述のようにして求められた時刻tのオブジェクトマップにより与えられる。
【0087】
なお、本発明には外にも種々の変形例が含まれる。
【0088】
例えば、衝突事故や事故車両を自動検出する図2の装置は判定部29に特徴があり、観測量検出部26で検出する観測量は上記第1スカラーのみであってもよい。また、第1スカラーと第2スカラーを含む観測量を用いた構成は、衝突事故や事故車両の判定以外を行う装置、例えば移動体動作を自動的に分類して統計をとる装置に用いることができる。さらに、上記評価関数Uを用いた移動体追跡部25での処理方法は、各種移動体追跡装置に適用可能である。
【0089】
本発明には、以下の付記が含まれる。
【0090】
(付記1)時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する移動体異常事象検出方法において、
(a)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(b)該観測系列の、予め定められた衝突観測系列に対する類似度を算出し、
(c)該類似度が設定値より大きい場合、該第1移動体又は該第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、衝突事故であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする移動体異常事象検出方法。(1)
(付記2)上記ステップ(c)では、上記類似度が設定値より大きい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、衝突事故であると判定する、
ことを特徴とする付記1記載の移動体異常事象検出方法。(2)
(付記3)(d)上記類似度が上記設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、停止している移動体が故障であるかどうかを判定する、
ステップをさらに有することを特徴とする付記1又は2記載の移動体異常事象検出方法。(3)
(付記4)上記ステップ(d)では、上記類似度が設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、停止している移動体が故障であると判定する、
ことを特徴とする付記3記載の移動体異常事象検出方法。(4)
(付記5)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像を処理して画像中の移動体の異常事象を検出する画像処理部と、
を有する移動体異常事象検出装置において、該画像処理部は、
第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出する観測量検出部と、
該観測量の時系列を観測系列として記憶する観測系列記憶部と、
予め定められた停止禁止領域が格納される停止禁止領域記憶部と、
該観測系列の、予め定められた衝突観測系列に対する類似度を算出する類似度算出部と、
該類似度が設定値より大きい場合、該第1移動体又は該第2移動体が、該停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、衝突事故であるかどうかを判定し、その結果を出力する判定部と、
を有することを特徴とする移動体異常事象検出装置。(5)
(付記6)上記判定部は、上記類似度が設定値より大きい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、衝突事故であると判定することを特徴とする付記5記載の移動体異常事象検出装置。
【0091】
(付記7)上記判定部は、上記類似度が上記設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しているかどうかに基づいて、停止している移動体が故障であるかどうかを判定し、その結果を出力することを特徴とする付記5又は6記載の移動体異常事象検出装置。
【0092】
(付記8)上記判定部は、上記類似度が設定値より小さい場合、上記第1移動体又は上記第2移動体が、予め定められた停止禁止領域に停止しており、且つ、他の移動体が移動しているとき、停止している移動体が故障であると判定することを特徴とする付記7記載の移動体異常事象検出装置。
【0093】
(付記9)時系列画像を処理して画像中の移動体間の動作を分類する移動体間動作分類方法において、
(a)第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出し、該観測量の時系列を観測系列として記憶し、
(b)該観測系列の参照系列に対する類似度を算出し、
(c)該類似度の値に応じて該第1移動体に対する該第2移動体の動作を分類し、
該観測量は、該第1移動体に対する該第2移動体の相対速度ベクトルVと両者間の距離dに関する量を量子化した第1スカラーと、該第1移動体に対する該第2移動体の相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを含むことを特徴とする移動体間動作分類方法。(6)
(付記10)上記第1スカラーは、V・f(d)を量子化したものであり、ここにf(d)は距離dの単調減少関数であることを特徴とする付記9記載の移動体間動作分類方法。
【0094】
(付記11)上記f(d)はk/(d+ε)であり、ε及びkは正の定数であることを特徴とする付記10記載の移動体間動作分類方法。
【0095】
(付記12)上記類似度は、隠れマルコフモデルに基づき算出された、上記観測系列が生ずる確率であり、上記参照系列はモデルパラメータを定めるための学習系列であることを特徴とする付記9乃至11のいずれか1つに記載の移動体間動作分類方法。
【0096】
(付記13)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像を処理して画像中の移動体間の動作を分類する画像処理部と、
を有する移動体間動作分類装置において、該画像処理部は、
第1移動体に対する第2移動体の相対動作の特徴量を観測量として検出する観測量検出部と、
該観測量の時系列を観測系列として記憶する観測系列記憶部と、
該観測系列の参照系列に対する類似度を算出する類似度算出部と、
該類似度の値に応じて該第1移動体に対する該第2移動体の動作を分類する分類部とを有し、
該観測量は、該第1移動体に対する該第2移動体の相対速度ベクトルVと両者間の距離Dに関する量を量子化した第1スカラーと、該第1移動体に対する該第2移動体の相対位置ベクトルを量子化した第2スカラーとを含むことを特徴とする移動体間動作分類装置。(7)
(付記14)上記第1スカラーは、V・f(d)を量子化したものであり、ここにf(d)は距離dの単調減少関数であることを特徴とする付記13記載の移動体間動作分類装置。
【0097】
(付記15)上記f(d)はk/(d+ε)であり、ε及びkは正の定数であることを特徴とする付記14記載の移動体間動作分類装置。
【0098】
(付記16)上記類似度は、隠れマルコフモデルに基づき算出された、上記観測系列が生ずる確率であり、上記参照系列はモデルパラメータを定めるための学習系列であることを特徴とする付記13乃至15のいずれか1つに記載の移動体間動作分類装置。
【0099】
(付記17)時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別方法。(8)
(付記18)上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む、
ことを特徴とする付記17記載の移動体識別方法。(9)
(付記19)上記時刻tのフレーム画像に対する処理の前に、上記時刻(t−1)のフレーム画像において、識別IDが付与されている各ブロックの動きベクトルを、該ブロック及びこのブロックと同一IDが付与され且つこのブロックに隣接するブロックの動きベクトルを平均化したもので置き換えることを特徴とする付記17記載の移動体識別方法。
【0100】
(付記20)時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理し、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める画像処理部と、
を有する移動体識別装置において、該画像処理部は、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別装置。(10)
(付記21)上記処理(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの動きベクトルと、該時刻tでのブロックiと隣接するブロックの動きベクトルとの差の絶対値に関する量の値を含み、
上記処理(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの動きベクトルと、該時刻tでのブロックiと隣接するブロックの動きベクトルとの差の絶対値に関する量の値を含む、
ことを特徴とする付記20記載の移動体識別装置。
【符号の説明】
【0101】
10 カメラ
20 画像処理装置
21 画像メモリ
22 背景画像生成部
23 ID生成/消滅部
24 オブジェクトマップ記憶部
25 移動体追跡部
26 観測量検出部
27 観測系列記憶部
28 分類部
29 判定部
30 停止禁止領域記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別方法。
【請求項2】
上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む、
ことを特徴とする請求項1記載の移動体識別方法。
【請求項3】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理し、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める画像処理部と、
を有する移動体識別装置において、該画像処理部は、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別装置。
【請求項1】
時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理する移動体識別方法であって、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める移動体識別方法において、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別方法。
【請求項2】
上記ステップ(a)の評価値は、上記時刻tのブロックiの識別IDがIDjであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックmの動きベクトルVCm(t−1)と、時刻(t−1)のブロックmと隣接する、識別IDがIDjであるブロックの動きベクトルVBp(t−1)、p=1〜Naとの差の絶対値|VCm(t−1)−VBp(t−1)|に関する量のpについての総和を含み、
上記ステップ(b)の評価値は、該時刻tのブロックiの識別IDがIDkであると仮定したときの時刻(t−1)の対応するブロックnの動きベクトルVCn(t−1)と、時刻(t−1)のブロックnと隣接する、識別IDがIDkであるブロックの動きベクトルVBq(t−1)、q=1〜Nbとの差の絶対値|VCn(t−1)−VBq(t−1)|に関する量のqについての総和を含む、
ことを特徴とする請求項1記載の移動体識別方法。
【請求項3】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
格納された該時系列画像の各々を、複数画素を含むブロックに分割して処理し、時刻(t−1)のフレーム画像に含まれている複数の移動体の識別IDが、ブロック単位で付与されているとともにブロック単位で移動体の動きベクトルが求められている場合に、時刻tのフレーム画像に含まれている複数の移動体のIDを、ブロック単位で付与するとともにブロック単位で移動体の動きベクトルを求める画像処理部と、
を有する移動体識別装置において、該画像処理部は、
(a)該識別IDがIDjである時刻(t−1)のブロックjをその動きベクトルVjで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応するブロックiの枠を、−Vj移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、時刻tのブロックiの画像との相関度に関係した評価値を計算し、
(b)該識別IDがIDkである時刻(t−1)のブロックkをその動きベクトルVkで移動させたときの、時刻tの画像フレーム中の対応する該ブロックjの枠を、−Vk移動させ、移動した枠内の時刻(t−1)の画像と、該時刻tのブロックjの画像との該相関度に関係した評価値を計算し、
(c)ステップ(a)と(b)で算出された評価値の大小関係に基づいて、該時刻tのブロックiがIDjであるかIDkであるかを決定する、
ことを特徴とする移動体識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−3780(P2012−3780A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196218(P2011−196218)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2010−25228(P2010−25228)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2010−25228(P2010−25228)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
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