移動局測位システム、移動局測位システムに適用可能な移動局および基地局
【課題】移動局の送信電力を制御することができるとともに、測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局の測位を精度よく行なうことができる移動局測位システムを提供する。
【解決手段】測定された準備信号の受信電力に基づいて送信電力決定部により測位信号の送信電力が決定され、移動局の測位信号送信部により測位信号が決定された送信電力により送信されるので、準備信号の受信電力の大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局の測位信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、測位部により、複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の測位信号受信部においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比に基づいて移動局の位置が算出される。
【解決手段】測定された準備信号の受信電力に基づいて送信電力決定部により測位信号の送信電力が決定され、移動局の測位信号送信部により測位信号が決定された送信電力により送信されるので、準備信号の受信電力の大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局の測位信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、測位部により、複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の測位信号受信部においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比に基づいて移動局の位置が算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、測位信号の送信出力を制御することにより消費電力の低減を行なうことを可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が送信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう方法が提案されている。この方法においては、例えば、前記電波の受信電力と送信局と受信局との距離、すなわち移動局と基地局との距離との関係を予め算出しておき、例えばRSSI値などとして測定される受信電力と前記関係とに基づいて前記受信電力を測定した基地局と電波の発信源である移動局との距離を算出し、算出される前記複数の基地局と移動局との距離に基づいて移動局の位置が推定される。
【0003】
ところで、移動局は可搬性を向上させるため、電池などの電源により電気が供給されて駆動される。そのため電池が消耗した場合には交換したりあるいは充電しなければならない。逆に言えば、電池の交換や充電を行なうことなく長時間駆動させるためには、移動局における消費電力を低減することにより、電源の消耗を抑えることが求められる。
【0004】
移動局においては電波の送信に要する電力は、移動局における最も大きい消費電力を要する作動の一つであるので、送信電力を低減することができれば、電池の消耗を抑えることができる。しかしながら、どの程度送信電力を低減するかの判断を誤ると、例えば移動局の位置の算出(測位)に必要となる数の基地局において移動局から送信された電波を受信することができず、移動局の測位ができなくなるおそれがあった。
【0005】
なお、特許文献1においては、干渉波の影響を低減するために、干渉源となる無線基地局あるいは移動局の送信電力を制御する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−22589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、測定された受信電力と、予め得られる受信電力と距離との関係に基づいて移動局と基地局との距離を算出し、移動局の測位を行なう方法においては、例えば移動局から送信される電波は同一の出力により送信されることが必要とされる。また、電波の伝搬距離が長くなると、伝搬距離に対する電波の受信電力の減衰が小さくなるため、電波の受信電力を検出可能な分解能が同一である場合には、伝搬距離が長くなるほど検出可能な伝搬距離の分解能が低下する。そのため、移動局と基地局との距離の測定を精度よく行なうためには、移動局における電波の送信電力を、目的とする測位精度に見合う伝搬距離の分解能を得られる程度に大きくする必要があり、そのため消費電力が大きくなるという課題があった。
【0008】
かかる場合において、消費電力を低減するためには、移動局測位システムの作動を間欠的に行なうことや、あるいは充電量など電池の状態に応じて複数の測位方式を切り替えて測位を行なう移動局測位システムが提案されている。かかる方法によれば、一定の消費電力の低減は見込めるものの、測位のための処理に時間を要したり、あるいは複数の測位方式に応じた演算プログラムなどの測位エンジンを搭載しておく必要があり、機構が複雑となるなどの問題があった。
【0009】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該基地局がそれぞれ受信した電波の受信電力に関する値と該基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムにおいて、移動局における電波の送信電力を制御することにより、移動局の測位の精度を落とすことなく移動局における消費電力を低減することの可能な移動局測位システム、およびその移動局測位システムに適用可能な移動局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、(b)前記基地局は、所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(c)前記移動局から送信される前記測位信号を受信し、受信された該測位信号の受信電力を測定する測位信号受信部と、を有し、(d)前記移動局は、前記準備信号を受信し、受信された該準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、(e)該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(f)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、(g)前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明によれば、前記複数の基地局の前記準備信号送信部により所定の出力により送信された準備信号が、それぞれ移動局の準備信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、前記送信電力決定部により、測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力が決定され、決定された送信電力により移動局の前記測位信号送信部により前記測位信号が送信されるので、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局の前記測位信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、そして、前記測位部により、前記複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置が算出されるので、移動局による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局の測位を精度よく行なうことができる。
【0012】
好適には、請求項2にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、前記準備信号受信部によって測定される前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0013】
さらに好適には、請求項3にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0014】
また好適には、請求項4にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信電力測定部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0015】
好適には、請求項5にかかる移動局測位システムは、前記複数の基地局の準備信号送信部は、それぞれ同一の出力により前記準備信号を出力すること、を特徴とする。このようにすれば、前記複数の基地局からされる準備信号を移動局において受信した際の受信電力は、移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの距離に応じた値となるので、前記準備信号の受信電力に応じて前記複数の基地局のそれぞれについて、前記移動局からの距離を相対的に評価することができる。
【0016】
好適には、請求項6にかかる移動局測位システムは、前記基地局は、前記準備信号送信部による前記準備信号の出力の大きさを前記移動局に通知する準備信号送信出力通知部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記基地局が複数の出力により前記準備信号を送信可能とされる場合において、前記移動局は何れの出力により前記準備信号が送信されたかを知ることができる。
【0017】
また、請求項7にかかる発明は、(a)前記準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、(b)該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(c)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、(d)請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であることを特徴とする移動局である。このようにすれば、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。
【0018】
また、請求項8にかかる発明は、(a)移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、(b)前記基地局は、前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された前記準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、(c)該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、(d)前記移動局は、予め定められた所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(e)前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(f)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、(g)前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記移動局の準備信号送信部により所定の出力で送信される準備信号は、前記基地局の受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、その測定された準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値が算出され、該送信電力要求値による測位信号の送信が前記移動局に指示される。そして、前記移動局の送信電力決定部により、前記複数の基地局からそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて前記測位信号の送信電力が決定され、前記測位信号送信部により、決定された送信電力により前記測位信号の送信が行なわれるので、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、前記測位信号は、前記基地局のそれぞれにおける受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、前記測位部により、前記複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置が算出されるので、移動局による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局の測位を精度よく行なうことができる。
【0019】
好適には、請求項9にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の前記受信部によってそれぞれ測定される前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、前記受信部によって測定される前記準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0020】
さらに好適には、請求項10にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0021】
また好適には、請求項11にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0022】
また、請求項12にかかる発明は、(a)所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(b)前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(c)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、(d)前記移動局測位システムに適用可能な移動局である。このようにすれば、前記複数の基地局のそれぞれから指示される送信電力要求値の大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。
【0023】
また、請求項13にかかる発明は、(a)前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、(b)該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に指示する送信電力要求部と、を有し、(c)前記移動局測位システムに適用可能な基地局である。このようにすれば、基地局において受信した信号の受信強度を測定することができるので、準備信号の受信電力に基づいて、測位信号の送信電力の要求値を算出し、移動局にその送信電力要求値により測位信号の送信を指示することができるとともに、移動局の測位に必要となる測位信号の受信強度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた1局の移動局10と、既知の位置に設置された4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0026】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0027】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部30とを機能的に有する。
【0028】
無線部24は、送受信切換部25、可変ゲインアンプ26、送受信回路28、ローノイズアンプ27などを含んで構成される。送受信切換部25は無線部24における電波の送信状態と受信状態とを選択的に切り換える。なお送受信切換部25による切換には、送信状態および受信状態に加え、その何れでもない状態、すなわち、移動局10が電波の送信も受信も行なわない状態が選択可能とされてもよい。
【0029】
可変ゲインアンプ26は、無線部24が電波の送信状態である場合に、後述する送受信回路28によって生成される送信波を増幅し、アンテナ22により送信する。このとき、可変ゲインアンプ26におけるゲイン(増幅率)は変更可能とされており、具体的には後述する制御部30によって設定される出力となるように増幅率が設定される。
【0030】
ローノイズアンプ27は、無線部24が電波の受信状態である場合に、アンテナ22により受信した電波を増幅する低雑音増幅器である。ローノイズアンプ27により増幅された受信波は、後述する送受信回路28に送られ、所定の選局動作、復調処理などが行なわれる。
【0031】
送受信回路28は、無線部24が電波の送信状態である場合には送信波を生成するとともに、電波の受信状態である場合には受信波から信号を取り出す。具体的には送受信回路28は、後述する制御部30により生成される送信信号に対し、例えば拡散処理などの所定の変調処理を加えた後、所定の周波数の搬送波により変調を行ない送信波を生成する。また、ローノイズアンプ27により増幅された受信波に対し、所定の復号処理を行なうことにより受信波に含まれる信号波を取り出す。送受信回路28は、後述する準備信号受信部34が検出するための信号強度に対応する強度信号を生成するRSSI検出部29を含んでいる。
【0032】
制御部30は、前記無線部24の作動を制御するものであって、後述する測位信号送信部32、送信電力決定部33、準備信号受信部34などを含んで構成される。具体的には制御部30は例えば既知のマイコンなどによって実装され、タイマー、メモリ、演算ユニットなどを要素として構成されている。
【0033】
このうち、準備信号受信部34は、基地局12から送信され、移動局10の無線部24により受信された準備信号からRSSI検出部29により生成された強度信号の強度を検出する。この信号強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。
【0034】
送信電力決定部33は、複数の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値に基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、予め定められた所定順位である4番めに大きい値Prefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pwの値を
Pw=Pref+Pth−P0・・・(1)
のように算出する。なお、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0の値は、予め設定され移動局10と基地局12との間で共有された値が用いられても良い。また、例えば基地局12における送信電力が例えば予め設定された複数の送信電力の値から選択可能とされていたり、あるいは連続的に変化させることによりその送信電力を設定することができるなど、その送信電力の値が変更可能である場合においては、後述する準備信号送信部52が準備信号送信電力通知部59を更に有し、該準備信号送信電力通知部59により準備信号の送信時においてその準備信号の送信出力であるP0の値についての情報が含めることにより準備信号の送信の度に基地局12から移動局10に通知されるようにしてもよい。この準備信号送信電力通知部59が準備信号送信出力通知部に対応する。具体的には準備信号を送信する際の送信電力P0は、各基地局12から送信された準備信号が移動局10において識別可能な程度に受信することができる受信強度となるように設定され、より具体的には、移動局10と基地局12とが最も離れた距離にある場合における減衰量を考慮して設定される。
【0035】
図5は、所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信電力Vr(dBm)との一般的な関係を示したものである。図5に示す関係を用いることにより、電波の受信電力Vrが検出されると、その受信電力の値に基づいて電波の送信局との距離を推定することが可能である。しかしながら、図5に示す関係は、受信電力Vrの値が低くなるほど勾配が緩やかな曲線で表わされるので、例えば受信電力Vrの測定に一定の誤差が生ずる場合に、受信電力Vrの値が小さくなるほど測定誤差が電波の伝搬距離Dに及ぼす影響が大きくなる。一方で、受信電力Vrを測定する場合には、機器に分解能の影響により測定の誤差あるいは限界が生じうる。そのため、図5に示すような関係を用いて受信した電波の受信電力の値に基づいて電波の送信局との距離を推定する際にその距離に許容される誤差が予め設定される場合には、その誤差を満たすために後述する基地局12の測位信号受信部51における分解能や基地局12の無線部44におけるノイズ、アンテナ42のアンテナゲインなどに基づいて、測位信号を受信する受信電力の最小値が存在する。かかる最小値が前記測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに対応する。
【0036】
測位信号送信部32は、前記送信電力決定部33により決定された送信電力Pwにより測位信号が送信されるように可変ゲインアンプ26の増幅率を制御すると共に、送受信回路28を制御することにより無線部24に送信信号を送信させる。また、自局の識別符号などの情報を含み送信データを生成して送受信回路28に送出する。
【0037】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ42を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部44と前記無線部44を制御するための制御部50と、通信ケーブル18により接続されたサーバ14や他の基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース56とを機能的に有する。
【0038】
無線部44は、送受信切換部45、アンプ46、送受信回路48、ローノイズアンプ47、RSSI検出部49などを含んで構成される。この無線部44は前述の移動局10の無線部24とほぼ同様に構成され、送受信切換部45、アンプ46、送受信回路48、ローノイズアンプ47、RSSI検出部49はそれぞれ移動局10の無線部24における送受信切換部25、可変ゲインアンプ26、送受信回路28、ローノイズアンプ27、RSSI検出部29と同様の機能を有する。なお、アンプ46は移動局10の可変ゲインアンプ26と異なり、その増幅率が変更可能にされる必要はなく、少なくとも予め定められた所定の出力により準備信号を含む電波が送信されるようにその増幅率が固定されていればよい。
【0039】
制御部50は、前記無線部44の作動を制御するものであって、後述する測位信号受信部51、準備信号送信部52などを含んで構成される。具体的には制御部50は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0040】
このうち、準備信号送信部52は、前記予め定められた所定の出力P0(dBm)により前記無線部44により所定の準備信号を送信させる。この準備信号は、基地局12のそれぞれに固有で相互に異なる識別符号を含むなどにより、準備信号を受信した移動局10は何れの基地局12から送信されたものであるかを識別することができる。
【0041】
測位信号受信部51は、移動局10から送信され、基地局12の無線部44により受信された測位信号の受信強度をRSSI検出部49を経由して検出する。この受信強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。また検出された受信強度を通信インタフェース56を介してサーバ14に送信する。
【0042】
図4は、サーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部62と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部64と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース60とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0043】
以下、測位部64による移動局10の測位の手順について説明する。まず、測位部64は移動局10の無線部24が所定の出力Pwにより送信した測位信号を前記各基地局12が受信した際の、各基地局12の測位信号受信部51において検出される受信強度を取得する。前述のように取得される受信強度の値は、デシベル単位で表された受信電力であり、その単位はdBmを用いて表される。
【0044】
続いて測位部64は、前記複数の基地局12から2つの基地局の組み合わせである基地局対を少なくとも3対生成する。例えば、図1に示すように第1基地局12A乃至第4基地局12Dのうち、第1基地局12A乃至第3基地局12Cの3つの基地局において前記測位信号が受信された場合には、第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3対の基地局対を生成する。
【0045】
続いて測位部64は、生成した各基地局対を構成する2つの基地局における前記受信電力の比を算出する。本実施例においては、各基地局における受信電力は後述するように対数表現されたデシベル単位で表わされるので、受信電力の比は受信電力の差として表現される。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第2基地局12Bにおける測位信号の受信電力Vr2(dBm)との差ΔVr12(dBm)をΔVr12=Vr1−Vr2、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第3基地局12Cにおける測位信号の受信電力Vr3(dBm)との差ΔVr13(dBm)をΔVr13=Vr1−Vr3、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第4基地局12Dにおける測位信号の受信電力Vr4(dBm)との差ΔVr14(dBm)をΔVr14=Vr1−Vr4、のようにそれぞれ算出する。
【0046】
さらに測位部64は、算出された前記各基地局対における受信電力差に基づいて、前記基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出する。この距離の比の算出は次のように行なわれる。まず、移動局からの電波を受信した基地局において、その受信電力Vr(dBm)と移動局と基地局との距離D(m)との関係は、次式(1)によって与えられる。
Vr=−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+Pt …(1)
ここで、GTA(dBi)は送信アンテナゲイン、すなわち送信側である移動局10のアンテナ22のゲイン、GRA(dBi)は受信アンテナゲイン、すなわち受信側である基地局12のアンテナ42のゲイン、Pt(dBm)は移動局10における測位信号の送信電力Pw、f(Hz)は測位信号を送信する電波の周波数、c(m/s)は光速、すなわち電波の伝搬速度である。
【0047】
この式(1)を用いて、例えば第1基地局12Aの受信電力Vr1と第2基地局12Bの受信電力Vr2との差ΔVr12は、次式(2)で表される。
ΔVr12=Vr1−Vr2
=−20log(4πD1f/c)+GTA+GRA+Pt
−(−20log(4πD2f/c)+GTA+GRA+Pt)
=−20log(4πD1f/c)+20log(4πD2f/c)
=20log(D2/D1) …(2)
ここで、D1、D2はそれぞれ、第1基地局12Aと基地局10との距離および第2基地局12Bと基地局10との距離である。このように、基地局対の受信電力の差ΔVr12は、移動局10の送信電力Ptを含まないものとなり、送信電力Ptの影響を受けることがない。さらに、前記(2)式より、
(D2/D1)=exp(ΔVr12/20) …(3)
となり、基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出することができる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1と第2基地局12Bにおける測位信号の受信電力Vr2との差ΔVr12に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第2基地局12Bと移動局10との距離D2との比(距離比)(D2/D1)を、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1と第3基地局12Cにおける測位信号の受信電力Vr3との差ΔVr13に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第3基地局12Cと移動局10との距離D3との比(D3/D1)を、第1基地局12Aの受信電力Vr1と第4基地局12Dの受信電力VR4との差ΔVr14に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第4基地局12Dと移動局10との距離D4との比(D4/D1)を、それぞれ算出する。
【0048】
このとき、移動局10の位置は、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの位置との関係において、第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第2基地局12Bと移動局10との距離D2との比(距離比)が(D2/D1)となる条件満たす解集合S1のいずれか1点にある。同様に、移動局10の位置は、第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第3基地局12Cと移動局10との距離D3との比(D3/D1)となる条件満たす解集合S2のいずれか1点および第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第4基地局12Dと移動局10との距離D4との比(D4/D1)となる条件満たす解集合S3のいずれか1点にある。従って、移動局10の位置は、これらの条件を全て満たす、解集合S1、S2およびS3の積集合S=S1∩S2∩S3のいずれか1点である。
【0049】
そのため測位部64は、このように算出された基地局対ごとの距離比を満たす解の集合である解集合S1〜S3を基地局対ごとに算出する。ここで、図6に示すように、平面上において2つの点S、Rからの距離がm:n(n≠1)であるような点Pの軌跡は、線分SRを内分する点をA、外分する点をBとすれば、線分ABを直径とする円82、すなわちアポロニウスの円となることから、測位部64は、このアポロニウスの円に基づいて、算出された基地局対ごとの距離比、すなわち基地局対を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離の比を実現する前記移動局10の位置を表す点の連なりである軌跡を生成する。この軌跡が解集合に対応する。具体的には、図6の点Sに基地局12Sが、点Rに基地局12Rが存在し、前記測位部64によって算出される基地局12Sと移動局との距離と、基地局12Rと移動局との距離との比(DS/DR)が
DS/DR = m/n
である場合には、移動局10の位置を表す軌跡すなわち解集合は図6の円82で表されることになる。
【0050】
具体的に例えば、第1移動局12Aと第2移動局12Bとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D2/D1)の値をa、第1移動局12Aの座標を(X1,Y1)、第2移動局12Bの座標を(X2,Y2)、移動局10の座標を(x,y)とすると、
【数1】
となって、円の軌跡を表す式(4)が得られる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、同様に第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dからなる基地局対のそれぞれについても、
【数2】
のように、式(5)、(6)で表される軌跡を算出する。なお、前記式(5)においてbは第1移動局12Aと第3移動局12Cとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D3/D1)の値であり、前記式(6)においてcは第1移動局12Aと第4移動局12Dとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D4/D1)の値である。これら式(4)〜(6)のそれぞれを満たす解(x,y)の集合である軌跡が解集合S1〜S3に対応する。
【0051】
測位部64は、算出された解集合S1〜S3の積集合Sを算出することにより、移動局10の位置を算出する。本実施例においては、前記解集合はそれぞれ円を表す軌跡であることから、これら複数の解集合S1〜S3に対応する軌跡の交点が、積集合Sに対応する。具体的には、前記複数の軌跡をそれぞれ表す数式を同時に満たす点を算出することによって、その交点の位置を算出する。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、これらの基地局対に対応する3つの軌跡88A、88B、88C(図7参照)のそれぞれに対応する前記式(4)乃至式(6)を同時に満たす解(x,y)を求めることにより、前記3つの軌跡の交点Pを移動局10の位置として算出する。なお、図7においては説明の便宜上基地局12の配置が図1とは異なっている。
【0052】
記憶部62は前記RAMやあるいは図示しないハードディスク装置などによって実現されるものであって、例えば前記測位信号の受信電力の差と前記距離比を表わす関係式である前記(3)式などの測位部64における測位演算に必要となる関係式などが予め記憶されている他、基地局12から得られた情報などが適宜記憶され、読み出される。
【0053】
図8は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動のうち、移動局10と基地局12との間における準備信号および測位信号の送受信に関する作動の概要を説明するタイムチャートである。なお、本図8においては、基地局は例として第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つが記載されているが、基地局の数はこれに限定されるものではない。まず時刻t11乃至t14において、基地局12のそれぞれから移動局10に対し、準備信号の送信が行なわれる。この準備信号の送信は基地局12の準備信号送信部52によって予め定められた送信出力P0により送信されるよう制御される。一方、移動局10においては、この準備信号が受信されるとともに準備信号受信部34によってその受信強度が検出される。各基地局12から送信出力P0により送信された準備信号は、図5に示したように各基地局12のそれぞれと移動局10との距離に応じて減衰して移動局10に到達する。図8においては、例として具体的に第1基地局12A乃至第4基地局12Dから送信された準備信号が移動局10において受信され、その受信強度はそれぞれPa乃至Pdと検出されている。なお、図8の例においては、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの順で準備信号が送信されているが、このような順序に限られない。
【0054】
移動局10の準備信号受信部34による各基地局12から送信される準備信号の受信強度の検出が終了すると、t15において送信電力Pwの決定が行なわれる。この送信電力の決定は、前記t11乃至t14において検出された受信強度Pa乃至Pdの値のうち、4番めに大きい値であるPrefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、前記測位を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、前述の(1)式により行なわれる。
【0055】
続いてt16においては、決定された送信電力Pwにより測位信号が送信されるよう、測位信号送信部32により移動局10の可変ゲインアンプ26の増幅率が設定されるとともに、測位信号が送信される。一方、各基地局12においては、送信された測位信号が受信され、測位信号受信部51によりその受信強度が検出される。
【0056】
このように送信電力決定部33により送信電力Pwが決定されると、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信電力が4番目に小さい基地局、すなわち移動局10から4番目に遠い基地局から移動局10までの減衰が(Pref−P0)であるので、移動局10から送信される測位信号は同様に(Pref−P0)だけ減衰して移動局10から4番目に遠い基地局に届く。すなわち移動局10からPwで送信された測位信号は(Pref−P0)だけ減衰し、Pw−(Pref−P0)により移動局10から4番目に遠い基地局により受信される。ここで、前記(1)式に示したようにPw=Pref+Pth−P0となるように決定されるので、移動局10から4番目に遠い基地局においては、移動局10から送信された測位信号は、Pw−(Pref−P0)=(Pref+Pth−P0)−(Pref−P0)=Pthの受信強度により受信される。
【0057】
一方、移動局10から最も近い基地局、および移動局10から2番目および3番目に近い基地局には、移動局10から送信される測位信号は移動局10から4番目に近い基地局に到達するよりも小さい減衰により到達するので、Pth以上の受信電力により受信される。この結果、移動局10から送信出力Pwによって送信された測位信号は、少なくとも4局の基地局によりPth以上の大きい電力によって受信される。すなわち、測位信号をPth以上の受信電力で受信した少なくとも4つの基地局12における受信電力を用いることにより、測位部64による測位を許容される誤差を満たしつつ行なうことができる。
【0058】
逆に言えば、移動局10からの測位信号の送信電力をPthとすることで、少なくとも4局の基地局12によって測位を行なうのに必要な受信電力Pth以上の受信電力により測位信号が受信されるので、必要以上に大きい送信電力で測位信号を送信することがなく、移動局10の消費電力を低減することができ、電池による電源の消耗を抑えることができる。さらに、前述のように測位部64においては各基地局12における測位信号の受信電力差に基づいて移動局10の測位を行い、移動局10における測位信号の送信電力は測位結果に関与しないことから、移動局10の電源として電池が用いられる場合において電池の消耗などに伴う送信電力の変動によって測位結果が影響を受けることがない。
【0059】
図9は、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、準備信号を受信した基地局12の数を表わす変数iの値が1とされる。
【0060】
続いてSA2においては受信を行なうためのタイマーがオンとされているか否かが判定される。移動局10は制御部30に図示しないタイマーを有し、このタイマーが予め定められた所定の間隔によりオンとされている場合にのみ電波の受信を行なうことによりいわゆる間欠受信を実行する。このようにすれば、移動局10は常時電波の受信を行なうことが無く、より電力消費を低減しうる。なお、このSA2は本発明の移動局10の実施において不可欠ではなく、タイマーを有さない移動局10であって常時電波の受信を行なうようにしてもよい。タイマーがオンである場合には本ステップの判断は肯定され、続くSA3が実行される。一方、タイマーがオンでない場合には本ステップの判断は否定され、タイマーがオンとなるまでSA2が繰り返される。
【0061】
電波の受信状態とされた無線部24に対応するSA3においては、基地局12から送信される準備信号の受信が実行される。そして準備信号受信部34に対応するSA4において、準備信号を受信したか否かが判断される。すなわち、準備信号を受信した場合には本ステップの判断は肯定され、SA5が実行される。また、準備信号を受信しなかった場合には本ステップの判断は否定され、再度SA2以降が繰り返し実行される。
【0062】
同じく準備信号受信部34に対応するSA5においては、SA4において受信した準備信号の受信電力の値が検出され、Piとして記憶される。そしてSA6において受信した準備信号の数に対応する変数iの値が1だけ増加させられる。
【0063】
SA7においては、変数iの値が予め設定された値imaxを上回ったか否かが判断される。このimaxの値は、準備信号受信部34において受信強度を検出する準備信号の数の上限であって、例えば移動局測位システム8に含まれる基地局12の数である。変数iがimaxを上回った場合には本ステップの判断は肯定され、続くSA8が実行される。一方、変数iがimaxを上回っていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き準備信号の受信を行なうべくSA2以降が繰り返し実行される。
【0064】
続くSA8およびSA9は送信電力決定部33に対応する。まずSA8においては、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、その大きさが予め定められた所定順位である値Prefとして、4番めに大きい値が選択される。そしてSA9においては、SA8で選択されたPrefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、予め設定された移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthと前記(1)式とに基づいて、送信電力Pwが算出される。
【0065】
測位信号送信部32に対応するSA10においては、SA9において算出された送信電力により測位信号の送信が行なわれるよう、移動局10の可変ゲインアンプ26の増幅率が制御されるとともに、無線部24により測位信号が送信される。
【0066】
図10は、本実施例の移動局測位システム8を構成する基地局12の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、サーバ14から移動局10の測位を実行させる指令を受信したか否かが判断される。すなわち、基地局12はサーバ14から測位の実行のための指令を待機する状態とされており、サーバ14から測位の実行のための指令を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、測位のための作動を実行すべくSB2以降が実行される。また、サーバ14から測位の実行のための指令を受信しない場合は、SB1が繰り返し実行され、引き続き指令の待機が行なわれる。
【0067】
基地局12の準備信号送信部52に対応するSB2においては、予め定められた送信出力P0により準備信号が送信される。このとき、それぞれの基地局12から送信された電波が干渉し合い、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信強度の検出が正確に行なうことができないことがないよう、複数の基地局12を協調させて制御することにより、例えば複数の基地局12からの送信が同時に実行されず、順番に送信が行なわれる。
【0068】
電波の受信状態とされた無線部44に対応するSB3においては、移動局10から送信される測位信号の受信が行なわれる。続くSB4乃至SB6は測位信号受信部51に対応するものであって、まず、SB4においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信された測位信号であったか否かが判断される。前述したように、例えば移動局10や基地局12から送信される電波に、何れの移動局10あるいは基地局12から送信された電波であるかを識別するための識別符号や、その電波が測位信号であるか準備信号であるかなどについての情報が含まれることにより、SB3において電波を受信した基地局12においては、その受信した電波が測位の対象である移動局10から送信された測位信号であるかを判断することができる。このようにすれば、移動局10を複数含む移動局測位システム8であっても目的とする移動局10ごとに測位を実行することができる。SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものであった場合には本ステップの判断が肯定され、SB5が実行される。一方、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものでなかった場合には本ステップの判断は否定され、SB6が実行される。
【0069】
SB5においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものであったとして、受信した電波の受信電力の値が検出される。一方SB6においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものでなく、測位の対象とする移動局10からの電波を受信することができなかったとして、受信電力の値が0とされる。
【0070】
SB7においては、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信したかが判断される。サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信した場合には本ステップの判断が肯定されSB8が実行される。一方、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を未だ受信していない場合には、引き続きサーバ14からの送信要求が待機される。
【0071】
基地局12の通信インタフェース56などに対応するSB8においては、SB5において検出された測位信号の受信電力、もしくはSB6において0とされた受信電力の値がサーバ14に対し送信される。
【0072】
図11は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の概要を説明するフローチャートである。SC1においては、基地局12の数を表わす変数iの値が1に初期化される。
【0073】
続くSC2においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、移動局10へ準備信号の送信を行なわせるための指令が送信される。そして、SC3においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示したか否かが判断される。全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示した場合においては、本ステップの判断は肯定され、SC5以降が実行される。一方、全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示していない場合には、引き続き未だ準備信号の送信を指示していない基地局に対し指示を行なうべく、SC4において変数iに1を加えた後、SC2以降が再度実行される。
【0074】
全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示した場合に実行されるSC5においては、予め定められた一定時間の待機が行なわれる。この一定時間とは、移動局10の準備信号受信部34における準備信号の受信電力の検出、送信電力決定部33による測位信号の送信電力の決定、測位信号送信部32による測位信号の送信、各基地局12の測位信号受信部51における測位信号の受信電力の検出などの処理を行なうのに十分な時間として予め定められる。
【0075】
続くSC6においては、基地局12の数を表わす変数iの値が再度1に初期化される。そして、サーバ14の通信インタフェース60などに対応するSC7においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、その基地局12の測位信号受信部51において検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれ、その指令に対応して基地局12から送信される測位信号の受信電力についての情報が受信され、記憶部62などに記憶される。そして、SC8においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれたか否かが判断される。全ての基地局12に対し指令が行なわれた場合においては、本ステップの判断は肯定され、SC10が実行される。一方、全ての基地局12に対し指令が行なわれていない場合には、引き続き指令が行なわれていない基地局に対し指令を行なうべく、SC9において変数iに1を加えた後、SC7以降が再度実行される。
【0076】
本実施例の移動局測位システム8によれば、複数の基地局12の準備信号送信部52により所定の出力P0により送信された準備信号が、移動局10の準備信号受信部34によりそれぞれ受信されるとともにその受信電力が測定され、送信電力決定部33により、測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力が決定され、決定された送信電力により移動局10の測位信号送信部32により測位信号が送信されるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局12の測位信号受信部51により受信されるとともにその受信電力が測定され、そして、測位部64により、複数の基地局12から複数の基地局対が選択され、選択された基地局対を構成する2つの基地局の測位信号受信部51においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比ΔVrに基づいて移動局10の位置が算出されるので、移動局10による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局10の測位を精度よく行なうことができる。
【0077】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、前記移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定するので、前記測位信号の送信電力Pwを、準備信号受信部34によって測定される複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号の受信電力のうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0078】
さらに本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が平面である場合において、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値Prefに基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0079】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、複数の基地局12の準備信号送信部52は、それぞれ同一の出力P0により準備信号を出力するので、複数の基地局12からされる準備信号を移動局10において受信した際の受信電力は、移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの距離に応じた値となるので、準備信号の受信電力に応じて複数の基地局12のそれぞれについて、移動局10からの距離を相対的に評価することができる。
【0080】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、基地局12は、準備信号送信部52による準備信号の出力P0の大きさを移動局10に通知する準備信号送信電力通知部59を有すること、を特徴とする。このようにすれば、基地局12が複数の値から準備信号を送信する出力を変更可能である場合において、移動局10は何れの出力により準備信号が送信されたかを知ることができる。
【0081】
本実施例の移動局10によれば、準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部34と、準備信号受信部34により測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定する送信電力決定部33と、送信電力決定部33によって決定された送信電力Pwにより測位信号の送信を行なう測位信号送信部32と、を有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。
【0082】
前述の実施例においては、移動局10が平面内を移動する場合の移動局測位システム8について説明したが、このような態様に限られず、移動局10が3次元空間を移動可能とされている場合に、その移動局10の位置を算出する移動局測位システム8も同様に構築可能である。この場合測位部64は、基地局対における受信電力差に対応して得られる距離比を満たす集合は球となるので、その交点として1点を特定するには4つの球が必要となり、4つの基地局対における測位信号の受信電力差を得る必要がある。すなわち、移動局10から送信される測位信号が5つの基地局12において測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pth以上の受信強度(電力)により受信される必要がある。
【0083】
そこで、移動局10の送信電力決定部33は、5局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、予め定められた所定順位である5番めに大きい値をPrefの値として、送信電力Pwの値を算出し決定する。このようにすれば、少なくとも5局以上の基地局12においてPth以上の受信電力により測位信号が受信される。
【0084】
このように、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について移動局10の準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて測位信号の送信電力P0を決定することので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局12において移動局10から送信される測位信号がPth以上の受信電力により受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0085】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0086】
図12は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例における移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であり、前述の実施例における図2に対応する図である。図12においては、制御部30の構成が図2のそれとは異なる。なお、本実施例においても前述の実施例と同様に移動局10は例えば充電池や乾電池などの図示しない電池より駆動されることができる。
【0087】
準備信号送信部36は、前述の実施例1における基地局12の準備信号送信部52に対応するもので、予め定められた所定の出力P0(dBm)となるように可変ゲインアンプ26の増幅率を制御し、その出力P0により無線部24により所定の準備信号を送信させる。この準備信号は、移動局10に固有で相互に異なる識別符号を含むなどにより、準備信号を受信した基地局12は移動局10が複数存在する場合であっても何れの移動局10から送信されたものであるかを識別することができる。
【0088】
送信電力決定部33は、後述する複数の基地局12のそれぞれの送信電力指示部57から指示される送信電力要求値Pw_iに基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された前記送信電力要求値のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値Prefの値を、送信電力Pwとする。
【0089】
図13は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例における基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であり、前述の実施例における図3に対応する図である。図13においては、制御部50の構成が図3のそれとは異なる。
【0090】
受信部54は、移動局10から送信され、基地局12の無線部44により受信された準備信号および測位信号の受信強度を検出する。この受信強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。受信部54により検出された測位信号の受信強度についての情報は通信インタフェース56を介してサーバ14に送信される。
【0091】
送信電力要求値算出部53は、前記受信部54により検出された準備信号の受信強度の値に基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPw_iの要求値を決定する。具体的には、移動局10から送信されそれぞれの基地局12の無線部44により受信された準備信号について前記受信部54により検出された受信強度の値Pr_i、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pw_iの値を
Pw_i=Pr_j−P0+Pth・・・(7)
のように算出する。なお、添え字iは複数の基地局12のそれぞれを識別するために用いられる自然数であって、i=1,2,…のように基地局12のそれぞれ毎に異なる数が付される。なお、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0の値は、予め設定され移動局10と基地局12との間で共有された値が用いられても良い。また、例えば移動局10における準備信号の送信電力が例えば予め設定された複数の送信電力の値から選択可能とされていたり、あるいは連続的に変化させることによりその送信電力を設定することができるなど、その送信電力の値が変更可能である場合においては、準備信号送信部36が準備信号送信電力通知部39を更に有し、準備信号送信電力通知部39により準備信号の送信時においてその準備信号の送信出力であるP0の値についての情報が含めることにより準備信号の送信の度に移動局10から各基地局12に通知されるようにしてもよい。具体的には準備信号を送信する際の送信電力P0は、移動局10から送信された準備信号が各基地局12において識別可能な程度に受信することができる受信強度となるように設定され、より具体的には、移動局10と基地局12とが最も離れた距離にある場合における減衰量を考慮して設定される。
【0092】
なお、このように送信電力要求値Pw_iの値が算出されるので、移動局10の送信電力決定部33において、前記送信電力要求値のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値に基づいて送信電力Pwとすることは、各基地局12における準備信号の受信電力が4番目に大きい値に基づいて送信電力Pwを算出することでもある。
【0093】
送信電力指示部57は前記送信電力要求値算出部53によって算出された送信電力要求値Pw_iの値についての情報を移動局10に送信する。これら送信電力要求値算出部53および送信電力指示部57が送信電力要求部に対応する。
【0094】
なお、本実施例においては、サーバ14は前述の実施例において説明した図4に示す構成のものが同様に用いられる。
【0095】
図14は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動のうち、移動局10と基地局12との間における準備信号および測位信号の送受信に関する作動の概要を説明するタイムチャートである。なお、本図14においては、基地局は例として第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つが記載されているが、基地局の数はこれに限定されるものではない。まず時刻t21において、移動局10から基地局12のそれぞれに対し、準備信号の送信が行なわれる。この準備信号の送信は移動局10の準備信号送信部36によって予め定められた送信出力P0により送信されるよう制御される。一方、各基地局12においては、この準備信号が受信されるとともに受信部54によってその受信強度が検出される。移動局10から送信出力P0により送信された準備信号は、図5に示したように移動局10と各基地局12のそれぞれとの距離に応じて減衰して各基地局12に到達する。図14においては、例として具体的に移動局10から送信された準備信号が第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおいてそれぞれ受信され、その受信強度はそれぞれPr_1乃至Pr_4と検出されている。なお、図14の例において、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの受信はその順序を表わすものではない。
【0096】
各基地局12の受信部54による移動局10から送信される準備信号の受信強度の検出が終了すると、t22において送信電力要求値算出部53による送信要求電力Pw_iの算出が行なわれる。この送信電力要求値の決定は、前記t21において検出された準備信号の受信強度Pr_i(i=1〜4)、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pw_iの値を前記(7)式のように算出する。
【0097】
t23乃至t26においては、各基地局12の送信電力指示部57により送信電力要求値Pw_iの値についての情報が各基地局12から移動局10に対して送信される。なお、図14の例においては、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの順で送信が行なわれているが、このような順序に限られない。
【0098】
t27においては、移動局10の送信電力決定部33により、各基地局12のそれぞれの送信電力指示部57から指示される送信電力要求値Pw_iに基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された前記送信電力要求値Pw_1乃至Pw_4のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値Prefを、送信電力Pwとする。
【0099】
t28においては、t27において決定された送信電力Pwで測位信号送信部32により測位信号が送信される。一方、各基地局12においては、送信された測位信号が受信され、受信部54によりその受信強度が検出される。
【0100】
このように送信電力決定部33により送信電力Pwが決定されると、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信電力が4番目に大きい基地局、すなわち移動局10から4番目に遠い基地局から移動局10までの減衰が(Pr_iv−P0)(ivは移動局10から4番目に遠い基地局を表わす)であるので、移動局10から送信される測位信号は同様に(Pr_iv−P0)だけ減衰して移動局10から4番目に遠い基地局に届く。すなわち移動局10からPwで送信された測位信号は(Pr_iv−P0)だけ減衰し、Pw−(Pr_iv−P0)により移動局10から4番目に遠い基地局により受信される。送信電力決定部33は4番目に遠い基地局での送信電力要求値Pw_ivを送信電力Pwと決定する一方、4番目に遠い基地局12の送信電力要求値算出部53は送信電力要求値Pw_ivを前記(7)式に示したようにPw_iv=Pr_iv−P0+Pthとなるように決定するので、移動局10から4番目に遠い基地局においては、移動局10から送信された測位信号は、Pw−(Pr_iv−P0)=Pw_iv−(Pr_iv−P0)=(Pr_iv−P0+Pth)−(Pr_iv−P0)=Pthの受信強度により受信される。
【0101】
一方、移動局10から最も近い基地局、および移動局10から2番目および3番目に近い基地局には、移動局10から送信される測位信号は移動局10から4番目に近い基地局に到達するよりも小さい減衰により到達するので、Pth以上の受信電力により受信される。この結果、移動局10から送信出力Pwによって送信された測位信号は、少なくとも4局の基地局によりPth以上の大きい電力によって受信される。すなわち、測位信号をPth以上の受信電力で受信した少なくとも4つの基地局12における受信電力を用いることにより、測位部64による測位を許容される誤差を満たしつつ行なうことができる。
【0102】
逆に言えば、移動局10からの測位信号の送信電力をPthとすることで、少なくとも4局の基地局12によって測位を行なうのに必要な受信電力Pth以上の受信電力により測位信号が受信されるので、必要以上に大きい送信電力で測位信号を送信することがなく、移動局10の消費電力を低減することができ、電池による電源の消耗を抑えることができる。さらに、前述のように測位部64においては各基地局12における測位信号の受信電力差に基づいて移動局10の測位を行い、移動局10における測位信号の送信電力は測位結果に関与しないことから、移動局10の電源として電池が用いられる場合において電池の消耗などに伴う送信電力の変動によって測位結果が影響を受けることがない。
【0103】
図15は、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信したか否かた判断される。基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信した場合には、本ステップの判断が肯定され、SD2以降が実行される。一方基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信されていない場合は、送信開始指令を待機するためSD1が繰り返し実行される。
【0104】
準備信号送信部36に対応するSD2においては、所定の送信出力P0となるように可変ゲインアンプ26が制御され、その送信出力P0により準備信号が送信される。
【0105】
SD3においては送信電力要求値を受信した基地局12の数を表わす変数jの値が1とされる。
【0106】
SD4乃至SD7は送信電力決定部33に対応する。まずSD4においては、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信したか否かが判断される。そして、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、SD5が実行される。また、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信していない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き送信電力要求値の受信を待機するためSD4が繰り返し実行される。
【0107】
SD4の判断が肯定された場合に実行されるSD5においては、受信された送信電力要求値Pw_jについての情報が図示しない移動局10のメモリなどの記憶手段に記憶される。
【0108】
SD6においては、送信電力要求値を受信した基地局の数を表わす変数jの値が予め設定された値jmaxを上回ったか否かが判断される。このjmaxの値は、送信電力決定部33において送信電力Pwを決定する際に参照する送信電力要求値Pw_jの数の上限であって、例えば移動局測位システム8に含まれる基地局12の数である。変数jがjmaxを上回った場合には本ステップの判断は肯定され、続くSD7が実行される。一方、変数jがjmaxを上回っていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き準備信号の受信を行なうべくSD4以降が繰り返し実行される。
【0109】
SD7においては、SD4で受信されSD5で保存された各基地局12のそれぞれから送信された前記送信電力要求値のうち、4番目に小さい値Prefの値を、送信電力Pwとする。
【0110】
測位信号送信部32に対応するSD8においては、SD7で決定された送信電力Pwとなるように可変ゲインアンプ26が制御され、その送信出力Pwにより測位信号が送信される。
【0111】
図16は、本実施例における移動局測位システム8を構成する基地局12の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SE1においては、サーバ14から移動局10の測位を実行させる指令を受信したか否かが判断される。すなわち、基地局12はサーバ14から測位の実行のための指令を待機する状態とされており、サーバ14から測位の実行のための指令を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、測位のための作動を実行すべくSE2以降が実行される。また、サーバ14から測位の実行のための指令を受信しない場合は、SE1が繰り返し実行され、引き続き指令の待機が行なわれる。
【0112】
SE2においては、SE1でサーバ14からの指令を受信した基地局12から移動局10に対し、準備信号を送信する旨の指示が行なわれる。受信部54に対応するSE3においては、移動局10からの準備信号の受信が行なわれる。そしてSE2で準備信号の送信を指示した移動局10からの準備信号が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、SE4以降が実行される。また、準備信号が受信されない場合には、再度移動局10への準備信号の送信指令が失敗したとして、再度SE1が実行される。
【0113】
SE3の判断が肯定された場合に実行されるSE4においては、移動局10からの準備信号を受信した旨がサーバ14に通知される。
【0114】
受信部54に対応するSE5においては、SE3で受信された準備信号の受信電力Pr_iが検出される。
【0115】
送信電力要求値算出部53および送信電力指示部57に対応するSE6においては、SE5で検出された準備信号の受信強度Pr_iなどに基づいて、移動局10から送信される測位信号の送信電力の要求値が算出され、移動局10に対し算出された要求値が送信される。この算出は例えば前述の(7)式に基づいて行なわれる。
【0116】
受信部54に対応するSE7においては、移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信強度が算出される。
【0117】
SE8においては、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信したかが判断される。サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信した場合には本ステップの判断が肯定されSE9が実行される。一方、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を未だ受信していない場合には、引き続きサーバ14からの送信要求が待機される。
【0118】
基地局12の通信インタフェース56などに対応するSE9においては、SE8において検出された測位信号の受信電力の値がサーバ14に対し送信される。
【0119】
図17は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。SF1においては、基地局12の数を表わす変数iの値が1に初期化される。
【0120】
続くSF2においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、移動局10の測位を実行させるための指令が送信される。この指令は具体的には移動局10に対し準備信号の送信を行なわせるための指令である。そして、SF3において予め定められた所定時間だけ待機が行なわれる。この所定時間は、基地局iから移動局10に対し無線による指令を行ない、移動局10が準備信号を送信し、基地局iがその準備信号を検出するのに十分な時間として設定される。
【0121】
そして、SF4において、基地局iにおいて移動局10からの準備信号が受信されたか否かの確認が行なわれる。具体的には、前述の基地局12の作動を説明する図16のフローチャートにおけるステップSF4の通知をサーバ14が受信した場合に移動局10からの準備信号が受信されたとされる。
【0122】
続くSF5においては、SF4において基地局iにおいて移動局10からの準備信号が受信されたか否かが判断される。すなわち移動局10からの準備信号が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、SF7が実行される。また、移動局10からの準備信号が受信されなかった場合には、基地局iから移動局10への指令が伝達されない、例えば基地局iと移動局10との距離が離れすぎていたり、あるいは障害物が存在するなどにより無線通信ができない可能性があるとして、別の基地局から再度移動局10への指令を行なうべく、SF6において変数iに1を加えた後、SF2以降が再度実行される。
【0123】
続くSF7においては、基地局12の数を表わす変数iの値が再度1に初期化される。そして、サーバ14の通信インタフェース60などに対応するSF8においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、その基地局12の受信部54において検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれ、その指令に対応して基地局12から送信される測位信号の受信電力についての情報が受信され、記憶部62などに記憶される。そして、SF9においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれたか否かが判断される。全ての基地局12に対し指令が行なわれた場合においては、本ステップの判断は肯定され、SF11が実行される。一方、全ての基地局12に対し指令が行なわれていない場合には、引き続き指令が行なわれていない基地局に対し指令を行なうべく、SF10おいて変数iに1を加えた後、SF8以降が再度実行される。
【0124】
本実施例の移動局測位システム8によれば、移動局10の準備信号送信部36により所定の出力P0で送信される準備信号は、基地局12の受信部54により受信されるとともにその受信電力Pr_iが測定され、送信電力要求値算出部53によりその測定された準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、移動局に10おける測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値Pw_iが算出され、送信電力指示部57により該送信電力要求値Pw_iによる測位信号の送信が移動局10に指示される。そして、移動局10の送信電力決定部33により、複数の基地局12からそれぞれ要求された送信電力要求値Pw_iの大きさに基づいて測位信号の送信電力Pwが決定され、測位信号送信部32により、決定された送信電力Pwにより測位信号の送信が行なわれるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさPr_iに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。また、測位信号は、基地局12のそれぞれにおける受信部54により受信されるとともにその受信電力が測定され、測位部64により、複数の基地局12から複数の基地局対が選択され、選択された基地局対を構成する2つの基地局の受信部54においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比に基づいて移動局10の位置が算出されるので、移動局10による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局10の測位を精度よく行なうことができる。
【0125】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、複数の基地局12の受信部54によってそれぞれ測定される移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号の受信電力Pr_iのうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、受信部54によって測定される準備信号の受信電力Pr_iのうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0126】
さらに本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が平面である場合において、複数の移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号について受信部54によって測定される受信電力Pr_iのうち、大きい順に4番目の受信電力の値Prefに基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局12において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0127】
また本実施例の移動局測位システム8においては、前述の実施例1で言及したのと同様に、送信電力決定部33は、前記移動局10の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号について前記受信部54によって測定される受信電力Pr_iのうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定することができる。このようにすれば、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも4つの基地局12において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0128】
また、本実施例の移動局10は、所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部36と、複数の基地局12の送信電力指示部57によりそれぞれ指示された送信電力要求値Pw_iの大きさに基づいて、測位信号の送信電力Pwを決定する送信電力決定部33と、送信電力決定部33によって決定された送信電力Pwにより測位信号の送信を行なう測位信号送信部32とを有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、複数の基地局12のそれぞれから指示される送信電力要求値の大きさPw_iに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。
【0129】
また、本実施例の基地局12は、移動局10から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部54と、受信部54により測定された準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、移動局10における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出する送信電力要求値算出部53と、送信電力要求値による測位信号の送信を移動局10に指示する送信電力指示部57と、を有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、基地局12において受信した信号の受信強度を測定することができ、準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、測位信号の送信電力要求値Pw_iを算出し、移動局10にその送信電力要求値により測位信号の送信を指示することができるとともに、移動局10の測位に必要となる測位信号の受信強度を測定することができる。
【0130】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0131】
例えば、前述の実施例においては、基地局12とサーバ14とは通信ケーブル18で接続されることにより情報通信可能とされていたが、これに限られず、基地局12とサーバ14との間で情報通信が可能な他の手段、例えば無線通信などによって情報通信可能とされてもよい。この場合、通信インタフェース56、60はその通信手段に応じた通信機能を有する。
【0132】
また、準備信号受信部34、測位信号受信部51、受信部54における受信強度の値は、受信電力により表現されたが、これに限られない。例えば電波の受信強度を256段階などのように予め規定された指標で表わす値であるRSSI(receive signal strength indicator)により表現されてもよい。すなわち、前記RSSIのような指標とデシベル表現された受信電力とが相互に変換可能であり、測位部64において基地局対を構成する各基地局の受信電力差をデシベル表現された受信電力により表現することができれば、準備信号受信部34、測位信号受信部51、受信部54において検出される受信強度を表わす指標の種類は限定されない。
【0133】
前述の実施例において、図9のSA7、図11のSC3、SC8においては、予め定められた局数imaxの基地局12からの準備信号の受信強度の検出したことにより検出を終了するようにされ、imaxは移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数とされたが、これに限られず、測位に必要な最小の基地局数とされても良い。また、予め定められた時間間隔が経過したことによってもよいし、これらの複数のいずれかが満たされた場合に終了してもよい。図15のSD6におけるjmaxについても同様である。
【0134】
前述の実施例1においては、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値として、移動局10の測位範囲が平面である場合においては大きい順に4番目の値、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合においては大きい順に5番目の値に基づいて測位信号の送信電力が算出されたが、これは、移動局10の測位を行なうにあたり必要となる最小の基地局12の数に対応するものである。従って、例えば移動局10が平面を移動する場合であって、更にその位置が制限されているため移動局10の測位に必要な基地局12の数が3局である場合には、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に3番目の値に基づいて測位信号の送信電力が算出される。実施例2についても同様である。
【0135】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図5】電波の伝搬距離と受信電力との関係の一例を説明する図である。
【図6】基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと移動局との距離の比と移動局の存在する領域との関係を説明する図である。
【図7】測位部による移動局の測位の原理の概要を説明する図である。
【図8】本発明の移動局測位システムにおける移動局と基地局との電波の送受信についての処理を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムを構成する移動局の制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の移動局測位システムを構成する基地局の制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の移動局測位システムを構成するサーバの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって図2に対応する図である。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、図3に対応する図である。
【図14】本発明の別の実施例における移動局測位システムにおける移動局と基地局との電波の送受信についての処理を説明する図であって、図8に対応する図である。
【図15】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する移動局の制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図9に対応する図である。
【図16】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図10に対応する図である。
【図17】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成するサーバの制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図11に対応する図である。
【符号の説明】
【0137】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
32:測位信号送信部
33:送信電力決定部
34:準備信号受信部
36:準備信号送信部
51:測位信号受信部
52:準備信号送信部
53:送信電力要求値算出部(送信電力要求部)
54:受信部
57:送信電力指示部(送信電力要求部)
59:準備信号送信電力通知部(準備信号送信出力通知部)
64:測位部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、測位信号の送信出力を制御することにより消費電力の低減を行なうことを可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が送信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう方法が提案されている。この方法においては、例えば、前記電波の受信電力と送信局と受信局との距離、すなわち移動局と基地局との距離との関係を予め算出しておき、例えばRSSI値などとして測定される受信電力と前記関係とに基づいて前記受信電力を測定した基地局と電波の発信源である移動局との距離を算出し、算出される前記複数の基地局と移動局との距離に基づいて移動局の位置が推定される。
【0003】
ところで、移動局は可搬性を向上させるため、電池などの電源により電気が供給されて駆動される。そのため電池が消耗した場合には交換したりあるいは充電しなければならない。逆に言えば、電池の交換や充電を行なうことなく長時間駆動させるためには、移動局における消費電力を低減することにより、電源の消耗を抑えることが求められる。
【0004】
移動局においては電波の送信に要する電力は、移動局における最も大きい消費電力を要する作動の一つであるので、送信電力を低減することができれば、電池の消耗を抑えることができる。しかしながら、どの程度送信電力を低減するかの判断を誤ると、例えば移動局の位置の算出(測位)に必要となる数の基地局において移動局から送信された電波を受信することができず、移動局の測位ができなくなるおそれがあった。
【0005】
なお、特許文献1においては、干渉波の影響を低減するために、干渉源となる無線基地局あるいは移動局の送信電力を制御する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−22589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、測定された受信電力と、予め得られる受信電力と距離との関係に基づいて移動局と基地局との距離を算出し、移動局の測位を行なう方法においては、例えば移動局から送信される電波は同一の出力により送信されることが必要とされる。また、電波の伝搬距離が長くなると、伝搬距離に対する電波の受信電力の減衰が小さくなるため、電波の受信電力を検出可能な分解能が同一である場合には、伝搬距離が長くなるほど検出可能な伝搬距離の分解能が低下する。そのため、移動局と基地局との距離の測定を精度よく行なうためには、移動局における電波の送信電力を、目的とする測位精度に見合う伝搬距離の分解能を得られる程度に大きくする必要があり、そのため消費電力が大きくなるという課題があった。
【0008】
かかる場合において、消費電力を低減するためには、移動局測位システムの作動を間欠的に行なうことや、あるいは充電量など電池の状態に応じて複数の測位方式を切り替えて測位を行なう移動局測位システムが提案されている。かかる方法によれば、一定の消費電力の低減は見込めるものの、測位のための処理に時間を要したり、あるいは複数の測位方式に応じた演算プログラムなどの測位エンジンを搭載しておく必要があり、機構が複雑となるなどの問題があった。
【0009】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該基地局がそれぞれ受信した電波の受信電力に関する値と該基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムにおいて、移動局における電波の送信電力を制御することにより、移動局の測位の精度を落とすことなく移動局における消費電力を低減することの可能な移動局測位システム、およびその移動局測位システムに適用可能な移動局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、(b)前記基地局は、所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(c)前記移動局から送信される前記測位信号を受信し、受信された該測位信号の受信電力を測定する測位信号受信部と、を有し、(d)前記移動局は、前記準備信号を受信し、受信された該準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、(e)該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(f)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、(g)前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明によれば、前記複数の基地局の前記準備信号送信部により所定の出力により送信された準備信号が、それぞれ移動局の準備信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、前記送信電力決定部により、測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力が決定され、決定された送信電力により移動局の前記測位信号送信部により前記測位信号が送信されるので、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局の前記測位信号受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、そして、前記測位部により、前記複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置が算出されるので、移動局による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局の測位を精度よく行なうことができる。
【0012】
好適には、請求項2にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、前記準備信号受信部によって測定される前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0013】
さらに好適には、請求項3にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0014】
また好適には、請求項4にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信電力測定部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0015】
好適には、請求項5にかかる移動局測位システムは、前記複数の基地局の準備信号送信部は、それぞれ同一の出力により前記準備信号を出力すること、を特徴とする。このようにすれば、前記複数の基地局からされる準備信号を移動局において受信した際の受信電力は、移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの距離に応じた値となるので、前記準備信号の受信電力に応じて前記複数の基地局のそれぞれについて、前記移動局からの距離を相対的に評価することができる。
【0016】
好適には、請求項6にかかる移動局測位システムは、前記基地局は、前記準備信号送信部による前記準備信号の出力の大きさを前記移動局に通知する準備信号送信出力通知部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記基地局が複数の出力により前記準備信号を送信可能とされる場合において、前記移動局は何れの出力により前記準備信号が送信されたかを知ることができる。
【0017】
また、請求項7にかかる発明は、(a)前記準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、(b)該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(c)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、(d)請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であることを特徴とする移動局である。このようにすれば、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。
【0018】
また、請求項8にかかる発明は、(a)移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、(b)前記基地局は、前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された前記準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、(c)該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、(d)前記移動局は、予め定められた所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(e)前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(f)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、(g)前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記移動局の準備信号送信部により所定の出力で送信される準備信号は、前記基地局の受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、その測定された準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値が算出され、該送信電力要求値による測位信号の送信が前記移動局に指示される。そして、前記移動局の送信電力決定部により、前記複数の基地局からそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて前記測位信号の送信電力が決定され、前記測位信号送信部により、決定された送信電力により前記測位信号の送信が行なわれるので、前記準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、前記測位信号は、前記基地局のそれぞれにおける受信部により受信されるとともにその受信電力が測定され、前記測位部により、前記複数の基地局から複数の基地局対が選択され、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置が算出されるので、移動局による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局の測位を精度よく行なうことができる。
【0019】
好適には、請求項9にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の前記受信部によってそれぞれ測定される前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、前記受信部によって測定される前記準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0020】
さらに好適には、請求項10にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0021】
また好適には、請求項11にかかる移動局測位システムは、前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記測位信号の送信電力を、移動局の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局において移動局から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0022】
また、請求項12にかかる発明は、(a)所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、(b)前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、(c)該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、(d)前記移動局測位システムに適用可能な移動局である。このようにすれば、前記複数の基地局のそれぞれから指示される送信電力要求値の大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。
【0023】
また、請求項13にかかる発明は、(a)前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、(b)該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に指示する送信電力要求部と、を有し、(c)前記移動局測位システムに適用可能な基地局である。このようにすれば、基地局において受信した信号の受信強度を測定することができるので、準備信号の受信電力に基づいて、測位信号の送信電力の要求値を算出し、移動局にその送信電力要求値により測位信号の送信を指示することができるとともに、移動局の測位に必要となる測位信号の受信強度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた1局の移動局10と、既知の位置に設置された4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0026】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0027】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部30とを機能的に有する。
【0028】
無線部24は、送受信切換部25、可変ゲインアンプ26、送受信回路28、ローノイズアンプ27などを含んで構成される。送受信切換部25は無線部24における電波の送信状態と受信状態とを選択的に切り換える。なお送受信切換部25による切換には、送信状態および受信状態に加え、その何れでもない状態、すなわち、移動局10が電波の送信も受信も行なわない状態が選択可能とされてもよい。
【0029】
可変ゲインアンプ26は、無線部24が電波の送信状態である場合に、後述する送受信回路28によって生成される送信波を増幅し、アンテナ22により送信する。このとき、可変ゲインアンプ26におけるゲイン(増幅率)は変更可能とされており、具体的には後述する制御部30によって設定される出力となるように増幅率が設定される。
【0030】
ローノイズアンプ27は、無線部24が電波の受信状態である場合に、アンテナ22により受信した電波を増幅する低雑音増幅器である。ローノイズアンプ27により増幅された受信波は、後述する送受信回路28に送られ、所定の選局動作、復調処理などが行なわれる。
【0031】
送受信回路28は、無線部24が電波の送信状態である場合には送信波を生成するとともに、電波の受信状態である場合には受信波から信号を取り出す。具体的には送受信回路28は、後述する制御部30により生成される送信信号に対し、例えば拡散処理などの所定の変調処理を加えた後、所定の周波数の搬送波により変調を行ない送信波を生成する。また、ローノイズアンプ27により増幅された受信波に対し、所定の復号処理を行なうことにより受信波に含まれる信号波を取り出す。送受信回路28は、後述する準備信号受信部34が検出するための信号強度に対応する強度信号を生成するRSSI検出部29を含んでいる。
【0032】
制御部30は、前記無線部24の作動を制御するものであって、後述する測位信号送信部32、送信電力決定部33、準備信号受信部34などを含んで構成される。具体的には制御部30は例えば既知のマイコンなどによって実装され、タイマー、メモリ、演算ユニットなどを要素として構成されている。
【0033】
このうち、準備信号受信部34は、基地局12から送信され、移動局10の無線部24により受信された準備信号からRSSI検出部29により生成された強度信号の強度を検出する。この信号強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。
【0034】
送信電力決定部33は、複数の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値に基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、予め定められた所定順位である4番めに大きい値Prefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pwの値を
Pw=Pref+Pth−P0・・・(1)
のように算出する。なお、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0の値は、予め設定され移動局10と基地局12との間で共有された値が用いられても良い。また、例えば基地局12における送信電力が例えば予め設定された複数の送信電力の値から選択可能とされていたり、あるいは連続的に変化させることによりその送信電力を設定することができるなど、その送信電力の値が変更可能である場合においては、後述する準備信号送信部52が準備信号送信電力通知部59を更に有し、該準備信号送信電力通知部59により準備信号の送信時においてその準備信号の送信出力であるP0の値についての情報が含めることにより準備信号の送信の度に基地局12から移動局10に通知されるようにしてもよい。この準備信号送信電力通知部59が準備信号送信出力通知部に対応する。具体的には準備信号を送信する際の送信電力P0は、各基地局12から送信された準備信号が移動局10において識別可能な程度に受信することができる受信強度となるように設定され、より具体的には、移動局10と基地局12とが最も離れた距離にある場合における減衰量を考慮して設定される。
【0035】
図5は、所定の出力により送信された電波の伝搬距離D(m)とその電波の受信電力Vr(dBm)との一般的な関係を示したものである。図5に示す関係を用いることにより、電波の受信電力Vrが検出されると、その受信電力の値に基づいて電波の送信局との距離を推定することが可能である。しかしながら、図5に示す関係は、受信電力Vrの値が低くなるほど勾配が緩やかな曲線で表わされるので、例えば受信電力Vrの測定に一定の誤差が生ずる場合に、受信電力Vrの値が小さくなるほど測定誤差が電波の伝搬距離Dに及ぼす影響が大きくなる。一方で、受信電力Vrを測定する場合には、機器に分解能の影響により測定の誤差あるいは限界が生じうる。そのため、図5に示すような関係を用いて受信した電波の受信電力の値に基づいて電波の送信局との距離を推定する際にその距離に許容される誤差が予め設定される場合には、その誤差を満たすために後述する基地局12の測位信号受信部51における分解能や基地局12の無線部44におけるノイズ、アンテナ42のアンテナゲインなどに基づいて、測位信号を受信する受信電力の最小値が存在する。かかる最小値が前記測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに対応する。
【0036】
測位信号送信部32は、前記送信電力決定部33により決定された送信電力Pwにより測位信号が送信されるように可変ゲインアンプ26の増幅率を制御すると共に、送受信回路28を制御することにより無線部24に送信信号を送信させる。また、自局の識別符号などの情報を含み送信データを生成して送受信回路28に送出する。
【0037】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ42を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部44と前記無線部44を制御するための制御部50と、通信ケーブル18により接続されたサーバ14や他の基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース56とを機能的に有する。
【0038】
無線部44は、送受信切換部45、アンプ46、送受信回路48、ローノイズアンプ47、RSSI検出部49などを含んで構成される。この無線部44は前述の移動局10の無線部24とほぼ同様に構成され、送受信切換部45、アンプ46、送受信回路48、ローノイズアンプ47、RSSI検出部49はそれぞれ移動局10の無線部24における送受信切換部25、可変ゲインアンプ26、送受信回路28、ローノイズアンプ27、RSSI検出部29と同様の機能を有する。なお、アンプ46は移動局10の可変ゲインアンプ26と異なり、その増幅率が変更可能にされる必要はなく、少なくとも予め定められた所定の出力により準備信号を含む電波が送信されるようにその増幅率が固定されていればよい。
【0039】
制御部50は、前記無線部44の作動を制御するものであって、後述する測位信号受信部51、準備信号送信部52などを含んで構成される。具体的には制御部50は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0040】
このうち、準備信号送信部52は、前記予め定められた所定の出力P0(dBm)により前記無線部44により所定の準備信号を送信させる。この準備信号は、基地局12のそれぞれに固有で相互に異なる識別符号を含むなどにより、準備信号を受信した移動局10は何れの基地局12から送信されたものであるかを識別することができる。
【0041】
測位信号受信部51は、移動局10から送信され、基地局12の無線部44により受信された測位信号の受信強度をRSSI検出部49を経由して検出する。この受信強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。また検出された受信強度を通信インタフェース56を介してサーバ14に送信する。
【0042】
図4は、サーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部62と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部64と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース60とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0043】
以下、測位部64による移動局10の測位の手順について説明する。まず、測位部64は移動局10の無線部24が所定の出力Pwにより送信した測位信号を前記各基地局12が受信した際の、各基地局12の測位信号受信部51において検出される受信強度を取得する。前述のように取得される受信強度の値は、デシベル単位で表された受信電力であり、その単位はdBmを用いて表される。
【0044】
続いて測位部64は、前記複数の基地局12から2つの基地局の組み合わせである基地局対を少なくとも3対生成する。例えば、図1に示すように第1基地局12A乃至第4基地局12Dのうち、第1基地局12A乃至第3基地局12Cの3つの基地局において前記測位信号が受信された場合には、第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3対の基地局対を生成する。
【0045】
続いて測位部64は、生成した各基地局対を構成する2つの基地局における前記受信電力の比を算出する。本実施例においては、各基地局における受信電力は後述するように対数表現されたデシベル単位で表わされるので、受信電力の比は受信電力の差として表現される。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第2基地局12Bにおける測位信号の受信電力Vr2(dBm)との差ΔVr12(dBm)をΔVr12=Vr1−Vr2、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第3基地局12Cにおける測位信号の受信電力Vr3(dBm)との差ΔVr13(dBm)をΔVr13=Vr1−Vr3、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1(dBm)と第4基地局12Dにおける測位信号の受信電力Vr4(dBm)との差ΔVr14(dBm)をΔVr14=Vr1−Vr4、のようにそれぞれ算出する。
【0046】
さらに測位部64は、算出された前記各基地局対における受信電力差に基づいて、前記基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出する。この距離の比の算出は次のように行なわれる。まず、移動局からの電波を受信した基地局において、その受信電力Vr(dBm)と移動局と基地局との距離D(m)との関係は、次式(1)によって与えられる。
Vr=−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+Pt …(1)
ここで、GTA(dBi)は送信アンテナゲイン、すなわち送信側である移動局10のアンテナ22のゲイン、GRA(dBi)は受信アンテナゲイン、すなわち受信側である基地局12のアンテナ42のゲイン、Pt(dBm)は移動局10における測位信号の送信電力Pw、f(Hz)は測位信号を送信する電波の周波数、c(m/s)は光速、すなわち電波の伝搬速度である。
【0047】
この式(1)を用いて、例えば第1基地局12Aの受信電力Vr1と第2基地局12Bの受信電力Vr2との差ΔVr12は、次式(2)で表される。
ΔVr12=Vr1−Vr2
=−20log(4πD1f/c)+GTA+GRA+Pt
−(−20log(4πD2f/c)+GTA+GRA+Pt)
=−20log(4πD1f/c)+20log(4πD2f/c)
=20log(D2/D1) …(2)
ここで、D1、D2はそれぞれ、第1基地局12Aと基地局10との距離および第2基地局12Bと基地局10との距離である。このように、基地局対の受信電力の差ΔVr12は、移動局10の送信電力Ptを含まないものとなり、送信電力Ptの影響を受けることがない。さらに、前記(2)式より、
(D2/D1)=exp(ΔVr12/20) …(3)
となり、基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出することができる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1と第2基地局12Bにおける測位信号の受信電力Vr2との差ΔVr12に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第2基地局12Bと移動局10との距離D2との比(距離比)(D2/D1)を、第1基地局12Aにおける測位信号の受信電力Vr1と第3基地局12Cにおける測位信号の受信電力Vr3との差ΔVr13に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第3基地局12Cと移動局10との距離D3との比(D3/D1)を、第1基地局12Aの受信電力Vr1と第4基地局12Dの受信電力VR4との差ΔVr14に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第4基地局12Dと移動局10との距離D4との比(D4/D1)を、それぞれ算出する。
【0048】
このとき、移動局10の位置は、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの位置との関係において、第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第2基地局12Bと移動局10との距離D2との比(距離比)が(D2/D1)となる条件満たす解集合S1のいずれか1点にある。同様に、移動局10の位置は、第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第3基地局12Cと移動局10との距離D3との比(D3/D1)となる条件満たす解集合S2のいずれか1点および第1基地局12Aと移動局10との距離D1と第4基地局12Dと移動局10との距離D4との比(D4/D1)となる条件満たす解集合S3のいずれか1点にある。従って、移動局10の位置は、これらの条件を全て満たす、解集合S1、S2およびS3の積集合S=S1∩S2∩S3のいずれか1点である。
【0049】
そのため測位部64は、このように算出された基地局対ごとの距離比を満たす解の集合である解集合S1〜S3を基地局対ごとに算出する。ここで、図6に示すように、平面上において2つの点S、Rからの距離がm:n(n≠1)であるような点Pの軌跡は、線分SRを内分する点をA、外分する点をBとすれば、線分ABを直径とする円82、すなわちアポロニウスの円となることから、測位部64は、このアポロニウスの円に基づいて、算出された基地局対ごとの距離比、すなわち基地局対を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離の比を実現する前記移動局10の位置を表す点の連なりである軌跡を生成する。この軌跡が解集合に対応する。具体的には、図6の点Sに基地局12Sが、点Rに基地局12Rが存在し、前記測位部64によって算出される基地局12Sと移動局との距離と、基地局12Rと移動局との距離との比(DS/DR)が
DS/DR = m/n
である場合には、移動局10の位置を表す軌跡すなわち解集合は図6の円82で表されることになる。
【0050】
具体的に例えば、第1移動局12Aと第2移動局12Bとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D2/D1)の値をa、第1移動局12Aの座標を(X1,Y1)、第2移動局12Bの座標を(X2,Y2)、移動局10の座標を(x,y)とすると、
【数1】
となって、円の軌跡を表す式(4)が得られる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、同様に第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dからなる基地局対のそれぞれについても、
【数2】
のように、式(5)、(6)で表される軌跡を算出する。なお、前記式(5)においてbは第1移動局12Aと第3移動局12Cとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D3/D1)の値であり、前記式(6)においてcは第1移動局12Aと第4移動局12Dとからなる基地局対について、前記測位部64によって算出される距離比(D4/D1)の値である。これら式(4)〜(6)のそれぞれを満たす解(x,y)の集合である軌跡が解集合S1〜S3に対応する。
【0051】
測位部64は、算出された解集合S1〜S3の積集合Sを算出することにより、移動局10の位置を算出する。本実施例においては、前記解集合はそれぞれ円を表す軌跡であることから、これら複数の解集合S1〜S3に対応する軌跡の交点が、積集合Sに対応する。具体的には、前記複数の軌跡をそれぞれ表す数式を同時に満たす点を算出することによって、その交点の位置を算出する。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、これらの基地局対に対応する3つの軌跡88A、88B、88C(図7参照)のそれぞれに対応する前記式(4)乃至式(6)を同時に満たす解(x,y)を求めることにより、前記3つの軌跡の交点Pを移動局10の位置として算出する。なお、図7においては説明の便宜上基地局12の配置が図1とは異なっている。
【0052】
記憶部62は前記RAMやあるいは図示しないハードディスク装置などによって実現されるものであって、例えば前記測位信号の受信電力の差と前記距離比を表わす関係式である前記(3)式などの測位部64における測位演算に必要となる関係式などが予め記憶されている他、基地局12から得られた情報などが適宜記憶され、読み出される。
【0053】
図8は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動のうち、移動局10と基地局12との間における準備信号および測位信号の送受信に関する作動の概要を説明するタイムチャートである。なお、本図8においては、基地局は例として第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つが記載されているが、基地局の数はこれに限定されるものではない。まず時刻t11乃至t14において、基地局12のそれぞれから移動局10に対し、準備信号の送信が行なわれる。この準備信号の送信は基地局12の準備信号送信部52によって予め定められた送信出力P0により送信されるよう制御される。一方、移動局10においては、この準備信号が受信されるとともに準備信号受信部34によってその受信強度が検出される。各基地局12から送信出力P0により送信された準備信号は、図5に示したように各基地局12のそれぞれと移動局10との距離に応じて減衰して移動局10に到達する。図8においては、例として具体的に第1基地局12A乃至第4基地局12Dから送信された準備信号が移動局10において受信され、その受信強度はそれぞれPa乃至Pdと検出されている。なお、図8の例においては、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの順で準備信号が送信されているが、このような順序に限られない。
【0054】
移動局10の準備信号受信部34による各基地局12から送信される準備信号の受信強度の検出が終了すると、t15において送信電力Pwの決定が行なわれる。この送信電力の決定は、前記t11乃至t14において検出された受信強度Pa乃至Pdの値のうち、4番めに大きい値であるPrefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、前記測位を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、前述の(1)式により行なわれる。
【0055】
続いてt16においては、決定された送信電力Pwにより測位信号が送信されるよう、測位信号送信部32により移動局10の可変ゲインアンプ26の増幅率が設定されるとともに、測位信号が送信される。一方、各基地局12においては、送信された測位信号が受信され、測位信号受信部51によりその受信強度が検出される。
【0056】
このように送信電力決定部33により送信電力Pwが決定されると、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信電力が4番目に小さい基地局、すなわち移動局10から4番目に遠い基地局から移動局10までの減衰が(Pref−P0)であるので、移動局10から送信される測位信号は同様に(Pref−P0)だけ減衰して移動局10から4番目に遠い基地局に届く。すなわち移動局10からPwで送信された測位信号は(Pref−P0)だけ減衰し、Pw−(Pref−P0)により移動局10から4番目に遠い基地局により受信される。ここで、前記(1)式に示したようにPw=Pref+Pth−P0となるように決定されるので、移動局10から4番目に遠い基地局においては、移動局10から送信された測位信号は、Pw−(Pref−P0)=(Pref+Pth−P0)−(Pref−P0)=Pthの受信強度により受信される。
【0057】
一方、移動局10から最も近い基地局、および移動局10から2番目および3番目に近い基地局には、移動局10から送信される測位信号は移動局10から4番目に近い基地局に到達するよりも小さい減衰により到達するので、Pth以上の受信電力により受信される。この結果、移動局10から送信出力Pwによって送信された測位信号は、少なくとも4局の基地局によりPth以上の大きい電力によって受信される。すなわち、測位信号をPth以上の受信電力で受信した少なくとも4つの基地局12における受信電力を用いることにより、測位部64による測位を許容される誤差を満たしつつ行なうことができる。
【0058】
逆に言えば、移動局10からの測位信号の送信電力をPthとすることで、少なくとも4局の基地局12によって測位を行なうのに必要な受信電力Pth以上の受信電力により測位信号が受信されるので、必要以上に大きい送信電力で測位信号を送信することがなく、移動局10の消費電力を低減することができ、電池による電源の消耗を抑えることができる。さらに、前述のように測位部64においては各基地局12における測位信号の受信電力差に基づいて移動局10の測位を行い、移動局10における測位信号の送信電力は測位結果に関与しないことから、移動局10の電源として電池が用いられる場合において電池の消耗などに伴う送信電力の変動によって測位結果が影響を受けることがない。
【0059】
図9は、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、準備信号を受信した基地局12の数を表わす変数iの値が1とされる。
【0060】
続いてSA2においては受信を行なうためのタイマーがオンとされているか否かが判定される。移動局10は制御部30に図示しないタイマーを有し、このタイマーが予め定められた所定の間隔によりオンとされている場合にのみ電波の受信を行なうことによりいわゆる間欠受信を実行する。このようにすれば、移動局10は常時電波の受信を行なうことが無く、より電力消費を低減しうる。なお、このSA2は本発明の移動局10の実施において不可欠ではなく、タイマーを有さない移動局10であって常時電波の受信を行なうようにしてもよい。タイマーがオンである場合には本ステップの判断は肯定され、続くSA3が実行される。一方、タイマーがオンでない場合には本ステップの判断は否定され、タイマーがオンとなるまでSA2が繰り返される。
【0061】
電波の受信状態とされた無線部24に対応するSA3においては、基地局12から送信される準備信号の受信が実行される。そして準備信号受信部34に対応するSA4において、準備信号を受信したか否かが判断される。すなわち、準備信号を受信した場合には本ステップの判断は肯定され、SA5が実行される。また、準備信号を受信しなかった場合には本ステップの判断は否定され、再度SA2以降が繰り返し実行される。
【0062】
同じく準備信号受信部34に対応するSA5においては、SA4において受信した準備信号の受信電力の値が検出され、Piとして記憶される。そしてSA6において受信した準備信号の数に対応する変数iの値が1だけ増加させられる。
【0063】
SA7においては、変数iの値が予め設定された値imaxを上回ったか否かが判断される。このimaxの値は、準備信号受信部34において受信強度を検出する準備信号の数の上限であって、例えば移動局測位システム8に含まれる基地局12の数である。変数iがimaxを上回った場合には本ステップの判断は肯定され、続くSA8が実行される。一方、変数iがimaxを上回っていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き準備信号の受信を行なうべくSA2以降が繰り返し実行される。
【0064】
続くSA8およびSA9は送信電力決定部33に対応する。まずSA8においては、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、その大きさが予め定められた所定順位である値Prefとして、4番めに大きい値が選択される。そしてSA9においては、SA8で選択されたPrefの値、各基地局12が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、予め設定された移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthと前記(1)式とに基づいて、送信電力Pwが算出される。
【0065】
測位信号送信部32に対応するSA10においては、SA9において算出された送信電力により測位信号の送信が行なわれるよう、移動局10の可変ゲインアンプ26の増幅率が制御されるとともに、無線部24により測位信号が送信される。
【0066】
図10は、本実施例の移動局測位システム8を構成する基地局12の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、サーバ14から移動局10の測位を実行させる指令を受信したか否かが判断される。すなわち、基地局12はサーバ14から測位の実行のための指令を待機する状態とされており、サーバ14から測位の実行のための指令を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、測位のための作動を実行すべくSB2以降が実行される。また、サーバ14から測位の実行のための指令を受信しない場合は、SB1が繰り返し実行され、引き続き指令の待機が行なわれる。
【0067】
基地局12の準備信号送信部52に対応するSB2においては、予め定められた送信出力P0により準備信号が送信される。このとき、それぞれの基地局12から送信された電波が干渉し合い、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信強度の検出が正確に行なうことができないことがないよう、複数の基地局12を協調させて制御することにより、例えば複数の基地局12からの送信が同時に実行されず、順番に送信が行なわれる。
【0068】
電波の受信状態とされた無線部44に対応するSB3においては、移動局10から送信される測位信号の受信が行なわれる。続くSB4乃至SB6は測位信号受信部51に対応するものであって、まず、SB4においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信された測位信号であったか否かが判断される。前述したように、例えば移動局10や基地局12から送信される電波に、何れの移動局10あるいは基地局12から送信された電波であるかを識別するための識別符号や、その電波が測位信号であるか準備信号であるかなどについての情報が含まれることにより、SB3において電波を受信した基地局12においては、その受信した電波が測位の対象である移動局10から送信された測位信号であるかを判断することができる。このようにすれば、移動局10を複数含む移動局測位システム8であっても目的とする移動局10ごとに測位を実行することができる。SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものであった場合には本ステップの判断が肯定され、SB5が実行される。一方、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものでなかった場合には本ステップの判断は否定され、SB6が実行される。
【0069】
SB5においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものであったとして、受信した電波の受信電力の値が検出される。一方SB6においては、SB3において受信した電波が測位の対象とする移動局10から送信されたものでなく、測位の対象とする移動局10からの電波を受信することができなかったとして、受信電力の値が0とされる。
【0070】
SB7においては、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信したかが判断される。サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信した場合には本ステップの判断が肯定されSB8が実行される。一方、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を未だ受信していない場合には、引き続きサーバ14からの送信要求が待機される。
【0071】
基地局12の通信インタフェース56などに対応するSB8においては、SB5において検出された測位信号の受信電力、もしくはSB6において0とされた受信電力の値がサーバ14に対し送信される。
【0072】
図11は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の概要を説明するフローチャートである。SC1においては、基地局12の数を表わす変数iの値が1に初期化される。
【0073】
続くSC2においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、移動局10へ準備信号の送信を行なわせるための指令が送信される。そして、SC3においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示したか否かが判断される。全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示した場合においては、本ステップの判断は肯定され、SC5以降が実行される。一方、全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示していない場合には、引き続き未だ準備信号の送信を指示していない基地局に対し指示を行なうべく、SC4において変数iに1を加えた後、SC2以降が再度実行される。
【0074】
全ての基地局12に対し準備信号の送信を指示した場合に実行されるSC5においては、予め定められた一定時間の待機が行なわれる。この一定時間とは、移動局10の準備信号受信部34における準備信号の受信電力の検出、送信電力決定部33による測位信号の送信電力の決定、測位信号送信部32による測位信号の送信、各基地局12の測位信号受信部51における測位信号の受信電力の検出などの処理を行なうのに十分な時間として予め定められる。
【0075】
続くSC6においては、基地局12の数を表わす変数iの値が再度1に初期化される。そして、サーバ14の通信インタフェース60などに対応するSC7においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、その基地局12の測位信号受信部51において検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれ、その指令に対応して基地局12から送信される測位信号の受信電力についての情報が受信され、記憶部62などに記憶される。そして、SC8においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれたか否かが判断される。全ての基地局12に対し指令が行なわれた場合においては、本ステップの判断は肯定され、SC10が実行される。一方、全ての基地局12に対し指令が行なわれていない場合には、引き続き指令が行なわれていない基地局に対し指令を行なうべく、SC9において変数iに1を加えた後、SC7以降が再度実行される。
【0076】
本実施例の移動局測位システム8によれば、複数の基地局12の準備信号送信部52により所定の出力P0により送信された準備信号が、移動局10の準備信号受信部34によりそれぞれ受信されるとともにその受信電力が測定され、送信電力決定部33により、測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力が決定され、決定された送信電力により移動局10の測位信号送信部32により測位信号が送信されるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力を制御することができる。また、送信された測位信号が、基地局12の測位信号受信部51により受信されるとともにその受信電力が測定され、そして、測位部64により、複数の基地局12から複数の基地局対が選択され、選択された基地局対を構成する2つの基地局の測位信号受信部51においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比ΔVrに基づいて移動局10の位置が算出されるので、移動局10による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局10の測位を精度よく行なうことができる。
【0077】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、前記移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定するので、前記測位信号の送信電力Pwを、準備信号受信部34によって測定される複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号の受信電力のうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0078】
さらに本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が平面である場合において、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値Prefに基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0079】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、複数の基地局12の準備信号送信部52は、それぞれ同一の出力P0により準備信号を出力するので、複数の基地局12からされる準備信号を移動局10において受信した際の受信電力は、移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの距離に応じた値となるので、準備信号の受信電力に応じて複数の基地局12のそれぞれについて、移動局10からの距離を相対的に評価することができる。
【0080】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、基地局12は、準備信号送信部52による準備信号の出力P0の大きさを移動局10に通知する準備信号送信電力通知部59を有すること、を特徴とする。このようにすれば、基地局12が複数の値から準備信号を送信する出力を変更可能である場合において、移動局10は何れの出力により準備信号が送信されたかを知ることができる。
【0081】
本実施例の移動局10によれば、準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部34と、準備信号受信部34により測定された準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定する送信電力決定部33と、送信電力決定部33によって決定された送信電力Pwにより測位信号の送信を行なう測位信号送信部32と、を有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。
【0082】
前述の実施例においては、移動局10が平面内を移動する場合の移動局測位システム8について説明したが、このような態様に限られず、移動局10が3次元空間を移動可能とされている場合に、その移動局10の位置を算出する移動局測位システム8も同様に構築可能である。この場合測位部64は、基地局対における受信電力差に対応して得られる距離比を満たす集合は球となるので、その交点として1点を特定するには4つの球が必要となり、4つの基地局対における測位信号の受信電力差を得る必要がある。すなわち、移動局10から送信される測位信号が5つの基地局12において測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pth以上の受信強度(電力)により受信される必要がある。
【0083】
そこで、移動局10の送信電力決定部33は、5局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された準備信号について前記準備信号受信部34により検出された受信強度の値のうち、予め定められた所定順位である5番めに大きい値をPrefの値として、送信電力Pwの値を算出し決定する。このようにすれば、少なくとも5局以上の基地局12においてPth以上の受信電力により測位信号が受信される。
【0084】
このように、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について移動局10の準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて測位信号の送信電力P0を決定することので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも5つの基地局12において移動局10から送信される測位信号がPth以上の受信電力により受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0085】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0086】
図12は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例における移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であり、前述の実施例における図2に対応する図である。図12においては、制御部30の構成が図2のそれとは異なる。なお、本実施例においても前述の実施例と同様に移動局10は例えば充電池や乾電池などの図示しない電池より駆動されることができる。
【0087】
準備信号送信部36は、前述の実施例1における基地局12の準備信号送信部52に対応するもので、予め定められた所定の出力P0(dBm)となるように可変ゲインアンプ26の増幅率を制御し、その出力P0により無線部24により所定の準備信号を送信させる。この準備信号は、移動局10に固有で相互に異なる識別符号を含むなどにより、準備信号を受信した基地局12は移動局10が複数存在する場合であっても何れの移動局10から送信されたものであるかを識別することができる。
【0088】
送信電力決定部33は、後述する複数の基地局12のそれぞれの送信電力指示部57から指示される送信電力要求値Pw_iに基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された前記送信電力要求値のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値Prefの値を、送信電力Pwとする。
【0089】
図13は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例における基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であり、前述の実施例における図3に対応する図である。図13においては、制御部50の構成が図3のそれとは異なる。
【0090】
受信部54は、移動局10から送信され、基地局12の無線部44により受信された準備信号および測位信号の受信強度を検出する。この受信強度は例えば受信電力(dBm)により表現される。受信部54により検出された測位信号の受信強度についての情報は通信インタフェース56を介してサーバ14に送信される。
【0091】
送信電力要求値算出部53は、前記受信部54により検出された準備信号の受信強度の値に基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPw_iの要求値を決定する。具体的には、移動局10から送信されそれぞれの基地局12の無線部44により受信された準備信号について前記受信部54により検出された受信強度の値Pr_i、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pw_iの値を
Pw_i=Pr_j−P0+Pth・・・(7)
のように算出する。なお、添え字iは複数の基地局12のそれぞれを識別するために用いられる自然数であって、i=1,2,…のように基地局12のそれぞれ毎に異なる数が付される。なお、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0の値は、予め設定され移動局10と基地局12との間で共有された値が用いられても良い。また、例えば移動局10における準備信号の送信電力が例えば予め設定された複数の送信電力の値から選択可能とされていたり、あるいは連続的に変化させることによりその送信電力を設定することができるなど、その送信電力の値が変更可能である場合においては、準備信号送信部36が準備信号送信電力通知部39を更に有し、準備信号送信電力通知部39により準備信号の送信時においてその準備信号の送信出力であるP0の値についての情報が含めることにより準備信号の送信の度に移動局10から各基地局12に通知されるようにしてもよい。具体的には準備信号を送信する際の送信電力P0は、移動局10から送信された準備信号が各基地局12において識別可能な程度に受信することができる受信強度となるように設定され、より具体的には、移動局10と基地局12とが最も離れた距離にある場合における減衰量を考慮して設定される。
【0092】
なお、このように送信電力要求値Pw_iの値が算出されるので、移動局10の送信電力決定部33において、前記送信電力要求値のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値に基づいて送信電力Pwとすることは、各基地局12における準備信号の受信電力が4番目に大きい値に基づいて送信電力Pwを算出することでもある。
【0093】
送信電力指示部57は前記送信電力要求値算出部53によって算出された送信電力要求値Pw_iの値についての情報を移動局10に送信する。これら送信電力要求値算出部53および送信電力指示部57が送信電力要求部に対応する。
【0094】
なお、本実施例においては、サーバ14は前述の実施例において説明した図4に示す構成のものが同様に用いられる。
【0095】
図14は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動のうち、移動局10と基地局12との間における準備信号および測位信号の送受信に関する作動の概要を説明するタイムチャートである。なお、本図14においては、基地局は例として第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つが記載されているが、基地局の数はこれに限定されるものではない。まず時刻t21において、移動局10から基地局12のそれぞれに対し、準備信号の送信が行なわれる。この準備信号の送信は移動局10の準備信号送信部36によって予め定められた送信出力P0により送信されるよう制御される。一方、各基地局12においては、この準備信号が受信されるとともに受信部54によってその受信強度が検出される。移動局10から送信出力P0により送信された準備信号は、図5に示したように移動局10と各基地局12のそれぞれとの距離に応じて減衰して各基地局12に到達する。図14においては、例として具体的に移動局10から送信された準備信号が第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおいてそれぞれ受信され、その受信強度はそれぞれPr_1乃至Pr_4と検出されている。なお、図14の例において、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの受信はその順序を表わすものではない。
【0096】
各基地局12の受信部54による移動局10から送信される準備信号の受信強度の検出が終了すると、t22において送信電力要求値算出部53による送信要求電力Pw_iの算出が行なわれる。この送信電力要求値の決定は、前記t21において検出された準備信号の受信強度Pr_i(i=1〜4)、移動局10が準備信号を送信する際の送信電力P0、および、後述する測位部64において移動局10の位置の算出(測位)を行なうために必要となる測位信号の受信強度の最小値Pthに基づいて、送信電力Pw_iの値を前記(7)式のように算出する。
【0097】
t23乃至t26においては、各基地局12の送信電力指示部57により送信電力要求値Pw_iの値についての情報が各基地局12から移動局10に対して送信される。なお、図14の例においては、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの順で送信が行なわれているが、このような順序に限られない。
【0098】
t27においては、移動局10の送信電力決定部33により、各基地局12のそれぞれの送信電力指示部57から指示される送信電力要求値Pw_iに基づいて、移動局10の無線部24から送信する測位信号の送信電力の大きさPwを決定する。具体的には、4局以上の基地局12のそれぞれから送信され移動局10の無線部24により受信された前記送信電力要求値Pw_1乃至Pw_4のうち、予め定められた所定順位である4番目に小さい値Prefを、送信電力Pwとする。
【0099】
t28においては、t27において決定された送信電力Pwで測位信号送信部32により測位信号が送信される。一方、各基地局12においては、送信された測位信号が受信され、受信部54によりその受信強度が検出される。
【0100】
このように送信電力決定部33により送信電力Pwが決定されると、移動局10の準備信号受信部34において準備信号の受信電力が4番目に大きい基地局、すなわち移動局10から4番目に遠い基地局から移動局10までの減衰が(Pr_iv−P0)(ivは移動局10から4番目に遠い基地局を表わす)であるので、移動局10から送信される測位信号は同様に(Pr_iv−P0)だけ減衰して移動局10から4番目に遠い基地局に届く。すなわち移動局10からPwで送信された測位信号は(Pr_iv−P0)だけ減衰し、Pw−(Pr_iv−P0)により移動局10から4番目に遠い基地局により受信される。送信電力決定部33は4番目に遠い基地局での送信電力要求値Pw_ivを送信電力Pwと決定する一方、4番目に遠い基地局12の送信電力要求値算出部53は送信電力要求値Pw_ivを前記(7)式に示したようにPw_iv=Pr_iv−P0+Pthとなるように決定するので、移動局10から4番目に遠い基地局においては、移動局10から送信された測位信号は、Pw−(Pr_iv−P0)=Pw_iv−(Pr_iv−P0)=(Pr_iv−P0+Pth)−(Pr_iv−P0)=Pthの受信強度により受信される。
【0101】
一方、移動局10から最も近い基地局、および移動局10から2番目および3番目に近い基地局には、移動局10から送信される測位信号は移動局10から4番目に近い基地局に到達するよりも小さい減衰により到達するので、Pth以上の受信電力により受信される。この結果、移動局10から送信出力Pwによって送信された測位信号は、少なくとも4局の基地局によりPth以上の大きい電力によって受信される。すなわち、測位信号をPth以上の受信電力で受信した少なくとも4つの基地局12における受信電力を用いることにより、測位部64による測位を許容される誤差を満たしつつ行なうことができる。
【0102】
逆に言えば、移動局10からの測位信号の送信電力をPthとすることで、少なくとも4局の基地局12によって測位を行なうのに必要な受信電力Pth以上の受信電力により測位信号が受信されるので、必要以上に大きい送信電力で測位信号を送信することがなく、移動局10の消費電力を低減することができ、電池による電源の消耗を抑えることができる。さらに、前述のように測位部64においては各基地局12における測位信号の受信電力差に基づいて移動局10の測位を行い、移動局10における測位信号の送信電力は測位結果に関与しないことから、移動局10の電源として電池が用いられる場合において電池の消耗などに伴う送信電力の変動によって測位結果が影響を受けることがない。
【0103】
図15は、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信したか否かた判断される。基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信した場合には、本ステップの判断が肯定され、SD2以降が実行される。一方基地局12のいずれかから準備信号の送信開始指令を受信されていない場合は、送信開始指令を待機するためSD1が繰り返し実行される。
【0104】
準備信号送信部36に対応するSD2においては、所定の送信出力P0となるように可変ゲインアンプ26が制御され、その送信出力P0により準備信号が送信される。
【0105】
SD3においては送信電力要求値を受信した基地局12の数を表わす変数jの値が1とされる。
【0106】
SD4乃至SD7は送信電力決定部33に対応する。まずSD4においては、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信したか否かが判断される。そして、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、SD5が実行される。また、いずれかの基地局12からの送信電力要求値を受信していない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き送信電力要求値の受信を待機するためSD4が繰り返し実行される。
【0107】
SD4の判断が肯定された場合に実行されるSD5においては、受信された送信電力要求値Pw_jについての情報が図示しない移動局10のメモリなどの記憶手段に記憶される。
【0108】
SD6においては、送信電力要求値を受信した基地局の数を表わす変数jの値が予め設定された値jmaxを上回ったか否かが判断される。このjmaxの値は、送信電力決定部33において送信電力Pwを決定する際に参照する送信電力要求値Pw_jの数の上限であって、例えば移動局測位システム8に含まれる基地局12の数である。変数jがjmaxを上回った場合には本ステップの判断は肯定され、続くSD7が実行される。一方、変数jがjmaxを上回っていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き準備信号の受信を行なうべくSD4以降が繰り返し実行される。
【0109】
SD7においては、SD4で受信されSD5で保存された各基地局12のそれぞれから送信された前記送信電力要求値のうち、4番目に小さい値Prefの値を、送信電力Pwとする。
【0110】
測位信号送信部32に対応するSD8においては、SD7で決定された送信電力Pwとなるように可変ゲインアンプ26が制御され、その送信出力Pwにより測位信号が送信される。
【0111】
図16は、本実施例における移動局測位システム8を構成する基地局12の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SE1においては、サーバ14から移動局10の測位を実行させる指令を受信したか否かが判断される。すなわち、基地局12はサーバ14から測位の実行のための指令を待機する状態とされており、サーバ14から測位の実行のための指令を受信した場合には本ステップの判断が肯定され、測位のための作動を実行すべくSE2以降が実行される。また、サーバ14から測位の実行のための指令を受信しない場合は、SE1が繰り返し実行され、引き続き指令の待機が行なわれる。
【0112】
SE2においては、SE1でサーバ14からの指令を受信した基地局12から移動局10に対し、準備信号を送信する旨の指示が行なわれる。受信部54に対応するSE3においては、移動局10からの準備信号の受信が行なわれる。そしてSE2で準備信号の送信を指示した移動局10からの準備信号が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、SE4以降が実行される。また、準備信号が受信されない場合には、再度移動局10への準備信号の送信指令が失敗したとして、再度SE1が実行される。
【0113】
SE3の判断が肯定された場合に実行されるSE4においては、移動局10からの準備信号を受信した旨がサーバ14に通知される。
【0114】
受信部54に対応するSE5においては、SE3で受信された準備信号の受信電力Pr_iが検出される。
【0115】
送信電力要求値算出部53および送信電力指示部57に対応するSE6においては、SE5で検出された準備信号の受信強度Pr_iなどに基づいて、移動局10から送信される測位信号の送信電力の要求値が算出され、移動局10に対し算出された要求値が送信される。この算出は例えば前述の(7)式に基づいて行なわれる。
【0116】
受信部54に対応するSE7においては、移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信強度が算出される。
【0117】
SE8においては、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信したかが判断される。サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を受信した場合には本ステップの判断が肯定されSE9が実行される。一方、サーバ14から測位信号の受信強度の送信要求を未だ受信していない場合には、引き続きサーバ14からの送信要求が待機される。
【0118】
基地局12の通信インタフェース56などに対応するSE9においては、SE8において検出された測位信号の受信電力の値がサーバ14に対し送信される。
【0119】
図17は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。SF1においては、基地局12の数を表わす変数iの値が1に初期化される。
【0120】
続くSF2においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、移動局10の測位を実行させるための指令が送信される。この指令は具体的には移動局10に対し準備信号の送信を行なわせるための指令である。そして、SF3において予め定められた所定時間だけ待機が行なわれる。この所定時間は、基地局iから移動局10に対し無線による指令を行ない、移動局10が準備信号を送信し、基地局iがその準備信号を検出するのに十分な時間として設定される。
【0121】
そして、SF4において、基地局iにおいて移動局10からの準備信号が受信されたか否かの確認が行なわれる。具体的には、前述の基地局12の作動を説明する図16のフローチャートにおけるステップSF4の通知をサーバ14が受信した場合に移動局10からの準備信号が受信されたとされる。
【0122】
続くSF5においては、SF4において基地局iにおいて移動局10からの準備信号が受信されたか否かが判断される。すなわち移動局10からの準備信号が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、SF7が実行される。また、移動局10からの準備信号が受信されなかった場合には、基地局iから移動局10への指令が伝達されない、例えば基地局iと移動局10との距離が離れすぎていたり、あるいは障害物が存在するなどにより無線通信ができない可能性があるとして、別の基地局から再度移動局10への指令を行なうべく、SF6において変数iに1を加えた後、SF2以降が再度実行される。
【0123】
続くSF7においては、基地局12の数を表わす変数iの値が再度1に初期化される。そして、サーバ14の通信インタフェース60などに対応するSF8においては、i番目の基地局(基地局i)に対し、その基地局12の受信部54において検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれ、その指令に対応して基地局12から送信される測位信号の受信電力についての情報が受信され、記憶部62などに記憶される。そして、SF9においては、変数iの値が移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数であるimaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、全ての基地局12に対し検出された測位信号の受信電力についての情報をサーバ14に送信させるための指令が行なわれたか否かが判断される。全ての基地局12に対し指令が行なわれた場合においては、本ステップの判断は肯定され、SF11が実行される。一方、全ての基地局12に対し指令が行なわれていない場合には、引き続き指令が行なわれていない基地局に対し指令を行なうべく、SF10おいて変数iに1を加えた後、SF8以降が再度実行される。
【0124】
本実施例の移動局測位システム8によれば、移動局10の準備信号送信部36により所定の出力P0で送信される準備信号は、基地局12の受信部54により受信されるとともにその受信電力Pr_iが測定され、送信電力要求値算出部53によりその測定された準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、移動局に10おける測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値Pw_iが算出され、送信電力指示部57により該送信電力要求値Pw_iによる測位信号の送信が移動局10に指示される。そして、移動局10の送信電力決定部33により、複数の基地局12からそれぞれ要求された送信電力要求値Pw_iの大きさに基づいて測位信号の送信電力Pwが決定され、測位信号送信部32により、決定された送信電力Pwにより測位信号の送信が行なわれるので、準備信号の受信電力のそれぞれの大きさPr_iに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。また、測位信号は、基地局12のそれぞれにおける受信部54により受信されるとともにその受信電力が測定され、測位部64により、複数の基地局12から複数の基地局対が選択され、選択された基地局対を構成する2つの基地局の受信部54においてそれぞれ測定される測位信号の受信電力の比に基づいて移動局10の位置が算出されるので、移動局10による測位信号の送信電力が一定でない場合においても移動局10の測位を精度よく行なうことができる。
【0125】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、複数の基地局12の受信部54によってそれぞれ測定される移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号の受信電力Pr_iのうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、受信部54によって測定される準備信号の受信電力Pr_iのうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて決定することができる。
【0126】
さらに本実施例の移動局測位システム8によれば、送信電力決定部33は、移動局10の位置の測位範囲が平面である場合において、複数の移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号について受信部54によって測定される受信電力Pr_iのうち、大きい順に4番目の受信電力の値Prefに基づいて測位信号の送信電力Pwを決定するので、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が平面である場合に必要となる少なくとも4つの基地局12において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0127】
また本実施例の移動局測位システム8においては、前述の実施例1で言及したのと同様に、送信電力決定部33は、前記移動局10の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記移動局10の準備信号送信部36により送信される準備信号について前記受信部54によって測定される受信電力Pr_iのうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて測位信号の送信電力Pwを決定することができる。このようにすれば、測位信号の送信電力Pwを、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合に必要となる少なくとも4つの基地局12において移動局10から送信される測位信号が受信され、その受信電力が測定されるように決定することができる。
【0128】
また、本実施例の移動局10は、所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部36と、複数の基地局12の送信電力指示部57によりそれぞれ指示された送信電力要求値Pw_iの大きさに基づいて、測位信号の送信電力Pwを決定する送信電力決定部33と、送信電力決定部33によって決定された送信電力Pwにより測位信号の送信を行なう測位信号送信部32とを有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、複数の基地局12のそれぞれから指示される送信電力要求値の大きさPw_iに基づいて測位信号の送信電力Pwを制御することができる。
【0129】
また、本実施例の基地局12は、移動局10から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部54と、受信部54により測定された準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、移動局10における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出する送信電力要求値算出部53と、送信電力要求値による測位信号の送信を移動局10に指示する送信電力指示部57と、を有し、本実施例の移動局測位システム8に適用可能であるので、基地局12において受信した信号の受信強度を測定することができ、準備信号の受信電力Pr_iに基づいて、測位信号の送信電力要求値Pw_iを算出し、移動局10にその送信電力要求値により測位信号の送信を指示することができるとともに、移動局10の測位に必要となる測位信号の受信強度を測定することができる。
【0130】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0131】
例えば、前述の実施例においては、基地局12とサーバ14とは通信ケーブル18で接続されることにより情報通信可能とされていたが、これに限られず、基地局12とサーバ14との間で情報通信が可能な他の手段、例えば無線通信などによって情報通信可能とされてもよい。この場合、通信インタフェース56、60はその通信手段に応じた通信機能を有する。
【0132】
また、準備信号受信部34、測位信号受信部51、受信部54における受信強度の値は、受信電力により表現されたが、これに限られない。例えば電波の受信強度を256段階などのように予め規定された指標で表わす値であるRSSI(receive signal strength indicator)により表現されてもよい。すなわち、前記RSSIのような指標とデシベル表現された受信電力とが相互に変換可能であり、測位部64において基地局対を構成する各基地局の受信電力差をデシベル表現された受信電力により表現することができれば、準備信号受信部34、測位信号受信部51、受信部54において検出される受信強度を表わす指標の種類は限定されない。
【0133】
前述の実施例において、図9のSA7、図11のSC3、SC8においては、予め定められた局数imaxの基地局12からの準備信号の受信強度の検出したことにより検出を終了するようにされ、imaxは移動局測位システム8に含まれる基地局12の総数とされたが、これに限られず、測位に必要な最小の基地局数とされても良い。また、予め定められた時間間隔が経過したことによってもよいし、これらの複数のいずれかが満たされた場合に終了してもよい。図15のSD6におけるjmaxについても同様である。
【0134】
前述の実施例1においては、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、移動局10の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値として、移動局10の測位範囲が平面である場合においては大きい順に4番目の値、移動局10の測位範囲が3次元空間である場合においては大きい順に5番目の値に基づいて測位信号の送信電力が算出されたが、これは、移動局10の測位を行なうにあたり必要となる最小の基地局12の数に対応するものである。従って、例えば移動局10が平面を移動する場合であって、更にその位置が制限されているため移動局10の測位に必要な基地局12の数が3局である場合には、送信電力決定部33は、複数の基地局12の準備信号送信部52によりそれぞれ送信される準備信号について準備信号受信部34によって測定される受信電力のうち、大きい順に3番目の値に基づいて測位信号の送信電力が算出される。実施例2についても同様である。
【0135】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図5】電波の伝搬距離と受信電力との関係の一例を説明する図である。
【図6】基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと移動局との距離の比と移動局の存在する領域との関係を説明する図である。
【図7】測位部による移動局の測位の原理の概要を説明する図である。
【図8】本発明の移動局測位システムにおける移動局と基地局との電波の送受信についての処理を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムを構成する移動局の制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の移動局測位システムを構成する基地局の制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の移動局測位システムを構成するサーバの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって図2に対応する図である。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、図3に対応する図である。
【図14】本発明の別の実施例における移動局測位システムにおける移動局と基地局との電波の送受信についての処理を説明する図であって、図8に対応する図である。
【図15】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する移動局の制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図9に対応する図である。
【図16】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図10に対応する図である。
【図17】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成するサーバの制御作動の概要を説明するフローチャートであって、図11に対応する図である。
【符号の説明】
【0137】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
32:測位信号送信部
33:送信電力決定部
34:準備信号受信部
36:準備信号送信部
51:測位信号受信部
52:準備信号送信部
53:送信電力要求値算出部(送信電力要求部)
54:受信部
57:送信電力指示部(送信電力要求部)
59:準備信号送信電力通知部(準備信号送信出力通知部)
64:測位部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、
前記基地局は、
所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記移動局から送信される前記測位信号を受信し、受信された該測位信号の受信電力を測定する測位信号受信部と、を有し、
前記移動局は、
前記準備信号を受信し、受信された該準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、
該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、
前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記複数の基地局の準備信号送信部は、それぞれ同一の出力により前記準備信号を出力すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記基地局は、前記準備信号送信部による前記準備信号の出力の大きさを前記移動局に通知する準備信号送信出力通知部を有すること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、
該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、
請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な移動局。
【請求項8】
移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、
前記基地局は、
前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、
該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、
前記移動局は、
予め定められた所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、
前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項9】
前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の前記受信部によってそれぞれ測定される前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項10】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項11】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項12】
所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、
請求項8乃至11のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な移動局。
【請求項13】
前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、
該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、
請求項8乃至11のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な基地局。
【請求項1】
移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、
前記基地局は、
所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記移動局から送信される前記測位信号を受信し、受信された該測位信号の受信電力を測定する測位信号受信部と、を有し、
前記移動局は、
前記準備信号を受信し、受信された該準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、
該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、
前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記測位信号受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記準備信号受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記複数の基地局の準備信号送信部は、それぞれ同一の出力により前記準備信号を出力すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記基地局は、前記準備信号送信部による前記準備信号の出力の大きさを前記移動局に通知する準備信号送信出力通知部を有すること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記準備信号を受信し、受信された前記準備信号の受信電力を測定する準備信号受信部と、
該準備信号受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部と、を有し、
請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な移動局。
【請求項8】
移動局から送信された測位信号を複数の基地局により受信し、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいて、
前記基地局は、
前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、
該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、
前記移動局は、
予め定められた所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、
前記複数の基地局から複数の基地局対を選択し、選択された該基地局対を構成する2つの基地局の前記受信部においてそれぞれ測定される前記測位信号の受信電力の比に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部を有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項9】
前記送信電力決定部は、前記複数の基地局の前記受信部によってそれぞれ測定される前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号の受信電力のうち、前記移動局の測位範囲に応じて予め定められた所定順位の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項10】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が平面である場合において、前記移動局の準備信号送信部により送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に4番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項11】
前記送信電力決定部は、前記移動局の位置の測位範囲が3次元空間である場合において、前記複数の基地局の準備信号送信部によりそれぞれ送信される準備信号について前記受信部によって測定される受信電力のうち、大きい順に5番目の受信電力の値に基づいて前記測位信号の送信電力を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項12】
所定の出力により準備信号を送信する準備信号送信部と、
前記複数の基地局の送信電力要求部によりそれぞれ要求された送信電力要求値の大きさに基づいて、前記測位信号の送信電力を決定する送信電力決定部と、
該送信電力決定部によって決定された送信電力により前記測位信号の送信を行なう測位信号送信部とを有し、
請求項8乃至11のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な移動局。
【請求項13】
前記移動局から送信される準備信号および測位信号をそれぞれ受信し、受信された該準備信号および測位信号の受信電力をそれぞれ測定する受信部と、
該受信部により測定された前記準備信号の受信電力に基づいて、前記移動局における測位信号の送信電力の要求値である送信電力要求値を算出し、該送信電力要求値による測位信号の送信を前記移動局に要求する送信電力要求部と、を有し、
請求項8乃至11のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能な基地局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−87933(P2010−87933A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255800(P2008−255800)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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