説明

移動層固気反応装置における粉体状浄化剤の供給方法

【課題】乾式排煙浄化において浄化剤利用率を向上させる。
【解決手段】上から下へ移動する移動層媒体粒子(1)を充填し、該移動層媒体粒子の間隙に粉体状の浄化剤(2)を貫入・保持させ、かつ該移動層媒体粒子の運動に直交する方向に排煙ガスを通気して該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置(30)において、気流加速部(31A1)あるいは浄化剤集中供給部(38)を該移動層の上端付近かつ排煙ガスの流入面側に設け、その近傍の媒体粒子の間隙に浄化剤を貫入・保持させることにより、浄化剤の移動層内滞留時間をできるだけ長くし浄化効率と浄化剤の利用率を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙ガス浄化のために、粉体状の排煙浄化剤を粒子移動層に貫入または混入させて移動層内で排煙ガスとの固気反応を行わせる固気反応装置に関し、特に、粒子移動層内における固気反応時間を十分に確保することにより、固気反応効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排煙ガス中のイオウ酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)などの有害物質を除去するため、粉体状の排煙浄化剤(以下「浄化剤」と略称する)を煙道に供給して排煙ガス中に浄化剤を分散させ、固体である浄化剤と気体である有害物質との固気反応を生じさせることにより、排煙ガスを浄化する技術が知られている。浄化剤は、いわゆる脱硫剤や脱塩剤である。この固気反応においては、固体である浄化剤の側の反応速度が遅いため、排煙ガス中に浄化剤粒子が浮遊している間に反応を完結させることは困難であるという問題がある。
【0003】
従来技術の一つでは、バグフィルターを固気反応装置として用いる。当該技術では、浄化剤を分散させた排煙ガスをバグフィルターに通すことにより、浄化剤をバグフィルター表面にて付着捕集する。そして、バグフィルターの浄化剤付着層を固気反応層として、固気反応時間を確保する。この場合、排煙ガスのバグフィルターへの流入速度は、通常、0.02〜0.04m/sである。従って、浄化剤の粒子径が20μ以上(粒子密度2g/cm)になると、バグフィルター表面への付着が困難になる。これは、粒子沈降速度(粒子径20μm、粒子密度2g/cmの場合、0.02m/s)に比べて、ガス流入速度が低速すぎるためである。
【0004】
バグフィルターの別の問題点は、間欠的に(例えば45分〜180分毎に)逆洗動作をする必要があることである。毎回の逆洗の時点で、未だ固気反応の性能を残している浄化剤粒子も全て洗い落とされてしまうため、浄化剤の利用率が低下する。つまり、浄化剤粒子が付着してから次の逆洗までの時間が、その浄化剤粒子の固気反応性能を用い尽くす時間よりも短ければ、その浄化剤は少なくとも部分的に無駄となる。例えば、逆洗の直前にバグフィルターに付着した浄化剤粒子は、全く利用されずに排除されてしまう。
【0005】
バグフイルターを固気反応装置とした従来技術においては、以上の原理的欠点がある。図5は、浄化剤としてカルシウム(Ca)系脱硫剤を用いたバグフィルターにおいて、逆洗間隔を45分、90分、135分、180分と変えた場合の、脱硫効率(出口でのSO濃度低下率)とカルシウム利用率(浄化剤利用率)をシミュレーションした結果を、模式的に示した図である。シミュレーション条件は、次の通りである。
・ガス処理量75,000 Nm/h
・SOx入口濃度420ppm
・脱硫剤:高反応消石灰
・脱硫剤供給量:167kg/h(SOx入口濃度に対するCa/S=2)
・ろ過面積:800m
【0006】
図6の表は、図5のCa/S=2の場合を含めて、Ca/S=3、4、5と変えた場合の、脱硫効率及びカルシウム利用率のシミュレーション結果をまとめた表である。図6の表に示されるように、バグフィルター固気反応装置の場合、Ca/S=2において脱硫効率は54.4%、カルシウム利用率(浄化剤利用率)は高々34%に留まる。
【0007】
以上のバグフィルター固気反応装置の欠点を解決する手段として、粒子移動層(以下「移動層」と略称する)を固気反応装置とした乾式排煙浄化システムが、特許文献1に開示されている。特許文献1の乾式排煙浄化システムでは、上から下へと連続的に移動する移動層粒子を充填された鉛直方向に長い移動層を、乾式排煙浄化に用いている。移動層粒子の材料は、例えば石炭灰・石膏硬化材、粘土焼成材であり、粒径5〜8mm程度の球状、またはペレット状の粒状体である。この移動層に対して直交するように、排煙ガスを通過させる。特許文献1では、移動層へのガス流入速度を0.4〜0.8m/sとするため、排煙ガスに分散された粉体状の浄化剤は、確実に移動層内の移動層粒子間に貫入する。この結果、移動層内で浄化剤と排煙ガスの有害物質との固気反応が進行する。移動層に貫入した浄化剤は、鉛直方向に移動する移動層粒子とともに降下する間に有害物質を吸収する。従って、固気反応のための浄化剤の滞留時間がバグフィルターに比べて長い。このように、移動層固気反応装置は、固体である浄化剤の反応速度が遅さを、滞留時間の長さにより補うことができる点で、有効である。
【特許文献1】特許第3999995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の移動層固気反応装置においては、移動層上部において排煙ガスが浄化処理されず部分的に未反応ガスが流出するという問題点がある。以下、この問題点について詳述する。
粉体状の浄化剤が排煙ガス中に分散し、排煙ガスに随伴して移動層に直交流入する場合、移動層上部においては捕集量が少なく、移動層下部になるほど浄化剤の捕集量が増加する現象が見られる。さらに、移動層粒子の降下とともに、移動層下部における浄化剤の捕集量の増加が促進される。
【0009】
上述した従来の移動層固気反応装置の問題点に鑑み、本発明は、乾式排煙浄化に用いる移動層固気反応装置の浄化剤利用率の向上及び浄化効率の向上のために、移動層に対し効果的に浄化剤を供給できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するべく、移動層に対し効果的に浄化剤を供給する新規の構成を見出すために、以下のシミュレーションを行った。
図7(a)は、特許文献1における円環形移動層に対し、粉体状の脱硫剤を均一分散させた排煙ガスを直交流入させた場合の脱硫効率をシミュレーション解析した結果を示すグラフである。解析の手法として、数1の通りの「移動層内の吸収反応に関する支配方程式」を設定し、シミュレーション解析した。
【0011】
【数1】

【0012】
図7(a)のグラフでは、x軸が円環形移動層の内筒径から外筒径までの距離、y軸が円環形移動層の高さに相当する。図5におけるバグフィルター固気反応装置と比較すると、Ca/S=2の条件下において、脱硫効率65.0%、Ca利用率40.6%と、バグフィルター固気反応装置としたものより高い性能を有することが示された。しかし、移動層上部では、SOx濃度が高くなっている。これは、移動層上部において脱硫剤の捕集量が少ないことを表している。一方、移動層下部において過度に脱硫剤が捕集されると、移動層下部のガス流通抵抗が増加する。その結果、移動層の上部側への排煙ガスの偏流が生じたり、一部に吹き抜けを生じたりするため、排煙ガスが浄化されないまま流出して、脱硫効率が低下するという問題を有している。
これは、移動層へ向かう排煙ガスの速度が不十分なために、浄化剤粒子の多くが水平方向の推進力を失い、移動層に到達するまでに降下してしまうことによると考えられる。比較的大きな粒子が移動層下部に貫入した場合、固気反応を完結しないまま排出されてしまう。このように、十分な固気反応を行うための滞留時間が確保できないと、浄化剤の利用率を低下させる。
【0013】
移動層上部における浄化剤不足の問題を解消する一つの試みとして、粉体状の浄化剤を排煙ガスに分散させず、移動層の真上から直接的に集中供給することが考えられる。この場合のシミュレーション解析を、特許文献1の円環形移動層について行った。
図7(b)のグラフが、そのシミュレーション解析結果である。この場合、Ca/S=2の条件下において、脱硫効率93.9%、Ca利用率58.7%となった。これは、バグフィルター固気反応装置はもちろん、分散供給による移動層固気反応装置と比べても高い性能である。しかし、この場合は、移動層下部においてSOx濃度が高くなっている部分がある。これは、脱硫剤が移動層を下降してくる間に固気反応が完結し、移動層下部において脱硫剤の性能が飽和値に達し脱硫性能に不足が生じるためと考えられる。
【0014】
以上のシミュレーション結果を踏まえて、上記課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
本発明の、移動層固気反応装置の第1の態様における一形態は、上から下へ移動する移動層粒子が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤が排煙ガスに随伴して貫入されることにより固気反応器を形成する平板状の移動層と、該移動層に隣接する平板状空間であるガス流入路と、該ガス流入路の前段にて排煙ガスに対し前記浄化剤を分散させるべく供給する浄化剤供給手段とを備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置であって、前記浄化剤を分散させた排煙ガスを前記移動層に向かって水平方向に加速するべく、前記ガス流入路の上端近傍に位置する入口に形成したダクト狭窄部を備え、前記ダクト狭窄部により加速された排煙ガスに含まれる浄化剤が、前記ガス流入路を通過して前記移動層へ到達するとき、該浄化剤を構成する粉体粒子のうち、質量の大きい粒子ほど該移動層の上端に近い位置にて該移動層へと貫入し、質量の小さい粒子ほど該移動層の下端に近い位置にて該移動層へと貫入していくことを特徴とする。
【0015】
また、第1の態様における別の形態は、上から下へ移動する移動層粒子が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤が排煙ガスに随伴して貫入されることにより固気反応器を形成する円環状の移動層と、該移動層の内筒側の円柱状空間であるガス流入路と、前記ガス流入路の前段にて排煙ガスに対し前記浄化剤を分散させるべく供給する浄化剤供給手段とを備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置であって、前記浄化剤を分散させた排煙ガスを前記移動層に向かって斜め下方向に加速するべく、前記ガス流入路の上端近傍に位置する入口の中心に、頂点を上方に向けて配置した円錐状部材を備え、前記円錐状部材により加速された排煙ガスに含まれる浄化剤が、前記ガス流入路を通過して前記移動層へ到達するとき、該浄化剤を構成する粉体粒子のうち、質量の大きい粒子ほど該移動層の上端に近い位置にて該移動層へと貫入し、質量の小さい粒子ほど該移動層の下端に近い位置にて該移動層へと貫入していくことを特徴とする。
上記第1の態様において、前記加速された排煙ガスの速度は、該排煙ガスの移動層への流入速度の15倍またはそれ以上であることが、好適である。以上の第1の態様を浄化剤の分散供給方式と呼称する。
【0016】
本発明の、移動層固気反応装置の第2の態様は、上から下へ移動する移動層粒子が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤(2)が混入されることにより固気反応器を形成する移動層を備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置であって、前記移動層の上端または上端近傍でありかつ排煙ガスの流出側面よりも流入側面に近い位置に設けられ、前記移動層粒子に対し前記浄化剤を混入させるべく該移動層に該浄化剤を供給する浄化剤供給手段を備えたことを特徴とする。
上記第2の態様において、前記移動層が円環状であり、該移動層の内筒側の円柱状空間であるガス流入路を備え、該ガス流入路への入口が該移動層の外筒側から内筒側へ貫通して該ガス流入路の鉛直方向中間位置に設けられ、かつ該移動層の高さHと該ガス流入路の直径DとがH>5Dの関係であることが、好適である。
【0017】
上記第2の態様において、前記移動層に隣接する空間であるガス流入路を備え、該ガス流入路の前段にて、排煙ガスに対し追加の浄化剤を分散させるべく供給する第2の浄化剤供給手段をさらに備えたことが、好適である。以上の第2の態様を浄化剤の集中供給方式と呼称する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動層固気反応装置を適用することにより、効率的な乾式排煙浄化(脱硫、脱消、脱塩など)のための装置を実現することができる。乾式排煙浄化装置は、湿式装置と比べて排煙ガス温度を低下させない、用水を多量に使用しない、などの利点を有しているが、湿式装置と比較してコスト高のためにほとんど普及していない。本発明により、従来の乾式排煙浄化装置に比べて浄化剤利用率が格段に向上したため、湿式装置に競争しうるコストで乾式排煙浄化装置を提供することが可能となった。
【0019】
本発明の第1の態様においては、移動層に隣接するガス流入路の上端近傍に位置する入口に、ダクト狭窄部または円錐状部材による排煙ガスの加速手段を設けたことにより、排煙ガスに随伴する浄化剤粒子も加速される。粉体状の浄化剤を構成する粒子は、通常、均一な大きさではなく粒径分布(粒径200〜4μm)を有している。排煙ガスを、移動層に直交する方向すなわち水平方向に加速する場合、浄化剤を構成する粒子のうち比較的質量の大きい粒子(以下、「粗粒子」と称する)であるほど、より大きな慣性を有する。このような粗粒子は、加速により得た初速度をほぼ維持して速やかに移動層に到達する。このため、粗粒子は、移動層に到達するまでの期間に鉛直方向へはほとんど降下しないか、降下距離が短い。この結果、粗粒子は、移動層上部に到達する。
【0020】
一方、比較的質量の小さい粒子(以下、「細粒子」と称する)は、慣性が小さいため、加速により得た水平方向の初速度が早く低下する。このため、細粒子は、移動層に到達するまでの期間に鉛直方向へ降下する距離が長い。この結果、細粒子は、移動層下部に到達する。
そして、移動層への貫入後は、粗粒子及び細粒子のいずれも、移動層粒子と共に移動層内を降下しつつ、固気反応を行う。移動層上部に貫入した粗粒子の移動層内での降下距離は、移動層下部に貫入した細粒子のそれよりも長くなり、それだけ長時間、移動層内に滞留することになる。これにより、それぞれの粒子の大きさに応じて固気反応を完結できる時間を確保できる。この結果、浄化剤の利用率が向上する。
【0021】
移動層及び移動層に隣接するガス流入路が平板状の場合、加速手段が、排煙ガスのダクトを絞ったダクト狭窄部とすることが好適である。ダクトの断面積が小さくなる結果、排煙ガスが加速される。この構成は、排煙ガスのダクト断面積を小さくするだけであるので、簡易かつ低コストに実現できる。
【0022】
また、排煙ガスを斜め下方向に加速する場合も、加速された速度のベクトルの水平方向成分に関して、上記と全く同じ原理が成り立つ。
移動層が円環形でありその内側の円柱状空間がガス流入路である円環形移動層においては、ガス流入路の上端近傍の入口に円錐形部材を頂点を上に向けて設置する。円錐形部材の設置箇所においては、ガス流入路の断面積が小さくなる結果、排煙ガスが加速される。また、円錐形部材の斜面に沿って流れることで、排煙ガスは斜め下方向に向けられる。浄化剤の粗粒子は移動層上部に貫入し、細粒子は移動層下部に貫入する。上記と同様に、粗粒子は、移動層内に長時間滞留することにより、十分な固気反応時間を確保できる。
標準的な移動層においては、排煙ガスの速度を、排煙ガスの移動層への流入速度の15倍またはそれ以上に加速することで、上記の効果が十分に確保される。
【0023】
本発明の第2の態様においては、浄化剤を排煙ガス中に供給せずに、移動層の上端または上端近傍において、移動層に対し集中供給する。つまり、浄化剤を移動層粒子に直接混合することで介在させる。この構成により、浄化剤粒子は、その大きさに依らず、移動層の全高を降下することになり、直交流入する排煙ガス中の有害物質との十分な固気反応時間を確保することができる。この結果、浄化剤の利用率が向上する。
加えて、浄化剤の集中供給は、移動層に排煙ガスが流入する流入側面部材の近傍位置で行われる。移動層内の浄化剤は、排煙ガスの直交流に影響されて、水平方向にも徐々に移動するが、粗粒子よりも細粒子の方が、より移動し易い。仮に、排煙ガスが流出するガス流出側面の近くで浄化剤を集中供給したとすれば、水平移動した浄化剤の細粒子が、ガス流出側面から排出される可能性があり、好ましくない。浄化剤の供給箇所をガス流入側面の近くに設けることで、この現象を回避できる。
【0024】
移動層が円環形でありその内側の円柱状空間がガス流入路である円環形移動層においては、ガス流入側面の面積に比較してガス流入路の断面積が小さいため、移動層へのガス流入量がガス流入路の断面積で制約される。好適な実施例において、円環形移動層に流入するガス流速0.6 m/s、ガス流入路の上端に流入するガス流速を15 m/sとする場合、円環形移動層高さH、ガス流入路直径Dとすると、次の関係になる。
0.6πDH=15・π/4・D
左辺は円環形移動層への毎秒の流入量であり、右辺はガス流入路への毎秒の流入量である。式を整理すると、次の関係となる。
H=6.25D
上式より、ガス流入路直径により移動層高さが制約されることがわかる。
排煙ガスがガス流入路へ流入するガス流入口を、ガス流入路の上端に設ける替わりに、ガス流入路の鉛直方向中間位置に設けることにより、排煙ガスが、ガス流入路の上半分と下半分の双方へ向かうように流入することができる。これにより処理ガス量を2倍とすることができる。上式を参照すると、円環形移動層高さH、ガス流入路直径Dの関係は、H>5D程度が好適である。
【0025】
浄化剤を、移動層の上端または上端近傍から集中供給する場合、浄化剤利用率は向上するが、移動層下端に到達するまでに浄化剤の固気反応がほぼ完結してしまう可能性がある。その場合、移動層下部において浄化剤の浄化性能が飽和値に達し、浄化性能が低下する。従って、移動層下部における浄化性能の低下を補償するために、排煙ガスに対して追加の浄化剤を分散供給し、排煙ガスに随伴させてガス流入路に流入させる。排煙ガスに分散した浄化剤の粒子は、ガス流入路の下半分の方へより多く流入するから、移動層下部に貫入して浄化性能の低下を補うことができる。この結果、移動層全体において排煙浄化性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る移動層固気反応装置の実施形態を説明する。本発明の主たる特徴は、高い浄化剤利用率及び浄化効率を得られるように浄化剤を供給する構成にある。
【0027】
(1)浄化剤分散供給方式の移動層固気反応装置
本発明の第1の実施形態は、排煙ガスに対して浄化剤を供給して分散させ、排煙ガスが浄化剤を随伴して移動層に流入することで、浄化剤を移動層粒子に貫入させる方式を適用する。
【0028】
図1Aは、本発明の第1の実施形態の一実施例を概略的に示す図である。(a)は鉛直断面図であり、(b)は(a)のX−X’水平断面図である。図1Bは、図1A(a)の要部拡大図であり、本発明の作用を説明する図である。(図中、排煙ガスの流れは白抜き矢印で、浄化剤2の流れは黒矢印で、移動層粒子1の流れは白矢印で、それぞれ示されている。以下、同様)
図1Aに示すように、固気反応装置10は、平板形移動層11Bを有する。平板形移動層11Bは、矩形の水平断面をもち、鉛直方向に延びている。移動層粒子1は、上端に設けた移動層粒子供給口16より充填され、移動層11B内を上から下へ下降し、下端に設けた移動層粒子排出口17より排出される。
【0029】
移動層11Bにおいて、排煙ガスが流入する平坦な流入側面には、通気性スクリーンからなる流入側面部材13が設けられている。流入側面部材13に隣接する空間は、ガス流入路11Aである。ガス流入路11Aの上端には、ガス流入口11A1が設けられ、ガス流入口11A1には、ガス流入ダクト12が連結されている。
ガス流入ダクト12の途上には、排煙ガスに対して浄化剤2を供給するための浄化剤供給手段18が設けられる。図示の例では、浄化剤供給手段18は、ガス流入ダクト12内に挿入された適宜のダクトである。粉体状の浄化剤2は、均一粒子からなるのではなく、例えば200〜4μmの範囲の粒径分布をもっている。図中に、3通りの大きさの浄化剤粒子を示すことで、粒径分布を模式的に表している。排煙ガスに供給された浄化剤は、排煙ガス中に分散し、排煙ガスに随伴してガス流入口11A1へ向かう。
【0030】
図1A(a)に示すように、ガス流入ダクト12は、ガス流入口11A1の直前では水平方向に延在し、かつ、その断面が漸次小さくなるように絞ったダクト狭窄部12Aが設けられている。ダクト狭窄部12Aは、排煙ガスを水平方向に加速するための加速手段を形成している。
【0031】
また、移動層11Bにおいて、排煙ガスが流出する平坦な流出側面には、多孔板からなる流出側面部材14が設けられている。流出側面部材14に隣接する空間は、ガス流出路11Cであり、その下端にガス流出ダクト15が設けられている。移動層11Bを通過した排煙ガスは、ガス流出ダクト15から流出する。
【0032】
図1Bを参照して、加速手段であるダクト狭窄部12Aの作用を説明する。ガス流入ダクト12の断面が漸次小さくなることにより、排煙ガスが加速される。排煙ガスの速度は、例えば、ダクト狭窄部12Aの通過後には15m/sまたはそれ以上の速度に加速されることが好適である。すなわち、排煙ガスの加速後の速度を、排煙ガスの移動層流入速度(通常1m/s未満、例えば0.4〜0.8m/s)の15倍またはそれ以上とすることが好適である。この場合、加速の向きは、水平方向である。つまり、排煙ガスは、ガス流入口11A1から移動層11Bの上部に対して水平方向に吹き付けられる。
【0033】
排煙ガス自体(浄化剤粒子を除く)は、ガス流入路11A内に均一に拡がり、流入側面部材13に対して直交するように移動層11Bに流入し、移動層11B内を水平方向に流れる。移動層11Bに流入するときの排煙ガスの速度は、例えば0.6m/s程度となっている。
一方、排煙ガスに随伴する浄化剤粒子もまた、加速により水平方向の初速度を得る。ここで、粒径分布があるために、各浄化剤粒子の質量によって慣性が異なる。浄化剤2を構成する粒子のうち、最大の粗粒子2Aは、最も大きな慣性を有する。よって、この粗粒子2Aは、加速により得た初速度をほぼ維持し、直進して速やかに移動層に到達する。符号K1は、ガス流入路11A内での粗粒子2Aの直進距離を表している。粗粒子2Aは、移動層11Bに到達するまでの期間に鉛直方向へはほとんど降下しないか、降下する距離が短い。このように、より大きい粒子ほど、移動層11Bの上端に近い位置に到達する。
【0034】
より小さい細粒子2B、2Cは、慣性がより小さいため、加速により得た水平方向の速度が早く低下する。符号K2、K3は、ガス流入路11A内での細粒子2B、2Cの直進距離を表している。このため、細粒子2B、2Cは、移動層に到達するまでの期間に鉛直方向へ降下する距離が長い。このように、より小さい粒子ほど、移動層11Bの下端に近い位置に到達する。
【0035】
そして、移動層11Bに貫入した後は、粗粒子2A及び細粒子2B、2Cのいずれも、移動層粒子1と共に移動層11B内を降下しつつ、固気反応を行う。移動層上部に貫入した粗粒子2Aの移動層内での降下距離L1は、移動層下部に貫入した細粒子2B、2Cの降下距離L2、L3よりも長くなり、それだけ長時間、移動層内に滞留することになる。このように、浄化剤粒子の粒径の大小と、移動層内での滞留時間の長短とが対応する。この結果、浄化剤粒子の大きさに応じて固気反応時間を確保でき、浄化剤の利用率が向上する。
【0036】
図2Aは、本発明の第1の実施形態の別の実施例を概略的に示す図である。(a)は、鉛直断面図であり、(b)は、(a)のY−Y’水平断面図であり、(c)は、(a)のZ−Z’水平断面図である。図2Bは、図2A(a)の要部拡大図であり、本発明の作用を説明する図である。
【0037】
図2Aに示すように、固気反応装置20は、円環形移動層21Bを有する。円環形移動層21Bは、円環状の水平断面をもち鉛直方向に延びている。移動層粒子1は、移動層粒子供給口26より充填され、移動層21B内を上から下へ下降し、移動層粒子排出口17より排出される。
移動層21Bの内筒壁面が、排煙ガスの流入する側面であり、通気性スクリーンからなる流入側面部材23が設けられている。移動層21Bにより囲まれた円柱状空間が、ガス流入路21Aである。ガス流入路21Aの上端開口付近が、ガス流入口21A1である。
【0038】
図2A(b)に示すように、移動層21Bの外筒壁面の上部を取り囲むように環状ダクト22A1が設けられている。環状ダクト22A1の外周壁には、ガス流入ダクト22が連結されている。環状ダクト22A1とガス流入路21Aとの間は、移動層21Bを貫通する貫通ダクト22A2で連通している。従って、排煙ガスは、ガス流入ダクト22、環状ダクト22A1、貫通ダクト22A2を通り、ガス流入口21A1に到達し、ガス流入路21Aへ流入する。
ガス流入ダクト22の途上には、例えばホッパーである、浄化剤供給手段28が設けられ、浄化剤2を排煙ガスに供給する。浄化剤2は、排煙ガス中に分散し、排煙ガスに随伴して流れ、ガス流入口21Aに到達する。
【0039】
図2A(a)(b)に示すように、円形のガス流入口21A1の中心には、頂点を上に向けて円錐形部材22Bが設置されている。この円錐形部材22Bは、排煙ガスを斜め下方向に加速するための加速手段を形成している。
また、図2A(c)に示すように、移動層21Bの外筒壁面は、排煙ガスの流出する側面であり、多孔板からなる流出側面部材24が設けられている。流出側面部材24を囲む円筒状の空間は、ガス流出路21Cである。ガス流出路21Cの鉛直方向中間位置には、ガス流出ダクト25が連結されている。移動層21Bを通過した排煙ガスは、ガス流出ダクト25から流出する。
【0040】
図2Bを参照して、加速手段である円錐形部材22Bの作用を説明する。排煙ガスが円錐形部材22Bの周囲を上から下へ通過するとき、流路の断面が漸次小さくなることにより、排煙ガスが加速される。この場合、円錐形部材22Bの斜面に沿って流れることにより、加速方向は斜め下方向となる。排煙ガスは、加速により得た斜め下方向の初速度をもって、ガス流入路21A内に流入する。排煙ガス自体(浄化剤粒子を除く)は、ガス流入路21A内に均一に拡がり、流入側面部材23に対して直交するように移動層21Bに流入し、移動層21B内を水平方向に流れる。
【0041】
一方、排煙ガスに随伴する浄化剤2は、粒径分布があるために、各浄化剤粒子の質量によってガス流速による慣性が異なる。浄化剤2を構成する粒子のうち、粒径の大きい粗粒子2Aは、より大きな慣性を有する。よって、この粗粒子2Aは、加速により得た初速度をほぼ維持し、斜め下方向に直進して速やかに移動層に到達する。細粒子2B、2Cは、慣性が小さいため、加速で得た斜め下方向の初速度が早く低下する。このため、細粒子2B、2Cは、移動層に到達するまでの期間に鉛直方向へ降下する距離が長い。この結果、粗粒子2Aは、移動層21Bの上部に到達し、細粒子2B、2Cは、移動層21Bの下部に到達する。この実施例では、浄化剤粒子の加速方向は斜め下方向であるが、その速度の水平方向成分を抽出してみれば、図1に示した実施例と同じ原理であることは、明らかである。同様に、移動層21B内における浄化剤粒子の降下距離L1、L2、L3の長短も、粒径の大小に対応しており、粒径に応じた固気反応時間を確保できる。
【0042】
(2)浄化剤集中供給方式の移動層固気反応装置
本発明の第2の実施形態は、移動層に対して集中的に浄化剤を供給して移動層粒子と浄化剤を直接混合させることで、浄化剤を移動層粒子に混入させて介在させる方式を適用する。
図3は、本発明の第2の実施形態の一実施例を概略的に示す図である。(a)は鉛直断面図であり、(b)は(a)のS−S’水平断面図である。(図中、排煙ガスの流れは白抜き矢印で、浄化剤2の流れは黒矢印で、移動層粒子1の流れは白矢印で、それぞれ示されている。以下、同様)
【0043】
図3(a)(b)に示すように、固気反応装置30は、平板形移動層31Bを有する。平板形移動層31Bは、矩形の水平断面をもち鉛直方向に延びている。移動層粒子1は、上端に設けた一対の移動層粒子供給口36より充填され、移動層31B内を上から下へ下降し、下端中央に設けた移動層粒子排出口37より排出される。
移動層31Bにおいて、排煙ガスが流入する平坦な流入側面には、通気性スクリーンからなる流入側面部材33が設けられている。流入側面部材33に隣接する空間は、ガス流入路31Aである。ガス流入路31Aの鉛直方向中間位置にガス流入口31A1が設けられている。ガス流入口31A1には、ガス流入ダクト32が連結されている。排煙ガスは、ガス流入ダクト32及びガス流入口31A1を経てガス流入路31Aに流入し、ガス流入路31Aの上半分と下半分に分流して均一に拡がり、移動層31Bへ直交流入する。
【0044】
移動層31Bにおい、排煙ガスが流出する平坦な流出側面には、多孔板からなる流出側面部材34が設けられている。流出側面部材34に隣接する空間は、ガス流出路31Cであり、その鉛直方向中間位置にガス流出ダクト35が連結されている。移動層31Bを通過した排煙ガスは、ガス流出ダクト35から流出する。
浄化剤2は、移動層31Bの上端に設けた浄化剤供給部38から集中供給される。これにより、移動層31Bの上部において浄化剤2と移動層粒子1とが直接混合される。浄化剤2を移動層31Bの上端から集中供給することにより、移動層31Bの上部における浄化剤不足を回避できる。また、全ての浄化剤粒子が、移動層31Bの高さ全体を降下することにより、最大限の固気反応時間を確保できる。この結果、浄化剤の利用率が向上する。
【0045】
この浄化剤供給部38は、一対の移動層粒子供給口36のうちの一方と兼用してもよい。その場合、移動層31Bの流入側面部材33に近い方を、浄化剤供給部38とする。これは次の理由からである。
粉体状の浄化剤2は、均一粒子からなるのではなく、例えば200〜4μmの範囲の粒径分布をもっている。図中に、3通りの大きさの浄化剤粒子を示して、粒径分布の存在を模式的に表している。移動層31B内を移動層粒子1と共に降下する間、浄化剤粒子は、排煙ガスの直交流の影響により徐々に水平方向に移動する。図3(a)に示すように、細粒子ほど、水平方向に移動しやすい。仮に、浄化剤供給部38が、移動層31の流出側面部材34に近い位置に設けられていると、細粒子が流出側面部材34から排出される。その結果、処理済みの排煙ガス中に浄化剤の粉が混在し排煙ガス中のダスト濃度が多くなり、好ましくない。よって、できるだけ排煙ガスの流入側に近い位置で、浄化剤2を移動層31Bに供給することが、好適である。
【0046】
図4Aは、本発明の第2の実施形態の別の実施例を概略的に示す図である。(a)は、鉛直断面図であり、(b)は、(a)のT−T’水平断面図である。図4B(a)は、図4A(a)のU−U’水平断面図であり、(b)は、図4A(a)のV−V’水平断面図である。
図4A及び図4Bに示すように、固気反応装置40は、円環形移動層41Bを有する。円環形移動層41Bは、円環状の水平断面をもち鉛直方向に延びている。移動層粒子1は、移動層粒子供給口46より充填され、移動層41B内を上から下へ下降し、移動層粒子排出口47より排出される。
移動層41Bの内筒壁面が、排煙ガスの流入する側面であり、通気性スクリーンからなる流入側面部材43が設けられている。移動層41Bにより囲まれた円柱状空間が、ガス流入路41Aである。ガス流入路41Aの鉛直方向中間位置に、ガス流入口41A1がある。
【0047】
図4B(a)に示すように、移動層41Bの鉛直方向中間位置において、移動層41Bの外筒壁面を取り囲むように環状ダクト42A1が設けられている。環状ダクト42A1の外周壁には、ガス流入ダクト42が連結されている。環状ダクト42A1とガス流入路41Aとは、移動層41Bを貫通する貫通ダクト42A2により連通している。従って、排煙ガスは、ガス流入ダクト42、環状ダクト42A1、貫通ダクト42A2を通り、ガス流入口41A1に到達し、ガス流入路41Aへ流入する。続いて、排煙ガスは、ガス流入路41Aの上半分と下半分に分流して均一に拡がり、移動層41Bへ直交流入する。
【0048】
また、図4B(b)に示すように、移動層41Bの外筒壁面が、排煙ガスの流出する側面であり、多孔板からなる上下2つの流出側面部材44A、44Bが設けられている。流出側面部材44A、44Bをそれぞれ囲む上下2つの円筒状の空間は、ガス流出路41C、41Dである。ガス流出路41C、41Dにはそれぞれ、ガス流出ダクト45A、45Bが連結されている。移動層41Bを通過した排煙ガスは、ガス流出ダクト45A、45Bから流出する。
【0049】
再び図4Aを参照すると、移動層41Bの上端近傍に、浄化剤供給部48が設けられている。浄化剤供給部48は、水平方向に移動層41Bを貫通するダクトを有し、このダクトは、浄化剤供給円筒部48Aへ連結されている。浄化剤供給円筒部48Aは、移動層41Bの内筒壁面に沿って配置されている。浄化剤供給円筒部48Aの下端開口から浄化剤2を移動層41B内に集中供給する。これにより、浄化剤2と移動層粒子1とが直接混合される。浄化剤2を移動層41Bの上端に集中供給することにより、移動層41Bの上部における浄化剤不足を回避できる。また、全ての浄化剤粒子が、移動層41Bの高さ全体を降下することにより、最大限の固気反応時間を確保できる。この結果、浄化剤の利用率が向上する。
【0050】
浄化剤供給円筒部48Aを移動層41Bの内筒壁面に沿って配置したのは、移動層41Bにおける流入側に近い位置で浄化剤2を供給することが、望ましいからである。これは、図3Aで説明したように、浄化剤2の細粒子が、流出側面部材44A、44Bから排出されないようにするためである。
【0051】
ここで、図3の平板状移動層31Bまたは円環状移動層41Bにおいて浄化剤2を移動層頂部より集中供給する場合、移動層31B、41Bの下部において、浄化剤の浄化性能が飽和値に達し、浄化能力が不足することがある。これは、移動層31B、41Bの上端近傍から供給された浄化剤2が、移動層31B、41Bの下部に到達する途中で、固気反応を完結することによる。これを補充するために、図3(a)、図4A(a)にそれぞれ点線で示すように、追加の浄化剤を供給する第2の浄化剤供給部38’、48’を設ける。第2の浄化剤供給部38’、48’は、ガス流入ダクト32、42の途上に設けられ、排煙ガスに対して浄化剤2を分散供給する。分散供給された追加の浄化剤は、主として移動層31B、41Bの下半分に貫入し、固気反応に寄与する。こうして、移動層31B、41Bの下部における浄化能力不足が補償される。
【0052】
なお、円環状移動層による固気反応装置においては、上述の図2Aのように移動層上端から排煙ガスを流入させた場合、円柱状空間であるガス流入路の水平断面積(πD/4)により、移動層の高さHが規定されるため、ガス処理量が制約される。これに対し、図4Aに示すように、移動層の鉛直方向中間位置において、ガス流入路に排煙ガスを流入することにより、排煙ガスが移動層の上半分と下半分に同時に供給されるため、図2Aの装置に比べてガス処理量を2倍とすることができる。
【実施例】
【0053】
図4Aに示した円環形移動層による固気反応装置40を用いて、浄化剤(脱硫剤)を集中供給し、排煙ガスの乾式脱硫を行った実施例を示す。運転条件は、次の通りである。
・排煙ガス処理量:37,500 Nm/h
・排煙ガス温度 :150℃
・排煙ガス水分 :10 %
・SOx濃度 :500 ppm
・脱硫剤 :粉状高反応消石灰
・固気反応装置 :円環形移動層(内筒直径1.9m、外筒直径3.8m、高さ6.52m)
・空間速度(SV):1150h-1
【0054】
以上の運転条件において、Ca/S=2.0での脱硫効率は、93.9%であった。
バグフィルターによる固気反応装置において、Ca/S=2での脱硫効率は、54.4%であった(図6参照)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、効率的な乾式排煙脱硫装置を実現できる。乾式排煙脱硫は、湿式排煙脱硫と比較して排煙温度を低下させない、用水を多量に使用しない、などの長所を有しているが、湿式排煙脱硫よりコスト高のため普及していないのが現状である。本発明により湿式排煙脱硫装置に競争し得るコストで乾式排煙脱硫装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】(a)は、本発明による分散供給方式の平板形移動層固気反応装置の一実施例の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のX−X’水平断面図である。
【図1B】図1Aの固気反応装置の要部拡大図であり、本発明の作用を示す図である。
【図2A】(a)は、本発明による分散供給方式の円環形移動層固気反応装置の別の実施例の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のY−Y’水平断面図であり、(c)は、(a)のZ−Z’水平断面図である。
【図2B】図2Aの固気反応装置の要部拡大図であり、本発明の作用を示す図である。
【図3】(a)は、本発明による集中供給方式の平板形移動層固気反応装置の一実施例の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のS−S’水平断面図である。
【図4A】(a)は、本発明による集中供給方式の円環形移動層固気反応装置の別の実施例の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のT−T’水平断面図である。
【図4B】(a)は、図4A(a)のU−U’水平断面図であり、(b)は、図4A(a)のV−V’水平断面図である。
【図5】浄化剤としてカルシウム(Ca)系脱硫剤を用いたバグフィルターにおいて、逆洗間隔を変えた場合(Ca/S=2)の、脱硫効率とカルシウム利用率のシミュレーション結果を模式的に示した図である。
【図6】図5のCa/S=2の場合を含めて、Ca/S=3、4、5と変えた場合の、脱硫効率及びカルシウム利用率のシミュレーション結果をまとめた表である。
【図7】円環形移動層固気反応装置において、(a)は、分散供給方式を適用した場合の脱硫性能のシミュレーション結果を示すグラフである。(b)は、集中供給方式を適用した場合の脱硫性能のシミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1:移動層粒子
2:浄化剤
10、20、30、40:移動層固気反応装置
11A、21A、31A、41A:ガス流入路
11A1、21A1、31A1、41A1:ガス流入口
11B、21B、31B、41B:移動層
11C、21C、31C、41C、41D:ガス流出路
12、22、32、42:ガス流入ダクト
12A:ダクト狭窄部
22A1、42A1:環状ダクト
22A2、42A2:貫通ダクト
22B:円錐状部材
13、23、33、43:流入側面部材
14、24、34、44:流出側面部材
15、25、35、45A、45B:ガス流出ダクト
16、26、36、46:移動層粒子供給口
17、27、37、47:移動層粒子排出口
18、28、38、48:浄化剤供給部
48A:浄化剤供給円筒部
38’、48’:第2浄化剤供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から下へ移動する移動層粒子(1)が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤(2)が排煙ガスに随伴して貫入されることにより固気反応器を形成する平板状の移動層(11B)と、該移動層に隣接する平板状空間であるガス流入路(11A)と、該ガス流入路(11A)の前段にて排煙ガスに対し前記浄化剤を分散させるべく供給する浄化剤供給手段(18)とを備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置(10)であって、
前記浄化剤を分散させた排煙ガスを前記移動層に向かって水平方向に加速するべく、前記ガス流入路(11A)の上端近傍に位置する入口に形成したダクト狭窄部(12A)を備え、
前記ダクト狭窄部(12A)により加速された排煙ガスに含まれる浄化剤が、前記ガス流入路(11A)を通過して前記移動層(11B)へ到達するとき、該浄化剤を構成する粉体粒子のうち、質量の大きい粒子ほど該移動層(11B)の上端に近い位置にて該移動層(11B)へと貫入し、質量の小さい粒子ほど該移動層(11B)の下端に近い位置にて該移動層(11B)へと貫入していくことを特徴とする移動層固気反応装置。
【請求項2】
上から下へ移動する移動層粒子(1)が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤(2)が排煙ガスに随伴して貫入されることにより固気反応器を形成する円環状の移動層(21B)と、該移動層の内筒側の円柱状空間であるガス流入路(21A)と、前記ガス流入路(21A)の前段にて排煙ガスに対し前記浄化剤を分散させるべく供給する浄化剤供給手段(28)とを備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置(20)であって、
前記浄化剤を分散させた排煙ガスを前記移動層に向かって斜め下方向に加速するべく、前記ガス流入路(21A)の上端近傍に位置する入口の中心に、頂点を上方に向けて配置した円錐状部材(22B)を備え、
前記円錐状部材(22B)により加速された排煙ガスに含まれる浄化剤が、前記ガス流入路(21A)を通過して前記移動層(21B)へ到達するとき、該浄化剤を構成する粉体粒子のうち、質量の大きい粒子ほど該移動層(21B)の上端に近い位置にて該移動層(21B)へと貫入し、質量の小さい粒子ほど該移動層(21B)の下端に近い位置にて該移動層(21B)へと貫入していくことを特徴とする移動層固気反応装置。
【請求項3】
前記加速された排煙ガスの速度は、該排煙ガスの移動層への流入速度の15倍またはそれ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の移動層固気反応装置。
【請求項4】
上から下へ移動する移動層粒子(1)が充填されかつ該移動層粒子の間に粉体状の浄化剤(2)が混入されることにより固気反応器を形成する移動層(31B,41B)を備え、該移動層粒子の移動方向に直交する方向に排煙ガスを通気させて該浄化剤との固気反応により該排煙ガスの乾式浄化を行う移動層固気反応装置(30,40)であって、
前記移動層(31B,41B)の上端または上端近傍でありかつ排煙ガスの流出側面よりも流入側面に近い位置に設けられ、前記移動層粒子に対し前記浄化剤を混入させるべく該移動層(31B,41B)に該浄化剤を供給する浄化剤供給手段(38,48)を備えたことを特徴とする移動層固気反応装置。
【請求項5】
前記移動層(41B)が円環状であり、該移動層(41B)の内筒側の円柱状空間であるガス流入路(41A)を備え、該ガス流入路(41A)への入口が該移動層(41B)の外筒側から内筒側へ貫通して該ガス流入路の鉛直方向中間位置に設けられ、かつ該移動層(41B)の高さHと該ガス流入路(41A)の直径DとがH>5Dの関係であることを特徴とする請求項4に記載の移動層固気反応装置。
【請求項6】
前記移動層(31B,41B)に隣接する空間であるガス流入路(31A,41A)を備え、該ガス流入路(31A,41A)の前段にて、排煙ガスに対し追加の浄化剤を分散させるべく供給する第2の浄化剤供給手段(38',48')をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の移動層固気反応装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−119932(P2010−119932A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294243(P2008−294243)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(597118061)株式会社 セテック (5)
【Fターム(参考)】