説明

移動棚設備

【課題】安全性を簡単に且つ確実に高めることのできる移動棚設備を提供する。
【解決手段】作業通路3A〜3Cの出入り口5の脇に、作業者P等の通過を検出することができるICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8cが、作業者Pの出入り方向に対応する順番で作業者P等の通過を検出するように作業者等出入り方向Yに間隔を隔てて並設され、開いた作業通路3A〜3C内に作業者等が存在しているときは移動棚2A,2Bの移動をできなくする制御装置は、ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8cの検出の順番から作業通路3A〜3C内への進入か作業通路3A〜3C外への退出かを判定して作業通路3A〜3C内に存在する作業者P等の現在数を計数し、この現在計数値が0のときに移動棚2A,2Bの駆動を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動棚の横動により当該移動棚に隣接する作業通路を開閉できるようにした移動棚設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような移動棚設備では、開いている作業通路内に作業者が立ち入っている状況で他の閉じている作業通路を開くために移動棚を駆動すると、開いている作業通路が閉じることになるので、この開いている作業通路内に立ち入っている作業者が棚間で挟まれる事故が予測される。従って、この種の移動棚設備では、開いた作業通路内における作業者等の存在の有無を検出する作業者等存在検出装置と、この作業者等存在検出装置が作業者等の存在を検出しているときは移動ラックの移動をできなくする制御装置とを併設して、人身事故の防止を図っている。具体的には、前記作業者等存在検出装置は、透過型又は反射型の光電センサーや熱検知タイプの人感センサーなど、ON/OFFセンサーを、開いている作業通路内の全域を検出エリアとするように多数配列したり、特許文献1に記載されるように、作業者が携帯するICタグなどの情報発信器の記録情報を読み取るICタグリーダーなどの情報受信器を、開いている作業通路内の全域を受信エリアとするように多数配設することにより構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−306211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような移動棚設備において安全対策に採用されている従来の作業者等存在検出装置、即ち、開いた作業通路内における作業者等の存在の有無を検出する作業者等存在検出装置として、光電センサーや人感センサーなどのON/OFFセンサーを多数配列してゾーンセンサーを構成する方法では、棚設備側の構造上どうしても作業者を検出できないデッドゾーンが生じてしまう恐れや、作業者が作業通路内で棚や脚立、台車などに乗った場合に検出できなくなるなどの恐れがあり、このような事態を回避するためには、使用するセンサー数を増やしたり、種類の異なるセンサーを組み合わせるなどの対策も考えられるところであるが、設備コストが高くなり、実用的ではなくなる。又、特許文献1に記載された構成でも、作業通路内に立ち入った作業者に関する情報を自動的に収集して、作業管理に役立たせることができるというメリットはあるが、ICタグリーダーなどの情報受信器を多数配列しなければならず、コスト面でのデメリットも大きく、場合によっては、作業者が搭乗して作業通路内に進入したフォークリフトなどの車両や取り出した荷が情報受信の障害物となる可能性もあり、確実性の面でも問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる移動棚設備を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る移動棚設備は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、移動棚2A,2Bの横動により棚間の作業通路3A〜3Cを開閉できる移動棚設備であって、開いた作業通路内における作業者P等の存在の有無を検出する作業者等存在検出装置と、この作業者等存在検出装置が作業者等の存在を検出しているときは移動棚2A,2Bの移動をできなくする制御装置13を備えた移動棚設備において、前記作業者等存在検出装置が、前記作業通路3A〜3Cの出入り口5脇に配設された少なくとも2つの検出器(ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8c)から成り、この2つの検出器(ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8c)は、作業者P等の通過を検出することができる検出器であって、作業者P等の出入り方向に対応する順番で作業者P等の通過を検出するように作業者P等の出入り方向Yに間隔を隔てて並設され、前記制御装置13は、前記2つの検出器(ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8c)の検出の順番から作業通路3A〜3C内への進入か作業通路3A〜3C外への退出かを判定し、この判定に基づいて作業通路3A〜3C内に存在する作業者P等の現在数を計数し、この現在計数値が0のときに移動棚駆動を可能にする機能を備えている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記2つの検出器として、何れも作業者P等の通過を検出するON/OFFセンサー21a〜22cを使用することができる。この場合、請求項3に記載のように、前記2つの検出器とは別に、作業者P等が携帯するICタグTの記録情報を読み取るICタグリーダー23a〜23cを作業通路3A〜3Cの出入り口5脇に配設することができる。又、請求項4に記載のように、前記2つの検出器として、作業者等の通過を検出するON/OFFセンサー8a〜8cと、作業者P等が携帯するICタグTの記録情報を読み取るICタグリーダー7a〜7cとを使用することもできる。
【0007】
上記のようにICタグリーダー7a〜7c,23a〜23cを利用する場合、請求項5に記載のように、前記制御装置13が、一定時間範囲内において、前記ON/OFFセンサー8a〜8c,21a〜22cの検出信号のみがあってICタグリーダー7a〜7c,23a〜23cの読み取り情報がないときに、設定されている部外者侵入時対策を実行するように構成することができる。ICタグTとICタグリーダー7a〜7c,23a〜23cを併用するときは、ICタグリーダー7a〜7c,23a〜23cの読み取り情報に基づいて、開いた作業通路3A〜3C内に立ち入った作業者P等の情報を管理する作業管理装置20を併設することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、開いた作業通路内に作業者等が存在することを作業者等存在検出装置が検出しているときは移動ラックの移動をできなくするのであるから、先に述べたように作業通路内の作業者等が棚間で挟まれるような事故を回避できるのであるが、前記作業者等存在検出装置を作業通路の出入り口脇に配設された2つの検出器、それも作業者等の通過を検出することができれば良い検出器を、作業者等の出入り方向に対応する順番で時間差を以て作業者等の通過を検出するように、即ち、作業者等が作業通路内に進入するときは、外側の検出器が動作した後に内側の検出器が動作し、作業者等が作業通路から外に退出するときは、逆に内側の検出器が動作した後に外側の検出器が動作するように、作業者等の出入り方向に間隔を隔てて並設のみで構成することができるので、従来のように開いた作業通路の全域を検出エリアとするようなゾーンセンサーを構成する必要がなく、極めて簡単安価に実施することができる。しかも、この2つの検出器の検出信号が入力される制御装置において、作業通路内に立ち入った作業者等の数と作業通路外に退出した作業者等の数とを把握し、作業通路内に存在する作業者等の現在数が0のときに移動棚駆動を可能にすることができるので、複数人の作業者等が作業通路内に立ち入ったときも、その全員が作業通路外に退出しない限り移動棚を駆動することができない、即ち、他の閉じている作業通路を開くことができないので、高い安全性を確保することができる。
【0009】
尚、請求項2に記載の構成によれば、検出器として、例えば透過型又は反射型の光電センサーなど、シンプルで安価なON/OFFセンサーを2つ使用するだけで良いので、特に本発明を安価に実施することができる。しかもこのようなON/OFFセンサーは、1本の検出用光軸を備えるものであるから、2つの検出器(ON/OFFセンサー)を作業者等の出入り方向に小間隔を隔てて併設しても、互いに干渉することなく、通過する作業者等を確実に順番に検出させることができる。従って、作業者等の出入りを検出し終わるまでに要する作業者等出入り方向のエリアが小さくて済み、作業通路内の出入り口付近で作業を行なうために立ち入った作業者等の出入りも確実に把握させることができる。
【0010】
この場合、請求項3に記載の構成によれば、作業通路内に立ち入った作業者等を、読み取ったICタグの記録情報から特定することができるので、この読み取り情報に基づいて作業通路内での作業の履歴を作業者等と関連付けて管理把握することができる。
【0011】
又、請求項4に記載の構成によれば、1つのON/OFFセンサーと1つのICタグリーダーとを組み合わせるだけで、請求項1に記載の構成による効果と請求項3に記載の構成による効果の両方を得ることができ、その経済的効果は大きい。
【0012】
更に、ICタグリーダーを利用する場合、請求項5に記載の構成によれば、ICタグを携帯しない部外者の作業通路内への侵入を検知して、即座に必要な対策、例えば警報を鳴らして部外者侵入を報知させると共に移動棚の駆動をできなくするなどの必要な対策を自動的にとらせることができるので、保安面での効果も高められる。尚、この場合には、リセット操作をしなければ元の正常時に復帰できないように構成するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】A図は第一実施例を示す平面図、B図は同正面図である。
【図2】第一実施例の制御系の構成を説明するブロック線図である。
【図3】第一実施例の制御系の動作を説明するフローチャートである。
【図4】A図は第二実施例を示す平面図、B図は同正面図である。
【図5】A図は第三実施例を示す平面図、B図は同正面図である。
【図6】第三実施例の制御系の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施例を図1〜図3に基づいて説明すると、この実施例の移動棚設備は、両端の固定棚1A,1Bとその中間の2つの移動棚2A,2Bとからなるもので、各棚1A〜2B間に形成される作業通路3A〜3Cが、移動棚2A,2BのX方向の横動により択一的に開かれるように構成された従来周知のものであって、各作業通路3A〜3Cの奥側端部が建屋の壁4により閉じられ、手前側端部が出入り口5となっている。移動棚2A,2Bを横動させるための駆動装置は、各移動棚2A,2Bの底部に軸支された車輪6の内のモーターに連動連結された駆動車輪を前記モーターで正逆回転駆動するタイプの従来周知のものである。
【0015】
尚、この実施例の移動棚設備は、各作業通路3A〜3Cの開かれたときの幅が人手による荷の出し入れに適合した幅であって、開かれた各作業通路3A〜3Cにフォークリフトなどの荷取扱い車両がそのまま進入して荷の出し入れを行なえるような規模の移動棚設備ではないので、以下の説明では、作業者が搭乗した荷取扱い車両を含むことを意味する「作業者等」ではなく、作業者Pと表記している。
【0016】
上記構成の移動棚設備において、各作業通路3A〜3Cの出入り口5の脇には、ICタグリーダー7a〜7cと透過型光電センサーから成るON/OFFセンサー8a〜8cが、各作業通路3A〜3Cの出入り口5における作業者Pの出入り方向Yに所要間隔を隔てて並設されている。尚、図1Bでは、ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8cの高さを変えて示しているが、これは両者の存在を示すためであって、ICタグリーダー7a〜7cとON/OFFセンサー8a〜8cの高さは同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0017】
外側のICタグリーダー(以下、本実施例では外側ICタグリーダーという)7a〜7cは、各作業通路3A〜3Cの出入り口5の片側に位置する棚、図示例では全て移動棚2A,2Bに取り付けられ、監視対象である開いた作業通路3A〜3Cの出入り口5の全幅を通信エリア7Aとするが、作業者Pの出入り方向Yの通信エリア7Aの幅は狭くなるように、周波数や電波出力が設定されており、当該出入り口5を出入りする作業者Pが携帯するICタグTに記録されている情報を読み取れるように構成されている。尚、作業者Pは、ICタグTを胸ポケットやズボンのポケットに収納したりネックチエーンなどで首からぶら下げたりして携帯することになるので、そのICタグTの床面上高さは一定でない。従ってICタグリーダー7a〜7cの通信エリア7Aの上下方向の範囲は、作業者Pが携帯するICタグTの床面上高さに関係なく情報を読み取れるように設定される。又、この実施例では、ICタグTに記録されている情報を読み取ることだけが必要であるから、ICタグリーダー7a〜7cを使用しているが、作業通路3A〜3Cへの立入り時間や退出時間をICタグTに記録する必要があれば、その機能を備えたICタグライターと組み合わせたリーダー/ライターを使用すれば良い。
【0018】
内側のON/OFFセンサー(以下、本実施例では内側センサーという)8a〜8cは、各作業通路3A〜3Cの出入り口5の一方に位置する固定棚1A,1B又は移動棚2A,2Bに取り付けられた投光器9と、他方に位置する移動棚2A,2Bに取り付けられて前記投光器9からの光線を受光する受光器(光電スイッチ)10とから構成されたもので、これら投光器9と受光器10は、両者間の光軸9aが、前記外側ICタグリーダー7a〜7cの通信エリアより作業通路3A〜3Cの奥側(壁4側)に少し離れた位置で、作業者Pの出入り方向Yに対して直角の水平向きとなるように配設されている。又、この内側センサー8a〜8cは、各作業通路3A〜3Cの出入り口5を出入りする作業者Pによって光軸9aが必ず遮断される高さに配設されている。
【0019】
各作業通路3A〜3Bの出入り口5の脇には、その片側に位置する棚、図示例では全て移動棚2A,2Bの正面において、各作業通路3A〜3Bを開くときに作業者Pが操作する開操作釦11a〜11cが取り付けられ、図2に示すように、各移動棚2A,2Bに搭載されて各移動棚2A,2Bを個別に走行駆動する駆動装置、即ち、各移動棚2A,2Bが備える車輪6の内の駆動車輪を駆動するモーターを含む駆動装置12a,12bを制御する通路開閉制御装置13には、各作業通路3A〜3C内の現在作業者数を計数する作業者計数回路部14a〜14cと、これら作業者計数回路部14a〜14cから得られる現在計数値15a〜15cと前記開操作釦11a〜11cからの通路開き指令信号16a〜16cとに基づいて前記駆動装置12a,12bに対し移動棚駆動指令信号17a,17bを与える通路開閉制御回路部18が設けられている。又、前記作業者計数回路部14a〜14cから出力される作業者情報19a〜19cを受けて、この移動棚設備における作業管理を行なう作業管理装置20が併設されている。
【0020】
上記構成によれば、開いている作業通路、図1では作業通路3Aの出入り口5を、外から通路内に向かってICタグTを携帯する作業者Pが通過すると、先ず外側ICタグリーダー7aの通信エリア7A内をICタグTが通過することにより、当該ICタグTに書き込まれた情報、例えば作業者Pを特定する情報が外側ICタグリーダー7aによって読み取られる。続いて当該作業者Pが内側センサー8aの光軸9aを横断することにより、この光軸9aを横断している間だけ当該内側センサー8aが非検出状態(OFF)から検出状態(ON)に切り換わる。作業通路3A内に入った作業者Pが出入り口5を内から外に通過したときは、上記とは逆に、最初に内側センサー8aが非検出状態(OFF)から検出状態(ON)に切り換わり、その後、外側ICタグリーダー7aが作業者Pの携帯するICタグTから記録情報を読み取る。
【0021】
ここで、外側ICタグリーダー7aがICタグTから情報読み取りを行なうときをONとし、内側センサー8aが作業者Pの通過を検出するときをONとすれば、ICタグTを携帯する作業者Pが作業通路3A内に入るときは、図3フローチャートのS1からS2に示すように、内側センサー8aがOFFの状態で外側ICタグリーダー7aがONに切り換わり、その後少し遅れて内側センサー8aがONになるので、作業者Pが作業通路3A内に入ったと判定し、図3フローチャートのS3に示すように、作業者計数値を1だけ加算する。ICタグTを携帯する作業者Pが作業通路3Aから外に出るときには、図3フローチャートのS4からS5に示すように、外側ICタグリーダー7aがOFFの状態で内側センサー8aがONに切り換わり、その後少し遅れて外側ICタグリーダー7aがONになるので、作業者Pが作業通路3Aから出たと判定し、図3フローチャートのS6に示すように、作業者計数値を1だけ減算する。即ち、開いている作業通路3A内に作業者Pが複数人入ったときは、その全員が作業通路3A内から退出しない限り、作業者計数値は0にならない。他の作業通路3B又は3Cが開いているときも、これら作業通路3B又は3Cの出入り口5に配設された外側ICタグリーダー7b又は7cとON/OFFセンサー8b又は8cの動作により、同様の作用が行なわれる。従って、作業者計数回路部14a〜14cでの上記演算処理により、開いている作業通路内に入っている作業者の人数がリアルタイムに計数され、現在計数値15a〜15cとして次段の通路開閉制御回路部18に常時入力されている。
【0022】
通路開閉制御回路部18では、作業者計数回路部14a〜14cから入力される現在計数値15a〜15cの1つでも1以上であるとき、即ち、開いている作業通路内に1人でも作業者Pが入っているときには、図3フローチャートのS7に示すように、移動棚駆動指令信号17a,17bを出力できないインターロックON状態に切り換え、現在計数値15a〜15cの全てが0のとき、即ち、開いている作業通路内が無人状態のときには、図3フローチャートのS8,S9に示すように、移動棚駆動指令信号17a,17bを出力できるインターロックOFF状態に切り換える。勿論、図3フローチャートのS10,S11に示すように、作業者Pが作業通路3A〜3Cの出入り口5を完全に通過しないで、そのときの移動方向の上手側の外側ICタグリーダー7a〜7cの通信エリア7A内に入るか又は内側センサー8a〜8cの光軸9aを横断するだけで引き返したような場合は、一定時間内に下手側の内側センサー8a〜8c又は外側ICタグリーダー7a〜7cがONに切り換わらないので、上記の現在計数値15a〜15cには変化は生じない。
【0023】
若し、作業者Pが作業通路3A〜3C内から外に出ようとして内側センサー8a〜8cをONに切り換えたが、外側ICタグリーダー7a〜7cの通信エリア7Aに入らないで作業通路3A〜3C内に引き返すようなことはない、とするならば、図3フローチャートのS12に示すように、内側センサー8a〜8cのみがONに切り換わった後、一定時間内に外側ICタグリーダー7a〜7cがONに切り換わらなかった場合には、ICタグTを携帯しない部外者が開いている作業通路3A〜3Cに侵入したものとして、警報を鳴らすと共に移動棚駆動指令信号17a,17bを出力できないインターロックON状態に切り換えるなど、予め設定された部外者侵入時対策を自動的に実行させるように構成することができる。この部外者侵入時対策が実行されたときは、人為的なリセット操作によりシステムが復旧するように構成するのが望ましい。
【0024】
上記の作業者計数回路部14a〜14c及び通路開閉制御回路部18の作用により、開いている作業通路3A〜3C内が無人状態のときのみインターロックが解除されて、移動棚駆動指令信号17a,17bが出力できる状態になるので、係るインターロックOFF状態にあるとき、作業者Pが閉じている作業通路3A〜3Cを開くために、開こうとする作業通路3A〜3Cの出入り口5の外にある開操作釦11a〜11cの1つを操作したときは、通路開き指令信号16a〜16cの内、開こうとする作業通路3A〜3Cに対応した1つの通路開き指令信号が通路開閉制御回路部18に入力される。当該通路開閉制御回路部18には、作業通路3A〜3Cごとに、作業通路を開くための移動棚駆動プログラムが設定されているので、入力された通路開き指令信号16a〜16cに対応する1つの作業通路3A〜3Cを開くための移動棚駆動プログラムが選択され、この選択された移動棚駆動プログラムに従って移動棚駆動装置12a又は12b、若しくは移動棚駆動装置12a,12bの両方に対して走行方向情報を含む移動棚駆動指令信号17a,17bを出力する。この結果、移動棚2A,2Bの一方又は両方が移動棚横動方向Xの前後何れかに横動し、操作された開操作釦11a〜11cに対応する1つの作業通路3A〜3Cが開かれることになる。勿論、目的の作業通路が完全に開かれた段階で、駆動されていた移動棚2A,2Bは自動停止する。
【0025】
上記の移動棚2A,2Bの一方又は両方の横動により、現在開いていた作業通路3A〜3Cは閉じられることになるが、前記のように現在開いていた作業通路3A〜3Cが無人状態であることが確認された結果、移動棚2A,2Bの駆動が実行されたので、開いていた作業通路3A〜3C内で作業者Pが挟まれるような事故の恐れはない。又、移動棚2A,2Bの駆動が開始された直後に作業者Pが閉じつつある作業通路3A〜3C内に入り込んだ場合には、その閉じつつある作業通路3A〜3Cの出入り口5を作業者Pが通過したときに上記の作用が行なわれ、その閉じつつある作業通路3A〜3Cに対応する現在計数値15a〜15cが0から1に立ち上がるので、インターロックON状態に切り換わり、直ちに移動棚駆動指令信号17a,17bが消失するが、この場合は、駆動されている移動棚2A,2Bを非常停止すると共に警報を鳴らすなどの非常停止対策が自動的に実行されるように構成することができる。又、この非常停止対策が実行されたときも、人為的なリセット操作によりシステムが復旧するように構成するのが望ましい。
【0026】
尚、外側ICタグリーダー7a〜7c及び内側センサー8a〜8cは、作業通路3A〜3Cの内、開いている作業通路に対応するもののみが機能するように起動しておき、閉じている作業通路に対応するものは通電を断って休止させておくことができる。この場合、閉じつつある作業通路に対応する外側ICタグリーダー7a〜7c及び内側センサー8a〜8cは、当該作業通路が完全に閉じるか又は作業者が入り込めない程度まで作業通路が閉じられたときに休止すれば良いが、このとき開かれつつある作業通路に対応する外側ICタグリーダー7a〜7c及び内側センサー8a〜8cは、当該作業通路が完全に開かれるのを待って起動するのではなく、作業者が入り込める程度まで当該作業通路が開かれたときに起動することが望ましい。
【0027】
上記第一実施例では、作業通路3A〜3Cの出入り口5の外側にICタグリーダー7a〜7c、内側にON/OFFセンサー8a〜8cを配設したが、この逆に、外側にON/OFFセンサー8a〜8c、内側にICタグリーダー7a〜7cを配設することもできる。又、内外両方にICタグリーダーを配設することも可能である。何れにしても、内外2つの検出器の少なくとも一方にICタグリーダーを使用しているときは、図2の作業者計数回路部14a〜14cが作業通路3A〜3C内の作業者Pの計数値を書き換える段階で、ICタグリーダー7a〜7cで読み取った作業者情報19a〜19cを作業管理装置20に出力して、図3フローチャートのS13で示すように、作業管理装置20が管理している作業情報、例えば作業通路3A〜3Cごとの立入り作業者ID、立入り日時、退出時間などの作業情報を書き換えることができる。勿論、既に説明したように、ICタグTを携帯しない部外者の作業通路3A〜3Cへの侵入も監視することができる。
【0028】
図4は、作業通路3A〜3Cの出入り口5に配設される内外2つの検出器の両方に、上記実施例の内側センサー8a〜8cと同一構成のセンサー21a〜21c,22a〜22cを使用した第二実施例を示している。この場合は、外側センサー21a〜21cの光軸9aと内側センサー22a〜22cの光軸9aとを、互いに重ならない程度に、作業者Pの出入り方向Yに離せば良い。この第二実施例では、先の第一実施例の図2に示す構成と図3のフローチャートにおいて、外側センサー21a〜21cを先の実施例の外側ICタグリーダー7a〜7cに相当させると共に、内側センサー22a〜22cを先の実施例の内側センサー8a〜8cに相当させ、各作業者計数回路部14a〜14cを、これら内側センサー21a〜21c及び外側センサー22a〜22cのON/OFF動作に基づいて動作させることにより、ICタグリーダー7a〜7cにより読み取った作業者情報の利用に関係する部分、即ち、図2の作業者情報19a〜19cの出力とこの作業者情報19a〜19cが入力される作業管理装置20、及び図3フローチャートの部外者侵入時対策S12と作業情報書換えS13を省いて、先の実施例と全く同様に移動棚設備を制御することができる。
【0029】
図5及び図6は、図4に示す第二実施例における作業通路3A〜3Cの出入り口5に、ICタグリーダー23a〜23cを追加配設した第三実施例を示している。この第三実施例では、図2の各作業者計数回路部14a〜14cが、内側センサー21a〜21cと外側センサー22a〜22c、及びICタグリーダー23a〜23cの3つから構成され、作業通路3A〜3Cに対する作業者Pの進入退出は、図6フローチャートのS1〜S6で示すように、ICタグリーダー23a〜23cがONである(作業者PのICタグTから記録情報を読み取っている状態)ことを条件にして、内側センサー21a〜21cと外側センサー22a〜22cの何れが先にONしたかによって検出し、この検出情報に基づいて作業者計数回路部14a〜14cにより作業通路3A〜3C内の現在作業者数をカウントしているので、追加されたICタグリーダー23a〜23cは、作業通路3A〜3Cの出入り口5を通過する作業者Pが、所定のICタグTを携帯しているか否か、即ち、この移動棚設備の利用を許可された者か否かを判別できれば良い。従って、ICタグリーダー23a〜23cの通信エリア23Aと内側センサー21a〜21c及び外側センサー22a〜22cの光軸9aとの位置関係に制約はなく、図示のようにICタグリーダー23a〜23cの通信エリア23A内を内外両センサー21a〜22cの光軸9aが通るように、即ち、内側センサー21a〜21c又は外側センサー22a〜22cが作業者Pの通過を検出するときには、その作業者Pが携帯するICタグTの記録情報がICタグリーダー23a〜23cによって読み取られているように、これらICタグリーダー23a〜23cを配設することができる。
【0030】
従って、この図5に示す第三実施例では、図6のフローチャートに示すように、先の実施例の図3のフローチャートに示したS1〜S11までの制御は、ICタグリーダー23a〜23cがONであることを条件に、先の実施例の外側ICタグリーダー7a〜7cのON/OFF動作に代わって外側センサー22a〜22cのON/OFF動作が利用されているだけで、全く同様に行なわれ、作業通路3A〜3C内に立ち入る作業者Pが所定のICタグTを携帯している者であるときは、先の実施例と同様に、図2の作業者計数回路部14a〜14cが作業通路3A〜3C内の作業者Pの計数値を書き換える段階で、ICタグリーダー23a〜23cで読み取った作業者情報19a〜19cを作業管理装置20に出力して、図6フローチャートのS13で示すように、作業管理装置20が管理している作業情報、例えば作業通路3A〜3Cごとの立入り作業者ID、立入り日時、退出時間などの作業情報を書き換えることができる。
【0031】
若し、上記のように、内側センサー21a〜21c又は外側センサー22a〜22cが作業者Pの通過を検出するときには、必ずその作業者Pが携帯するICタグTの記録情報がICタグリーダー23a〜23cによって読み取られているように構成しておくときは、所定のICタグTを携帯していない部外者が作業通路3A〜3C内に侵入すると、図6フローチャートで示すように、ICタグリーダー23a〜23cがOFFの状態で先ず外側センサー21a〜21cが部外者の通過でON動作し(S14)、その後、一定時間内に内側センサー22a〜22cが部外者の通過でON動作する(S15,S16)ので、先に述べたような部外者侵入時対策S12を自動的に実行させることができる。尚、この第三実施例では、外側センサー21a〜21cをONさせる位置まで入り込んだ部外者が直ちに引き返したときは、内側センサー22a〜22cが一定時間内にON動作しないので、部外者侵入時対策S12は実行されない。しかしながら、一層保安効果を高めるために、所定のICタグTを携帯していない部外者が外側センサー21a〜21cをON動作させる位置まで入り込んだ段階で、若しくは何らかの手段で作業通路3A〜3C内に侵入した部外者が出入り口5を通って退出しようとして内側センサー22a〜22cをON動作させた段階で、警報を鳴動させるなどの前記部外者侵入時対策S12を自動的に実行させるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
尚、図示の第一〜第三実施例では、作業通路3A〜3Cの一端側にのみ出入り口5が設けられた移動棚設備を示したが、作業通路3A〜3Cの前後両端に出入り口が設けられた移動棚設備に対しても本発明を実施することができる。この場合は、作業通路3A〜3Cの前後各出入り口に上記各実施例の構成を採用すれば良いが、各作業通路3A〜3Cには、1つの作業者計数回路部14a〜14cが設けられ、前後各出入り口に配設される、ON/OFFセンサーやICタグリーダーで構成される少なくとも前後2つの検出器の全てのON/OFF動作状態に基づいて、各作業通路3A〜3C内の作業者の計数が行なわれる。
【0033】
又、作業者が搭乗したフォークリフトなどの荷取扱い車両が開いた作業通路内に進入できる規模の大きな移動棚設備に対して本発明を実施する場合で、部外者の検出を可能にするICタグとICタグリーダーとを併用する場合、前記車両に搭乗する作業者のみにICタグを携帯させても良いが、この作業者が搭乗する前記車両にもICタグを保持させ、この車両と作業者の両方を各別に管理できるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1A,1B 固定棚
2A,2B 移動棚
3A〜3C 作業通路
5 出入り口
7a〜7c,23a〜23c ICタグリーダー
8a〜8c,21a〜22c ON/OFFセンサー
9 投光器
10 受光器
11a〜11c 開操作釦
12a,12b 駆動装置
13 通路開閉制御装置
144a〜14c 作業者計数回路部
155a〜15c 現在計数値
16a〜16c 通路開き指令信号
17a,17b 移動棚駆動指令信号
18 通路開閉制御回路部
19a〜19c 作業者情報
20 作業管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動棚の横動により棚間の作業通路を開閉できる移動棚設備であって、開いた作業通路内における作業者等の存在の有無を検出する作業者等存在検出装置と、この作業者等存在検出装置が作業者等の存在を検出しているときは移動ラックの移動をできなくする制御装置を備えた移動棚設備において、前記作業者等存在検出装置が、前記作業通路の出入り口脇に配設された少なくとも2つの検出器から成り、この2つの検出器は、作業者等の通過を検出することができる検出器であって、作業者等の出入り方向に対応する順番で作業者等の通過を検出するように作業者等の出入り方向に間隔を隔てて並設され、前記制御装置は、前記2つの検出器の検出の順番から作業通路内進入か作業通路外退出かを判定し、この判定に基づいて作業通路内に存在する作業者等の現在数を計数し、この現在計数値が0のときに移動棚駆動を可能にする機能を備えている、移動棚設備。
【請求項2】
前記2つの検出器は、何れも作業者等の通過を検出するON/OFFセンサーである、請求項1に記載の移動棚設備。
【請求項3】
前記2つの検出器とは別に、作業者等が携帯するICタグの記録情報を読み取るICタグリーダーが作業通路の出入り口脇に配設されている、請求項2に記載の移動棚設備。
【請求項4】
前記2つの検出器は、作業者等の通過を検出するON/OFFセンサーと、作業者等が携帯するICタグの記録情報を読み取るICタグリーダーとである、請求項1に記載の移動棚設備。
【請求項5】
前記制御装置は、一定時間範囲内において、前記ON/OFFセンサーの検出信号のみがあってICタグリーダーの読み取り情報がないときに、設定されている部外者侵入時対策を実行する、請求項3又は4に記載の移動棚設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−241582(P2010−241582A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94569(P2009−94569)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】