説明

移動無線システム

【課題】移動無線システム全体を統括する管理者が各営業所の機器の動作状態および障害内容をリアルタイムで監視し、通話による指令を出す移動無線システムを提供する。
【解決手段】基地ゾーンを複数個配置し、このなかからシステム全体を統括する統括基地ゾーン100が定められ、統括基地ゾーンは、この基地局に有する集中制御装置と有線接続され、この基地局以外の複数の基地局に有する各集中制御装置と無線またはネットワーク接続され、統合回線制御を行う制御BOX111と、基地局に有する機器の状態・障害監視の監視制御を行う制御用パソコン113と、基地局に有する機器の選択と状態・障害監視の表示とを行う表示・操作手段と、基地局または移動局との通話を行う通話手段と、を有する統合指令卓を備え、統合指令卓によって、通話および状態・障害監視に対して、統括して一元的に管理が行える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムの遠隔監視・制御に関し、複数の基地局に有する通信機器の障害監視に供して好適な移動無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力、ガス等の公共業務に適用されて、業務支援となる通信システムとして専用移動通信を構成する移動無線システムがある。従来の移動無線システムの構成について図2のブロック図を示して説明する。
【0003】
無線接続方式(一例;SCPC方式;Single Channel Per Carrier;狭帯域デジタル通信方式標準規格ARIB STD―T61に準拠の周波数分割伝送方式)の回線制御を行う集中制御装置1と、移動局との交信を行う複数の基地局無線機3と、複数個が配置された基地局無線機3のうちから任意の基地局無線機を選択操作し、基地局(営業所等)における通話操作を行う指令卓2とにより基地局が構成され、この基地局に、車載無線機および携帯無線機などの移動局である複数の移動無線機4が加わって基地ゾーンが構成される。
【0004】
更に、複数の基地ゾーンによって従来の移動無線システム全体が構成されている。
【0005】
前記1つの基地ゾーンは、例えば、各営業所に備えた機器によって構成される。その規模は、通常、集中制御装置1を1台、指令卓2を複数台、基地局無線機3を複数台、及び移動無線機4を複数台とし、各営業所の規模、通信状況、エリア規模などにより決定される。
【0006】
複数の基地ゾーンは、それぞれの移動無線システムとして、個別に運用されている。
【0007】
その運用の一環として、指令卓2が集中制御装置1を介して基地局無線機3および集中制御装置1の動作状態および障害内容を監視することが出来る。
【0008】
そこで、集中制御装置1もしくは基地局無線機3にて障害が発生した時、または集中制御装置1と基地局無線機3との間の通信断などの通信障害が発生した時には、集中制御装置1から指令卓2へ障害情報が送られ、指令卓2の表示部に障害情報が表示され、指令卓2を操作担当するオペレータが通信システムの障害を認識し、場合によれば、基地局無線機3を他の基地局無線機3に交代させる等の整備指令を出すことが出来る。
【0009】
このように、複数の基地ゾーンのそれぞれは、機器の障害の対応をそれぞれ個別に基地ゾーン単位で実行していたので、移動無線システム全体として、機器の補用品の数が増えるなど、不経済な面が生じ、さらに、即時指令を要する統括的な業務連絡には、他の通信手段を用いていたので時間差が生じ、行動開始タイミングに不徹底が生じることもある。
【0010】
複数の基地局装置(基地局無線機)と、これらに接続された回線制御装置(集中制御装置)および複数の端末装置(移動無線機)からなる無線通信システムにおいて、通信の接続時間を短縮する提案がある。(例えば、特許文献1 参照)
【特許文献1】特開2006−87084号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の従来技術には、基地ゾーン単位とする営業所ごとに移動無線システムを運営していたために、複数の基地ゾーンを有する移動無線システムの全体を統括する管理者が、各営業所の機器の動作状態をリアルタイムで監視することが出来ない問題がある。また、機器に障害が発生した場合、障害が発生した営業所の指令卓でのみリアルタイムでの障害情報を知ることができるが、移動無線システム全体を統括する管理者は、障害情報について、各営業所毎に配置されたオペレータに問い合わせを行うか、オペレータからの報告を待つ必要があり、業務の効率低下を来していた問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、移動無線システム全体を統括する管理者が各営業所の機器の動作状態および障害内容をリアルタイムで監視し、通話による指令を出す移動無線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明の移動無線システムは、回線制御を行う集中制御装置と、所定の移動局と無線通信する少なくとも1つの基地局無線機と、通話操作を行う少なくとも1つの指令卓とを備えた基地局と、を有する移動無線システムであって、
該移動無線システムは、前記基地局の中から選択した任意の基地局に接続されたシステムを統括するための統合指令卓を有し、該統合指令卓を有する前記任意の基地局は、該基地局が有する集中制御装置と有線接続され、該基地局以外の複数の基地局に有する各集中制御装置と無線またはネットワーク接続され、複数の前記集中制御装置を統合して統合回線制御を行う第1の制御装置と、該第1の制御装置に接続され、前記各基地局に有する機器の状態または障害監視の監視制御を行う第2の制御装置と、該第2の制御装置に接続され、前記各基地局に有する機器の選択と状態または障害監視の表示とを行う表示または操作手段と、前記第1の制御装置に接続され、選択または呼出制御された前記基地局または移動局との通話を行う通話手段とを備え、
前記統合指令卓によって、前記通話および前記状態または障害監視に対して、統括して一元的に管理が行える構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用の移動無線システムを構成する機器の動作状態および障害情報を統括して監視することが出来るようになり、システム全体の効率的な管理を達成できる。
【0015】
従って、移動無線システム全体として、機器の補用品の準備数が抑えられ、不経済な面が生じることがなく、更に、即時指令を要する統括的な業務連絡に同時性が確保され、災害発生時などにおける行動開始タイミングに不徹底を来すことが極めて少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態として、移動無線システムのブロック図を図1に示し、その構成について説明する。
【0017】
無線接続方式の回線制御を行う集中制御装置201と、所定の移動局との無線交信を可能とする、必要により複数の基地局無線機203と、複数の基地局無線機より任意の基地局無線機を選択し、基地局における通話操作を行う、必要により複数の指令卓202とにより基地局が構成される。
【0018】
更に、この基地局と、車載無線機および携帯無線機などの移動局である複数の移動無線機204とが備わり、これにより1つの基地ゾーンが構成される。
【0019】
更に、基地ゾーンは、複数個が任意の通信エリアに配置されて、全体の移動無線システムの構成としている。
【0020】
なお、複数の基地ゾーンの中からシステム全体を統括する統括基地ゾーン100が定められ、この統括基地ゾーン100には、前記基地ゾーン200と同様に、集中制御装置101と、必要により複数の指令卓102と、必要により複数の基地局無線機103および複数の移動無線機104とが備えられている。
【0021】
前記1つの基地ゾーン200は、例えば、各営業所に備えた機器によって構成される。
【0022】
備える機器の数は、通常、集中制御装置201を1台、指令卓202を複数台、基地局無線機203を複数台、及び移動無線機204を複数台とし、各営業所の規模、通信状況、エリア規模などにより決定される。
【0023】
基地局無線機203を複数台を有する場合、基地局無線機203は、基地局に備えるほか、基地局ゾーンを拡大させるため、基地局から離れた場所に有線またはネットワーク回線を介して備えてもよい。
【0024】
前記基地ゾーン200は、一般の営業所に備えた機器構成であり、これに対し、前記統括基地ゾーン100は、拠点とした営業所に備えた機器によって構成され、それは前記基地ゾーン200に有する機器と同様の構成に加え、以下に記載する機器を備える。
【0025】
本発明の移動無線システムは、統括基地ゾーン100に有する基地局設備として、次の記載による機器によって構成される統合指令卓110を備えている。
【0026】
統括基地ゾーン100に有する基地局設備は、集中制御装置101と有線接続され、一般の基地局に有する集中制御装置201と無線またはネットワーク接続され、これらの回線の統合回線制御を行う制御BOX111(第1の制御装置)と、この制御BOX111に接続され、各基地局の機器の状態および障害監視の動作制御を行う制御用パソコン113(第2の制御装置)と、この制御用パソコン113に接続され、基地局(営業所)を選択操作し、および機器の状態・障害監視の状況を表示するタッチパネル112と、前記制御BOX111に接続され、基地局または移動局との通話を行うハンドセット114、このハンドセット114に接続され、ハンズフリー通話が行えるマイク付きのヘッドセット115と、更に、ハンドセット114に接続され、選択した基地局無線機を送信モードとするプレストーク機能を有するフットプレスSW116である。
【0027】
このように、統合指令卓110は、一般営業所の指令卓の機能に加え、複数の営業所から任意の営業所を選択する機能、すなわち、1つあるいは複数の基地局無線機を選択して、所望の移動無線機との業務連絡が行える。
【0028】
なお、統合指令卓110は、統括する規模により複数で構成されてもよい。
【0029】
以上の構成を備えた移動無線システム全体の動作の一例として基地局無線機203に障害が発生したとする実施例について次に説明する。
【0030】
基地局無線機203の内部で機器の状態の自己診断が行われた結果、その状態および障害情報は、集中制御装置201に向けて転送され、更に、基地局無線機203および集中制御装置201の機器状況はモニタ可能な指令卓202へ転送される。
【0031】
この転送と同時に、機器の状態および障害情報はネットワーク回線経由で統括基地ゾーン100の所定の統合指令卓110に向けて伝送される。
【0032】
前記各基地局の集中制御装置と制御BOX111間の伝送は、ネットワーク回線に代え、各基地局に有する基地局無線機の無線チャネルを割り当てて、無線回線による情報送信を行うようにしてもよい。
【0033】
障害発生の基地局の指令卓202は、障害情報の受信に伴いアラーム表示を行う。そこで当該基地局の指令卓202の操作者が当該障害状況についてモニタすることができる。
【0034】
統合指令卓110に備えた制御BOX111は、全ての基地局からの機器状態および障害情報を受信し、機器状態および障害情報のデータを制御用パソコン113に転送し、制御用パソコンでは、機器状態および障害情報のデータをデータ処理して、図示してはいないが、一覧表示など操作者が監視可能な形式に変換して、タッチパネル112に機器状態および障害情報を表示する。
【0035】
なお、制御用パソコン113には、監視データをメモリに記憶する機能があり、過去の機器状態および障害情報をデータベースとして有し、これらと現在のデータを比較・分析して、機器の信頼性の予測データを得て、この情報を表示することも可能である。
【0036】
このようにして、統括営業所、即ち、統合指令卓110で対応する移動無線システム全体の管理者は、一般営業所の操作者などに装置の動作・障害状況を個別に問い合わせすることなく、全ての基地局の機器状態および障害情報について、その内容を即時に通報を受けることが出来る。
【0037】
更に、移動無線システム全体を管理する統括管理者は、前記即時報告を受けた結果および制御用パソコン113のデータ処理結果の表示内容から、前記障害発生の基地局に対する指示事項および全ての基地局に対する共通的な指示事項を策定し、そこでハンドセット114またはヘッドセット115を用い音声で策定内容の指令を与えるか、又は、タッチパネル112を用いてデータ伝送により即時に指令情報を与える。
【0038】
なお、統合指令卓と、それ以外の指令卓との間の通話が行えるようにしてもよい。
【0039】
以上により、統括基地ゾーン100は、全ての基地局の機器状態および機器障害に対する対応を統括して一元的に管理することができ、移動無線システム全体として、機器の補用品の数を抑え、さらに、即時指令を要する統括的な業務連絡に同時性が確保され、行動開始タイミングに不徹底が生じることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、移動通信に用いられる無線通信システムに適用されて、一例として、公共業務用等の専用移動通信に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の移動無線システムを示すブロック図である。
【図2】従来の移動無線システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1、101,201 集中制御装置
2,102,202 指令卓
3,103、203 基地局無線機
4,104,204 移動無線機
100 統括基地ゾーン
110 統合指令卓
111 制御BOX
112 タッチパネル
113 制御用パソコン
114 ハンドセット
115 フットプレスSW
116 ヘッドセット
200 基地ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線制御を行う集中制御装置と、
所定の移動局と無線通信する少なくとも1つの基地局無線機と、
通話操作を行う少なくとも1つの指令卓とを備えた基地局と、
を有する移動無線システムであって、
該移動無線システムは、
前記基地局の中から選択した任意の基地局に接続されたシステムを統括するための統合指令卓を有し、
該統合指令卓を有する前記任意の基地局は、
該基地局が有する集中制御装置と有線接続され、該基地局以外の複数の基地局に有する各集中制御装置と無線またはネットワーク接続され、複数の前記集中制御装置を統合して統合回線制御を行う第1の制御装置と、
該第1の制御装置に接続され、前記各基地局に有する機器の状態または障害監視の監視制御を行う第2の制御装置と、
該第2の制御装置に接続され、前記各基地局に有する機器の選択と状態または障害監視の表示とを行う表示または操作手段と、
前記第1の制御装置に接続され、選択または呼出制御された前記基地局または移動局との通話を行う通話手段とを備え、
前記統合指令卓によって、前記通話および前記状態または障害監視に対して、統括して一元的に管理が行える構成とした移動無線システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−44305(P2009−44305A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205332(P2007−205332)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】