説明

移動玩具及びそれを用いた移動玩具セット

【目的】 走行面の通電状態を検知して走行する軌跡を複雑且つ任意に設定できると共に、容易な手段で遠隔操作できる移動玩具を提供する。
【構成】 玩具本体2に装備したモータ3の駆動によって可動する一対の移動体5を備えた移動玩具1であって、前記玩具本体2下部に少なくとも3つの素子からなる通電検知手段6を有してなる。各素子間の通電状態によって両方又は片方の移動体5を選択的に可動させる。外部からの音声を検知する音声検知手段7を有する。音声を検知することで前記モータ3の駆動を制御する。音声発生手段8を有する。前記移動玩具1と、発音具とからなる移動玩具セット。前記移動玩具1と、水付着具とからなる移動玩具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動玩具及びそれを用いた移動玩具セットに関する。更に詳細には、外部音声と走行面の通電状態を検知して自走する移動玩具及びそれを用いた移動玩具セットに関する。
【0002】
従来、水を介して流れる電流によりモータを駆動させて走行させる玩具が開示されている(特許文献1参照)。
前記した走行玩具は、水の有無により走行、停止させることができ、常に走行し続ける走行玩具に変化性を付与できるものである。しかしながら、前記走行玩具は進行方向が常に一定であり、方向を任意に変化させることができず、単調な走行軌跡を辿るため、変化性に乏しく、すぐに飽きられるものだった。
【0003】
そこで、走行軌跡をより複雑且つ任意に設定することができ、走行時の意外性を付与したものが開発され、広く普及している(特許文献2参照)。
前記特許文献2の走行玩具は、3つの素子を有する通電検知手段を備え、各素子間の通電状態に応じてモータの動きを制御し、各々の車輪を選択的に可動する構成からなる。そのため、走行軌跡を複雑且つ任意に設定できるので、意外性、興趣性に富んだ移動玩具である。
【特許文献1】実開昭59−36394号公報
【特許文献2】特開2003−320176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記走行玩具について更に改良したものであり、走行軌跡を複雑且つ任意に設定できると共に、容易な手段で遠隔操作できる、意外性、興趣性に富んだ移動玩具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、玩具本体に装備したモータの駆動によって可動する一対の移動体を備えた移動玩具であって、前記玩具本体下部に少なくとも3つの素子からなる通電検知手段を有してなり、各素子間の通電状態によって両方又は片方の移動体を選択的に可動させると共に、外部からの音声を検知する音声検知手段を有してなり、音声を検知することで前記モータの駆動を制御する構成とした移動玩具を要件とする。
更に、音声発生手段を有すること、前記音声発生手段からの音声出力時には、音声検知手段によるモータ制御を停止するように設定されてなること、前記音声出力時間が0.2秒以上である場合に、音声検知手段によるモータ制御が停止すること、前記音声発生手段が玩具本体下部に配置されると共に、音声検知手段が玩具本体上部に配置されること、前記音声検知手段が音声を検知することで、前記通電検知手段が停止状態から作動状態になること、前記音声検知手段の作動状態と、前記音声検知手段の停止状態且つ前記通電検知手段の作動状態とを切り替える切替スイッチを有すること、前記通電検知手段である3つの素子(A、B、C)が、全ての素子が通電した状態で両方の移動体を可動させてなり、2つの素子(A、B)が通電した状態で一方の可動体を可動させてなり、且つ、2つの素子(A、C)が通電した状態で他方の可動体を可動させるよう構成したこと、3つの素子が全て通電していない状態で一方の移動体を可動させるよう構成したことを要件とする。
更に、前記いずれかに記載の移動玩具と、発音具とからなる移動玩具セットを要件とし、前記発音具が笛であることを要件とする。
更に、前記いずれかに記載の移動玩具と、水付着具とからなる移動玩具セットを要件とし、前記水付着具は、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体を先端部材として適用した塗布具形態であること、前記水付着具と発音具が一体に形成されてなることを要件とする。
更には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を支持体表面に設けた、吸液状態と非吸液状態で前記多孔質層の透明性を異にする水変色性シートを備えてなる移動玩具セットを要件とし、前記水変色性シートに発音具が設けられてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、走行軌跡を任意に設定できる移動玩具に対して、発進、停止、方向転換、発音等のアクションを容易な手段で遠隔操作できる、意外性、興趣性に富んだ、より玩具性に優れた移動玩具を提供できる。
また、前記移動玩具と発音具や水付着具を組み合わせたり、更には、水変色性シートを組み合わせることで、前記軌跡設定や遠隔操作の利便性に優れると共に、より玩具性に優れた移動玩具セットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の移動玩具は、外部からの音声を検知する音声検知手段と、玩具本体下部に位置する少なくとも3つの素子からなる通電検知手段とを有し、前記音声検知手段により音声を検知することでモータの駆動を遠隔制御できると共に、前記通電検知手段の各素子間の通電状態に応じてモータの駆動を制御し多様な走行形態をとることが可能な、意外性、興趣性に富んだ玩具である。
【0008】
前記音声検知手段は、外部からの音声を拾い、その音声に応じたアクションを起こすために設けられており、例えば、外部音声をマイクにより集音する音圧センサや音域センサが用いられる。前記音センサにより、設定された音量(音圧)、回数、周波数等の音声を認識した際に集積回路を介して発進、停止、方向転換、発音等の種々のアクションを起こすことができる。
尚、前記センサには増幅器を設け、マイクにより集音する音声を調整して音センサの感度を所望に設定することもできる。
【0009】
前記通電検知手段は、玩具本体下部に配置される少なくとも3つの素子からなる通電センサであり、各素子間の通電・非通電状態に応じて2つの移動体を選択的に可動させるために設けられる。
前記通電センサとしては、例えば、玩具本体の下部に3つの素子A、B、C(進行方向に垂直な辺を構成するBCと進行方向後方に位置するAを正三角形に配置し、上方から見て右側をB、左側をCとする。)を設けた移動玩具の移動面上に、予め導電性の軌跡を形成した後、前記軌跡上に素子が当接するよう玩具を載置して走行させると、3つの素子が全て通電状態にある場合には、両方の移動体が駆動して直進する。
軌跡が右方向に曲がった箇所にさしかかると、素子Cは通電しなくなり、素子Aと素子Bのみ通電した状態となる。その際、左側の移動体のみ駆動することで、玩具は右方向に旋回する。
また、軌跡が左方向に曲がった箇所にさしかかると、素子Bは通電しなくなり、素子Aと素子Cのみ通電した状態となる。その際、右側の移動体のみ駆動することにより、玩具は左方向に旋回する。
旋回後、再び3つの素子が全て通電状態なって直進するため、軌跡上を逸脱することなく走行させることができる。
尚、前記素子の配列は、前述の前方に2箇所、後方に一箇所設ける構成に限定されるものではなく、例えば、進行方向に対して垂直方向に3つの素子を連続して配置しても同様の効果が得られる。
また、軌道を逸脱した際に玩具が遠方まで移動しないよう、3つの素子が全て通電しない状態では一方の移動体を可動させてその場で回転させるようにしたり、両移動体の可動を停止させたり、或いは、一定時間一方の移動体を可動させて回転した後、停止させる構成にすることが好ましい。
【0010】
また、両方の移動体が走行用に可動する場合に、素子の通電状態に応じて移動体が向きを変える機構(方向用の可動)であっても、同様の動作を実現させることができる。
具体的には、玩具本体の下部に3つの素子を設けた移動玩具の移動面上に、予め導電性の軌跡を形成した後、前記軌跡上に素子が当接するよう玩具を載置して走行させると、3つの素子が全て通電状態では移動体が走行用に可動して直進する。
軌跡が右方向に曲がった箇所にさしかかると、2つの素子のみ通電した状態となる。その際、移動体が向きを変えることにより、玩具は右又は左方向に旋回する。
旋回後は再び3つの素子が全て通電状態になり、直進するため軌跡上を逸脱することなく走行させることができる。
またこの場合においても、軌道を逸脱した際に玩具が遠方まで移動しないよう、3つの素子が全て通電しない状態では移動体の向きを変えて右又は左方向に回転させるようにしたり、移動体を停止させたり、或いは、一定時間、一定方向に回転させた後、停止させる構成にすることが好ましい。
尚、前記移動体としては、車輪の他、人間や動物の脚であっても同様の動作を実現させることができる。
【0011】
更に、前記移動玩具には音声発生手段を設け、音声出力を具備してなる、より玩具性の高いものとすることが好ましい。
前記音声発生手段から出力される音声としては、音楽、物語、エンジン音や蒸気音等の擬音や効果音、人の声や動物の鳴き声、数字をカウントするもの、文字やアルファベットを読み上げるもの等が挙げられ、移動玩具の形態にあった音声を自由に設定できる。
前記音声発生手段は、前記通電検知手段や音声検知手段に対応した音声を集積回路を介して発音させることにより、よりストーリー性の高いものとなる。
【0012】
前記音声発生手段を設ける場合、音声出力時には音声検知手段によるモータ制御を停止する(オフ状態とする)ように設定することが好ましい。これにより移動玩具が発する音声により音声検知手段が起動することを防止できるので、自己の発する音声による誤作動を抑制できる。
音声検知手段によるモータ制御を停止する方法としては、マイク等による音声検知を停止させたり、音声検知後にプログラム上でモータ制御を停止させる等の方法がある。
前記の制御方法を用いる場合、音声発生手段から発せられる音声出力時間が0.2秒以上であるときに、音声検知手段によるモータ制御を停止する構成とすることで、音声検知手段を有効(オン状態)にした状態で、短音(0.2秒未満の長さからなる音)を常時発しながら(単音を連続して発しながら)走行することが可能となるため、より玩具性の高い製品を構成できる。尚、前記モータ制御のために設定される音声出力時間は3秒以下とすることが好ましい。
【0013】
前記音声発生手段を配置する位置としては、玩具本体下部が好ましく、合わせて音声検知手段を玩具本体上部に配置することが好ましい。
前記構成とすることで、音声検知手段が外部からの音声を確実に検知できると共に、玩具から発せられる音声を拾い難くなるため、音声の発生と検知の両機能をより的確に発揮できる実用性の高い玩具となる。
【0014】
また、前記音声検知手段が音声を検知することで、前記通電検知手段が停止状態(オフ状態)から作動状態(オン状態)になるように設定することができる。これにより、音声検知手段の音声認識後に通電検知手段が作動する構成となるため、遠隔操作によって通電検知走行を始める、装置間の連動性の高いものとなる。
更に、前記音声検知手段の作動状態(オン状態)と、前記音声検知手段を停止状態(オフ状態)として通電検知手段を作動状態(オン状態)とする構成とを切り替えるための切替スイッチを設け、走行玩具が音による遠隔操作に伴って走行する遊びと、手元で軌道上を通電走行させる遊びの両方を行えるようにすることもできる。これにより音声検知手段を作動させることなく通電検知手段を作動させることができるので、夜間等静かに遊びたい状況であっても自由に軌道走行させることができるようになる。
【0015】
前記玩具本体の材質は特に限定されるものではなく、プラスチック、金属、木材等を例示できるが、プラスチックが好適に用いられる。
本体の形状としては、自動車、電車、機関車、飛行機等の形状を模したもの、人や動物等の形態を模したものが挙げられる。
【0016】
玩具本体に収容されるモータは、移動体を直接又はギヤを介して可動させるものであり、少なくとも一対の車輪又は脚部からなる移動体を備える場合、1つのモータにより両移動体を可動させると共に、ギヤの切り替えにより片側の移動体を選択的に可動させることもできるし、2つのモータにより各移動体を独立して可動させる構成であってもよい。
更に、モータの駆動によって可動すると共に変位する車輪を備える場合、1つのモータにより車輪を可動させると共に、ギヤの切り替えにより車輪の向きを変えることもできるし、2つのモータにより車輪の可動と、車輪の変位を独立させる構成であってもよい。
前記モータを駆動させる電源としては電池が好適に用いられ、一次電池或いは二次電池のいずれであってもよい。また、太陽電池を内蔵して、光源から電気を得たり、外部から有線により電気が供給される構成であってもよい。
【0017】
また、必要によりスイッチを設けることもできる。
前記スイッチは、電源を接続又は切断するスイッチ、音量を調節するスイッチの他、電子音を制御する回路基板に複数の電子音が記憶されている場合は、前記電子音を選択するスイッチが設けられる。
【0018】
前記モータ、通電検知手段、音声検知手段、音声発生手段等は、集積回路を介してプログラムに基いて作動するように制御することが好ましい。それにより、通電検知によるモータの可動、音声検知によるモータの可動や停止、通電検知による音声発生、音声検知による音声発生、音声発生時間やモータ駆動時間、音声データの記憶や出力、更にはこれらを組み合わせることが容易となり、より連動的で多様なアクションを発現することが可能となる。
【0019】
前記移動玩具は、外部からの音声を検知することで音声に応じたアクションを起こすものであるため、話しかけたり、拍手、口笛等の音声を発することで作動させる他、笛、カスタネット、鈴等の楽器や、電子音を発する発音具を用いて作動させることができる。
特に、音声検知手段が特定の音を確実に検知できることから、発音具を併せて移動玩具セットとすることが好ましい。付属の発音具を用いることで、発音を的確に検知して所望のアクションを起こすことが可能となり、誤作動を生じ難いものとなる。
前記発音具としては、安価であり幼児でも容易に使用できることから笛が好適である。
【0020】
前記移動玩具は、導電性の軌跡上を移動するものであり、前記軌跡は例えば薄片状の金属部材を連結して形成する構成、予めシート表面に薄片状の金属部材により軌跡を形成したものを用いる構成等を例示できるが、使用者が任意の軌跡を形成してその軌跡上を移動させるためには、水を用いることが好適である。
例えば、床面上に水で軌跡を形成しておけば、その軌跡上を玩具が移動するため、いっそう玩具性を高めることができる。
更に、屋外や水を付着させ難い場所でも使用できるように、水を付着させる水付着具を組み合わせて移動玩具セットを構成したり、水付着具と水を付着させるシート材を共に組み合わせて移動玩具セットを構成することが好ましい。
その際、適用されるシート材は、合成樹脂製シートや布帛であってもよいが、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を支持体表面に設けた吸液状態と非吸液状態で多孔質層の透明性を異にする水変色性シートを用いると、多孔質層が吸液した状態で下層の色調を視認できるため、明瞭な軌跡を確認でき、より好適である。
【0021】
前記シート材の支持体としては、織物、編物、組物、不織布等の布帛以外に、紙、合成紙、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられ、すべて有効である。
【0022】
前記水変色性シートとしては、本願出願人が提案する低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を支持体表面に設けたものが例示でき、例えば、特開平11−192800号公報、特開平11−198271号公報、特開平11−198272号公報、特開2000−72977号公報、特開2001−104661号公報、特開2002−59500号公報、特開2002−67200号公報、特開2003−33985号公報、特開2004−175101号公報、特開2004−202789号公報等に開示される水変色性シートから適宜選択して適用できる。
前記多孔質層を用いた水変色性シートは、表面に微細の凹凸を有するため、移動玩具の走行時に移動体(車輪)が滑り難く、走行状態を保つことが容易となるので、本願の移動玩具セットには好適である。
【0023】
前記シート材、水変色性シート、床面等に軌跡を形成するために適用される水付着具としては、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する塗布具や、容器内に水を収容し、容器内の水を導出するペン先部材を設けた塗布具が用いられるが、特に、前記した容器内に水を収容し、容器内の水を導出するプラスチック多孔体、繊維加工体(繊維収束体やフェルト等)、刷毛等の先端部材を設けた塗布具(ペン形態やローラ形態)が好適であり、携帯性と利便性を満足させるものとなる。
【0024】
尚、前記水付着具や水変色性シートには、発音具を一体又は着脱自在に取り付けることで、操作性や利便性がより高くなると共に、発音具の紛失を防止できるものとなる。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を以下の図面に従って説明する。また、水変色性シートを構成する組成中の部は重量部を表す。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1(図1乃至3参照)
移動玩具の作製
プラスチック製の本体2内部の左後方に、モータ3と減速ギヤ4と移動体5(車輪)を設けてなり、前記移動体5はモータ3の回転によってギヤ4を介して回転するよう構成してなる。また、前記本体2の右後方には、モータ3′と減速ギヤ4′と移動体5′(車輪)を同様に取り付けてなる。前記モータ3、3′はいずれも本体2内に設けられる集積回路9に電気的に接続されている。
本体2の前方には素子A(61)、素子B(62)、素子C(63)が本体裏面に貫通した状態で取り付けられ、各素子は集積回路9に電気的に接続されてなる。尚、本体2の前方には一対の車輪が本体に取り付けられてなり、前記車輪は玩具を載置した際、載置面に接触することなく、且つ、回転しない模擬車輪である。また、本体2外部の略中央部には全方向に回転可能の車輪5″を設けてなる。
本体2の後方にはマイクと増幅器からなる音声検知部7(具体的には音圧センサ)が取り付けられ、マイクが上向きに配設された状態で増幅器を集積回路9に電気的に接続している。
また、素子後方にはスピーカ(音声発生部)8が配設され、集積回路9に電気的に接続している。
【0027】
前記集積回路9はモータ3、3′、素子(通電検知部6)、音声検知部7、スピーカ8及び電源(電池収容部)10のすべてと電気的に接続されおり、電源10にはメインスイッチ11が接続されてなる。また、音声検知部7のON−OFFを切り替える切替スイッチ12を備える。
前記集積回路9により、スピーカ8からの音声出力時(具体的には、音声出力時間が0.3秒以上であるとき)に、音声検知部7に連動するモータ制御を停止するように設定されているため、マイクが集音しても音声によるモータ制御を作動することがない。そのため、短時間の擬音(短周期で構成されるエンジン音等の走行音)を常に発していても誤作動を生じることがなくなる。
また始動時には、前記音声検知部7が音声を検知することで通電検知部(通電センサ)6が作動する(オン状態となる)と共に、走行時には、前記音声検知部7が音声を検知することでモータの稼動を停止するように設定されているため、音による遠隔操作に伴って通電検知走行の始動(開始)と停止を行う、玩具性の高いものとなる。
更に、状況に応じた音声をスピーカ8から発するように制御される。
【0028】
前記構成からなる自動車形態の移動玩具1は、メインスイッチ11をONにするとスピーカ8より音声を発する。その後、軌跡13(床面上に形成した水による軌跡)上に載置しても通電センサ6はオフ状態であるため走行しない。この状態で笛等の発音具を用いて発音すると、音声検知部7がこの音を検知してスピーカ8から音声を発すると共に、通電センサ6をオン状態にする。
【0029】
通電センサ6のうち、素子A(61)、B(62)、C(63)が全て通電した状態を検知するとモータ3、3′が起動し、その結果、ギヤ4、4′を介して移動体5、5′が回転するため、移動玩具1が直進する。
移動時に軌跡が右方向に曲がる位置まで達すると、素子C(63)が軌跡から外れた時点で、素子A(61)と素子B(62)のみ通電した状態を集積回路9が検知してモータ3のみを可動させ、その結果、ギヤ4を介して移動体5が回転するため、移動玩具1は右折する。
また、移動時に軌跡が左方向に曲がる位置まで達すると、素子B(62)が軌跡から外れた時点で、素子A(61)と素子C(63)のみ通電した状態を集積回路9が検知してモータ3′のみを可動させ、その結果、ギヤ4′を介して移動体5′が回転するため、移動玩具1は左折する。
更に、軌跡を外れて全ての素子が通電しない状態になると、集積回路9がそれを検知してモータ3′を停止し、モータ3のみを可動させるため、移動体5のみを回転させて移動玩具1自身は右回転(旋回)する。1分間この状態が続くと自動的に停止する。
尚、移動玩具1は走行状態において、短音(具体的には0.1〜0.2秒の音声)で構成されたエンジン音を常時発音すると共に、数秒おき(具体的には5〜6秒おき)にメロディ、セリフ、擬音等の長音をスピーカ8から発する(具体的には1秒以上の音声)。長音を発しているときには、マイクが集音する音声によってモータが制御されないように設定してあるため、自己のスピーカ8から出力される音声による誤作動を生じることがなくなる。
【0030】
移動時、再び笛等の発音具を用いて発音すると、音声検知部7がこの音を検知してスピーカ8から音声を発すると共に、モータ3、3′及び通電センサ6を停止し、移動を終了する。そして再び始動前の状態で待機する。そのため、笛等の発音具を用いて再度発音すると、音声検知部7がこの音を検知してスピーカ8から音声を発すると共に、通電センサ6をオン状態とし、軌道走行を始める。
前記アクションは音声検知と軌道走行(通電の有無)により繰り返すことができるので、玩具性の高い遊びが可能となる。
尚、前記移動玩具1は切替スイッチ12を切り替えることにより、音声検知部7をオフ状態とすると共に、通電検知部6をオン状態とすることができるので、大きな音を発することなく遊ぶことが可能となり、夜間等であっても自由に前記の軌道走行ができる。
【0031】
実施例2
移動玩具セットの作製
ABS樹脂製の笛(ホイッスル形態の発音具)と、実施例1の移動玩具を組み合わせて移動玩具セットを得た。
前記笛を吹くことで、音声検知部7が確実に音声を認識するため、走行、停止等の遠隔操作を繰り返し行うことができる。
【0032】
実施例3
移動玩具セットの作製
繊維加工体を保持するホルダと内部に水を直接収容可能な軸筒からなり、容器(軸筒)先端には、容器内部に水を注入するための注入孔を開口させると共に、注入孔にホルダを着脱自在に構成し、前記ホルダを注入孔に装着することによって前記容器内を密封する塗布具と、実施例1の移動玩具を組み合わせて移動玩具セットを得た。
前記移動玩具セットは、軸筒の注入孔から水を注入し、ホルダを嵌着してペン先より水を導出可能にした後、床面上に所望の軌跡を描き、移動玩具を載置して作動させると、軌道上を走行させることができた。
【0033】
実施例4
移動玩具セットの作製
軸筒内部に水吸収体を収容し、軸筒先端部には前記水吸収体と接続された繊維収束体からなるペン先を設け、且つ、軸筒後端に外部と連通する孔を設けたペン形態の塗布具と、塗布面にフェルトを備えたローラ部を保持するホルダと内部に水を直接収容可能な軸筒からなり、容器(軸筒)先端には、容器内部に水を注入するための注入孔を開口させると共に、注入孔にホルダを着脱自在に構成し、前記ホルダを注入孔に装着することによって前記容器内を密封するローラ形態の塗布具と、実施例1の移動玩具を組み合わせて移動玩具セットを得た。
【0034】
前記ペン形態の塗布具は孔から水を注入してペン先より水を導出可能にした後に、また、前記ローラ形態の塗布具は軸筒の注入孔から水を注入してホルダを嵌着してローラ部より水を転写可能にした後に、床面上に所望の軌跡13を描き、該軌跡13上に移動玩具1を載置して作動させると、軌跡13上を走行させることができた。
【0035】
実施例5
水変色性シートの作製
背面に厚さ3μmのウレタンエラストマーシートが貼着されてなる白色の綿サテン生地(目付け量130g/m、縦横1m×1m)を支持体として、微粉末蛍光ピンク色顔料〔商品名:エポカラーFP−112、日本触媒(株)製〕5部、アクリル酸エステルエマルジョン〔商品名:モビニール763、ヘキスト合成(株)製、固形分48%〕50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、エポキシ系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて支持体上にベタ印刷し、100℃で3分間乾燥硬化させて着色層を形成した後、前記着色層上に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを80メッシュのスクリーン版を用いて、全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥固化させることで、白色の多孔質層を形成し、水変色性シートを得た。
尚、前記水変色性シートの多孔質層は乾燥状態で白色であり、該多孔質層の近傍には、文字と図柄からなる一般印刷インキによる多彩表示を配設し、商品性、意匠性を付与してなる。
【0036】
移動玩具セットの作製
前記水変色性シートと、実施例1の移動玩具1と、実施例2の発音具(笛)と、実施例3のペン型塗布具と、実施例4のローラ型塗布具とを組み合わせて移動玩具セットを得た。
【0037】
前記移動玩具セットは、軸筒内に水を注入したペン型塗布具とローラ型塗布具を用いて、水変色性シート表面に所望の軌跡13を描くと、その部分の多孔質層が透明化してピンク色の軌跡13が視覚される。尚、前記軌跡13は水が未乾燥状態では保持されており、水が乾燥すると不可視状態となり、元の白色の様相を呈する。
前記軌跡13上にメインスイッチ11をONにした移動玩具1を載置し、笛を吹くと音声検知部7がこの音を検知して通電センサ6が作動するため、スピーカ8から発音しながら軌跡13上を走行する。また、走行時に笛を吹くと音声検知部7がこの音を検知して走行を停止する。
走行時に軌跡13が左右に曲がる位置に到達すると、素子間の通電状態に応じて車輪の回転を制御し、軌跡13に沿って走行する。また、軌跡13が途切れた位置に到達すると素子間の通電状態が解除されるため、その場で旋回し始め、再び軌道13に到達すると該軌道13に沿って走行する。
移動玩具1は音声による遠隔操作が可能であり、水変色性シート上で前記のアクション(発進、種々の発音、種々の走行、停止)を繰り返すことができる、興趣に富む玩具性の高いものとなる。
【0038】
実施例6
水変色性シートの作製
支持体としてピンク色ポリエステルサテン生地(目付け量90g/m)上の全面に、湿式法微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成して水変色性シートを得た。前記水変色性シートは、乾燥状態では全面が白色に視覚されるものである。
更に、前記シートの端部には、ボタンにより種々の電子音を発する発音部が設けられる。
【0039】
移動玩具セットの作製
前記水変色性シートと、実施例1の移動玩具と、繊維加工体を保持するホルダと内部に水を直接収容可能な軸筒からなり、容器(軸筒)先端には容器内部に水を注入するための注入孔を開口させると共に、後端には笛が一体に設けられている笛付塗布具とを組み合わせて移動玩具セットを得た。尚、前記笛は着脱可能とすることもできる。
【0040】
前記移動玩具セットは、軸筒の注入孔から水を注入しホルダを嵌着してペン先より水を導出可能にした後、水変色性シート表面に所望の軌跡を描くと、その部分の多孔質層が透明化してピンク色の軌跡13が視覚される。尚、前記軌跡13は水が未乾燥状態では保持されており、水が乾燥すると不可視状態となり、再び元の白色の様相を呈する。
前記軌跡13上にメインスイッチ11をONにした移動玩具1を載置し、シートに設けられたボタンを押すか笛を吹くことにより発音すると音声検知部7がこの音を検知して通電センサ6が作動するため、スピーカ8から発音しながら移動玩具1は軌跡13上を走行する。また、走行時にシートの発音部か笛により発音すると音声検知部7がこの音を検知して走行を停止する。
走行時に軌跡13が左右に曲がる位置に到達すると、素子間の通電状態に応じて車輪を回転させ、軌跡13に沿って走行する。また、軌跡13が途切れた位置に到達すると素子間の通電状態が解除されるため、その場で旋回し始め、再び軌道13に到達すると該軌道13に沿って走行する。
移動玩具1は音声による遠隔操作が可能であり、水変色性シート上で前記のアクション(発進、種々の発音、種々の走行、停止)を繰り返すことができる、興趣に富む玩具性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の移動玩具の一実施例を表す上方展開図である。
【図2】本発明の移動玩具の一実施例を表す裏面図である。
【図3】本発明の移動玩具の一実施例を表す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 移動玩具
2 本体
3,3′ モータ
4,4′ ギア
5,5′,5″ 車輪
6 通電検知部
61 素子A
62 素子B
63 素子C
7 音声検知部
8 スピーカ(音声発生部)
9 集積回路
10 電源
11 メインスイッチ
12 切替スイッチ
13 軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具本体に装備したモータの駆動によって可動する一対の移動体を備えた移動玩具であって、前記玩具本体下部に少なくとも3つの素子からなる通電検知手段を有してなり、各素子間の通電状態によって両方又は片方の移動体を選択的に可動させると共に、外部からの音声を検知する音声検知手段を有してなり、音声を検知することで前記モータの駆動を制御する構成とした移動玩具。
【請求項2】
音声発生手段を有する請求項1記載の移動玩具。
【請求項3】
前記音声発生手段からの音声出力時には、音声検知手段によるモータ制御を停止するように設定されてなる請求項2記載の移動玩具。
【請求項4】
前記音声出力時間が0.2秒以上である場合に、音声検知手段によるモータ制御が停止する請求項3記載の移動玩具。
【請求項5】
前記音声発生手段が玩具本体下部に配置されると共に、音声検知手段が玩具本体上部に配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の移動玩具。
【請求項6】
前記音声検知手段が音声を検知することで、前記通電検知手段が停止状態から作動状態になる請求項1乃至5のいずれかに記載の移動玩具。
【請求項7】
前記音声検知手段の作動状態と、前記音声検知手段の停止状態且つ前記通電検知手段の作動状態とを切り替える切替スイッチを有する請求項6記載の移動玩具。
【請求項8】
前記通電検知手段である3つの素子(A、B、C)が、全ての素子が通電した状態で両方の移動体を可動させてなり、2つの素子(A、B)が通電した状態で一方の可動体を可動させてなり、且つ、2つの素子(A、C)が通電した状態で他方の可動体を可動させるよう構成した請求項1乃至7のいずれかに記載の移動玩具。
【請求項9】
3つの素子が全て通電していない状態で一方の移動体を可動させるよう構成した請求項8記載の移動玩具。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の移動玩具と、発音具とからなる移動玩具セット。
【請求項11】
前記発音具が笛である請求項10記載の移動玩具セット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の移動玩具と、水付着具とからなる移動玩具セット。
【請求項13】
前記水付着具は、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体を先端部材として適用した塗布具形態である請求項10記載の移動玩具セット。
【請求項14】
前記水付着具と発音具が一体に形成されてなる請求項12又は13に記載の移動玩具セット。
【請求項15】
低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を支持体表面に設けた、吸液状態と非吸液状態で前記多孔質層の透明性を異にする水変色性シートを備えてなる請求項10乃至14のいずれかに記載の移動玩具セット。
【請求項16】
前記水変色性シートに発音具が設けられてなる請求項15記載の移動玩具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−284157(P2008−284157A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131875(P2007−131875)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】