説明

移動端末の位置情報判別方法および装置

【課題】移動端末の位置情報を実際の環境に即して精度よく判別することができる位置情報判別方法および装置を提供する。
【解決手段】位置情報判別装置20は、移動端末10が基地局から受信した無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出する判別値算出部(判別式生成部207,制御部208)と、判別値を所定値と比較することで移動端末10の位置が建物内か建物外かを判定する判定部(制御部208)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報判別システムに係り、特に移動端末の位置情報を判別する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動端末が位置する場所が屋外であるか屋内であるかを識別する方法が種々提案されている。特に、GPS(Global Positioning System)を利用した屋内外判定方法では、GPSで識別できないエリアを屋内と判定することが多いために、GPSに加えて、移動通信システムの基地局を利用した屋内外判定方法も提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1に開示された屋内外判定システムでは、端末がGPSおよび携帯電話基地局から位置情報をそれぞれ取得し、それらの位置情報とその取得方法(GPS/基地局/GPS・基地局)とから判定ルールに従って屋内外判定を行う。
【0004】
特許文献2には、屋内に無線LAN位置検出システムを設け、GPS位置情報と無線LAN位置情報とを融和させることで屋内外を問わず端末の位置解析を可能にする装置が開示されている。また、特許文献3には、基地局からの信号の電磁気特徴に基づく確率分布と、GPSに基づく確率分布とを組み合わせ、無線端末の居場所を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−232592号公報
【特許文献2】特開2005−351823号公報
【特許文献3】特開2008−005476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された屋内外判別システムでは、位置情報の3通りの取得方法(すなわちGPSのみ、基地局のみ、GPSと基地局の両方)にそれぞれ対応した屋内/屋外判定を行うので、判定解像度は粗いものとなり、現実問題として適切な屋内外判定を行えない場合がある。
【0007】
また、特許文献2および3には、端末の位置検出方法が開示されているが、屋内外判定に関するものではない。たとえば、特許文献2では屋内に無線LAN位置検出システムを設ける必要があるために、システム構成が複雑化しコストも上昇する。また、このような屋内システムが装備されていない建物内では端末の位置検出自体が実行できない。さらに、特許文献3では、電磁気信号の特徴が地形や受信器および送信器の位置などに依存して変化することを利用して端末の位置予測を行うものであり、端末の屋内外判定を行う技術ではない。
【0008】
したがって、上記特許文献に教示された方法では、アーケードや建物内のような端末の位置する環境を常に精度よく判定することが困難である。このために、端末の位置に応じて広告情報などを提供する事業者がユーザに対して適切な情報を提供できないことがある。また、上述した特許文献によれば、判別精度が固定されており、状況に即した判別を行うことができない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、移動端末の位置情報を実際の環境に即して精度よく判別することができる位置情報判別方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による位置情報判別装置は、移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する装置であって、前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出する判別値算出手段と、前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明による位置情報判別方法は、移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する方法であって、判別値算出手段が前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出し、判定手段が前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動端末の位置情報を実際の環境に即して精度よく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による位置情報判別システムを適用したネットワークシステムの概略図である。
【図2】本実施形態による位置情報判別システムにおける測定端末および位置情報判別装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による位置情報判別方法を示すフローチャートである。
【図4】図3における判別情報決定処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.システム構成
図1に示すように、ユーザが携帯する測定端末10は測定情報を取得する手段であり、GPS衛星11からのGPS信号および/または移動通信システムの基地局(BS)からの信号をそれぞれ受信する機能を有する。また、測定端末10は、有線あるいは無線の通信ネットワーク12を通して位置情報判別装置20と通信を行う通信機能を有し、その他、ユーザがデータや各種設定を入力するための操作部やモニタなど(図示せず)を有するものとする。ユーザが携帯する携帯電話等の移動通信端末に測定端末10と同じ機能を搭載することも可能である。なお、ここでは通信ネットワーク12に移動通信システムも含まれるものとする。
【0015】
測定端末10はユーザが携帯して建物外(屋外)あるいは建物内(屋内)に移動可能である。後述するように、測定端末10は、測定情報を取得すると、それが学習用か判別用かを設定して位置情報判別装置20へ送信する。位置情報判別装置20は、受信した測定情報が学習(トレーニング)用であれば学習用データとして蓄積し、判別用であれば、それまでに蓄積された学習データを利用した判別分析により当該判別用データから建物の内か外かを判別する。
【0016】
図2において、本実施形態による位置情報判別システムは測定端末10および位置情報判別装置20からなり、測定端末10と位置情報判別装置20とは通信ネットワーク12により接続されている。
【0017】
測定端末10は、後述する情報入力や測定情報取得などの動作制御を行う制御部101を有する。送受信部102は、制御部101の制御に従って、測定端末10を通信ネットワーク12に接続し位置情報判別装置20と通信を行う。
測定情報取得部103は、制御部101の制御に従って、GPS衛星11および基地局(BS)から受信する無線信号の有無を検出するとともに、ある時刻tでのGPS情報(測定端末10の緯度経度情報)と、基地局BSから受信する無線信号の受信電力Prと、を取得する。
【0018】
モード設定部104は、測定情報を学習用として利用すべきか、あるいは判別処理を施すべきかをユーザの指定により設定する。すなわち、建物内か建物外かが分かっている状況で測定情報を取得した場合には、ユーザが当該測定情報を学習用としてモード設定する。ユーザが学習用として設定しない場合には、建物内か建物外かが未知であるから、当該測定情報は判別処理を施すべき判別用としてモード設定される。
【0019】
位置情報判別装置20は送受信部201により通信ネットワーク12と接続して測定端末10と通信を行うことができる。位置情報判別装置20は、測定端末10から受信した測定情報を制御情報に基づいて登録処理する測定情報登録部202と、登録処理された測定情報を格納する測定情報データベース(DB)203とを有する。
【0020】
測定情報DB203は、後述するように、測定端末10から受信したデータを種別あるいは判定結果に応じて学習用あるいは判別用のデータとしてそれぞれ格納する。格納されるデータ(測定情報)は、取得時刻t、GPSによる緯度経度、基地局検出有無Fb、GPS検出有無Fgおよび受信電力Prの各情報を含む。
【0021】
さらに、位置情報判別装置20は、後述する位置判別処理を実行するための手段として、判別情報データベース(DB)204、判別閾値設定部205、判別精度算出部206、判別式生成部207、制御部208および測定情報編集部209を有する。
【0022】
判別情報DB204は判別式生成と判別処理に必要な情報を格納する。具体的には、判別式生成部207で生成される判別式の係数情報、判別閾値設定部205で設定された時刻、受信電力、誤判別率の閾値情報および判別結果情報が格納される。
【0023】
判別閾値設定部205は、受信電力の変化を検出するための閾値と、当該閾値を超えた受信電力の継続時間の閾値(すなわち建物内から建物外へあるいは建物外から建物内へ測定端末が移動したと判定するための継続時間)と、判別式の計算結果から建物内と建物外とを判別するための閾値と、を設定する。
【0024】
判別精度算出部206は、判別情報DB204に格納されている係数情報を用いて生成した判別式を測定情報DB203に格納されている学習用データに適用することで、当該学習用データにおける判別結果から誤判別率を算出する。制御部208は、その誤判別率を判別情報DB204に格納する。
【0025】
判別式生成部207は、後述するように、学習用データからたとえば線形判別分析に必要な係数を算出し、算出した係数と変数とを線形結合することで判別式を生成する。こうして算出した係数は判別情報DB204に格納される。
【0026】
制御部208は、後述する位置情報判別処理を行うときに用いられる機能部、すなわち測定情報DB203、判別情報DB204、判別閾値設定部205、判別精度算出部206、判別式生成部207の各構成要素間のデータの呼び出し、書き込み、転送通知等の制御を行う。
【0027】
さらに、測定情報編集部209は、測定情報登録部202による測定情報の登録処理において、判定用データに対して建物内外の判別結果が後から検証できた場合、当該判別用データを学習用データに変更して登録するように測定情報登録部202を制御する機能を有する。また、測定情報編集部209は、測定情報の時刻情報に想定以上の欠損が発生している場合あるいは測定端末10からの転送時にエラーが発生し登録に不適切である場合などに当該測定情報を削除する機能も有する。
【0028】
なお、後述するような判別閾値設定部205、判別精度算出部206、判別式生成部207、制御部208および測定情報編集部209と同等の機能は、図示しないメモリに格納されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御プロセッサ上で実行することにより実現することもできる。
【0029】
2.動作
上述した本実施形態によるシステムでは、測定端末10の測定が建物の内部あるいは建物の外部で行われたことが事前に分かっている場合には、ユーザが測定端末10を操作することで測定情報を学習用データとして指定し、位置情報判別装置20において学習用データとして測定情報DB203に蓄積される。
【0030】
測定端末10の測定場所が建物内か建物外かを指定しなかった場合には、屋内外についての情報が不明であるから判別用データとして測定情報DB203に蓄積され、後述するように建物内外判別処理が行われる。この建物内外判別処理で判別された結果が後で検証できる場合には、当該判別用データは建物内外判別結果とともに学習用データとして測定情報DB203に蓄積される。以下、図3を用いて本実施形態による位置情報判別方法を詳細に説明する。
【0031】
図3において、まず、測定端末10の測定が建物の内部あるいは建物の外部で行われたことが事前に分かっている場合には、ユーザは測定端末10のモード設定部104を操作することで端末モードMを学習用(M=1)に設定する。ユーザが設定しない場合には、たとえば制御部101が端末モードMを判定用(M=0)に設定する(ステップ301)。
【0032】
端末モードが学習用(M=1)に設定された場合には、ユーザはさらに建物内外情報Dtを建物内(Dt=1)あるいは建物外(Dt=0)に設定する(ステップ302)。なお、端末モードが判定用(M=0)に設定された場合には、建物内外情報Dtには特定文字列(例えばN/Aや空白文字など)が設定される。
【0033】
続いて、測定情報取得部103は、GPS情報および/または基地局情報を受信して、取得時刻t、基地局BSから受信する無線信号の受信電力Pr、基地局情報の有無を示すフラグFb、GPS情報の有無を示すフラグFg、GPS情報(測定端末10の緯度経度情報)Lの各情報を取得する(ステップ303)。制御部101は送受信部102を制御して、これら取得した測定情報および設定情報を含むデータを通信ネットワーク12を通して位置情報判別装置20へ送信する(ステップ304)。この送信データには、少なくとも、上述した端末モードM、建物内外情報Dt、受信電力Pr、基地局情報有無フラグFb、GPS情報有無フラグFgおよび測定時刻情報tが所定のフォーマットで含まれる。
【0034】
位置情報判別装置20の制御部208は、測定端末10からデータを受信すると(ステップ305)、それに含まれる端末モードMをチェックする(ステップ306)。判別用であれば(ステップ306:M=0)、制御部208の制御により測定情報登録部202が当該受信データを判別用データとして測定情報DB203に登録する(ステップ307)。
【0035】
続いて、制御部208は、後述する判定情報決定処理(ステップ308)および建物内外判定処理(ステップ309)を実行することで、当該測定端末10が位置する環境が屋内か屋外かを判別する。判定結果が検証可能であれば(ステップ310:可)、判別用データの建物内外情報Dtを検証された情報(Dt=1あるいは0)に書き換え(ステップ311)、当該判別用データを学習用データとして測定情報DB203に登録する(ステップ312)。検証しない場合には(ステップ310:否)、当該判別用データは学習用としては登録されない。
【0036】
受信データが学習用であれば(ステップ306:M=1)、制御部208の制御により測定情報登録部202が当該受信データを学習用データとしてそのまま測定情報DB203に登録する(ステップ312)。
【0037】
こうして、測定端末10で学習用として設定された測定情報は、位置情報判別装置20における測定情報DB203の学習用データとして蓄積され、判定用として設定された測定情報であっても検証により屋内外判別可能であれば、学習用データとして蓄積される。したがって、学習用データはトレーニングモードごとに更新されるだけでなく、判別モード時にも屋内外の検証ができれば更新される。すなわち、本実施形態によれば、判別分析を用いることで判別能力を予め把握でき、判別用データを用いて推定を行った後、推定結果の検証可能なものを学習用データとしてフィードバックすることで位置情報の判別精度を高めることができる。
【0038】
3.判別情報決定処理
3.1)判別式決定処理
次に述べるように、蓄積された学習用データが判別処理時の判別式構築に利用される。
【0039】
図4において、制御部208は、まず測定情報DB203から学習用データを抽出し(ステップ401)、判別情報DB204から判別閾値を読み出して判別閾値設定部205に設定する(ステップ402)。判別閾値は、判別精度RTHと、判別式の計算結果Dから建物内あるいは建物外を判別するための閾値DTHとを含む。
【0040】
判別閾値が設定されると、判別式生成部207は、制御部208の制御に従って、学習用データと判別閾値を用いて下記の線形判別式(1)により係数a1〜a4を決定する(ステップ403)。
D=a1*(t−t0)+a2*(Pr0−Pr)+a3*Fb+a4*Fg (1)
ここで、Dは建物内外判別用の計算値、t、Pr、FbおよびFgは、抽出された学習用データの情報取得時刻、受信電力、基地局情報有無フラグおよびGPS情報有無フラグをそれぞれ示す。
【0041】
本実施形態における判別式の係数a1〜a4は一般的な線形判別分析により決定される(例えば、「ESTRELA」2004年12月(No.129)、pp.61-67(財団法人統計情報研究開発センター発行)を参照)。上記判別式(1)に示すように、GPS情報および基地局情報に関するある検出状態条件下で受信電力のレベル差がどの程度の時間継続したかによって建物内外判別計算値Dを算出する。
学習用データにおいて屋外から屋内にあるいは屋内から屋外に変化した時刻t0は特定できる。受信電力の閾値を超えた状態(あるいは下回った状態)が継続する時間は「t−t0」で表現される。上記判別式(1)において、t−t0は建物内から建物外へあるいは他点の屋外から建物内へ測定端末が移動したと判定するために必要な時間の意味をもつ。Pr0をt=t0のときの受信電力とすれば、測定端末10が屋外から屋内に移動したことは、t−t0とPr0−Prの変化量をそれぞれ計測して屋外/屋内の状態へ変化した後どの程度その状態が継続するかを線形結合による定式化することにより、判別考慮できる。
上記判別式(1)をあるエリアで適用する場合、建物の存在率により屋外と屋内の分布比率は必ずしも50%ずつではない。例えば都市部と郊外では異なる。そのため、t、Prを変数として定式化を行うよりもt−t0とPr0-Prにより定式化を行う方が実際の適用において精緻に判別可能となる。
たとえば、係数a1〜a4をいずれも正の定数、基地局情報およびGPS情報が「有」の場合にフラグFb、Fgが共に“1”とすれば、測定端末10が屋外にある場合、通常、Fb、Fgは“1”、受信電力PrはPr0を超えており、その継続時間もt0を超えているので、建物内外判別計算値Dは大きな値を示す。これに対して、測定端末10が屋内に移動すると、FbとFgが共に“0”になり受信電力PrがPr0を下回る継続時間がt0を超える可能性があるので、建物内外判別計算値Dはより小さな値を示す。このように建物内外判別計算値Dは、測定端末10が位置する環境に応じて細かく変化するので、周辺の建物の状況や建物の種類(たとえば大きなビル、木造建物、アーケードなど)をある程度判定することも可能である。
【0042】
後述するように、このような建物内外判別計算値Dを閾値DTHと比較することにより建物内外の判別が可能となる。なお、受信電力のレベル差(Pr−Pr0)がどの程度の時間継続したか(t−t0)を考慮することで、屋外において短時間だけ受信状態が変化しても、それを屋内エリアに移動したとする誤判定を回避できる。このように、基地局とGPS情報の有無によるだけでなく、受信出力の時間的変化も加味して建物内外の判定を行うので、通信端末の位置情報を実際の環境に即して精度よく判別することができる。
【0043】
上記判別式(1)が生成されると、抽出された学習用データは建物内外を示す建物内外情報Dtの値が既知であるから、判別精度算出部206は、制御部208の制御により、学習用データ総数を分母にし、既知のDtと一致しなかった計算値Dを示す誤答データ数の比(誤判別率R)を計算する(ステップ404)。
【0044】
制御部208は、誤判別率Rが所望の判別精度RTHより低いかどうかを判定し(ステップ405)、誤判別率Rが判別精度RTHより低い場合には(ステップ405:YES)、その時の判別式(1)の係数a1〜a4および閾値情報(t0、Pr0)を判別情報DB204に登録する(ステップ406)。誤判別率Rが判別精度RTH以上である場合は(ステップ405:NO)、ステップ401へ戻り、学習用データを抽出して係数a1〜a4を変更し(ステップ402)、誤判別率Rが判別精度RTHより低くなるまで上記ステップ401〜405を繰り返す。これにより所望の判別精度RTHの線形判別式を得ることができる。
【0045】
制御部208は、上記判別情報決定処理(ステップ401−406)により判別精度を確保した係数a1〜a4および閾値情報(t0、Pr0)を用いて、測定端末10から受信した判別用データにおける建物内外判別処理ステップ309を実行する。
【0046】
3.2)建物内外判別処理
続いて、制御部208は、まず測定情報DB203から測定端末10から受信した判別用データを抽出し(ステップ501)、その判定用データの測定情報(t、Pr、Fb、Fg)と判別情報DB204に登録された係数a1〜a4および閾値情報(t0、Pr0)とを上記判別式(1)に代入し、建物内外判別計算値Dを算出する。そして、制御部208は、算出した建物内外判別計算値Dと閾値DTHと比較し(ステップ502)、ここではD<DTHであれば(ステップ502:YES)、建物内(Dt=1)と判別し(ステップ503)、DがDTH以上であれば(ステップ502:NO)、建物外(Dt=0)と判別する(ステップ504)。なお、閾値DTHは0.8など0.5以上の値に設定しておけばよい。
【0047】
4.効果
上述したように、本実施形態によれば、移動端末における受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出することで実際の環境に即して精度よく位置情報の判別を行うことができる。特に、判別精度上の課題と判別精度向上方法の課題に対して、線形判別分析を適用することにより建物内外の位置情報を判別できる機能を提供し、判別分析時に誤判別率を算出することにより所望の判別性能を容易に得ることができる。
【0048】
本実施形態によれば、携帯電話などの無線通信測定端末において取得するGPS情報、基地局情報、受信電力情報をもとに判別分析を用いて建物内外を判別する。これにより、GPS情報が取得でないエリアにおいて建物内と建物外の識別が可能となる。
なお、本実施形態は、Open Mobile Allianceで提唱されているような端末データ自動収集のシステムなどにおいて、エリア品質改善に必要な精度の高い位置情報の収集を可能にする。たとえば、位置に応じて広告宣伝情報やコンテンツ配信を行うデジタルサイネージ(電子広告)システムへの適用も可能である。
【0049】
5.付記
上述した実施形態の一部あるいは全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
(付記1)
移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する装置であって、
前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出する判別値算出手段と、
前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする位置情報判別装置。
【0051】
(付記2)
前記判別値算出手段は、前記変化量と前記継続時間とをそれぞれ定数倍した値を加算する線形判別式を用いて前記判別値を算出することを特徴とする付記1に記載の位置情報判別装置。
【0052】
(付記3)
前記線形判別式の前記各定数の値を学習用の変化量および継続時間からなる学習用データを用いて決定する判別式生成手段をさらに有することを特徴とする付記2に記載の位置情報判別装置。
【0053】
(付記4)
前記学習用データにより生成された線形判別式を用いた場合の前記判定手段による判定結果と当該学習用の判定結果とから誤判定率を当該学習により生成された線形判別式の判別精度として算出する判別精度算出部をさらに有することを特徴とする付記3に記載の位置情報判別装置。
【0054】
(付記5)
前記判別式生成手段は、判別用の変化量と継続時間からなる判別用データを用いた判定結果が検証された場合、当該判定用データとその判定結果を学習用データの1つとして使用することを特徴とする付記3または4に記載の位置情報判別装置。
【0055】
(付記6)
移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する方法であって、
判別値算出手段が前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出し、
判定手段が前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する、
ことを特徴とする位置情報判別方法。
【0056】
(付記7)
前記判別値算出手段が前記変化量と前記継続時間とをそれぞれ定数倍した値を加算する線形判別式を用いて前記判別値を算出することを特徴とする付記6に記載の位置情報判別方法。
【0057】
(付記8)
判別式生成手段が前記線形判別式の前記各定数の値を学習用の変化量および継続時間からなる学習用データを用いて決定することを特徴とする付記7に記載の位置情報判別方法。
【0058】
(付記9)
判別精度算出部が前記学習用データにより生成された線形判別式を用いた場合の前記判定手段による判定結果と当該学習用の判定結果とから誤判定率を当該学習により生成された線形判別式の判別精度として算出することを特徴とする付記8に記載の位置情報判別方法。
【0059】
(付記10)
前記判別式生成手段は、判別用の変化量と継続時間からなる判別用データを用いた判定結果が検証された場合、当該判定用データとその判定結果を学習用データの1つとして使用することを特徴とする付記8または9に記載の位置情報判別方法。
【0060】
(付記11)
移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する装置としてプログラム制御プロセッサを機能させるためのプログラムであって、
判別値算出手段が前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出し、
判定手段が前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する、
ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。
【0061】
(付記12)
前記判別値算出手段が前記変化量と前記継続時間とをそれぞれ定数倍した値を加算する線形判別式を用いて前記判別値を算出することを特徴とする付記11に記載のプログラム。
【0062】
(付記13)
判別式生成手段が前記線形判別式の前記各定数の値を学習用の変化量および継続時間からなる学習用データを用いて決定することを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0063】
(付記14)
判別精度算出部が前記学習用データにより生成された線形判別式を用いた場合の前記判定手段による判定結果と当該学習用の判定結果とから誤判定率を当該学習により生成された線形判別式の判別精度として算出することを特徴とする付記13に記載のプログラム。
【0064】
(付記15)
前記判別式生成手段は、判別用の変化量と継続時間からなる判別用データを用いた判定結果が検証された場合、当該判定用データとその判定結果を学習用データの1つとして使用することを特徴とする付記13または14に記載のプログラム。
【0065】
(付記16)
前記移動端末はGPS情報を取得するGPS受信手段を有し、前記線形判別式では基地局情報の有無およびGPS情報の有無をそれぞれ定数倍した値をさらに加算することを特徴とする付記1−5のいずれかに記載の位置情報判別装置。
【0066】
(付記17)
前記移動端末はGPS情報を取得するGPS受信手段を有し、前記線形判別式では基地局情報の有無およびGPS情報の有無をそれぞれ定数倍した値をさらに加算することを特徴とする付記6−10のいずれかに記載の位置情報判別方法。
【0067】
(付記18)
前記移動端末はGPS情報を取得するGPS受信手段を有し、前記線形判別式では基地局情報の有無およびGPS情報の有無をそれぞれ定数倍した値をさらに加算することを特徴とする付記11−15のいずれかに記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は移動通信端末を用いた位置情報の判別システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 測定端末
11 GPS衛星
12 通信ネットワーク
20 位置情報判別装置
101 制御部
102 送受信部
103 測定情報取得部
104 モード設定部
201 送受信部
202 測定情報登録部
203 測定情報データベース
204 判別情報データベース
205 判別閾値設定部
206 判別精度算出部
207 判別式生成部
208 制御部
209 測定情報編集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する装置であって、
前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出する判別値算出手段と、
前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする位置情報判別装置。
【請求項2】
前記判別値算出手段は、前記変化量と前記継続時間とをそれぞれ定数倍した値を加算する線形判別式を用いて前記判別値を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置情報判別装置。
【請求項3】
前記線形判別式の前記各定数の値を学習用の変化量および継続時間からなる学習用データを用いて決定する判別式生成手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の位置情報判別装置。
【請求項4】
前記学習用データにより生成された線形判別式を用いた場合の前記判定手段による判定結果と当該学習用の判定結果とから誤判定率を当該学習により生成された線形判別式の判別精度として算出する判別精度算出部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の位置情報判別装置。
【請求項5】
前記判別式生成手段は、判別用の変化量と継続時間からなる判別用データを用いた判定結果が検証された場合、当該判定用データとその判定結果を学習用データの1つとして使用することを特徴とする請求項3または4に記載の位置情報判別装置。
【請求項6】
移動通信システムの基地局から無線信号を受信可能な移動端末の位置情報を判別する方法であって、
判別値算出手段が前記移動端末が受信した前記無線信号の受信電力の所定値からの変化量と当該変化量の継続時間とに依存する判別値を算出し、
判定手段が前記判別値を所定値と比較することで前記移動端末の位置が建物内か建物外かを判定する、
ことを特徴とする位置情報判別方法。
【請求項7】
前記判別値算出手段が前記変化量と前記継続時間とをそれぞれ定数倍した値を加算する線形判別式を用いて前記判別値を算出することを特徴とする請求項6に記載の位置情報判別方法。
【請求項8】
判別式生成手段が前記線形判別式の前記各定数の値を学習用の変化量および継続時間からなる学習用データを用いて決定することを特徴とする請求項7に記載の位置情報判別方法。
【請求項9】
判別精度算出部が前記学習用データにより生成された線形判別式を用いた場合の前記判定手段による判定結果と当該学習用の判定結果とから誤判定率を当該学習により生成された線形判別式の判別精度として算出することを特徴とする請求項8に記載の位置情報判別方法。
【請求項10】
前記判別式生成手段は、判別用の変化量と継続時間からなる判別用データを用いた判定結果が検証された場合、当該判定用データとその判定結果を学習用データの1つとして使用することを特徴とする請求項8または9に記載の位置情報判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−103223(P2012−103223A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254435(P2010−254435)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】