移動装置および塗布装置
【課題】温度環境の変化に伴うガイド部材の変形を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】移動装置1は、第1の材料により形成された基台11と、基台11上に設置された一対のガイド部材12と、第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、一対のガイド部材12に沿って移動可能な移動体13と、一対のガイド部材12のうちの少なくとも一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置された板バネ141とを備える。板バネ141は、移動体13に対して固定される第1のブロック部と、ガイド部材12aの延在方向について第1のブロック部から離間した位置に配置され、ガイド部材に沿って摺動する摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、第1のブロック部と第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と
を備える。
【解決手段】移動装置1は、第1の材料により形成された基台11と、基台11上に設置された一対のガイド部材12と、第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、一対のガイド部材12に沿って移動可能な移動体13と、一対のガイド部材12のうちの少なくとも一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置された板バネ141とを備える。板バネ141は、移動体13に対して固定される第1のブロック部と、ガイド部材12aの延在方向について第1のブロック部から離間した位置に配置され、ガイド部材に沿って摺動する摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、第1のブロック部と第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と
を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる移動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる機構は、各種の装置に搭載されている。当該機構を搭載した装置の一例として、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、この類の塗布装置が開示されている。ここでは、基台(「基台14」)に設置された一対のガイド部材(「一対のガイド部材16」)に沿って、2種類の移動体(透明基板を支持する「テーブル11」、および、スペーサ粒子を塗布するインクジェットヘッドを洗浄する「洗浄部22」)が移動される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−210770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記に例示した類の塗布装置においては、塗布処理の精度を高精度に保つべく、塗布精度に影響を及ぼす構成(基台、ガイド部材、テーブル等)は、熱による変形等が生じにくい石材等を用いて形成される。これに対し、洗浄部は、塗布処理の精度に直接的に関係する機能部ではないので、塗布精度の観点からみれば石材を用いて形成される必要はない。基台等を形成する材料として好ましいとされる石材は、比較的重く、また、比較的高価な部材であるので、洗浄部を別の部材(石材よりも軽く、また、比較的安価な材料である、アルミニウム等)を用いて形成したいという要求がある。
【0006】
しかしながら、基台と、これに設置されたガイド部材に沿って移動される移動体(例えば、洗浄部)とが、熱膨張率の異なる材料で形成された場合、温度環境が変化すると、移動体が基台とは異なる度合いで膨張するために、移動体から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がかかり、その結果、ガイド部材、基台等の変形(例えば、ガイド部材の歪み)が生じるおそれがある。塗布装置においては、ガイド部材等の変形は塗布精度に悪影響を及ぼすため非常に好ましくない。このような事情があるため、従来においては、洗浄部も基台と同じ材料を用いて形成せざるを得なかった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、基台に設置されたガイド部材に沿って移動される移動体が、基台を形成する材料と熱膨張率が異なる材料で形成されていても、温度環境の変化に伴うガイド部材の変形を抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、第1の材料により形成された基台と、前記基台上に設置された一対のガイド部材と、前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な移動体と、前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記移動体との間に配置された板バネと、を備え、前記板バネが、前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動装置であって、前記板バネが、前記ガイド部材の延在方向について、前記第2のブロック部を挟んで前記第1のブロック部と反対側に前記第2のブロック部から離間した位置に配置され、前記移動体に対して固定された第3のブロック部と、前記第2のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、をさらに備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の移動装置であって、前記板バネが、前記ガイド部材の延在方向について、前記第1のブロック部を挟んで前記第2のブロック部と反対側に前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記摺動部材に対して固定された第3のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置であって、前記板バネの剛性が、前記ガイド部材の剛性よりも小さく、かつ、前記ガイド部材の剛性の5分の1以上である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の移動装置であって、前記薄板部が、前記連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部、を備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、スペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を基板に塗布する塗布装置であって、基台と、前記基台上に設置された一対のガイド部材と、前記一対のガイド部材に沿って移動可能なステージと、前記ステージに載置された基板に対して、前記スペーサ粒子分散液を、インクジェット方式により吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを洗浄する洗浄ユニットを備え、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な洗浄部と、前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記洗浄部との間に配置された板バネと、を備え、前記板バネが、前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、を備え、前記基台と前記ステージとが第1の材料で形成され、前記洗浄部が前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成される。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の塗布装置であって、前記第1の材料が石材であり、前記第2の材料がアルミニウムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明においては、基台と移動体とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、移動体が基台とは異なる度合いで膨張するため、移動体から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。この発明においては、基台に設置された一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と移動体との間に板バネが配置されており、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネの変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材に対して直接にかかることがないので、ガイド部材の変形が抑制される。また、その結果、基台の変形も抑制される。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、板バネが、ガイド部材の延在方向に沿って配列された3個のブロック部と、隣接するブロック部を連結する薄板部とを備え、両側のブロック部が移動体に、中央のブロック部が摺動部材に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が板バネにかかった場合に、板バネは中央のブロック部を中心としてガイド部材と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、板バネが、ガイド部材の延在方向に沿って配列された3個のブロック部と、隣接するブロック部を連結する薄板部とを備え、両側のブロック部が摺動部材に、中央のブロック部が移動体に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が板バネにかかった場合に、板バネは中央のブロック部を中心としてガイド部材と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。
【0018】
請求項4に記載の発明によると、板バネの剛性がガイド部材の剛性よりも小さいので、移動体から板バネに対してかかる、一対のガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材よりも先に板バネが破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材の破損を回避できる。また一方で、板バネの剛性が、ガイド部材の剛性の5分の1以上であるので、移動体を安定的に搬送できる。
【0019】
請求項5に記載の発明においては、板バネが備える薄板部が、連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部を備える。くびれ部が形成されることによって、薄板部が連結方向と交差する方向について撓みやすくなる。
【0020】
請求項6に記載の発明においては、基台と洗浄部とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、洗浄部が基台とは異なる度合いで膨張するため、洗浄部から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。この発明においては、基台に設置された一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と洗浄部との間に板バネが配置されており、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネの変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材に対して直接にかかることがないので、ガイド部材の変形が抑制される。また、その結果、基台の変形も抑制される。ガイド部材、および、基台の変形が抑制されることによって、塗布処理における精度が担保される。
【0021】
請求項7に記載の発明によると、基台とステージとは、熱変化で変形しにくい石材で形成されるので、スペーサ粒子分散液の塗布精度を常に良好に維持することができる。一方で、塗布精度に直接的な影響を与えない洗浄部は、石材よりも軽量かつ安価なアルミニウムで形成されるので、装置の製造コストを抑えることができるとともに、洗浄部の搬送速度を上げて装置の処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】移動装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】支持構造を示す平面図である。
【図3】支持構造を示す側面図である。
【図4】板バネの斜視図である。
【図5】温度変化が生じた場合の支持構造の様子を示す平面図である。
【図6】塗布装置の構成を示す斜視図である。
【図7】ヘッドユニットをその下面から見た斜視図である。
【図8】ヘッドユニット駆動機構を示す斜視図である。
【図9】洗浄部の構成を示す斜視図である。
【図10】洗浄ユニットの構成を示す図である。
【図11】昇降機構の構成を示す図である。
【図12】その他の実施の形態に係る支持構造を示す平面図である。
【図13】その他の実施の形態に係る支持構造を示す平面図である。
【図14】移動装置を適用した装置の別の構成例を模式的に示す図である。
【図15】実施例に係る板バネを示す平面図である。
【図16】実施例に係る板バネに生じる応力の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<I.移動装置1>
<1.全体構成>
この発明の実施の形態に係る移動装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、移動装置1の構成を模式的に示す図である。なお、図1および以下に参照する各図には、説明の便宜上、XYZ座標系が適宜付与されている。
【0024】
移動装置1は、基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる装置であり、後に説明するように、例えば、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置に適用される。
【0025】
移動装置1は、基台11と、基台11上に設置された一対のガイド部材12とを備える。一対のガイド部材12は、互いに平行に設置される。また、移動装置1は、一対のガイド部材12に沿って移動可能な移動体13を備える。具体的には、一対のガイド部材12のそれぞれには、ガイド部材12に摺動しながら当該ガイド部材12に沿って移動可能な摺動部材(例えば、リニアガイドベアリング)121(図3)が設置されており、移動体13は、当該リニアガイドベアリング121、および、後に説明する支持構造14を介して一対のガイド部材12上に支持される(図3)。移動体13には、例えば、リニアモータ等の駆動部が接続されており、この駆動部の駆動をうけることにより、移動体13は一対のガイド部材12に案内された状態でガイド部材12の延在方向に沿って滑らかに移動する。
【0026】
移動装置1においては、基台11と移動体13とは互いに熱膨張率の異なる材料でそれぞれ形成されている。
【0027】
<2.支持構造14>
<2−1.全体構成>
移動装置1が備える支持構造14の構成について、図1に加え、図2、図3を参照しながら説明する。図2は、支持構造14を示す平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、移動体13を透視状態で示している。図3は、支持構造14を図2の矢印Kから見た側面図である。
【0028】
支持構造14は、一対のガイド部材12のうちの一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材12bと移動体13との間に配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。
【0029】
各板バネ141は、下面側において、ガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に対して固定(例えばネジ101により固定)されるとともに、上面側において、移動体13に対して固定(例えばネジ102により固定)される。同様に、各スペーサブロック142も、下面側において、ガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に対して固定(例えばネジ103により固定)されるとともに、上面側において、移動体13に対して固定(例えばネジ104により固定)される。
【0030】
<2−2.板バネ141>
板バネ141の構成について、図4を参照しながらより具体的に説明する。図4は、板バネ141の斜視図である。
【0031】
板バネ141は、例えば鋼により形成される。板バネ141は、3個のブロック部(すなわち、1個の中央ブロック部41と、中央ブロック部41を中心に挟んで両側に配置された2個の側方ブロック部42)を備える。また、板バネ141は、4個の薄板部43を2組備える。4個の薄板部43のうちの2個の薄板部43は、対になって、一方の側方ブロック部42と中央ブロック部41とを連結する。また、残りの2個の薄板部43は、対になって、他方の側方ブロック部42と中央ブロック部41とを連結する。3個のブロック部42,41,42の配列方向、すなわち、薄板部43がブロック部41,42を連結する方向(Y方向)を、以下「連結方向」という。
【0032】
この構成においては、中央ブロック部41と一方の側方ブロック部42と、これらを連結する一対の薄板部43とによって、第1の平行板バネ部40が形成され、中央ブロック部41と他方の側方ブロック部42と、これらを連結する一対の薄板部43とによって、第2の平行板バネ部40が形成される。つまり、板バネ141は、一方のブロック部(中央ブロック部41)を共用することにより一体に形成された2個の平行板バネ部40を備える。
【0033】
各板バネ141は、薄板部43が各ブロック部41,42を連結する連結方向(Y方向)が、ガイド部材12の延在方向に沿うように配置される(図2参照)。すなわち、各板バネ141は、各ブロック部41,42が、ガイド部材12の延在方向について互いに離間するような姿勢で配置される。
【0034】
中央ブロック部41には、複数個(好ましくは、3個以上であり、この実施の形態においては4個)の貫通孔411が形成されており、この貫通孔411のそれぞれに上側から挿通されたネジ101がガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に固定される(図3参照)。つまり、板バネ141は、中央ブロック部41において、リニアガイドベアリング121に対して計4点にて固定されることになる。
【0035】
各側方ブロック部42にも、複数個(好ましくは、2個以上であり、この実施の形態においては2個)の貫通孔421が形成されており、この貫通孔421のそれぞれに下側から挿通されたネジ102が移動体13の底面に固定される(図3参照)。つまり、板バネ141は、両側に配置された一対の側方ブロック部42において、移動体13に対して計4点にて固定されることになる。
【0036】
薄板部43は、上述したとおり、中央ブロック部41と側方ブロック部42とを連結する部材であり、連結方向と交差する方向に可撓性を有する。具体的には、各薄板部43は、薄板直方体形状の部材であり、肉厚が最も薄い方向を、連結方向と直交する方向(X方向)に沿わせて配置されることにより、X方向について可撓に形成されている。
【0037】
薄板部43の、連結方向(Y方向)に沿う両端部には、好ましくは、X方向についての肉厚が局所的に薄い部分(Z方向から見て細く狭まった部分であり、以下「くびれ部431」という)が形成される。くびれ部431は、例えば、薄板部43の+X方向側の壁面にZ方向に沿う柱状の切り欠き430を形成するとともに、−X方向側の壁面にも、当該切り欠き430と対向する位置に、これを同じサイズの切り欠き430を形成することにより得ることができる。くびれ部431が形成されることによって、薄板部43を、X方向について撓みやすくすることができる。なお、切り欠き430のサイズが大きくなるほど、板バネ141はX方向について撓みやすくなる(すなわち、板バネ141のX方向についての剛性が小さくなる)。したがって、切り欠き430のサイズを調整することによって、薄板部43のX方向についての撓みやすさ(つまりは、X方向についての薄板部43の剛性)を調整することができる。
【0038】
ただし、切り欠き430の形状は、断面が半円形状の柱状であることが特に好ましい。切り欠き430の形状を断面が半円形状の柱状とすれば、薄板部43がX方向について撓んだ際に、薄板部43に生じる応力が適切に分散され、板バネ141が破損しにくくなる。
【0039】
また、板バネ141の剛性は、好ましくは、ガイド部材12の剛性よりも小さく、かつ、ガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされる。ただし、板バネ141の剛性は、各種の態様で調整することができる。例えば、板バネ141のX方向の剛性は、上述したとおり、切り欠き430のサイズによって調整することができる。また、板バネ141のY方向の剛性は、例えば、ブロック部41,42の断面積によって調整することができる。また、板バネ141のZ方向の剛性は、例えば、板バネ141のZ方向のサイズ(厚み)によって調整することができる。また、板バネ141の形成材料も、その剛性に影響する。
【0040】
板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性よりも小さく形成されることによって、ガイド部材12の破損を回避できる。すなわち、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性よりも小さいと、移動体13から板バネ141に対してかかる、一対のガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネが破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材12の破損を回避できる。また、板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされることによって、板バネ141に移動体を搬送するためのリニアガイドとして必要な最低限の剛性が担保されることになる。すなわち、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされることによって、移動体13をガイド部材12に沿って搬送する際の揺れ(移動体13の進行方向についての左右の揺れ(ローリング)、前後の揺れ、および、上下の揺れ)の発生が抑制され、移動体13を安定的に搬送できる。
【0041】
また、板バネ141は、好ましくは、中央ブロック部41および薄板部43の各上面(移動体13と対向する側の面)が、側方ブロック部42の上面よりも僅かに低い位置にくるように形成される。このように形成しておけば、板バネ141を移動体13に固定した際に、移動体13の底面と中央ブロック部41の上面、および、移動体13の底面と薄板部43の上面との間に僅かな隙間が形成されることになる(図3参照)。この構成によると、当接面による摩擦が生じないため、後述する板バネ141の変形が妨げられにくくなる。特に、当該隙間に摺動部材としてのベアリング等を設けることも好ましい。
【0042】
<2−3.板バネ141の機能>
支持構造14における板バネ141の機能について、図5を参照しながら説明する。図5は、温度変化が生じた場合の支持構造14の様子を示す平面図である。図5においては、温度変化前の移動体13が一点鎖線で、温度変化後の移動体13が実線で、それぞれ示されている。なお、図5においても、説明の便宜上、移動体13を透視状態で示している。
【0043】
上述したとおり、移動体13と基台11とは、熱膨張率が異なる材料を用いてそれぞれ形成されている。例えば、移動体13が基台11よりも熱膨張率が大きい材料を用いて形成されている場合、移動装置1の温度が上昇すると、移動体13が基台11よりも大きな比率で膨張するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を広げる向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が外側(一対のガイド部材の対向方向と逆の方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を広げようとする力Fは、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力Fがガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0044】
またこの場合において、移動装置1の温度が下降すると、移動体13が基台11よりも大きな比率で収縮するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を狭める向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が内側(一対のガイド部材の対向方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を狭めようとする力は、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力がガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0045】
なお、移動体13が基台11よりも熱膨張率が小さい材料により形成されている場合もこれと同様である。すなわちこの場合、移動装置1の温度が上昇すると、基台11が移動体13よりも大きな比率で膨張するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を狭める向きの力が発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が内側(一対のガイド部材の対向方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を狭めようとする力は、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力がガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0046】
またこの場合において、移動装置1の温度が下降すると、基台11が移動体13よりも大きな比率で収縮するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を広げる向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が外側(一対のガイド部材の対向方向と逆の方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を広げようとする力Fは、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力Fがガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0047】
<3.効果>
上記の実施の形態に係る移動装置1においては、基台11と移動体13とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、移動体13が基台11とは異なる度合いで膨張するため、移動体13から一対のガイド部材12に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。移動装置1においては、一方のガイド部材12aと移動体13との間に板バネ141が配置されており、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネ141の変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材12に対して直接にかかることがないので、ガイド部材12の変形が抑制される。また、その結果、基台11の変形も抑制される。
【0048】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141が、ガイド部材12の延在方向に沿って配列された3個のブロック部42,41,42と、隣接するブロック部を連結する薄板部43とを備え、両側のブロック部(側方ブロック部42)が移動体に、中央のブロック部(中央ブロック部41)が摺動部材であるリニアガイドベアリング121に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が生じた場合に、板バネ141は中央ブロック部41を中心としてガイド部材12と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。より具体的には、ネジ101,102が緩みにくい。
【0049】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性よりも小さいので、移動体13から板バネ141に対してかかる、一対のガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネ141が破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材12の破損を回避できる。また一方で、板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性の5分の1以上であるので、移動体13を安定的に搬送できる。
【0050】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141が、その備える薄板部43にくびれ部431が形成されることによって、薄板部43を、連結方向と交差する方向について撓みやすいものとされている。この構成によると、板バネ141に適切な剛性を与えつつ、特定の方向(具体的には、ブロック部41,42の配列方向と交差する方向)について適切な可撓性を付与することができる。例えば、板バネ141の剛性を高めるためには、板バネ141の厚みを比較的厚く形成する、板バネ141を比較的剛性の高い材料により形成する、薄板部43の延在方向についての長さを短くする、といった方法がある。これらを適用して板バネ141に必要な剛性を付与した場合、そのままでは、板バネ141は、ブロック部41,42の配列方向と交差する方向について変形しにくいものとなるところ、薄板部43にくびれ部431を形成することによって、板バネ141の剛性を大きく損なうことなく、板バネ141を当該方向についての適切な可撓性を付与することができる。
【0051】
<II.塗布装置2>
移動装置1を適用した装置の構成例として、例えば、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置が挙げられる。この塗布装置は、液晶表示装置の製造におけるギャップ形成工程に用いられる。ギャップ形成工程とは、液晶の封入工程等の前工程として行われる工程であり、透明基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成する工程である。ギャップ形成工程は、具体的には、例えば次のように行われる。まず、塗布装置2が、透明基板に構成されたブラックマトリックス(基板の表面に構成された画素領域(レッドのカラーフィルターの領域、グリーンのカラーフィルターの領域、および、ブルーのカラーフィルターの領域)を区画するブラックマトリックス)内の各目標領域に向けて、スペーサ粒子分散液を吐出する。スペーサ粒子分散液が塗布されると、続いて、透明基板は、ホットプレート等を用いて加熱される。すると、スペーサ粒子分散液から揮発成分が蒸発し、これによって、表面張力により各目標領域においてスペーサ粒子同士が互いに集まって接触する。さらに加熱が進むと、各スペーサ粒子が焼成されて互いに固着するとともに、透明基板Wの表面に対しても強い力で固着する。これによって、目標領域にスペーサ領域が形成される。すなわち、透明基板Wの表面に、液晶層封入用のギャップが形成される。
【0052】
<1.装置構成>
<1−1.全体構成>
以下において、移動装置1を適用した塗布装置2の構成について、具体的に説明する。図6は塗布装置2の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において明らかになるように、塗布装置2においては、上述した移動装置1の基台11は「基台21」に相当し、ガイド部材12は「ガイド部材22」に相当し、移動体13は「洗浄部23」に相当する。
【0053】
塗布装置2は、基台21と、基台21上に設置された一対のガイド部材22とを備える。また、一対のガイド部材22に沿って移動可能な洗浄部23とステージ24とを備える。具体的には、一対のガイド部材22のそれぞれには、例えば、ガイド部材22に摺動しながら当該ガイド部材22に沿って移動可能な摺動部材(例えば、リニアガイドベアリング)221(図9)が設置されており、洗浄部23は、当該リニアガイドベアリング221、および、支持構造14を介して一対のガイド部材22上に支持される(図9参照)。また、ステージ24は、当該リニアガイドベアリングを介して一対のガイド部材22上に支持される。
【0054】
洗浄部23(具体的には、洗浄部23が備える支持部材38)、および、ステージ24の下方には、駆動部としてのリニアモータ25の固定子223が配置されるとともに、支持部材38の下面、および、ステージ24の下面のそれぞれには、リニアモータ25の可動子222(図9参照)が配設される。したがって、洗浄部23とステージ24とは、リニアモータ25の駆動をうけることにより、それぞれ独立に、一対のガイド部材22に案内された状態でガイド部材22の延在方向に沿って滑らかに移動する。
【0055】
ただし、洗浄部23は、後述するヘッドユニット26を洗浄する機能部である。また、ステージ24は、処理対象となる透明基板Wを載置するための部材である。
【0056】
塗布装置2は、さらに、ステージ24に載置された透明基板Wに対してスペーサ粒子分散液を吐出する複数(例えば、12個)のヘッド(インクジェットヘッド)ユニット26を備える。複数のヘッドユニット26は、ステージ24の移動方向(すなわち、ガイド部材22の延在方向)と直交する方向に沿って配列されて、基台21を跨ぐようにして配置されたガントリー27によって支持されている。
【0057】
また、塗布装置2は、基台21の両端部(ガイド部材22の延在方向と直交する方向の両端部)に配設され、ガントリー27の端部をそれぞれ支持する一対のリニアモータ28を備える。一対のリニアモータ28がそれぞれ個別に駆動されることにより、ガントリー27が、ステージ24の移動方向に対してなす角度(交差角度)が変更可能とされている。すなわち、ガントリー27に支持された各ヘッドユニット26が、ステージ24の移動方向に対してなす角度(交差角度)が変更可能とされている。
【0058】
また、塗布装置2は、基台21の一端に配置された乾燥防止部29を備える。乾燥防止部29は、ヘッドユニット26の乾燥を防止するための機能部であり、ヘッドユニット26と同数個配設される。各ヘッドユニット26は、待機時においてはこれらの乾燥防止部29のいずれかと対向する位置に配置されることによってヘッドユニット26が備える各ヘッド262の乾燥が防止される。
【0059】
また、塗布装置2は、自装置が備える各部を制御する制御部20を備える。後に詳細に説明するが、塗布装置2において透明基板Wに対する塗布処理を実行させる場合、制御部20は、リニアモータ25を駆動して透明基板Wを載置したステージ24をガイド部材22に沿って移動させつつ、複数のヘッドユニット26のそれぞれからスペーサ粒子分散液を吐出させる。また、後に詳細に説明するが、洗浄部23にヘッドユニット26の洗浄処理を実行させる場合、制御部20は、リニアモータ25を駆動して洗浄部23をガイド部材22に沿って移動させるとともに、後述する各部を制御して、洗浄部23を、複数のヘッドユニット26のうち洗浄対象となるヘッドユニット26の下方まで移動させる。当該位置において、洗浄部23は、上方に向けて洗浄液を吐出して、対象となるヘッドユニット26を洗浄する。
【0060】
透明基板Wにスペーサ粒子分散液を塗布する塗布処理においては、高い塗布精度が要求される。このため、塗布精度に影響のある機能部(具体的には、ステージ24、ガイド部材22、ヘッドユニット26、ガントリー27等)は熱により変形しにくい石材(例えば、斑糲岩)を用いて形成される。一方、塗布精度に対する影響が比較的少ない機能部である洗浄部23は、石材よりも軽量かつ安価な材料であるアルミニウムを用いて形成される。洗浄部23が石材よりも安価な部材を用いて形成されることにより、塗布装置2の製造コストが低減される。また、洗浄部23が石材よりも軽量な部材を用いて形成されることにより、洗浄部23の軽量化が実現される。洗浄部23が軽量化されると、洗浄部23をガイド部材22に沿って材移動させるための駆動部の負担を増大させることなく(すなわち、駆動部を大型化することなく)、洗浄部23の移動速度を上げることが可能となり、塗布装置2における処理効率が向上する。
【0061】
<1−2.各部の構成>
塗布装置2が備える各部の構成について、詳細に説明する。
【0062】
<1−2−1.ヘッドユニット26>
ヘッドユニット26の構成について、図7〜図8を参照しながら説明する。図7は、ヘッドユニット26をその下面から見た斜視図である。図8は、ヘッドユニット駆動機構263を示す斜視図である。なお、ガントリー27に支持された複数のヘッドユニット26のそれぞれは同じ構成を有している。以下においては、一のヘッドユニット26の構成のみを説明する。
【0063】
ヘッドユニット26の下方には、ヘッド支持板261が配設されており、各ヘッド支持板261には、複数(例えば、5個)のヘッド(インクジェットヘッド)262が配設されている。各ヘッド262には、多数の吐出口2621が一方向に列設されている。各吐出口2621からは、スペーサ粒子分散液が吐出される。
【0064】
上述したとおり、複数のヘッドユニット26を支持するガントリー27の両端部(ガイド部材22の延在方向と交差する方向の両端部)にはリニアモータ28が配置され、これらが個別に駆動されることによってガントリー27(すなわち、ガントリー27に支持された各ヘッドユニット26)がステージ24の移動方向に対してなす角度が変更可能とされている(図6参照)。つまりは、吐出口2621の列設方向がステージ24の移動方向に対してなす角度が変更可能とされている。ここで、吐出口2621の列設方向がステージ24の移動方向に対してなす角度が大きくなればなるほど、ステージ24の移動方向と直交する方向からみた吐出口2621のピッチ間隔が小さくなる。つまり、ガントリー27がステージ24の移動方向に対してなす角度を調整することによって、スペーサ粒子分散液の吐出間隔を調整することができる。
【0065】
また、各ヘッドユニット26には、これをガントリー27の延在方向(すなわち、ステージ24の移動方向と交差する方向)に沿って移動させる機構(ヘッドユニット駆動機構)263が設けられる。
【0066】
ヘッドユニット駆動機構263は、具体的には、ガントリー27の両端部(ガイド部材22の延在方向に沿う方向の両端部)に配置されたリニアガイド2631と、リニアスケール2632と、リニアモータ2633とを備える。これら各部は、その長手方向を、複数のヘッドユニット26の列設方向(ガイド部材22の延在方向と交差する方向)に沿わせて配設される。また、ヘッドユニット駆動機構263は、ヘッド支持板261の下面に配設された、リニアモータ2633の可動子(図示省略)を備える。これにより、リニアモータ263が駆動されると、ヘッド支持板261は、その両端をリニアガイド2631に案内された状態で、リニアガイド2631に沿って移動することができる。また、その移動量は、リニアスケール2632により測定される。各ヘッドユニット26が設定された移動量だけリニアガイド2631に沿って移動されることにより、ヘッドユニット26間のピッチが変更される。ヘッドユニット26間のピッチを変更することによって、ヘッド262間のピッチ、ひいては、スペーサ粒子分散液の吐出間隔を調整することができる。
【0067】
つまり、塗布装置2においては、ガントリー27がステージ24の移動方向に対してなす角度と、ヘッドユニット26間のピッチとを複合的に調整することによって、ステージ24の移動方向に対するスペーサ粒子分散液の吐出間隔を、処理対象となる透明基板Wに形成されたブラックマトリクスの間隔に対応させることができるようになっている。
【0068】
<1−2−2.洗浄部23>
<全体構成>
洗浄部23の全体の構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、洗浄部23の構成を示す斜視図である。
【0069】
洗浄部23は、洗浄ボックス31と、超音波洗浄ユニット32とを備える。洗浄ボックス31は、洗浄液をヘッド262に向けて吐出することにより、ヘッド262の洗浄を行う機能部であり、その具体的な構成については後に説明する。超音波洗浄ユニット32は、超音波振動が付与された洗浄液を貯留する超音波洗浄槽を備え、この超音波洗浄槽内にヘッド262を浸漬することにより超音波洗浄を行う。
【0070】
洗浄部23は、さらに、洗浄ボックス31の下方に配置され、洗浄ボックス31をヘッド262が備える吐出口2621の列設方向に沿って往復移動させる第1駆動機構33を備える。ただし、その往復移動距離は、吐出口2621の列設幅に相当する距離となっている。第1駆動機構33は、例えば、モータと、当該モータの駆動を受けて回転するネジと、当該ネジに螺合し、洗浄ボックス31と連結されたナット等から構成することができる。この構成においては、モータを駆動してネジを回転させることによって、ナットに固定された洗浄ボックス31を移動させることができる。また、超音波洗浄ユニット32の下方にも、これをヘッド262が備える吐出口2621の列設方向に沿って往復移動させる駆動機構34が配置される。当該駆動機構34の構成は、第1駆動機構33と同様のものとすることができる。
【0071】
洗浄部23は、さらに、洗浄ボックス31、超音波洗浄ユニット32、および、これらのそれぞれに配設された駆動機構33,34を載置する回転テーブル35と、回転テーブル35を回動させる第2駆動機構(図示省略)とを備える。第2駆動機構は、例えば、回転テーブル35の下方に固定された回動部材と、当該回動部材に連結するネジと、当該ネジを回転するモータ等から構成することができる。この構成においては、モータを駆動してネジを回転させると、回動部材がその中央部を中心として回動し、これによって、回動部材に固定された回転テーブル35が回動することになる。
【0072】
洗浄部23は、さらに、回転テーブル35と第2駆動機構とを載置する移動テーブル36と、移動テーブル36をステージ24の移動方向と直交する方向に往復移動させる第3移動機構37とを備える。第3移動機構37は、ステージ24の移動方向と直交する方向に延びる支持架371と、支持架371上に配設されたリニアモータ372および一対のリニアガイド373とを備える。この構成においては、リニアモータ372を駆動すると、移動テーブル36は、一対のリニアガイド373に沿って、ステージ24の移動方向と直交する方向に往復移動する。
【0073】
洗浄部23は、さらに、上述した各部31〜37を支持する支持部材38を備える。上述したとおり、支持部材38は、一対のガイド部材22のそれぞれに設置されたリニアガイドベアリング221、および、支持構造14を介して基台11に配設された一対のガイド部材22上に支持されている。また、支持部材38の下方には、駆動部としてのリニアモータ25の固定子223が配置されるとともに、支持部材38の下面にはリニアモータ25の可動子222が配設される。この構成においては、リニアモータ25を駆動すると、支持部材38は、一対のガイド部材22に沿って往復移動する。
【0074】
ここで、支持構造14の構成は、上述したとおりである。すなわち、支持構造14は、一対のガイド部材22のうちの一方のガイド部材22a(より具体的には、ガイド部材22aに設置されたリニアガイドベアリング221)と支持部材38との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材22b(より具体的には、ガイド部材22bに配置されたリニアガイドベアリング221)と支持部材38との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。板バネ141の構成は、上述したとおりである。
【0075】
<洗浄ボックス31>
洗浄ボックス31は、複数個(例えば、5個)の洗浄ユニット311と、洗浄ユニット311と同数個の捕獲部312と、洗浄ユニット311と同数個の吸引キャップ313と、複数の洗浄ユニット311を昇降させる昇降機構314(図11参照)とを備える。
【0076】
洗浄ユニット311の構成について、図10を参照しながら説明する。図10は、洗浄ユニット311の構成を示す図である。
【0077】
洗浄ユニット311は、基部51に形成された洗浄液吐出口52と、同じく基部51に形成された洗浄液の回収口53と、基部51上に配設された当接ブロック54とを備える。これら各部は、洗浄ボックス31の上面に形成された開口部300内に配置される。洗浄液吐出口52は、洗浄液(例えば、純水)を供給する供給管55と接続されており、供給された洗浄液を上方(鉛直上方)に向けて吐出する。また、回収口53は、回収管56と接続されており、洗浄に供された洗浄液を回収する。当接ブロック54は、一対の当接部541を有し、これらの間に洗浄液吸引口542が形成されている。
【0078】
洗浄ユニット311においてヘッド262を洗浄する場合、後述する昇降機構314の駆動を受けて、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54の一対の当接部541が、ヘッド262の下面と当接する位置におかれる。この位置においては、洗浄液吐出口52が、ヘッド262の吐出口2621から、その吐出方向について第1の距離だけ離隔するとともに、洗浄液吸引口542が、吐出口2621から、その吐出方向について第1の距離より小さい距離だけ離隔した位置に配置される。また、洗浄液吐出口52は、吐出口2621の列設方向と直交する方向について吐出口2621から第2の距離だけ離隔した位置に配置される。この位置関係において、洗浄液吐出口52が上方に向けて洗浄液を吐出すると、当該洗浄液は、ヘッド262の下面おける、吐出口2621の列設方向と直交する方向に第2の距離だけ離隔した位置に衝突し、横方向に広がる。これによって、ヘッド262の下面が洗浄される。なお、この構成においては、洗浄液は吐出口2621に直接には衝突しないので、洗浄液が吐出口2621に浸入しにくい。ヘッド262の下面に付着した洗浄液は、洗浄液吸引口542から吸引される。また、ヘッド262の下面から落下した純水は、回収口53から回収される。
【0079】
再び図9を参照する。捕獲部312は、不要な洗浄液、および、不要なスペーサ粒子分散液を外部に排出するための機構である。ヘッド262の吐出口2621から不要な洗浄液等を吐出する必要がある場合、各ヘッド262は、各捕獲部312と対向する位置まで移動され、当該位置において不要な洗浄液等を捕獲部312に対して吐出する。捕獲部312に捕獲された洗浄液等は、外部に排出される。これにより、吐出口2621から不要な純水やスペーサ粒子分散液が滴下する等により装置が汚染されることが防止される。
【0080】
吸引キャップ313は、ヘッド262の吐出口2621を吸引して、吐出口2621の閉塞を防止するための機構である。吸引キャップ313は、具体的には、ヘッド262の下面と当接する部分にフッ素ゴム等により形成された弾性シール部材を備える。ヘッド262の吐出口2621を吸引する場合、各ヘッド262は、各吸引キャップ313と対向する位置まで移動される。そして、吸引キャップ313は、その備える弾性シール部材をヘッド262の下面に当接させることにより密閉空間を形成し、当該密閉空間を吸引する。
【0081】
昇降機構314の構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、昇降機構314の構成を示す図である。
【0082】
昇降機構314は、複数の洗浄ユニット311を昇降させて、複数の洗浄ユニット311とインクジェットヘッド18の下面との離間距離を調整する。昇降機構314は、一対のモータ61と、これの駆動により昇降する昇降架62と、一端が昇降架62に着設され、他端が各洗浄ユニット311に着設された一対のバネ部材63とを備える。すなわち、各洗浄ユニット311は、一対のバネ部材63を介して昇降架62と連結される。この構成において、モータ61が駆動されると、昇降架62が昇降する。昇降架62が下降位置にあるときには、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54が、ヘッド262の下面から離隔した位置におかれる。また、この状態から昇降架62が上昇位置に移動されると、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54が、ヘッド262の下面と当接する位置におかれる。
【0083】
<2.処理の流れ>
<2−1.塗布処理>
塗布装置2により実行される塗布処理の流れを説明する。まず、制御部20は、ヘッド262の位置調整を行って、ステージ24の移動方向に対するスペーサ粒子分散液の吐出間隔を、処理対象となる透明基板Wに形成されたブラックマトリクスの間隔に対応させる。具体的には、制御部20は、ガントリー27の一方の両端部(ガイド部材22の延在方向と直交する方向の両端部)に配置されたリニアモータ28を駆動することによってガントリー27に支持された各ヘッドユニット26がステージ24の移動方向に対してなす角度を調整するとともに、ガントリー27の他方の両端部(ガイド部材22の延在方向に沿う方向の両端部)に配置されたリニアモータ2633を駆動することによって各ヘッドユニット26間のピッチを調整する。
【0084】
処理対象となる透明基板Wがステージ24上に位置決めされて固定されると、制御部20は、リニアモータ25を駆動して、透明基板Wを載置したステージ24をガイド部材22に沿って移動させつつ、複数のヘッドユニット26における各ヘッド262の吐出口2621のそれぞれからスペーサ粒子分散液を吐出させる。これによって、透明基板Wのブラックマトリックス上にスペーサ粒子が塗布されていく。
【0085】
<2−2.洗浄処理>
上記の塗布処理においては、微細なスペーサ粒子分散液の液滴を連続して大量に吐出するためにヘッドユニット26のヘッド262が汚染されやすく、例えばスペーサ粒子分散液の液滴が気流の影響を受けてヘッド262の下面に付着することによって、一部の吐出口2621からスペーサ粒子分散液が吐出しない(所謂、ノズル欠け)、吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴の方向が変化する(所謂、飛翔曲がり)といった現象が発生してしまう。そこで、塗布装置2においては、定期的に、あるいは、不定期に、洗浄部23によりヘッド262の洗浄処理が行われる。次に、この洗浄処理の流れを説明する。
【0086】
ヘッド262の洗浄処理を行う場合、制御部20は、まず、リニアモータ25を駆動して洗浄部23をガイド部材22に沿って移動させ、洗浄部23をガントリー27に近接する位置まで移動させる。続いて、制御部20は、第3駆動機構237を駆動して移動テーブル36をリニアガイド373に沿って移動させ、移動テーブル36を洗浄対象となるヘッドユニット26と対向する位置まで移動させる。さらに、制御部20は、第2駆動機構を駆動して回転テーブル35を回動させ、洗浄ボックス31における洗浄ユニット311の列設方向を、洗浄対象となるヘッドユニット26におけるヘッド262の吐出口2621の列設方向と一致させる。
【0087】
続いて、制御部20は、昇降機構314を制御して、複数の洗浄ユニット311を同期して上昇させ、洗浄ユニット311の当接ブロック54の一対の当接部541をヘッド262の下面に当接させる。
【0088】
続いて、制御部20は、洗浄液吐出口52から上方に向けて洗浄液を吐出させる。吐出された洗浄液は、ヘッド262の下面(具体的には、ヘッド262の下面における、吐出口2621の列設方向と直交する方向に第2の距離だけ離隔した位置)に衝突し、これによって、ヘッド262の下面が洗浄される。このとき、ヘッド262の下面に付着した洗浄液は、洗浄液吸引口542から吸引される。また、ヘッド262の下面から落下した純水は、回収口53から回収される。
【0089】
洗浄液吐出口52から洗浄液を吐出させる一方で、制御部20は、第1駆動機構33を駆動して洗浄ボックス31を吐出口2621の列設方向に沿って移動させる。すなわち、複数の洗浄ユニット311を一括して、吐出口2621の列設方向に沿って移動させる。これによって、吐出口2621の配設領域の全体が順に洗浄されていく。洗浄ユニット311が吐出口2621の列設方向のサイズに相当する距離だけ移動すると、ヘッド262の洗浄が終了する。
【0090】
なお、上記の一連の洗浄動作と同様に、吸引キャップ313による吐出口2621の吸引動作、および、捕獲部312による排出動作が適宜実行される。また、吐出口2621が閉鎖した場合等においては、超音波洗浄ユニット32による洗浄が実行される。
【0091】
<3.効果>
移動装置1を適用した塗布装置2においても、移動装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、塗布装置2においては、基台21と洗浄部23とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、洗浄部23が基台21とは異なる度合いで膨張するため、洗浄部23から一対のガイド部材22に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。塗布装置2においては、一方のガイド部材22aと洗浄部23との間に板バネ141が配置されており、ガイド部材22の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネ141の変形により吸収される。したがって、ガイド部材22の変形が抑制される。また、基台21の変形も抑制される。ガイド部材22、および、基台21の変形が抑制されることによって、塗布処理における精度が担保される。
【0092】
特に、塗布装置2においては、基台21とステージ24は、熱変化で変形しにくい石材で形成されるので、スペーサ粒子分散液の塗布精度を常に良好に維持することができる。一方で、塗布精度に直接的な影響を与えない洗浄部23は、石材よりも軽量かつ安価なアルミニウムで形成されるので、装置の製造コストを抑えることができるとともに、洗浄部23の搬送速度を上げて装置の処理効率を向上させることができる。
【0093】
<III.その他の実施の形態>
上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141が一体に形成された2個の平行板バネ部40を備える構成としたが、板バネ141は必ずしも2個の平行板バネ部40を備えなくともよい。図12には、平行板バネ部を1個備える板バネ171を備える支持構造17の構成が例示されている。
【0094】
支持構造17が備える板バネ171は、2個のブロック部71,71と、これらを連結する一対の薄板部72とを備える。各ブロック部71,71には、複数個(好ましくは、3個以上)の貫通孔が形成される。そして、一方のブロック部71の各貫通孔にそれぞれ挿通されたネジ105がガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング(図示省略)に固定される、また、他方のブロック部71の各貫通孔にそれぞれ挿通されたネジ106が移動体13の底面に固定される。薄板部72の構成は、板バネ141が備える薄板部43の構成と同様である。
【0095】
この構成に係る支持構造17においても、ガイド部材12の変形が抑制される。すなわち、移動体13から一対のガイド部材12に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置された板バネ171が変形する(具体的には、一方のブロック部71に対して他方のブロック部71が外側(あるいは、内側)にずれるように変形する。また、薄板部72は連結方向と交差する方向に撓むように変形する)ことにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材12に対して直接にかかることがないので、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0096】
また、上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141は、中央ブロック部41においてリニアガイドベアリング121に固定される構成とし、各側方ブロック部42において移動体13に固定される構成としたが、逆の構成であってもよい。すなわち、板バネ141は、中央ブロック部41において移動体13に固定される構成とし、各側方ブロック部42においてリニアガイドベアリング121に固定される構成としてもよい。この場合、中央ブロック部41に形成された複数の貫通孔411のそれぞれに下側から挿通されたネジで板バネ141を移動体13の底面に固定するとともに、側方ブロック部42に形成された複数の貫通孔421のそれぞれに上側から挿通されたネジで板バネ141をガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に固定すればよい。
【0097】
また、上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141は、その薄板部43の両端にくびれ部431が形成されていたが、くびれ部431は必ずしも形成されなくともよい。くびれ部431を形成しない場合、例えば、薄板部43の延在方向についての長さを長くすることによって、板バネ141をX方向について撓みやすくすることができる。ただし、この場合、板バネ141の全体のサイズが大きくなるために、板バネ141が重量化してしまうという難点がある。したがって、板バネ141の重量化を避けたい場合は、くびれ部431を形成する構成を採用する方が好ましい。
【0098】
また、くびれ部431は、各薄板部43の両端ではなく一端のみに形成されてもよい。また、くびれ部431は、板バネ141が備える複数の薄板部43のうちの特定の薄板部43だけに形成されてもよい。
【0099】
また、上記の実施の形態においては、支持構造14は、一対のガイド部材12のうちの一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置される板バネ141と、他方のガイド部材12bと移動体13との間に配置されるスペーサブロック142とを備える構成としたが、スペーサブロック142に代えて板バネ141を備える構成としてもよい。すなわち、各ガイド部材12a,12bと、移動体13との間に、板バネ141を配置する構成としてもよい。
【0100】
また、上記の実施の形態においては、移動装置1は、一対のガイド部材12が一組配設される構成としたが、一対のガイド部材が二組以上配設される構成であってもよい。図13には、一対のガイド部材を二組備える移動装置8の構成が例示されている。
【0101】
移動装置8は、基台81と、基台81上に設置された4本のガイド部材82a〜82dとを備える。また、4本のガイド部材82a〜82dに沿って移動可能に構成された移動体83と、移動体83とガイド部材82a〜82dとの間に設けられた支持構造84とを備える。ここでは、基台81と移動体83とが熱膨張率の異なる材料で形成されてもよい。
【0102】
支持構造84は、4本のガイド部材82a〜82dのうちの一のガイド部材82d(より具体的には、ガイド部材82dに設置されたリニアガイドベアリング)と移動体83との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック842と、他の3本のガイド部材82a〜82cのそれぞれ(より具体的には、3本のガイド部材82a,82b,82cのそれぞれに配置されたリニアガイドベアリング)と移動体83との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)の板バネ841を備える。板バネ841の構成は、上記の実施の形態に係る板バネ141と同様である。
【0103】
上記の移動装置8においても、上記の実施の形態に係る移動装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、移動体83からガイド部材82a〜82dに対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材82a,82b、82cと移動体83との間に配置された板バネ871が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材82a〜82dの離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材82a〜82dに対して直接にかかることがないので、ガイド部材82a〜82dの変形が抑制される。
【0104】
また、上記においては、移動装置1を適用した装置の具体例として塗布装置2を示した。上記に説明した塗布装置2においては、ステージ24、ガイド部材22、ヘッドユニット26、ガントリー27等は石材を用いて形成され、洗浄部23はアルミニウムを用いて形成されるものとしたが、各部を形成する材料はこれらに限らない。
【0105】
また、上記においては、移動装置1を適用した装置の具体例として塗布装置2を示したが、移動装置1は、塗布装置2以外の装置にも適用可能である。図14には、移動装置1を適用した別の装置の構成例である処理装置9が模式的に示されている。
【0106】
処理装置9は、基台91と、基台91上に設置された一対のガイド部材92とを備える。また、一対のガイド部材92に沿って移動可能に構成されたステージ93と、ステージ93とガイド部材92との間に設けられた支持構造94とを備える。支持構造94の構成は、上記の実施の形態に係る支持構造14と同様である。すなわち、支持構造94は、一対のガイド部材92のうちの一方のガイド部材92aとステージ93との間に配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材92bとステージ93との間に配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。処理装置9においては、上述した移動装置1の基台11は「基台91」に相当し、ガイド部材12は「ガイド部材92」に相当し、移動体13は「ステージ93」に相当する。
【0107】
処理装置9においては、基台91とステージ93とは互いに熱膨張率の異なる材料でそれぞれ形成される。
【0108】
処理装置9は、さらに、ステージ93上に載置された対象物90に対して光・液体等を供給することによって、対象物90に対する処理を行う処理部95を備える。処理装置9においては、対象物90を載置したステージ93をガイド部材92に沿って移動させつつ、処理部95から対象物90に対して光・液体等を供給させることによって、対象物90に対する処理が実行される。
【0109】
処理装置9においても、上記の実施の形態に係る塗布装置2と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、ステージ93から一対のガイド部材92に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材92aとステージ93との間に配置された板バネ141が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材92の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材92に対して直接にかかることがないので、ガイド部材92の変形が抑制される。
【0110】
なお、上記に例示した処理装置9の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定された露光処理部から、ステージ上の基板に対して光を照射して、基板に対する露光処理を行う露光装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「露光処理部」に相当する。
【0111】
また、上記に例示した処理装置9の別の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定されたノズルユニットから、ステージ上の基板に対して処理液を吐出して、基板に対する塗布処理を行う塗布処理装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「ノズルユニット」に相当する。
【0112】
また、上記に例示した処理装置9の別の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定されたノズルユニットから、ステージ上の基板に対して洗浄液を吐出して、基板に対する洗浄処理を行う洗浄処理装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「ノズルユニット」に相当する。
【0113】
また、上記に示した処理装置9において、処理部95が、基台91とは熱膨張率の異なる材料で形成されるとともに、一対のガイド部材92に沿って移動可能に構成されてもよい。この場合、処理部95とガイド部材92との間にも支持構造94を設ける。この構成に係る処理装置においては、対象物90を載置したステージ93を基台91上に固定して(あるいは、対象物90を載置したステージ93をガイド部材92に沿って移動させつつ)、処理部95をガイド部材92に沿って移動させつつ対象物90に対して光・液体等を供給させることによって、対象物90に対する処理が実行される。
【0114】
この構成に係る処理装置においても、上記の実施の形態に係る塗布装置2と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、処理部95から一対のガイド部材92に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材92aと処理部95との間に配置された板バネ141が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材92の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材92に対して直接にかかることがないので、ガイド部材92の変形が抑制される。
【0115】
なお、上記に例示した処理装置の具体例として、処理液を吐出するノズル(例えば、スリットノズル)を備えるノズルユニットを処理対象となる基板を載置したステージに対して移動させつつ、ノズルユニットから、ステージ上の基板に対して処理液を吐出して、基板に対する塗布処理を行う塗布処理装置が挙げられる。
【0116】
また、上記に例示した処理装置の別の具体例として、光源から対象物に対して光を照射し、その反射光に基づいて異常等を検出する検査部を備える検査ユニットを、検査対象となる基板を載置したステージに対して移動させつつ、検査ユニットから、ステージ上の基板に対して光を照射して、基板の検査を行う検査装置が挙げられる。
【実施例1】
【0117】
上記の実施の形態に係る移動装置1を具体的に示した実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0118】
<1.板バネ141>
実施例1に係る移動装置1が備える板バネ141の寸法について、図15を参照しながら説明する。図15は、板バネ141の平面図と側面図である。図15には、説明の便宜上、XYZ座標系が付与されている。ただし、板バネ141の寸法は、次に例示するものに限られるものではない。
【0119】
以下の説明においては、板バネ141が備える3個のブロック部42,41,42の配列方向(Y方向)を、板バネ141の幅方向とよぶ。また、各ブロック部41,42の延在方向(X方向)を、板バネ141の奥行き方向とよぶ。また、これらと直交する方向(Z方向)を、板バネ141の厚み方向とよぶ。
【0120】
板バネ141は、幅D1が195mm(ミリメートル)、奥行きD2が86mm、厚みD3が30mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う各側方ブロック部42の長さD4はいずれも20mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う中央ブロック部41の長さD5は85mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う各薄板部43の長さD6は35mmである。さらに、板バネ141の奥行き方向に沿う各薄板部43の長さD7は16mmである。
【0121】
また、中央ブロック部41に形成される4個の貫通孔411のそれぞれは、板バネ141の中心Pから、X方向に30mm(D11)、Y方向に30mm(D12)だけ離間した位置に中心がくるように形成される。また、貫通孔411の直径Φ11は8.5mmである。
【0122】
また、各側方ブロック部42にそれぞれ形成される2個の貫通孔421のそれぞれは、板バネ141の中心Pから、X方向に30mm(D21)、Y方向に87.5mm(D22)だけ離間した位置に中心がくるように形成される。また、貫通孔421の直径Φ12は8.5mmである。
【0123】
また、薄板部43のY方向に沿う一対の面のそれぞれには、断面が半円形状の柱状の切り欠き430が2個形成される。2個の切り欠き430の一方は、半円の中心が側方ブロック部42における薄板部43の連結面から6mm(D31)離間した位置に形成される。また、他方の切り欠き430は、半円の中心が中央ブロック部41における薄板部43の連結面から6mm(D32)離間した位置に形成される。また、半円の直径Φ13は12mmとされる。
【0124】
<2.撓みやすさ>
実施例1に係る板バネ141の撓みやすさについて説明する。図16には、実施例1に係る板バネ141を、中央ブロック部41に対して、各側方ブロック部42がX方向に変位幅R(μm)だけずれるように変形した場合に、板バネ141の薄板部43に生じる応力T(MPa)の測定結果が示されている。ここに示されるように、変位幅Rが5.4(μm)の場合の応力Tは10.5(MPa)となる。また、変位幅Rが5.4(μm)の際のX方向についての横加重は400(N)であった。
【0125】
実施例1に係る板バネ141は、鋼により構成された場合、その強度は約500(MPa)となる。したがって、この場合、板バネ141で許容される最大変位幅Rmaxは、(式1)で与えられる。ただし、ここでは安全率を「3」としている。
【0126】
Rmax=500/3/10.5×5.4≒86(μm) ・・・・(式1)
また、板バネ141のX方向についての剛性Hは、(式2)で与えられる。
【0127】
H=400/5.4=74(N/μm) ・・・・(式2)
いま、移動体13がアルミニウム(熱膨張係数24μm/(m・℃))を用いて形成され、基台11が斑糲岩(熱膨張係数6μm/(m・℃))を用いて形成されているとする。また、一対のガイド部材12間の離間距離が1.6mであるとする。
【0128】
ここで、ガイド部材12aと移動体13との間に板バネ141が配置されていないとした場合に、移動装置1に温度変化が生じると、移動体13と基台11との熱膨張率の差に起因してガイド部材12に歪みが生じうる。移動装置1に例えば±3℃の温度変化が生じうると想定すると、板バネ141が配置されていないとした場合に、ガイド部材12に生じうる最大歪み幅hは、(式3)で与えられる値となる。
【0129】
h=(24−6)×1.6×3=86.4(μm) ・・・・(式3)
一方、上述したとおり、板バネ141においては、最大で86(μm)の変形が許容される。すなわち、最大で86(μm)の歪みを吸収できる。つまり、ガイド部材12と移動体13との間に板バネ141を配置しておけば、±3℃の温度変化が生じたとしても、ガイド部材12に生じうる歪みのほぼ全てが板バネ141において吸収され、ガイド部材12の変形が抑制されることがわかる。
【0130】
また、上記の例において、ガイド部材12の剛性は約370(N/μm)である。上述したとおり、この実施例に係る板バネ141の剛性Hは74(N/μm)であり、ガイド部材12の合成よりも十分に小さい。したがって、例えば、想定外の温度変化により板バネ141において移動体13の膨張幅を吸収できなくなってしまった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネ141が破壊される。これによって、ガイド部材12の破壊という最悪の事態を回避できる。
【0131】
一方、板バネ141の剛性Hは、ガイド部材12の剛性の1/5となっている。ガイド部材12の剛性の1/5以上の剛性を備えれば、板バネ141は、リニアガイドとして必要な最低限の剛性を備えていると判断することができる。すなわち、移動体13の安定した搬送が担保される。
【符号の説明】
【0132】
1 移動装置
11,21 基台
12,22 ガイド部材
13 移動体
14 支持構造
141 板バネ
41 中央ブロック部
42 側方ブロック部
43 薄板部
2 塗布装置
23 洗浄部
【技術分野】
【0001】
この発明は、基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる移動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる機構は、各種の装置に搭載されている。当該機構を搭載した装置の一例として、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、この類の塗布装置が開示されている。ここでは、基台(「基台14」)に設置された一対のガイド部材(「一対のガイド部材16」)に沿って、2種類の移動体(透明基板を支持する「テーブル11」、および、スペーサ粒子を塗布するインクジェットヘッドを洗浄する「洗浄部22」)が移動される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−210770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記に例示した類の塗布装置においては、塗布処理の精度を高精度に保つべく、塗布精度に影響を及ぼす構成(基台、ガイド部材、テーブル等)は、熱による変形等が生じにくい石材等を用いて形成される。これに対し、洗浄部は、塗布処理の精度に直接的に関係する機能部ではないので、塗布精度の観点からみれば石材を用いて形成される必要はない。基台等を形成する材料として好ましいとされる石材は、比較的重く、また、比較的高価な部材であるので、洗浄部を別の部材(石材よりも軽く、また、比較的安価な材料である、アルミニウム等)を用いて形成したいという要求がある。
【0006】
しかしながら、基台と、これに設置されたガイド部材に沿って移動される移動体(例えば、洗浄部)とが、熱膨張率の異なる材料で形成された場合、温度環境が変化すると、移動体が基台とは異なる度合いで膨張するために、移動体から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がかかり、その結果、ガイド部材、基台等の変形(例えば、ガイド部材の歪み)が生じるおそれがある。塗布装置においては、ガイド部材等の変形は塗布精度に悪影響を及ぼすため非常に好ましくない。このような事情があるため、従来においては、洗浄部も基台と同じ材料を用いて形成せざるを得なかった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、基台に設置されたガイド部材に沿って移動される移動体が、基台を形成する材料と熱膨張率が異なる材料で形成されていても、温度環境の変化に伴うガイド部材の変形を抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、第1の材料により形成された基台と、前記基台上に設置された一対のガイド部材と、前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な移動体と、前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記移動体との間に配置された板バネと、を備え、前記板バネが、前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動装置であって、前記板バネが、前記ガイド部材の延在方向について、前記第2のブロック部を挟んで前記第1のブロック部と反対側に前記第2のブロック部から離間した位置に配置され、前記移動体に対して固定された第3のブロック部と、前記第2のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、をさらに備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の移動装置であって、前記板バネが、前記ガイド部材の延在方向について、前記第1のブロック部を挟んで前記第2のブロック部と反対側に前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記摺動部材に対して固定された第3のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置であって、前記板バネの剛性が、前記ガイド部材の剛性よりも小さく、かつ、前記ガイド部材の剛性の5分の1以上である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の移動装置であって、前記薄板部が、前記連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部、を備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、スペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を基板に塗布する塗布装置であって、基台と、前記基台上に設置された一対のガイド部材と、前記一対のガイド部材に沿って移動可能なステージと、前記ステージに載置された基板に対して、前記スペーサ粒子分散液を、インクジェット方式により吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを洗浄する洗浄ユニットを備え、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な洗浄部と、前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記洗浄部との間に配置された板バネと、を備え、前記板バネが、前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、を備え、前記基台と前記ステージとが第1の材料で形成され、前記洗浄部が前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成される。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の塗布装置であって、前記第1の材料が石材であり、前記第2の材料がアルミニウムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明においては、基台と移動体とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、移動体が基台とは異なる度合いで膨張するため、移動体から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。この発明においては、基台に設置された一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と移動体との間に板バネが配置されており、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネの変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材に対して直接にかかることがないので、ガイド部材の変形が抑制される。また、その結果、基台の変形も抑制される。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、板バネが、ガイド部材の延在方向に沿って配列された3個のブロック部と、隣接するブロック部を連結する薄板部とを備え、両側のブロック部が移動体に、中央のブロック部が摺動部材に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が板バネにかかった場合に、板バネは中央のブロック部を中心としてガイド部材と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、板バネが、ガイド部材の延在方向に沿って配列された3個のブロック部と、隣接するブロック部を連結する薄板部とを備え、両側のブロック部が摺動部材に、中央のブロック部が移動体に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が板バネにかかった場合に、板バネは中央のブロック部を中心としてガイド部材と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。
【0018】
請求項4に記載の発明によると、板バネの剛性がガイド部材の剛性よりも小さいので、移動体から板バネに対してかかる、一対のガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材よりも先に板バネが破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材の破損を回避できる。また一方で、板バネの剛性が、ガイド部材の剛性の5分の1以上であるので、移動体を安定的に搬送できる。
【0019】
請求項5に記載の発明においては、板バネが備える薄板部が、連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部を備える。くびれ部が形成されることによって、薄板部が連結方向と交差する方向について撓みやすくなる。
【0020】
請求項6に記載の発明においては、基台と洗浄部とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、洗浄部が基台とは異なる度合いで膨張するため、洗浄部から一対のガイド部材に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。この発明においては、基台に設置された一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と洗浄部との間に板バネが配置されており、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネの変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材に対して直接にかかることがないので、ガイド部材の変形が抑制される。また、その結果、基台の変形も抑制される。ガイド部材、および、基台の変形が抑制されることによって、塗布処理における精度が担保される。
【0021】
請求項7に記載の発明によると、基台とステージとは、熱変化で変形しにくい石材で形成されるので、スペーサ粒子分散液の塗布精度を常に良好に維持することができる。一方で、塗布精度に直接的な影響を与えない洗浄部は、石材よりも軽量かつ安価なアルミニウムで形成されるので、装置の製造コストを抑えることができるとともに、洗浄部の搬送速度を上げて装置の処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】移動装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】支持構造を示す平面図である。
【図3】支持構造を示す側面図である。
【図4】板バネの斜視図である。
【図5】温度変化が生じた場合の支持構造の様子を示す平面図である。
【図6】塗布装置の構成を示す斜視図である。
【図7】ヘッドユニットをその下面から見た斜視図である。
【図8】ヘッドユニット駆動機構を示す斜視図である。
【図9】洗浄部の構成を示す斜視図である。
【図10】洗浄ユニットの構成を示す図である。
【図11】昇降機構の構成を示す図である。
【図12】その他の実施の形態に係る支持構造を示す平面図である。
【図13】その他の実施の形態に係る支持構造を示す平面図である。
【図14】移動装置を適用した装置の別の構成例を模式的に示す図である。
【図15】実施例に係る板バネを示す平面図である。
【図16】実施例に係る板バネに生じる応力の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<I.移動装置1>
<1.全体構成>
この発明の実施の形態に係る移動装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、移動装置1の構成を模式的に示す図である。なお、図1および以下に参照する各図には、説明の便宜上、XYZ座標系が適宜付与されている。
【0024】
移動装置1は、基台に設置されたガイド部材に沿って移動体を移動させる装置であり、後に説明するように、例えば、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置に適用される。
【0025】
移動装置1は、基台11と、基台11上に設置された一対のガイド部材12とを備える。一対のガイド部材12は、互いに平行に設置される。また、移動装置1は、一対のガイド部材12に沿って移動可能な移動体13を備える。具体的には、一対のガイド部材12のそれぞれには、ガイド部材12に摺動しながら当該ガイド部材12に沿って移動可能な摺動部材(例えば、リニアガイドベアリング)121(図3)が設置されており、移動体13は、当該リニアガイドベアリング121、および、後に説明する支持構造14を介して一対のガイド部材12上に支持される(図3)。移動体13には、例えば、リニアモータ等の駆動部が接続されており、この駆動部の駆動をうけることにより、移動体13は一対のガイド部材12に案内された状態でガイド部材12の延在方向に沿って滑らかに移動する。
【0026】
移動装置1においては、基台11と移動体13とは互いに熱膨張率の異なる材料でそれぞれ形成されている。
【0027】
<2.支持構造14>
<2−1.全体構成>
移動装置1が備える支持構造14の構成について、図1に加え、図2、図3を参照しながら説明する。図2は、支持構造14を示す平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、移動体13を透視状態で示している。図3は、支持構造14を図2の矢印Kから見た側面図である。
【0028】
支持構造14は、一対のガイド部材12のうちの一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材12bと移動体13との間に配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。
【0029】
各板バネ141は、下面側において、ガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に対して固定(例えばネジ101により固定)されるとともに、上面側において、移動体13に対して固定(例えばネジ102により固定)される。同様に、各スペーサブロック142も、下面側において、ガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に対して固定(例えばネジ103により固定)されるとともに、上面側において、移動体13に対して固定(例えばネジ104により固定)される。
【0030】
<2−2.板バネ141>
板バネ141の構成について、図4を参照しながらより具体的に説明する。図4は、板バネ141の斜視図である。
【0031】
板バネ141は、例えば鋼により形成される。板バネ141は、3個のブロック部(すなわち、1個の中央ブロック部41と、中央ブロック部41を中心に挟んで両側に配置された2個の側方ブロック部42)を備える。また、板バネ141は、4個の薄板部43を2組備える。4個の薄板部43のうちの2個の薄板部43は、対になって、一方の側方ブロック部42と中央ブロック部41とを連結する。また、残りの2個の薄板部43は、対になって、他方の側方ブロック部42と中央ブロック部41とを連結する。3個のブロック部42,41,42の配列方向、すなわち、薄板部43がブロック部41,42を連結する方向(Y方向)を、以下「連結方向」という。
【0032】
この構成においては、中央ブロック部41と一方の側方ブロック部42と、これらを連結する一対の薄板部43とによって、第1の平行板バネ部40が形成され、中央ブロック部41と他方の側方ブロック部42と、これらを連結する一対の薄板部43とによって、第2の平行板バネ部40が形成される。つまり、板バネ141は、一方のブロック部(中央ブロック部41)を共用することにより一体に形成された2個の平行板バネ部40を備える。
【0033】
各板バネ141は、薄板部43が各ブロック部41,42を連結する連結方向(Y方向)が、ガイド部材12の延在方向に沿うように配置される(図2参照)。すなわち、各板バネ141は、各ブロック部41,42が、ガイド部材12の延在方向について互いに離間するような姿勢で配置される。
【0034】
中央ブロック部41には、複数個(好ましくは、3個以上であり、この実施の形態においては4個)の貫通孔411が形成されており、この貫通孔411のそれぞれに上側から挿通されたネジ101がガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に固定される(図3参照)。つまり、板バネ141は、中央ブロック部41において、リニアガイドベアリング121に対して計4点にて固定されることになる。
【0035】
各側方ブロック部42にも、複数個(好ましくは、2個以上であり、この実施の形態においては2個)の貫通孔421が形成されており、この貫通孔421のそれぞれに下側から挿通されたネジ102が移動体13の底面に固定される(図3参照)。つまり、板バネ141は、両側に配置された一対の側方ブロック部42において、移動体13に対して計4点にて固定されることになる。
【0036】
薄板部43は、上述したとおり、中央ブロック部41と側方ブロック部42とを連結する部材であり、連結方向と交差する方向に可撓性を有する。具体的には、各薄板部43は、薄板直方体形状の部材であり、肉厚が最も薄い方向を、連結方向と直交する方向(X方向)に沿わせて配置されることにより、X方向について可撓に形成されている。
【0037】
薄板部43の、連結方向(Y方向)に沿う両端部には、好ましくは、X方向についての肉厚が局所的に薄い部分(Z方向から見て細く狭まった部分であり、以下「くびれ部431」という)が形成される。くびれ部431は、例えば、薄板部43の+X方向側の壁面にZ方向に沿う柱状の切り欠き430を形成するとともに、−X方向側の壁面にも、当該切り欠き430と対向する位置に、これを同じサイズの切り欠き430を形成することにより得ることができる。くびれ部431が形成されることによって、薄板部43を、X方向について撓みやすくすることができる。なお、切り欠き430のサイズが大きくなるほど、板バネ141はX方向について撓みやすくなる(すなわち、板バネ141のX方向についての剛性が小さくなる)。したがって、切り欠き430のサイズを調整することによって、薄板部43のX方向についての撓みやすさ(つまりは、X方向についての薄板部43の剛性)を調整することができる。
【0038】
ただし、切り欠き430の形状は、断面が半円形状の柱状であることが特に好ましい。切り欠き430の形状を断面が半円形状の柱状とすれば、薄板部43がX方向について撓んだ際に、薄板部43に生じる応力が適切に分散され、板バネ141が破損しにくくなる。
【0039】
また、板バネ141の剛性は、好ましくは、ガイド部材12の剛性よりも小さく、かつ、ガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされる。ただし、板バネ141の剛性は、各種の態様で調整することができる。例えば、板バネ141のX方向の剛性は、上述したとおり、切り欠き430のサイズによって調整することができる。また、板バネ141のY方向の剛性は、例えば、ブロック部41,42の断面積によって調整することができる。また、板バネ141のZ方向の剛性は、例えば、板バネ141のZ方向のサイズ(厚み)によって調整することができる。また、板バネ141の形成材料も、その剛性に影響する。
【0040】
板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性よりも小さく形成されることによって、ガイド部材12の破損を回避できる。すなわち、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性よりも小さいと、移動体13から板バネ141に対してかかる、一対のガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネが破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材12の破損を回避できる。また、板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされることによって、板バネ141に移動体を搬送するためのリニアガイドとして必要な最低限の剛性が担保されることになる。すなわち、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性の5分の1(1/5))以上とされることによって、移動体13をガイド部材12に沿って搬送する際の揺れ(移動体13の進行方向についての左右の揺れ(ローリング)、前後の揺れ、および、上下の揺れ)の発生が抑制され、移動体13を安定的に搬送できる。
【0041】
また、板バネ141は、好ましくは、中央ブロック部41および薄板部43の各上面(移動体13と対向する側の面)が、側方ブロック部42の上面よりも僅かに低い位置にくるように形成される。このように形成しておけば、板バネ141を移動体13に固定した際に、移動体13の底面と中央ブロック部41の上面、および、移動体13の底面と薄板部43の上面との間に僅かな隙間が形成されることになる(図3参照)。この構成によると、当接面による摩擦が生じないため、後述する板バネ141の変形が妨げられにくくなる。特に、当該隙間に摺動部材としてのベアリング等を設けることも好ましい。
【0042】
<2−3.板バネ141の機能>
支持構造14における板バネ141の機能について、図5を参照しながら説明する。図5は、温度変化が生じた場合の支持構造14の様子を示す平面図である。図5においては、温度変化前の移動体13が一点鎖線で、温度変化後の移動体13が実線で、それぞれ示されている。なお、図5においても、説明の便宜上、移動体13を透視状態で示している。
【0043】
上述したとおり、移動体13と基台11とは、熱膨張率が異なる材料を用いてそれぞれ形成されている。例えば、移動体13が基台11よりも熱膨張率が大きい材料を用いて形成されている場合、移動装置1の温度が上昇すると、移動体13が基台11よりも大きな比率で膨張するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を広げる向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が外側(一対のガイド部材の対向方向と逆の方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を広げようとする力Fは、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力Fがガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0044】
またこの場合において、移動装置1の温度が下降すると、移動体13が基台11よりも大きな比率で収縮するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を狭める向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が内側(一対のガイド部材の対向方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を狭めようとする力は、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力がガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0045】
なお、移動体13が基台11よりも熱膨張率が小さい材料により形成されている場合もこれと同様である。すなわちこの場合、移動装置1の温度が上昇すると、基台11が移動体13よりも大きな比率で膨張するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を狭める向きの力が発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が内側(一対のガイド部材の対向方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を狭めようとする力は、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力がガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0046】
またこの場合において、移動装置1の温度が下降すると、基台11が移動体13よりも大きな比率で収縮するため、移動体13からガイド部材12に対して、ガイド部材12の離間幅を広げる向きの力Fが発生する。すると、移動体13と一方のガイド部材12aとの間に配置された板バネ141が変形する。具体的には、中央ブロック部41に対して側方ブロック部42が外側(一対のガイド部材の対向方向と逆の方向)にずれるように変形する。このとき、薄板部43は連結方向と交差する方向に撓むように変形する。つまり、この構成においては、ガイド部材12の離間幅を広げようとする力Fは、板バネ141の変形により吸収されることになる。したがって、当該力Fがガイド部材12に対して直接にかかることがなく、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0047】
<3.効果>
上記の実施の形態に係る移動装置1においては、基台11と移動体13とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、移動体13が基台11とは異なる度合いで膨張するため、移動体13から一対のガイド部材12に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。移動装置1においては、一方のガイド部材12aと移動体13との間に板バネ141が配置されており、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネ141の変形により吸収される。この構成によると、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材12に対して直接にかかることがないので、ガイド部材12の変形が抑制される。また、その結果、基台11の変形も抑制される。
【0048】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141が、ガイド部材12の延在方向に沿って配列された3個のブロック部42,41,42と、隣接するブロック部を連結する薄板部43とを備え、両側のブロック部(側方ブロック部42)が移動体に、中央のブロック部(中央ブロック部41)が摺動部材であるリニアガイドベアリング121に、それぞれ固定される。この構成によると、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が生じた場合に、板バネ141は中央ブロック部41を中心としてガイド部材12と直交する軸に対してほぼ対称に変形する。したがって、移動体、および、摺動部材に対する板バネの固定が緩みにくい。より具体的には、ネジ101,102が緩みにくい。
【0049】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141の剛性がガイド部材12の剛性よりも小さいので、移動体13から板バネ141に対してかかる、一対のガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が、想定外に大きくなった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネ141が破壊されることになる。つまり、この構成によると、ガイド部材12の破損を回避できる。また一方で、板バネ141の剛性が、ガイド部材12の剛性の5分の1以上であるので、移動体13を安定的に搬送できる。
【0050】
また、上記の実施の形態においては、板バネ141が、その備える薄板部43にくびれ部431が形成されることによって、薄板部43を、連結方向と交差する方向について撓みやすいものとされている。この構成によると、板バネ141に適切な剛性を与えつつ、特定の方向(具体的には、ブロック部41,42の配列方向と交差する方向)について適切な可撓性を付与することができる。例えば、板バネ141の剛性を高めるためには、板バネ141の厚みを比較的厚く形成する、板バネ141を比較的剛性の高い材料により形成する、薄板部43の延在方向についての長さを短くする、といった方法がある。これらを適用して板バネ141に必要な剛性を付与した場合、そのままでは、板バネ141は、ブロック部41,42の配列方向と交差する方向について変形しにくいものとなるところ、薄板部43にくびれ部431を形成することによって、板バネ141の剛性を大きく損なうことなく、板バネ141を当該方向についての適切な可撓性を付与することができる。
【0051】
<II.塗布装置2>
移動装置1を適用した装置の構成例として、例えば、透明基板に、スペーサ粒子を分散させた液体(スペーサ粒子分散液)を、インクジェット方式により塗布する塗布装置が挙げられる。この塗布装置は、液晶表示装置の製造におけるギャップ形成工程に用いられる。ギャップ形成工程とは、液晶の封入工程等の前工程として行われる工程であり、透明基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成する工程である。ギャップ形成工程は、具体的には、例えば次のように行われる。まず、塗布装置2が、透明基板に構成されたブラックマトリックス(基板の表面に構成された画素領域(レッドのカラーフィルターの領域、グリーンのカラーフィルターの領域、および、ブルーのカラーフィルターの領域)を区画するブラックマトリックス)内の各目標領域に向けて、スペーサ粒子分散液を吐出する。スペーサ粒子分散液が塗布されると、続いて、透明基板は、ホットプレート等を用いて加熱される。すると、スペーサ粒子分散液から揮発成分が蒸発し、これによって、表面張力により各目標領域においてスペーサ粒子同士が互いに集まって接触する。さらに加熱が進むと、各スペーサ粒子が焼成されて互いに固着するとともに、透明基板Wの表面に対しても強い力で固着する。これによって、目標領域にスペーサ領域が形成される。すなわち、透明基板Wの表面に、液晶層封入用のギャップが形成される。
【0052】
<1.装置構成>
<1−1.全体構成>
以下において、移動装置1を適用した塗布装置2の構成について、具体的に説明する。図6は塗布装置2の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において明らかになるように、塗布装置2においては、上述した移動装置1の基台11は「基台21」に相当し、ガイド部材12は「ガイド部材22」に相当し、移動体13は「洗浄部23」に相当する。
【0053】
塗布装置2は、基台21と、基台21上に設置された一対のガイド部材22とを備える。また、一対のガイド部材22に沿って移動可能な洗浄部23とステージ24とを備える。具体的には、一対のガイド部材22のそれぞれには、例えば、ガイド部材22に摺動しながら当該ガイド部材22に沿って移動可能な摺動部材(例えば、リニアガイドベアリング)221(図9)が設置されており、洗浄部23は、当該リニアガイドベアリング221、および、支持構造14を介して一対のガイド部材22上に支持される(図9参照)。また、ステージ24は、当該リニアガイドベアリングを介して一対のガイド部材22上に支持される。
【0054】
洗浄部23(具体的には、洗浄部23が備える支持部材38)、および、ステージ24の下方には、駆動部としてのリニアモータ25の固定子223が配置されるとともに、支持部材38の下面、および、ステージ24の下面のそれぞれには、リニアモータ25の可動子222(図9参照)が配設される。したがって、洗浄部23とステージ24とは、リニアモータ25の駆動をうけることにより、それぞれ独立に、一対のガイド部材22に案内された状態でガイド部材22の延在方向に沿って滑らかに移動する。
【0055】
ただし、洗浄部23は、後述するヘッドユニット26を洗浄する機能部である。また、ステージ24は、処理対象となる透明基板Wを載置するための部材である。
【0056】
塗布装置2は、さらに、ステージ24に載置された透明基板Wに対してスペーサ粒子分散液を吐出する複数(例えば、12個)のヘッド(インクジェットヘッド)ユニット26を備える。複数のヘッドユニット26は、ステージ24の移動方向(すなわち、ガイド部材22の延在方向)と直交する方向に沿って配列されて、基台21を跨ぐようにして配置されたガントリー27によって支持されている。
【0057】
また、塗布装置2は、基台21の両端部(ガイド部材22の延在方向と直交する方向の両端部)に配設され、ガントリー27の端部をそれぞれ支持する一対のリニアモータ28を備える。一対のリニアモータ28がそれぞれ個別に駆動されることにより、ガントリー27が、ステージ24の移動方向に対してなす角度(交差角度)が変更可能とされている。すなわち、ガントリー27に支持された各ヘッドユニット26が、ステージ24の移動方向に対してなす角度(交差角度)が変更可能とされている。
【0058】
また、塗布装置2は、基台21の一端に配置された乾燥防止部29を備える。乾燥防止部29は、ヘッドユニット26の乾燥を防止するための機能部であり、ヘッドユニット26と同数個配設される。各ヘッドユニット26は、待機時においてはこれらの乾燥防止部29のいずれかと対向する位置に配置されることによってヘッドユニット26が備える各ヘッド262の乾燥が防止される。
【0059】
また、塗布装置2は、自装置が備える各部を制御する制御部20を備える。後に詳細に説明するが、塗布装置2において透明基板Wに対する塗布処理を実行させる場合、制御部20は、リニアモータ25を駆動して透明基板Wを載置したステージ24をガイド部材22に沿って移動させつつ、複数のヘッドユニット26のそれぞれからスペーサ粒子分散液を吐出させる。また、後に詳細に説明するが、洗浄部23にヘッドユニット26の洗浄処理を実行させる場合、制御部20は、リニアモータ25を駆動して洗浄部23をガイド部材22に沿って移動させるとともに、後述する各部を制御して、洗浄部23を、複数のヘッドユニット26のうち洗浄対象となるヘッドユニット26の下方まで移動させる。当該位置において、洗浄部23は、上方に向けて洗浄液を吐出して、対象となるヘッドユニット26を洗浄する。
【0060】
透明基板Wにスペーサ粒子分散液を塗布する塗布処理においては、高い塗布精度が要求される。このため、塗布精度に影響のある機能部(具体的には、ステージ24、ガイド部材22、ヘッドユニット26、ガントリー27等)は熱により変形しにくい石材(例えば、斑糲岩)を用いて形成される。一方、塗布精度に対する影響が比較的少ない機能部である洗浄部23は、石材よりも軽量かつ安価な材料であるアルミニウムを用いて形成される。洗浄部23が石材よりも安価な部材を用いて形成されることにより、塗布装置2の製造コストが低減される。また、洗浄部23が石材よりも軽量な部材を用いて形成されることにより、洗浄部23の軽量化が実現される。洗浄部23が軽量化されると、洗浄部23をガイド部材22に沿って材移動させるための駆動部の負担を増大させることなく(すなわち、駆動部を大型化することなく)、洗浄部23の移動速度を上げることが可能となり、塗布装置2における処理効率が向上する。
【0061】
<1−2.各部の構成>
塗布装置2が備える各部の構成について、詳細に説明する。
【0062】
<1−2−1.ヘッドユニット26>
ヘッドユニット26の構成について、図7〜図8を参照しながら説明する。図7は、ヘッドユニット26をその下面から見た斜視図である。図8は、ヘッドユニット駆動機構263を示す斜視図である。なお、ガントリー27に支持された複数のヘッドユニット26のそれぞれは同じ構成を有している。以下においては、一のヘッドユニット26の構成のみを説明する。
【0063】
ヘッドユニット26の下方には、ヘッド支持板261が配設されており、各ヘッド支持板261には、複数(例えば、5個)のヘッド(インクジェットヘッド)262が配設されている。各ヘッド262には、多数の吐出口2621が一方向に列設されている。各吐出口2621からは、スペーサ粒子分散液が吐出される。
【0064】
上述したとおり、複数のヘッドユニット26を支持するガントリー27の両端部(ガイド部材22の延在方向と交差する方向の両端部)にはリニアモータ28が配置され、これらが個別に駆動されることによってガントリー27(すなわち、ガントリー27に支持された各ヘッドユニット26)がステージ24の移動方向に対してなす角度が変更可能とされている(図6参照)。つまりは、吐出口2621の列設方向がステージ24の移動方向に対してなす角度が変更可能とされている。ここで、吐出口2621の列設方向がステージ24の移動方向に対してなす角度が大きくなればなるほど、ステージ24の移動方向と直交する方向からみた吐出口2621のピッチ間隔が小さくなる。つまり、ガントリー27がステージ24の移動方向に対してなす角度を調整することによって、スペーサ粒子分散液の吐出間隔を調整することができる。
【0065】
また、各ヘッドユニット26には、これをガントリー27の延在方向(すなわち、ステージ24の移動方向と交差する方向)に沿って移動させる機構(ヘッドユニット駆動機構)263が設けられる。
【0066】
ヘッドユニット駆動機構263は、具体的には、ガントリー27の両端部(ガイド部材22の延在方向に沿う方向の両端部)に配置されたリニアガイド2631と、リニアスケール2632と、リニアモータ2633とを備える。これら各部は、その長手方向を、複数のヘッドユニット26の列設方向(ガイド部材22の延在方向と交差する方向)に沿わせて配設される。また、ヘッドユニット駆動機構263は、ヘッド支持板261の下面に配設された、リニアモータ2633の可動子(図示省略)を備える。これにより、リニアモータ263が駆動されると、ヘッド支持板261は、その両端をリニアガイド2631に案内された状態で、リニアガイド2631に沿って移動することができる。また、その移動量は、リニアスケール2632により測定される。各ヘッドユニット26が設定された移動量だけリニアガイド2631に沿って移動されることにより、ヘッドユニット26間のピッチが変更される。ヘッドユニット26間のピッチを変更することによって、ヘッド262間のピッチ、ひいては、スペーサ粒子分散液の吐出間隔を調整することができる。
【0067】
つまり、塗布装置2においては、ガントリー27がステージ24の移動方向に対してなす角度と、ヘッドユニット26間のピッチとを複合的に調整することによって、ステージ24の移動方向に対するスペーサ粒子分散液の吐出間隔を、処理対象となる透明基板Wに形成されたブラックマトリクスの間隔に対応させることができるようになっている。
【0068】
<1−2−2.洗浄部23>
<全体構成>
洗浄部23の全体の構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、洗浄部23の構成を示す斜視図である。
【0069】
洗浄部23は、洗浄ボックス31と、超音波洗浄ユニット32とを備える。洗浄ボックス31は、洗浄液をヘッド262に向けて吐出することにより、ヘッド262の洗浄を行う機能部であり、その具体的な構成については後に説明する。超音波洗浄ユニット32は、超音波振動が付与された洗浄液を貯留する超音波洗浄槽を備え、この超音波洗浄槽内にヘッド262を浸漬することにより超音波洗浄を行う。
【0070】
洗浄部23は、さらに、洗浄ボックス31の下方に配置され、洗浄ボックス31をヘッド262が備える吐出口2621の列設方向に沿って往復移動させる第1駆動機構33を備える。ただし、その往復移動距離は、吐出口2621の列設幅に相当する距離となっている。第1駆動機構33は、例えば、モータと、当該モータの駆動を受けて回転するネジと、当該ネジに螺合し、洗浄ボックス31と連結されたナット等から構成することができる。この構成においては、モータを駆動してネジを回転させることによって、ナットに固定された洗浄ボックス31を移動させることができる。また、超音波洗浄ユニット32の下方にも、これをヘッド262が備える吐出口2621の列設方向に沿って往復移動させる駆動機構34が配置される。当該駆動機構34の構成は、第1駆動機構33と同様のものとすることができる。
【0071】
洗浄部23は、さらに、洗浄ボックス31、超音波洗浄ユニット32、および、これらのそれぞれに配設された駆動機構33,34を載置する回転テーブル35と、回転テーブル35を回動させる第2駆動機構(図示省略)とを備える。第2駆動機構は、例えば、回転テーブル35の下方に固定された回動部材と、当該回動部材に連結するネジと、当該ネジを回転するモータ等から構成することができる。この構成においては、モータを駆動してネジを回転させると、回動部材がその中央部を中心として回動し、これによって、回動部材に固定された回転テーブル35が回動することになる。
【0072】
洗浄部23は、さらに、回転テーブル35と第2駆動機構とを載置する移動テーブル36と、移動テーブル36をステージ24の移動方向と直交する方向に往復移動させる第3移動機構37とを備える。第3移動機構37は、ステージ24の移動方向と直交する方向に延びる支持架371と、支持架371上に配設されたリニアモータ372および一対のリニアガイド373とを備える。この構成においては、リニアモータ372を駆動すると、移動テーブル36は、一対のリニアガイド373に沿って、ステージ24の移動方向と直交する方向に往復移動する。
【0073】
洗浄部23は、さらに、上述した各部31〜37を支持する支持部材38を備える。上述したとおり、支持部材38は、一対のガイド部材22のそれぞれに設置されたリニアガイドベアリング221、および、支持構造14を介して基台11に配設された一対のガイド部材22上に支持されている。また、支持部材38の下方には、駆動部としてのリニアモータ25の固定子223が配置されるとともに、支持部材38の下面にはリニアモータ25の可動子222が配設される。この構成においては、リニアモータ25を駆動すると、支持部材38は、一対のガイド部材22に沿って往復移動する。
【0074】
ここで、支持構造14の構成は、上述したとおりである。すなわち、支持構造14は、一対のガイド部材22のうちの一方のガイド部材22a(より具体的には、ガイド部材22aに設置されたリニアガイドベアリング221)と支持部材38との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材22b(より具体的には、ガイド部材22bに配置されたリニアガイドベアリング221)と支持部材38との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。板バネ141の構成は、上述したとおりである。
【0075】
<洗浄ボックス31>
洗浄ボックス31は、複数個(例えば、5個)の洗浄ユニット311と、洗浄ユニット311と同数個の捕獲部312と、洗浄ユニット311と同数個の吸引キャップ313と、複数の洗浄ユニット311を昇降させる昇降機構314(図11参照)とを備える。
【0076】
洗浄ユニット311の構成について、図10を参照しながら説明する。図10は、洗浄ユニット311の構成を示す図である。
【0077】
洗浄ユニット311は、基部51に形成された洗浄液吐出口52と、同じく基部51に形成された洗浄液の回収口53と、基部51上に配設された当接ブロック54とを備える。これら各部は、洗浄ボックス31の上面に形成された開口部300内に配置される。洗浄液吐出口52は、洗浄液(例えば、純水)を供給する供給管55と接続されており、供給された洗浄液を上方(鉛直上方)に向けて吐出する。また、回収口53は、回収管56と接続されており、洗浄に供された洗浄液を回収する。当接ブロック54は、一対の当接部541を有し、これらの間に洗浄液吸引口542が形成されている。
【0078】
洗浄ユニット311においてヘッド262を洗浄する場合、後述する昇降機構314の駆動を受けて、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54の一対の当接部541が、ヘッド262の下面と当接する位置におかれる。この位置においては、洗浄液吐出口52が、ヘッド262の吐出口2621から、その吐出方向について第1の距離だけ離隔するとともに、洗浄液吸引口542が、吐出口2621から、その吐出方向について第1の距離より小さい距離だけ離隔した位置に配置される。また、洗浄液吐出口52は、吐出口2621の列設方向と直交する方向について吐出口2621から第2の距離だけ離隔した位置に配置される。この位置関係において、洗浄液吐出口52が上方に向けて洗浄液を吐出すると、当該洗浄液は、ヘッド262の下面おける、吐出口2621の列設方向と直交する方向に第2の距離だけ離隔した位置に衝突し、横方向に広がる。これによって、ヘッド262の下面が洗浄される。なお、この構成においては、洗浄液は吐出口2621に直接には衝突しないので、洗浄液が吐出口2621に浸入しにくい。ヘッド262の下面に付着した洗浄液は、洗浄液吸引口542から吸引される。また、ヘッド262の下面から落下した純水は、回収口53から回収される。
【0079】
再び図9を参照する。捕獲部312は、不要な洗浄液、および、不要なスペーサ粒子分散液を外部に排出するための機構である。ヘッド262の吐出口2621から不要な洗浄液等を吐出する必要がある場合、各ヘッド262は、各捕獲部312と対向する位置まで移動され、当該位置において不要な洗浄液等を捕獲部312に対して吐出する。捕獲部312に捕獲された洗浄液等は、外部に排出される。これにより、吐出口2621から不要な純水やスペーサ粒子分散液が滴下する等により装置が汚染されることが防止される。
【0080】
吸引キャップ313は、ヘッド262の吐出口2621を吸引して、吐出口2621の閉塞を防止するための機構である。吸引キャップ313は、具体的には、ヘッド262の下面と当接する部分にフッ素ゴム等により形成された弾性シール部材を備える。ヘッド262の吐出口2621を吸引する場合、各ヘッド262は、各吸引キャップ313と対向する位置まで移動される。そして、吸引キャップ313は、その備える弾性シール部材をヘッド262の下面に当接させることにより密閉空間を形成し、当該密閉空間を吸引する。
【0081】
昇降機構314の構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、昇降機構314の構成を示す図である。
【0082】
昇降機構314は、複数の洗浄ユニット311を昇降させて、複数の洗浄ユニット311とインクジェットヘッド18の下面との離間距離を調整する。昇降機構314は、一対のモータ61と、これの駆動により昇降する昇降架62と、一端が昇降架62に着設され、他端が各洗浄ユニット311に着設された一対のバネ部材63とを備える。すなわち、各洗浄ユニット311は、一対のバネ部材63を介して昇降架62と連結される。この構成において、モータ61が駆動されると、昇降架62が昇降する。昇降架62が下降位置にあるときには、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54が、ヘッド262の下面から離隔した位置におかれる。また、この状態から昇降架62が上昇位置に移動されると、洗浄ユニット311は、その備える当接ブロック54が、ヘッド262の下面と当接する位置におかれる。
【0083】
<2.処理の流れ>
<2−1.塗布処理>
塗布装置2により実行される塗布処理の流れを説明する。まず、制御部20は、ヘッド262の位置調整を行って、ステージ24の移動方向に対するスペーサ粒子分散液の吐出間隔を、処理対象となる透明基板Wに形成されたブラックマトリクスの間隔に対応させる。具体的には、制御部20は、ガントリー27の一方の両端部(ガイド部材22の延在方向と直交する方向の両端部)に配置されたリニアモータ28を駆動することによってガントリー27に支持された各ヘッドユニット26がステージ24の移動方向に対してなす角度を調整するとともに、ガントリー27の他方の両端部(ガイド部材22の延在方向に沿う方向の両端部)に配置されたリニアモータ2633を駆動することによって各ヘッドユニット26間のピッチを調整する。
【0084】
処理対象となる透明基板Wがステージ24上に位置決めされて固定されると、制御部20は、リニアモータ25を駆動して、透明基板Wを載置したステージ24をガイド部材22に沿って移動させつつ、複数のヘッドユニット26における各ヘッド262の吐出口2621のそれぞれからスペーサ粒子分散液を吐出させる。これによって、透明基板Wのブラックマトリックス上にスペーサ粒子が塗布されていく。
【0085】
<2−2.洗浄処理>
上記の塗布処理においては、微細なスペーサ粒子分散液の液滴を連続して大量に吐出するためにヘッドユニット26のヘッド262が汚染されやすく、例えばスペーサ粒子分散液の液滴が気流の影響を受けてヘッド262の下面に付着することによって、一部の吐出口2621からスペーサ粒子分散液が吐出しない(所謂、ノズル欠け)、吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴の方向が変化する(所謂、飛翔曲がり)といった現象が発生してしまう。そこで、塗布装置2においては、定期的に、あるいは、不定期に、洗浄部23によりヘッド262の洗浄処理が行われる。次に、この洗浄処理の流れを説明する。
【0086】
ヘッド262の洗浄処理を行う場合、制御部20は、まず、リニアモータ25を駆動して洗浄部23をガイド部材22に沿って移動させ、洗浄部23をガントリー27に近接する位置まで移動させる。続いて、制御部20は、第3駆動機構237を駆動して移動テーブル36をリニアガイド373に沿って移動させ、移動テーブル36を洗浄対象となるヘッドユニット26と対向する位置まで移動させる。さらに、制御部20は、第2駆動機構を駆動して回転テーブル35を回動させ、洗浄ボックス31における洗浄ユニット311の列設方向を、洗浄対象となるヘッドユニット26におけるヘッド262の吐出口2621の列設方向と一致させる。
【0087】
続いて、制御部20は、昇降機構314を制御して、複数の洗浄ユニット311を同期して上昇させ、洗浄ユニット311の当接ブロック54の一対の当接部541をヘッド262の下面に当接させる。
【0088】
続いて、制御部20は、洗浄液吐出口52から上方に向けて洗浄液を吐出させる。吐出された洗浄液は、ヘッド262の下面(具体的には、ヘッド262の下面における、吐出口2621の列設方向と直交する方向に第2の距離だけ離隔した位置)に衝突し、これによって、ヘッド262の下面が洗浄される。このとき、ヘッド262の下面に付着した洗浄液は、洗浄液吸引口542から吸引される。また、ヘッド262の下面から落下した純水は、回収口53から回収される。
【0089】
洗浄液吐出口52から洗浄液を吐出させる一方で、制御部20は、第1駆動機構33を駆動して洗浄ボックス31を吐出口2621の列設方向に沿って移動させる。すなわち、複数の洗浄ユニット311を一括して、吐出口2621の列設方向に沿って移動させる。これによって、吐出口2621の配設領域の全体が順に洗浄されていく。洗浄ユニット311が吐出口2621の列設方向のサイズに相当する距離だけ移動すると、ヘッド262の洗浄が終了する。
【0090】
なお、上記の一連の洗浄動作と同様に、吸引キャップ313による吐出口2621の吸引動作、および、捕獲部312による排出動作が適宜実行される。また、吐出口2621が閉鎖した場合等においては、超音波洗浄ユニット32による洗浄が実行される。
【0091】
<3.効果>
移動装置1を適用した塗布装置2においても、移動装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、塗布装置2においては、基台21と洗浄部23とが熱膨張率の異なる材料で形成される。この構成においては、温度環境が変化した場合に、洗浄部23が基台21とは異なる度合いで膨張するため、洗浄部23から一対のガイド部材22に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生する。塗布装置2においては、一方のガイド部材22aと洗浄部23との間に板バネ141が配置されており、ガイド部材22の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力は、この板バネ141の変形により吸収される。したがって、ガイド部材22の変形が抑制される。また、基台21の変形も抑制される。ガイド部材22、および、基台21の変形が抑制されることによって、塗布処理における精度が担保される。
【0092】
特に、塗布装置2においては、基台21とステージ24は、熱変化で変形しにくい石材で形成されるので、スペーサ粒子分散液の塗布精度を常に良好に維持することができる。一方で、塗布精度に直接的な影響を与えない洗浄部23は、石材よりも軽量かつ安価なアルミニウムで形成されるので、装置の製造コストを抑えることができるとともに、洗浄部23の搬送速度を上げて装置の処理効率を向上させることができる。
【0093】
<III.その他の実施の形態>
上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141が一体に形成された2個の平行板バネ部40を備える構成としたが、板バネ141は必ずしも2個の平行板バネ部40を備えなくともよい。図12には、平行板バネ部を1個備える板バネ171を備える支持構造17の構成が例示されている。
【0094】
支持構造17が備える板バネ171は、2個のブロック部71,71と、これらを連結する一対の薄板部72とを備える。各ブロック部71,71には、複数個(好ましくは、3個以上)の貫通孔が形成される。そして、一方のブロック部71の各貫通孔にそれぞれ挿通されたネジ105がガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング(図示省略)に固定される、また、他方のブロック部71の各貫通孔にそれぞれ挿通されたネジ106が移動体13の底面に固定される。薄板部72の構成は、板バネ141が備える薄板部43の構成と同様である。
【0095】
この構成に係る支持構造17においても、ガイド部材12の変形が抑制される。すなわち、移動体13から一対のガイド部材12に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置された板バネ171が変形する(具体的には、一方のブロック部71に対して他方のブロック部71が外側(あるいは、内側)にずれるように変形する。また、薄板部72は連結方向と交差する方向に撓むように変形する)ことにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材12の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材12に対して直接にかかることがないので、ガイド部材12の変形が抑制される。
【0096】
また、上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141は、中央ブロック部41においてリニアガイドベアリング121に固定される構成とし、各側方ブロック部42において移動体13に固定される構成としたが、逆の構成であってもよい。すなわち、板バネ141は、中央ブロック部41において移動体13に固定される構成とし、各側方ブロック部42においてリニアガイドベアリング121に固定される構成としてもよい。この場合、中央ブロック部41に形成された複数の貫通孔411のそれぞれに下側から挿通されたネジで板バネ141を移動体13の底面に固定するとともに、側方ブロック部42に形成された複数の貫通孔421のそれぞれに上側から挿通されたネジで板バネ141をガイド部材12aに配設されたリニアガイドベアリング121に固定すればよい。
【0097】
また、上記の実施の形態に係る移動装置1においては、板バネ141は、その薄板部43の両端にくびれ部431が形成されていたが、くびれ部431は必ずしも形成されなくともよい。くびれ部431を形成しない場合、例えば、薄板部43の延在方向についての長さを長くすることによって、板バネ141をX方向について撓みやすくすることができる。ただし、この場合、板バネ141の全体のサイズが大きくなるために、板バネ141が重量化してしまうという難点がある。したがって、板バネ141の重量化を避けたい場合は、くびれ部431を形成する構成を採用する方が好ましい。
【0098】
また、くびれ部431は、各薄板部43の両端ではなく一端のみに形成されてもよい。また、くびれ部431は、板バネ141が備える複数の薄板部43のうちの特定の薄板部43だけに形成されてもよい。
【0099】
また、上記の実施の形態においては、支持構造14は、一対のガイド部材12のうちの一方のガイド部材12aと移動体13との間に配置される板バネ141と、他方のガイド部材12bと移動体13との間に配置されるスペーサブロック142とを備える構成としたが、スペーサブロック142に代えて板バネ141を備える構成としてもよい。すなわち、各ガイド部材12a,12bと、移動体13との間に、板バネ141を配置する構成としてもよい。
【0100】
また、上記の実施の形態においては、移動装置1は、一対のガイド部材12が一組配設される構成としたが、一対のガイド部材が二組以上配設される構成であってもよい。図13には、一対のガイド部材を二組備える移動装置8の構成が例示されている。
【0101】
移動装置8は、基台81と、基台81上に設置された4本のガイド部材82a〜82dとを備える。また、4本のガイド部材82a〜82dに沿って移動可能に構成された移動体83と、移動体83とガイド部材82a〜82dとの間に設けられた支持構造84とを備える。ここでは、基台81と移動体83とが熱膨張率の異なる材料で形成されてもよい。
【0102】
支持構造84は、4本のガイド部材82a〜82dのうちの一のガイド部材82d(より具体的には、ガイド部材82dに設置されたリニアガイドベアリング)と移動体83との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック842と、他の3本のガイド部材82a〜82cのそれぞれ(より具体的には、3本のガイド部材82a,82b,82cのそれぞれに配置されたリニアガイドベアリング)と移動体83との間に挟み込まれるようにして配置される1以上(例えば、2個)の板バネ841を備える。板バネ841の構成は、上記の実施の形態に係る板バネ141と同様である。
【0103】
上記の移動装置8においても、上記の実施の形態に係る移動装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、移動体83からガイド部材82a〜82dに対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材82a,82b、82cと移動体83との間に配置された板バネ871が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材82a〜82dの離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材82a〜82dに対して直接にかかることがないので、ガイド部材82a〜82dの変形が抑制される。
【0104】
また、上記においては、移動装置1を適用した装置の具体例として塗布装置2を示した。上記に説明した塗布装置2においては、ステージ24、ガイド部材22、ヘッドユニット26、ガントリー27等は石材を用いて形成され、洗浄部23はアルミニウムを用いて形成されるものとしたが、各部を形成する材料はこれらに限らない。
【0105】
また、上記においては、移動装置1を適用した装置の具体例として塗布装置2を示したが、移動装置1は、塗布装置2以外の装置にも適用可能である。図14には、移動装置1を適用した別の装置の構成例である処理装置9が模式的に示されている。
【0106】
処理装置9は、基台91と、基台91上に設置された一対のガイド部材92とを備える。また、一対のガイド部材92に沿って移動可能に構成されたステージ93と、ステージ93とガイド部材92との間に設けられた支持構造94とを備える。支持構造94の構成は、上記の実施の形態に係る支持構造14と同様である。すなわち、支持構造94は、一対のガイド部材92のうちの一方のガイド部材92aとステージ93との間に配置される1以上(例えば、2個)の板バネ141と、他方のガイド部材92bとステージ93との間に配置される1以上(例えば、2個)のスペーサブロック142とを備える。処理装置9においては、上述した移動装置1の基台11は「基台91」に相当し、ガイド部材12は「ガイド部材92」に相当し、移動体13は「ステージ93」に相当する。
【0107】
処理装置9においては、基台91とステージ93とは互いに熱膨張率の異なる材料でそれぞれ形成される。
【0108】
処理装置9は、さらに、ステージ93上に載置された対象物90に対して光・液体等を供給することによって、対象物90に対する処理を行う処理部95を備える。処理装置9においては、対象物90を載置したステージ93をガイド部材92に沿って移動させつつ、処理部95から対象物90に対して光・液体等を供給させることによって、対象物90に対する処理が実行される。
【0109】
処理装置9においても、上記の実施の形態に係る塗布装置2と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、ステージ93から一対のガイド部材92に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材92aとステージ93との間に配置された板バネ141が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材92の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材92に対して直接にかかることがないので、ガイド部材92の変形が抑制される。
【0110】
なお、上記に例示した処理装置9の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定された露光処理部から、ステージ上の基板に対して光を照射して、基板に対する露光処理を行う露光装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「露光処理部」に相当する。
【0111】
また、上記に例示した処理装置9の別の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定されたノズルユニットから、ステージ上の基板に対して処理液を吐出して、基板に対する塗布処理を行う塗布処理装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「ノズルユニット」に相当する。
【0112】
また、上記に例示した処理装置9の別の具体例として、処理対象となる基板を載置するステージを基台に対して移動させつつ、基台に対して固定されたノズルユニットから、ステージ上の基板に対して洗浄液を吐出して、基板に対する洗浄処理を行う洗浄処理装置が挙げられる。この場合、処理装置9における対象物90は「基板」に相当し、処理部95は「ノズルユニット」に相当する。
【0113】
また、上記に示した処理装置9において、処理部95が、基台91とは熱膨張率の異なる材料で形成されるとともに、一対のガイド部材92に沿って移動可能に構成されてもよい。この場合、処理部95とガイド部材92との間にも支持構造94を設ける。この構成に係る処理装置においては、対象物90を載置したステージ93を基台91上に固定して(あるいは、対象物90を載置したステージ93をガイド部材92に沿って移動させつつ)、処理部95をガイド部材92に沿って移動させつつ対象物90に対して光・液体等を供給させることによって、対象物90に対する処理が実行される。
【0114】
この構成に係る処理装置においても、上記の実施の形態に係る塗布装置2と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度環境が変化した場合に、処理部95から一対のガイド部材92に対して、その離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力が発生すると、ガイド部材92aと処理部95との間に配置された板バネ141が変形することにより、当該力を吸収する。したがって、ガイド部材92の離間幅を広げよう(あるいは、狭めよう)とする力がガイド部材92に対して直接にかかることがないので、ガイド部材92の変形が抑制される。
【0115】
なお、上記に例示した処理装置の具体例として、処理液を吐出するノズル(例えば、スリットノズル)を備えるノズルユニットを処理対象となる基板を載置したステージに対して移動させつつ、ノズルユニットから、ステージ上の基板に対して処理液を吐出して、基板に対する塗布処理を行う塗布処理装置が挙げられる。
【0116】
また、上記に例示した処理装置の別の具体例として、光源から対象物に対して光を照射し、その反射光に基づいて異常等を検出する検査部を備える検査ユニットを、検査対象となる基板を載置したステージに対して移動させつつ、検査ユニットから、ステージ上の基板に対して光を照射して、基板の検査を行う検査装置が挙げられる。
【実施例1】
【0117】
上記の実施の形態に係る移動装置1を具体的に示した実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0118】
<1.板バネ141>
実施例1に係る移動装置1が備える板バネ141の寸法について、図15を参照しながら説明する。図15は、板バネ141の平面図と側面図である。図15には、説明の便宜上、XYZ座標系が付与されている。ただし、板バネ141の寸法は、次に例示するものに限られるものではない。
【0119】
以下の説明においては、板バネ141が備える3個のブロック部42,41,42の配列方向(Y方向)を、板バネ141の幅方向とよぶ。また、各ブロック部41,42の延在方向(X方向)を、板バネ141の奥行き方向とよぶ。また、これらと直交する方向(Z方向)を、板バネ141の厚み方向とよぶ。
【0120】
板バネ141は、幅D1が195mm(ミリメートル)、奥行きD2が86mm、厚みD3が30mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う各側方ブロック部42の長さD4はいずれも20mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う中央ブロック部41の長さD5は85mmである。また、板バネ141の幅方向に沿う各薄板部43の長さD6は35mmである。さらに、板バネ141の奥行き方向に沿う各薄板部43の長さD7は16mmである。
【0121】
また、中央ブロック部41に形成される4個の貫通孔411のそれぞれは、板バネ141の中心Pから、X方向に30mm(D11)、Y方向に30mm(D12)だけ離間した位置に中心がくるように形成される。また、貫通孔411の直径Φ11は8.5mmである。
【0122】
また、各側方ブロック部42にそれぞれ形成される2個の貫通孔421のそれぞれは、板バネ141の中心Pから、X方向に30mm(D21)、Y方向に87.5mm(D22)だけ離間した位置に中心がくるように形成される。また、貫通孔421の直径Φ12は8.5mmである。
【0123】
また、薄板部43のY方向に沿う一対の面のそれぞれには、断面が半円形状の柱状の切り欠き430が2個形成される。2個の切り欠き430の一方は、半円の中心が側方ブロック部42における薄板部43の連結面から6mm(D31)離間した位置に形成される。また、他方の切り欠き430は、半円の中心が中央ブロック部41における薄板部43の連結面から6mm(D32)離間した位置に形成される。また、半円の直径Φ13は12mmとされる。
【0124】
<2.撓みやすさ>
実施例1に係る板バネ141の撓みやすさについて説明する。図16には、実施例1に係る板バネ141を、中央ブロック部41に対して、各側方ブロック部42がX方向に変位幅R(μm)だけずれるように変形した場合に、板バネ141の薄板部43に生じる応力T(MPa)の測定結果が示されている。ここに示されるように、変位幅Rが5.4(μm)の場合の応力Tは10.5(MPa)となる。また、変位幅Rが5.4(μm)の際のX方向についての横加重は400(N)であった。
【0125】
実施例1に係る板バネ141は、鋼により構成された場合、その強度は約500(MPa)となる。したがって、この場合、板バネ141で許容される最大変位幅Rmaxは、(式1)で与えられる。ただし、ここでは安全率を「3」としている。
【0126】
Rmax=500/3/10.5×5.4≒86(μm) ・・・・(式1)
また、板バネ141のX方向についての剛性Hは、(式2)で与えられる。
【0127】
H=400/5.4=74(N/μm) ・・・・(式2)
いま、移動体13がアルミニウム(熱膨張係数24μm/(m・℃))を用いて形成され、基台11が斑糲岩(熱膨張係数6μm/(m・℃))を用いて形成されているとする。また、一対のガイド部材12間の離間距離が1.6mであるとする。
【0128】
ここで、ガイド部材12aと移動体13との間に板バネ141が配置されていないとした場合に、移動装置1に温度変化が生じると、移動体13と基台11との熱膨張率の差に起因してガイド部材12に歪みが生じうる。移動装置1に例えば±3℃の温度変化が生じうると想定すると、板バネ141が配置されていないとした場合に、ガイド部材12に生じうる最大歪み幅hは、(式3)で与えられる値となる。
【0129】
h=(24−6)×1.6×3=86.4(μm) ・・・・(式3)
一方、上述したとおり、板バネ141においては、最大で86(μm)の変形が許容される。すなわち、最大で86(μm)の歪みを吸収できる。つまり、ガイド部材12と移動体13との間に板バネ141を配置しておけば、±3℃の温度変化が生じたとしても、ガイド部材12に生じうる歪みのほぼ全てが板バネ141において吸収され、ガイド部材12の変形が抑制されることがわかる。
【0130】
また、上記の例において、ガイド部材12の剛性は約370(N/μm)である。上述したとおり、この実施例に係る板バネ141の剛性Hは74(N/μm)であり、ガイド部材12の合成よりも十分に小さい。したがって、例えば、想定外の温度変化により板バネ141において移動体13の膨張幅を吸収できなくなってしまった場合に、ガイド部材12よりも先に板バネ141が破壊される。これによって、ガイド部材12の破壊という最悪の事態を回避できる。
【0131】
一方、板バネ141の剛性Hは、ガイド部材12の剛性の1/5となっている。ガイド部材12の剛性の1/5以上の剛性を備えれば、板バネ141は、リニアガイドとして必要な最低限の剛性を備えていると判断することができる。すなわち、移動体13の安定した搬送が担保される。
【符号の説明】
【0132】
1 移動装置
11,21 基台
12,22 ガイド部材
13 移動体
14 支持構造
141 板バネ
41 中央ブロック部
42 側方ブロック部
43 薄板部
2 塗布装置
23 洗浄部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料により形成された基台と、
前記基台上に設置された一対のガイド部材と、
前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な移動体と、
前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記移動体との間に配置された板バネと、
を備え、
前記板バネが、
前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、
前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
を備える移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記板バネが、
前記ガイド部材の延在方向について、前記第2のブロック部を挟んで前記第1のブロック部と反対側に前記第2のブロック部から離間した位置に配置され、前記移動体に対して固定された第3のブロック部と、
前記第2のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
をさらに備える移動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記板バネが、
前記ガイド部材の延在方向について、前記第1のブロック部を挟んで前記第2のブロック部と反対側に前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記摺動部材に対して固定された第3のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
をさらに備える移動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記板バネの剛性が、前記ガイド部材の剛性よりも小さく、かつ、前記ガイド部材の剛性の5分の1以上である移動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の移動装置であって、
前記薄板部が、
前記連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部、
を備える移動装置。
【請求項6】
スペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を基板に塗布する塗布装置であって、
基台と、
前記基台上に設置された一対のガイド部材と、
前記一対のガイド部材に沿って移動可能なステージと、
前記ステージに載置された基板に対して、前記スペーサ粒子分散液を、インクジェット方式により吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを洗浄する洗浄ユニットを備え、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な洗浄部と、
前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記洗浄部との間に配置された板バネと、
を備え、
前記板バネが、
前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、
前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
を備え、
前記基台と前記ステージとが第1の材料で形成され、前記洗浄部が前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成される塗布装置。
【請求項7】
請求項6に記載の塗布装置であって、
前記第1の材料が石材であり、
前記第2の材料がアルミニウムである塗布装置。
【請求項1】
第1の材料により形成された基台と、
前記基台上に設置された一対のガイド部材と、
前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成され、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な移動体と、
前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記移動体との間に配置された板バネと、
を備え、
前記板バネが、
前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、
前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
を備える移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記板バネが、
前記ガイド部材の延在方向について、前記第2のブロック部を挟んで前記第1のブロック部と反対側に前記第2のブロック部から離間した位置に配置され、前記移動体に対して固定された第3のブロック部と、
前記第2のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
をさらに備える移動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記板バネが、
前記ガイド部材の延在方向について、前記第1のブロック部を挟んで前記第2のブロック部と反対側に前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記摺動部材に対して固定された第3のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第3のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
をさらに備える移動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記板バネの剛性が、前記ガイド部材の剛性よりも小さく、かつ、前記ガイド部材の剛性の5分の1以上である移動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の移動装置であって、
前記薄板部が、
前記連結方向に沿う端部に形成されたくびれ部、
を備える移動装置。
【請求項6】
スペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を基板に塗布する塗布装置であって、
基台と、
前記基台上に設置された一対のガイド部材と、
前記一対のガイド部材に沿って移動可能なステージと、
前記ステージに載置された基板に対して、前記スペーサ粒子分散液を、インクジェット方式により吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを洗浄する洗浄ユニットを備え、前記一対のガイド部材に沿って移動可能な洗浄部と、
前記一対のガイド部材のうちの少なくとも一方のガイド部材と前記洗浄部との間に配置された板バネと、
を備え、
前記板バネが、
前記移動体に対して固定される第1のブロック部と、
前記ガイド部材の延在方向について前記第1のブロック部から離間した位置に配置され、前記ガイド部材に沿って摺動可能な摺動部材に対して固定された第2のブロック部と、
前記第1のブロック部と前記第2のブロック部とを連結し、その連結方向と交差する方向に可撓性を有する薄板部と、
を備え、
前記基台と前記ステージとが第1の材料で形成され、前記洗浄部が前記第1の材料と熱膨張率の異なる第2の材料により形成される塗布装置。
【請求項7】
請求項6に記載の塗布装置であって、
前記第1の材料が石材であり、
前記第2の材料がアルミニウムである塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−155060(P2012−155060A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12763(P2011−12763)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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