説明

移動農機

【課題】樹脂等によって一体成形される高剛性なボンネットカバーを備えた移動農機を提供することを課題としている。
【解決手段】エンジン6の上方を覆うボンネットカバー9を、左右方向の中央部分の山型の断面形状を有する中央カバー部21と、中央カバー部21の左右両側に位置し、所定幅を備え、前後方向に延出するサイドカバー部22とから構成し、サイドカバー部22を中央カバー部21の外側方に向かって張出させ、サイドカバー部22と中央カバー部21とが段状をなすように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理機等の移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの上方に燃料タンクを配置し、該燃料タンクの上方をボンネットカバーによって覆った移動農機として歩行型の管理機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−2083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のボンネットカバーは、樹脂や薄板等で一体成形するためには剛性が低く、強度が不足するため、一体成形による軽量化とコストダウンの効果が低いという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移動農機は、エンジン6と、該エンジン6の上方を覆うボンネットカバー9とを備えた移動農機において、ボンネットカバー9の左右方向の中央部分を、山型の断面形状を有する中央カバー部21とし、ボンネットカバー9の左右両端を、所定幅を備え、前後方向に延出するサイドカバー部22とし、該サイドカバー部22を中央カバー部21の外側方に向かって張出させ、サイドカバー部22と中央カバー部21とが段状を形成することを第1の特徴としている。
【0005】
第2にエンジン6の上部に燃料タンク8を設け、中央カバー部21を、燃料タンク8の外形に近接して、燃料タンク8の上方を覆うカバーとし、燃料タンク8と中央カバー部21との間に隙間が形成されることを特徴としている。
【0006】
第3にエンジン6の側方にマフラを設け、該マフラを、エンジン6側の端部が、平面視において燃料タンク8の下方側において燃料タンク8と重複するように取り付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、ボンネットカバーは全体として見ると、左右両端部分が段状に屈曲又は湾曲した形状をなし、強度が向上する。これによりボンネットカバーを樹脂や薄板等で一体成形することができ、軽量化とコストダウンを図ることができるという利点がある。また中央カバー部の外側方に突出するサイドカバー部によってエンジンの側方に突出する部品の全部又は一部の上方側も覆うことができるという利点もある。
【0008】
一方エンジン上部に燃料タンクを設け、中央カバー部を、燃料タンクの外形に近接して、燃料タンクの上方を覆うカバーとし、燃料タンクと中央カバー部との間に隙間を形成させることによって、ボンネットカバーが、燃料タンクの外形に密着するようなものとはならないため、エンジンが大きい他の歩行型農機のボンネットカバーとして兼用することができ、ボンネットカバーのコストダウンを図ることができる。
【0009】
またエンジンの側方に設けたマフラを、エンジン側の端部が、平面視において燃料タンクの下方側において燃料タンクと重複するように取り付けることによって、マフラとエンジンとの隙間を、燃料タンク及びボンネットカバーにおけるサイドカバー部によって2重に覆うことができ、隙間へのゴミ等の詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1,図2は本発明を採用した移動農機である歩行型の管理機の後方斜視図及び側面図である。機体フレームの一部を構成するミッションケース1に設けられた車軸2に車輪3が取り付けられている。車輪3の後方には、耕耘用の耕耘装置であるロータリ4が設けられている。
【0011】
ミッションケース1の上方には、機体フレーム側にエンジン6が搭載されている。エンジン6の側方にはカバー7に覆われてマフラが取り付けられている。エンジン6の上方には、図3(a),(b)に示される燃料タンク8が配置されている。燃料タンク8の上方はボンネットカバー9によって覆われている。
【0012】
ボンネットカバー9は機体フレーム側に取り付けられている。エンジンからミッションケース1内に構成されるトランスミッションには伝動部11を介して駆動力が伝動されている。ロータリ4は、上記トランスミッションからの出力によって駆動される。エンジン6からトランスミッションへの駆動力の伝動は伝動部11に設けられたメインクラッチによって入り切り自在となっている。
【0013】
メインクラッチの入り作動によって、エンジン6からトランスミッションに駆動力が伝動され、車輪3及びロータリ4が回転駆動される。ミッションケース1には、後方斜め上方に向かって突出するハンドル12が取り付けられている。ハンドル12には、メインクラッチの入り切りを操作するクラッチ操作レバー13が揺動自在に設けられている。
【0014】
クラッチ操作レバー13によって車輪3及びロータリ4の駆動を入り切り操作することができる。ミッションケース1からは、後方に向かって操作レバー14が突設されている。変速レバー14の揺動操作によって走行速度(車輪3の駆動速度)の変速操作と、ロータリ4の駆動速度及び回転方向の変速操作を行うことができる。
【0015】
本歩行型管理機は、上記構造により、車輪3を接地させて作業者がハンドル12を持ち、エンジン6を作動させ、クラッチ操作レバー13によりメインクラッチを入り作動させ、変速レバー14により走行速度の変速操作と、ロータリ4の駆動速度及び回転方向の変速を行うことによって、車輪3の駆動により機体を走行させ、この機体の走行に伴って回転するロータリ4により耕耘作業を行うことができる。
【0016】
燃料タンク8は、上面に突出する給油部16が設けられている。給油部16に給油口17が設けられている。燃料タンク8の上面における給油部16の周辺は凹状に窪んだ窪み部18となっている。該窪み部18は、エンジン6の上方位置への装着状態で内側前方となる一部が空いている。
【0017】
給油口17からの給油中に漏れた燃料は、窪み部18に流れ、上記空部分19から流し出される。燃料タンク8の底面側には、エンジン6の上方位置への装着状態で外側後方となる位置に、マフラが入り込む切欠き部20が設けられている。前述のように燃料タンク8がエンジン6の上方に設けられており、マフラのエンジン6側の一部は燃料タンク8の下方に位置して、上記切欠き部20内に収容される。
【0018】
マフラは、エンジン6側の端部が、切欠き部20内に収容されるため、平面視において燃料タンク8の下方側において燃料タンク8と重複する。給油口17からの給油中に漏れ、燃料タンク8の上面に流れ込んでくる燃料は、上記のように燃料タンク8の内側前方から流れ出るため、この燃料がマフラにかかることが防止される。
【0019】
ボンネットカバー9は樹脂により一体成形されている。ボンネットカバー9は、図4(a),(b),(c)に示されるように、左右方向の中央部分が若干突出した山型の断面形状を有する中央カバー部21と、該中央カバー部21の左右両側方に突出するサイドカバー部22とからなる。
【0020】
ボンネットカバー9は、燃料タンク8の上方を、燃料タンク8の上面と燃料タンク8との間に、所定の隙間が設けられるように、燃料タンク8の外形に沿って覆う。中央カバー部21の中央部分は凹状に窪んだ窪み部23となっている。中央カバー部21の上面は、上記窪み部23によって外周は突出した壁部24が形成されている。
【0021】
中央カバー部21は前方に向かって滑らかに下方向きに傾斜している。中央カバー部21は、後方側に燃料タンク8の給油部16が挿入される給油部用の孔26が設けられている。ボンネットカバー9の装着状態において該孔26から給油部16が突出する。孔26から突出する給油部16の給油口17にはキャップ25が設けられている。
【0022】
孔26は窪み部23内に設けられた突出部27に形成されている。給油口17からの給油中に漏れてボンネットカバー9の上面に流れた燃料は、窪み部23に流れ、中央カバー部21が前方に向かって滑らかに下方向きに傾斜していることによって、前方から流れ落ちる。
【0023】
これにより給油口17からの給油中に漏れてボンネットカバー9の上面に流れた燃料が、エンジン6の側方に位置するマフラにかかることはない。サイドカバー部22は、所定の横幅を備え、前後方向に延出している。サイドカバー部22は、サイドカバー部22と中央カバー部21とが段状を形成するように、中央カバー部21の外側方に向かって張出している。
【0024】
上記のようにボンネットカバー9は全体として見ると、左右両端部分が段状に屈曲又は湾曲した形状をなし、強度が高い。これにより本実施形態のようにボンネットカバー9を樹脂等で一体成形してすることができ、ボンネットカバー9の軽量化を図ることができる。
【0025】
マフラとエンジン6との間の隙間は、サイドカバー部22が中央カバー部21の側方に向かって張出し、マフラの少なくともエンジン6側の一部がボンネットカバー9(サイドカバー部22)によって覆われ、さらにマフラのエンジン6側の端部が、切欠き部20内に収容され、平面視において燃料タンク8の下方側において燃料タンク8と重複するため、燃料タンク8によっても覆われる。
【0026】
マフラのエンジン6側の端部は、燃料タンク8とボンネットカバー9とによって2重に覆われる。これによりマフラとエンジン6との間の隙間へのゴミ等の詰まりが防止される。
【0027】
ボンネットカバー9は、取り付け状態において燃料タンク8との間には隙間が設けられるように形成されている。つまりボンネットカバー9は、燃料タンク8の外形に密着するようなものではなく、燃料タンク8の外形に、燃料タンク8との間に隙間を介設しながら沿うカバーとなっている。
【0028】
このためエンジンや燃料タンクが大きな他の機種に、本ボンネットカバーを兼用して使用することができ、ボンネットカバーのコストダウンを図ることができる。なおボンネットカバー9の特にサイドカバー部22によって、エンジン6の側方に突出する部品、例えば本実施形態においてはマフラの全部又は一部を覆うことができる。ただしマフラは、機種に応じてサイドカバー部22によって覆われる部分は異なる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】歩行型管理機の後方斜視図である。
【図2】歩行型管理機の側面図である。
【図3】(a)は、燃料タンクの平面図、(b)は、燃料タンクの側面図である。
【図4】(a)は、ボンネットカバーの平面図、(b)は、ボンネットカバーの正面図、(c)は、ボンネットカバーの側面図である。
【符号の説明】
【0030】
6 エンジン
8 燃料タンク
9 ボンネットカバー
21 中央カバー部
22 サイドカバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)と、該エンジン(6)の上方を覆うボンネットカバー(9)とを備えた移動農機において、ボンネットカバー(9)の左右方向の中央部分を、山型の断面形状を有する中央カバー部(21)とし、ボンネットカバー(9)の左右両端を、所定幅を備え、前後方向に延出するサイドカバー部(22)とし、該サイドカバー部(22)を中央カバー部(21)の外側方に向かって張出させ、サイドカバー部(22)と中央カバー部(21)とが段状を形成する移動農機。
【請求項2】
エンジン(6)の上部に燃料タンク(8)を設け、中央カバー部(21)を、燃料タンク(8)の外形に近接して、燃料タンク(8)の上方を覆うカバーとし、燃料タンク(8)と中央カバー部(21)との間に隙間が形成される請求項1の移動農機。
【請求項3】
エンジン(6)の側方にマフラを設け、該マフラを、エンジン(6)側の端部が、平面視において燃料タンク(8)の下方側において燃料タンク(8)と重複するように取り付けた請求項2の移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−166931(P2007−166931A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365847(P2005−365847)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】