説明

移動農機

【課題】簡素な構成によって直進性を確保することを可能にした油圧式無段変速装置を備えた移動農機を提供する。
【解決手段】クローラトラクタは、ステアリングホイールが中立位置にされると、斜板式可変容量ポンプ37rの前進側斜板操作ポート37raと斜板式可変容量ポンプ37lの前進側斜板操作ポート37la、斜板式可変容量ポンプ37rの後進側斜板操作ポート37rbと斜板式可変容量ポンプ37lの後進側斜板操作ポート37lbをそれぞれ連通するバイパスバルブ35を備えている。これにより、左右の斜板式可変容量ポンプ37r,37lに入力される制御圧が等しくなるので、直進性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクローラトラクタ等の移動農機に係り、詳しくは、左右それぞれの走行装置に駆動連結された油圧モータと、該油圧モータに作動油を供給する一対の斜板式可変容量ポンプとを有する油圧式無段変速装置を備えた移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば左右一対のクローラ走行装置を有する移動農機においては、左右それぞれの斜板式可変容量ポンプ及びクローラ走行装置に駆動連結された油圧モータからなる油圧式無段変速装置が、クローラ走行装置を個別に駆動するように構成され、操向操作を行う際には、操向装置の操作に基づいて左右のクローラ走行装置の駆動速度を異ならせて旋回走行を行うようにしたものがある。
【0003】
しかし、このような移動農機で直進走行を行う場合には、左右の斜板式可変容量ポンプや該ポンプの斜板の角度を操作する操作手段の固体差等により、左右のクローラ走行装置の駆動速度を同じにすることができず、直進走行が安定しないという問題があった。このため、左右の斜板式可変容量ポンプの吐出ポートを互いに連通・遮断自在に構成し、直進時には、これら吐出ポートを連通することで、左右の油圧モータに供給する作動油の油圧を同じにすることにより、直進性を向上させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−79883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように移動農機に用いられる油圧式無段変速装置では、該移動農機を走行駆動するため、斜板式可変容量ポンプから油圧モータへ高圧かつ多量の作動油が供給されている。そのため、上記特許文献1の油圧式無段変速装置の油圧回路では、吐出ポートを連通・遮断自在にするために設けられたバルブを作動油の高圧に耐え得るように構成する必要があるため、コンパクト化やコストダウンを図る上で不利になるという問題があった。
【0006】
このため、油圧式無断変速装置に、操向装置の操作状態を検出するセンサと、斜板式可変容量ポンプの斜板を操作するアクチュエータとを設け、該センサが操向装置の中立状態(直進状態)を判定した際に、左右の油圧モータの出力が等しくなるように該アクチュエータによって斜板の角度を微調整することで補正をかけるように構成することが考えられる。しかし、このような油圧式無段変速装置では、センサ、アクチュエータ、及びこれらを制御する制御装置を設けることで構造の複雑化を招き、これにより、コストダウンの妨げとなる虞があった。
【0007】
そこで本発明は、簡素な構成によって直進性を確保することを可能にした油圧式無段変速装置を備えた移動農機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図6参照)、左右一対の走行装置(3r,3l)をそれぞれ走行駆動する一対の油圧モータ(41r,41l)と、該一対の油圧モータのそれぞれに作動油を供給する一対の斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)とを有する油圧式無段変速装置(A)を備え、
変速操作手段(13)及び操向操作手段(10)の操作に基づき、前記両斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)の吐出油量を調節し、左右の前記走行装置(3r,3l)の駆動力を異ならせることで旋回動作を行い得る移動農機(1)において、
前記斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)は、制御圧が入力されることで前進駆動側に吐出油量を変更するように斜板の角度を操作する前進制御ポート(37ra,37la)と、制御圧が入力されることで後進駆動側に吐出油量を変更するように斜板の角度を操作する後進制御ポート(37rb,37lb)とを有し、
前記前進制御ポート(37ra,37la)及び前記後進制御ポート(37rb,37lb)に接続され、前記斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)に供給する制御圧を出力する一対の吐出油量制御バルブ(38r,38l)と、
前記両斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)の前記前進制御ポート(37ra,37la)同士及び前記後進制御ポート(37rb,37lb)同士を連通・遮断可能にするバイパスバルブ(35)と、を備え、
前記バイパスバルブ(35)は、前記操向操作手段(10)が中立位置の際に、左右の前記前進制御ポート(37ra,37la)同士及び前記後進制御ポート(37rb,37lb)同士を連通することで、左右の前記吐出油量制御バルブ(38r,38l)から出力される制御圧を等しくしてなる、
ことを特徴とする移動農機(1)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図2乃至図4参照)、踏み込み操作に基づいてブレーキ機構(42r,42l)を作動させるブレーキペダル(12)と、
前記斜板式可変容量ポンプ(37r,37l)の前記前進制御ポート(37ra,37la)及び前記後進制御ポート(37rb,37lb)を連通・遮断可能にされ、前記ブレーキペダル(12)が踏み込み操作されると連通方向に操作されるブレーキバルブ(36)と、を備え、
前記バイパスバルブ(35)及び前記ブレーキバルブ(36)は、前記前進制御ポート(37ra,37la)及び前記後進制御ポート(37rb,37lb)に制御圧を供給する制御圧回路(Z)上に並列に配置されてなる、
請求項1記載の移動農機(1)にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何ら影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、操向操作手段が中立位置の際に、左右の前進制御ポート同士及び後進制御ポート同士を連通することで、左右の吐出油量制御バルブから出力される制御圧を等しくするバイパスバルブを備えているので、例えばセンサによって操向装置の直進状態を判定した際に、左右の油圧モータの出力が等しくなるようにアクチュエータによって斜板の角度を微調整するように構成する場合に比して、簡単な構成によって直進性を確保することができる。
【0012】
また、例えば、高い油圧となる左右の斜板式可変容量ポンプの吐出ポートを、互いに連通・遮断自在にするバルブを備える場合に比して、低い油圧の回路にバイパスバルブを設ければよいので、コンパクト化やコストダウンを図ることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、バイパスバルブ及びブレーキバルブが並列に配置されているので、ブレーキバルブの機能を優先させることができるものでありながら、油圧回路の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クローラトラクタの外観を示す斜視図。
【図2】クローラトラクタの運転操作部を示す平面図。
【図3】クローラトラクタの油圧回路を示す回路図。
【図4】バイパスバルブ及びブレーキバルブ部分の油圧回路を示す説明図。
【図5】クローラトラクタの操作部分を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図6】クローラトラクタのブレーキペダル周辺部分を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図6に沿って説明する。本発明に係る移動農機としてのクローラトラクタ1は、図1に示すように、左右一対のクローラ走行装置3r,3lによって支持された機体フレーム2を有しており、該機体フレーム2の前方には、ボンネット4に覆われたエンジン5(図3参照)を有し、その後方には、内部に運転操作部7が配設されたキャビン6を有している。該運転操作部7には、図2に示すように、クローラトラクタ1の操向操作を行うステアリングホイール(操向操作手段)10、運転席11、ブレーキペダル12、及び変速操作を行う主変速レバー(変速操作手段)13等が備えられている。なお、運転操作部7には、これらの他にも、後述する作業機を操作するための操作機器等が多数備えられているが、詳細な説明は省略する。
【0016】
また、機体フレーム2の後部には、例えばロータリ耕耘装置等の作業機(図示せず)が連結される作業機連結部(図示せず)を備えている。該作業機連結部は、リフトアームシリンダ22及びリフトロッドシリンダ21(図3参照)を備えており、該リフトアームシリンダ22によって作業機を昇降させると共に、リフトロッドシリンダ21によって作業機を左右傾斜させるように構成されている。
【0017】
クローラトラクタ1は、図3に示すように、作業機連結部を油圧動作させる作業系油圧回路17と、クローラ走行装置3r,3lを動作させる走行部を油圧動作させる走行系油圧回路18等からなる油圧回路Yを備えている。該作業系油圧回路17は、トランスミッション20の出力で駆動される油圧ポンプ25と、アタッチメント等に油圧供給を行うための油圧取り出しバルブ26と、油圧ポンプ25からの供給油を分流させるプライオリティバルブ27と、リフトアームシリンダ22を動作させるポジションコントロールバルブ28と、作業機の下降速度を調節するフローコントロールバルブ29と、リフトロッドシリンダ21を動作させるリフトロッドバルブ30とにより構成されている。
【0018】
上記走行系油圧回路18は、トランスミッション20の出力で駆動されるHSTポンプ部31と、該HSTポンプ部31からの供給油で動作される左右の走行モータ部32r,32lと、該走行モータ部32r,32lの高低速切換えを行う副変速切換えバルブ33と、走行モータ部32r,32lをブレーキ動作させる駐車ブレーキバルブ34と、後述する斜板制御回路Zの油路を短絡させるバイパスバルブ35及びブレーキバルブ36とにより構成されている。なお、本明細書中では、HSTポンプ部31と走行モータ部32r,32lとによって構成される油圧式の無段変速システムを油圧式無段変速装置Aとする。
【0019】
HSTポンプ部31は、斜板の角度制御に基づいて吐出油量を無段階に調節可能な一対の斜板式可変容量ポンプ37r,37lを備えている。斜板式可変容量ポンプ37rには、油圧が入力されることで前進駆動側に吐出油量を変更する前進側斜板操作ポート(前進制御ポート)37ra及び後進駆動側に吐出油量を変更する後進側斜板操作ポート(後進制御ポート)37rbが備えられ、これら斜板操作ポート37ra,37rbは、油路を介して吐出油量制御バルブ38rに接続されており、該吐出油量制御バルブ38rによって斜板式可変容量ポンプ37rの斜板角度が制御される。
【0020】
また、斜板式可変容量ポンプ37lには、油圧が入力されることで前進駆動側に吐出油量を変更する前進側斜板操作ポート(前進制御ポート)37la及び後進駆動側に吐出油量を変更する後進側斜板操作ポート(後進制御ポート)37lbが備えられ、これら斜板操作ポート37la,37lbは、油路を介して吐出油量制御バルブ38lに接続されており、該吐出油量制御バルブ38lによって斜板式可変容量ポンプ37lの斜板角度が制御される。
【0021】
上記走行モータ部32rは、上記斜板式可変容量ポンプ37rから供給される作動油によって動作し、走行部の駆動輪3raを回転駆動させる斜板式可変容量モータ(油圧モータ)41rと、駆動輪3raの回転を機械的に制御する駐車ブレーキ42rと、斜板式可変容量モータ41rの斜板角制御に基づいて走行速度を高低2段階に切換える高低速切換えバルブ43rと、閉ループ回路となる走行系油圧回路18の圧力調整を行うリリーフバルブ44r及びシャトルバルブ45rとを備えている。
【0022】
また、走行モータ部32lは、上記斜板式可変容量ポンプ37lから供給される作動油によって動作し、走行部の駆動輪3laを回転駆動させる斜板式可変容量モータ41lと、駆動輪3laの回転を機械的に制御する駐車ブレーキ42lと、斜板式可変容量モータ41lの斜板角制御に基づいて走行速度を高低2段階に切換える高低速切換えバルブ43lと、閉ループ回路となる走行系油圧回路18の圧力調整を行うリリーフバルブ44l及びシャトルバルブ45lとを備えている。
【0023】
上記バイパスバルブ35は、図4に示すように、斜板式可変容量ポンプ37rの前進側斜板操作ポート37raに対して接続されたポート35aと、斜板式可変容量ポンプ37rの後進側斜板操作ポート37rbに対して接続されたポート35bと、斜板式可変容量ポンプ37lの前進側斜板操作ポート37laに対して接続されたポート35cと、斜板式可変容量ポンプ37lの後進側斜板操作ポート37lbに対して接続されたポート35dとを備えている。また、バイパスバルブ35は、スプールがスプリングの付勢力によって図中左位置とされる場合には、ポート35aとポート35c、ポート35bとポート35dがそれぞれ遮断されており、ステアリングホイール10が中立位置であることを検知し、ソレノイドによってスプールを移動させ、図中右位置とされる場合には、ポート35aとポート35c、ポート35bとポート35dがそれぞれ連通されるように構成されている。
【0024】
また、ブレーキバルブ36は、斜板式可変容量ポンプ37lの前進側斜板操作ポート37laに対して接続されたポート36aと、斜板式可変容量ポンプ37rの前進側斜板操作ポート37raに対して接続されたポート36bと、斜板式可変容量ポンプ37lの後進側斜板操作ポート37lbに対して接続されたポート36cと、斜板式可変容量ポンプ37rの後進側斜板操作ポート37rbに対して接続されたポート36dとを備えている。また、ブレーキバルブ36は、スプールがスプリングの付勢力によって図中右位置とされる場合には、ポート36aとポート36c、ポート36bとポート36dがそれぞれ遮断されており、機械的に連結されたブレーキペダル12の踏込み操作によって、スプールを移動させ、図中左位置とされる場合には、ポート36aとポート36c、ポート36bとポート36dがそれぞれ連通されるように構成されている。
【0025】
また、これら斜板式可変容量ポンプ37r,37l、吐出油量制御バルブ38r,38l、バイパスバルブ35、ブレーキバルブ36、及びこれらを接続する油路によって、斜板式可変容量ポンプ37r,37lの斜板の角度制御を行い吐出油量を無段階に調節する斜板制御回路Zが構成されている。なお、斜板制御回路Zは、走行モータ部32r,32lを駆動する走行系油圧回路18の閉ループ回路内の油圧に比して、斜板式可変容量ポンプ37r,37lの斜板を制御するだけで足りるので低い油圧で動作できるように構成されている。
【0026】
さらに、上述した副変速切換えバルブ33は、高低速切換えバルブ43r,43lをパイロット操作するものであり、また、駐車ブレーキバルブ34は、駐車ブレーキ42r,42lの動作を切換えるものである。
【0027】
上記斜板式可変容量ポンプ37r,37lは、図5(b)に示すように、運転操作部7の下方、詳しくは主変速レバー13の下方に配置されており、図5(a)に示すように、これら斜板式可変容量ポンプ37r,37lの前部には、上記バイパスバルブ35及びブレーキバルブ36が内装されるバイパスバルブユニット50が設けられている。また、これら斜板式可変容量ポンプ37r,37lの上面には、上記吐出油量制御バルブ38r,38lに連繋される斜板操作アーム51r,51lがそれぞれ設けられている。これら斜板操作アーム51r,51lは、ステアリングホイール10や主変速レバー13に連繋されており、ステアリングホイール10の切り角に応じて背反方向に回動される一方、主変速レバー13の操作に応じて同方向に回動される。これにより、ステアリングホイール10によるクローラ走行装置3r,3lの旋回操作が可能になる。なお、ステアリングホイール10と斜板操作アーム51r,51lとを連繋する構造は、本発明の要部ではないため、図示及び説明を省略する。
【0028】
主変速レバー13は、図2及び図5(b)に示すように、運転席11の一側方に前後回動可能に設けられている。主変速レバー13の基端部は、図5(b)に示すように、ロッド53、ベルクランク54、及びロッド55等を介して運転席11前方の連結アーム56に連結されており、さらに、該連結アーム56は、図5(a)、(b)に示すように、一対のワイヤ57r,57l等を介して上記斜板操作アーム51r,51lに連結されている。これにより、主変速レバー13の操作に応じて、斜板操作アーム51r,51lが回動し、走行動力が無段変速されることになる。
【0029】
運転席11の前方足元部には、ブレーキペダル12が設けられている。ブレーキペダル12は、図6(b)に示すように、ペダル支軸60によって上下回動自在に支持されると共に、スプリング61によって上方に付勢されており、通常時は、上限ストッパ62によって回動規制されている。一方、ブレーキペダル12を踏込み操作した場合は、下限ストッパ63によって踏込み量が規定される。該下限ストッパ63は、ブラケット64に螺着されたボルトによって構成されており、その螺込み位置を変更することによってブレーキペダル12の下限位置が調節される。なお、図6(b)中における符号65は、ブレーキペダル12の上限復帰を検知する上限検知スイッチ65であり、該上限検知スイッチ65がOFFの際、ブレーキランプ(図示せず)が点灯される。
【0030】
また、ブレーキペダル12の基端部近傍には、該ブレーキペダル12の踏込み量を検知する踏込み検知スイッチ66が設けられている。該踏込み検知スイッチ66は、ブレーキペダル12が下限に到達した際、または、その直前位置に到達したときに検知動作するように配置されている。上述した駐車ブレーキバルブ34は、踏込み検知スイッチ66に電気的に接続され、該踏込み検知スイッチ66のON動作に応じて駐車ブレーキ42r,42lを動作させる。これにより、ブレーキペダル12の踏込み操作によって駐車ブレーキ42r,42lを動作させることが可能になる。
【0031】
さらに、ブレーキペダル12には、その踏込み操作に応じて、上記ブレーキバルブ36を動作させるブレーキバルブ連繋ワイヤ67が連繋されている。該ブレーキバルブ連繋ワイヤ67は、図6(a)、(b)に示すように、ブレーキペダル12とブレーキバルブ36が内装されたバイパスバルブユニット50とを連繋するように設けられており、ブレーキペダル12が踏込み操作をされた際に、ブレーキバルブ36を機械的に切換えるように構成されている。これにより、駐車ブレーキ42r,42lが動作する前にHSTポンプ部31の斜板を中立角度に戻し、クローラトラクタ1を確実に停止させることが可能になるだけでなく、クローラ走行装置3r,3lの駆動力を停止させるので、駐車ブレーキ42r,42lの制動負荷を軽減することも可能になる。
【0032】
以上のように構成されたクローラトラクタ1は、走行時における直進時の際、ステアリングホイール10が中立位置とされると、バイパスバルブ35によって、斜板式可変容量ポンプ37rの前進側斜板操作ポート37raと斜板式可変容量ポンプ37lの前進側斜板操作ポート37la、斜板式可変容量ポンプ37rの後進側斜板操作ポート37rbと斜板式可変容量ポンプ37lの後進側斜板操作ポート37lbがそれぞれ連通されて、吐出油量制御バルブ38r,38lから出力されると共に左右の斜板式可変容量ポンプ37r,37lに入力される制御圧が等しくなる。これにより、主変速レバー13の操作に基づいた直進走行時において、直進性を確保しつつ前進(または後進)動作を行うことができる。また、ステアリングホイール10が左右のいずれかに操作された場合には、バイパスバルブ35は遮断状態となるので、通常の旋回動作を行うことが可能となる。さらに、走行時からのブレーキペダル12に操作があった際、斜板制御回路Zにおいては、バイパスバルブ35及びブレーキバルブ36が並列に配置されており、走行状態が直進、旋回のいずれの状態でもブレーキバルブ36の機能を優先させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態に係る移動農機は、クローラトラクタである説明をしたが、これに限らず、例えばコンバイン等の農作業機でも良く、つまり、油圧式無段変速装置を備えた移動農機であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 移動農機(クローラトラクタ)
3r,3l 走行装置
10 操向操作手段(ステアリングホイール)
12 ブレーキペダル
13 変速操作手段(主変速レバー)
35 バイパスバルブ
36 ブレーキバルブ
37r,37l 斜板式可変容量ポンプ
37ra,37la 前進制御ポート(前進側斜板操作ポート)
37rb,37lb 後進制御ポート(後進側斜板操作ポート)
38r,38l 吐出油量制御バルブ
41r,41l 油圧モータ(斜板式可変容量モータ)
A 油圧式無段変速装置
Z 制御圧回路(斜板制御回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行装置をそれぞれ走行駆動する一対の油圧モータと、該一対の油圧モータのそれぞれに作動油を供給する一対の斜板式可変容量ポンプとを有する油圧式無段変速装置を備え、
変速操作手段及び操向操作手段の操作に基づき、前記両斜板式可変容量ポンプの吐出油量を調節し、左右の前記走行装置の駆動力を異ならせることで旋回動作を行い得る移動農機において、
前記斜板式可変容量ポンプは、制御圧が入力されることで前進駆動側に吐出油量を変更するように斜板の角度を操作する前進制御ポートと、制御圧が入力されることで後進駆動側に吐出油量を変更するように斜板の角度を操作する後進制御ポートとを有し、
前記前進制御ポート及び前記後進制御ポートに接続され、前記斜板式可変容量ポンプに供給する制御圧を出力する一対の吐出油量制御バルブと、
前記両斜板式可変容量ポンプの前記前進制御ポート同士及び前記後進制御ポート同士を連通・遮断可能にするバイパスバルブと、を備え、
前記バイパスバルブは、前記操向操作手段が中立位置の際に、左右の前記前進制御ポート同士及び前記後進制御ポート同士を連通することで、左右の前記吐出油量制御バルブから出力される制御圧を等しくしてなる、
ことを特徴とする移動農機。
【請求項2】
踏み込み操作に基づいてブレーキ機構を作動させるブレーキペダルと、
前記斜板式可変容量ポンプの前記前進制御ポート及び前記後進制御ポートを連通・遮断可能にされ、前記ブレーキペダルが踏み込み操作されると連通方向に操作されるブレーキバルブと、を備え、
前記バイパスバルブ及び前記ブレーキバルブは、前記前進制御ポート及び前記後進制御ポートに制御圧を供給する制御圧回路上に並列に配置されてなる、
請求項1記載の移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−260422(P2010−260422A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111853(P2009−111853)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】