説明

移動通信システム

【課題】 移動局装置の位置に応じて、無線品質が良好な無線通信システムを簡易な処理で選択して接続でき、利便性を向上させる移動通信システムを提供する。
【解決手段】 移動局装置2が、キャリアレベルが良好なキャリア周波数を使用する無線通信システムの無線品質データを測定し、位置情報と無線システム名と無線品質データとを対応付けて制御装置1に送信すると共に、定期的に位置情報を付して制御装置に接続先候補の情報を要求し、受信した接続先候補に基づいて接続先のシステムを決定し、制御装置1が、受信した情報を位置情報に基づいて予め設定された複数のエリアに対応付けて位置環境情報データとして記憶し、移動局装置2からの要求に応じて、要求中の位置情報に対応するエリアの位置環境情報データを参照して、無線品質の良好なシステムを複数抽出し、無線品質データと共に接続先候補の情報として移動局装置に送信する移動通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに係り、特に移動局装置におけるセルの移動処理や通信中のハンドオーバ処理を軽減し、利用者の利便性を向上させることができる移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
移動通信が普及するにつれて、複数の無線通信システムに接続できる移動局装置が用いられるようになっている。このような移動局装置は、例えば、同じ地域で複数のセルラーシステムがサービスされている場合や、第3世代携帯電話(3rd Generation Partnership Project:3GPP)やWLAN(Wireless LAN)等のサービスが重複している場合等に用いることができる。
【0003】
利用者は、複数の無線通信システムから用途によって適切な無線通信システムを選択することができ、その選択の基準となるのは、それぞれの無線通信システムを特徴付ける帯域や伝送レート、移動性などの通信方式に関連するものと、料金、サービスエリアなどサービスに関連するものなどがある。
【0004】
このような場合、利用者としては、複数のアプリケーションを使用することを前提として、その場その場で使用するアプリケーションに応じて、それに合った無線通信システムを適応的に切替えて使用したいという要求があるが、移動通信の場合は、刻々と周辺の無線環境が変化し、必ずしも選択したい通信方式が常に利用可能とは限らない場合があり、アプリケーションに応じて一つのシステムを固定的に選択することは非常に難しい。
【0005】
近年、複数の無線通信システムに接続できる移動局装置として、ソフトウェア無線端末が注目されている。
上記ソフトウェア無線端末は、呼接続を行うための無線部/ベースバンド処理部、及びプロトコル処理部を、全てソフトウェアで実現することにより、単一のハードウェアにおいて、複数の通信方式やアプリケーションを実現するものである。
そして、ソフトウェアを切り替えることにより、複数の通信方式やアプリケーションを切り替える。つまり、利用者は、1つの無線端末によって複数の無線システムのサービスを切り替えて受けることができるものである。
【0006】
一方、複数の無線通信システムとの呼接続手段を持ったソフトウェア無線端末において、利用者がその用途により無線リンク接続手段を切り替えて使用する場合、使用する場所が、希望する移動通信システムのサービスエリアであるかどうかを、何らかの方法で知る必要がある。
つまり、利用者は、まずソフトウェア無線端末を希望する無線通信システムのモードに設定することで、設定されたシステムの基地局から送信される報知情報の捕捉を試み、もしその捕捉ができれば、該当システムがそこで使用可能であることを認識することが可能である。
【0007】
しかし、その捕捉できたシステムが、その端末の存在する位置において、受けたいサービスや使用するアプリケーションにとって最適な環境を提供するかどうかはその時点では不明である。
また仮に、その時点で最適なシステムにより呼接続及び通信開始ができたとしても、端末が移動することにより、そのシステムが移動後の場所でも最適な環境を提供し続けることができるとは限らない。
【0008】
また、利用可能な全てのシステムについて、順番に捕捉を行い、利用者に、現在使用できる無線通信システムを通知して、最適なシステムを都度選択させる方法も考えられるが、この方法では、一つの無線通信システムの捕捉をする度に、その呼接続手段を実現するために、対応したソフトウェア切り替えに伴うハードウェア、ソフトウェアの様々な設定の必要があり、これをそのソフトウェア無線端末が対応する複数の無線通信システムに対してすべて行わなければならず、非常に時間がかかってしまう。
【0009】
[関連技術]
尚、無線通信システムに関する技術としては、特開2003−259457号公報「マルチサービス無線通信システム」(出願人:株式会社日立国際電気他、特許文献1)がある。
特許文献1には、複数の無線システムに接続可能なマルチサービス端末が、自局の位置を検出して、外部の管理サーバに送信し、管理サーバが、利用可能な無線システムの情報を送信し、端末が複数の中から最適な無線システムを選択することが記載されている。
しかしながら、特許文献1には、端末が捕捉可能な無線システムの無線品質を測定して管理サーバに位置情報と共に送信することや、管理サーバが、複数の端末から送信された位置情報と無線システムの無線品質に基づいて、エリア毎に集計しておくこと等は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−259457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のソフトウェア無線機を用いた移動通信システムでは、移動局装置の移動に応じて、最適な無線通信システムを選択するための処理の負荷が大きく、時間がかかるという問題点があった。
また、従来の移動通信システムでは、利用者独自の要求に合わせて無線通信システムを選択するのが困難であるという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、移動局装置の位置に応じて、無線品質が良好で利用者の要求に合った最適な無線通信システムを簡易な処理で選択して接続することができ、利便性を向上させることができる移動通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の無線通信システムと接続可能な複数の移動局装置と、複数の無線通信システムを介して複数の移動局装置と通信を行う制御装置とを備える移動通信システムであって、移動局装置が、受信した信号に基づいて位置情報を取得する位置情報測定部と、無線通信システムで利用されるキャリア周波数の内、受信キャリアレベルが良好なキャリア周波数について、当該各キャリア周波数を使用する無線通信システムの無線品質データを測定するセンシング処理部と、位置情報とキャリア周波数と無線通信システムの無線品質データとシステム名とを対応付けて周辺環境情報データとして制御装置に送信すると共に、定期的に位置情報を付して制御装置に接続先候補の情報を要求する位置環境情報データ取得要求を送信する環境情報処理部と、接続先候補の情報に基づいて接続先の無線通信システムを決定する接続システム判定部とを備え、制御装置が、複数の移動局装置から周辺環境情報データを受信すると、周辺環境情報データに含まれる位置情報に基づいて、周辺環境情報データに含まれるキャリア周波数と無線通信システムの無線品質データとシステム名とを予め設定された複数のエリアに対応付けて位置環境情報データとして記憶し、移動局装置から、位置環境情報データ取得要求を受信すると、当該要求に含まれる位置情報に対応するエリアの位置環境情報データを参照して、無線品質データの良好な無線通信システムを複数抽出し、複数抽出された無線通信システムのシステム名とそれに対応するキャリア周波数及び無線品質データとを接続先候補の情報として移動局装置に送信する制御部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の無線通信システムと接続可能な複数の移動局装置と、複数の無線通信システムを介して複数の移動局装置と通信を行う制御装置とを備える移動通信システムであって、移動局装置が、受信した信号に基づいて位置情報を取得する位置情報測定部と、無線通信システムで利用されるキャリア周波数の内、受信キャリアレベルが良好なキャリア周波数について、当該各キャリア周波数を使用する無線通信システムの無線品質データを測定するセンシング処理部と、位置情報とキャリア周波数と無線通信システムの無線品質データとシステム名とを対応付けて周辺環境情報データとして制御装置に送信すると共に、定期的に位置情報を付して制御装置に接続先候補の情報を要求する位置環境情報データ取得要求を送信する環境情報処理部と、接続先候補の情報に基づいて接続先の無線通信システムを決定する接続システム判定部とを備え、制御装置が、複数の移動局装置から周辺環境情報データを受信すると、周辺環境情報データに含まれる位置情報に基づいて、周辺環境情報データに含まれるキャリア周波数と無線通信システムの無線品質データとシステム名とを予め設定された複数のエリアに対応付けて位置環境情報データとして記憶し、移動局装置から、位置環境情報データ取得要求を受信すると、当該要求に含まれる位置情報に対応するエリアの位置環境情報データを参照して、無線品質データの良好な無線通信システムを複数抽出し、複数抽出された無線通信システムのシステム名とそれに対応するキャリア周波数及び無線品質データとを接続先候補の情報として移動局装置に送信する制御部を備えた移動通信システムとしているので、制御装置は、各エリアにおける無線通信システム毎の最新の無線品質の情報を把握して、システム全体の運用や保守に用いることができ、また、移動局装置は、現在位置に応じた接続先候補が絞り込まれて制御装置から提供されるので、更に利用者によって設定された条件を組み合わせれば、簡易な処理で、無線品質が良好で且つ利用者の要求に合う最適な無線通信システムを選択して接続することができ、セル移動やハンドオーバの処理を軽減すると共に、利便性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る移動通信システム(本システム)の概略構成を示す模式説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る制御装置1の構成ブロック図である。
【図3】移動局装置2の構成ブロック図である。
【図4】周辺環境情報データの概要を示す説明図である。
【図5】図4に示した無線品質データの説明図である。
【図6】位置環境情報データベースの概略説明図である。
【図7】図6に示した位置環境情報データベースにおける各無線通信システムの無線品質データの説明図である。
【図8】電源投入直後の移動局装置2の処理を示すフローチャートである。
【図9】アイドルモードにおける移動局装置2の処理を示すフローチャートである。
【図10】図9の処理202に示した周辺環境センシング処理を示すフローチャートである。
【図11】本システムの移動局装置2の通信モードにおける処理を示すフローチャートである。
【図12】制御装置1の制御部11における位置環境情報データ集計処理を示すフローチャートである。
【図13】制御装置1の制御部11における位置環境情報データ配信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る移動通信システムは、複数の無線通信システムを管理する制御装置を備え、移動局装置が、利用可能な全てのキャリア周波数について定期的に自局周辺でのキャリアレベルを測定し、キャリアレベルが良好なキャリア周波数を使用している無線通信システムを抽出して無線品質を測定し、自局の位置情報を付して周辺環境情報データとして制御装置に送信し、制御装置が、複数の移動局装置から受信した周辺環境情報データを集計して、所定のエリア毎に各無線通信システムの無線品質を平均化して、位置環境情報データとして記憶しておき、移動局装置から位置情報を付した問い合わせを受信すると、当該位置を含むエリアの位置環境情報データを参照して、当該エリアにおいて無線品質の良い無線通信システムを所定数だけリストアップして、それらの位置環境情報データを移動局装置に送信し、移動局装置が、受信した複数の位置環境情報データの中から利用者が任意に設定した条件に応じて最適な無線通信システムを選択して当該無線通信システムに接続するものであり、制御装置で抽出された接続先の候補の中から利用者の要求に応じて適切な接続先システムを簡易な処理で選択することができ、また、ハンドオーバの処理を簡素化することができるものである。
【0017】
また、本移動通信システムは、移動局装置が、キャリアレベルが良好なキャリア周波数について、無線通信システムのセル毎に無線品質を測定し、自局の位置情報を付して周辺環境情報データとして制御装置に送信し、制御装置が、複数の移動局装置から受信した周辺環境情報データを、位置情報に基づいて所定のエリア毎に分類し、各無線通信システムのセル毎の周辺環境情報を平均化して、位置環境情報データベースとして記憶しておき、移動局装置から位置情報を付した問い合わせを受信すると、当該位置を含むエリアの位置環境情報データを参照して、当該エリアにおいて無線品質の良いセルを所定数だけリストアップして、それらの位置環境情報データを移動局装置に送信し、移動局装置が、受信した複数の位置環境情報データの中から利用者が任意に設定した条件に応じて最適な無線通信システムを選択して当該無線通信システムに接続するものであり、制御装置で抽出された接続先の候補の中から利用者の要求に応じて適切な接続先システムを簡易な処理で選択することができ、また、ハンドオーバの処理を簡素化することができるものである。
【0018】
また、本移動通信システムは、制御装置に、予め無線通信システムをリストアップする際の条件として、料金や伝送速度等の選択条件を設定しておいて、制御装置が、移動局装置から問い合わせを受信すると、当該選択条件に応じて料金の安い順、伝送速度の速い順、というように複数の無線通信システムをリストアップして、当該リストアップされた接続先の候補となる無線通信システム名を移動局装置に送信し、移動局装置がリストの中から選択したり、又は当該リストを表示して利用者によって選択可能としている。
【0019】
更に、本移動通信システムは、移動局装置から制御装置に問い合わせを送信する際に選択条件を付して送信し、制御装置が、選択条件に基づいて上位の無線通信システムから順にリストアップして、当該リストアップされた接続先の候補となる無線通信システム名を移動局装置に送信し、移動局装置がリストの中から選択したり、又は移動局装置でリストを表示して利用者によって選択可能としている。
【0020】
[実施の形態に係る移動通信システムの構成:図1]
図1は、本発明の実施の形態に係る移動通信システム(本システム)の概略構成を示す模式説明図である。
図1に示すように、本システムは、複数の通信システム(1),(2),(3)における位置環境情報を管理する制御装置1と、複数の通信システム(1),(2),(3)に接続可能な移動局装置2とを備えている。尚、ここでは説明を簡単にするために移動局装置2は1つしか示していないが、実際には複数の移動局装置2がある。
【0021】
制御装置1は、本システムの特徴部分であり、移動局装置2が最適な無線通信システムを選択するための候補となる無線通信システムの情報を移動局装置2に提供するものである。
具体的には、制御装置1は、移動局装置2から送信された情報に基づいて、予め設定されたエリア毎に対応付けて、各無線通信システムのセル毎にキャリアレベルや伝搬損失等の無線品質の情報を集計して位置環境情報データとして記憶しておき、移動局装置2から当該移動局装置2の位置データを付した問い合わせがあった場合に、当該位置を含むエリアの位置環境情報データを検索して、通信状態の良好な無線通信システムをリストアップして移動局装置2に報知するものである。
尚、ここでは、「エリア」は無線通信システムとは無関係に、地図上で特定の領域を示すものであり、位置座標の特定範囲に対応している。エリアの大きさや形状は任意に設定可能である。
制御装置1の処理については後で詳細に説明する。
【0022】
移動局装置2は、ソフトウェア無線機で構成された移動端末であり、利用者によって携帯されており、ソフトウェアを切り替えてパラメータの設定を変更することにより、無線通信システム(1)、無線通信システム(2)、無線通信システム(3)…に接続可能となっている。具体的には、移動局装置2は、各通信システムの基地局(又は親局)41,42,43…と無線通信を行う。また、無線通信システムを介して、制御装置1と通信を行う。
【0023】
本システムの特徴として、移動局装置2は、自局が位置している位置情報と、その場所において捕捉可能な無線通信システムのセルについて、無線品質を測定し、制御装置1に報知する処理を行う。
また、定期的に、制御装置1に対して接続先として最適な無線通信システムの候補を問い合わせ、制御装置1からの接続先の候補の情報に基づいて、利用者の要望に合った適切な無線通信システムを選択して接続する。
移動局装置2の処理については、後で詳細に説明する。
【0024】
また、本システムでは、各無線通信システムの基地局41,42,43…が、移動局装置2から制御装置1への送信信号を受信すると、当該上り回線における無線品質を測定して、制御装置1に通知するようになっている。
【0025】
[制御装置1の構成:図2]
次に、制御装置1の構成について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る制御装置1の構成ブロック図である。
図1に示すように、本システムの制御装置1は、コンピュータで構成され、基本的に、制御部11と、記憶部12と、インタフェース部13とを備えている。
制御部11は、CPU等で構成される処理装置であり、記憶部12に記憶されているプログラムを読み込んで起動することにより、移動局装置2から受信した無線品質に関するデータを集計して位置環境情報データを作成したり、問い合わせに応じて位置環境情報データを提供するといった処理を行う。
【0026】
尚、本実施の形態では、移動局装置2で測定して制御装置1に送信される無線品質に関するデータを「周辺環境情報データ」と称し、制御装置1において、周辺環境情報データがエリア毎に集計され記憶されたデータを「位置環境情報データ」と称するものとする。
【0027】
記憶部12は、制御部11における処理プログラムを記憶すると共に、移動局装置2からの周辺環境情報データを集計した位置環境情報データを記憶する位置環境情報データベース14を備えている。位置環境情報データベース14については後で説明する。
インタフェース部13は、各通信システム(1)(2)(3),…に接続してそれぞれの無線通信システムの基地局(親局)41,42,43…と通信を行い、各無線通信システムを介して移動局装置2と通信する。
【0028】
[移動局装置2の構成:図3]
次に、移動局装置2の構成について図3を用いて説明する。図3は、移動局装置2の構成ブロック図である。
図3に示すように、移動局装置3は、GPS信号受信部21と、LCS(LoCation Service:位置情報サービス)測定部22と、無線部23と、キャリアレベル測定部24と、ベースバンド変復調部25と、無線品質測定部26と、報知情報取得部27と、位置環境情報処理部29と、接続システム判定部30と、アプリケーションデータ送受信部31と、主制御部32とを備えている。
【0029】
各構成部分について説明する。
GPS信号受信部21は、GPSの無線周波数帯域の信号の受信処理を行い、ベースバンド帯域に変換するものである。
LCS測定部22は、受信したGPS信号から移動局装置2の位置情報を取得するものである。尚、LSCとは、3GPPで提唱されている位置情報取得手法である。
尚、請求項における位置情報測定部は、GPS信号受信部21及びLCS測定部22の機能を備えたものである。
【0030】
無線部23は、各無線通信システムの基地局装置と移動局装置2との間で通信される信号の送受信処理を行い、無線周波数帯域の信号とベースバンド帯域の信号との帯域変換をするものである。特に、本システムにおいては、無線部23は、キャリア周波数毎の無線品質の測定や、制御装置1との周辺環境情報データ又は位置環境情報データの送受信に用いられる。
【0031】
キャリアレベル測定部24は、無線部23に設定されている周波数帯の帯域全体に亘って、後述する周辺環境センシング制御部28の指示に従って、キャリア周波数毎の受信レベルを測定する。つまり、基地局又は親局からの下り信号の受信レベルを測定する。
ベースバンド変復調部25は、周辺環境センシング制御部28の指示に従って、無線部23からのベースバンド信号についてベースバンド復調処理を行い、また、制御装置1に対して周辺環境情報データを送信するためにベースバンド変調処理を行って無線部23に出力する。
【0032】
無線品質測定部26は、周辺環境センシング制御部28の指示に従って、ベースバンド変復調部25でベースバンド復調された信号について無線品質を測定する。無線品質としては、タイミング、伝搬損失、SIR(Signal-to-Interference Ratio:希望波対干渉波電力比)、BLER(BLock Error Rate:ブロック誤り率)等が考えられる。無線品質測定部26では、移動局装置2の現在地及びその周辺におけるセル毎(無線通信システムの周辺局毎)の無線品質が測定される。
【0033】
報知情報取得部27は、ベースバンド変復調部25で復調されたデータから、各無線通信システムの報知情報を取得する部位である。具体的には、制御装置1から送信された位置環境情報データに含まれる各無線品質の情報や、システムパラメータ等が含まれる。
【0034】
周辺環境センシング制御部28は、無線部23、キャリアレベル測定部24、ベースバンド変復調部25、無線品質測定部26、報知情報取得部27を制御して、定期的に移動局装置2の現在地における無線環境を検出する周辺環境センシング処理を行う。
また、各無線通信システムの報知情報上で報知されているシステムパラメータなどの情報を検出するものである。
尚、請求項に記載したセンシング処理部は、無線部23、キャリアレベル測定部24、ベースバンド変復調部25、無線品質測定部26、報知情報取得部27、周辺環境センシング制御部28の機能を備えたものである。
【0035】
環境情報処理部29は、検出されたキャリアレベルを含む無線品質と取得された位置情報とを関連付けたものを周辺環境情報データとして生成して記憶すると共に、制御装置1から周辺環境情報データの報告を要求する周辺環境情報データ報告要求に応じて、ベースバンド変復調部25、無線部23を介して制御装置1に周辺環境情報データを送信する。
また、環境情報処理部29は、移動局装置2の現在地に対応する位置環境情報データの問い合わせを行うための位置環境情報データ取得要求の制御データを作成し、制御装置1に送信する。
【0036】
接続システム判定部30は、問い合わせに応じて制御装置1から送信された移動局装置2の現在地に対応する位置環境情報データを用いて、接続するシステムを決定したり、あるいは接続するシステムの候補を決定して、主制御部32に通知する。
接続システム判定部30には、予め、どのような基準で複数の候補の中から接続すべき無線通信システムを選択するか、という条件が記憶されている。条件は、利用者が任意に設定可能である。
【0037】
接続システム判定部30において接続システムを決定して通知する場合には、条件に最も適した無線通信システムを1つ選択し、当該無線通信システム名を主制御部32に通知する。また、接続システムの候補を通知する場合には、条件を考慮して良好なものから複数抽出して、主制御部32に通知し、表示部で表示させて利用者によって選択させるようにしている。
【0038】
アプリケーションデータ送受信部31は、移動局装置2が実行する通信アプリケーションに伴うデータ(ユーザデータ)の送受信処理を行う。
主制御部32は、上記各構成部分を統括制御しながら、移動局装置2としての呼処理等を実行するものである。
【0039】
[本システムの動作の概要:図1,2,3]
次に、本システムの動作の概要について図1,2,3を用いて説明する。
移動局装置2は、定期的に自局の位置情報を測定すると共に、定期的に利用可能なキャリア周波数のキャリアレベルを測定し、良好なものについて無線品質の測定を行い、環境情報処理部29が、測定した位置情報と無線品質とを対応付けた周辺環境情報データを生成して記憶しておく。そして、制御装置1からの周辺環境情報データ報告要求を受信すると、それに応じて制御装置1に周辺環境情報データを送信する。
移動局装置2において、位置情報及び無線品質を測定する処理を環境センシング処理と呼ぶものとする。
【0040】
制御装置1では、複数の移動局装置2からの周辺環境情報データを受信して、集計を行う。
ここで、制御装置1は、予めサービス提供を行う地域を所定のエリアに分割しておき、エリアに対応付けて、各無線通信システムからの周辺環境情報データを集計して記憶しておく。その際、制御装置1は、キャリア周波数及び無線通信システム毎に複数の移動局装置2から送信された周辺環境データを平均化して、エリアに対応付けて位置環境情報データとして記憶しておく。
つまり、位置環境情報データは、エリア毎に、利用可能な各無線通信システムの最新の無線品質の状況が記憶されているものである。
【0041】
また、移動局装置2は、接続すべき最適な無線通信システムの候補の情報を取得するために、定期的に位置情報を測定して、環境情報処理部29が、制御部1に当該位置情報を付して位置環境情報データの要求を送信する。
【0042】
そして、制御装置1は、移動局装置2から位置情報を含む位置環境情報データの要求を受信すると、要求に含まれる位置情報をキーとして記憶している位置環境情報データを検索し、当該位置情報に対応するエリアにおいて通信品質が良好な無線システムを所定数抽出して、それらのシステムに関するシステム名及び位置環境情報データをリストとして移動局装置2に送信する。
【0043】
移動局装置2では、制御装置1から受信したリストに基づいて、予め設定されている条件に従って接続する無線通信システムを選択し、当該システムに接続する。又は、リストに記載された無線通信システム名の中から接続先候補となる複数の無線通信システム名を表示して、利用者に選択させる。
このようにして、本システムの動作の概略が行われるものである。
【0044】
[周辺環境情報データ概要:図4]
次に、移動局装置2から制御装置1に対して送信される周辺環境情報データについて図4を用いて説明する。図4は、周辺環境情報データの概要を示す説明図である。
移動局装置2において定期的に行われる周辺環境センシング処理では、キャリアレベル測定部24が、全てのキャリア周波数(キャリア周波数#0,#1,…)について、それぞれキャリアレベルを測定して周辺環境センシング制御部28に出力する。
【0045】
周辺環境センシング制御部28では、キャリアレベルの上位から所定数(x)のキャリア周波数を抽出し(キャリア周波数#a,#b,…)、無線品質測定部26に無線品質測定の指示を出力する。つまり、無線品質を測定するのは、現在地において捕捉可能なx個のキャリアである。
尚、1つのキャリアを複数の無線通信システムや同一システムの複数周辺局が使用していることもあり、その場合には、同一キャリア周波数に対応して複数のセルが存在する。
【0046】
そして、無線品質測定部26が、抽出されたx個のキャリア周波数について、当該キャリア周波数を利用している全ての無線通信システム(無線通信システム名#m,#n,…)の無線品質を測定して環境情報処理部29に出力する。
【0047】
図4に示すように、周辺環境情報データとしては、移動局装置2が測定した位置データ(x1,y1)と、当該移動局装置2の位置においてキャリアレベルが高いx個のキャリア周波数(キャリア周波数#a,#b,…)のキャリアレベルが記憶され、更に、当該キャリア周波数を使用する全て無線通信システムの無線品質データが記憶されている。
無線品質データについては後述する。
【0048】
[無線品質データ:図5]
図4に示した無線品質データについて図5を用いて具体的に説明する。図5は、図4に示した無線品質データの説明図である。
無線品質データには、キャリアレベルが良好なx個のキャリア周波数について、各キャリア周波数を使用している無線通信システムの周辺局毎(セル毎)に測定された無線品質が含まれるものである。
周辺局とは、当該無線通信システムの基地局又は親局であり、移動局装置2は、受信信号に含まれる報知情報から周辺局番号を特定する。
移動局装置2で測定される無線品質データとしては、タイミングと、伝搬遅延と、SIRと、BLERとが含まれる。
【0049】
つまり、移動局装置2で測定される無線品質データは、キャリア周波数#a,#b,…のそれぞれについての、無線通信システム名#m,#n,…の周辺局毎に測定されたタイミングと、伝搬遅延と、SIRと、BLERの測定データである。図5の例では、キャリア周波数#aの無線通信システム名#mでは、周辺局番号#pと#qが検出されており、それぞれについて無線品質データが測定されている。
【0050】
従って、制御装置1からの周辺環境情報データ報告要求に応じて、移動局装置2の環境情報処理部29から送信される周辺環境情報データは、図4と図5の内容を全て含むものであり、各移動局装置2の位置情報と、その位置において捕捉可能な所定数のキャリア周波数及びそのキャリアレベルと、当該キャリア周波数を使用している無線通信システムのセル(周辺局)毎の下り回線の無線品質データとを対応付けた情報となっている。
【0051】
[位置環境情報データベース:図6]
次に、制御装置1の記憶部13に設けられている位置環境情報データベースについて、制御装置1の動作を交えて説明する。図6は、位置環境情報データベースの概略説明図である。
まず、移動局装置2から制御装置1宛に周辺環境情報データが送信されると、当該移動局装置2が接続している無線通信システムの基地局又は親局がその信号を受信して、その際に移動局装置2から当該基地局への上り回線の無線品質を測定する。上り回線の無線品質としては、上り干渉量や、最大(許容)伝送速度等がある。基地局は、周辺環境情報データと上り回線の無線品質のデータとを制御装置1に送信する。
【0052】
制御装置1は、複数の無線通信システムを介して、複数の移動局装置2からの、図4,5に示した周辺環境情報データと、それに伴う上り回線の無線品質データを受信して、エリア毎に集計し、エリア毎の位置環境情報データとして位置環境情報データベース14に記憶しておく。
尚、制御装置1には、予めエリア情報として、エリア番号と当該エリアがカバーする領域の位置データ(x、y)との対応付けが記憶されており、位置データが特定されるとどのエリアに属するか認識可能となっている。
【0053】
つまり、制御装置1は、受信した周辺環境情報データ及び上り回線の無線品質データを、位置データに基づいてどのエリアに対応するかを判定し、同一エリアに対応付けられた複数の周辺環境情報データについて、更に、キャリア周波数、無線通信システム名、周辺局番号によって分類し、データの平均化を行う。
【0054】
具体的には、制御装置1は、同一エリアの同一キャリア周波数についてキャリアレベルを平均化し、更に、無線通信システム名及び周辺局番号毎に、下り回線の無線品質のデータ(SIR,BLER等)と、上り回線の無線品質のデータを平均化する。
そして、各エリアにおいて捕捉可能なキャリア周波数及びそのキャリアレベルと、セル毎の(周辺局毎の)無線品質のデータを、エリア毎の位置環境情報データとして記憶する。
【0055】
図6に示すように、位置環境情報データベースは、予め設定されているエリア番号毎に、当該エリア内に位置する移動局装置2で捕捉されたキャリア周波数番号に対応して、キャリアレベルと、当該キャリア周波数を使用する全ての無線通信システムの無線品質データとを記憶しているものである。
記憶されている項目は、図4に示した周辺環境情報データと同様であるが、図6の位置環境情報データは、複数の移動局装置2から送信された周辺環境情報データをエリア毎に集計したものである点が異なっている。
【0056】
図6の例では、図4,5の周辺環境情報データを送信した移動局装置2が位置しているエリア(エリア#0)の位置環境情報データを示している。つまり、位置情報(x1,y1)の地点を含むエリアの位置環境情報データである。
図6に示すように、エリア番号#0に対応して、キャリア周波数番号#a,#b,#c…と、それぞれのキャリアレベルと、各キャリア周波数を使用している無線通信システム#m,#n…の無線品質データが記憶されている。
【0057】
[位置環境情報データベースにおける無線品質データ:図7]
図6に示した位置環境情報データベースにおける各無線通信システムの無線品質データについて図7を用いて説明する。図7は、図6に示した位置環境情報データベースにおける各無線通信システムの無線品質データの説明図である。
図7に示すように、位置環境情報データベースにおける無線品質データは、図5に示した周辺環境情報データベースにおける無線品質データと同様に、キャリア周波数#a,#b,…のそれぞれについて、無線通信システム名#m,#n,…の周辺局#p,#q毎に測定された、下り回線の無線品質データである、タイミングと、伝搬遅延と、SIRと、BLERのデータを含み、更に、上り回線の無線品質データとして、上り干渉量、最大伝送速度、セル半径等が付加されて記憶されている。尚、最大伝送速度は、その時点での無線品質に応じて許容される最大の伝送速度である。
【0058】
従って、位置環境情報データベースは、周辺環境情報データをエリア毎に集計した、そのエリアで捕捉可能なキャリア周波数及び無線通信システムの無線品質の情報に、更に網側で情報を付加して記憶しているものであり、図6,図7の内容を全て含むものである。
【0059】
[移動局装置2の処理]
次に、移動局装置2の処理について説明する。
[電源投入直後の移動局装置2の処理:図8]
まず、電源投入直後の移動局装置2の処理について図8を用いて説明する。図8は、電源投入直後の移動局装置2の処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、電源が投入されると、移動局装置2は、予め設定されているデフォルト(default)の無線通信システムで立ち上がり(100)、LCS測定部22で位置測定を行い(102)、環境情報処理部29に出力する。環境情報処理部29は、受信した位置情報を記憶する。
【0060】
そして、環境情報処理部29が、当該位置において接続先となる接続先候補の無線通信システムの情報を取得するために、制御装置1(図では「網側」)に位置環境情報データの問い合わせを行う。具体的には、環境情報処理部29は、移動局装置2の識別番号を含む位置環境情報取得要求の制御データを作成し、制御装置1に送信する(104)。
【0061】
そして、無線部23で制御装置1から、接続先候補の無線通信システムのシステム名とキャリア周波数及び無線品質データを含む位置環境情報データを受信すると、環境情報処理部29が、位置環境情報データより各パラメータを取り出す(106)。パラメータとは、位置環境情報データに含まれる個々のデータであり、制御装置1でリストアップされた当該位置で利用可能な複数の無線通信システムについてのキャリア周波数や、SIR、最大伝送速度等の無線品質の情報である。
そして、接続システム判定部30が、パラメータの内容に基づいて、予め記憶されている条件を考慮してどのシステムと接続すべきかを判断する(108)。
【0062】
判定の条件としては、例えば、上りの干渉量が一番少ないシステムを選択するとか、最大伝送速度の一番速いシステムを選択するとか、伝搬損失が一番小さいシステムを選択する、といったように、利用者が各種パラメータやその組み合わせによって任意に条件を設定しておくことが可能である。また、料金等の無線品質とは関係ないパラメータを無線通信システムに対応付けて移動局装置2に記憶しておき、料金を選択条件に含めることも可能である。
【0063】
これにより、制御装置1から提供された無線品質が良好な複数の無線通信システムの中から、利用者にとって最も都合のよい無線通信システムを選択することができるものである。
また、位置環境情報データで受信した複数の無線通信システム名を接続先候補として移動局装置2の表示部に表示させて、利用者に選択させるようにしてもよい。
【0064】
そして、移動局装置2の主制御部32は、接続システム判定部30又は操作部で選択された無線通信システムに接続し、アイドルモードに移行する(110)。このようにして、移動局装置2における電源投入時の処理が行われるものである。
【0065】
尚、図8の処理102〜108を接続システム判定処理と称する。本システムの移動局装置2では、定期的に接続システム判定処理を行うことにより、常に利用者にとって最適な無線通信システムへの接続を可能とするものである。
【0066】
[アイドルモードにおける移動局装置2の処理:図9]
次に、アイドルモードにおける移動局装置2の処理について図9を用いて説明する。図9は、アイドルモードにおける移動局装置2の処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、移動局装置2の周辺センシング制御部28は、アイドルモードになると、周辺環境センシングを開始するタイミングであるかどうかを判断する(200)。
周辺環境センシングを開始するタイミングではなかった場合(Noの場合)には、移動局装置2は、処理204に移行する。
【0067】
処理200で、周辺環境センシングを開始するタイミングであった場合(Yesの場合)には、周辺環境センシング制御部28は、無線部23、キャリアレベル測定部24、無線品質測定部26に対して測定開始を指示して、キャリアレベルを測定し、良好なものについて無線品質を測定して環境情報処理部29に出力する。
そして、環境情報処理部29は、記憶している最新の位置情報と、周辺環境センシング処理で測定されたキャリア周波数及びそのキャリアレベルと無線品質データとに基づいて周辺環境情報データを作成し、記憶しておく。キャリアレベルや無線品質の測定から周辺環境情報データの生成までの処理を周辺環境センシング処理とする(202)。
周辺環境センシング処理については後で詳細に説明する。
【0068】
そして、環境情報処理部29は、制御装置1(図では「網側」)から周辺環境情報データの報告要求があったかどうかを判断し(204)、要求がなかった場合(Noの場合)には、移動局装置2は処理208に移行する。
また、処理204で制御装置1から周辺環境情報データの要求があった場合(Yesの場合)には、環境情報処理部29は、周辺環境情報データをベースバンド変復調部25及び無線部23を介して制御装置1に送信する(206)。
【0069】
そして、環境情報処理部29は、接続システムを判定するタイミングになったかどうかを判断し(208)、接続システム判定の開始タイミングであれば(Yesの場合)、図8の処理102〜処理108に示した接続システム判定処理を行う(210)。
処理208で接続システム判定の開始タイミングでなければ(Noの場合)、移動局装置2は処理200に移行する。
このようにして移動局装置2におけるアイドルモードの処理が行われるものである。
【0070】
[周辺環境センシング処理:図10]
次に、図9の処理202に示した周辺環境センシング処理について図10を用いて説明する。図10は、図9の処理202に示した周辺環境センシング処理を示すフローチャートである。
移動局装置2の周辺環境センシング制御部28は、まず、無線部23にキャリアレベルを測定するキャリア周波数を設定する(300)。無線部23では、設定されたキャリア周波数で受信信号のベースバンド変換を行う。
【0071】
そして、キャリアレベル測定部24が、設定されたキャリア周波数についての下りキャリアレベルを測定し(302)、周辺環境センシング制御部28に出力する。周辺環境センシング制御部28では、キャリア周波数とキャリアレベルとを対応付けて記憶しておく。
【0072】
そして、周辺環境センシング制御部28は、利用可能な帯域に含まれる全てのキャリア周波数を設定し終わったかどうか、つまり最終キャリアまでキャリアレベルの測定を行ったかどうかを判断し(304)、まだキャリア周波数が残っている場合(Noの場合)には、処理300に移行して次のキャリア周波数を設定する。
【0073】
処理304で、全てのキャリア周波数についてキャリアレベルの測定が終わった場合(Yesの場合)には、周辺環境センシング制御部28が、記憶した全てのキャリア周波数のキャリアレベルの一覧であるキャリアレベルリストを作成する(306)。
そして、周辺環境センシング制御部28は、キャリアレベルリストをキャリアレベルの大きい順に並べ替えて(ソートして)、上位x個のキャリア周波数を抽出する(308)。xは、予め設定されている所定数である。
【0074】
次に、抽出されたx個のキャリア周波数について、当該キャリア周波数を用いている無線通信システムの無線品質を測定する。
まず、周辺環境センシング制御部28は、抽出されたx個の中のキャリア周波数の中の最初のキャリア周波数を無線部23に設定する(310)。
更に、周辺環境センシング制御部28は、ベースバンド変復調部24、無線品質測定部26、報知情報取得部27に、当該キャリア周波数を用いている無線通信システムのパラメータを設定する(312)。
【0075】
そして、移動局装置2の報知情報取得部27は、無線部23及びベースバンド変復調部24を介して受信した信号から、当該無線通信システムの報知情報を解析して、接続した周辺局のID、システム名、及び他のシステムパラメータを取得して(314)、システム名及び周辺局IDを環境情報処理部29に出力する。
また、無線品質測定部26が、当該無線通信システムについてSIRやBLER等の無線品質を測定し(316)、環境情報処理部29に出力する。
【0076】
そして、周辺環境センシング制御部28は、当該キャリア周波数を使用している無線通信システムは他にないかどうかを確認し(318)、他にもある場合(Noの場合)には、処理312に移行して次の無線通信システムを設定し、同様の処理を繰り返す。
また、処理318で他の無線通信システムがない場合(Yesの場合)には、周辺環境センシング制御部28は、処理308で抽出されたx個のキャリア周波数についての無線品質の測定が終わったかどうかを判断し(320)、終わっていない場合には(Noの場合)、処理310に移行して次のキャリア周波数を設定する。
【0077】
処理320において、x個のキャリア周波数についての無線品質の測定が終わった場合(Yesの場合)には、環境情報処理部29が、位置情報と、キャリア周波数及びキャリアレベルと、無線品質データと、無線システム名及び周辺局IDに基づいて、周辺環境情報データを作成し、記憶しておく(322)。
このようにして、周辺環境センシング処理が行われるものである。
【0078】
[通信モードにおける処理:図11]
次に、移動局装置2の通信モードにおける処理について図11を用いて説明する。図11は、本システムの移動局装置2の通信モードにおける処理を示すフローチャートである。
通信モードは、移動局装置2の通信中の動作モードであり、移動に伴うセルやシステムの移行を行うモードである。通信中は、ハンドオーバ状態を経て同一無線通信システム内でセルを移動したり、異なる無線通信システムに移動することが予想される。
【0079】
図11に示すように、移動局装置2は、通信が開始されると、その位置における最適なシステムで通信できるように、接続システム判定処理を行う(400)。
そして、主制御部32は、選択された最適システムで、従来と同様の呼接続処理を実施する(402)。呼接続後は、通常のアプリケーションデータの送受信や呼接続中のセルの品質測定等を行う(404)。
【0080】
そして、主制御部32は、呼接続中のセルの品質や、通信そのものの品質が所定の品質を満たしているかどうかを監視して(406)、呼接続セルの品質が所定の品質を満たしていれば(Yesの場合)処理404に移行する。
【0081】
また、処理406で、呼接続中のセルの品質が所定の品質未満であった場合(Noの場合)には、移動局装置2の環境情報処理部29及び接続システム判定部30は、接続システム判定処理を行う(408)。
そして、接続システム判定部30は、受信した位置環境情報データに含まれる接続先候補の情報に基づいて、現在呼接続を行っているセルよりも品質のよいシステムのセルや、同じシステムの別のセルがあるかどうかを判断し、良好なものがあればそれを選択して、主制御部32に通知する。主制御部32は、当該システム又は当該セルに移行する処理を行う(412)。
【0082】
このように、本システムの移動局装置2では、制御装置1からの位置環境情報データに、現在の位置で検出可能なセルの情報がその無線品質の情報と共に含まれているので、無線品質を確認することにより、移行先のセルの選択精度を高めることができるものである。
このようにして通信モードにおける移動局装置2の処理が行われるものである。
【0083】
[制御装置1の処理]
次に、制御装置1の処理について説明する。
[位置環境情報データ集計処理:図12]
まず、制御装置1における位置環境情報データ集計処理について図12を用いて説明する。図12は、制御装置1の制御部11における位置環境情報データ集計処理を示すフローチャートである。
図12に示すように、制御装置1の制御部11(以下「制御装置1」とする)は、定期的に無線通信システムを介して各移動局装置2に周辺環境情報データを要求する(500)。周辺環境情報データには、各移動局装置2が検出したキャリアレベル上位x個のセル情報が無線品質データと共に含まれている。尚、セル情報には、キャリア周波数及びキャリアレベル、無線通信システム名、周辺局IDが含まれる。
【0084】
そして、制御装置1は、無線通信システムを介して移動局装置2から周辺環境情報データを受信すると、周辺環境情報データに含まれる位置情報に基づいて、エリア毎(エリア番号毎)に対応付けて記憶する(504)。尚、制御装置1が受信する周辺環境情報データには、上りの無線品質データが付されている。
【0085】
更に、制御装置1は、エリア毎に分類された周辺環境情報データに基づいて、キャリア周波数、無線通信システム、周辺局毎に下りの無線品質データを平均化する(506)。
そして、制御装置1は、網側で認識できる、上り干渉量、最大伝送速度、セル半径等の情報を平均化して得られた上りの無線品質データを付加して、位置環境情報データを生成する(508)。これにより、各エリアで捕捉可能な無線通信システムのセル毎に無線品質データが平均化されるものである。
そして、制御装置1は、エリア毎の位置環境情報データを位置環境情報データベース14に記憶する(510)。
このようにして位置環境情報データ集計処理が行われるものである。
【0086】
[位置環境情報データ配信処理:図13]
次に、制御装置1における位置環境情報データ配信処理について図13を用いて説明する。図13は、制御装置1の制御部11における位置環境情報データ配信処理を示すフローチャートである。尚、位置環境情報配信処理は、接続先候補の情報を配信する処理である。
図13に示すように、制御装置1は、移動局装置2から位置環境情報データの取得要求を受信したかどうかを判断し(600)、受信した場合(Yesの場合)には、当該要求に含まれる移動局装置2の位置情報を読み取って、位置情報に対応するエリア番号を特定する(602)。
【0087】
そして、制御装置1は、当該エリア番号の位置環境情報データを参照して、無線品質の良好なセルを所定数抽出する(604)。抽出する際の基準としては、予め制御装置1に設定されているパラメータ又は複数のパラメータを組み合わせた条件を用いる。例えば、最大伝送速度が大きい順、SIRが良好な順、といった条件で抽出する。キャリアレベルを条件とすることも可能である。尚、セルを抽出するというのは、特定の無線通信システムの特定の周辺局を抽出することである。
【0088】
そして、制御装置1は、抽出した複数セルの位置環境情報データを無線品質の良好な順にリストにして、接続先候補の情報として要求元の移動局装置2に送信する。
接続先候補の情報として送信される情報は、抽出した複数セルの位置環境情報データのうち、キャリア周波数、無線通信システム名、無線品質データを含むものである。
【0089】
また、接続先候補の情報は、位置環境情報データの全ての項目ではなく、例えば、SIRや最大伝送速度等、予め制御装置1に設定された特定の項目のみを送信することも可能である。
このようにして制御装置1の位置環境情報データ配信処理が行われるものである。
【0090】
これにより、要求元の移動局装置2は、現在地において接続可能な無線通信システム及び周辺局の候補及びそれらの無線品質情報を制御装置1から位置環境情報データとして受信することができ、位置環境情報データに基づいて、簡単な処理で精度よく良好な品質の無線通信システム及び周辺局を接続先のシステムとして選択することができるものである。
【0091】
また、制御装置1に、接続先候補を抽出する条件として、キャリアレベルの大きい順や、料金の安い順といった条件を設定しておき、制御装置1が、当該エリアで捕捉可能なセルの中から当該条件に従って上位のセルを選択して条件に合致する順にリストアップして、移動局装置2に送信することも可能である。また、無線品質のパラメータと、これらの条件を組み合わせた条件としてもよい。
【0092】
更に、移動局装置2が、位置環境情報データ取得要求に接続先候補を抽出するための条件を含めて送信し、制御装置1が、捕捉可能なセルの中から当該条件に従って上位のセルを選択して条件に合致する順にリストアップして、移動局装置2に送信するようにしてもよい。
【0093】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る移動通信システムによれば、移動局装置2が、定期的に受信したGPS信号から位置情報を取得し、利用可能なキャリア周波数についてキャリアレベルの測定を行い、キャリアレベルが大きい所定数のキャリア周波数について、当該キャリア周波数を使用している無線通信システムのセル毎に下りの無線品質を測定し、環境情報処理部29が、位置情報と、キャリア周波数と、無線通信システムのセル毎の無線品質のデータとを対応付けて周辺環境情報データとして制御装置1に送信し、制御装置1が、複数の移動局装置2から受信した周辺環境情報データと無線通信システムで付加された上りの無線品質のデータを、各周辺環境情報データに含まれる位置情報に基づいて、予め設定されているエリア毎に対応付け、無線通信システムの周辺局毎(セル毎)に無線品質を平均化して位置環境情報データを生成して、位置環境情報データベース14に記憶しておき、移動局装置2から、位置情報を付加した位置環境情報データ取得要求を受信すると、当該位置情報に対応するエリアの位置環境情報データを参照して、無線品質が良好な無線通信システムの周辺局を抽出して、当該セルの位置環境情報データを接続先候補の情報として当該移動局装置2に送信し、移動局装置2では、接続システム判定部30が、受信した位置環境情報データを解析して、予め設定された選択条件に基づいて接続システムを決定して主制御部32に通知し、主制御部32が当該無線通信システムに接続するようにしているので、制御装置1ではエリア毎に各無線通信システムの最新の上り及び下りの無線品質の状況を把握することができ、移動局装置2では、位置情報を送信すれば当該位置において接続可能なセルの情報としてキャリア周波数及び無線通信システム及び周辺局の複数の情報とそれぞれの無線品質を取得して、その中から利用者の要求に合ったシステムを選択すればよく、簡易な処理で最適なシステムに接続することができ、ハンドオーバの処理を軽減し、利便性を向上させることができる効果がある。
【0094】
また、制御装置1に予め接続候補のセルを抽出するための条件を設定しておき、制御装置1が、当該条件に合致する順にセルをリストアップして、移動局装置2に送信するようにしてもよい。
【0095】
更に、移動局装置2が、位置環境情報データ取得要求を送信する際に、接続候補のセルを抽出する条件を付加して送信し、制御装置1が当該条件に従って候補のセルをリストアップして送信してもよく、利用者の要求に応じてより適切な接続先候補を抽出することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、特に移動局装置におけるセルの移動処理や通信中のハンドオーバ処理を軽減し、利用者の利便性を向上させることができる移動通信システムに適している。
【符号の説明】
【0097】
1…制御装置、 2…移動局装置、 11…制御部、 12…記憶部、 13…インタフェース部、 21…GPS信号受信部、 22…LCS測定部、 23…無線部、 24…キャリアレベル測定部、 25…ベースバンド変復調部、 26…無線品質測定部、 27…報知情報取得部、 28…周辺環境センシング制御部、 29…環境情報処理部、 30…接続システム判定部、 31…アプリケーションデータ送受信部、 32…主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信システムと接続可能な複数の移動局装置と、前記複数の無線通信システムを介して前記複数の移動局装置と通信を行う制御装置とを備える移動通信システムであって、
前記移動局装置が、受信した信号に基づいて位置情報を取得する位置情報測定部と、前記無線通信システムで利用されるキャリア周波数の内、受信キャリアレベルが良好なキャリア周波数について、当該各キャリア周波数を使用する無線通信システムの無線品質データを測定するセンシング処理部と、前記位置情報と前記キャリア周波数と前記無線通信システムの無線品質データとシステム名とを対応付けて周辺環境情報データとして前記制御装置に送信すると共に、定期的に前記位置情報を付して前記制御装置に接続先候補の情報を要求する位置環境情報データ取得要求を送信する環境情報処理部と、前記接続先候補の情報に基づいて接続先の無線通信システムを決定する接続システム判定部とを備え、
前記制御装置が、前記複数の移動局装置から前記周辺環境情報データを受信すると、前記周辺環境情報データに含まれる位置情報に基づいて、前記周辺環境情報データに含まれるキャリア周波数と無線通信システムの無線品質データとシステム名とを予め設定された複数のエリアに対応付けて位置環境情報データとして記憶し、前記移動局装置から、前記位置環境情報データ取得要求を受信すると、前記要求に含まれる位置情報に対応するエリアの位置環境情報データを参照して、無線品質データの良好な無線通信システムを複数抽出し、前記複数抽出された無線通信システムのシステム名とそれに対応するキャリア周波数及び無線品質データとを前記接続先候補の情報として前記移動局装置に送信する制御部を備えたことを特徴とする移動通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−250065(P2011−250065A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120292(P2010−120292)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】