説明

移植機

【課題】走行機体を下降させた植付作業の途中でも、水平制御機構のロックを簡単に解除することができて、植付作業の途中で水平制御機構のロックを解除した場合でも、植付作業が途中で中断して圃場に植付けのない部分が生じるのを防止できるようにする。
【解決手段】ロック解除レバーは、ロックレバーをロック位置に係止する係止位置と、ロックレバーのロック位置への係止が外れる退避位置とに移動自在とされ、ロック解除レバーを退避位置に操作したときにロックレバーがロック解除位置に移動するように、ロックレバーをロック位置側からロック解除位置側に向けて付勢するロックレバー付勢手段が設けられ、ロック解除レバーを退避位置側から係止位置側に向けて付勢する解除レバー付勢手段が設けられ、昇降レバーが上昇側に操作されたときに、昇降レバーに連動してロック解除レバーを解除レバー付勢手段の付勢に抗して退避位置に移動させるべくロック解除レバーを昇降レバーに連動させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の左右が水平になるように左右の車輪を相対的に昇降移動させる水平制御機構が設けられた移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移植機には、走行機体が左右の車輪によって昇降可能に支持され、昇降レバーが下降側に操作されたときに、左右の車輪を上昇させて走行機体を下降させ、昇降レバーが上昇側に操作されたとき、左右の車輪を下降させて走行機体を上昇させるように構成され、走行機体の左右が水平になるように左右の車輪を互いに昇降移動させる水平制御機構が設けられ、水平制御機構を水平制御不能にロックするためのロックレバーが設けられ、ロックレバーが、水平制御機構を水平制御不能にロックするロック位置と、水平制御機構の水平制御を許容するロック解除位置とに移動自在とされたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の移植機では、傾斜地で植付作業を行う場合は、走行機体が左右方向に関して水平姿勢とされた状態で走行機体の水平制御機構をロックして植付作業を行う場合がある。この場合にあっては、畝R端において旋回するときに、走行機体を上昇させると共に、走行機体が過度に左右に傾斜するのを防ぐため、水平制御機構のロックを解除してから旋回し、その後、ロックレバーをロック位置に操作して、再び水平制御機構をロックすると共に走行機体を植付位置まで下降させるようにしているが、この水平制御のロック解除操作が面倒であった。
【0004】
そこで、従来の移植機では、昇降レバーとロックレバーとをケーブルによって連動連結して、昇降レバーを上昇側にするとロックレバーがロック位置からロック解除位置に自動的に切り替わるように構成していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−269975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の移植機にあっては、走行機体を下降させた植付作業の途中で、水平制御機構のロックを解除するには、走行機体を上昇させて植付作業を中断する必要があり、植付作業の途中では水平制御のロックを簡単に解除することができないという問題があった。また、植付作業の途中で水平制御機構のロックを解除した場合、植付作業が途中で中断して圃場に植付けのない部分が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、昇降レバーを上昇位置に操作するとロックレバーがロック位置からロック解除位置に自動的に切り替わると同時に、走行機体を下降させた植付作業の途中でも、水平制御機構のロックを簡単に解除することができて、植付作業の途中で水平制御機構のロックを解除した場合でも、植付作業が途中で中断して圃場に植付けのない部分が生じるのを防止できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、走行機体が左右の車輪によって昇降可能に支持され、昇降レバーが下降側に操作されたときに、左右の車輪を上昇させて走行機体を下降させ、昇降レバーが上昇側に操作されたとき、左右の車輪を下降させて走行機体を上昇させるように構成され、走行機体の左右が水平になるように左右の車輪を相対的に昇降移動させる水平制御機構が設けられ、水平制御機構を水平制御不能にロックするためのロックレバーが設けられ、ロックレバーが、水平制御機構を水平制御不能にロックするロック位置と、水平制御機構の水平制御を許容するロック解除位置とに移動自在とされた移植機において、
前記ロックレバーのロックを解除するためのロック解除レバーが設けられ、該ロック解除レバーは、ロックレバーをロック位置に係止する係止位置と、ロックレバーのロック位置への係止が外れる退避位置とに移動自在とされ、ロック解除レバーを退避位置に操作したときにロックレバーがロック解除位置Bに移動するように、ロックレバーをロック位置A側からロック解除位置側に向けて付勢するロックレバー付勢手段が設けられ、ロック解除レバーを退避位置側から係止位置側に向けて付勢する解除レバー付勢手段が設けられ、昇降レバーが上昇側に操作されたときに、昇降レバーに連動してロック解除レバーを解除レバー付勢手段の付勢に抗して退避位置に移動させるべくロック解除レバーを昇降レバーに連動させた点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記ロックレバーは、第1支軸廻りに揺動自在に支持されて前記ロック位置とロック解除位置とに揺動操作可能とされ、前記ロック解除レバーは、第2支軸廻りに揺動自在に支持されて前記係止位置から退避位置に揺動操作可能とされ、ロック解除レバーを退避位置に揺動操作したとき、ロックレバー付勢手段の付勢によりロックレバーがロック解除位置に揺動するように構成されている点にある。
【0009】
また、本発明の他の技術的手段は、前記ロックレバーに係合部が設けられ、ロック解除レバーに、ロックレバーをロック位置に保持すべくロックレバーの係合部を係止する第1係止部と、ロックレバーをロック解除位置に保持すべくロックレバーの係合部を係止する第2係止部とが設けられ、ロック解除レバーを退避位置に操作したとき、ロックレバーの係合部が第1係止部から外れると共に、ロックレバー付勢手段の付勢によりロックレバーがロック解除位置に揺動して、ロックレバーの係合部がロック解除レバーの第2係止部に係合するように構成されている点にある。
【0010】
また、本発明の他の技術的手段は、前記昇降レバーは、前記第1支軸廻りに揺動自在に支持されて、前記上昇側と下降側とに揺動操作可能とされ、昇降レバーが上昇側に操作されたときに、昇降レバーに連動してロック解除レバーが退避位置に移動すべくロック解除レバーが連結部材を介して昇降レバーに連結されている点にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、昇降レバーを上昇位置に操作するとロックレバーがロック位置からロック解除位置に自動的に切り替わると同時に、ロック解除レバーを退避位置に操作することにより、走行機体を下降させた植付作業の途中でも、水平制御機構のロックを簡単に解除することができる。また、水平制御機構のロックを解除するために走行機体を上昇させる必要がないため、植付作業の途中で水平制御機構のロックを解除した場合でも、植付作業が途中で中断して圃場に植付けのない部分が生じるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は野菜等の苗を畝Rに移植する移植機1を示し、同図において、移植機1は、走行体2の後方に移植装置3および操縦ハンドル4を有する歩行型であって、畝Rを跨いでその長手方向に走行しながら、ソイルブロック苗を畝Rに所定間隔をおいて自動的に植え付けるものである。
【0013】
なお、移植機1の進行方向を前後方向といい、進行方向に直交する横方向を左右方向という。
走行体2は、ミッションケース5の前部に図2に示す架台6を前方突出状に取付固定すると共に、この架台6上にエンジン7等を搭載して主構成された走行機体8を有すると共に、この走行機体8を左右両側に備えた前輪10および後輪11によって走行可能に支持してなる。
【0014】
移植装置3は、走行機体8の後方に装着された移植フレーム12に設けられており、苗を畝Rに植え付ける植付体13と、この植付体13に苗を供給する苗供給装置14と、植え付けた苗の根本側への土寄せと該根本部分の鎮圧を行う覆土部材(覆土ローラ)15とから主構成されており、畝Rがマルチフィルムによって被覆されている場合には、マルチフィルムに植付用の穴を形成する穿孔手段が備えられる。
【0015】
移植フレーム12は、前部がミッションケース5に取付固定された固定フレーム12Aと、前部がミッションケース5に左右軸5A廻りに回動自在に枢着された可動フレーム12Bとから構成され、固定フレーム12A上に苗供給装置14が設けられると共に、固定フレーム12Aの後端部に操縦ハンドル4が取付けられ、可動フレーム12Bに植付体13および覆土部材15が支持されている。
【0016】
植付体13は、可動フレーム12B側に支持されており、植付体13は、上下に揺動しながら前後にも揺動して、該植付体13が走行体2に対して縦長の略楕円状の軌道を描くように運動するようになっている。また、植付体13は上部が上下開口状の筒体で形成され、下部に前後に開閉自在なオープナを備えている。そして、植付体13は、その軌道の上端側で苗が落下供給されると共に、該オープナを閉じた状態で下降され、軌道の下部側でオープナの下部が畝Rに突入し、オープナが前後に開かされて、畝Rに植え穴が形成されると共に、該植え穴に植付体13内部に収納していた苗が落下放出されることにより、苗が畝Rに植え付けられる。
【0017】
苗供給装置14は、ソイルブロック苗を収容したポット部を縦横に多数備えた苗トレイを横送りすべく左右方向に間欠移動する苗載せ台25と、この苗載せ台25の前方側に配置されていて苗トレイから苗を一つずつ取出して植付体13へと搬送する苗分送装置26とから構成されている。
なお、苗載せ台25には、横1列の苗が取り出された後、苗トレイをポット部の1ピッチ分縦送りする縦送り機構が備えられている。
【0018】
図1、図3及び図5に示すように、覆土部材15は、截頭円錐形のローラで構成され、植付体13の後方側に苗植付部分を挟むように左右一対配置され、畝Rの上面を転動して移動し、植え付けられた苗の根本側に対して土を左右両側から押圧して土寄せすると同時に株際を鎮圧する。この覆土部材15は、可動フレーム12Bの後部に固定のブラケット27に左右軸29廻りに回動自在に軸支された覆土フレーム28の後部に回転自在に支持されている。覆土フレーム28は植付深さ調整機構30を介して可動フレーム12Bに連結されており、覆土部材15によって、可動フレーム12Bの後部が支持されている。従って、可動フレーム12Bに覆土フレーム28が上下揺動自在に支持され、覆土部材15が覆土フレーム28の遊端側に回転自在に支持されている。
【0019】
この植付深さ調整機構30は、左右軸廻りに揺動操作自在な植付深さ調整レバー31と、この植付深さ調整レバー31を係止する係止部材32と、植付深さ調整レバー31と覆土フレーム28とを連結する連結部材(後述する接地部材高さ調整レバー101の係止部材)33とから主構成されている。
係止部材32は板材によって形成されて操縦ハンドル4の把持部4A下方に前傾状に配置(図4参照)されていて、ブラケット35に固定され、このブラケット35は、可動フレーム12Bの後端部に取付固定された取付部材34に固定されていて、後方に突出状とされた後、上方に延設されている。
【0020】
前記係止部材32には、図5に示すように、植付深さ調整レバー31の揺動を許容するガイド溝36が形成され、このガイド溝36には、植付深さ調整レバー31の揺動を規制する係止部36aが植付深さ調整レバー31の揺動方向に間隔をおいて複数形成されている。
連結部材33は、左右ブラケット35の中途部を左右方向に貫通しこれに固定(又は回動自在に支持)された筒軸37に外嵌されて、後述する左右方向の支持軸103廻りに回動自在に支持されている。筒軸37に取付板37aを介して植付深さ調整レバー31の下部がボルト・ナットによって取付固定されていて、該植付深さ調整レバー31が支持軸103廻りに揺動操作可能とされている。また、植付深さ調整レバー31には、ガイド溝36の係止部36aに嵌合する被係止部31aが設けられている。
【0021】
なお、植付深さ調整レバー31は、バネ等の付勢手段によって被係止部31aが係止部36aに嵌合するように付勢されてその揺動が規制されるようになっており、植付深さ調整レバー31の把持部を把持して前記付勢力に抗して被係止部31aが係止部36aから外れるように傾けることによって、植付深さ調整レバー31の揺動操作が可能となるように構成されている。
【0022】
一方、連結部材33の前下端側は、覆土フレーム28の後部左右方向中央部に左右軸廻りに回動自在に外嵌されて支持されたブラケット38に左右方向の支軸39を介して枢支連結されている。従って、植付深さ調整レバー31と覆土フレーム28の遊端側とが係止部材33(連結部材33)を介して連結されて、植付深さ調整レバー31の支持軸103廻りの揺動により、覆土フレーム28が上下揺動するようになっている。
【0023】
したがって、植付深さ調整レバー31を下方に揺動させることによって、可動フレーム12Bに対して覆土部材15が持ち上げられて可動フレーム12Bとの間隔が狭くなり、逆に植付深さ調整レバー31を上方に揺動させることによって、可動フレーム12Bに対して覆土部材15が下げられて可動フレーム12Bとの間隔が広くなり(したがって、覆土部材15の可動フレーム12Bに対する上下揺動位置が調整可能とされ)、結果として、可動フレーム12Bが上下に揺動することとなり、植付体13の畝Rへの突入深さ、すなわち苗の植え付け深さが変更できるようになっている。
【0024】
図例のものでは、植付深さ調整レバー31の係止部36aに対する係止位置が上方に行くほど可動フレーム12Bの高さが高くなって植え付け深さが浅くなり、下方に行くほど深くなるようになっている。
図2及び図6に示すように、走行体2の架台6の前部には、左右方向の軸心を有する支持筒54が固定され、この支持筒54には左右一対の前輪支軸55の左右方向内端側が左右軸廻りに回動自在に挿通されおり、左右各前輪支軸55の左右方向外端側には取付筒56が外嵌されている。
【0025】
左右各取付筒56には前輪支持アーム57の上端側が連結固定され、各前輪支持アーム57の下端側に前輪10が車軸を介して左右軸廻りに回転自在に取付けられている。
前記左右前輪支軸55の外端側と取付筒56とは、断面六角形状に形成されていて一体回動するように構成されており、左右の前輪10が前輪支軸55廻りに上下揺動自在とされている。
【0026】
なお、左右前輪支軸55の外端側と取付筒56とは、両者を貫通するピンによって固定され、左右前輪支軸55の外端側に形成されるピンの挿通孔は軸心方向に複数形成されていて、前輪10の左右位置が位置調整可能(すなわち前輪10の輪距調整が可能)とされている。
エンジン7の回転動力は、ミッションケース5に入力され、伝動ケース59内のチェーン巻掛け伝動機構を介して伝動ケース59下部に備えた後輪11に連動連結されていて、エンジン7によって後輪11が回転駆動されるようになっている。
【0027】
なお、左右の伝動ケース59はそれぞれ独立して左右方向2位置に位置変更自在とされており、伝動ケース59を左右移動させることによって後輪11の輪距調整が可能とされており、全面マルチ畝と露地高畝との畝幅の違い(広狭)に対応できるようになっている。
架台6の前後中間部には、左右方向に配置されたローリング軸61が軸受体62を介して左右軸廻りに回動自在で且つ前後移動自在に支持され、このローリング軸61の左右方向中間部前方には、油圧シリンダからなる昇降シリンダ63が配置されて架台6に固定されている。この昇降シリンダ63のピストンロッド63Aはローリング軸61に、該軸61に相対回動自在に外嵌される筒体等を介して連結され、このピストンロッド63Aの出退によってローリング軸61が前後に移動可能とされている。
【0028】
なお、ローリング軸61は架台6に対して固定手段によって固定できるようになっている。
図2及び図6に示すように、ローリング軸61の左右両側にはブラケット64L,64Rが固定され、左右各前輪支軸55には前側連結ブラケット65L,65Rが固定され、左右各伝動ケース59には後側連結ブラケット66L,66Rが固定され、右側のブラケット64Rは下方側に突出状とされ、左側のブラケット64Lおよび前後の連結ブラケット65L,65R,66L,66Rは上方側に突出状とされている。
【0029】
ブラケット64L,64Rと、後側連結ブラケット66L,66Rとは連結リンク67によって連結され、前側連結ブラケット65L,65Rと後側連結ブラケット66L,66Rとは連結ロッド68によって連結されている。
なお、伝動ケース59の左右位置調整に対応できるように、ブラケット64L,64R及び前側連結ブラケット65L,65Rの連結部は左右一対設けられている。
【0030】
そして、前記昇降シリンダ63のピストンロッド63Aを出退させることによって、左右の連結リンク67が前後に押引きされて後側連結ブラケット66L,66Rを介して伝動ケース59が走行機体8に対して相対的に上下揺動すると共に、連結ロッド68が前後に押引きされて前連結ブラケット65L,65R、前輪支軸55および取付筒56を介して前輪支持アーム57が走行機体8に対して相対的に上下揺動し、これによって、左右の前後輪10,11が四輪同時に走行機体8に対して相対的に昇降し且つ前後輪10,11が接地していることから必然的に走行機体8が畝Rに対して昇降し、畝R上面の高さの変化に追従させて移植装置3を昇降させることができるようになっている。
【0031】
また、架台6には油圧シリンダからなるローリングシリンダ69がローリング軸61と同行移動するように取り付けられ、このローリングシリンダ69のピストンロッド69Aはローリング軸61に固定のブラケット70に枢着されている。したがって、ローリングシリンダ69のピストンロッド69Aを出退させることによって、ローリング軸61が左右軸廻りに回動し、左右一方の連結リンク67が前方に引動される共に左右一方の連結ロッド68が前方に押動され、左右他方の連結リンク67が後方に押動されると共に左右他方の連結ロッド68が後方に引動され、これによって、傾斜地においても走行機体8および移植装置3を水平状態に維持させることができるようになっている。そして、左右方向(の水平)に対する走行機体8の傾きを検出する振り子(センサ)が前後軸回りに左右揺動自在に設けられており、この振り子によって走行機体8の水平に対する傾きが検出されると、走行機体8が左右方向に関して水平となるようにローリングシリンダ69が(後述する水平制御弁136によって)制御されるようになっている(走行機体8の左右方向の水平制御が可能とされている)。従って、走行機体8の左右が水平になるように左右の車輪10,11を相対的に昇降移動させる水平制御機構130(図7参照)が、ローリングシリンダ69、振り子、後述する水平制御弁136等により構成され、ローリングシリンダ69を油圧により動作させて走行機体8の左右を水平になすようになっている。
【0032】
図1、図3及び図4に示すように、ミッションケース5の後部側下方で且つ植付体13の前方には、畝Rの上面を転動して該畝Rの高さ変化を検出すると共に畝R上面を鎮圧するローラからなる接地部材(整地ローラ)71が配置され、この接地部材71の左右両側で且つミッションケース5の左右両側には、それぞれ揺動アーム72が前方に向かうに従って上方に移行するように前傾状に配置されている。
【0033】
また、この揺動アーム72は、前部が該揺動アーム72を貫通してミッションケース5に螺合される支軸73によって左右軸廻りに揺動自在に支持されると共に、その後部に枢軸74を介して接地部材71が左右軸廻りに回転自在に取付けられ、左右揺動アーム72の後端部は連結部材75によって相互に連結されている。したがって、接地部材71が畝R上面の高さ変化に追従することにより、揺動アーム72が支軸73廻りに揺動して畝Rの高さ変化を検出する。
【0034】
左側の揺動アーム72の前部には、前方に延出された係止アーム部76が一体形成され、左側の支軸73には前記昇降シリンダ63を制御する昇降制御弁77に連動連結された連動部材78が左右軸廻りに揺動アーム72に対して相対揺動自在に支持されている。
係止アーム部76及び連動部材78の前部にはそれぞれバネ掛け部76a,78aが設けられ、これらバネ掛け部76a,78a間には引張りコイルバネからなる付勢手段79が介装されていて、揺動アーム72及び接地部材71が接地方向に付勢されている。また、連動部材78の後部には、ボーデンケーブル(規制手段)80のアウタケーブル80Aの前端側が長さ方向取付位置調整可能に取り付けられる取付部81が設けられている。また、ボーデンケーブル80のインナケーブル80Bの前端側は揺動アーム72に設けた係止部82に形成された挿通孔に長さ方向移動自在に挿通されると共にインナケーブル80Bの先端部に前記挿通孔を挿通しない接当部材107が固定されることで、係止部82にインナケーブル80Bが係止されていて、付勢手段79の付勢力による揺動アーム72の支軸73廻りの揺動が規制されている。
【0035】
前記付勢手段79の付勢力は、通常の植付作業時において接地部材71に作用する地面からの押圧力によっては伸びず、したがって、接地部材71が畝R上面に追従することによって、揺動アーム72と連動部材78とは一体的に支軸73廻りに揺動するようになっている。
前記連動部材78の前上部には円弧状の長孔83が形成され、この長孔83にはピン84が摺動自在に嵌合され、このピン84は側面視く字形の昇降バルブアーム85の一端部に枢結されている。
【0036】
この昇降バルブアーム85の中途部はミッションケース5の上部に固定された前記昇降制御弁77のボディに支軸86を介して左右方向軸心廻りに回動自在に支持されて、昇降バルブアーム85は図4に示す下降、中立、上昇に揺動可能とされ、昇降バルブアーム85の他端側には係合溝87が形成されている。この係合溝87には、ベルクランクで構成された操作レバー88の一端側に設けたピン88aが係合しており、操作レバー88の中途部は昇降制御弁77の回転スプール89に取り付けられている。
【0037】
したがって、接地部材71が下がると、揺動アーム72及び連動部材78が支軸73廻りに図1の時計方向に揺動して昇降バルブアーム85が支軸86廻りに図1の反時計方向に回動し、これによって操作レバー88の一端部が引上げられて昇降制御弁77の回転スプール89が走行機体8を下降させる方向に操作されて、昇降シリンダ63のピストンロッド63Aが退避方向に作動し、回転スプール89が中立位置に戻るまで走行機体8が下降する。
【0038】
また、接地部材71が上がると、揺動アーム72及び連動部材78が支軸73廻りに図1の反時計方向に回動して昇降バルブアーム85が支軸86廻りに図1の時計方向に回動し、これによって操作レバー88の一端部が引下げられて制御弁81の回転スプール89が走行機体8を上昇させる方向に操作されて、昇降シリンダ63のピストンロッド63Aが突出方向に作動し、回転スプール89が中立位置に戻るまで走行機体8が上昇する。
【0039】
なお、前記長孔83の円弧形状は、揺動アーム72の支軸73廻りの揺動動作に対して、昇降バルブアーム85の支軸86廻りの揺動動作が比例するような半径の円弧に形成され、畝Rの高さ変化を昇降制御弁77に正確に伝達する。この長孔83の半径は、キャドによるシミュレーションによって模擬的に、あるいは計算等によって求められる。
操作レバー88の他端側には引張りバネからなる感度スプリング90の一端側が掛止され、感度スプリング90の他端側は固定フレーム12A側に取付固定された掛止部材に掛止されていて、感度スプリング90の掛止部材への掛止位置を掛け変えることによって、接地部材71の畝R上面に対する押付け力を変更でき、これによって、接地部材71の畝R上面に対する追随感度を調整できるようになっている。
【0040】
図3及び図4に示すように、可動フレーム12Bと昇降バルブアーム85とは連動機構92によって連動連結されている。この連動機構92は、固定フレーム12Aに左右軸廻りに回動自在に枢着されたベルクランク93と、このベルクランク93の一端側と可動フレーム12Bとを連動連結するリンク94と、ベルクランク93の他端側と昇降バルブアーム85に固定の連結板95とを連動連結する連動ロッド96とから主構成され、連動ロッド96の中途部はターンバックル構造とされている。
【0041】
連動ロッド96と連結板95とは、該連結板95に枢着されたピン97が、連動ロッド96に固定の被連結板98に形成された前後方向の長孔99に前後方向摺動自在に嵌合されることで連動連結されている。これによって、植付作業時において接地部材71が上下動しても、ピン97が長孔99内を相対的に摺動し、該接地部材71の上下動が許容されると共に、植付深さ調整時において可動フレーム12Bが上下揺動しても、昇降制御弁77には影響を与えないようになっている。また、畝Rの出口(植え付けている方向の端部)付近での植付作業時にあっては、接地部材71が畝Rから外れたときには、ピン97が長孔99の前端部に係止されて接地部材71が吊持され、覆土部材15が走行機体8の昇降を制御すべく畝R上面の高さを検出する検出ローラとしての役目を果たす。
【0042】
図1、図3、図5に示すように、接地部材71は上下調整機構100によってミッションケース5に対する相対高さが調整可能とされている。この上下調整機構100は、左右軸廻りに揺動操作自在な接地部材高さ調整レバー101と、係止部材33(前記連結部材33)と、前記ボーデンケーブル80とから主構成されており、接地部材高さ調整レバー101の揺動操作によって接地部材71のミッションケース5(走行機体8)に対する相対高さ調整が容易に行えるようになっている。
【0043】
係止部材33には、係止部材32と同様に、接地部材高さ調整レバー101の揺動を許容するガイド溝102が前記ガイド溝36の左方に形成され、このガイド溝102には、接地部材高さ調整レバー101の揺動を規制する係止部102aが接地部材高さ調整レバー101の揺動方向に間隔をおいて複数形成され、係止部材33は、接地部材高さ調整レバー101を支持軸103廻りに案内すると共に、接地部材高さ調整レバー101を支持軸103廻りの複数段の位置に係止固定するようになっている。
【0044】
接地部材高さ調整レバー101は前記植付深さ調整機構30の植付深さ調整レバー31の左方に配置され、前記筒軸37に相対回動自在に挿通された支持軸103に固定の中継レバー104に取付固定されていて、支持軸103廻りに揺動自在に支持されている。また、接地部材高さ調整レバー101にはガイド溝102の係止部102aに嵌合する被係止部101aが設けられている。
【0045】
なお、接地部材高さ調整レバー101は、前記植付深さ調整レバー31と同様、バネ等の付勢手段によって被係止部101aが係止部102aに嵌合するように付勢されてその揺動が規制されるようになっており、接地部材高さ調整レバー101の把持部を把持して前記付勢力に抗して被係止部101aが係止部102aから外れるように傾けることによって、接地部材高さ調整レバー101の揺動操作が可能となるように構成されている。
【0046】
また、ボーデンケーブル80のアウタケーブル80Aの後端側は、前記取付部材34等に長さ方向位置調整自在に取り付けられ、インナケーブル80Bの後端側は中継レバー104に枢着されている。
したがって、植付深さ調整レバー31と接地部材高さ調整レバー101とが、同一の支持軸103廻りに揺動自在に支持されている。植付深さ調整レバー101が覆土部材15に連結されていて、植付深さ調整レバー31の支持軸103廻りの揺動により覆土部材15が可動フレーム12Bに対して相対高さを変更する。また、係止部材33が、支持軸103廻りに揺動自在に支持されると共に、植付深さ調整レバー31と共に支持軸103廻りに揺動するように植付深さ調整レバー31に固定されることにより、接地部材高さ調整レバー101乃至揺動アーム72が、係止部材33を介して植付深さ調整レバー31に連動連結されていて、植付深さ調整レバー31による覆土部材15の可動フレーム12Bに対する相対高さの変更に連動して、接地部材71が走行機体8に対して高さ変更するようになっている。なお、本実施形態では、ボーデンケーブル80によって、接地部材71の上下揺動範囲が所定幅に規制されているため、植付深さ調整レバー31による覆土部材15の可動フレーム12Bに対する相対高さの変更に連動して、接地部材71の上下揺動範囲の上限高さを変更するようになっている。
【0047】
また、接地部材71を走行機体8に対して覆土部材15とは別個に高さ変更調整する接地部材高さ調整レバー101が設けられ、接地部材高さ調整レバー101の支持軸103廻りの揺動により揺動アーム72が上下揺動するように、接地部材高さ調整レバー101が揺動アーム72に連結されている。このため、接地部材高さ調整レバー101を下方に揺動させることによって、インナケーブル80Bが引っ張られて、揺動アーム72が付勢手段79の付勢力に抗して支軸73廻りに図1の反時計方向に揺動し、接地部材71がミッションケース5に対して相対的に上方移動する。このとき、連動部材75は昇降制御弁77に連動連結されているので、揺動アーム72は連動部材75に対して相対的に揺動する。そして、接地部材71が畝R上面に接地した状態では、揺動アーム72が揺動した分に対応して昇降制御弁77の回転スプール89が走行機体8を下降させる方向に動かされることとなり、走行機体8が下降する。
【0048】
また、走行機体8を上昇させて接地部材71を畝R上面から浮かした状態で、前記とは逆に接地部材高さ調整レバー101を上方に揺動させることによって、付勢手段79の付勢力によってインナケーブル80Bが引っ張られて、揺動アーム72が図1の時計方向に揺動し、接地部材71がミッションケース5に対して相対的に下方移動する。そして、接地部材71が畝R上面に接地した状態では、揺動アーム72が揺動した分に対応して昇降制御弁77の回転スプール89が走行機体8を上昇させる方向に動かされることとなり、走行機体8が上昇する。
【0049】
前記構成のものにあっては、前述したように通常の植付作業時においては地面からの押圧力によって付勢手段79は伸びず揺動アーム72と連動部材78とは一体的に揺動するが、エンジン7を切った状態(すなわち油圧ポンプが作動していない状態)で走行機体8を下降させた場合において、連動部材78が昇降制御弁77側の規制によって揺動しないときには、地面側からの突き上げに対して揺動アーム71が付勢手段79の付勢力に抗して連動部材78に対して相対的に上方に揺動する。このとき、インナケーブル80Aが係止部82の挿通孔に長さ方向移動自在であるので、係止部82がインナケーブル80Aに対してその長さ方向に沿って移動し、揺動アーム71の揺動を許容する。
【0050】
そして、この揺動アーム71の揺動によって、昇降制御弁77の回転スプール89、ピン84,88a、支軸86等の破損防止が図られている。
また、前記構成のものにあっては、接地部材高さ調整レバー101乃至揺動アーム72が、係止部材33を介して植付深さ調整レバー31に連動連結されているので、一本の植付深さ調整レバー31を揺動操作することによって、覆土部材15の可動フレーム12Bに対する相対高さを変更できると同時に、接地部材71を走行機体8に対して高さ変更することができ、植付深さを変更する場合に接地部材71を覆土部材15に対応させて上下調整するような面倒が不要になり、一本の植付深さ調整レバー31により植付体13による植え付け深さを簡単に調整することができる。しかも、接地部材高さ調整レバー101を揺動操作することによって、接地部材71を走行機体8に対して覆土部材15とは別個に高さ変更調整することができ、接地部材高さ調整レバー101の操作によって、接地部材71と覆土部材15とを相対的に上下調整することも簡単になし得る。このため、接地部材71と覆土部材15の位相をワンタッチでずらしてセットすることができるため、色々な条件に対応することができ、非常に便利である。
【0051】
図7はローリングシリンダ69及び昇降シリンダ63を動作させるための油圧回路図を示している。同図において、ポンプ131によりリリーフ弁132、昇降制御弁77を介して昇降シリンダ63に油圧が供給されるように構成されている。昇降制御弁77は、上昇位置Uと中立位置Nと下降位置Dとに切り替え可能に構成されている。
ポンプ131によりリリーフ弁135、水平制御弁136、逆止弁137,138を介してローリングシリンダ69に油圧が供給されるように構成されている。水平制御弁136は、ローリングシリンダ69に供給される作動油を、走行機体8の左右が水平になるように制御するもので、上昇位置Uと中立位置Nと下降位置Dとに切り替え可能に構成されている。ローリングシリンダ69と逆止弁137との間に絞り切替弁140が設けられている。絞り切替弁140は、水平制御弁136を通してローリングシリンダ69に供給される作動油の流量を絞るべく、ローリングシリンダ69と水平制御弁136との間に介在され、ローリングシリンダ69に流れる作動油の流量を絞る絞り位置Xと該絞りを開放する開放位置Yとに切替可能に構成されている。
【0052】
図8〜図17に示すように、操縦ハンドル4の把持部4Aの右側に、走行機体8を昇降操作する昇降レバー143と、水平制御機構130を水平制御不能にロックするためのロックレバー145と、ロックレバー145のロックを解除するためのロック解除レバー146が設けられている。
昇降レバー143は、ボス部144を介して第1支軸148廻りに揺動自在に支持されると共に、第1支軸148の軸方向(左右方向)に摺動自在に支持され、昇降レバー143の中途部は案内部材149の案内溝150に挿通されており、昇降レバー143は、図17に示す案内溝150内を、植付位置P、下降位置D、固定位置F、第1上昇位置U1及び第1上昇位置U2に移動操作可能に構成されている。
【0053】
昇降レバー143は、ケーブルや連結杆等を介して図3、図4及び図7に示す昇降制御弁77側に連動連結されており、昇降レバー143が固定位置Fに操作されると、昇降バルブアーム85を中立位置に保持して、昇降制御弁77を中立位置Pに切り替える。また、昇降レバー143が上昇側即ち第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作されると、昇降バルブアーム85が操作レバー88を図4に示す矢印a方向に回動し、昇降制御弁77が上昇位置Uに切り替わる。また、昇降レバー143が下降側即ち植付位置P又は下降位置Dに操作されると、昇降バルブアーム85が、下降、中立、上昇に自由に動ける状態になる。このため、接地部材71及び覆土部材15の動きが連動部材78、操作レバー88及び連動ロッド96によって昇降制御弁77に伝わり、これらの動きに応じて昇降制御弁77が上昇位置U、中立位置N、下降位置Dに切り替わる。
【0054】
従って、昇降レバー143を固定位置Fに操作すると、昇降シリンダ63が伸縮動作しなくなり、走行機体8が昇降不能に固定される。また、昇降レバー143を第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作すると、昇降制御弁77の制御により昇降シリンダ63が伸長動作して、走行機体8が上昇する。また、昇降レバー143を植付位置P又は下降位置Dに操作すると、昇降制御弁77がまず下降位置Dに切り替わり、昇降制御弁77の制御により昇降シリンダ63が縮小動作し、走行機体8が下降して、接地部材71及び覆土部材15が接地され、その後、昇降制御弁77が中立位置Nに切り替わる。
【0055】
また、昇降レバー143を植付位置Pに操作すると、植付クラッチが接続されて、走行機体8の走行に連動して、植付体13が上下動して苗を圃場に植え付け動作をし、昇降レバー143が植付位置Pから外れると、植付クラッチが切断されて、植付体13は停止したままで植え付け動作をしなくなるように構成されている。
また、昇降レバー143は、ケーブルや連結杆等を介して図7の絞り切替弁140に連動連結されており、昇降レバー143が下降側即ち植付位置P又は下降位置Dに操作されたとき、絞り切替弁140が絞り位置Xに切り替わり、昇降レバー143が上昇側即ち固定位置F、第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作されたとき、絞り切替弁140が開放位置Yに切り替わるように構成されている。従って、昇降レバー143を植付位置P又は下降位置Dに操作すると、絞り切替弁140によりローリングシリンダ69への流量が絞られて、走行機体8の水平制御動作の反応が遅くなり、昇降レバー143を固定位置F、第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作すると、絞り切替弁140によりローリングシリンダ69への流量の絞りが開放されて、走行機体8の水平制御動作の反応が早くなる。
【0056】
ロックレバー145は、昇降レバー143と同様に図示省略のボス部を介して第1支軸148廻りに揺動自在に支持され、図10に示すロック位置Aとロック解除位置Bとに揺動操作可能とされている。図9に示すように、ロックレバー145は連動部材152等を介して前記水平制御機構130の振り子側に連結されており、ロックレバー145がロック位置Aに揺動操作されると、前記水平制御機構130の振り子の揺動を規制することにより走行機体8の水平制御が行われないように水平制御機構130をロックし、ロックレバー145がロック解除位置Bに揺動操作されると、水平制御機構130の振り子の揺動規制がなくなり、水平制御機構130のロックが解除されて、水平制御機構130の水平制御を許容するようになっている。図9に示すように、ロックレバー145をロック位置A側からロック解除位置B側に向けて付勢するコイルバネ(ロックレバー付勢手段)153が設けられている。
【0057】
ロック解除レバー146は、前記第1支軸148と平行な第2支軸155廻りに揺動自在に支持され、これによりロック解除レバー146は、図10に示すようにロックレバー145をロック位置Aに係止する係止位置Cと、ロックレバー145のロック位置Aへの係止が外れる退避位置Dとに移動自在とされている。図9に示すように、ロック解除レバー146を退避位置D側から係止位置C側に向けて付勢するコイルバネ(解除レバー付勢手段)156が設けられ、ロック解除レバー146は、係止位置Cから退避位置Dに揺動操作可能とされ、ロック解除レバー146を退避位置Dに揺動操作したとき、ロック解除レバー146によるロックレバー145へのロック位置Aへの係止が外れて、ロックレバー145がロックレバー付勢手段153の付勢によりロック解除位置Bに揺動するように構成されている。
【0058】
即ち、ロックレバー145にピンにより構成した係合部157が設けられ、ロック解除レバー146に、ロックレバー145をロック位置Aに保持すべくロックレバー145の係合部157を係止する第1係止部159と、ロックレバー145をロック解除位置Bに保持すべくロックレバー145の係合部157を係止する第2係止部160とが設けられ、ロック解除レバー146を退避位置Dに操作したとき、ロックレバー145の係合部157が第1係止部159から外れると共に、ロックレバー付勢手段153の付勢によりロックレバー145がロック解除位置Bに揺動して、ロックレバー145の係合部157がロック解除レバー146の第2係止部160に係合するように構成されている。
【0059】
昇降レバー143のボス部144に連動片161が突設され、昇降レバー143とロック解除レバー146とは、連動片161を介して連結部材162により連結されている。連結部材162の一端部は連動片161に支持軸163廻りに揺動自在に連結され、連結部材162の他端部には、第1支軸148を中心とする円弧状の長孔165が形成され、ロック解除レバー146の遊端側端部に、長孔165に摺動自在に挿通保持された係合ピン166が突設されており、昇降レバー143が上昇位置側(第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2)に揺動操作されたとき、係合ピン166が長孔165の一端部(係止位置C側の端部)に摺動して、連結部材162が係合ピン166を介してロック解除レバー146を退避位置Dに引っ張り、これにより、昇降レバー143に連動してロック解除レバー146を解除レバー付勢手段156の付勢に抗して退避位置Dに移動させるように構成されている。
【0060】
上記実施の形態によれば、植付作業を行う場合、図8に示すように、昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック解除位置Bに操作しておけばよく、昇降レバー143の植付位置Pへの操作により、昇降制御弁77が下降位置Dに切り替わり、走行機体8が下降して、接地部材71及び覆土部材15が接地される。また、植付クラッチが接続されて、走行機体8の走行に連動して、植付体13が上下動して苗を圃場に植え付け動作をする。また、このとき、絞り切替弁140が絞り位置Xに切り替わり、絞り切替弁140によりローリングシリンダ69への流量が絞られて、走行機体8の水平制御動作の反応が自動的に遅くなる。従って、植付作業の際に、水平制御機構130の水平制御動作の反応が遅くなることにより、畝Rに被覆したマルチフィルムの両側に置き土が断続して設けられているような場合でも、走行機体8の横揺れが大きくなって植え付けが蛇行するのを防止できる。
【0061】
図8に示すように、昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック解除位置Bに操作して、植付作業を行なった後に、昇降レバー143を固定位置F、第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作すると、絞り切替弁140が開放位置Yに切り替わり、絞り切替弁140によりローリングシリンダ69への流量の絞りが開放されて、走行機体8の水平制御動作の反応が早くなるため、旋回時には走行機体8の水平復帰をスムーズになし得るようになり、等高線傾斜地での旋回時でも走行機体8が過度に左右に傾斜するおそれもなくなる。
【0062】
図8に示すように、昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック解除位置Bに操作した状態から、水平制御機構130をロックするには、ロックレバー145を第1支軸148廻りに下方に操作して、図9に示すように、ロックレバー145をロック位置Aに揺動操作すればよく、ロックレバー145の係合部157がロック解除レバー146の第1係止部159に係合して、ロックレバー145がロック位置Aに保持され、水平制御機構130をロック状態に簡単に保持することができる。従って、例えば傾斜地で植付作業を行う場合は、走行機体8が左右方向に関して水平姿勢とされた状態で走行機体8の水平制御機構130をロックして植付作業を行うことができ、便利である。
【0063】
また、図9に示すように、昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック位置Aに操作した状態から、水平制御機構130のロックを解除するには、図10に示すように、ロック解除レバー146を係止位置Cから退避位置Dに揺動操作すればよく、ロック解除レバー146によるロックレバー145のロック位置Aの係止が外れて、図8に示すように、ロックレバー145がロックレバー付勢手段153の付勢によりロック解除位置Bに戻る。従って、水平制御機構130のロックを解除するために、従来のように走行機体8を上昇させて植付作業を中断する必要がなくなり、植付作業の途中で、水平制御機構130のロックを簡単に解除することができ、植付作業の途中で水平制御機構130のロックを解除しても、植付作業が途中で中断して圃場に植付けのない部分が生じるのを防止することができる。
【0064】
そして、図9に示すように、植え付け昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック位置Aに操作した状態で、傾斜地で植付作業を行った際に、畝R端において旋回するために、走行機体8を上昇させには、昇降レバー143を、図9の状態から図12又は図13に示すように、第1支軸148廻りに下方に揺動操作して第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2にセットすればよく、昇降レバー143を第1上昇位置U1又は第2上昇位置U2に操作すると、昇降制御弁77の制御により昇降シリンダ63が伸長動作して、走行機体8が上昇する。このとき、係合ピン166が長孔165の一端部(係止位置C側の端部)に摺動して、連結部材162が係合ピン166を介してロック解除レバー146を退避位置Dに引っ張り、これにより、昇降レバー143に連動してロック解除レバー146が退避位置Dに移動する。そして、ロック解除レバー146の退避位置Dへの移動により、ロックレバー145の係合部157が第1係止部159から外れて、ロックレバー付勢手段153の付勢によりロックレバー145がロック解除位置Bに揺動して、ロックレバー145の係合部157がロック解除レバー146の第2係止部160に係合する。
【0065】
従って、傾斜地で走行機体8の水平制御機構130をロックして植付作業を行って、畝R端において旋回する際には、昇降レバー143を上昇位置U1,U2にすると、ロックレバー145がロック位置Aからロック解除位置Bに自動的に切り替わり、面倒なロック解除操作も必要とせずに、水平制御機構130のロックが自動的に解除されて、走行機体8が左右に過度に傾斜するのを防止しつつスムーズに旋回することができる。
【0066】
また、図9に示すように、植え付け昇降レバー143を植付位置Pに操作し、ロックレバー145をロック位置Aに操作した状態から、走行機体8を昇降不能に固定するには、図9の状態から図11に示すように、昇降レバー143を第1支軸148廻りに揺動操作して固定位置Fにセットすればよく、昇降レバー143を固定位置Fに操作すると、このとき、昇降制御弁77が中立位置Pに切り替わり、昇降シリンダ63が伸縮動作しなくなり、走行機体8が簡単に昇降不能に固定される。なお、このとき、ロックレバー145はロック位置Aに保持されたままである。
【0067】
また、前記実施の形態の場合、昇降レバーを上昇側にするとロックレバーがロック解除位置に自動的に切り替わるようにするために、従来のように昇降レバー143とロックレバー145とをケーブルで連結することは不要になり、昇降レバー143、ロックレバー145及びロック解除レバー146部分の構造が非常に簡単になり、昇降レバー143、ロックレバー145及びロック解除レバー146の支持構造をコンパクトなものになし得る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示す移植機の側面図である。
【図2】同移植機の走行機体の平面図である。
【図3】同移植機の昇降機構及び畝高さ検出機構部分の側面図である。
【図4】同移植機の畝高さ検出機構部分の側面図である。
【図5】同植付深さ調整レバー及び接地部材高さ調整レバー部分の平面図である。
【図6】同移植機の昇降機構部分の側面図である。
【図7】同油圧回路図である。
【図8】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図9】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図10】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図11】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図12】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図13】同昇降レバー、ロックレバー及びロック解除レバー部分の側面図である。
【図14】同昇降レバーの案内部材の背面図である。
【符号の説明】
【0069】
8 走行機体
10 前輪
11 後輪
69 ローリングシリンダ
130 水平制御機構
136 水平制御弁
140 絞り切替弁
145 ロックレバー
143 昇降レバー
146 ロック解除レバー
153 ロックレバー付勢手段
156 解除レバー付勢手段
148 第1支軸
155 第2支軸
157 係合部
159 第1係止部
160 第2係止部
162 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(8)が左右の車輪(10,11)によって昇降可能に支持され、昇降レバー(143)が下降側に操作されたときに、左右の車輪(10,11)を上昇させて走行機体(8)を下降させ、昇降レバー(143)が上昇側に操作されたとき、左右の車輪(10,11)を下降させて走行機体(8)を上昇させるように構成され、走行機体(8)の左右が水平になるように左右の車輪(10,11)を相対的に昇降移動させる水平制御機構(130)が設けられ、水平制御機構(130)を水平制御不能にロックするためのロックレバー(145)が設けられ、ロックレバー(145)が、水平制御機構(130)を水平制御不能にロックするロック位置(A)と、水平制御機構(130)の水平制御を許容するロック解除位置(B)とに移動自在とされた移植機において、
前記ロックレバー(145)のロックを解除するためのロック解除レバー(146)が設けられ、該ロック解除レバー(146)は、ロックレバー(145)をロック位置(A)に係止する係止位置(C)と、ロックレバー(145)のロック位置(A)への係止が外れる退避位置(D)とに移動自在とされ、ロック解除レバー(146)を退避位置(D)に操作したときにロックレバー(145)がロック解除位置(B)に移動するように、ロックレバー(145)をロック位置(A)側からロック解除位置(B)側に向けて付勢するロックレバー付勢手段(153)が設けられ、ロック解除レバー(146)を退避位置(D)側から係止位置(C)側に向けて付勢する解除レバー付勢手段(156)が設けられ、昇降レバー(143)が上昇側に操作されたときに、昇降レバー(143)に連動してロック解除レバー(146)を解除レバー付勢手段(156)の付勢に抗して退避位置(D)に移動させるべくロック解除レバー(146)を昇降レバー(143)に連動させたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記ロックレバー(145)は、第1支軸(148)廻りに揺動自在に支持されて前記ロック位置(A)とロック解除位置(B)とに揺動操作可能とされ、前記ロック解除レバー(146)は、第2支軸(155)廻りに揺動自在に支持されて前記係止位置(C)から退避位置(D)に揺動操作可能とされ、ロック解除レバー(146)を退避位置(D)に揺動操作したとき、ロックレバー付勢手段(153)の付勢によりロックレバー(145)がロック解除位置(B)に揺動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記ロックレバー(145)に係合部(157)が設けられ、ロック解除レバー(146)に、ロックレバー(145)をロック位置(A)に保持すべくロックレバー(145)の係合部(157)を係止する第1係止部(159)と、ロックレバー(145)をロック解除位置Bに保持すべくロックレバー(145)の係合部(157)を係止する第2係止部(160)とが設けられ、ロック解除レバー(146)を退避位置(D)に操作したとき、ロックレバー(145)の係合部(157)が第1係止部(159)から外れると共に、ロックレバー付勢手段(156)の付勢によりロックレバー(145)がロック解除位置(B)に揺動して、ロックレバー(145)の係合部(157)がロック解除レバー(146)の第2係止部(160)に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項4】
前記昇降レバー(143)は、前記第1支軸(148)廻りに揺動自在に支持されて、前記上昇側と下降側とに揺動操作可能とされ、昇降レバー(143)が上昇側に操作されたときに、昇降レバー(143)に連動してロック解除レバー(146)が退避位置(D)に移動すべくロック解除レバー(146)が連結部材(162)を介して昇降レバー(143)に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−195465(P2007−195465A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18179(P2006−18179)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】