説明

移載装置

【課題】 連続動作でクランプと持ち上げを行うことによって、移載にかかる時間を短縮する。
【解決手段】 回転基準軸に沿って回転し、回転基準軸から外周までの距離が第1距離と、第1距離よりも大きい第2距離とを有する一対のクランプ部6と、クランプ部を、第2距離部分が下方側から一対のクランプ部6の内側となる方向へ回転するように駆動させる駆動部8と、を備え、クランプ部6を一対のクランプ部6の外側となる方向へ移動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動倉庫のスタッカクレーンの昇降台に設置される移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移載装置として左右より荷物を挟んで移載するクランプ式移載装置が知られている。
特許文献1は左右より荷物を挟持して昇降台の上昇により荷物を持ち上げるとともにコンベアを駆動させることによって荷物を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−124109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移載装置の場合、荷物を完全に挟持する前に昇降をさせてしまうと荷物を傾倒させたり、荷崩れさせるおそれがあるため、挟持したことを確認するか、もしくは時間的な余裕を持ってから昇降駆動を開始していた。そのため、移載時間が長くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は回転基準軸を基準に回転し、回転基準軸から外周までの距離が第1距離と、第1距離よりも大きい第2距離とを有する一対のクランプ部と、クランプ部を、第2距離部分が下方側から一対のクランプ部の内側となる方向へ回転するように駆動させる駆動部と、を備え、クランプ部を一対のクランプ部の外側となる方向へ移動可能に構成したものである。
【0006】
この装置ではクランプした後も回転し続けることによりクランプ部の力で荷物を持ち上げることができる。そのため、連続動作でクランプと持ち上げを行うことができる。これにより、移載にかかる時間を短縮することができる。
【0007】
好ましくは、前記クランプ部は回転基準軸に対して内側方向へ付勢しつつ外側方向へスライド自在に保持する機構を備える。
この装置ではクランプ部の回転基準軸を能動的に移動させる機構を設けることなくクランプ部の間隔を調整することができ、安価に構成できる。
【0008】
特に好ましくは、前記クランプ部は、矩形状の軸と、該矩形状の軸の一辺よりも大きくかつ対角線よりも小さい巾の短辺を有する長孔と、前記矩形状の軸を前記長孔の中で前記内側方向に付勢する弾性体とを備える。
この装置では付勢機構とスライド機構を安価に構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る移載装置では、移載にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動倉庫の模式平面図
【図2】搬送車の正面図
【図3】移載装置の動作を表す平面図
【図4】クランプ部の側面図と断面図
【図5】移載装置の動作を表す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1と図2に、実施例である自動倉庫1を示す。2はスタッカクレーン等の搬送車で走行部3により棚4に沿って走行する。5は搬送車に設けた移載装置で、荷物Wを保持して搬送車とステーションの間で荷物Wを移載する。移載装置5は荷物に当接して挟持する一対のクランプ部6と、クランプ部6を走行方向と水平面内で直交する左右方向へ進退させる伸縮装置7と、クランプ部を挟持方向に開閉させる開閉装置(図示せず)と、クランプ部を回転方向に駆動する駆動部8と、を備える。
【0012】
クランプ部6は搬送車2の走行方向の前後端に1つずつ設けられており、それぞれのクランプ部が伸縮機構7と開閉装置により左右方向と走行方向に移動する。
伸縮機構7は開閉装置に固定した一対のベース部とクランプ部6を配置した一対のトップ部を備え、トップ部はベース部に設けたリニアガイドに沿って左右方向にガイドされるとともにモータによって左右方向へ移動する。
【0013】
開閉装置は搬送車の走行部に固定した基部と一対の開閉移動部を備える。基部はモータと両ねじをきったボールねじを備え、モータの回転により一対の開閉移動部は走行方向へ前後対称的に移動する。
駆動部8は伸縮機構7のトップ部に設けられており、クランプ部6を左右方向へ延びる軸を基準に鉛直方向に回転させる。
【0014】
図4はクランプ部6で、クランプ部6は荷物に当接する当接部9と当接部に設けられた孔に嵌めあう回転軸10を備える。
当接部9は断面が楕円形の円柱状であり、クランプ部6は左右方向となる回転中心を中心に回転する。断面を正確に表現すると回転中心から楕円の短軸方向となる外周までの距離(第1距離11s)が短く、回転中心から楕円の長軸方向となる外周までの距離(第2距離11l)が長くなっている。また、回転中心は楕円の中心からオフセットした位置となっており、さらに第1距離と第2距離の差を大きくしている。
【0015】
当接部9には矩形状の貫通孔があり、回転軸10はこの矩形孔の短辺側と嵌めあう。回転軸10は両端が軸受に支持されるとともに駆動部8と接続し、中間部分が矩形状になっている。
貫通孔の短辺は回転軸10の矩形状部分の一辺よりも大きくかつ対角線よりも小さい。言い換えると、回転軸10の巾は矩形孔の短辺よりも若干小さくなっており、矩形孔内でスライド可能となっているとともに、角が当接して空回りしないようになっている。矩形孔の長辺側には回転軸10を内側へ付勢する板ばね12が配置されている。板ばね12は両側に配置されており、中間位置に保持するようになっている。板ばね12は荷物Wの圧縮許容荷重よりも弱い力で、かつ、荷物Wの質量を支えるためのクランプ部6の摩擦荷重よりも強い力で内側方向へ付勢するように調整されている。なお、板ばねではなくコイルバネであってもよい。
【0016】
図5を用いて搬送車2が棚4に載置された荷物Wを受け取る荷積み時での、移載装置5の動作を説明する。
【0017】
まず、搬送車2が目的となる荷物Wの前まで走行して停止する。
開閉装置は荷物巾よりも所定量広い位置にクランプ部6を移動させる。荷物巾は上位コントローラ等から通信により受け取ってもよいし、搬送車2に荷物サイズ検出器を備えて測定してもよい。また、所定量広い位置とはクランプ部6が進出しても荷物Wと衝突することがなく、クランプ部6の回動によりクランプ部と荷物Wが当接する位置である。言い換えると、荷物の端から第1距離以上離れ、第2距離以内である位置である。
【0018】
その後伸縮機構7のトップ部がクランプ部6とともに搬送車2から荷物Wの側方まで進出する。進出時においてクランプ部6は第2距離である突出部分が下方を向いている。進出を終えると駆動部8がクランプ部材6の回転を始め、荷物Wの側方へ進出したクランプ部6は下方から荷物W側、言い換えると一対のクランプ部材6の内側となる方向へ回転を始める。
【0019】
図5(b)のように45度程度回転するとクランプ部6の当接部9は荷物Wに当接し、荷物Wを挟み込む姿となる。
クランプ部6の回転はさらに続き、回転に伴って左右からの摩擦と上方への回転力により荷物が持ち上がる(図5(c))。当接部9と回転軸10は荷物Wの剛性と板ばね12の弾性力の差分で当接部9が離間する方向にスライドされ、荷物Wに無理な力をかけることなく、つぶさないようになっている。
【0020】
駆動部8はクランプ部6が回転開始から80度程度回転した位置でクランプ部6を停止させ、その後伸縮機構7のトップ部が駆動されて棚4から搬送車2側へ退出する。
【0021】
そして荷物Wを持ち上げてクランプしたまま搬送車2は次の目的地に向けて走行を開始する。なお、搬送車2で荷物Wをクランプしたままではなく、走行車2上でクランプを解除して荷物Wを下ろしてもよいし、荷物Wを下ろした状態でクランプ部6を用いて軽く挟みこむ状態としても良い。
【0022】
搬送車2が棚で荷物Wをおろす荷おろし時での、移載装置5の動作は荷積み時の逆となる。
【0023】
搬送車2が棚の前まで走行して停止する。クランプ部6は荷物Wを持ち上げてクランプした状態のまま棚4上方へ進出する(図5(c))。なお、搬送車2上で荷物を下ろしていた場合は停止する前または停止した後にクランプして持ち上げておく。
【0024】
駆動部材8はクランプ部6が第2距離である突出部分を下方へ向くように回転を始め、突出部が45度程度を向く位置まではクランプ部6の摩擦と板ばね12の弾性力により浮き上がった状態であるが徐々に下降し、45度程度を過ぎた時点で棚4上に載置される(図5(b))。
【0025】
クランプ部6は第2距離である突出部分が下方を向くまで回転を続け(図5(a))、その後伸縮機構7のトップ部が駆動されて棚4から搬送車2側へ退出する。なお、クランプ部6が下方を向くまで待つことなく荷物Wからクランプ部6が離れた時点で退出を開始してもよい。
【0026】
実施例では当接部9と回転軸10がスライド可能で板ばねで付勢される構造としたが、回転軸10をトップ部にバネを介して固定して、中心軸を回転させるモータごとバネによってスライド可能とする構造にしてもよい。
また、バネではなくシリンダ等で能動的に軸間距離を変化させる構造としても良い。
さらに、クランプ部6は断面楕円状としたが、荷物Wに当接するための中心軸からの外周までの距離が第1距離よりも長い第2距離部があればよく、断面勾玉状や、断面たまご状、偏心させただけの断面円状でもよい。
また、クランプ部と荷物の当接角度は、クランプ部の形状およびクランプ部と荷物間の距離により自由に変更可能である。
なお、搬送車2はスタッカクレーンではなく、軌道上を走行する有軌道台車や天井走行車でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は物品を運ぶ搬送車に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 自動倉庫
2 搬送車
3 走行部
4 棚
5 移載装置
6 クランプ部
7 伸縮機構
8 駆動部
9 当接部
10 回転軸
11s 第1距離
11l 第2距離
12 板ばね



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転基準軸を基準に回転し、該回転基準軸から外周までの距離が第1距離と、該第1距離よりも大きい第2距離とを有する一対のクランプ部と、
前記クランプ部を、前記第2距離部分が下方側から一対の前記クランプ部の内側となる方向へ回転するように駆動させる駆動部と、を備え、
前記クランプ部を一対の前記クランプ部の外側となる方向へ移動可能に構成した移載装置。
【請求項2】
前記クランプ部は前記回転基準軸に対して内側方向へ付勢しつつ外側方向へスライド自在に保持する機構を備える、請求項1に記載の移載装置
【請求項3】
前記クランプ部は、矩形状の軸と、該矩形状の軸の一辺よりも大きくかつ対角線よりも小さい巾の短辺を有する長孔と、前記矩形状の軸を前記長孔の中で前記内側方向に付勢する弾性体とを備える、請求項2に記載の移載装置。
【請求項4】
荷物の移載方法であって、
中心から外周までの距離が第1距離と、第1距離よりも大きい第2距離とを有する一対のクランプ部を、クランプ部を第2距離部分が一対のクランプ部の内側となる方向へ回転させて荷物に当接させるステップと、
荷物に当接した後にクランプ部を一対のクランプ部の外側となる方向へ移動させつつさらに回転させて荷物を持ち上げるステップと、を備えた荷物の移載方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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