説明

移送装置

【課題】装置の製作、組立て、調整が容易で、分離された被移送物の移送能力が高く、さらに、被移送物に毛髪類やビニール紐、長尺繊維類等が混在しているケースでも目詰まりの発生を防止できる移送装置を提供する。
【解決手段】軸方向に間隔をおいて複数の回転板2が軸着された支持軸1を、複数並列させて回転自在に軸支し、各支持軸1に軸着された回転板2の一部が、隣接する他の支持軸1に軸着された回転板間に入り込むように配置され、前記複数の支持軸1を同じ方向に回転させることで被移送物を移送できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分と液状物が混在する被移送物に対し、固液分離を行いながら移送できるようにした移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移送装置としては、下記特許文献1に記載されているような装置が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の装置は、装置を構成するフレームに複数の回転軸を前後方向に平行に並べて回転自在に軸支し、この回転軸には多数の回転板が所定間隔毎に軸装されると共に、隣接する回転板の間には左右方向のガイド面を有する案内部材を配置し、上記各回転軸を同一方向に回転させることにより、各軸の回転板の上部周面によって形成される送り面側に投入した固液混在状の処理物の固液分離を行い、分離された固体捕集物を回転板の回転方向に従って順次搬送する装置であって、上記案内部材として上面が平滑なガイド面を有する多数の板状の案内部材をフレーム側に取り付けてなる固液分離装置である。
【0004】
ここで、上記固液分離装置における前記案内部材は、所謂バースクリーンである。そして、上記固液分離装置は、このバースクリーンである案内部材の目開き部分に固形物が侵入して目詰まりが生じるのを防止し、同時にバースクリーン上に分離された固体捕集物の搬送を行うために、目開き部分に軸装された回転板を挿入する構成になっている。そして、軸装された回転板を同一方向に回転させることによって、バースクリーンである案内部材の目詰まりの防止と固体捕集物の搬送とを同時に行うようにした装置である。
【特許文献1】特開2003−211293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の固液分離装置では、以下のような問題がある。つまり、
(1)上記特許文献1に記載の装置は、濾過材に相当する部材として、回転板と案内部材との2種類の部材が必要となり製作と組立て及び調整に手間隙が掛る。
【0006】
(2)前記回転板を円形板とすると、固体捕集物を搬送する能力に劣るので、これを楕円板として捕集固体物の搬送力の向上を図っているが、案内部材から上方に突出させる必要があるので、案内部材によって楕円板の突出部分が狭められる結果となり、搬送力が弱いという欠点がある。
【0007】
(3)前記案内板は、その両側面を回転板の回転による相互作用によってセルフクリーニングされる必要上、長手方向の両端部を除いては案内板と案内板の間隔を直接固定することが出来ない。従って案内板の長手方向の両端部を除く中間部分は、回転板の軸上に単に乗せただけの構造となることを余儀なくされ、強度面で脆弱であり変形しやすいという欠点がある。
【0008】
(4)前記案内部材と、その目開き部分に挿入される回転板との投影部分を見るとわかる様に、隣接する回転軸に取り付けられた楕円形状の回転板の接触防止のため、案内部材と回転板とは材相互に重なりが生じない部分が必然的に生じる。そのため、当該部分に目詰まりが生じる可能性があり、目詰まりの発生により回転板を駆動する電動機が過負荷になって運転停止に至ることが十分に予想される。特に、搬送対象物に毛髪類やビニール紐、長尺繊維類が混在しているケースでは、その可能性が非常に大きという欠点がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、装置の製作、組立て、調整が容易で、分離された被移送物の移送能力が高く、さらに、被移送物に毛髪類やビニール紐、長尺繊維類等が混在しているケースでも目詰まりの発生を防止できる移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は次の発明により解決される。
[1]軸方向に間隔をおいて複数の回転板が軸着された支持軸を、複数並列させて回転自在に軸支し、各支持軸に軸着された回転板の一部が、隣接する他の支持軸に軸着された回転板間に入り込むように配置され、前記複数の支持軸を同じ方向に回転させることで被移送物を移送できるようにしたことを特徴とする移送装置。
[2]上記[1]において、回転板の形状が、楕円形、三角形、四角形のいずれかであることを特徴とする移送装置。
[3]上記[1]又は[2]において、回転板の位相を、隣接する支持軸毎に、被移送物の進行方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置することを特長とする移送装置。
[4]上記[3]において、所定角度が90°であることを特徴とする移送装置。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかにおいて、同一支持軸上に軸着された回転板の位相を、軸方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置することを特長とする移送装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の製作、組立て、調整が容易で、分離された被移送物の移送能力が高く、さらに、被移送物に毛髪類やビニール紐、長尺繊維類等が混在しているケースでも目詰まりの発生を防止できる移送装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る移送装置の一実施形態を示す概略構成図である。図1において、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【0014】
図1に示す移送装置10は、軸方向に間隔をおいて複数の回転板2が軸着された支持軸1を、複数並列させて回転自在に軸支し、各支持軸1に軸着された回転板2の一部が、隣接する他の支持軸1に軸着された回転板2間に入り込むように配置され、前記複数の支持軸1を同じ方向に回転させることで被移送物を移送できるようにしたものである。
【0015】
図1では、回転板2の形状として楕円形の場合を示しているが、前記回転板2の形状は楕円形の場合に限られず、三角形、四角形とすることもできる。前記回転板2の形状を楕円形、三角形、四角形のいずれかとすることで、前記回転板2の被移送物送り面(周面部)が回転中に送り方向に向かう進行波形を形成し、被移送物の移送能力を高めることができる。上述の特許文献1に記載の固液分離装置は、その案内部材により回転板の突出部分が狭められるという問題があったが、案内部材を必要としない構成の本発明においては、前記回転板2の送り面による波形の振幅を大きく取ることが可能であり、特許文献1の固液分離装置に比較して、さらに移送能力を大幅に高めることができる。
【0016】
なお、前記回転板2の形状は円形とすることもできる。この場合、円形形状の回転板の中心で支持軸1に軸着するようにしてもよいが、中心から偏心させた位置で軸着させるようにすることが好ましい。中心から偏心させた位置で軸着させることで、楕円形の場合と同様に、被移送物送り面(周面部)が回転中に送り方向に向かう進行波形を形成し移送能力を向上させることができるからである。
【0017】
さらに、前記回転板2の形状としては、五角形以上の多角形とすることもできる。しかし、五角形以上の多角形としても、その移送効果は円形の場合と大差がなくなるため、五角形以上の多角形とする優位性は少ない。
【0018】
図2に、前記回転板2の形状を三角形、四角形とした場合の隣接する支持軸1に軸着された回転板2の配置の一例を示す。図2は、三角形として正三角形の場合、四角形として正方形の場合を示しているが、回転板2の形状はこれに限定されるものではなく、その形状は、被移送物の性状等により適宜変更し得るものである。なお、前記四角形には、長方形や菱形等も含まれる。ここで、前記回転板2は、その重心の位置で支持軸1に軸着させることが好ましい。回転に伴う振動を防止するためである。
【0019】
隣接する支持軸1に軸着された回転板2同士は、その一部が、隣接する他の支持軸に軸着された回転板間に入り込むように配置される。これにより、同一支持軸上に軸着された回転板により挟まれる部分が隣接する他の支持軸に軸着された回転板によりクリーニングされるため、例えば、毛髪類やビニール紐、長尺繊維類等による目詰まりが防止される。なお、この目詰まり防止効果、つまりクリーニング効果を高めるために、回転板が隣接する他の支持軸に接触しない範囲で、回転板間に入り込む際の重なりを大きくするように回転板の形状及び大きさを決定することが好ましい。
【0020】
さらに、目詰まり防止の観点からは、同一支持軸上に軸着された回転板により挟まれる部分の、クリーニング効果が及ばない、所謂デッドゾーンを極力少なくすることが好ましい。そのため、例えば、同一支持軸上に軸着される回転板の間に、その間隔を保つためのスペーサが設けられている場合には、そのスペーサの形状を、回転板間に入り込む他の支持軸に軸着された回転板の軌跡にあわせて、デッドゾーンを少なくするような形状に加工することが好ましい。
【0021】
なお、前記回転板2としては、装置内に各種形状のものを混在させてもよく、また、移送装置を複数の領域を分けて、それぞれの領域毎に異なった形状の回転板を配置するようにしてもよい。移送装置を複数の領域を分けて、それぞれの領域毎に異なった形状の回転板を配置することで、目的に応じた移送を効率的に行えるようにすることもできる。
【0022】
また、前記回転板2の位相を、隣接する支持軸毎に、被移送物の進行方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置するようにしてもよい。なお、この場合は、同一の支持軸上に軸着された回転板の位相は同じとしておくことが好ましい。
【0023】
位相をずらす所定角度を調整することで、回転板2の被移送物送り面(周面部)による進行波形の形状を調整することが可能となり、被移送物の性状に応じた最適な移送を行うことが可能となる。なお、前記所定角度は、−90〜90°の範囲で調整されるのが好適である。
【0024】
また、同一支持軸上に軸着された回転板の位相を、軸方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置することもできる。例えば、移送物を装置移送面の中央付近に寄せるようにして移送したい場合には、同一支持軸上に軸着された回転板の位相を、中央に向けて両側から順次所定角度づつ、ずらして配置することで前記目的を達することができる。
【0025】
図1に示す移送装置10において、各支持軸1を回転させる手段としては、例えば、各支持軸1端にスプロケット3を装着し、これを、ローラーチェーン4を介して減速機付き電動機5等で駆動するようにしてもよい。また、図示を省略するが、各支持軸1端にギアを装着し、ドライブシャフトを介して減速機付き電動機等で駆動するようにしてもよい。さらに、各支持軸1端に小型モーターを装着して直接駆動するようにしてもよい。
【0026】
また、移送装置10においては、被移送物の移送方向に向かって上り勾配となるように、移送面を傾斜させても良い。移送面を傾斜させることで、固形分と液状物が混在する被移送物に対し、固液分離をより効率的に行うことが可能となり、固液分離性が向上する。なお、本発明においては、上記構成とすることで、例えば、特許文献1に記載の従来の装置と比較して、被移送物の移送能力が大きく向上しているので、移送面に上り勾配を設けた場合においても、移送を問題なく行うことが可能である。つまり、本発明に係る移送装置は、傾斜スクリーンとしても使用することが可能となった。
【0027】
なお、本発明に係る移送装置は、上記構成とすることで、被移送物の移送面は回転板2と支持軸1だけで構成されるので、製作、組立て、調整が非常に容易になった。また、本発明に係る移送装置では支持軸1に軸着された回転板2の精度についてのみ管理するだけで良く、従って、特に微細な隙間を持った濾過体を容易に製作できるという大きなメリットが得られた。
【0028】
さらに、濾過体を構成する回転板2は、支持軸1に固定されているので濾過体としての強度が向上し、強度的に弱い部分のない均質な濾過体を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る移送装置の一実施形態を示す概略構成図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図2】本発明に係る回転板の形状を三角形、四角形とした場合の隣接する支持軸に軸着された回転板の配置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 支持軸
2 回転板
3 スプロケット
4 ローラーチェーン
5 電動機
10 移送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に間隔をおいて複数の回転板が軸着された支持軸を、複数並列させて回転自在に軸支し、各支持軸に軸着された回転板の一部が、隣接する他の支持軸に軸着された回転板間に入り込むように配置され、前記複数の支持軸を同じ方向に回転させることで被移送物を移送できるようにしたことを特徴とする移送装置。
【請求項2】
回転板の形状が、楕円形、三角形、四角形のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の移送装置。
【請求項3】
回転板の位相を、隣接する支持軸毎に、被移送物の進行方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置することを特長とする請求項1又は請求項2に記載の移送装置。
【請求項4】
所定角度が90°であることを特徴とする請求項3に記載の移送装置。
【請求項5】
同一支持軸上に軸着された回転板の位相を、軸方向に沿って順次所定角度づつ、ずらして配置することを特長とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−240852(P2006−240852A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61085(P2005−61085)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】