説明

種子用包材および種子用袋

【課題】外観から内容物が観察でき、ガスバリア性に優れる種子用包材および種子用袋を提供する。
【解決手段】本発明の種子用包材は、プラスチック基材フィルムとガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とを積層した種子用包材であり、前記種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムと前記ガスバリア性積層フィルムとの間、および/または前記ガスバリア性積層フィルムと前記ヒートシール層の間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有する。該種子用包材からなる本発明の種子用袋は、極めて鮮明かつ保存性に優れ、内容物の情報提示性に優れ、かつ水蒸気バリア性を有するため、種子の保存性にも優れ、積層材であって内容物を保護しうる柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から内容物を観察することができる種子用包材および該種子用包材を成型してなる種子用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダにプランターを置き、または貸し農園などを利用して家庭菜園を楽しむ人々が増え、小袋に収納された各種の野菜や花卉の種子が市販されている。このような種子用の包材としては、紙やその表面に樹脂コーティングした袋状物が多用され、その表面に種子や花卉の絵や写真を印刷することが一般的である。
【0003】
また、種子の保存方法として、植物の種子を脱酸素剤と共に非通気性の容器に密封し、30℃以下の温度で保存する方法があり、酸素透過度50ml/m2・atm・d以下のものを包材とした袋に種子を収納する方法が開示されている(特許文献1)。該公報では、上記酸素透過度の包材として、塩化ビニリデンや塩化ビニリデンを積層したフィルムが開示されている。
【0004】
また、種子用包材には、種子の種類や植付け時期、管理方法、収穫時期などの情報を開示する必要があり、通常は、紙基材からなる包材や紙基材に樹脂を被覆した包材、更には酸素の通気を抑制するため紙基材にアルミ箔などを被覆した包材が多用されている。
【特許文献1】特開昭58−220611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種子用袋の表面には、多くの情報を開示する必要があり、紙基材からなる包材や紙基材に樹脂を被覆した包材などは、紙基材上に印刷することで簡便に情報を開示することができる。しかしながら、紙基材を使用するため、包材の外側から内容物を観察することができない。また、家庭菜園で使用する種子用袋は小袋であるため、一般には収穫時期の野菜や花卉が印刷され、種子自体が印刷されることは少なく、たとえ写真があっても縮小されて掲載される場合がある。このため、袋を開封せずに直接種子が観察できれば便利であり、直接内容物を確認できれば家庭菜園の楽しみも増し、消費者の購買意欲も向上する。
【0006】
加えて、種子用袋には、生産地、発芽率、有効期限やロット番号など、各ロット毎の情報を開示する必要がある。したがって、種子の名前、土壌の種類、播種時期、播種量などの一般的情報の印刷とは別個に、ロット毎にこのような情報を簡便に袋に記載できれば便利である。
【0007】
また、種子の保存の際に過度の水蒸気が存在すると、袋内で種子が蒸れ、発酵や腐敗が進行し、種子の品質を維持することが困難となる。このため、種子用袋を製造する際に使用するフィルム状の種子用包材の特性として、水蒸気バリア性も重要な要素である。また、種子用袋として使用するには内容物を物理的に保護しうる強度が必要である。しかしながら、アルミ箔などの金属箔を使用する場合には水蒸気バリア性に優れるがピンホールが発生しやすく、結果としてガスバリア性を著しく損なう場合がある。更に、使用後にゴミとして焼却処理する場合には焼却適性に劣り、使用後の廃棄処理が容易でないという問題点もある。また、上記特許文献1記載の塩化ビニリデンなどは、その構造中に塩素原子を含有することから、使用後、ゴミとして焼却処理する場合、有害な塩素ガスが発生し、環境衛生上好ましくない。したがって、ガスバリア性および使用後の安全性に優れ、内容物を物理的に保護しうる、適度な柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性などを有する種子用包材、このような種子用包材によって製造される種子用袋が望まれる。
【0008】
上記に鑑み、本発明は、印刷適性に優れ、水蒸気バリア性を有し、かつ外部から内容物を見ることができる種子用包材を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、使用後の廃棄処理が容易な種子用包材および種子用袋を提供することを目的とする。
【0010】
更に、本発明は、内容物を保護しうる柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性を有する種子用包材および種子用袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種子用包材について詳細に検討した結果、種子用包材をガスバリア性に優れる積層材で構成し、かつ印刷層を積層材を構成する各層の間に設けることで印刷層を外部と接触させずに保護できること、印刷層が白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を形成して印刷したものであれば、種子用袋の外部から内容物を確認でき、かつ該窓あき部が上記透過度であれば、該窓あき部の上にロット情報などの前記印刷層とは異なる印刷した場合でも該印刷を容易に読み取ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第一は、プラスチック基材フィルムとガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムと前記ガスバリア性積層フィルムとの間、および/または前記ガスバリア性積層フィルムと前記ヒートシール層の間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ
前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、該無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた積層フィルムであることを特徴とする、種子用包材である。
【0013】
また、本発明の第二は、ガスバリア性積層フィルムと中間基材とヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記ガスバリア性積層フィルムと中間基材との間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ
前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、該無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた積層フィルムであることを特徴とする、種子用包材である。
【0014】
また、本発明の第三は、上記種子用包材を成型してなる種子用袋である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の種子用包材は、印刷層が、種子用包材を構成する層と層とのいずれかの間の層に設けられるため、印刷層が直接外部と接触することが無く、鮮明な印刷面の保護性に優れる。
【0016】
また、本発明の種子用包材は、ガスバリア性積層フィルムに更にプラスチック基材フィルムまたは中間基材が積層されるため、ガスバリア性に優れると共に機械的強度、化学的強度などにも優れる。
【0017】
また、本発明の種子用包材には、外周よりも淡色で印刷された白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を有するため、該窓あき部によって内容物を直接目視することができる。しかも該窓あき部は白の反射濃度が0.1〜0.3であるため、種子用袋の外部からロット番号などを印刷した場合でも、印刷内容を容易に読み取ることができ、種子用包材に設けられた1つの窓によって内容物の確認とロット情報の取得とを同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の種子用包材および種子用袋を詳細に説明する。
【0019】
(1)種子用包材
本発明で使用する種子用包材は、少なくともガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とが積層され、かつガスバリア性積層フィルム側にプラスチック基材フィルムが積層されたもの、またはガスバリア性積層フィルムとヒートシール層との間に中間基材が積層されたものである。プラスチック基材フィルムを最外層に有することで、種子用包材としての機械的、物理的、化学的強度を確保することができ、このようなプラスチック基材フィルムを有しない場合であっても、ガスバリア性積層フィルムとヒートシール層との間に中間基材を積層することで、上記強度を確保することができる。
【0020】
本発明において、種子用包材がプラスチック基材フィルム、ガスバリア性積層フィルムおよびヒートシール層とを含む場合には、プラスチック基材フィルム/ガスバリア性積層フィルム/ヒートシール層積層され、この際、プラスチック基材フィルムはガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルム層と対向して積層されることが好ましい。また、ガスバリア性積層フィルム、中間基材およびヒートシール層とを含む場合には、ガスバリア性積層フィルム/中間基材/ヒートシール層の順に積層される、この際、中間基材は、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗布膜と対向して積層されることが好ましい。
【0021】
本発明では、上記構成層以外に、他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、各層をドライラミネート積層法で積層するためのラミネート用接着剤層や、ヒートシール層を溶融押出し法で積層する場合の、プライマー層やアンカーコート層、その他、アンダーコート剤層や表面処理によって形成された表面処理層などがある。
【0022】
本発明で使用する種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムおよび/もしくは前記ガスバリア性塗布膜、またはこれらの表面処理層上に印刷層を有し、種子用包材が中間基材を有する場合には、前記中間基材および/もしくは前記ガスバリア性塗布膜、またはこれらの表面処理層上に印刷層を有する。鮮明な印刷を行うに好適な表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理などがあり、プライマー、アンカーコート剤、ラミネート用接着剤の塗布によって形成された層に印刷層を形成することもできる。
【0023】
したがって、プラスチック基材フィルムを含む本発明の種子用包材としては、例えば、(a)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/プラズマ処理層/ガスバリア性塗布膜>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(b)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/プラズマ処理層/ガスバリア性塗布膜/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(c)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/ガスバリア性塗布膜/プラズマ処理層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(d)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/ガスバリア性塗布膜/プライマー層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<ヒートシール層>、(e)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/ガスバリア性塗布膜/プライマー層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>などが例示できる。
【0024】
また、中間基材を含む本発明の種子用包材としては、例えば、(f)<基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/プラズマ処理層/ガスバリア性塗布膜/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/中間基材>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(g)<基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/ガスバリア性塗布膜/プライマー層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/中間基材>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(h)<基材フィルム層/コロナ処理層/無機酸化物蒸着層/ガスバリア性塗布膜>/ラミネート用接着剤層/<印刷層/コロナ処理層/中間基材>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>などが例示できる。なお、上記ラミネート用接着剤層を形成する前に、予めプライマー層を形成してもよく、ラミネート用接着剤層に代えてアンダーコート剤層を設け、ヒートシール層を溶融押出し法で形成してもよい。
【0025】
図1(a)にプラスチック基材フィルムとガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とを積層した種子用包材であって、前記プラスチック基材フィルムと前記ガスバリア性積層フィルムとの間に印刷層を有する種子用包材の横断面図を示し、図1(b)にガスバリア性積層フィルムと中間基材とヒートシール層とを積層し、前記ガスバリア性積層フィルムと中間基材との間に印刷層を有する種子用包材の横断面図を示す。
【0026】
図1(a)は、プラスチック基材フィルム(10)にコロナ処理層(80)を設けた後に印刷層(50)を設け、これを、基材フィルム層(21)、コロナ処理層(80)、無機酸化物蒸着層(23)、ガスバリア性塗布膜(25)を順次積層してなるガスバリア性積層フィルム(20)のガスバリア性塗布膜(25)側にラミネート接着剤層(70)を介して接着し、および前記基材フィルム(21)と、コロナ処理層(80)を有するヒートシール層(30)のコロナ処理層とをラミネート接着剤層(70)を介して接着してなる種子用包材の横断面図である。
【0027】
また、図1(b)は、ガスバリア性積層フィルム(20)を構成する上記ガスバリア性塗布膜(25)上にプライマー層(60)を介して印刷層(50)を設け、該印刷層(50)と両面にコロナ処理層(80)を有する中間基材(40)の前記コロナ処理層(80)とを、ラミネート用接着剤層(70)を介して積層し、更に、他のコロナ処理面(80)と、コロナ処理層(80)を有するヒートシール層(30)のコロナ処理層(80)とをラミネート接着剤層(70)を介して接着してなる種子用包材の横断面図である。
【0028】
本発明において、上記印刷層(50)は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部(120)が形成されるように印刷されている。図2に上記種子用包材(100)を用いて調製した種子用袋を示すが、種子用袋の表面または裏面のいずれかに該窓あき部(120)が設けられ、この窓あき部(120)を介して内容物を観察することができる。
【0029】
(2)プラスチック基材フィルム
本発明で使用しうるプラスチック基材としては、本発明の種子用包材の用途に足る機械的、物理的、化学的強度に優れ、特に耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などに優れ、窓あき部の白の反射濃度が0.1〜0.3の範囲を確保でき、かつその表面に印刷することができる樹脂を広く使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明においては、特にポリプロピレン系樹脂を好適に使用することができる。種子用袋は、市販の際に自立できることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂であれば機械的、化学的強度に優れ、かつこのような腰を付与することができる。しかも、表面が光沢を有するため、種子用袋の外観を向上させることができる。更に、印刷による印字等を容易に行うこともできる。
【0030】
本発明において、プラスチック基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。本発明では、特に延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0031】
本発明において、プラスチック基材フィルムの厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はないが、好ましくは6〜100μm、より好ましくは9〜50μmである。
【0032】
(3)印刷層
本発明では、印刷方法に限定はないが、グラビア印刷によることが好ましい。グラビア印刷は、原版のインクの付く部分が凹状に彫り込まれているタイプの印刷方式であり、近年は、この凹部が、ダイヤモンドヤレーザーをつけたエッチング機でデジタルに形成されている。インクはこの凹部からでてくるので、その深さと大きさ、印刷層への凹部の圧力などによって色の濃度を調整することがきる。グラビア印刷機は、色ごとに1つの印刷ユニットを有し、写真など階調を持つ画像の再現性に優れる。このようなグラビア印刷機によってプラスチックフィルムへ印刷するには、印刷層の剥がれ落ちを防止するため文字を見る面の反対側に裏面印刷が行われることが一般的であり、濃色インクから淡色インクの順、例えば墨、藍、紅、黄の順に刷り始め、最後に全面に白色インクなどの淡色インクによる印刷がなされる。白色インクなどの淡色インクによる全面印刷を最後に行うことで内容物が透けて見えるのを防止し、かつ白色インクなどの淡色インクとプラスチックフィルムとの間に設けたカラー印刷層を鮮明にできるからである。本発明では、印刷層は、上記裏面印刷と同様に、印刷層の最上層を淡色インクのなかでも、特に白色インク印刷とすることが好ましい。淡色インクであれば、窓あき部に外部からロット番号などの個別の印刷を行った場合にも、その印刷内容の判読を容易に行うことができる。また、紫外線を含む全光線をカットする効果に優れ、種子の保存性にも優れる。この際、他の色インクの順は問わないが、好ましくは黒、藍、紅、黄の順に印刷し、黄の後に特定の割合で配合した特色インクによる印刷を重ねてもよい。なお、本発明において、淡色インクとは明度の高いものを意味し、白色インクを主成分として他の色インクを配合したものを意味する。
【0033】
図3に、プラスチック基材フィルム(10)のコロナ処理層(80)に、上記印刷順で、印刷層に外周よりも淡色で印刷された窓あき部を形成する方法を説明する。まず、図3に、窓あき部(58)以外の外周部(57)に黒(51)、藍(52)、紅(53)、黄(54)および特定インク(55)にて印刷し、窓あき部(58)には黒、藍、紅、黄および特色インクによる印刷がなされていない窓あき部(58)を形成する。ついで、この窓あき部(58)と外周部(57)との双方に白色インク(56)による印刷を行う。これによって、窓あき部(58)にも白色インク(56)による印刷層が形成される。なお、図3では、各色インクを層状に図示したが、各層内ではインクはドット状に存在し、各色のドットの集合によって特定の文字や絵などが表現される。
【0034】
本発明では、前記窓あき部(58)の白の反射濃度が0.1〜0.3、より好ましくは0.15〜0.25である。0.1を下回ると、該種子用包材を用いて製造した種子用袋において、窓あき部の上面に外部から印刷をおこなっても、印刷面を判読しづらい場合がある。一方、0.3を超えると、種子用袋に収納した内容物が観察しづらい場合がある。なお、本発明における上記透過度は、後記する実施例で記載する方法で測定するものとする。
【0035】
本発明において、上記透過度に調整するには、グラビア印刷機の白色インクによる前記凹部のサイズを、調整したり、印刷層の単位面積当たりの凹部の数を調整したり、または窓あき部(58)を白色インクの複数の細線で構成するなど、本発明の趣旨を損なわない範囲で模様を形成してもよい。
【0036】
本発明において、窓あき部のサイズには限定がなく、本発明の種子用包材を用いて製造する種子用袋のサイズや収納する種子の種類、窓あき部の上面に印刷する内容量などによって適宜選択することができる。
【0037】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0038】
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
【0039】
(4)基材フィルム層
ガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルム層としては、無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜を設けるに足る機械的、物理的、化学的強度を有し、特に無機酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、無機酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得る樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0040】
このような基材フィルム層としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなるフィルムを使用することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。
【0041】
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0042】
本発明において、基材フィルムの膜厚としては、6〜100μm位、より好ましくは、9〜50μm位が好ましい。
【0043】
なお、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0044】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0045】
(5)表面処理
本発明において、上記の基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を形成するが、予め基材フィルム層に表面処理をおこなってもよい。これによって無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。
【0046】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0047】
また、本発明で使用する各種フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0048】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。すなわち、後記する物理的気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。更に、本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0049】
なお、本発明においては、前記基材フィルム層以外の他の樹脂フィルムの表面にも、無機酸化物の蒸着膜、ガスバリア性塗布膜、印刷層その他の層やフィルムとの密着性を向上させるために、前記いずれかの表面処理をおこなってもよい。例えば、本発明では、ヒートシール層を上記ガスバリア性塗布膜上に形成する際に、ガスバリア性塗布膜にプラズマ処理を行い、ついで印刷層を形成し、この印刷層上にラミネート用接着剤を介してヒートシール層を積層してもよく、ガスバリア性塗布膜にプライマー、ラミネート用接着剤を介してヒートシール層をドライラミネート積層法で積層し、またはガスバリア性塗布膜にプライマー、アンダーコート剤を介して上記ヒートシール層を構成しうる溶融樹脂を溶融押出しにより積層してもよい。
【0050】
(6)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0051】
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルム層の一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0052】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0053】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図4を用いて説明する。
【0054】
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム層201を繰り出し、更に、該基材フィルム層201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム層201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム層201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルム層を一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルム層の上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図4中、符号235は真空ポンプを表す。
【0055】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0056】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルム層の搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルム層の上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルム層の表面が清浄化され、基材フィルム層の表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルム層との密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルム層の原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0057】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルム層の一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0058】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0059】
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルム層との界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルム層と酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0060】
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0061】
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0062】
本発明では、無機酸化物の蒸着膜として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0063】
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0064】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0065】
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルム層の一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルム層の一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図5を参照して説明する。
【0066】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム層201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム層201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム層201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
【0067】
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0068】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明では、白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を有することが特徴であり、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、無機酸化物の蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0069】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
【0070】
上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルム層の上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルム層の上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0071】
(7)ガスバリア性塗布膜
本発明で使用するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルム層の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
【0072】
また、前記ガスバリア性組成物を上記基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜180℃、かつ、上記基材フィルム層の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
【0073】
上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
【0074】
上記一般式R1nM(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
【0075】
上記一般式R1nM(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
【0076】
上記一般式R1nM(OR2m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
【0077】
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1nM(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(0C374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。
【0078】
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0079】
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0080】
本発明では、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−0C374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
【0081】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−0C374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
【0082】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
【0083】
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルム層を被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0084】
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルム層を被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
【0085】
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0086】
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
【0087】
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
【0088】
前記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0089】
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0090】
本発明で使用するガスバリア性組成物は、前記一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。上記ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0091】
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
【0092】
また、ゾル−ゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
【0093】
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾル−ゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
【0094】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
【0095】
更に、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
【0096】
本発明において、ガスバリア性積層フィルムは、以下の方法で製造することができる。
【0097】
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
【0098】
次いで、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
【0099】
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルム層を20℃〜180℃、かつ基材フィルム層の融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、前記無機酸化物の蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成したバリア性フィルムを製造することができる。
【0100】
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したバリア性フィルムを製造することができる。
【0101】
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、本発明に係るバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
【0102】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムの製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
【0103】
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾル−ゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
【0104】
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
【0105】
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
【0106】
【化1】

このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
【0107】
【化2】

【0108】
【化3】

【0109】
【化4】

【0110】
【化5】

【0111】
【化6】

上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
【0112】
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム層、または、基材フィルム層上の無機酸化物の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム層、または前記無機酸化物の蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
【0113】
なお、本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。
【0114】
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0115】
(8)プライマー層
本発明では、上記ガスバリア性塗布膜の面に、例えばプライマーを塗布してプライマー層を形成し、ついで、該プライマー層の面にラミネート用接着剤層を形成し、その後プライマー層およびラミネート用接着剤層を介してヒートシール層などの基材をドライラミネート積層法を用いて積層することができる。このようなプライマー層を設けることで、ガスバリア性塗布膜とその上に積層しうる、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層、ヒートシール層などとの密着性を高め、積層強度を向上させることができる。また、上記ガスバリア性塗布膜の面にプライマー層を形成し、その上に印刷層を形成してもよい。
【0116】
プライマー層を構成するプライマーとしては、ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂などをビヒクルの主成分とし、該ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂1〜30質量%に対して、シランカップリング剤0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、充填剤0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の割合で配合し、その他、溶媒や希釈剤を含むプライマー組成物を使用することができる。このプライマー組成物には、必要に応じて、更に安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を配合してもよい。本発明において、プライマー層の厚さは、0.1〜10.0g/m2(乾燥状態)である。上記プライマー組成物は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法などによりコーティングし、該コーティング膜を乾燥させて溶媒や希釈剤を除去し、更に必要に応じてエージング処理などを行ってプライマー層とすることができる。
【0117】
上記ポリウレタン系樹脂としては、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリウレタン系樹脂を使用することができる。例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られる1液ないし2液硬化型のポリウレタン系樹脂などを例示できる。
【0118】
一方、ポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸などのベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸の一種または2種以上と、飽和二価アルコールの一種またはそれ以上との重縮合により生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂を例示できる。ベンゼン核を有する芳香族飽和ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルエーテル、4,4−ジカルボン酸などがある。また、飽和二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプリピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール、シクロヘキササンジメタノールなどの脂環族グリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ナフタレンジオールその他の芳香族ジオールが例示できる。
【0119】
上記ポリエステル系樹脂としては、より具体的には、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とテトラメチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、その他等がある。
【0120】
なお、ベンゼン核を有する飽和芳香族ジカルボン酸に、更にマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸の一種以上を添加して共重縮合してもよく、その際の使用量としては、芳香族ジカルボン酸の1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0121】
ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂によれば、無機酸化物、特には前記有機含有酸化珪素層と印刷層、ヒートシール層などとの密着性を向上させることができ、プライマー層の伸長度を向上させて、ラミネート加工などの後加工適性を向上させ、後加工時における前記有機含有酸化珪素層のクラックなどの発生を防止することができる。
【0122】
プライマー組成物を構成するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能基シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの水溶液などの1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0123】
本発明では、シランカップリング剤の無機性官能基および/または有機性官能基を利用し、ガスバリア性塗布膜と、印刷層、プライマー層などとの接着強度を高めることができる。具体的には、上記シランカップリング剤の分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、またはアセトキシ基などが加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これがガスバリア性塗布膜を構成する金属やその膜表面上の活性な基、例えば水酸基などの官能基と作用し、脱水縮合反応などの反応を起こし、ガスバリア性塗布膜の膜表面にシランカップリング剤が共有結合などで修飾され、更にシラノール基自体のガスバリア性塗布膜の膜表面に吸着や水素結合などにより強固な結合を形成する。また、シランカップリング剤の他端にあるビニル、メタクリロキシ、アミノ、エポキシ、またはメルカプトなどの有機官能基がそのシランカップリング剤の薄膜の上に形成される、例えば印刷層、プライマー層、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層、溶融押出樹脂層、その他の層を構成する物質と反応して強固な結合を形成し、更に上記の印刷層、プライマー層、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層、溶融押出樹脂層を介して、ヒートシール層が強行に蜜接着し、そのラミネート強度を高めることができる。
【0124】
上記プライマー組成物を構成する充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末などがある。充填剤を配合すると、上記ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂を含む溶液の粘度を調整し、コーティング適性を向上させることができ、かつバインダー樹脂としてポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂とシランカップリング剤を介してコーティング膜の凝集力を向上させることができる。
【0125】
(9)ラミネート用接着剤
本発明では、上記ガスバリア性塗布膜の面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、ついで該プライマー層の面にラミネート用接着剤を介してヒートシール層などの基材をドライラミネート積層法を用いて積層することができる。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。また、プラスチック基材とガスバリア性積層フィルムとの接着、ガスバリア性積層フィルムとヒートシールとの接着などに上記ラミネート用接着剤を使用することができる。
【0126】
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0127】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0128】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0129】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0130】
(10)アンカーコート剤
本発明では、例えばヒートシール層を押出し形成する際に、前記プライマー層上にアンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することができる。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができ、バリア性フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。上記アンカーコート剤からなるアンカーコート剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0131】
(11)プラズマ処理
本発明では、上記ガスバリア性塗布膜に対し、前記表面処理の中でプラズマ処理を行うことが好ましく、これによってより鮮明な印刷層を形成することができる。
【0132】
ガスバリア性塗布膜に対するプラズマ処理としては、プラズマガスとして、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができ、特に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのように、酸素ガスを含む無機ガスをプラズマガスとして使用してプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能であり、これにより、ガスバリア性塗布膜の表面の変色等もなく、また、そのガスバリア性塗布膜の表面に、例えば、化学反応等によりOH基等を導入することができ、更に、ガスバリア性塗布膜中に存在するSi−C結合等をSiO2化することを可能とする。更に、上記プラズマ処理により、ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜の架橋密度等を高め、その湿度依存性等を改良し、酸素ガスに対するガスバリア性は勿論のこと、水蒸気に対するバリア性も向上し、相対的に、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性を安定して維持することを可能とし、更にまた、ガスバリア性塗布膜の面に、真空中で、酸素ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスを使用してプラズマ処理を施してプラズマ処理層を形成することにより、該プラズマ処理層に、例えば、印刷層、接着剤層、アンカーコート剤層、ヒートシール性樹脂層、その他等の基材を積層する場合、その密接着性等を向上させ、その積層強度等を著しく高めることを可能とするものである。
【0133】
具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜10−10Torr位、より好ましくは、1×10-2〜1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が望ましく、更に、そのプラズマ出力としては、100〜2500W位、より好ましくは、500〜1500W位が望ましく、更にまた、その処理速度としては、100〜600m/min位、より好ましくは、200〜500m/min位が望ましい。上記の酸素ガスとアルゴンガスとの分圧比において、アルゴンガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスが還元性ガスとして働き、水酸基の導入が阻害されることから好ましくないものである。また、上記のプラズマ出力が、100W未満、更には、500W未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくいことから好ましくなく、また、1500Wを越えると、更には、2500Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるので、ガスバリア性塗布膜等の劣化により、そのものの物性が低下するという問題を引き起こすことから好ましくないものである。
【0134】
更に、上記の処理速度が、100m/min未満、更には、250m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また、600m/minを越えると、更には、500m/minを越えると、ガスバリア性塗布膜の酸化が急速に進み、透明性は高くなるが、バリア性が低下して好ましくないものである。
【0135】
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロ−放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の3通りの装置を利用して行うことができる。本発明においては、3.56MHzの高周波(AF)放電装置を利用して行うことができる。
【0136】
(12)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0137】
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。
【0138】
(13)中間基材
本発明では、ガスバリア性塗布膜とヒートシール層との間に、種子用包材の補助素材として、機械的、物理的、化学的強度に優れる中間基材を設けてもよい。これにより、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などを向上させることができる。このような中間基材として、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明において、プラスチック基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。本発明では、特に延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0139】
本発明において、中間基材の厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はないが、好ましくは6〜100μm、より好ましくは9〜50μmである。
【0140】
(14)種子用包材の製造方法
本発明の種子用包材は、予め基材フィルム層(21)の一方の面に、無機酸化物の蒸着膜(23)を設け、更に、該無機酸化物の蒸着膜(23)の面上に、前記ガスバリア性塗布膜(25)を設けたガスバリア性積層フィルムを製造し、予めプラスチック基材フィルム、ガスバリア性積層フィルム、中間基材のいずれか1以上に上記印刷層を形成したものを、ヒートシール層が最内層となるように、適宜、ラミネート用接着剤層を介して接着などして製造することができる。フィルムとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。また、前記ガスバリア性積層フィルムが市販されている場合には、市販品を使用することもできる。
【0141】
印刷層は、濃色から淡色の順に、プラスチック基材フィルム、ガスバリア性積層フィルム、中間基材のいずれか1以上に直接印刷してもよいが、好ましくはプラスチック基材フィルム、ガスバリア性積層フィルム、中間基材にコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を行うか、またはプライマーを塗布してプライマー層を形成した後に行うことが好ましい。これによって鮮明な印刷層を形成することができる。本発明では、印刷層の最上層は、淡色、特に好ましくは白色であり、この白色印刷層はラミネート用接着剤を介してヒートシール層、中間基材、ガスバリア性積層フィルムの基材フィルム層のいずれかと積層される。
【0142】
また、本発明においては、いずれかのフィルムや層の積層を行う際に、必要ならば、前記したように、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知の前処理のほか、アンカーコート剤などを使用することができる。
【0143】
(15)種子用袋
本発明の種子用袋は、上記種子用包材のヒートシール層を対向するように重ね合わせ、端部を袋状にヒートシールして製造することができる。本発明では、印刷層の最上層が白色インクなどの淡色インクで印刷される場合には、ヒートシール層から最上層の白色インクなどの淡色インク層が肉眼視できる。
【0144】
前記種子用包材は印刷層に窓あき部を有するため、種子用袋のいずれかに白の反射濃度が0.1〜0.3である窓あき部が形成される。本発明では、窓あき部の形成箇所に限定はないが、たとえば図2に示すように、種子用袋(100)の表面または裏面のいずれかの下部に窓あき部(120)が形成することが好ましい。この窓あき部(120)を通して、収納された内容物を容易に確認することができる。しかも、窓あき部(120)の透過度が白色インクなどの淡色インクによって特定範囲に調整されている場合には、この窓あき部の上から、種子用袋の外部から濃色インクで印刷を行うことができ、その印刷内容を容易に判読することができる。なお、上記したように、印刷層の最上層が白色インクなどの淡色インクで印刷される場合には、ヒートシール層側は白色などの淡色であり、窓あき部(120)の背景は、この白色ないし淡色となる。このため、より窓あき部(120)の上面での印刷の判読を容易にすることができる。
【0145】
一般に、種子用袋には、商品名、収納した種子に関する情報や栽培方法など、その種子に共通した情報が印刷されることが多い。このような印刷は、図2の外周部(125)に従来通り行うことができる。一方、本発明の種子用袋では、前記窓あき部(120)を設けることで内容物を肉眼によって確認することができ、かつこの窓あき部(120)の上面に種子用袋本体とは異なる印刷を行うことができる。このような窓あき部(120)への印刷内容としては、ロット番号や製造日、品質保持期限、生産地、発芽率などの個別の情報が例示できる。
【0146】
本発明では、種子用包材の窓あき部の位置に応じて、種々の方法で本発明の種子用袋を製造することができる。例えば、本発明のプラスチック基材フィルム(10)を最外層に有し、最内層にヒートシール層(30)を有する種子用包材を使用する場合、例えば図6に示すように窓あき部(120)を種子用袋の表面または裏面のいずれかの下部に位置させ、種子用包材のヒートシール層(30)が対向するように袋状に折り返し、切り離しの2枚の側部を重ね合わせ、その側部と底部とをヒートシールする方法がある。
【0147】
また、本発明では、窓あき部(120)は、種子用袋(100)に少なくとも一箇所設けられていればよい。したがって、例えば種子用袋の表面または裏面のいずれかに上記窓あき部が形成されるように本発明の種子用包材を使用し、他の面には、本発明の種子用包材の窓あき部がない部分を使用することが好ましい。また、複数の窓あき部(120)を形成する場合には、種子用袋を製造する際に、窓あき部が重複しないようにすればよい。
【0148】
また、種子用包材の最内層に位置するヒートシール層の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールしてヒートシール部を形成すると共にその上部に開口部を形成して、三方シール型の種子用袋を製造することができる。これらの種子用袋を使用し、その上部の開口部から、各種の種子を充填し、次いで、その開口部をヒートシールすれば、本発明の種子用袋を使用した包装製品を製造することができる。その他、本発明の種子用袋の形状としては、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った種々の形態からなる包装用袋を製造し得る。なお、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0149】
また、本発明の種子用袋には、例えば図2に示すように、四隅の角(113)を丸くカットし、容易に開封できるように、切り込み(115)を設けてもよい。このような切り込みは使用するプラスチック基材フィルムの延伸方向などを勘案して適宜選択することができる。
【0150】
本発明の種子用袋に収納できる種子としては、野菜や花卉の種子、その他、果物などがある。
【実施例】
【0151】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0152】
実施例1
(1) ガスバリア性積層フィルムの基材フィルム層として、少なくとも一面にコロナ処理を行った厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着して繰り出し、そのフィルムのコロナ処理層にアルミニウムを蒸着源に用いて酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件で膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
【0153】
(蒸着条件)
蒸着源:アルミニウム
蒸着チャンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kw
フィルムの搬送速度:240m/min
蒸着面:コロナ処理層上
(2) 酸化珪素の蒸着膜の面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mba、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理層を形成した。
【0154】
(3) 表1に示す組成に従って、組成a.エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH、エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に、予め調製した組成c.のポリビニルアルコール系、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のガスバリア性組成物を得た。
【0155】
(4) 上記の(1)で形成したプラズマ処理層の上に、上記(3)のガスバリア性組成物をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成し、ガスバリア性積層フィルム(以下、IB−PET−PUBと称する。)を製造した。
【0156】
【表1】

(5) 厚さ40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム:東洋紡績株式会社製、商品名「P2161」)のコロナ処理層の上に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により印刷を行った。印刷は、上記コロナ処理層に、濃色から淡色に、墨、藍、紅、黄、白となるように刷り始め、白色以外は縦27mm、横63mmの方形の窓あき部が形成しうる範囲に印刷し、窓あき部は、グラビアダイレクト版の線数、版深、編み掛けの設定により、薄い白の半透明の印刷層を形成した。
【0157】
(6) 上記(5)の印刷層上に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアロールコート法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、上記(4)で形成したバリアー性積層フィルムのバリアー性塗布膜の面を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、更に上記貼り合せ積層フィルムのバリアー性フィルムのポリエチレンテレフタレート面に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアコートロール法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、厚さ60μmのポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「LC−21」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、本発明の種子用包材を製造した。
【0158】
得られた種子用包材の層構成は、OPPフィルム40μm/絵柄印刷層+半透明窓あき印刷層1μm/ドライラミネート用接着剤層3μm/IB−PET−PUB12μm/ドライラミネート接着剤層3μm/ポリエチレンフィルム60μmである。
【0159】
(7) 上記種子用包材の反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。結果を表2〜5に示す。
【0160】
(8) 上記で製造した種子用包材を、図6に示すように、その最内層に位置するヒートシール性樹脂層としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの面が対向するように袋状に重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の開口部以外をシール幅7mmでヒートシールして三方シールの98mm×155mmの種子用袋を製造した。ついで、この種子用袋の窓あき部に、外部からロット番号および発芽率を印字した。ロット番号および発芽率が印字された種子用袋の開口部から種子を充填し、その開口部をヒートシールして種子充填袋を製造した。
【0161】
(9) 上記(8)で製造した種子充填袋を外観から観察した。
【0162】
実施例1の種子充填袋は、絵柄印刷部(図2の125)では種子が見えにくく、窓開き部(図2の120)では種子の形状および色を確認することができた。一方、窓あき部に印字したロット番号および発芽率は外部から目視により判読することができた。
【0163】
実施例2
実施例1の(1)〜(4)と同様に処理した。
【0164】
(5) 上記(4)で製造したIB−PET−PUBのバリアー性塗布膜の面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により印刷を行った。印刷は、上記バリアー性塗布膜に、濃色から淡色に、墨、藍、紅、黄、白となるように刷り始め、白色以外は縦27mm、横63mmの方形の窓あき部が形成しうる範囲に印刷し、窓あき部は、グラビアダイレクト版の線数、版深、編み掛けの設定により、薄い白の半透明の印刷層を形成した。
【0165】
(6) 上記(5)の印刷層上に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアロールコート法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、厚さ20μmのOPPフィルム(東セロ株式会社製、商品名「U−2」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、更に上記貼り合せ積層フィルムのOPP面に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアコートロール法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、厚さ60μmのポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「LC−21」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、本発明の種子用包材を製造した。
【0166】
得られた種子用包材の層構成は、IB−PET−PUB12μm/絵柄印刷層+半透明窓あき印刷層1μm/ドライラミネート用接着剤層3μm/OPPフィルム20μm/ドライラミネート接着剤層3μm/ポリエチレンフィルム60μmである。
【0167】
(7) 上記種子用包材の反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。結果を表2〜5に示す。
【0168】
(8) 上記で製造した種子用包材を、実施例1の(8)、(9)と同様に処理して種子充填袋を製造し、外観から観察した。その結果、実施例2の種子充填袋は、絵柄印刷部(図2の125)では種子が見えにくく、窓開き部(図2の120)では種子の形状および色を確認することができた。一方、窓あき部に印字したロット番号および発芽率は外部から目視により判読することができた。
【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

なお、反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度は、以下の方法で測定した。
【0173】
(i) 反射濃度
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、反射濃度計(ATECH LTD社製、X−RITE model 810)を使用して測定した。
【0174】
(ii) ヘーズ
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、ヘーズメータ(スガ試験機製 110M−2K)を使用して測定した。
【0175】
(iii) 全光線透過率
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、全光線透過率測定機(スガ試験機製 110M−2K)を使用して測定した。
【0176】
(iv) 酸素透過度
種子用包材について、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
【0177】
(v) 水蒸気透過度
種子用包材について、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明に係る種子用包材は、印刷層に窓あき部が設けられているため外部から内容物を観察することがで、かつ該窓あき部には外部から印刷を行うことができるため、ロットなどの個別の情報を印字することができ、美観に優れると共に機能的であり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1(a)、(b)は、本発明で使用する種子用包材を説明する横断面図である。
【図2】本発明で使用する種子用袋の外観を示す図である。
【図3】本発明の種子用包材における、印刷層を有するプラスチック基材フィルムの横断面図であり、プラスチック基材フィルムに窓あき部を有する印刷層を形成する方法を説明する図である。
【図4】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図5】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図6】本発明の種子用包材を使用して、種子用袋を製造する際の説明図である。
【符号の説明】
【0180】
10・・・プラスチック基材フィルム、
20・・・ガスバリア性積層フィルム、
21・・・基材フィルム層、
23・・・無機酸化物蒸着層、
25・・・ガスバリア性塗布膜、
30・・・ヒートシール層、
40・・・中間基材、
50・・・印刷層、
57・・・外周部、
58・・・窓あき部、
60・・・プライマー層、
70・・・ラミネート用接着剤層、
80・・・コロナ処理層、
100・・・種子用包材、
110・・・ヒートシール部、
113・・・角部、
115・・・切込み、
120・・・窓あき部、
125・・・外周部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材フィルムとガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムと前記ガスバリア性積層フィルムとの間、および/または前記ガスバリア性積層フィルムと前記ヒートシール層の間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ前記窓あき部は、白の反射濃度が0.1〜0.3であり、
前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、該無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた積層フィルムであることを特徴とする、種子用包材。
【請求項2】
前記印刷層は、前記プラスチック基材フィルムおよび/もしくは前記ガスバリア性塗布膜、またはこれらの表面処理層上に形成されたものである、請求項1記載の種子用包材。
【請求項3】
ガスバリア性積層フィルムと中間基材とヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記ガスバリア性積層フィルムと中間基材との間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ前記窓あき部は、白の反射濃度が0.1〜0.3であり、
前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム層の一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、該無機酸化物の蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた積層フィルムであることを特徴とする、種子用包材。
【請求項4】
前記印刷層は、前記中間基材および/もしくは前記ガスバリア性塗布膜、またはこれらの表面処理層上に形成されたものである、請求項3記載の種子用包材。
【請求項5】
前記表面処理が、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理またはグロー放電処理のいずれかである、請求項2または4のいずれかに記載の種子用包材。
【請求項6】
前記表面処理が、プライマー、アンカーコート剤および/またはラミネート用接着剤の塗布によるものである、請求項2または4記載の種子用包材。
【請求項7】
前記印刷層はグラビア印刷によって形成され、前記印刷層の最上層を構成するインクは白色インクであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の種子用包材。
【請求項8】
前記プラスチック基材フィルムおよび/または中間基材は、延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、厚さ6〜100μmである、請求項1〜7のいずれかに記載の、種子用包材。
【請求項9】
前記一般式R1nM(OR2m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタニウム、または、アルミニウムからなることを特徴とする上記の請求項1〜8のいずれかに記載の種子用包材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の種子用包材を袋状に成型してなる種子用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56276(P2008−56276A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234609(P2006−234609)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】