説明

穀物貯留室の張込穀物量検出装置

【課題】張込穀物量の検出精度を維持できるように、検出状態の異常を検出できる穀物貯留室の張込穀物量検出装置を提供する。
【解決手段】穀物貯留室の張込穀物量検出装置は、錘21wを吊り下げ支持したワイヤロープ21rと、巻取ドラム22と、その回転カウント手段22sとを備え、錘21wの所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘21wが移動するのに要した巻取ドラム22の回転回数のカウント信号から張込穀物量を算出する制御処理部と、前記ワイヤロープ21rの巻上げにより錘21wが前記所定の基準位置に到達したことを検出する基準ポジションセンサ24sとを備え、張込穀物量の検出動作開始時に巻取ドラム22が巻き上げ動作を行い、巻き上げ開始からから所定のカウント範囲内で前記基準ポジションセンサ24sの検出信号が無いと異常判定を行うように制御処理を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物乾燥機の貯留室内に張込まれた穀物の張込量を検出する穀物貯留室の張込穀物量検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の穀物貯留室の張込穀物量検出装置は、貯留室に張込んだ穀物を循環して乾燥する穀物乾燥機に適用され、具体的には、特許文献1の張込穀物量検出装置のように、ワイヤロープで吊り下げた錘を下降して穀物の張込面に接触するまでのワイヤロープ巻取ドラムの回転回数から張込穀物量を算出するものである。
【特許文献1】特開2001−82877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の張込穀物量検出装置においては、穀物貯留室の内部の熱や埃等による厳しい環境に備えており、張込穀粒量の検出精度に悪影響を及ぼしやすい。本発明は、張込穀物量検出装置の検出状態が異常であることを検出できるようにすることで穀物量の検出精度を維持できることを課題とする(請求項1・請求項2)。また、検出精度に悪影響を及ぼす状態になった場合にそれを回避する(請求項3)ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備え、この巻取ドラム(22)の回転回数をカウントする回転カウント手段(22s)と、錘(21w)の所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動するのに要した巻取ドラム(22)の回転回数のカウント信号から穀物の張込高さ位置を検出するとともに張込穀物量を算出する制御処理部と、前記ワイヤロープ(21r)を巻き上げたときに錘(21w)が前記所定の基準位置に到達したことを検出する基準ポジションセンサ(24s)とを備え、張込穀物量の検出動作開始時に巻取ドラム(22)が巻き上げ動作を行い、巻き上げ開始からから所定のカウント範囲内で前記基準ポジションセンサ(24s)の検出信号が無いと異常判定を行うことを特徴とする。
【0005】
請求項2に係る発明は、穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備え、この巻取ドラム(22)の回転回数をカウントする回転カウント手段(22s)と、錘(21w)の所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動するのに要した巻取ドラム(22)の回転回数のカウント信号から穀物の張込高さ位置を検出するとともに張込穀物量を算出する制御処理部と、前記ワイヤロープ(21r)を巻き上げたときに錘(21w)が前記所定の基準位置に到達したことを検出する基準ポジションセンサ(24s)とを備え、錘(21w)が前記所定の基準位置から前記穀物の張込面に到達するまでの巻き下げ回数と、張込穀物量検出後に前記所定の基準位置に到達するまでの巻き上げ回数の回転カウントの差が所定範囲外の場合に異常判定を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項3に係る発明は、穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備えるとともに、前記穀物貯留室(10)内に穀物を張り込むための張込手段と、該張込手段を起動する張込スイッチ(6b)を設け、前記錘(21w)が所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動中に前記張込スイッチ(6b)を操作すると異常判定をするとともに、巻取ドラム(22)を即時巻上げ駆動して穀物張込量の検出制御を終了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によると、張込穀物量検出装置の検出開始時に錘が所定の基準位置に到達しないことを検出できることで、例えばワイヤロープが切断されて錘が落下している状態等の検出開始時の異常を検出することができる。
【0008】
請求項2記載の発明によると、巻取ドラムの回転回数をカウントする回転カウント手段の異常を検出することができる。
【0009】
請求項3記載の発明によると、張込穀物量検出装置が張込穀粒量を検出している最中に誤操作で張込スイッチを操作して張込手段を起動させると、巻取ドラムを即時巻上げ駆動して穀物張込量の検出制御を終了することで、穀物貯留室内に供給された穀物が張込穀粒量を検出中のワイヤロープや錘に衝突することによるワイヤロープの切断等の装置の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1、図2は、それぞれ、穀物乾燥装置の内部構成を示す内部透視正面図、機体縦断面図である。
穀物乾燥装置は、塔型構成の箱体1の上段部に穀物を貯留する貯留室10を、下段部にその穀物を受けて循環乾燥する乾燥手段である乾燥部11を構成する。
箱体1の前側は、乾燥部11から穀物を上送するバケットコンベヤ等による昇降機2と、熱風を発生させる加熱手段であるバーナー4を内設した加熱室5と、乾燥作業を操作する各種スイッチおよび表示部を備える操作盤6とを備えるほか、箱体1の天井側は昇降機2で上送した穀物を箱体1内まで搬送する搬送装置3を備える。箱体1の後ろ側には排気口8を形成し、箱体1内の熱風を吸引排出する排気手段である排気ファン7を設け、箱体1の側面には、穀物を投入する投入口(付図示)を開閉可能に構成する。
【0011】
機体各部について詳細に説明すれば、昇降機2には穀物の水分を検出する水分計9と箱体1内の穀物を機外に排出する穀物排出口18とをそれぞれ設ける。
【0012】
貯留室10の上部にはラセンによる搬送装置3によって搬送された穀物を貯留室10内に均一に拡散する拡散羽根12と、穀物の張込面の高さ位置を検出するサウンディング式の張込計20によって張込量を計測する張込量計測装置とを備えている。乾燥部11はバーナー4で発生させた熱風が通過する熱風室13と、貯留室10から穀物が流下する流下通路14と、排気ファン7の吸引作用を受ける排風室15とから構成される。
【0013】
流下通路14の下端部には流下通路14を流下した穀物を所定量ずつ繰り出す定量繰出手段としてのロータリバルブ16を設け、このロータリバルブ16の下方にはロータリバルブ16で繰り出された穀物を受けて昇降機2に搬送する下部ラセン17を設けている。
【0014】
操作盤6については、図3の見取図に示すように、張込量計測スイッチ6a、張込開始スイッチ6b、乾燥開始スイッチ6c、排出開始スイッチ6d、停止スイッチ6eからなる作業スイッチ、張込量の設定スイッチ、仕上がり水分の設定スイッチ、穀物種類の設定スイッチ等の設定スイッチ、機器状況を表示する各種数値の表示部6s、6t等を備えている。また、操作盤6内には一連の運転制御をする制御処理部を備えている。
【0015】
(乾燥処理)
次に、乾燥作業について説明する。
作業者は張込開始スイッチ6bを操作して機体側部の投入口に穀物を投入していく。投入された穀物は下部ラセン17に供給され昇降機2まで搬送され、昇降機2から搬送装置3を経て貯留室10に供給されていく。穀物の投入終了後、乾燥開始スイッチ6cを操作すると燃焼バーナ4が作動し、熱風が熱風室13に供給される。一方、ロータリバルブ16も駆動を開始し、流下通路14を流下する穀物を順次下部ラセン17に繰り出していく。熱風室13に供給された熱風は網目壁で形成された流下通路14を透過して穀物を加熱乾燥しつつ、排風室15側に吸引されて排出される。
【0016】
(張込計)
上記張込計20について詳細に説明すると、図4の要部斜視図、および図5の動作説明図に示すように、錘21wを吊り下げて穀物の張込面に接触しうる長さのワイヤロープ21rと、このワイヤロープ21rを巻取るための巻取ドラム22とから構成される。ワイヤロープ21rには、その張力の強弱を検出するテンションレバー23と、ワイヤロープ21rの巻取基準位置を錘21wによって検出するポジションレバー24とを設ける。テンションレバー23およびポジションレバー24は、支軸26によって回動可能に支持し、それぞれの動作検出用のリミットスイッチ23s、24sを付設してテンションセンサ、基準ポジションセンサを構成する。巻取ドラム22には、正逆転駆動するモーター22mを備えるとともに、巻取ドラム22の大径部22dに一定ピッチで形成した凹部に弾接して非駆動時にその回動角度位置を保持する弾圧機構27を配置する。また、巻取ドラム22にはその回転量を検出パルスでカウントするための検出部22sを設ける。
【0017】
張込計20による穀物の張込高さ位置を計測する方法は、基準の巻取り位置から巻取ドラム22を回動してワイヤロープ21rを繰り出し、錘21wが穀物の張込面に到達することによってワイヤロープ21rの張力が低下するので、その張力変化によるテンションレバー23の回動がリミットスイッチ23sを介して検出信号に変換されることから、その間の巻取ドラム22の回転量により求められる張込高さ位置から貯留量を換算により得ることができる。計測の後は、錘21wの干渉によるポジションレバー24の検出動作と対応する基準の巻取り位置までワイヤロープ21rを巻き上げることにより、弾圧機構27により錘21wがその高さ位置で保持される。
【0018】
(排出制御)
上記構成の穀物乾燥装置による穀物排出制御は、図6のフローチャートに示すように、乾燥手段の自動停止または手動停止によって穀物乾燥が終了した時点で、排出スイッチ6dの操作によって排出行程に移行(S1〜S3)すると、制御処理部により、まず、張込計20により穀物の張込高さ位置を計測(S4,S5)し、算出された穀物量と対応する排出終了予測時間をモニターに表示(S6,S7)してから排出動作に移行する。
この排出作業は、ロータリバルブ16で流下通路14内の穀物を所定量ずつ繰り出し、下部螺旋17で昇降機2に搬送し、昇降機2から穀物排出口18を経て機体外に順次所定量ずつ排出する。また、排出作業の経過に従ってその経過時間を減算処理した予測時間を表示する。
【0019】
上記制御処理部により、排出行程では、穀物の排出動作に先だって張込計20による張込量計測手段が貯留室10内の穀物の収容量を計測して排出予測時間が算出され、この排出予測時間が表示手段6tによって表示され、また、排出動作中は、その排出予測時間から排出経過時間分が減算されて表示される。したがって、上記穀物乾燥装置は、その排出完了のタイミングと合わせるようにして、連携するべき次行程の準備をすることが可能となり、作業効率および設備稼動効率の向上が可能となる。
【0020】
上記の場合において、排出途中で停止スイッチにより停止入力がされた場合は、上記排出時間表示処理(S7)に続けて、図7のフローチャートに示すように、減算時間保持処理によって初期演算時間から排出停止までのデータを保持(S11,S12)し、排出再開時には前記保持データから減算(S13,S14)し、これを排出自動停止まで繰り返した上で(S15)前記保持データをリセットする(S16)。
【0021】
このように、排出途中で停止スイッチ6eにより排出が停止されると、先例に係る技術では、排出先が詰まって穀物の戻りがあると配穀の偏りが発生するため、正確な貯留量を検出することができず、また、途中停止によって排出残時間をリセットすると、その後の排出時間の予想が立たないので、作業に支障を生じていたが、上記制御により、排出途中に停止があった場合にもデータを保持し、排出再開後には保持データから減算した値を更新表示するので、排出時間がいつでも認識でき、作業性を改善することができる。
【0022】
次に、実績基準による排出時間算出の制御処理について説明する。
この制御処理は、図8のフローチャートに示すように、乾燥停止から排出スイッチ6dがオンとなった時に張込量センサ20にて計測した乾燥仕上がり毎の穀物量検出値(S21)と排出終了時の排出実時間データ(S24,S25)とを蓄積し、この排出作業時間と基準値とを比較(S22,S23)し、精度の高い排出残時間表示を可能とするものである。
【0023】
上記処理構成に対して、従来の排出制御においては次の点で問題があった。すなわち、排出先が詰まって穀物の戻りがあると配穀の偏りが発生するため、そのような排出中の配穀状態では正確な貯留量を検出することができない。穀物乾燥装置の使用状況により排出先が詰まって穀物の戻りが生じる場合があり、戻り量もさまざまであるので、精度の高い残時間表示が困難であった。システム設定等により排出先の処理量を決定して残時間演算値に補正を加える手法もあるが、操作が複雑なので一般適用が困難であった。また、排出補正設定値は必ずしも一律になる訳ではないので、残時間表示の精度が不十分であった。
【0024】
前述の制御処理により、図9の作業特性図例に示すように、排出毎に得られたデータから求めた近似式(破線)を使用し、乾燥装置の排出性能ラインである基準ライン(実線)との差によって補正するものである。このように、穀物乾燥装置を使用する側の作業スタイルのデータを乾燥装置毎に保持し、残時間表示の精度を向上させるようにしたので、排出時、排出先の処理量や排出装置の能力が途中で変わっても逐次データにより補正が加えられるので、排出残時間表示の精度を向上することができる。また、上記制御処理は、複雑な操作を必要としないので、安価で非常に楽にできる。
【0025】
(張込計動作制御)
次に、張込計の測定制御について説明する。
図10のフローチャートに示すように、初期設定モード等を設け(S31)、モード選択された時に所定時間の逆転動作(巻上げ駆動)を行い(S32〜S35)、逆転時の最終パルスから上限検出スイッチがオンとなるまでの時間から補正距離を求め(S36)、通常の測定の際は、前記補正距離を加算(S37)した値にて張込量を演算する。
【0026】
上記処理構成に対して、ワイヤロープ繰出し距離を精度良く測定するためにマグネットを複数個設けた先例(特開2001−82877号公報)があるがコスト高であり、そのような構成であっても、巻取ドラムの組付け方によっては、検出誤差が発生するので精度が不十分であった。例えば、図11の動作説明図に示すように、同図(a)のように、センサ、マグネットの位置を規定して生産できれば良いが、ワイヤロープの結び方が長かったり短かったりすると、同図(b)のようにセンサ、マグネット位置がずれた状態になり、周長誤差によって測定誤差が大きくなるという問題があった。
【0027】
前述の処理構成により、巻取ドラムを正逆転させ、逆転時の最終パルスから上限検出スイッチオンまでの時間が得られるので、組付け誤差補正が可能となる。このように、前記誤差を通常測定時に補正を加える構成にしたので、精度の高い張込量検出が可能となる。
【0028】
次に、張込計の補正制御について説明する。
図12のフローチャートに示すように、測定中にパルス検出幅の時間を検出(S41〜S43)し、下限検出前の最終パルスから下限検出スイッチに至る経過時間から補正距離を演算(S44)し、総下降距離に前記補正値を加算(S45)した値を表示、張込量設定する。
【0029】
上記処理に対して、ワイヤロープ繰出し距離を精度良く測定するためにマグネットを複数個設けた先例(特開2001−82877号公報)はコスト高となり、そのような構成でも、マグネット間で下限検出停止した場合には測定誤差が大きくなる。すなわち、センサ、マグネットの位置がきちんと合って停止すれば誤差がないが、実際はどこで止まるか分からないことから位置ずれして止まると、センサを通り過ぎた分の周長誤差が発生するので測定誤差が大きくなる。
前述の処理構成により、パルス間の間で停止した場合においても補正機能により検出値が補正されるので、安価に測定精度を向上させることが可能になる。
【0030】
(点検制御)
次に、張込計20の点検調整について説明する。
図13のフローチャートに示すように、センサ点検のために設けたセンサ点検モード(S51)にて所定のスイッチオン(S52)により運転開始(S53)し、運転時のパルス数を表示(S54)するように構成する。また、運転中、指定されたスイッチ入力(S55)があれば、現在パルス数から石数表示に切換える(S56)。上記制御構成により、点検時の運転状況、石数演算値をコントローラの画面を見ながらできるので、わざわざ機体上部のセンサ取付け面に上がらなくても点検が可能となる。
【0031】
(張込量自動セット)
次に、張込量自動セット制御について説明する。
図14のフローチャートに示すように、測定開始から終了までのパルス数をカウント(S61,S62)し、所定級幅のブロックに格納(S63a、S64a〜)するように制御処理を構成することにより、そのブロックに対応させた値を張込自動設定することができる。
【0032】
(スロワ適用時)
次に、スロワ適用時の制御について説明する。
図15のフローチャートに示すように、乾燥自動停止や手動停止後の排出スイッチオンによってレベル検知(S1〜S5)を行って排出量設定値検出(S64)を行い、高所排出のためのスロワ付きの場合(S65)に限り、排出量設定6t/Hr以上の排出量設定補正による排出予定時間補正を行わないように制御処理(S65a、S66a〜)を構成する。なお、上記フローチャートにおいては、張込量検出値は重量換算値によるものである。また、穀物種類設定を演算式に付加しても良い。
【0033】
上記構成に対して、先例に係る技術では、排出中、定期的にレベル検知した場合、排出先が詰まる等すると戻りが発生し、拡散状態が前または後高となるので、正確な検出ができないこと、排出量設定値により排出量が変化するので、一定排出量から排出時間を演算すると精度が低下すること等の問題があり、特に、スロワ付きの場合、スロワの能力(例えば、6t/Hr)以上の排出量設定値で排出時間補正を行うと、演算時間以上の排出時間を要するので精度の低下を招く。
【0034】
上記構成とすることにより、比較的正確な排出終了予定時間を表示することができ、作業者の目安とすることができる。スロワ付の場合、排出量設定値および能力限度(6t/Hr)以上の設定がされた時には、一律に演算補正しない構成としたので精度を向上することができる。
【0035】
次に、外付け排出装置対応の制御について説明する。
図16のフローチャートに示すように、システム設定にて外付け排出装置の排出能力設定モードを設け、排出スイッチオン時の張込量検出値(S1〜S5)とシステム設定値、排出量設定値(S67a、S67b)から排出時間を算出(S68a、S69a〜)して表示する制御処理を構成する。なお、上記フローチャートにおいては、張込量検出値は重量換算値によるものである。また、穀物種類設定を演算式に付加しても良い。排出装置処理量は、5t/Hrとた例である。
【0036】
上記処理構成に対し、先例に係る技術では、前記同様に、排出中、定期的にレベル検知した場合、排出先が詰まる等すると戻りが発生し、拡散状態が前または後高となるので、正確な検出ができないにみならず、スロワ等の外付け排出装置の能力により排出時間が変わるので、正確な排出時間の演算ができないという問題があった。
【0037】
上記のように構成することにより、先例の如くの不具合を改善できるので、正確な排出終了時間表示が可能となる。また、どんな排出装置が接続されてもコントローラの設定画面で設定できるので、安価に精度の高い表示が可能となる。
【0038】
(排出終了補正)
次に、排出終了予定時刻の補正処理について説明する。
図17のフローチャートに示すように、張込計の制御において、排出再開時にレベル検知を行い(S1〜S5)、排出量設定値(S70)によって排出終了予定時刻(時間)表示を補正(S71a、S72a〜)する制御処理を構成する。上記フローチャートにおける張込量検出値は重量換算値によるものである。
上記制御処理は、排出量設定値により排出予定時間を可変できるので、精度良く表示することができる。
【0039】
また、図18のフローチャートは、排出量設定値および穀物種類設定値により補正(S73a〜)する例である。この例では、穀物種類設定を籾とし、予定時間演算式の0.9は、その穀物種類補正定数を示す。
このようにして排出量設定値および穀物種類設定値により排出予定時間を可変できるので、精度良く表示することができる。
【0040】
(張込計異常判定)
次に、張込計(張込穀物量検出装置)20の異常判定について説明する。
ワイヤロープ21rの巻下げによって穀物張込面の高さ位置を計測する測定動作に際し、錘21wが基準ポジションより下位位置で上限検出スイッチ24sがオン(未到達)であれば、図19の異常判定のフローチャートに示すように、巻下げの前に一旦巻取ドラム22を巻上げ駆動(S101)し、所定時間(または所定パルス数)内にオフ(到達)となった場合(S102,S103)に測定モードに移行(S104,S105)するようにし、前記条件を満たさない場合には異常発生として報知(S103a)する制御処理を構成する。
【0041】
これに対し、従来のものは、検出開始の運転条件が不明瞭で、測定前に基準ポジションセンサ24sがオフであれば、錘21wの荷重によってワイヤロープ21rが繰出されている可能性があることから、その状態で測定を行うと測定精度の点で問題であったが、上記制御により、常に基準面から測定面までの正確な計測が可能となる。
【0042】
また、他の判定方法としては、フローチャートを図20に示すように、ワイヤロープ21rの巻下げ測定(S111,S112)による下降時パルス数から巻上げ時のパルス数を減算(S113〜S115)し、その結果のパルスカウント数が零プラスマイナスα内に上限検出スイッチがオフ(到達)にならない場合には、異常として報知(S116,S117)する。
【0043】
上記制御を設けない場合は、巻上げの際に所定条件になっても上限検出スイッチがオフにならない場合は錘21wの落下が考えられ、測定終了検知ができないのは勿論であるが、落下した錘21wを機体内に放置したまま運転開始すると機体に損傷を生じることとなるので、上記制御構成により、そのような事態を未然に防止することができる。
【0044】
(乾燥機の運転構成例)
図21のフローチャートに示すように、吊り錘によるサウンジング式張込量検出装置20を備えてその検出値により張込、排出、自動停止或いは、乾燥温度条件の変更を行う乾燥機について、張込量検出のための巻下げ時の駆動時間或いは駆動回転パルス数をカウント(S121)し、そのカウント値+αを次回巻上げ時の異常判定値として設定し、巻上げ時にこれを越えても検出終了しない場合に異常報知を行うとともに、張込量手動設定に切換え(S122〜S124)る制御処理を構成する。この制御処理により、張込量検出装置を必要以上に駆動して故障する事態を事前に防止することができる。
【0045】
上記の場合において、図22のフローチャートに示すように、乾燥機の処理容量(例えば、30,40,50,60石)により、駆動制限時間或いは駆動回転パルス数を獲得設定(システム設定あるいは外部スイッチ設定、通信等による)するように構成(S121a)し、検出装置の巻下げ動作時に獲得設定値を超えても検出終了しない場合(S121b、S121c)は装置の異常とし、異常報知を行うとともに張込量手動設定に切換える(S121d)制御処理を構成することにより、乾燥機の仕様による最大張込量(乾燥タンクの高さ)の相違から、張込量検出装置を必要以上に駆動して故障したり、誤動作により最大張込量を越えると乾燥条件に悪影響を及ぼすことがあるので、そのような事態を上記制御処理によって事前に防止し、検出装置の安全性確保および故障回避が可能となる。
【0046】
次に、乾燥機の運転における張込量検出装置の実施シーケンスについて説明する。
張込スイッチ6bを押した後、停止スイッチ6eを押すと測定を開始して液晶画面に「測定中」の旨を表示する。また、張込スイッチ6bを押した後、停止スイッチ6eを押さないと通風、乾燥、排出等の他の作業スイッチ6c、6dは受け付けない。
上記測定中において再度張込スイッチ6bが押された場合は、張込量検出装置20の作業を中止し、緊急巻上げ作業を行うとともにその旨を表示する。張込停止後は、測定していない状態で乾燥スイッチ6cを入れると測定中は循環駆動しない。
【0047】
詳細には、張込後に停止スイッチ6eを押すことで測定開始とし、幾度か測定していれば、そのデータは張込スイッチ6bを押すことでクリアしている(更新する)。
張込停止後の追加張込などで再度張込スイッチ6bが押されると、測定作動中の張込量検出装置20のワイヤロープ21rに穀物が当たり、摩耗損傷するので測定を中止し、緊急巻上げして待避する。
また、張込停止後に間断なく乾燥スイッチ6cが押されると、測定中であっても、作業者の違和感もなく動作に無理がないことから、乾燥を受け付けてファン7、エレベータ2、バーナ着火(場合により着火を遅らせることもありうる)を行う一方で、測定終了まで循環のみを停止し、測定終了を待って循環を開始する(この場合は水分測定も遅らせる)。
【0048】
これに対し、旧来の固定感圧スイッチによる張込量センサでは測定中止は不要であったが、本件の張込量検出装置20は、測定に一定時間を要する上に、測定作動中に穀物が配穀されると、錘21wを吊しているワイヤロープ21rが穀物に触れて摩耗損傷するので、上記取扱いにより、配穀作業を回避して測定し、または配穀しないようにすることにより、摩耗損傷を防止することができる。
【0049】
(異常対応制御例)
次に、別の異常対応制御例を説明すると、図23のフローチャートに示すように、測定行程への移行後に所定時間経過しても、回転パルスまたは上限検出スイッチオンの信号(S131、S132)が入力されない場合にモータ逆転信号を出力する(S133,S134)。回転パルス信号または上限検出スイッチオン(S135,S136)の場合、次回測定からのモータ信号を逆転から開始する(S137,S138)。
【0050】
上記制御によらない場合には、例えば、モータ回転信号の端子が誤挿入されていると測定できないので張込量検出ができなくなること、点検のために何度も測定を繰り返すとモータ22mに拘束電流が流れて劣化の原因となること、ワイヤロープ21rの負荷も発生するのでワイヤロープの折損のおそれが生じること等の不具合があるので、上記制御処理を構成することにより、そのような不具合を解消することができる。
【0051】
次に、異常検出報知について説明すると、重錘式張込計を使用し、乾燥機のクラス(石数)の設定をコントローラ内のディップスイッチまたは不揮発メモリに設定保持する構成のものは、試運転時に張込量センサ20の設定確認モードなどで空運転時の底面までの距離を測定し、上記で決定したクラスよりの底面までの距離データと比較する手段と、上記比較結果により規定範囲以外を異常と判定して報知する報知手段とを設ける。
【0052】
上記構成により、設置時のクラス(石数)の設定により空運転時の底面までの距離は既知であるのでこのデータと測定値を比較し、許容レベルを外れる場合は異常と判定して異常内容を表示し、場合により停止する。
【0053】
重錘式張込計20は、ワイヤロープ20rが巻きついたり、切れたりすることが想定されるが、この場合、張込計20が機体上部のルーフ上にあるため作業者が気づきにくく、場合によっては張込量の設定が大きく異なり、胴割れなどを起こすおそれがあるが、そのような事態を防止することができる他、設定自体の入力ミスも含め検出することができる。
【0054】
(張込残量表示)
張込残量表示については、図24のフローチャートに示すように、重錘式張込計20による張込残量表示制御において、同張込計にて検出した型式検出値(S141)による石数と現在張込量検出値(S142〜S144)の差異から張込残量を演算し、穀物品種設定値により張込残量補正(S145,S146)した値を表示する制御処理を構成する。
【0055】
これに対し、先行技術の特開2001−82877号公報のほか、特に、特開2006−17329号公報では、張込残量表示の際には基準となる型式設定構成が複雑であること、現在張込量表示だけでは作業者があとどのくらい収穫することができるのか不明瞭であること、収穫し過ぎて穀物を放置しておくと品質劣化を招くこと、穀物品種により、比重、収穫量が異なるので単純な演算では表示精度が劣ること等の問題があった。
これらの点に関し、上記制御処理により、図25(a〜d)の表示経過例に示すように、穀物品種設定値を自動で検出することによって残量表示ができるので、作業者に負担をかけることなく、安価で精度の高い表示が可能となる。
【0056】
具体的な残量表示の態様については、図26の表示例に示すように、切替スイッチSにより、バーグラフ表示での重量表示又はレベル窓表示(a、b)、反数表示(c)、フレコン表示等(d、e)を切替え可能に構成することにより、表示内容を作業者の認識しやすい表示に選択して容易に変更表示させることができる。
【0057】
その他の表示方法として、重錘式張込計による張込残量表示制御において、コンバイングレンタンク容量、トラック積載容量、コンバイン袋容量、グレンバック容量を設定できる張込設定モードを設け、設定値と現在張込量、型式設定値から張込残量を演算、前記設定された形態で残量表示する制御処理を設ける。
【0058】
上記構成により、設定値に対応した張込残量表示をさせることができるので、作業者にわかり易い表示をさせることができる。穀物品種により、比重、収穫量が異なるので、穀物品種設定値を検出して補正表示させると、さらに表示精度を向上することができる。コンバイングレンタンク容量設定では、製造元によらない共通的な取扱いが可能となる。
【0059】
また、別の表示制御について説明すると、図27のフローチャートに示すように、液晶モニター6t等の表示装置を設けた乾燥機コントローラの表示装置において、張込センサ20による型式検出データにより(S151)、張込量表示バーグラフしきいブロックを自動変更(S152a〜S153c)する制御処理を構成することにより、図28の表示例(a,b)のように、型式別表示が可能となる。
【0060】
上記表示処理に対して従来の表示方法では、固定ブロック幅のバーグラフ表示であり、バーグラフしきい幅は最大石数のブロックで仕切られ、張込量検出値により所定のブロックが黒塗り表示されていた。ブロック幅は最大型式に設定されているため、石数の小さい乾燥機では上部が空きブロックとなるため、満量となっても空きブロック表示によりまだ入るものと認識されて張込みすぎ、あるいは、余分に収穫し過ぎて次回乾燥にしなければならないなど、作業性、品質劣化の心配があったが、上記構成のように、検出した型式によりバーグラフしきい幅を変更することにより、小型乾燥機においても満量になれば全て黒塗り等の識別ができる。
【0061】
(別の表示処理例)
また、さらに別の表示処理例として、図29のフローチャートに示すように、乾燥開始時に張込量設定(S161)に対応した水分初期測定を複数回行い(S162,S163)、図30の表示例に示すように、張込量表示バーグラフ内またはその隣に前記水分初期測定結果を表示する(S164)。
【0062】
上記表示処理に対して従来の水分表示では、水分測定データから偏差を求めてバーグラフ表示させたものは、穀物層に分布した実測水分のばらつきを明確に表せなかったので、機内水分ばらつきを作業者に認識させることが困難であったが、上記表示処理により、張込量バーグラフを穀物タンクに見立てて水分値を表示させるので、タンクのどの層にどのくらいの水分のものが張込まれているのかを認識し易くなる。作業者はこの結果を認識することにより、二段乾燥へ移行させたらよいか、前通風乾燥させた方がよいか、または、そのまま乾燥しても良いかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】穀物乾燥装置の内部構成を示す内部透視正面図である。
【図2】図1の穀物乾燥装置の内部構成を示す機体縦断面図である。
【図3】操作盤の見取図である。
【図4】張込計の要部斜視図である。
【図5】図4の張込計の動作説明図である。
【図6】穀物排出制御のフローチャートである。
【図7】停止入力がされた場合のフローチャートである。
【図8】別の制御処理のフローチャートである。
【図9】作業特性図例である。
【図10】測定制御のフローチャートである。
【図11】センサの動作説明図である。
【図12】補正制御のフローチャートである。
【図13】点検制御のフローチャートである。
【図14】張込量自動セットのフローチャートである。
【図15】スロワ適用時のフローチャートである。
【図16】外付け排出装置対応のフローチャートである。
【図17】排出終了補正のフローチャートである。
【図18】穀種補正のフローチャートである。
【図19】異常判定のフローチャートである。
【図20】他の判定方法によるフローチャートである。
【図21】乾燥機の運転構成例のフローチャートである。
【図22】別のフローチャートである。
【図23】別の異常対応制御例のフローチャートである。
【図24】張込残量表示のフローチャートである。
【図25】表示内容の経過である。
【図26】残量表示の表示例(a〜e)である。
【図27】別の表示処理のフローチャートである。
【図28】型式別表示の表示例(a,b)である。
【図29】さらに別の表示処理例のフローチャートである。
【図30】表示画面例である。
【符号の説明】
【0064】
6 操作盤
6a 張込量計測スイッチ
6b 張込スイッチ
10 貯留室
20 張込計(張込量検出装置)
20r ワイヤロープ
21w 錘
22 巻取ドラム
22s 回転カウント手段
23 テンションレバー
23s リミットスイッチ(テンションセンサ)
24 ポジションレバー
24s 上限検出スイッチ(基準ポジションセンサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備え、
この巻取ドラム(22)の回転回数をカウントする回転カウント手段(22s)と、錘(21w)の所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動するのに要した巻取ドラム(22)の回転回数のカウント信号から穀物の張込高さ位置を検出するとともに張込穀物量を算出する制御処理部と、前記ワイヤロープ(21r)を巻き上げたときに錘(21w)が前記所定の基準位置に到達したことを検出する基準ポジションセンサ(24s)とを備え、
張込穀物量の検出動作開始時に巻取ドラム(22)が巻き上げ動作を行い、巻き上げ開始からから所定のカウント範囲内で前記基準ポジションセンサ(24s)の検出信号が無いと異常判定を行うことを特徴とする穀物貯留室の張込穀物量検出装置。
【請求項2】
穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備え、
この巻取ドラム(22)の回転回数をカウントする回転カウント手段(22s)と、錘(21w)の所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動するのに要した巻取ドラム(22)の回転回数のカウント信号から穀物の張込高さ位置を検出するとともに張込穀物量を算出する制御処理部と、前記ワイヤロープ(21r)を巻き上げたときに錘(21w)が前記所定の基準位置に到達したことを検出する基準ポジションセンサ(24s)とを備え、
錘(21w)が前記所定の基準位置から前記穀物の張込面に到達するまでの巻き下げ回数と、張込穀物量検出後に前記所定の基準位置に到達するまでの巻き上げ回数の回転カウントの差が所定範囲外の場合に異常判定を行うことを特徴とする穀物貯留室の張込穀物量検出装置。
【請求項3】
穀物を張り込む穀物貯留室(10)内の上部に、錘(21w)を吊り下げ支持したワイヤロープ(21r)と、このワイヤロープ(21r)を巻き上げ及び巻き下げするために回転する巻取ドラム(22)とを備えるとともに、前記穀物貯留室(10)内に穀物を張り込むための張込手段と、該張込手段を起動する張込スイッチ(6b)を設け、
前記錘(21w)が所定の基準位置と穀物の張込面との間を錘(21w)が移動中に前記張込スイッチ(6b)を操作すると異常判定をするとともに、巻取ドラム(22)を即時巻上げ駆動して穀物張込量の検出制御を終了することを特徴とする穀物貯留室の張込穀物量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−107003(P2008−107003A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290128(P2006−290128)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】