穀粒乾燥機
【課題】
本発明は、穀物乾燥機において個々の乾燥作業に応じた排風循環制御を行なうことを課題とする。
【解決手段】
循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部(11)と、この乾燥部(11)から排気ファン(7)で吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部(11)に還流する還流部(20)と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、制御部は、排気ファン(7)の排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部(11)に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機。
本発明は、穀物乾燥機において個々の乾燥作業に応じた排風循環制御を行なうことを課題とする。
【解決手段】
循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部(11)と、この乾燥部(11)から排気ファン(7)で吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部(11)に還流する還流部(20)と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、制御部は、排気ファン(7)の排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部(11)に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排風の一部をバーナ部に還元する技術に記載されている。そして、実験値に基づいて設定した基準排風絶対湿度と、乾燥作用中の排風温度及び排風湿度の変化から演算する絶対湿度とを比較し、基準排風絶対湿度になるように開閉弁を調節する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−200179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、予め理論値を設定して排風の戻し量を制御する技術であるが、乾燥作業における張り込まれる穀粒の状態はまちまちで個々の乾燥作業に応じた排風戻し乾燥制御を行なえない。
【0005】
本発明は、個々の乾燥作業に応じた排風循環制御を行なうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明では、循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部(11)と、この乾燥部(11)から排気ファン(7)で吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部(11)に還流する還流部(20)と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、制御部は、排気ファン(7)の排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部(11)に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、還流する排風の風量を穀物の水分値に応じて制御することを特徴とする請求項1記載の排風還流式穀物乾燥機とする。
【発明の効果】
【0008】
排気ファンから排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。また、穀物水分値に適合した排風絶対湿度条件を満たすことができるので、穀物品質を確保しつつ、高速の乾燥処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の穀物乾燥機の内部構成の正面図である。
【図2】図1の還流型穀物乾燥機の正面図である。
【図3】図1の還流型穀物乾燥機の背面図である。
【図4】機体の部分破断による拡大側面図である。
【図5】穀物の乾燥特性図である。
【図6】乾燥部の風の流れを示す乾燥部の縦断面図である。
【図7】乾燥機の起動制御のタイミングチャートである。
【図8】機体の要部背面図である。
【図9】集塵室の内部透視側面図である。
【図10】排風調節弁の内部透視側面図である。
【図11】排風調節弁の特性登録例(a)および開閉角度位置(b)である。
【図12】排風調節弁の制御フローチャートである。
【図13】排風絶対湿度の設定切換例である。
【図14】還流ダクトの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、穀物乾燥機の内部構成を示す内部透視正面図である。
【0011】
穀物乾燥機は、塔型構成の箱体1の上段部に穀物を貯留する貯留室10を、下段部にその穀物を受けて熱風乾燥する乾燥部11を構成する。貯留室10の上部には、穀物を上送する昇降機2から穀物を受ける搬入装置3、拡散羽根12を備え、同貯留室10の下部は乾燥部11の流下通路14に連通する。乾燥部11は流下通路14のほかに、熱風室13、排風室15、搬出装置17等を備える。
【0012】
箱体1の前側は、正面図を図2に示すように、乾燥部11から穀物を上送するバケットコンベヤ等による昇降機2と、熱風を発生させる加熱手段であるバーナー4を内設した加熱室5と、乾燥作業を操作する各種スイッチを備える操作盤6とを備える。昇降機2は、箱体1の天井位置まで穀物を上送し搬入装置3が箱体1内まで搬送する。
【0013】
箱体1の後ろ側は、背面図を図3に示すように、排気口23を形成し、箱体1内の熱風を吸引排出する排気手段である排気ファン7と排風調節弁22を設け、排気ファン7から乾燥部11に連通する還流手段としての還流通路20を分岐する。箱体1の側面には、穀物を投入する投入口19を開閉する開閉扉19aを備える。
(詳細構成)
機体各部について詳細に説明すれば、昇降機2には穀物の水分を検出する水分計9と箱体1内の穀物を機外に排出する穀物排出口18とをそれぞれ設け、搬入装置3には搬送用のラセン3aを内設してその搬送行程中に穀物に混じる藁屑等の夾雑物を集塵する集塵装置50を設ける。
【0014】
乾燥部11にはバーナー4を内設した加熱室5を設け、加熱室5の前側には多数のスリットを形成した外気導入口31を設ける。加熱室5は外気導入口31から外気を受けるとともに、還流通路20と連通して還流された排気を受け、連通する熱風室13にバーナー4の燃焼面4aを対向して熱風を供給する。熱風室13は貯留室10から穀物が流下する流下通路14を挟んで排風室15から排気ファン7の吸引作用を受けることにより、熱風が同流下通路14を透過可能に構成する。
【0015】
流下通路14の下端部には穀物を流下させつつ所定量ずつ繰り出す定量繰出手段としてのロータリバルブ16を設け、このロータリバルブ16の下方で移送ラセンを内設した搬出装置17により、繰り出された穀物を受けて昇降機2まで搬出する。
【0016】
排気ファン7による吸引排気を開放する排気口23には、開閉調節用の排風調節弁22を設け、この排風調節弁22の直前位置で還流通路20を分岐することにより、排気を還流通路20側に送出するべく排風調節弁22を開度制御可能に構成することで、排気ファン7から排出された排気から任意の割合で加熱室5に還流調節できるようにしている。また、排風調節弁22は駆動モータ33で傾動可能な円盤状に形成されており、下部が後側に向かって上部が前側に向かって回動することで、受けた排気を下方の還流通路20に向かって案内する案内板としても機能する。
(還流通路)
還流通路20は、機体の部分破断による拡大側面図を図4に示すように、排気ファン7の排出側に取り付けられており、その始端側には排風調節弁22の直前位置の底部に凹状の第一塵埃貯留部20aを形成し、さらに、排気ファン7の下方から箱体1内の熱風室13内を貫通してその終端部の上方の加熱室5に連通して構成する。還流通路20の終端部の底部にも凹状の第二塵埃貯留部20bを形成する。
【0017】
第一塵埃貯留部20aには貯留された塵埃を作業者が取り出すための清掃口20cを設ける。また、第二塵埃貯留部20bは前側に引き出し式に構成する。すなわち、第一塵埃貯留部20aと第二塵埃貯留部20bはいずれも箱体1外に備えることで貯留された塵埃を作業者が除去しやすく構成する。また、熱風室13の内部を貫通して還流通路20を配置することで排気の熱を保温できる構成としている。また、還流通路20の底面部には、塵埃排出用のスライドシャッター付きの清掃口(不図示)を設ける。
【0018】
操作盤6については、図示はしないが、張込量の設定スイッチ、仕上がり水分の設定スイッチ、穀物種類の設定スイッチ、張込開始スイッチ、通風開始スイッチ、乾燥開始スイッチ、排出開始スイッチと、停止スイッチ、各種数値の表示板等を備えている。また、操作盤6内には乾燥作業の制御をする制御部を備えている。
【0019】
そのほかに、図示はしないが、還流通路20には排気ファン7で排出された排気の温度を検出する排気温度センサと、排気の相対湿度を検出する排気湿度センサとを設け、また、外気導入口31の近傍に外気温センサを配置し、排気ファン7の近傍に排気湿度センサを配置し、その他、穀温センサの信号を合わせてそれらの信号に応じて運転制御を行う。
(乾燥処理)
次に、乾燥作業について説明する。
【0020】
作業者は張込開始スイッチを操作して開閉扉19aが開いた投入口19に穀物を順次投入する。投入された穀物は搬出装置17によって昇降機2まで搬送され、昇降機2から搬入装置3を経て貯留室10に供給されていく。穀物の投入終了後、乾燥開始スイッチを操作すると燃焼バーナ4が作動し、燃焼面4aに発生する炎によって熱風が熱風室13に供給される。一方、ロータリバルブ16も駆動を開始し、流下通路14を流下する穀物を順次排出装置17に繰り出していく。熱風室13に供給された熱風は熱風室13を形成する熱風室体13aに多数形成するスリット(図示せず)を通過して流下通路14に流入する。そして、流下する穀物中の水分を奪って排風室15に流入する。排風室15に流入した熱風は排気ファン7で吸引排出される。
【0021】
排出された排風は排風調節弁22で遮られ下方の還流通路20に流入し、乾燥機前側の加熱室5に向かって還流され、その途中で排風中に含まれる塵埃は還流始端側の第一塵埃貯留部20a及び還流終端側の第二塵埃貯留部20bに落下して貯留される。
【0022】
次に排風調節弁22の開度の制御方法について説明する。
外気温度センサで検出された外気温が20℃で外気湿度センサで検出された外気湿度が70%で制御部で算出された絶対湿度が13g/m3(立方メートルを「m3」と表記)とする。そして、制御目標とする排風を例えば排風温度が30℃で排風湿度が70%、そして絶対湿度を25g/m3とした場合とする。そして、本実施例の排気ファン7の風量を1900m3/hで、穀物乾燥機に供給された穀物(籾)量を800kg、乾減率(一時間あたりに乾燥される水分の割合)を1.2%/hとした場合、どの程度の割合の排風を熱風室13に還流するかを以下の式より求める。
【0023】
絶対湿度−絶対湿度=12(g/m3) …(イ)
外気が吸水できる最大吸水量は
12×1900/1000≒23(kg) …(ロ)
そして、一時間あたりに乾燥機から除去される水分量は
800(kg)×1.2(%/h)=9.6(kg/h)…(ハ)
(ロ)の式と(ハ)の式より
23/(9.6+23)≒0.71(71%) …(ニ)
すなわち、排気ファン7から排出される排風量の71%を熱風室13に還流すべく排風調節弁22を調節する。
【0024】
なお、排風調節弁22が排風量の71%より多くの量を熱風室13に還流するよう調節された場合には、多くなればなるほど還流される水分量が多くなるため、穀物から新たに水分を除去し難くなる。また、排風調節弁22が排風量の71%より少ない量を熱風室13に還流した場合には熱風室13に還流される熱量が少なくなるため、穀物の温度の上昇がし難くなり乾燥速度が遅くなる。
【0025】
本実施の形態の式に基づいて排風調節弁22の開度を調節して排風を熱風室13に還流する割合を調節することで、排気ファン7から排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。
【0026】
本実施の形態の乾燥制御についてさらに詳述すると、外気温度センサと外気湿度センサで外気の温度と湿度とを検出し、制御部で外気の絶対湿度を算出し、外気の絶対湿度と穀物水分や外気絶対湿度の条件から予め設定する排風の絶対湿度とを比較する温度及び相対湿度時の排風の絶対湿度とを比較して、その差異(増加水量)を外気が吸収できる最大の吸水量として算出する。そして、一方では乾燥作業により乾燥機から蒸発する蒸発水量(本実施の形態では前述の一時間あたりに乾燥機から除去される水分量)を求め、増加水量が乾燥作業による蒸発水量と合算された値に対する割合が、排風を還流できる割合と考えるものである。すなわち、前記(二)の式は
増加水量/(増加水量+蒸発水量)
を示している。
【0027】
従来の熱風乾燥においては、穀物の表面の水分を除去する毎に穀物内部の水分が熱伝導を利用した水分移動で穀物の表面に順次出てくる性質を利用して乾燥するため、高速乾燥を行なうために急激に高温で乾燥を行なうと穀物表面と内部との水分差が大きくなり、胴割れを起こし易いという欠点があるのに対し、本実施の形態の排風乾燥においては、排風中に含まれる熱と水分を同時に熱風路に還流することで、穀物表面から除去されようとする水分を排風中に含まれる水分で抑止して穀物内部の水分勾配を一定にすることで穀物を割れ難くすると共に、排風中の熱を余分に与えることで穀温を短時間で上昇させることで、高速な乾燥を可能にするものである。
(還流通路詳細)
次に、還流通路について詳細に説明する。
【0028】
還流通路20の途中部に、すなわち、第一塵埃貯留部20aと後述の開口部20w…との間に、全断面回動板を軸支して構成される開閉弁20eを設けて構成する。穀物乾燥機の運転条件により排気口23から100%を排出する場合は、上記開閉弁20eを全閉して運転する。この穀物乾燥機は、乾燥部11が機体前面側から外気を吸引していることから排気ファン7側に排気抵抗を受けると還流通路20から排気を吸引することとなるが、上記のように排気口23から100%を排出する場合において、排気ファン7の出口付近で風の抵抗を受けても、上記開閉弁20eにより還流通路20の側に排気が逃げるのを防止することができる。
【0029】
また、還流通路20には、乾燥部11と連通する開閉調節可能な複数の開口部20w…を還流通路20の長手方向に沿って配置する。各開口部20wの開閉手段としての開口調節部材は、スライドシャッター20sに手動制御用の操作ロッド20rを連結してこの操作ロッド20rを機体外部まで延ばして構成する。
【0030】
上記構成の還流通路20は、加熱室5側の通風抵抗が変化しない限り、排気還流量(率)によって還流通路20内の圧力勾配が定まり、また、排気ファン7側は大気圧より高い吐出圧を受け、排気還流量が大きい場合は加熱室5側の減圧の圧損の方が大きく、バーナー近傍まで加圧状態となるので、還流通路20の全長における中間範囲でプラスからゼロになり、還流通路20の出口である加熱室5の側で大気圧よりややマイナスになるようにスライドシャッター20sを開閉操作することにより、各開口部20wからの減圧を受けて加熱室5に近づくにつれて徐々に圧力低下するように調節する。このようにスライドシャッター20sを開閉操作することにより、加熱室5付近で還流供給された排気による塵埃の吹き出しを防止することができる。
(還流率制御)
次に、排風還流式穀物乾燥機の乾燥制御について説明する。
【0031】
排風還流式穀物乾燥機は、所定の水分値になるまで乾燥対象の穀物を循環させつつ乾燥部11で乾燥処理し、その処理段階に応じて還流部20からの還流量を制御し、すなわち、乾燥運転の開始当初の所定時間についてゼロ還流制御(非還流制御)、次いで、所定温度まで全還流制御した上で、水分値と対応する対応還流制御を行う。
【0032】
詳細には、ゼロ還流制御は、少なくとも通常の乾燥運転時の所定の還流率より小さく、好ましくは還流率0%で還流なしとする還流量制御である。この非還流制御により、乾燥運転の開始当初の所定時間について、乾燥部11の排出風が機外に排出され、それに伴って乾燥部11の穀物に混入または付着している塵埃を機外に排出することができる。その結果、塵埃の機外排出と対応して穀物品質が確保されるとともに、塵埃による機器障害を小さく抑えることができる。
【0033】
この場合において前記制御部は、循環動作する穀物の一巡に要する時間としてその穀物量に応じた一巡時間を算出し、この一巡時間をゼロ還流制御による運転時間として設定することにより、循環穀物が一巡する間にその全量について非還流制御がなされて塵埃が除去されるとともに、無駄なく本来の乾燥運転に移行することができる。
【0034】
全還流制御は、少なくとも前記所定の還流率より大きく、好ましくは、75%以上でさらには排出風の全量が乾燥部に還流される還流率100%に及ぶ範囲の還流量とする制御である。このように、乾燥初期の範囲において強制還流による上記全還流制御を導入することにより、一般に気密性が不十分な乾燥機において、高湿環境下で安定して迅速に穀温を上昇することができる。したがって、一般の乾燥制御の通例によれば、水分計と外気温の条件から還流率を算出すると乾燥初期は20%を切り、また、外気温が30℃では還流率が0%となる場合があり、高速乾燥が確保できないという問題があったが、その解消を図ることができる。
【0035】
また、穀温上昇優先による積算温度が大きくなって品質低下を起こす場合があることから、乾燥初期の範囲として、循環穀物が所定温度(およそ36℃)に達するまでの間に限定することにより、上記問題を回避しつつ、穀物品質を確保した上で、効率よく本来の乾燥運転に移行することができる。
(対応還流制御)
対応還流制御は、循環穀物の水分値に応じて設定した還流率による還流風量に調節する制御である。具体的には、予め得られている理想的な穀物乾燥運転に必要な穀物水分と排風絶対湿度との関係に沿って還流率を制御する。例えば、図5の乾燥特性図に示すように、穀物水分の低下に従って排風絶対湿度を低下するように還流率を調整する。
【0036】
この場合において、高速化のポイントは、蒸発量を押さえ込むために必要な湿度であり、その関係は穀物水分に密接な関係があり、上記循環穀物が所定温度に達した以降の乾燥処理について、上記対応還流制御により、穀物水分値に適合した排風絶対湿度条件を満たすことができるので、穀物品質を確保しつつ、高速の乾燥処理が可能となる。
【0037】
以上に説明した排風還流式穀物乾燥機の乾燥制御により、従来なされていた還流率一定として適宜の排風還流を行う乾燥運転に比較して、排風還流による効率のよい乾燥処理を確保した上で、穀物に付着混入している塵埃の還流による機器障害を回避するとともに、高速且つ高品質の穀物乾燥処理が可能となる。
(還流通路開度調節)
次に、還流通路20から乾燥部11に連通するの開口部20wの開度調節について説明する。
【0038】
還流通路20の開口部20wの開度調節については、乾燥機の後部側のスライドシャッター20sの開度を大きくし、後方ほど噴出しの風速を速め、後方ほど風量を大きくなるように調節する。
【0039】
具体的には、図6の乾燥部の風の流れを示す乾燥部11の縦断面図のように、排風循環風Rは、乾燥機の前から約1/3の位置で乾燥部11の熱風室13上部で衝突して跳ね返り、次いでその反動で乾燥部11の下部へ向かい、その結果として、乾燥機の下部のみに熱風Hがまわることとなり、温度分布の悪化を招いていたことが判明した。
【0040】
この問題を解決するために、上記のように還流通路20の開口部20wから熱風室13への流入が後部側ほど多くすることにより、乾燥部11の下部へ向かう熱風Hを持ち上げて温度分布の均一化を図ることができる。このように、開口部20wは、単純に排風を乾燥部11に戻して通風抵抗を下げたり、燃焼安定を向上させるだけでなく、乾燥部11での温度分布調整について大きな効果を奏する。
【0041】
また、図14の要部斜視図に示すように、還流通路20のダクト上面にシャッター付の上面開口20v…を形成する。この上面開口20v…の調節により、熱風の流線を上方に修正することができる。
(乾燥終了後の取扱い)
次に、乾燥終了後の排風調節弁22の取扱いについて説明する。
【0042】
外気湿度が高く、乾燥終了穀物の水分が戻る可能性がある場合は、排風調節弁22を閉じ、逆に、外気が高温低湿で穀温が高い場合は、排風調節弁22を開放して穀温を早く下げ、乾燥の進みを遅らせるようにする。
【0043】
乾燥終了後の外気条件によっては、乾燥が終了したときの水分よりも乾燥が進んだり、逆に水分が戻ったりすることがあったが、上記のように、排風調節弁22を閉じることにより、籾層への外気の進入を防止して乾燥終了後の穀物の水分変化を防止することができる。
(排風調節弁動作)
次に、排風調節弁22の基点位置検出制御について説明する。
【0044】
排風調節弁22の基点位置の検出の際に、所定時間を過ぎても完了しない場合は、異常信号を出すと同時に、排風調節弁22を手動設定モードに移行する。
基準位置が検出できないとその後の乾燥制御ができないので、このような場合の異常対応として、オペレータに手動設定を促し、排風調節弁22を固定設定とすることにより、乾燥作業を安全側で進めることができる。
【0045】
また、乾燥機の起動時の制御において、図7のタイミングチャートに示すように、排風調節弁22の基点位置検出の後に、他の動作制御に入るように構成する。
排風調節弁22のフォトカプラの制御ができない場合は、基点位置の検出に数秒から数十秒の時間を要するので、上記制御処理により、基点位置検出までは他の動作を受け入れないようにすることにより、その間にバーナーやファンが回転して不具合を招く事態を回避することができる。
(排気部)
次に、機体背面部の排気部の構成について説明する。
【0046】
機体の要部背面図を図8に示すように、排気ファン7の真下の排風を還流させるダクトによる還流通路20の横幅Aを排気ファン7の横幅Bより小さく構成する。このように構成することにより、後ろ昇降機にした場合でも、還流路20のダクトが邪魔にならない。
(集塵室)
加熱室5のバーナー4下の集塵室20bについては、図9の内部透視側面図に示すようにルーバー20zを設ける。このルーバー20zは、還流通路20の角部を風が流れるようになめらかに配置し、また、一度集塵室20bに落下した粉塵が吸引によって引き込まれないように、押さえ蓋のように、上方からの投影が全面に及ぶように構成し、段違いで上下の仕切をなすように設置する。上記ルーバー20zにより、吸引部分での乱流を整流化するとともに、集塵室20bへの無風化を可能とし、一度落下した粉塵の巻き上がりを防止することができる。
(排風調節弁制御)
前記排風調節弁22の開閉角度制御においては、図10に示すように、弁体が円盤状のプレート形状の場合に、弁の回転に対して円周上に複数の穴22h…を開けたプレート22pを装着し、フォトカプラ22sを利用してこの複数開いた穴22h…を検知して角度を検出する。このように、穴あきのプレート22pで構成することにより、位置検出センサとして利用すると同時に、前記基点位置検出制御により、停止センサ(安全センサ)としての役目も同時実施が可能である。
【0047】
還流率の制御については、図11(b)のフォトカプラ22sによる穴位置検出と図11(a)の還流率の登録設定値をもとに行う。すなわち、排風還流率Xと対応する排風調節弁22のポイントYの関係に基づき、図12のフローチャートに示すように、検出水分値になるまで対応して排風調節弁22の開閉角度制御を行う。
(還流率設定切換)
排風還流制御においては、基準の論理式に幅を持たせる制御を行い、すなわち、比較的胴割しにくい品種についてはさらに排風絶対湿度を下降させる方向とし、逆に、胴割れしやすい品種においては、さらに排風絶対湿度を上昇させる方向とする。
【0048】
乾燥の高速の可否については、胴割れ次第であることから、胴割しにくい品種を無理に排風還流させる必要はなく、こうした品種には適正な処置ができるようなスイッチを設ける。例えば、図13に示すように、2つのディップスイッチにより、胴割れの程度に応じた「標準」「低湿度」「高湿度1」「高湿度2」の4枝の選択により排風絶対湿度を調整可能とし、また、胴割れの「難」「易」の区別による切換スイッチでもよい。
(排風調節弁の取扱い)
排風調節弁22の取扱いにおいては、乾燥終了時には弁を閉じるように構成する。このような取扱いにより、外部に開いている排風路からの鼠の侵入を防止することができる。上記取扱いにより、特段の蓋部材が不要となり、その保管および装着の取扱いの煩わしさから解放されるとともに、複数の排風ダクトの集中配管によって蓋の適用が困難な複合乾燥機システムにおける鼠の侵入防止を確保することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 箱体
2 昇降機
4 燃焼バーナ
5 加熱室
7 排気ファン
9 水分計
10 貯留室
11 乾燥部
13 熱風室
15 排風室
20 還流通路(還流ダクト)
22 排風調節弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排風の一部をバーナ部に還元する技術に記載されている。そして、実験値に基づいて設定した基準排風絶対湿度と、乾燥作用中の排風温度及び排風湿度の変化から演算する絶対湿度とを比較し、基準排風絶対湿度になるように開閉弁を調節する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−200179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、予め理論値を設定して排風の戻し量を制御する技術であるが、乾燥作業における張り込まれる穀粒の状態はまちまちで個々の乾燥作業に応じた排風戻し乾燥制御を行なえない。
【0005】
本発明は、個々の乾燥作業に応じた排風循環制御を行なうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明では、循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部(11)と、この乾燥部(11)から排気ファン(7)で吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部(11)に還流する還流部(20)と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、制御部は、排気ファン(7)の排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部(11)に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、還流する排風の風量を穀物の水分値に応じて制御することを特徴とする請求項1記載の排風還流式穀物乾燥機とする。
【発明の効果】
【0008】
排気ファンから排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。また、穀物水分値に適合した排風絶対湿度条件を満たすことができるので、穀物品質を確保しつつ、高速の乾燥処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の穀物乾燥機の内部構成の正面図である。
【図2】図1の還流型穀物乾燥機の正面図である。
【図3】図1の還流型穀物乾燥機の背面図である。
【図4】機体の部分破断による拡大側面図である。
【図5】穀物の乾燥特性図である。
【図6】乾燥部の風の流れを示す乾燥部の縦断面図である。
【図7】乾燥機の起動制御のタイミングチャートである。
【図8】機体の要部背面図である。
【図9】集塵室の内部透視側面図である。
【図10】排風調節弁の内部透視側面図である。
【図11】排風調節弁の特性登録例(a)および開閉角度位置(b)である。
【図12】排風調節弁の制御フローチャートである。
【図13】排風絶対湿度の設定切換例である。
【図14】還流ダクトの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、穀物乾燥機の内部構成を示す内部透視正面図である。
【0011】
穀物乾燥機は、塔型構成の箱体1の上段部に穀物を貯留する貯留室10を、下段部にその穀物を受けて熱風乾燥する乾燥部11を構成する。貯留室10の上部には、穀物を上送する昇降機2から穀物を受ける搬入装置3、拡散羽根12を備え、同貯留室10の下部は乾燥部11の流下通路14に連通する。乾燥部11は流下通路14のほかに、熱風室13、排風室15、搬出装置17等を備える。
【0012】
箱体1の前側は、正面図を図2に示すように、乾燥部11から穀物を上送するバケットコンベヤ等による昇降機2と、熱風を発生させる加熱手段であるバーナー4を内設した加熱室5と、乾燥作業を操作する各種スイッチを備える操作盤6とを備える。昇降機2は、箱体1の天井位置まで穀物を上送し搬入装置3が箱体1内まで搬送する。
【0013】
箱体1の後ろ側は、背面図を図3に示すように、排気口23を形成し、箱体1内の熱風を吸引排出する排気手段である排気ファン7と排風調節弁22を設け、排気ファン7から乾燥部11に連通する還流手段としての還流通路20を分岐する。箱体1の側面には、穀物を投入する投入口19を開閉する開閉扉19aを備える。
(詳細構成)
機体各部について詳細に説明すれば、昇降機2には穀物の水分を検出する水分計9と箱体1内の穀物を機外に排出する穀物排出口18とをそれぞれ設け、搬入装置3には搬送用のラセン3aを内設してその搬送行程中に穀物に混じる藁屑等の夾雑物を集塵する集塵装置50を設ける。
【0014】
乾燥部11にはバーナー4を内設した加熱室5を設け、加熱室5の前側には多数のスリットを形成した外気導入口31を設ける。加熱室5は外気導入口31から外気を受けるとともに、還流通路20と連通して還流された排気を受け、連通する熱風室13にバーナー4の燃焼面4aを対向して熱風を供給する。熱風室13は貯留室10から穀物が流下する流下通路14を挟んで排風室15から排気ファン7の吸引作用を受けることにより、熱風が同流下通路14を透過可能に構成する。
【0015】
流下通路14の下端部には穀物を流下させつつ所定量ずつ繰り出す定量繰出手段としてのロータリバルブ16を設け、このロータリバルブ16の下方で移送ラセンを内設した搬出装置17により、繰り出された穀物を受けて昇降機2まで搬出する。
【0016】
排気ファン7による吸引排気を開放する排気口23には、開閉調節用の排風調節弁22を設け、この排風調節弁22の直前位置で還流通路20を分岐することにより、排気を還流通路20側に送出するべく排風調節弁22を開度制御可能に構成することで、排気ファン7から排出された排気から任意の割合で加熱室5に還流調節できるようにしている。また、排風調節弁22は駆動モータ33で傾動可能な円盤状に形成されており、下部が後側に向かって上部が前側に向かって回動することで、受けた排気を下方の還流通路20に向かって案内する案内板としても機能する。
(還流通路)
還流通路20は、機体の部分破断による拡大側面図を図4に示すように、排気ファン7の排出側に取り付けられており、その始端側には排風調節弁22の直前位置の底部に凹状の第一塵埃貯留部20aを形成し、さらに、排気ファン7の下方から箱体1内の熱風室13内を貫通してその終端部の上方の加熱室5に連通して構成する。還流通路20の終端部の底部にも凹状の第二塵埃貯留部20bを形成する。
【0017】
第一塵埃貯留部20aには貯留された塵埃を作業者が取り出すための清掃口20cを設ける。また、第二塵埃貯留部20bは前側に引き出し式に構成する。すなわち、第一塵埃貯留部20aと第二塵埃貯留部20bはいずれも箱体1外に備えることで貯留された塵埃を作業者が除去しやすく構成する。また、熱風室13の内部を貫通して還流通路20を配置することで排気の熱を保温できる構成としている。また、還流通路20の底面部には、塵埃排出用のスライドシャッター付きの清掃口(不図示)を設ける。
【0018】
操作盤6については、図示はしないが、張込量の設定スイッチ、仕上がり水分の設定スイッチ、穀物種類の設定スイッチ、張込開始スイッチ、通風開始スイッチ、乾燥開始スイッチ、排出開始スイッチと、停止スイッチ、各種数値の表示板等を備えている。また、操作盤6内には乾燥作業の制御をする制御部を備えている。
【0019】
そのほかに、図示はしないが、還流通路20には排気ファン7で排出された排気の温度を検出する排気温度センサと、排気の相対湿度を検出する排気湿度センサとを設け、また、外気導入口31の近傍に外気温センサを配置し、排気ファン7の近傍に排気湿度センサを配置し、その他、穀温センサの信号を合わせてそれらの信号に応じて運転制御を行う。
(乾燥処理)
次に、乾燥作業について説明する。
【0020】
作業者は張込開始スイッチを操作して開閉扉19aが開いた投入口19に穀物を順次投入する。投入された穀物は搬出装置17によって昇降機2まで搬送され、昇降機2から搬入装置3を経て貯留室10に供給されていく。穀物の投入終了後、乾燥開始スイッチを操作すると燃焼バーナ4が作動し、燃焼面4aに発生する炎によって熱風が熱風室13に供給される。一方、ロータリバルブ16も駆動を開始し、流下通路14を流下する穀物を順次排出装置17に繰り出していく。熱風室13に供給された熱風は熱風室13を形成する熱風室体13aに多数形成するスリット(図示せず)を通過して流下通路14に流入する。そして、流下する穀物中の水分を奪って排風室15に流入する。排風室15に流入した熱風は排気ファン7で吸引排出される。
【0021】
排出された排風は排風調節弁22で遮られ下方の還流通路20に流入し、乾燥機前側の加熱室5に向かって還流され、その途中で排風中に含まれる塵埃は還流始端側の第一塵埃貯留部20a及び還流終端側の第二塵埃貯留部20bに落下して貯留される。
【0022】
次に排風調節弁22の開度の制御方法について説明する。
外気温度センサで検出された外気温が20℃で外気湿度センサで検出された外気湿度が70%で制御部で算出された絶対湿度が13g/m3(立方メートルを「m3」と表記)とする。そして、制御目標とする排風を例えば排風温度が30℃で排風湿度が70%、そして絶対湿度を25g/m3とした場合とする。そして、本実施例の排気ファン7の風量を1900m3/hで、穀物乾燥機に供給された穀物(籾)量を800kg、乾減率(一時間あたりに乾燥される水分の割合)を1.2%/hとした場合、どの程度の割合の排風を熱風室13に還流するかを以下の式より求める。
【0023】
絶対湿度−絶対湿度=12(g/m3) …(イ)
外気が吸水できる最大吸水量は
12×1900/1000≒23(kg) …(ロ)
そして、一時間あたりに乾燥機から除去される水分量は
800(kg)×1.2(%/h)=9.6(kg/h)…(ハ)
(ロ)の式と(ハ)の式より
23/(9.6+23)≒0.71(71%) …(ニ)
すなわち、排気ファン7から排出される排風量の71%を熱風室13に還流すべく排風調節弁22を調節する。
【0024】
なお、排風調節弁22が排風量の71%より多くの量を熱風室13に還流するよう調節された場合には、多くなればなるほど還流される水分量が多くなるため、穀物から新たに水分を除去し難くなる。また、排風調節弁22が排風量の71%より少ない量を熱風室13に還流した場合には熱風室13に還流される熱量が少なくなるため、穀物の温度の上昇がし難くなり乾燥速度が遅くなる。
【0025】
本実施の形態の式に基づいて排風調節弁22の開度を調節して排風を熱風室13に還流する割合を調節することで、排気ファン7から排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。
【0026】
本実施の形態の乾燥制御についてさらに詳述すると、外気温度センサと外気湿度センサで外気の温度と湿度とを検出し、制御部で外気の絶対湿度を算出し、外気の絶対湿度と穀物水分や外気絶対湿度の条件から予め設定する排風の絶対湿度とを比較する温度及び相対湿度時の排風の絶対湿度とを比較して、その差異(増加水量)を外気が吸収できる最大の吸水量として算出する。そして、一方では乾燥作業により乾燥機から蒸発する蒸発水量(本実施の形態では前述の一時間あたりに乾燥機から除去される水分量)を求め、増加水量が乾燥作業による蒸発水量と合算された値に対する割合が、排風を還流できる割合と考えるものである。すなわち、前記(二)の式は
増加水量/(増加水量+蒸発水量)
を示している。
【0027】
従来の熱風乾燥においては、穀物の表面の水分を除去する毎に穀物内部の水分が熱伝導を利用した水分移動で穀物の表面に順次出てくる性質を利用して乾燥するため、高速乾燥を行なうために急激に高温で乾燥を行なうと穀物表面と内部との水分差が大きくなり、胴割れを起こし易いという欠点があるのに対し、本実施の形態の排風乾燥においては、排風中に含まれる熱と水分を同時に熱風路に還流することで、穀物表面から除去されようとする水分を排風中に含まれる水分で抑止して穀物内部の水分勾配を一定にすることで穀物を割れ難くすると共に、排風中の熱を余分に与えることで穀温を短時間で上昇させることで、高速な乾燥を可能にするものである。
(還流通路詳細)
次に、還流通路について詳細に説明する。
【0028】
還流通路20の途中部に、すなわち、第一塵埃貯留部20aと後述の開口部20w…との間に、全断面回動板を軸支して構成される開閉弁20eを設けて構成する。穀物乾燥機の運転条件により排気口23から100%を排出する場合は、上記開閉弁20eを全閉して運転する。この穀物乾燥機は、乾燥部11が機体前面側から外気を吸引していることから排気ファン7側に排気抵抗を受けると還流通路20から排気を吸引することとなるが、上記のように排気口23から100%を排出する場合において、排気ファン7の出口付近で風の抵抗を受けても、上記開閉弁20eにより還流通路20の側に排気が逃げるのを防止することができる。
【0029】
また、還流通路20には、乾燥部11と連通する開閉調節可能な複数の開口部20w…を還流通路20の長手方向に沿って配置する。各開口部20wの開閉手段としての開口調節部材は、スライドシャッター20sに手動制御用の操作ロッド20rを連結してこの操作ロッド20rを機体外部まで延ばして構成する。
【0030】
上記構成の還流通路20は、加熱室5側の通風抵抗が変化しない限り、排気還流量(率)によって還流通路20内の圧力勾配が定まり、また、排気ファン7側は大気圧より高い吐出圧を受け、排気還流量が大きい場合は加熱室5側の減圧の圧損の方が大きく、バーナー近傍まで加圧状態となるので、還流通路20の全長における中間範囲でプラスからゼロになり、還流通路20の出口である加熱室5の側で大気圧よりややマイナスになるようにスライドシャッター20sを開閉操作することにより、各開口部20wからの減圧を受けて加熱室5に近づくにつれて徐々に圧力低下するように調節する。このようにスライドシャッター20sを開閉操作することにより、加熱室5付近で還流供給された排気による塵埃の吹き出しを防止することができる。
(還流率制御)
次に、排風還流式穀物乾燥機の乾燥制御について説明する。
【0031】
排風還流式穀物乾燥機は、所定の水分値になるまで乾燥対象の穀物を循環させつつ乾燥部11で乾燥処理し、その処理段階に応じて還流部20からの還流量を制御し、すなわち、乾燥運転の開始当初の所定時間についてゼロ還流制御(非還流制御)、次いで、所定温度まで全還流制御した上で、水分値と対応する対応還流制御を行う。
【0032】
詳細には、ゼロ還流制御は、少なくとも通常の乾燥運転時の所定の還流率より小さく、好ましくは還流率0%で還流なしとする還流量制御である。この非還流制御により、乾燥運転の開始当初の所定時間について、乾燥部11の排出風が機外に排出され、それに伴って乾燥部11の穀物に混入または付着している塵埃を機外に排出することができる。その結果、塵埃の機外排出と対応して穀物品質が確保されるとともに、塵埃による機器障害を小さく抑えることができる。
【0033】
この場合において前記制御部は、循環動作する穀物の一巡に要する時間としてその穀物量に応じた一巡時間を算出し、この一巡時間をゼロ還流制御による運転時間として設定することにより、循環穀物が一巡する間にその全量について非還流制御がなされて塵埃が除去されるとともに、無駄なく本来の乾燥運転に移行することができる。
【0034】
全還流制御は、少なくとも前記所定の還流率より大きく、好ましくは、75%以上でさらには排出風の全量が乾燥部に還流される還流率100%に及ぶ範囲の還流量とする制御である。このように、乾燥初期の範囲において強制還流による上記全還流制御を導入することにより、一般に気密性が不十分な乾燥機において、高湿環境下で安定して迅速に穀温を上昇することができる。したがって、一般の乾燥制御の通例によれば、水分計と外気温の条件から還流率を算出すると乾燥初期は20%を切り、また、外気温が30℃では還流率が0%となる場合があり、高速乾燥が確保できないという問題があったが、その解消を図ることができる。
【0035】
また、穀温上昇優先による積算温度が大きくなって品質低下を起こす場合があることから、乾燥初期の範囲として、循環穀物が所定温度(およそ36℃)に達するまでの間に限定することにより、上記問題を回避しつつ、穀物品質を確保した上で、効率よく本来の乾燥運転に移行することができる。
(対応還流制御)
対応還流制御は、循環穀物の水分値に応じて設定した還流率による還流風量に調節する制御である。具体的には、予め得られている理想的な穀物乾燥運転に必要な穀物水分と排風絶対湿度との関係に沿って還流率を制御する。例えば、図5の乾燥特性図に示すように、穀物水分の低下に従って排風絶対湿度を低下するように還流率を調整する。
【0036】
この場合において、高速化のポイントは、蒸発量を押さえ込むために必要な湿度であり、その関係は穀物水分に密接な関係があり、上記循環穀物が所定温度に達した以降の乾燥処理について、上記対応還流制御により、穀物水分値に適合した排風絶対湿度条件を満たすことができるので、穀物品質を確保しつつ、高速の乾燥処理が可能となる。
【0037】
以上に説明した排風還流式穀物乾燥機の乾燥制御により、従来なされていた還流率一定として適宜の排風還流を行う乾燥運転に比較して、排風還流による効率のよい乾燥処理を確保した上で、穀物に付着混入している塵埃の還流による機器障害を回避するとともに、高速且つ高品質の穀物乾燥処理が可能となる。
(還流通路開度調節)
次に、還流通路20から乾燥部11に連通するの開口部20wの開度調節について説明する。
【0038】
還流通路20の開口部20wの開度調節については、乾燥機の後部側のスライドシャッター20sの開度を大きくし、後方ほど噴出しの風速を速め、後方ほど風量を大きくなるように調節する。
【0039】
具体的には、図6の乾燥部の風の流れを示す乾燥部11の縦断面図のように、排風循環風Rは、乾燥機の前から約1/3の位置で乾燥部11の熱風室13上部で衝突して跳ね返り、次いでその反動で乾燥部11の下部へ向かい、その結果として、乾燥機の下部のみに熱風Hがまわることとなり、温度分布の悪化を招いていたことが判明した。
【0040】
この問題を解決するために、上記のように還流通路20の開口部20wから熱風室13への流入が後部側ほど多くすることにより、乾燥部11の下部へ向かう熱風Hを持ち上げて温度分布の均一化を図ることができる。このように、開口部20wは、単純に排風を乾燥部11に戻して通風抵抗を下げたり、燃焼安定を向上させるだけでなく、乾燥部11での温度分布調整について大きな効果を奏する。
【0041】
また、図14の要部斜視図に示すように、還流通路20のダクト上面にシャッター付の上面開口20v…を形成する。この上面開口20v…の調節により、熱風の流線を上方に修正することができる。
(乾燥終了後の取扱い)
次に、乾燥終了後の排風調節弁22の取扱いについて説明する。
【0042】
外気湿度が高く、乾燥終了穀物の水分が戻る可能性がある場合は、排風調節弁22を閉じ、逆に、外気が高温低湿で穀温が高い場合は、排風調節弁22を開放して穀温を早く下げ、乾燥の進みを遅らせるようにする。
【0043】
乾燥終了後の外気条件によっては、乾燥が終了したときの水分よりも乾燥が進んだり、逆に水分が戻ったりすることがあったが、上記のように、排風調節弁22を閉じることにより、籾層への外気の進入を防止して乾燥終了後の穀物の水分変化を防止することができる。
(排風調節弁動作)
次に、排風調節弁22の基点位置検出制御について説明する。
【0044】
排風調節弁22の基点位置の検出の際に、所定時間を過ぎても完了しない場合は、異常信号を出すと同時に、排風調節弁22を手動設定モードに移行する。
基準位置が検出できないとその後の乾燥制御ができないので、このような場合の異常対応として、オペレータに手動設定を促し、排風調節弁22を固定設定とすることにより、乾燥作業を安全側で進めることができる。
【0045】
また、乾燥機の起動時の制御において、図7のタイミングチャートに示すように、排風調節弁22の基点位置検出の後に、他の動作制御に入るように構成する。
排風調節弁22のフォトカプラの制御ができない場合は、基点位置の検出に数秒から数十秒の時間を要するので、上記制御処理により、基点位置検出までは他の動作を受け入れないようにすることにより、その間にバーナーやファンが回転して不具合を招く事態を回避することができる。
(排気部)
次に、機体背面部の排気部の構成について説明する。
【0046】
機体の要部背面図を図8に示すように、排気ファン7の真下の排風を還流させるダクトによる還流通路20の横幅Aを排気ファン7の横幅Bより小さく構成する。このように構成することにより、後ろ昇降機にした場合でも、還流路20のダクトが邪魔にならない。
(集塵室)
加熱室5のバーナー4下の集塵室20bについては、図9の内部透視側面図に示すようにルーバー20zを設ける。このルーバー20zは、還流通路20の角部を風が流れるようになめらかに配置し、また、一度集塵室20bに落下した粉塵が吸引によって引き込まれないように、押さえ蓋のように、上方からの投影が全面に及ぶように構成し、段違いで上下の仕切をなすように設置する。上記ルーバー20zにより、吸引部分での乱流を整流化するとともに、集塵室20bへの無風化を可能とし、一度落下した粉塵の巻き上がりを防止することができる。
(排風調節弁制御)
前記排風調節弁22の開閉角度制御においては、図10に示すように、弁体が円盤状のプレート形状の場合に、弁の回転に対して円周上に複数の穴22h…を開けたプレート22pを装着し、フォトカプラ22sを利用してこの複数開いた穴22h…を検知して角度を検出する。このように、穴あきのプレート22pで構成することにより、位置検出センサとして利用すると同時に、前記基点位置検出制御により、停止センサ(安全センサ)としての役目も同時実施が可能である。
【0047】
還流率の制御については、図11(b)のフォトカプラ22sによる穴位置検出と図11(a)の還流率の登録設定値をもとに行う。すなわち、排風還流率Xと対応する排風調節弁22のポイントYの関係に基づき、図12のフローチャートに示すように、検出水分値になるまで対応して排風調節弁22の開閉角度制御を行う。
(還流率設定切換)
排風還流制御においては、基準の論理式に幅を持たせる制御を行い、すなわち、比較的胴割しにくい品種についてはさらに排風絶対湿度を下降させる方向とし、逆に、胴割れしやすい品種においては、さらに排風絶対湿度を上昇させる方向とする。
【0048】
乾燥の高速の可否については、胴割れ次第であることから、胴割しにくい品種を無理に排風還流させる必要はなく、こうした品種には適正な処置ができるようなスイッチを設ける。例えば、図13に示すように、2つのディップスイッチにより、胴割れの程度に応じた「標準」「低湿度」「高湿度1」「高湿度2」の4枝の選択により排風絶対湿度を調整可能とし、また、胴割れの「難」「易」の区別による切換スイッチでもよい。
(排風調節弁の取扱い)
排風調節弁22の取扱いにおいては、乾燥終了時には弁を閉じるように構成する。このような取扱いにより、外部に開いている排風路からの鼠の侵入を防止することができる。上記取扱いにより、特段の蓋部材が不要となり、その保管および装着の取扱いの煩わしさから解放されるとともに、複数の排風ダクトの集中配管によって蓋の適用が困難な複合乾燥機システムにおける鼠の侵入防止を確保することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 箱体
2 昇降機
4 燃焼バーナ
5 加熱室
7 排気ファン
9 水分計
10 貯留室
11 乾燥部
13 熱風室
15 排風室
20 還流通路(還流ダクト)
22 排風調節弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部と、この乾燥部から排気ファンで吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部に還流する還流部と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、
制御部は、排気ファンの排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機。
【請求項2】
還流する排風の風量を穀物の水分値に応じて制御することを特徴とする請求項1記載の排風還流式穀物乾燥機。
【請求項1】
循環動作する穀物を熱風によって乾燥処理する乾燥部と、この乾燥部から排気ファンで吸引して排出した排風を所定の還流率で乾燥部に還流する還流部と、乾燥運転を制御する制御部とを備える排風還流式穀物乾燥機において、
制御部は、排気ファンの排風量と、張り込まれた穀物量と、設定した乾減率に基づいて乾燥部に還流する排風の風量を制御することを特徴とする排風還流式穀物乾燥機。
【請求項2】
還流する排風の風量を穀物の水分値に応じて制御することを特徴とする請求項1記載の排風還流式穀物乾燥機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−127893(P2011−127893A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37250(P2011−37250)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【分割の表示】特願2006−318494(P2006−318494)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【分割の表示】特願2006−318494(P2006−318494)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]