説明

穀類由来の成分を有効成分とする血管新生阻害の作用を有する組成物

【課題】 安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料、好ましくは大麦から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により、優れた血管新生阻害作用を有する組成物の提供。
【解決手段】 イネ科植物由来の成分、好ましくは大麦由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする血管新生を阻害するための組成物。上記大麦由来の成分は大麦玄麦エチルアルコール抽出画分および大麦玄麦アルカリ抽出画分からなる群より選ばれる。上記血管新生を阻害するための組成物は、血管新生を阻害すべき疾患、具体的には腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患を治療または予防するための組成物である。上記組成物は、血管新生を阻害するための食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類由来の成分を有効成分とする血管新生阻害の作用を有する組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は大麦に含まれる物質、好ましくは大麦玄麦エチルアルコール抽出画分、または大麦玄麦アルカリ抽出画分を有効成分とする血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、好ましくは食品素材、飲食品、飼料などの形態の組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガンは、1981年以来、わが国の死因のトップを占める疾患であり、3大死因の中でも、ガンだけが一貫して増加し、死亡数は増え続けている。厚生労働省の人口動態統計によると、2001年の全死亡者数97万331人のうち、30万658人がガンが原因で死亡しており、実に3人に1人がガンで死亡していることとなる。このような疾患に対して、現在病院で主に施されているのは薬物、化学、物理などの各療法により、ガン細胞を直接攻撃するという対症療法であるが、この方法では、ガン細胞そのものだけでなく、正常な細胞にもダメージがおよび、免疫力や自然治癒力の低下に伴って、結果として、患者が亡くなってしまうケースが非常に多いという問題があった。このような経緯を経て、副作用の少ない安全な治療法に対する要望は日々高まりを見せており、病気の治療よりも予防に重点がおかれるようになっている。
【0003】
近年、安全なガンの治療法として血管新生阻害を応用することが注目されている。ガン細胞は、血管新生促進物質を産生することで、自らの細胞に栄養分や酸素を送り込む血液の経路を張りめぐらし、十分な血液を供給し続け、爆発的な増殖を繰り返すという性質を持っているが、血管新生阻害作用を応用したガン治療とは、ガン細胞への血液の経路を遮断してガン細胞の増殖を防ぐものである。すなわち、簡単に言えば、ガン細胞を兵糧攻めにするということである。
【0004】
血管新生抑制の作用は、ガンのみではなく、リウマチ様関節炎、糖尿病、心臓病、その他様々な疾患に対して予防および安全に治療する効果があることが近年報告されており、(非特許文献1〜3)血管新生抑制作用を有する物質の早期提供が強く求められている。
【0005】
血管新生阻害作用を有する天然物由来の活性成分について、特許文献1には、ヤシ科植物の果皮や種子から得られるトコトリエノールを有効成分とする血管新生阻害剤、細胞増殖阻害剤、管腔形成阻害剤およびFGF阻害剤並びに食品或いは食品添加物が記載されており、特許文献2には、シイタケ菌糸体抽出物を含む血管新生を阻害するための食品組成物が記載されている。特許文献3および4には、糸状菌を培養し、その培養液から得られた新規な化合物が、血管新生阻害作用を有することが記載されている。
【0006】
ところで、イネ科植物である大麦は、有史以前から人類に欠かせない穀類で、日本の古い医学書にも記載されているなど、健康に良い食品として親しまれてきた。実際に大麦や大麦を微生物にて発酵させたものの生理活性機能については様々な研究が行われてきた。
【0007】
特許文献5には、大麦類を爆砕処理したものを水性溶媒で抽出することにより、主としてその穀皮画分からの抽出エキスが有用な生理活性作用、すなわち免疫増強作用、血圧降下作用、血流改善作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用、抗菌作用などの生理活性作用を有し、それを利用した機能性食品素材が記載されている。しかしながらこの発明は、大麦の穀皮画分からの抽出エキスであり、その有効成分は、水易溶性物質であり、分子量50万以下で、主成分が分子量10万以下、タンパク質含量3〜30%、水溶性のフェルラ酸およびp−クマル酸に富んでいるものである。
【0008】
大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を利用した発明として、特許文献6には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分にアルカリを添加してアルカリ可溶性画分を分取し、該アルカリ可溶性画分を酸で中和して中性可溶性画分を得、該中性可溶性画分にエタノールを添加することにより分取した、有機酸、タンパク質、およびヘミセルロースを含有するエタノール不溶性画分が、脂肪肝抑制作用を有することが記載されており、特許文献7には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分に有機溶媒を添加することにより分取した有機溶媒不溶性画分が、白血病細胞増殖阻害作用を有することが記載されており、特許文献8には、大麦焼酎蒸留残液から、特許文献7と同様にして得られた有機溶媒不溶性画分が、ナチュラルキラー細胞を賦活化することが記載されている。
【0009】
特許文献9には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤に付すことにより分取した非吸着画分からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0ないし5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成が、グルタミン酸24ないし38%、グリシン4ないし20%、アスパラギン酸5ないし10%、プロリン4ないし9%、およびセリン4ないし8%であり、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用および治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物およびその製造方法が記載されている。特許文献10には、特許文献9と同様にして得られた組成物が、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用および治癒作用を有する医薬組成物およびその製造方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献11には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分をイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した有機溶媒不溶性画分が、抗酸化作用を有することが記載されている。
【0011】
【非特許文献1】Eur.J.Cancer.、32A、2534-2539(1996)
【非特許文献2】Nature Med.、1、27-33(1995)
【非特許文献3】Immunity.、12、121(2000)
【特許文献1】特開2002−308768号公報
【特許文献2】特開2004-196791号公報
【特許文献3】特開2003-183249号公報
【特許文献4】特開2004-262881号公報
【特許文献5】特開2002-371002号公報
【特許文献6】特開2001-145472号公報
【特許文献7】特開2003-73294号公報
【特許文献8】特開2003-73295号公報
【特許文献9】特開2004-112号公報
【特許文献10】特開2004-2266号公報
【特許文献11】特開2004-238452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
大麦および大麦の発酵物には、前記したように、様々な生理活性があることが確かめられてきたがその生理活性の中に血管新生阻害作用は含まれておらず、大麦が血管新生阻害作用を呈するということはこれまで知られていなかった。
【0013】
本発明は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料、好ましくは大麦から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により、優れた血管新生阻害作用を有する組成物を提供すること、好ましくは血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、より具体的には食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、穀類由来の成分、特に大麦由来の成分に優れた血管新生阻害作用が存在することを見いだし、発明をなした。本発明において、大麦玄麦エチルアルコール抽出画分、大麦玄麦アルカリ抽出画分が、有意な血管新生の阻害作用を有すること、これにより、副作用が少ない、血管新生阻害活性を有する組成物を新たに提供することができる。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)の血管新生を阻害するための組成物を要旨とする。
(1)イネ科植物由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする血管新生を阻害するための組成物。
(2)イネ科植物由来の成分が大麦由来の成分である(1)の血管新生を阻害するための組成物。
(3)上記大麦由来の成分が大麦玄麦エチルアルコール抽出画分および大麦玄麦アルカリ抽出画分からなる群より選ばれる(2)の血管新生を阻害するための組成物。
(4)上記血管新生を阻害するための組成物が、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物である(1)、(2)または(3)の血管新生を阻害するための組成物。
(5)上記血管新生を阻害すべき疾患が、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患である(4)の血管新生を阻害するための組成物。
(6)上記組成物が、血管新生を阻害するための食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである(1)ないし(5)のいずれかの血管新生を阻害するための組成物。
(7)上記飲食品が、血管新生を阻害するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である(6)の血管新生を阻害するための組成物。
(8)上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である(6)の血管新生を阻害するための組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料(大麦玄麦)から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により、副作用が少ない、血管新生阻害活性を有する組成物、好ましくは血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、より具体的には食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に記載の血管新生阻害活性を有する組成物は、たとえば大麦、小麦、ライ麦、オーツ麦、はと麦、米などのイネ科の植物から調製できるが、大麦を用いることが好ましい。大麦は、皮麦、裸麦のどちらでも良く、また二条大麦、六条大麦のどちらでも良い。また穀表部に色素が沈着した有色大麦でも良い。穀物の形態としては、穀粒全体、表皮部、胚乳など特に制限されないが、玄麦などの穀粒全体を用いることが好ましい。また、焙煎処理や製粉処理、圧偏処理などの加工処理を加えても良い。
【0018】
本発明の上記組成物は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料(イネ科植物)、好ましくは大麦から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により得られ、その生体への適用は飲食物、医薬品、肥料、飼料や皮膚外用剤に使用することで、優れた血管新生阻害効果を得ることが期待できる。
本発明の上記組成物は、血管新生阻害作用を有する天然物由来の活性成分を有するものであり、該活性成分に基づく血管新生阻害を応用することにより、たとえば安全なガンの治療法へと導くのであり、血管新生抑制の作用は、ガンのみではなく、リウマチ様関節炎、糖尿病、心臓病、その他様々な疾患に対して予防および安全に治療する効果を有する機能性組成物である。
すなわち、本発明の上記組成物は、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物である。血管新生を阻害すべき疾患とは、血管新生が病態の発生に重要な働きをしている疾患であれば、どのようなものでも対象となる。したがって、血管新生を阻害すべき疾患は、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患である。より具体的には、血管新生を阻害すべき疾患は例えば、種々の組織に発生する固型腫瘍、骨髄腫、血管腫などの腫瘍もしくは癌;慢性関節性リウマチ、乾癬、変形性関節症などの慢性炎症;または加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、新生血管緑内障などの網膜症;などの疾患をあげることができるが、これらのものには限定されない。本発明においては、血管新生を阻害すべき疾患として、種々の腫瘍または癌を標的とすることが好ましい。
【0019】
本発明の組成物が有する血管新生阻害活性をin vitroにおいて調べるためには、培養条件下で血管内皮細胞と線維芽細胞とを、必要に応じて血管新生誘導性因子であるVEGFの存在下にて、共培養させることにより管腔形成初期段階の増殖状態が作り出された培養中に、本発明の組成物を添加して、血管新生の抑制が生じるかどうかを確認することができる。血管新生の抑制は、例えば管腔を染色して管腔形成が抑制されているかどうかを調べることにより行うことができる。このようなin vitroにおける血管新生の阻害効果を調べるためのキットとしては、血管新生キット(KURABO社製)を、管腔を染色するためには抗CD31抗体や抗フォン-ウィルブランド因子抗体などの抗体を使用する管腔染色キット(KURABO社製)を、それぞれ使用することができる。
【0020】
本発明の上記組成物は、大麦由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする。前記大麦由来の成分に含まれる血管新生阻害作用を呈する物質は、好ましくは大麦玄麦エタノール抽出画分、大麦玄麦アルカリ抽出画分に含まれる物質である。
【0021】
大麦玄麦エタノール抽出画分を得る方法としては、大麦玄麦をミルで粉砕したものにエタノールを加え抽出し、抽出液をろ紙にてろ過後、ろ液を減圧濃縮し、エタノールを除去し、遠心分離して大麦玄麦エタノール抽出液の液体分を得る方法が例示される。玄麦アルカリ抽出画分を得る方法としては、大麦玄麦をミルで粉砕したものにアルカリ水溶液を加えて抽出液を得、酸を用いて該抽出液を中和し、続いて、ろ紙にてろ過して大麦玄麦アルカリ抽出液の液体分を得る方法が例示される。
【0022】
大麦玄麦エタノール抽出物、および/または大麦玄麦アルカリ抽出画分は、血管新生を阻害するための食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。その組成物の機能性を生かして健康飲食品、患者用栄養飲食品を謳った食品、同様に、家畜、家禽、魚などの飼育動物のための飼料の開発が可能となった。
すなわち、上記飲食品が、血管新生を阻害するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である。上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である。具体的には、上述した玄麦エタノール抽出物を含む食品素材を、食品形態、飲料形態または飼料形態のいずれの形態で使用することができる。
本発明の血管新生を阻害するための組成物が有する上述した機能性を生かして用いる場合は、その含量は、特に制限されないが、目的とする機能の度合い、使用態様、使用量等により適宜調整することができ、例えば0.001〜100質量%である。本血管新生を阻害するための組成物は、人体やその他飲食物、医薬品、飼料や皮膚外用剤に使用することができる。また、経口等により内服することも、皮膚等に塗布することもできる。常法にしたがって経口、非経口の製品に配合することができ、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、皮膚外用剤、医薬品および飼料等の様々な分野で利用することができる。例えば、飲食物に配合した場合には、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための飲食物を提供することができる。予防等の効果からは、健康食品、栄養食品等として用いられることも期待できる。その他、家畜、および/または魚類の飼料、餌料に利用することができる。人体やその他飲食物、医薬品、肥料、飼料や皮膚外用剤に使用することにより、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防する効果を得ることができる。
さらに、大麦玄麦から容易に得ることができ、コスト面からみても、資源の有効活用という面からみても好ましい。
【0023】
本発明の組成物を食品に利用する場合、そのままの形態、オイルなどに希釈した形態、乳液状形態食、または食品業界で一般的に使用される担体を添加した形態などのものを調製してもよい。
乳液状形態のものは、例えば、油相部に組成物を添加し、更にグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセロール、デキストリン、ナタネ油、大豆油、コーン油などの液状の脂肪を加え、水相部にL−アスコルビン酸或いはそのエステルまたは塩、例えばローカストビーンガム、アラビアガムまたはゼラチンなどのガム質、例えばヘスペリジン、ルチン、ケルセチン、カテキン、チアニジンなどのフラボノイド類またはポリフェノール類或いはその混合物などを添加し、乳化することによって調製できる。
【0024】
飲料の形態は、非アルコール飲料またはアルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、炭酸系飲料、果汁飲料、ネクター飲料などの非炭酸系飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココアなど、また、アルコール飲料の形態ではスピリッツ、リキュール、チューハイ、果実酒類、麦酒、発泡酒、薬用酒などの一般食品の形態を挙げることができる。
【0025】
飲食物としては、具体的には以下のものを例示することができる。洋菓子類(プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、チョコレート、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー、せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、あめなど)、乾燥麺製品(マカロニ、パスタ)、卵製品(マヨネーズ、生クリーム)、飲料(機能性飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料)、嗜好品(緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク)、乳製品(アイスクリーム、ヨーグルト、コーヒー用ミルク、バター、バターソース、チーズ、発酵乳、加工乳)、ペースト類(マーマレード、ジャム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、果実のシロップ漬け)、畜肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、ラード)、魚介類製品(魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、ハンペン、魚の干物、鰹節、鯖節、煮干し、うに、いかの塩辛、スルメ、魚のみりん干し、貝の干物、鮭などの燻製品)、佃煮類(小魚、貝類、山菜、茸、昆布)、カレー類(即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレー)、調味料剤(みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、サラダ油)、揚げ製品(油揚げ、油揚げ菓子、即席ラーメン)、豆乳、マーガリン、ショートニングなどを挙げることができる。
【0026】
上記飲食物は、組成物を常法に従って、一般食品の原料と配合することにより、加工製造することができる。
【0027】
上記飲食物への組成物の配合量は食品の形態により異なり特に限定されるものではないが、通常は0.001〜20%が好ましい。
【0028】
上記飲食物は、機能性食品、栄養補助食品或いは健康食品類としても用いることができる。その形態は、特に限定されるものではなく、例えば、食品の製造例としては、アミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミンなどの蛋白質、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物などの他、アミノ酸単体の混合物などを、常法に従って使用することができる。また、ソフトカプセル、タブレットなどの形態で利用することもできる。
【0029】
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や甘味料、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。
【0030】
本発明の組成物を安定化させるために抗酸化剤、例えば、トコフェロール、L−アスコルビン酸、BHA、ローズマリー抽出物などを常法に従って併用することができる。
【0031】
本発明の組成物は、家畜、家禽、ペット類の飼料用に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
これらの治療剤および予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などにも用いることができる。
【0032】
以下に、大麦玄麦を材料とした各組成物の調整法と、血管新生阻害効果について説明するが、本発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0033】
本発明の詳細を実施例で示す。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
[実験1]
血管新生阻害実験
〈サンプル名称〉
表1に示すとおり。
A1、A2:ネガティブコントロール
A3、A4:ポジティブコントロール
B1〜B3:玄麦エタノール抽出画分粉末
C1〜C3:玄麦アルカリ抽出画分粉末
【0035】
〈血管新生阻害実験に用いたサンプルの調製法〉
本実験に用いたサンプルについては、他の実験との兼ね合いがあり、粉末化したサンプルを再溶解して実験に用いているが、液状のまま、実験に用いても何ら問題はない。
【0036】
[玄麦エタノール抽出画分粉末]
大麦玄麦をミルで粉砕したもの100gに75%(v/v)エタノール1Lを加え、常温で6時間撹拌抽出した。抽出液を、ADVANTEC社製4Cろ紙にてろ過後、該ろ液を減圧濃縮し、エタノールを除去した。続いて、10000 rpm、10 minの条件で遠心分離して該大麦玄麦エタノール抽出液の液体分を得、該抽出液を凍結乾燥に付した。
【0037】
[玄麦アルカリ抽出画分粉末]
大麦玄麦をミルで粉砕したもの100gに2%Ca(OH)2水溶液1 Lを加え、常温で6時間撹拌抽出した後、HCLを用いて、該抽出液のpHを7.0に調製した。続いて、ADVANTEC社製4Cろ紙にてろ過して該大麦玄麦アルカリ抽出液の液体分を得、該抽出液を凍結乾燥に付した。
【0038】
〈実験試料の調製、実験方法、及び結果〉
1.実験試料
1-1 サンプル調製
1-1-1 血管新生阻害実験用
各試料を1000μgずつ秤量後、それぞれ別々に1mlの培地で溶解し、ろ過滅菌(0.22μm)後、10倍希釈(3回)を行い、表1(血管新生阻害効果評価試験サンプル内訳)に示す10μg/mlから1000μg/mlの濃度のサンプルを調製した。同様に表1に示すネガティブコントロール、ポジティブコントロールのサンプルを調製した。
2.実験方法、及び結果
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖状態にあるものに各サンプル(1-1-1、ネガティブコントロール、ポジティブコントロール)を添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouseanti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugateを用いて染色し、顕微鏡観察した。血管新生阻害効果について、形成された管腔様網目構造を評価した。
得られた結果を表2および図1ないし図3に示す。血管組織の写真をデジタルデータとして取り込み、ランダムに選択した数箇所の血管部分(黒色部分)の面積を測定することによって血管新生阻害の効果を求めた。即ち表2のAREAの欄の数値が小さいほど血管新生阻害の効果が高いサンプルであることを示している。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
玄麦エタノール抽出画分に明らかな血管新生阻害の効果が見られた。
【実施例2】
【0042】
実験2:
血管新生阻害実験
〈サンプル名称〉
表3に示すとおり。
【0043】
血管新生阻害実験に用いたサンプル(1)〜(9)の調製法
本件に用いたサンプルについては、他の実験との兼ね合いがあり、粉末化したサンプルを再溶解して実験に用いているが、液状のまま、実験に用いても何ら問題はない。なお、下記したように粉末化する際に、賦形材としてエキスと等量のデキストリンを添加したものもある。なおデキストリン含量は重量パーセント濃度 (W/W)である。
【0044】
(1)[玄麦エタノール抽出画分粉末]
前記段落0036を参照。
【0045】
(2)[玄麦アルカリ抽出画分粉末]
前記段落0037を参照。
【0046】
[実験試料の調製、実験方法、及び結果]
1.実験試料
1-1 サンプル調製
1-1-1 血管新生阻害実験用
各試料を1000μgずつ秤量後、それぞれ別々に1mlの培地で溶解し、ろ過滅菌(0.22μm)後、10倍希釈(3回)を行い、10μg/mlから1000μg/mlの濃度のサンプルを調製した。
【0047】
2.実験方法及び結果
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖状態にあるものに各サンプルを添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugateを用いて染色後、顕微鏡観察した。評価基準として、管腔形成を促進するVEGF-Aを10ng/ml、管腔形成を阻害するSuraminを50μMを同様に添加し、controlは無添加とした。血管新生阻害効果について、形成された管腔様網目構造を評価した。
方法:クラボウ社製のキットにより測定した。4つのポイントにおける管腔形成状態(面積、長さ、枝分れの数)を観察した。血管新生因子であるVEGFと血管新生抑制剤であるSuraminを共存させた系を対照とし、VEGFと各サンプル共存下の管腔形成状態を比較した。
(Suraminとサンプルの血管新生阻害活性を比較)
・サンプル添加濃度; 10、100、1000μg/mL
(Suraminは全て一定濃度;50μM)
結果:得られた結果を表3(血管新生阻害効果の数値データ)および図4に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
上記表3および図4の結果より、玄麦エタノール抽出物は、10μg/ml、100μg/ml、1000μg/mlのすべてにおいて有意に管腔形成を阻害し、玄麦アルカリ抽出物の100μgは完全に管腔形成を阻害した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の組成物は、有史以前から人類に欠かせない穀類で、日本の古い医学書にも記載されているなど、健康に良い食品として親しまれてきたイネ科植物である大麦由来の活性成分に基づく血管新生阻害を応用するものであり、機能性食品素材としての利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1のVEGF-A、Suramin50μMを用いての管腔形成の様子を説明する図面に代わる顕微鏡写真である。A1;VEGF-A、A2;VEGF-A、 A3;Suramin、 A4;Suramin
【図2】実施例1の玄麦エタノール抽出物を用いての管腔形成の様子を説明する図面および無添加で培養したコントロールの管腔形成の様子を説明する図面に代わる顕微鏡写真である。 玄麦エタノール抽出物添加量 B1;10μg、B2;100μg、B3;1000μg、B4;培地のみ
【図3】実施例1の玄麦アルカリ抽出物を用いての管腔形成の様子を説明するおよび無添加で培養したコントロールの管腔形成の様子を説明する図面に代わる顕微鏡写真である。 玄麦アルカリ抽出物添加量 C1;10μg、C4;培地のみ
【図4】実施例2の血管新生阻害試験の結果を説明する図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科植物由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする血管新生を阻害するための組成物。
【請求項2】
イネ科植物由来の成分が大麦由来の成分である請求項1の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項3】
上記大麦由来の成分が大麦玄麦エチルアルコール抽出画分および大麦玄麦アルカリ抽出画分からなる群より選ばれる請求項2の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項4】
上記血管新生を阻害するための組成物が、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物である請求項1、2または3の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項5】
上記血管新生を阻害すべき疾患が、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患である請求項4の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項6】
上記組成物が、血管新生を阻害するための食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項1ないし5のいずれかの血管新生を阻害するための組成物。
【請求項7】
上記飲食品が、血管新生を阻害するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である請求項6の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項8】
上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である請求項6の血管新生を阻害するための組成物。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−84503(P2007−84503A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277652(P2005−277652)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000177508)三和酒類株式会社 (11)
【出願人】(301016595)株式会社大麦発酵研究所 (4)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】