説明

積層シート、積層シートの巻取体およびそれらの製造方法

【課題】積層シートを巻き取ったときに、粘着シートからの粘着剤のはみ出しを低減させることのできる積層シート、その巻取体およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】長尺の剥離シート2Aと、剥離シート2Aの剥離面上に幅方向両側部に設けられた長尺の補助シート20Aと、剥離シート2Aの剥離面上に補助シート20Aの間に設けられた、基材3Aおよび粘着剤層4Aからなる長尺の粘着シート10Aとを備えた積層シート1Aにおいて、粘着シート10Aと補助シート20Aとの間に溝30Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の剥離シートに長尺の粘着シートが積層されてなる積層シートに関するものであり、特に、積層シートを巻き取ったときに、粘着シートから粘着剤がはみ出すことを抑制することのできる積層シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺の剥離シートに、粘着剤層および基材からなる長尺の粘着シートが積層されてなる積層シートは、ロール状に巻き取られ、巻取体の状態で運搬・保管されるのが一般的である。かかる積層シートを巻取体にしたとき、積層シートには巻圧がかかるが、通常粘着剤層は他の層に比較して軟らかいため、粘着剤層の幅方向両縁部から粘着剤がはみ出すことがある。
【0003】
また、細長い粘着シートを得るために、上記積層シートをカッターにより裁断することがあるが、かかる裁断時にも、カッターの圧力により、裁断した積層シートの粘着剤層の切断面から粘着剤がはみ出すことがある。
【0004】
このように積層シートの幅方向両縁部から粘着剤がはみ出すと、当該両縁部にて粘着剤層と剥離シートとが接着してしまうため、粘着シートから剥離シートを剥離するときに、粘着剤層が剥離シート側に付いてきてしまい、基材と粘着剤層とが分離してしまうという問題が生じる。また、粘着剤がはみ出した粘着シートをroll-to-rollの加工機で加工すると、はみ出した粘着剤がガイドロール面に付着し、ガイドロールから剥離シート表面(非剥離処理面)に転着してしまう。転着した粘着剤は、剥離シートと基材との間に挟まれ、両者を接着して剥離シートの剥離不良を引き起こす。また、粘着剤がさらに脱落して異物となり、被着体との間の異物となって粘着シートのエア噛みを誘発するという問題も発生する。
【0005】
ここで、特許文献1には、紫外線硬化型粘着シートを切断した後、ロール状に巻き取った状態で、当該粘着シートの切断部位を紫外線硬化させる発明が開示されている。
【特許文献1】特開2002−338904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法は、ロール状に巻き取ったときに既に粘着シートの切断部位から粘着剤がはみ出していることを想定した対処法であり、ロール状の粘着シートを硬化させたとしても、粘着剤のはみ出しが生じている以上、上記のような基材と粘着剤層との分離の問題の解決は困難である。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、積層シートを巻き取ったときに、粘着シートからの粘着剤のはみ出しを低減させることのできる積層シート、その巻取体およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離面上に幅方向両側部に設けられた長尺の補助シートと、前記剥離シートの剥離面上に前記補助シートの間に設けられた長尺の粘着シートとを備えた積層シートであって、前記粘着シートは、基材と粘着剤層とを備えており、前記粘着シートと前記補助シートとの間には溝が設けられていることを特徴とする積層シートを提供する(発明1)。
【0009】
なお、本明細書における「基材」は、所望の材料からなるシートであってもよいし、剥離シートであってもよい。また、本明細書における「剥離シートの剥離面」とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいう。
【0010】
上記発明(発明1)においては、さらに保護材が、前記補助シートの上、または、前記剥離シートの裏面において前記補助シートに対応する部分に設けられていてもよい(発明2)。なお、本明細書における「剥離シートの裏面」とは、剥離シートにおける剥離面の反対側の面をいう。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記溝は、前記積層シートの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する形状となっていてもよい(発明3)。
【0012】
第2に本発明は、前記積層シート(発明1〜3)を巻き取ってなる積層シートの巻取体を提供する(発明4)。
【0013】
第3に本発明は、長尺の剥離シートと、粘着剤層と、基材とをその順で積層し、得られた積層体をハーフカットして、前記剥離シートの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シートと、前記剥離シートの剥離面上、前記補助シートと離れて前記補助シートの間に位置する長尺の粘着シートと、前記補助シートおよび前記粘着シートの間の不要部とに分割し、前記不要部を除去して、前記補助シートと前記粘着シートとの間に溝を形成することを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(発明5)。
【0014】
上記発明(発明5)においては、任意の段階で、前記補助シートの基材上、または前記剥離シートの裏面の前記補助シートに対応する部分に、保護材を設けてもよい(発明6)。
【0015】
第4に本発明は、長尺の剥離シートと、粘着剤層と、基材と、保護シートとをその順で積層し、得られた積層体をハーフカットして、前記剥離シートの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シートと、前記剥離シートの剥離面上、前記補助シートと離れて前記補助シートの間に位置する長尺の粘着シートと、前記補助シートおよび前記粘着シートの間の不要部とに分割し、前記不要部を除去して、前記補助シートと前記粘着シートとの間に溝を形成するとともに、前記粘着シートの保護シートを除去することを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(発明7)。
【0016】
上記発明(発明5〜7)においては、前記ハーフカットを、前記溝が前記積層シートの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する形状となるように行ってもよい(発明8)。
【0017】
第5に本発明は、前記積層シートの製造方法(発明5〜8)によって積層シートを製造した後、得られた積層シートを巻き取ることを特徴とする積層シートの巻取体の製造方法を提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層シートを巻き取ったときに、粘着シートの粘着剤層からの粘着剤のはみ出しを抑制することができる。したがって、はみ出した粘着剤の転着・脱落に起因する剥離シートの剥離不良や粘着シートのエア噛みの頻度が低減する。また、本発明によれば、粘着シートの粘着剤層から粘着剤がはみ出したとしても、粘着シートの粘着剤層と剥離シートとが接着してしまうことはないため、剥離シートから粘着シートを剥離するときに、粘着シートの粘着剤層が剥離シート側に残り、粘着シートの基材だけが剥がれてしまうことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
図1(a)〜(e)は本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図であり、図2は同実施形態に係る積層シートの平面図であり、図3は同実施形態に係る積層シートの斜視図であり、図4は同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【0020】
本実施形態に係る積層シート1Aを製造するには、最初に図1(a)〜(b)に示すように、長尺の剥離シート2Aの剥離面に、粘着剤層3Aを形成する。
【0021】
剥離シート2Aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルム、もしくはそれらに、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したもの、またはグラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙(主にポリエチレンラミネート紙)等の紙を上記剥離剤で剥離処理したものなどを使用することができる。
【0022】
剥離シート2Aの厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μm程度である。剥離シート2Aの剥離面の表面粗さ(Ra)は、粘着剤層3Aに付与すべき平滑性に応じて適宜設定すればよい。
【0023】
粘着剤層3Aを構成する粘着剤は、粘着シート10Aの使用目的に応じて適宜選択される。粘着剤の種類としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤等が挙げられる。この粘着剤は、粘接着剤であってもよく、例えば、エネルギー線硬化性の粘接着剤であってもよい。
【0024】
粘着剤層3Aを形成するには、例えば、粘着剤層3Aを構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機によって剥離シート2Aの剥離面に塗布して乾燥させればよい。
【0025】
粘着剤層3Aの厚さは、粘着シート10Aの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常は5〜100μm程度であり、好ましくは10〜30μm程度である。
【0026】
次に、図1(c)に示すように、形成された粘着剤層3Aの上に基材4Aを圧着して積層し、3層構造の積層体とする。基材4Aの材料としては、粘着シート10Aの使用目的に応じて、様々な種類の材料を選択することができる。例えば、粘着シート10Aが光ディスク記録層のカバーシートとして使用される場合には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂を基材4Aの材料として選択することができる。また、例えば、基材4AがPDA(Personal Digital Assistance)等のディスプレイ用のフィルムとして使用される場合には、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を基材4Aの材料として選択することができ、これらの樹脂からなる基材の表面に反射防止処理や防眩処理等を施して用いることができる。
【0027】
また、基材4Aは、複数層からなる積層体であってもよいし、剥離シートであってもよい。基材4Aが剥離シートである場合、上記剥離シート2Aが軽剥離タイプの剥離シートであり、基材4Aが重剥離タイプの剥離シートであることが好ましい。
【0028】
基材4Aの厚さは、粘着シート10Aの種類や使用目的に応じて適宜決定されるが、通常は10〜300μm程度であり、好ましくは25〜200μm程度である。
【0029】
次に、図1(d)に示すように、剥離シート2Aを切断しないように基材4Aおよび粘着剤層3Aをカット(積層体をハーフカット)して、剥離シート2Aの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シート20Aと、剥離シートの剥離面上、補助シート20Aと離れて補助シート20Aの間に位置する長尺の粘着シート10Aと、補助シート20Aおよび粘着シート10Aの間の不要部40Aとに分割する。基材4Aおよび粘着剤層3Aのカットは、常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。
【0030】
最後に、図1(e)に示すように、不要部40Aを除去して、補助シート20Aと粘着シート10Aとの間に溝30Aを形成し、本実施形態に係る積層シート1Aを得る。
【0031】
本実施形態に係る積層シート1Aは、図2および図3に示すように、長尺の剥離シート2Aと、剥離シート2Aの剥離面上、幅方向両側部に設けられた長尺の補助シート20Aと、剥離シート2Aの剥離面上、補助シート20Aの間に設けられた長尺の粘着シート10Aとを備えており、粘着シート10Aと補助シート20Aとの間には溝30Aが設けられている。粘着シート10Aおよび補助シート20Aは、それぞれ基材4Aと粘着剤層3Aとから構成される。
【0032】
本実施形態に係る積層シート1Aにおいて、図2および図3に示すように、溝30Aは、当該積層シート1Aの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する直線状となっており、粘着シート10Aの幅方向両側端は、直線状となっている。
【0033】
補助シート20Aの幅は、1〜20mmであることが好ましく、特に5〜10mmであることが好ましい。補助シート20Aの幅が1mm未満であると、後述する粘着剤はみ出し抑制効果を十分に得ることができず、また積層シート1Aを巻取体にしたときに補助シート20Aが崩れ易くなる。一方、補助シート20Aの幅が20mmを超えると、不必要に材料を要することとなり、不経済である。
【0034】
溝30Aの幅は、1〜10mmであることが好ましく、特に2〜5mmであることが好ましい。溝30Aの幅が1mm未満であると、粘着シート10Aの粘着剤層3Aおよび/または補助シート20Aの粘着剤層3Aから粘着剤がはみ出したときに、両者が接着してしまうおそれがある。一方、溝30Aの幅が10mmを超えると、積層シート1Aを巻取体にしたときに当該巻取体が崩れ易く、また巻取体の幅が不要に大きくなり、不必要材料を要することになり不経済である。
【0035】
なお、粘着シート10Aは、剥離シート2Aから剥離され、そのままの形状で、または目的の形状にカットされて使用される。
【0036】
上記積層シート1Aを、図4に示すようにロール状に巻き取って巻取体としたとき、粘着シート10Aおよび補助シート20Aには、それぞれ巻圧がかかる。しかし、粘着シート10Aだけが存在する場合よりも、本実施形態のように補助シート20Aが存在することで、粘着シート10Aにかかる巻圧は小さくなり、したがって、粘着シート10Aの粘着剤層3Aから粘着剤がはみ出すことが抑制される。これにより、はみ出した粘着剤の転着・脱落に起因する剥離シート2Aの剥離不良や粘着シート10Aのエア噛みの頻度が低減する。
【0037】
また、仮に粘着シート10Aの粘着剤層3Aから粘着剤がはみ出したとしても、溝30Aおよび補助シート20Aの存在により、その粘着剤は剥離シート2Aの幅方向両縁部に至ることはなく、溝30Aにおける剥離シート2Aの剥離面上に留まるため、粘着シート10Aの粘着剤層3Aと剥離シート2Aとが接着してしまうことはない。そのため、剥離シート2Aから粘着シート10Aを剥離するときに、粘着シート10Aの粘着剤層3Aが剥離シート2A側に残り、粘着シート10Aの基材4Aだけが剥がれてしまうことが防止される。
【0038】
得られた積層シート1Aにおける粘着シート10Aは、例えば、光ディスク記録層のカバーシートやPDA等のディスプレイ用のフィルムの他、偏光板やリニアスケール等の光学部品にも使用することができる(以下同様)。
【0039】
〔第2の実施形態〕
図5(a)〜(f)は本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【0040】
本実施形態に係る積層シート1Bを製造するには、最初に図5(a)〜(b)に示すように、長尺の剥離シート2Bの剥離面に、粘着剤層3Bを形成する。
【0041】
剥離シート2Bとしては、上記第1の実施形態における剥離シート2Aと同様のものを使用することができる。一方、本実施形態における粘着剤層3Bを構成する粘着剤としては、エネルギー硬化性材料からなる粘着剤を使用する。
【0042】
エネルギー硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率は、粘着剤層3Bの粘着性を鑑みると、1×10Pa以上、1×10Pa未満であることが好ましい。一方、エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率は1×10Pa以上であることが好ましく、1×10Pa以上であることがより好ましい。エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が上記の範囲であると、後述する粘着剤はみ出し抑制効果が優れたものとなる。なお、硬化前および硬化後の貯蔵弾性率の測定温度は、積層シート1Bの巻取時における温度、すなわち室温であるものとする。
【0043】
上記エネルギー線硬化性材料としては、粘着シート10Bの使用目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有するポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするものなどが挙げられる。
【0044】
エネルギー線硬化性を有するポリマーとしては、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するアクリル酸エステル共重合体を使用することができる。そのようなアクリル酸エステル共重合体としては、例えば、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量(Mw)100,000以上のエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体を使用することができる。
【0045】
エネルギー線硬化性を有しないポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。
【0046】
エネルギー線硬化性の多官能モノマー/多官能オリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
粘着剤層3Bの形成方法は、上記第1の実施形態における粘着剤層3Aの形成方法と同様である。
【0048】
次に、上記第1の実施形態と同様にして、図5(c)〜(e)に示すように、粘着剤層3Bの上に基材4Bを積層し、基材4Bおよび粘着剤層3Bをカットして、剥離シート2Bの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シート20Bと、剥離シートの剥離面上、補助シート20Bと離れて補助シート20Bの間に位置する長尺の粘着シート10Bと、補助シート20Bおよび粘着シート10Bの間の不要部40Bとに分割し、そして不要部40Bを除去して溝30Bを形成する。
【0049】
基材4Bとしては、上記第1の実施形態における基材4Aと同様のものを使用することができる。
【0050】
最後に、図5(f)に示すように、補助シート20Bのみにエネルギー線を照射して、補助シート20Bの粘着剤層3Bを構成するエネルギー線硬化性材料を硬化させ、本実施形態に係る積層シート1Bを得る。
【0051】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0052】
エネルギー線の照射は、エネルギー線をスポット照射することのできる装置(例えばスポットUV照射装置)を治具にセットし、積層シート1Bを長手方向に移動させながら行うことができ、このような方法によって、積層シート1Bの補助シート20Bに連続的にエネルギー線を照射することができる。
【0053】
また、エネルギー線は、積層シート1Bの厚さ方向に照射するのが好ましい。エネルギー線を積層シート1Bの端縁部から積層シート1Bの中心方向に向けて照射すると、そのエネルギー線が粘着シート10Bまで達し、粘着シート10Bの粘着剤層3Bが硬化してしまうおそれがあるが、上記のようにエネルギー線を照射することによって、かかる問題を回避することができる。
【0054】
本実施形態に係る積層シート1Bは、長尺の剥離シート2Bと、剥離シート2Bの剥離面上、幅方向両側部に設けられた長尺の補助シート20Bと、剥離シート2Bの剥離面上、補助シート20Bの間に設けられた長尺の粘着シート10Bとを備えており、粘着シート10Bと補助シート20Bとの間には溝30Bが設けられている(図5(f))。粘着シート10Bおよび補助シート20Bは、それぞれ基材4Bと粘着剤層3Bとから構成され、補助シート20Bの粘着剤層3Bは硬化している。
【0055】
本実施形態に係る積層シート1Bにおいて、溝30Bは、当該積層シート1Bの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する直線状となっており、粘着シート10Bの幅方向両側端は、直線状となっている(図2および図3参照)。
【0056】
上記積層シート1Bを、ロール状に巻き取って巻取体としたとき(図4参照)、粘着シート10Bおよび補助シート20Bには、それぞれ巻圧がかかる。しかし、粘着シート10Bだけが存在する場合よりも、本実施形態のように補助シート20Bが存在することで、粘着シート10Bにかかる巻圧は小さくなる。また、補助シート20Bの粘着剤層3Bは硬化しており、巻圧によって圧縮され難い。そのため、補助シート20Bは巻取体において支持部材として働き、それによって粘着シート10Bにかかる巻圧はより小さくなる。したがって、粘着シート10Bの粘着剤層3Bから粘着剤がはみ出すことが効果的に抑制される。これにより、はみ出した粘着剤の転着・脱落に起因する剥離シート2Bの剥離不良や粘着シート10Bのエア噛みの頻度が低減する。
【0057】
また、仮に粘着シート10Bの粘着剤層3Bから粘着剤がはみ出したとしても、溝30Bおよび補助シート20Bの存在により、その粘着剤は剥離シート2Bの幅方向両縁部に至ることはなく、溝30Bにおける剥離シート2Bの剥離面上に留まるため、粘着シート10Bの粘着剤層3Bと剥離シート2Bとが接着してしまうことはない。そのため、剥離シート2Bから粘着シート10Bを剥離するときに、粘着シート10Bの粘着剤層3Bが剥離シート2B側に残り、粘着シート10Bの基材4Bだけが剥がれてしまうことが防止される。
【0058】
なお、本実施形態では、好ましい態様として、粘着剤層3Bの形成工程において、粘着剤層3Bをエネルギー線硬化性材料によって均一に形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、エネルギー線硬化性材料は、粘着剤層3Bの少なくとも補助シート20Bに対応する部分を構成すれば足り、粘着剤層3Bの粘着シート10B(および不要部40B)に対応する部分は、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤によって構成してもよい。
【0059】
〔第3の実施形態〕
図6(a)〜(g)は本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図であり、図7は同実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【0060】
本実施形態に係る積層シート1Cを製造するには、上記第1の実施形態と同様にして、図6(a)〜(c)に示すように、長尺の剥離シート2Cの剥離面に粘着剤層3Cを形成し、形成された粘着剤層3Cの上に基材4Cを積層する。
【0061】
剥離シート2C、粘着剤層3Cおよび基材4Cの材料としては、上記第1の実施形態における剥離シート2A、粘着剤層3Aおよび基材4Aの材料と同様のものを使用することができる。
【0062】
次に、図6(d)に示すように、基材4Cの上に保護シート5Cを積層する。保護シート5Cを構成する材料は、特に限定されるものではないが、樹脂フィルム、紙、金属箔等からなる基材に、粘着剤層を積層したものが好ましく用いられる。
【0063】
保護シート5Cの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂またはそれら樹脂を架橋したものからなる樹脂フィルム、それら樹脂フィルムの積層体を使用するのが好ましい。
【0064】
保護シート5Cの粘着剤層を構成する粘着剤は、通常使用されるものであればよく、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤等のいずれであってもよい。ただし、後段で粘着シート10C上の保護シート5Cを剥離することを考慮すると、再剥離性の粘着剤であることが好ましい。
【0065】
保護シート5Cの厚さは、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜75μmであるのが好ましい。保護シート5Cの厚さが5μm以上であると、保護シート5Cによる優れた粘着剤はみ出し抑制効果を十分に享受することができる。一方、保護シート5Cの厚さが100μmを超えると、積層シート1Cを巻き取ったときに、得られる巻取体の径(容積)が大きくなり過ぎる。
【0066】
次に、上記第1の実施形態と同様にして、図6(e)に示すように、保護シート5C、基材4Cおよび粘着剤層3Cをカットして、剥離シート2Cの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シート20Cと、剥離シートの剥離面上、補助シート20Cと離れて補助シート20Cの間に位置する長尺の保護シート付粘着シート10C’と、補助シート20Cおよび保護シート付粘着シート10C’の間の不要部40Cとに分割する。
【0067】
そして、図6(f)〜(g)に示すように、不要部40Cを除去して溝30Cを形成するとともに、保護シート付粘着シート10C’から保護シート5Cを剥離除去して粘着シート10Cとし、本実施形態に係る積層シート1Cを得る。
【0068】
本実施形態に係る積層シート1Cは、図7に示すように、長尺の剥離シート2Cと、剥離シート2Cの剥離面上、幅方向両側部に設けられた長尺の補助シート20Cと、剥離シート2Cの剥離面上、補助シート20Cの間に設けられた長尺の粘着シート10Cとを備えており、粘着シート10Cと補助シート20Cとの間には溝30Cが設けられている。粘着シート10Cは、基材4Cと粘着剤層3Cとから構成されており、補助シート20Cは、保護シート5C(保護材の一種)と基材4Cと粘着剤層3Cとから構成されている。すなわち、補助シート20Cは、粘着シート10Cよりも保護シート5Cの分だけ厚くなっている。
【0069】
本実施形態に係る積層シート1Cにおいて、図7に示すように、溝30Cは、当該積層シート1Cの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する直線状となっており、粘着シート10Cの幅方向両側端は、直線状となっている。
【0070】
上記積層シート1Cを、ロール状に巻き取って巻取体としたとき(図4参照)、粘着シート10Cよりも厚い補助シート20Cに局所的に巻圧がかかり、粘着シート10Cにはほとんど巻圧はかからない。したがって、粘着シート10Cの粘着剤層3Cから粘着剤がはみ出すことが効果的に抑制される。これにより、はみ出した粘着剤の転着・脱落に起因する剥離シート2Cの剥離不良や粘着シート10Cのエア噛みの頻度が低減する。
【0071】
また、仮に粘着シート10Cの粘着剤層3Cから粘着剤がはみ出したとしても、溝30Cおよび補助シート20Cの存在により、その粘着剤は剥離シート2Cの幅方向両縁部に至ることはなく、溝30Cにおける剥離シート2Cの剥離面上に留まるため、粘着シート10Cの粘着剤層3Cと剥離シート2Cとが接着してしまうことはない。そのため、剥離シート2Cから粘着シート10Cを剥離するときに、粘着シート10Cの粘着剤層3Cが剥離シート2C側に残り、粘着シート10Cの基材4Cだけが剥がれてしまうことが防止される。
【0072】
なお、本実施形態では、補助シート20Cの保護シート5Cは上記のようにして形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記のような保護シート5Cを使用せず、任意の段階で、補助シート部分における基材4C上に帯状の保護シートを積層してもよいし、保護材としてインクを印刷したり、塗料を塗布したりしてもよい。
【0073】
インク・塗料の種類や、印刷・塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等のビヒクルを含むインク・塗料を、平版、凸版等の方法で印刷したり、スプレー、はけ塗り等の方法で塗布することができる。かかるインクや塗料により保護材を形成する場合であっても、その乾燥膜厚は、保護シート5Cの場合と同様に、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜75μmであるのが好ましい。
【0074】
また、図8に示す積層シート1C’のように、上記のような帯状の保護シートまたは保護材(以下「保護材5C’」という。)は、剥離シート2Cの裏面において、基材4Cと粘着剤層3Cとからなる補助シート20C’に対応する部分に設けられてもよい。この積層シート1C’をロール状に巻き取って巻取体としたとき、保護材5C’は、その下に位置する補助シート20C’に重なる。したがって、かかる積層シート1C’では、上記積層シート1Cにおける保護シート5Cと基材4Cと粘着剤層3Cとからなる補助シート20Cによる効果と同様の効果が奏される。
【0075】
〔第4の実施形態〕
図9(a)〜(h)は本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【0076】
本実施形態に係る積層シート1Dを製造するには、上記第2の実施形態と同様にして、図9(a)〜(c)に示すように、長尺の剥離シート2Dの剥離面に粘着剤層3Dを形成し、形成された粘着剤層3Dの上に基材4Dを積層する。
【0077】
剥離シート2D、粘着剤層3Dおよび基材4Dの材料としては、上記第2の実施形態における剥離シート2B、粘着剤層3Bおよび基材4Bの材料と同様のものを使用することができる。すなわち、本実施形態では、粘着剤層3Dを構成する粘着剤として、エネルギー硬化性材料からなる粘着剤を使用する。
【0078】
次に、上記第3の実施形態と同様にして、図9(d)〜(g)に示すように、基材4Dの上に保護シート5Dを積層した後、保護シート5D、基材4Dおよび粘着剤層3Dをカットして、剥離シート2Dの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シート20Dと、剥離シートの剥離面上、補助シート20Dと離れて補助シート20Dの間に位置する長尺の保護シート付粘着シート10D’と、補助シート20Dおよび保護シート付粘着シート10D’の間の不要部40Dとに分割する。そして不要部40Dを除去して溝30Dを形成するとともに、保護シート付粘着シート10D’から保護シート5Dを剥離除去する。
【0079】
最後に、上記第2の実施形態と同様にして、図9(h)に示すように、補助シート20Dのみにエネルギー線を照射して、補助シート20Dの粘着剤層3Dを構成するエネルギー線硬化性材料を硬化させ、本実施形態に係る積層シート1Dを得る。
【0080】
本実施形態に係る積層シート1Dは、長尺の剥離シート2Dと、剥離シート2Dの剥離面上、幅方向両側部に設けられた長尺の補助シート20Dと、剥離シート2Dの剥離面上、補助シート20Dの間に設けられた長尺の粘着シート10Dとを備えており、粘着シート10Dと補助シート20Dとの間には溝30Dが設けられている(図9(h))。粘着シート10Dは、基材4Dと粘着剤層3Dとから構成されており、補助シート20Dは、保護シート5D(保護材の一種)と基材4Dと粘着剤層3Dとから構成され、補助シート20Dの粘着剤層3Dは硬化している。
【0081】
本実施形態に係る積層シート1Dにおいて、溝30Dは、当該積層シート1Dの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する直線状となっており、粘着シート10Dの幅方向両側端は、直線状となっている(図7参照)。
【0082】
上記積層シート1Dを、ロール状に巻き取って巻取体としたとき(図4参照)、粘着シート10Dよりも厚い補助シート20Dに局所的に巻圧がかかるが、補助シート20Dの粘着剤層3Dは硬化しており、巻圧によって圧縮され難い。そのため、補助シート20Dは巻取体において支持部材として働き、それにより、粘着シート10Dにはほとんど巻圧はかからない。したがって、粘着シート10Dの粘着剤層3Dから粘着剤がはみ出すことが効果的に防止される。これにより、はみ出した粘着剤の転着・脱落に起因する剥離シート2Dの剥離不良や粘着シート10Dのエア噛みの問題が防止される。
【0083】
また、仮に粘着シート10Dの粘着剤層3Dから粘着剤がはみ出したとしても、溝30Dおよび補助シート20Dの存在により、その粘着剤は剥離シート2Dの幅方向両縁部に至ることはなく、溝30Dにおける剥離シート2Dの剥離面上に留まるため、粘着シート10Dの粘着剤層3Dと剥離シート2Dとが接着してしまうことはない。そのため、剥離シート2Dから粘着シート10Dを剥離するときに、粘着シート10Dの粘着剤層3Dが剥離シート2D側に残り、粘着シート10Dの基材4Dだけが剥がれてしまうことが防止される。
【0084】
なお、本実施形態においても、上記のような保護シート5Dを使用せず、任意の段階で、補助シート部分における基材4D上に帯状の保護シートを積層してもよいし、保護材としてインクを印刷したり、塗料を塗布したりしてもよい。また、そのような帯状の保護シートまたは保護材を、剥離シート2Dの裏面において、基材4Dと粘着剤層3Dとからなる補助シートに対応する部分に設けてもよい。
【0085】
〔その他の実施形態〕
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0086】
例えば、上記実施形態に係る積層シート1A〜1Dにおいて、溝30A〜30Dは直線状でなくてもよいし、粘着シート10A〜10Dの幅方向両側端は、直線状でなくてもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0088】
〔実施例1〕
アクリル酸n−ブチル97質量部とアクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部とを共重合した共重合体100質量部に対して、架橋剤としてポリイソシアネート(武田薬品工業株式会社製,タケネートD−140N)を1質量部添加し、さらに溶媒としてトルエン200質量部を加えたものを粘着剤の塗布剤とした。
【0089】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した軽剥離型剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、上記粘着剤の塗布剤を乾燥後の厚みが25μmとなるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層に、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した重剥離型剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50T124,厚さ:50μm)の剥離処理面を圧着し、幅150mm×長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0090】
得られた長尺の積層体について、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディ910)を用いて連続的に打ち抜きを行い、重剥離型剥離シートおよび粘着剤層を図1(d)のように分割し、不要部40Aを剥離除去して、粘着シート10A、補助シート20Aおよび溝30A(溝幅:3mm,補助シート幅:8mm)を形成し、長尺の積層シート1Aを得た(図1(e)参照)。この積層シート1Aをロール状に巻き取り、巻取体とした。
【0091】
〔実施例2〕
ブチルアクリレート62質量部と、メチルメタクリレート10質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量部とを酢酸エチル中で反応させて、官能基としてヒドロキシル基を有するアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分濃度:40%)を得た。さらに、そのアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液250質量部に、酢酸エチル100質量部と、置換基としてイソシアナート基を有する2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート30質量部(アクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対し80.5当量)と、触媒としてのジブチルスズラウリレート0.12質量部とを添加し、窒素雰囲気下、室温で24度時間反応させて、エネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体を得た。このアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、600,000であった。
【0092】
得られたエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対し、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよびオリゴマーからなる組成物(大日精化製,セイカビーム14−29B(NPI))を固形分として100質量部加え、さらに光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン10.0質量部と、架橋剤としてイソシアナート系架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製,コロネートL)3.3質量部とを加え、固形分濃度を40質量%に調整し、エネルギー線硬化性の粘着剤の塗布剤とした。
【0093】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した軽剥離型剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、上記粘着剤の塗布剤を乾燥後の厚みが25μmとなるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した重剥離型剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50T124,厚さ:50μm)の剥離処理面を圧着し、幅150mm×長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0094】
得られた長尺の積層体について、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディ910)を用いて連続的に打ち抜きを行い、重剥離型剥離シートおよび粘着剤層を図5(d)のように分割し、不要部40Bを剥離除去して、粘着シート10B、補助シート20Bおよび溝30B(溝幅:3mm,補助シート幅8mm)を形成し、長尺の積層シートを得た(図5(e)参照)。
【0095】
上記積層シートに形成された補助シート20Bの外側両端における各端部から2mm幅の部分に、スポットUV照射装置(HOYA−CANDEO−OPTRONICS社製,EXECURE3000)を使用して紫外線の照射を行い、その部分における粘着剤層を硬化させ、長尺の積層シート1Bを得た(図5(f)参照)。この積層シート1Bをロール状に巻き取り、巻取体とした。紫外線は積層体の厚さ方向(重剥離型剥離シート側から軽剥離型剥離シート側)に照射し、その照射量は400mJ/cmであった。
【0096】
なお、上記エネルギー線硬化性の粘着剤の硬化前の貯蔵弾性率(25℃)は7.42×10Paであり、硬化後の貯蔵弾性率(25℃)は1.62×10Paであった。
【0097】
〔実施例3〕
実施例1で得られた積層体の重剥離型剥離シート上に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けてなる保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)をラミネートし、幅150mm×長さ100mの長尺の保護シート付き積層体を得た。
【0098】
得られた長尺の積層シートについて、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディ910)を用いて連続的に打ち抜きを行い、保護シート、重剥離型剥離シートおよび粘着剤層を図6(e)のように分割し、不要部40Cと保護シート10C’部分を剥離除去して、粘着シート10C、補助シート20Cおよび溝30C(溝幅:3mm,補助シート幅:8mm)を形成し、長尺の保護シート付き積層シート1Cを得た(図6(g)参照)。この積層シート1Cをロール状に巻き取り、巻取体とした。
【0099】
〔実施例4〕
実施例2で得られた積層体の重剥離型剥離シート上に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けてなる保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)をラミネートし、幅150mm×長さ100mの長尺の保護シート付き積層体を得た。
【0100】
得られた長尺の積層体について、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディ910)を用いて連続的に打ち抜きを行い、保護シート、重剥離型剥離シートおよび粘着剤層を図9(e)のように分割し、不要部40Dと保護シート10D’部分を剥離除去して、粘着シート10D、補助シート20Dおよび溝30D(溝幅:3mm、補助シート幅8mm)を形成し、長尺の保護シート付き積層シートを得た(図9(g)参照)。
【0101】
上記積層シートに形成された補助シート20Dの外側両端における各端部から2mm幅の部分に、スポットUV照射装置(HOYA−CANDEO−OPTRONICS社製,EXECURE3000)を使用して紫外線の照射を行い、その部分における粘着剤層を硬化させ、長尺の積層シート1Dを得た(図9(h)参照)。この積層シート1Dをロール状に巻き取り、巻取体とした。紫外線は積層体の厚さ方向(重剥離型剥離シート側から軽剥離型剥離シート側)に照射し、その照射量は400mJ/cmであった。
【0102】
なお、粘着剤層を構成するエネルギー線硬化性の粘着剤の硬化前の貯蔵弾性率(25℃)は7.42×10Paであり、硬化後の貯蔵弾性率(25℃)は1.62×10Paであった。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1において打ち抜き工程を無くした以外は実施例1と同様の操作により、長尺の積層シートの巻取体を得た。
【0104】
〔比較例2〕
実施例2において打ち抜き工程およびスポットUV照射工程を無くした以外は、実施例2と同様の操作により長尺の積層シートの巻取体を得た。
【0105】
〔試験例1〕(粘着剤のはみ出し量測定)
実施例1〜4および比較例1〜2で得られた巻取体について、巻取体の表層部分を0m部、巻取体の芯部を100m部とし、巻取体の0m部,20m部,40m部,60m部,80m部,100m部からそれぞれ1mのサンプルを採取した。各採取サンプルの粘着シートの両端(ロールを上側から巻き出し、手前から奥へ引き出した際の右側と左側)における粘着剤のはみ出し量(はみ出し長さ;μm)の最大値を、光学顕微鏡(KEYENCE社製,VHX100,倍率245倍)を使用して読み取った。その読み取った測定値に基づいて、平均はみ出し量を以下の式により算出した。結果を表1に示す。
平均はみ出し量(μm)=測定値の和/測定サンプル数
【0106】
〔試験例2〕(剥がれ頻度の測定)
試験例1で得られた長さ1mのサンプルから軽剥離型剥離シートを剥離し、粘着シートの粘着剤層と基材である剥離シート(重剥離型剥離シート)との剥がれが発生する頻度(剥がれ頻度)について、1サンプルにつき剥がれが発生した場合を1回、剥がれが発生しなかった場合を0回とした剥がれ発生数から、以下の式を用いて百分率で算出した。結果を表1に示す。
剥がれ頻度(%)=(剥がれ発生数/測定サンプル数)×100
【0107】
【表1】

【0108】
表1から明らかなように、実施例で得られた巻取体においては、粘着剤のはみ出し量が有意に少なく、また、それにより粘着シートにおける粘着剤層と基材層との剥がれも発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、光ディスク、ディスプレイ等のカバー材や、偏光板、位相差板、楕用偏光板、リニアスケール等の光学部品などに使用される長尺の粘着シートを巻取体にする場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【図2】同実施形態に係る積層シートの平面図である。
【図3】同実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図4】同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【図7】同実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図8】他の実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B,1C,1C’,1D…積層シート
2A,2B,2C,2D…剥離シート
3A,3B,3C,3D…粘着剤層
4A,4B,4C,4D…基材
5C…保護シート(保護材)
5C’…保護材
10A,10B,10C,10D…粘着シート
10C’,10D’…保護シート付粘着シート
20A,20B,20C,20C’,20D…補助シート
30A,30B,30C,30D…溝
40A,40B,40C,40D…不要部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の剥離シートと、
前記剥離シートの剥離面上に幅方向両側部に設けられた長尺の補助シートと、
前記剥離シートの剥離面上に前記補助シートの間に設けられた長尺の粘着シートと
を備えた積層シートであって、
前記粘着シートは、基材と粘着剤層とを備えており、
前記粘着シートと前記補助シートとの間には溝が設けられている
ことを特徴とする積層シート。
【請求項2】
さらに保護材が、前記補助シートの上、または、前記剥離シートの裏面において前記補助シートに対応する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記溝は、前記積層シートの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する形状となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層シートを巻き取ってなる積層シートの巻取体。
【請求項5】
長尺の剥離シートと、粘着剤層と、基材とをその順で積層し、
得られた積層体をハーフカットして、前記剥離シートの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シートと、前記剥離シートの剥離面上、前記補助シートと離れて前記補助シートの間に位置する長尺の粘着シートと、前記補助シートおよび前記粘着シートの間の不要部とに分割し、
前記不要部を除去して、前記補助シートと前記粘着シートとの間に溝を形成する
ことを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項6】
任意の段階で、前記補助シートの基材上、または前記剥離シートの裏面の前記補助シートに対応する部分に、保護材を設けることを特徴とする請求項5に記載の積層シートの製造方法。
【請求項7】
長尺の剥離シートと、粘着剤層と、基材と、保護シートとをその順で積層し、
得られた積層体をハーフカットして、前記剥離シートの剥離面上、幅方向両側部に位置する長尺の補助シートと、前記剥離シートの剥離面上、前記補助シートと離れて前記補助シートの間に位置する長尺の粘着シートと、前記補助シートおよび前記粘着シートの間の不要部とに分割し、
前記不要部を除去して、前記補助シートと前記粘着シートとの間に溝を形成するとともに、前記粘着シートの保護シートを除去する
ことを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記ハーフカットを、前記溝が前記積層シートの長手方向にわたって実質的に同一の幅を有する形状となるように行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の積層シートの製造方法によって積層シートを製造した後、得られた積層シートを巻き取ることを特徴とする積層シートの巻取体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−160869(P2009−160869A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2049(P2008−2049)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】