説明

積層フィルム、及び積層フィルムに用いる表面処理されたポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの表面処理方法

【課題】 本発明では皮膚への刺激性が強い水酸化ナトリウムや水酸化カリウムより安全な表面処理剤を用いて、接着剤層との接着性を向上させたポリイミドフィルム及びその表面処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリイミドフィルムと接着剤層とを積層した積層フィルムであり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルムがケイ酸化合物含有溶液によって表面処理されていることを特徴とする積層フィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩溶液で表面処理されたポリイミドフィルムと接着剤層とを積層した積層フィルムであってポリイミドフィルムと接着剤層との接着強度が良好な積層フィルム、及びこれら積層フィルムに用いるケイ酸塩溶液で表面処理されたポリイミドフィルム、及び接着剤層との接着性に優れるポリイミドフィルムの表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは耐熱性及び絶縁性が優れ、各種の配線基板の基板材料として用いられている。
ポリイミドフィルムに接着剤層を積層した積層フィルムは、リードフレーム固定テープ、多層基板の層間接着シート、配線基板の絶縁カバー材として使用されている。
また、ポリイミドフィルムと銅箔とが接着剤層を介して積層された銅箔積層ポリイミドフィルムは、TAB、FPC、COFなどの配線基材やベース基材として使用されている。
【0003】
ポリイミドフィルム表面の接着性などを改質する目的で、高濃度アルカリ水溶液やヒドラジン溶液を用いる方法、ガスを用いてエッチングする方法などが開示されている。
特許文献1には、ベンゼン環を二つ有する芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから得られた第1の芳香族ポリアミック酸溶液と、ベンゼン環を一つ有する芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから得られた第2の芳香族ポリアミック酸溶液を、芳香族ポリアミック酸の重量比が9:1〜6:4になる割合で混合し、流延・薄膜状にしてイミド化したフィルムをアルカリ性溶液で処理することを特徴とする粗面化ポリイミドフィルムの製造法が開示されている。
特許文献2には、ポリイミド系接着剤によって接着させられるポリイミドフィルムであって、過マンガン酸塩含むアルカリ性水溶液によって表面処理されたポリイミドフィルムが開示されている。
特許文献3には、ポリイミド樹脂を有する被めっき物へ無電解めっきを施す前処理として、1種以上のアルカリ金属化合物及び1種以上の第一級アミノアルコールとを含有する水溶液に被めっき物を浸漬する工程、脱脂洗浄を行う工程、触媒付与工程及び触媒活性化工程を含む無電解めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法が開示され、アルカリ金属化合物としてケイ酸化合物が記載されている。
【特許文献1】特開平6−313055号公報
【特許文献2】特開2007−9186号公報
【特許文献3】特開2005−120407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来接着剤層との接着性を向上させるポリイミドフィルムの表面改質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの強アルカリ水溶液を用いて行われていた。そのため本発明では皮膚への刺激性が強い水酸化ナトリウムや水酸化カリウムより安全な表面処理剤を用いて、接着剤層との接着性を向上させたポリイミドフィルム及びその表面処理方法を提供することを目的とする。
特に連続してキャスト法で製造した厚みの薄いポリイミドフィルムでは、接着剤層との接着性の高いものが得られにくく、接着性の向上が求められている。本発明では安全な表面処理剤を用いて、接着剤層との接着性を向上させた厚みの薄いポリイミドフィルム及びその表面処理方法を提供することを目的とする。
表面処理方法により表面処理された接着剤層との接着性を向上させたポリイミドフィルムと接着剤層とを積層した積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、ポリイミドフィルムと接着剤層とを積層した積層フィルムであり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルムがケイ酸化合物含有溶液によって表面処理されていることを特徴とする積層フィルムに関する。
本発明の第ニは、本発明の第一の積層フィルムに用いるケイ酸化合物含有溶液によって表面処理されたポリイミドフィルムに関する。
本発明の第三は、本発明の第一の積層フィルムの接着剤層に、さらに金属層又は樹脂層が積層されていることを特徴とする積層フィルムに関する。
さらに本発明の第四は、接着剤層との積層に用いるポリイミドフィルムの表面処理方法であり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルム表面をケイ酸塩含有溶液に浸漬させること、接着剤層を積層する側のポリイミドフィルム表面にケイ酸塩含有溶液を塗布、吹き付け或いは噴霧させることを特徴とするポリイミドフィルムの表面処理方法に関する。
【0006】
本発明の第一乃至本発明の第四の好ましい態様を以下に示す。これら態様は任意に複数組み合わせることが出来る。
1)ケイ酸塩がメタケイ酸塩であること。
2)接着剤層は、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含むこと。
3)ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリイミドフィルムであること。
4)ポリイミドフィルムの厚みが3〜30μmであること、さらに厚みが3〜30μmで連続製膜したポリイミドフィルムであること。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、安全で簡便な方法で、ポリイミドフィルム表面を改質処理し、接着剤層との接着性に優れるポリイミドフィルムを得ることができ、ポリイミドフィルムと接着剤層との接着性に優れる積層フィルムを得ることが出来る。
本発明の積層フィルムは、薄い厚みの連続生産したポリイミドフィルムなどの薄い厚みのポリイミドフィルムを用いて製造できる。
本発明のポリイミドフィルムの表面処理方法は、ポリイミドフィルム表面を改質処理し、接着剤層との接着性に優れるポリイミドフィルムを得ることができ、薄い厚みのポリイミドフィルムにも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の積層フィルムは、ポリイミドフィルムと接着剤層とを直接積層した積層フィルムであり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルムがケイ酸化合物含有溶液によって表面処理されていることを特徴とする積層フィルムである。
【0009】
ポリイミドフィルムとしては、テトラカルボン酸成分とジアミンなどとから、ポリイミド或いはポリイミド前駆体を介して、公知の方法で製造することが出来る。
ポリイミドフィルムの製法の一例として、
1)テトラカルボン酸成分とジアミンなどとからポリイミドの溶液を製造し、それをキャストし、溶媒を除去する方法、
2)テトラカルボン酸成分とジアミンなどとからポリイミドの溶液を製造し、それをキャストし、溶媒の除去と加熱とを同時或いは逐次に行う方法、
3)ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の溶液を製造し、それをキャストし、その後溶媒を除去し化学的或いは熱的にイミド化する方法、
4)ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の溶液を製造し、それをキャストし、その後溶媒の除去と化学的或いは熱的にイミド化とを同時に或いは逐次にする方法などで、製造することができる。
【0010】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、好ましくはベンゼン環を1〜3個有する芳香族ジアミン、さらに好ましくはベンゼン環を1〜2個有する芳香族ジアミンが好ましい。
ジアミンとしては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【化1】

(但し、一般式(1)において、Yは一般式(2)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化2】

(但し、一般式(2)において、R、R、R及びRは、単結合、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−CH−,−C(CH−及び−C(CF−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−H,−F,−Cl,−Br,−I,−CN,−OCH,−OH,−COOH,−CH,−Cまたは−CFを示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
中でも、好ましいジアミンとしては、下記一般式(1’)で表されるものが挙げられ、さらに好ましいジアミンとしては、下記一般式(1”)で表されるものが挙げられる。
【化3】

(但し、一般式(1’)において、Yは一般式(2’)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化4】

(但し、一般式(2’)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
は、−O−または−S−を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−Hまたは−CHを示す。
及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
【化5】

(但し、一般式(1”)において、Yは一般式(2”)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化6】

(但し、一般式(2”)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M及びM’〜M’は、−H、−OCH、−CHまたは−Clを示す。
〜M及びM’〜M’は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
ジアミンは、一般式(1)に示すジアミン、好ましくは一般式(1’)に示すジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示すジアミンが主成分として用いられ、一般式(1)に示すジアミン、好ましくは一般式(1’)に示すジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示すジアミンを50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
【0011】
ジアミンの具体例として、
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、
などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0012】
テトラカルボン酸成分としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸が得られるテトラカルボン酸二無水物及びこれらのエステル化合物が好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【化7】

(但し、一般式(3)において、Xは一般式(4)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【化8】

(但し、一般式(4)において、Rは、一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。)
【化9】

中でも、好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(3’)で表されるものが挙げられる。
【化10】

(但し、一般式(3’)において、Xは一般式(4’)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【化11】

【0013】
テトラカルボン酸二無水物は、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物、好ましくは一般式(3’)に示すテトラカルボン酸二無水物が主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物以外の公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物として、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
【0014】
テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0015】
中でもポリイミドフィルムは、
1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下単にBPDAと略記することもある。)とパラフェニレンジアミン(以下単にPPDと略記することもある。)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下単にDADEと略記することもある。)とを主成分として含む成分から製造されるポリイミド(但し、50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のBPDAを含む酸成分、50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のPPDを含むジアミン成分であることが好ましい)、
2)ピロメリット酸二無水物(以下単にPMDAと略記することもある。)、あるいはBPDAとPMDAとの組み合わせである芳香族テトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミンあるいはビフェニルジアミンなどの芳香族ジアミンとを主成分として含む成分から製造されるポリイミド(但し、芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、あるいはPPD/DADEが90/10〜10/90である芳香族ジアミン、あるいはトリジン(オルト体、メタ体)が好ましい。この場合、BPDA/PMDAは0/100〜90/10であることが好ましい)、
3)ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを主成分として含む成分から製造されるポリイミド(但し、DADE/PPDは90/10〜10/90であることが好ましい)、
などが好ましい。
【0016】
本発明では市販の各種の膜厚みのポリイミドフィルムに適用することが出来る。市販のポリイミドフィルムとしては、宇部興産製商品名ユーピレックス(S、SN、Rなど)、東レ・デュポン製商品名カプトン(H、V、ENなど)、株式会社カネカ製商品名アピカル(HP、NPIなど)を挙げることが出来る。
【0017】
ポリイミドフィルムは公知の方法で製造することができ、例えば
1)ポリアミック酸などのポリイミド前駆体溶液を薄膜状に流延し、加熱乾燥し自己支持性フィルムを製造し、さらに自己支持性フィルムの両端をテンターなどを用いて固定した後、加熱、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、
2)溶媒可溶性に優れるポリイミドの場合、ポリイミド溶液を薄膜状に流延し、加熱乾燥し、その後必要に応じてフィルムの両端をテンターなどを用いて固定した後、加熱乾燥してポリイミドフィルムを製造する方法、などを挙げることが出来る。
ポリイミド前駆体溶液或いはポリイミド溶液は、必要であればイミド化触媒、有機リン化合物や無機微粒子を加えてもよい。有機リン化合物は支持体からの剥離に有用である。
【0018】
ポリイミド前駆体の合成は、有機溶媒中で、略等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをランダム重合またはブロック重合することによって達成される。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミド前駆体を合成しておき、各ポリイミド前駆体溶液を一緒にした後反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリイミド前駆体溶液はそのまま、あるいは必要であれば溶媒を除去または加えて、自己支持性フィルムの製造に使用することができる。
【0019】
ポリイミドの合成は、有機溶媒中で、略等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをランダム重合またはブロック重合することによって達成される。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミド溶液を合成しておき、各ポリイミド溶液を一緒にした後反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリイミド溶液はそのまま、あるいは必要であれば溶媒を除去または加えて、ポリイミドフィルムの製造に使用することができる。
【0020】
ポリイミド前駆体溶液或いはポリイミド溶液の有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−クロルフェノールなどのフェノール系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリイミド前駆体溶液には、必要に応じてイミド化触媒、脱水助剤、有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子などを加えてもよい。
ポリイミド溶液には、必要に応じて有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子などを加えてもよい。
【0022】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01−2倍当量、特に0.02−1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上するので好ましい。
【0023】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0024】
脱水助剤としては、公知のポリイミド前駆体をイミドにするための脱水を助けるものであればよく、例えばピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、イソキノリンなどを用いることが出来る。
【0025】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0026】
ポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムは、上記のようなポリイミド前駆体の有機溶媒溶液、あるいはこれにイミド化触媒、脱水助剤、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えたポリイミド前駆体溶液組成物を支持体上に流延塗布し、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度であり、温度100〜180℃、好ましくは100〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃で2〜60分間、好ましくは2〜30分間、より好ましくは2〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間程度加熱して製造される。
ポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体を8〜30質量%程度、8〜25質量%程度含むものが好ましい。
【0027】
支持体としては、平滑な基材を用いることが好ましく、例えばステンレス基板、ステンレスベルトなどが使用される。
【0028】
自己支持性フィルムは、その加熱減量が20〜40質量%の範囲にあること、さらに加熱減量が20〜40質量%の範囲で且つイミド化率が8〜40%の範囲にあることが好ましい。
なお、上記の自己支持性フィルムの加熱減量とは、測定対象のフィルムを420℃で20分間乾燥し、乾燥前の重量W1と乾燥後の重量W2とから数式1に従って算出した値である。
【数1】

また、上記の自己支持性フィルムのイミド化率は、IR(ATR)で測定し、フィルムとフルキュア品との振動帯ピーク面積の比を利用して、イミド化率を算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。またイミド化率測定に関し、特開平9−316199号公報に記載のカールフィッシャー水分計を用いる手法もある。
【0029】
本発明においては、ポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムは、上記に記載の熱イミド化の他に、化学イミド化、或いは熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造されるものを用いることができる。
【0030】
本発明においては、自己支持性フィルム或いはポリイミド溶液のキャスト状薄膜を加熱処理してポリイミドフィルムを得ることができる。
加熱処理は、最初に約100〜400℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100〜170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170〜220℃の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220〜400℃の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理することが好ましい。必要であれば、400〜550℃の高い温度で第四次高温加熱処理してもよい。また、250℃以上の連続加熱処理においては、ピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の固化フィルムの長手方向に直角の方向の両端縁を固定して加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の種々の装置を使用して行うことができる。
【0031】
本発明においては、ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、厚さが150μm以下、好ましくは3〜120μmとすることが出来、特に厚さ30μm以下、さらには15μm以下、さらには5〜10μmのポリイミドフィルムの製造に本発明を適用した場合、より顕著に本発明の効果を得ることができる。
本発明においては、ポリイミドフィルムは、コロナ放電処理、低温プラズマ放電処理あるいは常圧プラズマ放電処理、化学エッチングなどによる表面処理をして用いることができる。
【0032】
接着剤層は、ポリイミドフィルムの片面或いは両面に通常未硬化状態或いは半硬化状態で設けられ、銅箔などの金属箔とはりあわせて積層体が得られるものであればよく、例えば金属箔を積層後、加熱、加圧或いは紫外線などの方法で硬化(架橋もふくむ)される化学構造を有するものを適宜選択して用いることが出来る。
接着剤層は、公知の半導体集積回路を実装する際に用いられる、TABやCOFなどのテープ状基板、ICなどの半導体部材の接続用基板、リードフレーム固定テープ、多層基板の層間接着シート等、これらにさらに銅箔を積層するための公知の接着剤を挙げることができる。
接着剤層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、ポリアミド樹脂などから選ばれる少なくとも1種の熱硬化性などの硬化性を有する樹脂成分を含有するものを挙げることが出来る。
接着剤層としては、硬化後の接着剤層の厚みは用いる用途により適宜選択すればよく、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0033】
接着剤層は、接着剤或いは接着剤含有溶液をポリイミドフィルム上に塗工或いは吹き付けなどを行った後、溶媒などの除去や加熱や乾燥などをして、ポリイミドフィルムの片面或いは両面に通常未硬化状態或いは半硬化状態で形成させることができる。
また接着剤層は、接着剤或いは接着剤含有溶液を剥離可能な保護フィルム上に塗工或いは吹き付けなどを行った後、溶媒などの除去や加熱や乾燥などをして、フィルムの片面に通常未硬化状態或いは半硬化状態で形成させることができる。さらにこの保護フィルムの接着剤層と、ポリイミドフィルムとを積層して、保護フィルム付の接着剤層付きポリイミドフィルムを得ることができる。
保護フィルムは、接着剤層と容易に剥離可能なフィルムであればよく、例えばシリコーンやフッ素化合物などの剥離処理を施したポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの樹脂フィルム、さらに剥離加工した紙、不織布などを挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂は1分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されない。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化クレゾールノボラック、脂環式エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0035】
アクリル樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、アクリル酸などが共重合されたアクリル樹脂を用いることができる。また、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリレートまたはメタクリレートでエポキシ変性したアクリル樹脂を用いることができる。
【0036】
接着剤層は、必要に応じて公知の熱硬化樹脂の硬化剤或いは硬化促進剤などを添加することができる。
接着剤層は、必要に応じて公知の熱硬化樹脂の硬化抑制剤を添加することができる。
接着剤層は、本発明の特性を損なわない範囲で酸化防止剤、熱可塑性樹脂などの有機成分や無機成分を添加することができる。
【0037】
ケイ酸化合物含有溶液は、ケイ酸化合物が溶解した溶液、アルカリ溶液、水溶液或いはアルカリ水溶液などの溶液を挙げることが出来る。
ケイ酸化合物としては、オルトケイ酸及びこれらの化合物、メタケイ酸及びこれらの化合物或いはメタ二ケイ酸及びこれらの化合物、或いはこれらの成分を2種以上含む化合物を挙げることが出来、水、アルカリ水溶液、アルカリ溶液など或いはこれらを加温したものなどに溶解可能な化合物を用いることが出来、特にメタケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウムなどのケイ酸アルカリなどのメタケイ酸化合物を含むことが好ましい。用いるケイ酸化合物は水和物であってもよい。
ケイ酸化合物含有溶液に含まれるケイ酸化合物の濃度は、用途により適宜選択することができ、好ましくは溶液100質量部に対して、ケイ酸化合物が0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは1〜20質量部含まれることが好ましい。
【0038】
ポリイミドフィルムの表面のケイ酸化合物含有溶液による表面処理方法としては、公知の手段を用いることが出来、特に限定されない。
表面処理方法としては、
1)ポリイミドフィルムをバッチ式の槽などに入れられたケイ酸化合物含有溶液に浸漬する方法、
2)ポリイミドフィルムにケイ酸化合物含有溶液をスプレー或いはシャワーなどによって噴霧または吹きつける方法、
3)ポリイミドフィルム表面にケイ酸化合物含有溶液を塗布する方法などが挙げられる。 また、搬送可能なロール・トゥ・ロール方式で連続的に処理してもよく、個片をバッチ処理してもよい。
【0039】
ケイ酸化合物含有溶液を用いてポリイミドフィルムの表面を処理するとき、用いる目的によりケイ酸化合物含有溶液に含まれるケイ酸化合物の濃度や溶液の温度、処理の時間は適宜選択すればよい。
ケイ酸化合物含有溶液を用いてポリイミドフィルムの表面を処理するとき、ケイ酸化合物含有溶液の温度は5℃〜80℃の範囲、さらに10℃〜60℃の範囲とすることがさらに好ましい。
処理時間は、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば0.1分〜20分程度、好ましくは0.2分〜15分低度、さらに好ましくは0.3分〜10分程度であり、ケイ酸化合物含有溶液の温度或いはケイ酸化合物の濃度を上げることにより、処理能力が向上して処理時間を短縮することができる。
【0040】
積層フィルムは、積層フィルムの接着剤層に、さらに金属層又は樹脂層を積層して3層以上の積層フィルムを製造することができる。
積層フィルムは、積層フィルムの接着剤層に、さらに金属層又は樹脂層を積層する方法としては公知の方法を用いることができ、加圧、加熱、加圧加熱などにより積層することができる。
【0041】
金属層とは、金属の種類は特に限定されないが、圧延或いは電解などの銅、銅合金、ステンレス、鉄、チタン、アルミニウム、ニッケル、シリコンなどの配線部材やICチップなどのチップ部材などを挙げることが出来、さらにこれらを2層以上組み合わせたものを用いることができる。
金属層の厚みは、特に限定されないが、金属箔や板として利用できる厚みであればよく、好ましくは2μm〜5000μm、より好ましくは3μm〜2000μm、さらに好ましくは5μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(評価方法)
1)接着強度の測定:JIS・C6471−8.1に従って、50mm/分の剥離速度で90°ピールを測定し、接着強度とした。接着強度の値は測定数5又は6の平均値とした。なお、フィルム製造時にポリイミド前駆体溶液を金属支持体上に流延したときの空気側の面をA面、金属支持体側の面をB面とした。表1に接着強度測定の結果を示す。
【0044】
(比較例1)
ポリイミドフィルムとして宇部興産株式会社製商品名ユーピレックスSN(厚み7.5μm)のA面側に、株式会社有沢製作所製カバーレイCVA0525KAを180℃、3MPaで30分プレスしてはり合わせて、A面側積層体を得た。
ポリイミドフィルムとして宇部興産株式会社製商品名ユーピレックスSN(厚み7.5μm)のB面側に、株式会社有沢製作所製カバーレイCVA0525KAを180℃、3MPaで30分プレスしてはり合わせて、B面側積層体を得た。
得られた2種類の積層体の接着強度を測定し、結果を表1に示す。
【0045】
(実施例1)
メタ珪酸ナトリウム九水和物(和光純薬工業株式会社製)50gを純水950gに溶かして5質量%のメタ珪酸ナトリウム九水和物水溶液を調製し、2N硫酸100mLを純水で1Lに希釈して0.2N硫酸を調製した。
宇部興産株式会社製商品名ユーピレックスSN(厚み7.5μm)を23℃で5質量%メタ珪酸ナトリウム九水和物水溶液に5分浸漬した後、純水で洗浄した。さらに、この処理フィルムを23℃で0.2N硫酸に2分浸漬した後、純水で洗浄した。得られたフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下で乾燥した。メタ珪酸ナトリウム処理した日から7日後に比較例1と同様にしてA面側或いはB面側にカバーレイを貼り合せ、A面側積層体とB面側積層体の2種類の積層体を得、これら積層体の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2〜6)
メタ珪酸ナトリウム処理した日から14日後、19日後、28日後、61日後、94日後にカバーレイを貼り合せた以外は、実施例1と同様にして接着強度を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例7)
メタ珪酸ナトリウム九水和物150gを純水850gに溶解して15質量%のメタ珪酸ナトリウム九水和物水溶液として用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを処理した。メタ珪酸ナトリウム九水和物溶液を処理した日から1日後に実施例1と同様にしてカバーレイを貼り合せ、接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例2)
比較例1と同様にして、宇部興産株式会社製商品名ユーピレックスSN(厚み7.5μm)のA面側或いはB面側に、デュポン株式会社製アクリル系接着剤(商品名パイララックスLF0100)、日鉱金属株式会社製圧延銅箔(BHY−13H−T、18μm厚)を重ね合わせ、プレスにて、180℃、9MPaで5分圧着、さらに、180℃で60分熱処理して、A面側の3層積層板とB面側の3層積層体の2種類の積層体を得た。これら2種類の積層体について、JIS・C6471−8.1に従って、50mm/分の剥離速度で90°ピールを測定し、それを接着強度とした。結果を表2に示す。
【0050】
(実施例8)
宇部興産株式会社製商品名ユーピレックスSN(厚み7.5μm)を23℃で5質量%メタ珪酸ナトリウム九水和物水溶液に5分浸漬した後、純水で洗浄した。さらに、このフィルムを23℃で0.2N硫酸に2分浸漬した後、純水で洗浄した。得られたフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下で乾燥した。メタ珪酸ナトリウム溶液で処理した日から7日後に比較例2と同様にして2種類の3層積層板(A面側、B面側)を作製し、接着強度を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例9〜12)
メタ珪酸ナトリウム溶液で処理した日から14日後、19日後、28日後、61日後に積層体を作製した以外は、実施例8と同様にして接着強度を評価した。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例13)
メタ珪酸ナトリウム九水和物150gを純水850gに溶解して15質量%水溶液として用いた以外は実施例8と同様にしてメタ珪酸ナトリウム九水和物溶液で処理したポリイミドフィルムを製造した。
メタ珪酸ナトリウム溶液で処理した日から1日後に実施例8と同様にして2種類の3層積層板(A面側、B面側)を作製し、接着強度を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例1〜7と比較例1、或いは実施例8〜13と比較例2を比較すると、メタ珪酸ナトリウム九水和物溶液で処理したポリイミドフィルムは、A面及びB面ともに、未処理よりも接着強度が向上した。またメタ珪酸ナトリウム九水和物溶液処理したポリイミドフィルムは処理93日経過或いは61日経過しても接着性は変わらず、長期にわたり接着性が維持されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムと接着剤層とを積層した積層フィルムであり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルムがケイ酸塩含有溶液によって表面処理されていることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
ケイ酸塩がメタケイ酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
接着剤層は、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
ポリイミドフィルムは、厚みが3〜30μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
ポリイミドフィルムは、厚みが3〜30μmで連続製膜したポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムに用いるケイ酸塩含有溶液によって表面処理されたポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムの接着剤層に、さらに金属層又は樹脂層が積層されていることを特徴とする積層フィルム。
【請求項9】
接着剤層との積層に用いるポリイミドフィルムの表面処理方法であり、
接着剤層を積層する側のポリイミドフィルム表面をケイ酸塩含有溶液に浸漬させること、接着剤層を積層する側のポリイミドフィルム表面にケイ酸塩含有溶液を塗布、吹き付け或いは噴霧させることを特徴とするポリイミドフィルムの表面処理方法。
【請求項10】
接着剤層は、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項9に記載のポリイミドフィルムの表面処理方法。
【請求項11】
ポリイミドフィルムの厚みが3〜30μmであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のポリイミドフィルムの表面処理方法。
【請求項12】
ポリイミドフィルムは、厚みが3〜30μmで連続製膜したポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のポリイミドフィルムの表面処理方法。
【請求項13】
ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの表面処理方法。

【公開番号】特開2009−226658(P2009−226658A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72699(P2008−72699)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】