説明

積層フィルム

【課題】透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるフィルムの提供を課題としている。
【解決手段】本発明のフィルムは、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、1〜20g/10分の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が、145〜170℃の範囲にあり、特定の要件を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜80重量%と、特定の要件を満たす室温n
−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜20重量%とから構成されるプロピレン・エチレ
ンブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルム、特にホモプロピレン単独重合体フィルム,プロピレン系ランダム共重合体フィルムは、剛性,耐熱性に優れている反面、低温衝撃強度が低い欠点を有している。この欠点を解消するため、エチレン・α−オレフィン共重合体からなるエラストマー成分の添加、あるいはプロピレン系ブロック共重合体を使用することは、良く知られている。しかしながら、エラストマー成分を添加するとヒートシール強度が低下し、プロピレン系ブロック共重合体を用いると透明性が低下する問題があった。
【0003】
また、包装の高速化に伴い、ポリプロピレン系フィルムの低温ヒートシール性が要望されており、低温衝撃強度の改良と同様に、エチレン・α−オレフィン共重合体からなるエラストマー成分の添加が知られている。しかしながら、ヒートシール強度の低下とコスト面の問題があり、低温シール性と低温衝撃強度に優れたフィルムが市場より要望されている。これらの要望を満たすフィルムを得るために、これまで種々のフィルムが提案されているが(例えば、特許文献1〜3参照)、透明性、シール強度、耐ブロッキング性、耐熱性および耐衝撃性の全ての要求に対して、バランスよく優れたフィルムは得られていない。
【特許文献1】特開2004−358683号公報
【特許文献2】特開2004−51675号公報
【特許文献3】特開2007−45049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるフィルムの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)を積層フィルムに用いることで、透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランスに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に記載した事項により特定される。
本発明のフィルムは、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、1〜20g/10分の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が、145〜170℃の範囲にあり、下記(1)〜(3)を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜80重量%と、下記(4)〜(6)を満たす
室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜20重量%とから構成されるプロピレン・
エチレンブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする。
(1)DinsolのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から求めた分子量
分布(Mw/Mn)が3.5以下
(2)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(3)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.
2モル%以下
(4)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(5)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜3.0dl/g
(6)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%
また、本発明のフィルムは、上記記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)を含むヒートシール層に、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、1〜20g/10分の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が、145〜170℃の範囲にあり、下記(i)〜(iii)を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜70重量%と、下記(iv)〜(vi)を満たす室温n
−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜30重量%とから構成されるプロピレン・エチレ
ンブロック共重合体(B)を含む少なくとも一つ以上の中間層が積層されてなることを特徴とする。
(i)DinsolのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(ii)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(iii)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル%以下
(iv)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(v)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が2.0〜3.5dl/g
(vi)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が25モル%を超え60モル%以下。
【0007】
また、本発明の積層フィルムは、上記記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むヒートシール層と、上記記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を含む少なくとも一つの中間層と、上記記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むラミネート層が積層されてなることが好ましい。また、各層の層比が、ヒートシール層10〜30%、中間層40〜80%およびラミネート層10〜30%である(ただし、ヒートシール層、中間層およびラミネート層の合計を100%とする)ことが好ましい。
【0008】
また、本発明のフィルムは、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)が、メタロセン触媒の存在下で重合されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルムは、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)を用いることで、透明性、シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるため、常温から冷凍保存されるような食品の包装体、たとえば冷凍食品包装、サニタリー詰替パウチ包装、あるいは穀物や野菜等の重量物包装等に好適に用いられる。
【0010】
また、本発明のフィルムは、分子量分布が狭いことから、低分子量成分が少なく衛生性に優れるため、包装した食品の味覚が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のフィルムについて詳細に説明する。
本発明のフィルムに用いる、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および(B)について説明する。
【0012】
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)>
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が1〜20g/10分、好ましくは3〜10g/10分、融点が145〜170℃、好ましくは15
6〜165℃の範囲にあり、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜80重量%
と、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜20重量%とから構成される。ここで
、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)におけるメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)、融点、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)の重量分率、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)の重量分率は、適宜変えることができる。なお、本発明において融点は、示差走査熱量計(DSC、パーキンエ
ルマー社製)を用いて測定した。
【0013】
そして、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)において、前記Dinsol
要件(1)〜(3)を満たし、さらに前記Dsolが要件(4)〜(6)を満たす。
(1)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下、好まし
くは1.5〜3.3
(2)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(3)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が
0.2モル%以下
(4)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下、好ましく
は1.5〜3.3
(5)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜3.0dl/g
、好ましくは1.8〜2.8dl/g
(6)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)>
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が1〜20g/10分、好ましくは3〜10g/10分、融点が145〜170℃、好ましくは145〜170℃、さらに好ましくは156〜165℃の範囲にあり、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜70重量%と、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜30重量%とから構成される。ここで、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)におけるメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)、融点、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)の重量分率、室温n−デカンに可溶
な部分(Dsol)の重量分率は、適宜変えることができる。
【0014】
そして、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)において、前記Dinsol
要件(i)〜(iii)を満たし、さらに前記Dsolが要件(iv)〜(vi)を満たす。
(i)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下、好ましくは1.5〜3.3
(ii)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(iii)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル%以下
(iv)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下、好ましく
は1.5〜3.3
(v)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が2.0〜3.5dl/g、好ましくは2.0〜3.0dl/g
(vi)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が25モル%を超え60モル%以
下、好ましくは30〜55モル%。
【0015】
以下、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および(B)が備える上記要件(1)〜(6)および(i)〜(vi)について詳細に説明する。
〔要件(1)および(i)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下、好ましくは1.5〜3.3、さらに好ましくは1.8〜2.8である。このように該共重合体に含有される室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn
)を上記範囲とするためには、触媒として後述するようなメタロセン触媒を用いるのが好ましい。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、低分子量成分が増える為、本発明の積層フィルムからのブリードアウトが発生することもある。
【0016】
〔要件(2)および(ii)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モ
ル%未満、好ましくは1.5モル%未満、さらに好ましくは0.5モル%未満である。Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%以上であると、フィルムの透明性
が低下することがある。
【0017】
〔要件(3)および(iii)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,
3−挿入結合量との和が0.2モル%以下、好ましくは0.1モル%以下である。Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル%より
も多い場合、プロピレンとエチレンとの共重合性が低下し、その結果、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のプロピレン・エチレン共重合体ゴムの組成分布が広くなる為、
低温での耐衝撃性が低下するなどの不具合が発生することがある。
【0018】
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)135℃デカリン中における極限粘度[η]は、通常1.5〜3
.5dl/g、好ましくは1.8〜3.0dl/gである。
【0019】
〔要件(4)および(iv)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)
が3.5以下、好ましくは1.5〜3.3である。このように該共重合体の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)について、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述
のように狭くするためには、触媒として後述するようなメタロセン触媒を用いるのが好適である。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、Dsolに低分子量プロピレン・エチレン共重合体ゴムが増えるため、耐衝撃性の低下、加熱処理後の透明性悪化、積層フィルム保管時のブロッキング等の不具合が生ずる場合がある。
【0020】
〔要件(5)および(v)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[η]が、1.5〜
3.0dl/g、好ましくは1.8〜2.8dl/gである。本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol
の135℃デカリン中における極限粘度[η]が、2.0〜3.5dl/g、好ましくは2.0〜3.0dl/gである。プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)の極限粘度[η]が前記範囲内であると、
透明性と衝撃性点で好ましい。また、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃
デカリン中における極限粘度[η]が3.5dl/gよりも高いプロピレン・エチレンブロック共重合体は、超高分子量乃至高エチレン量プロピレン・エチレン共重合体ゴムを微量に含む場合があり、得られるフィルムの耐衝撃性の低下やフィッシュアイ等が発生するなどの外観不具合が生ずることがある。
【0021】
〔要件(6)および(vi)〕
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%で
ある。また、本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が25モル
%を超え60モル%以下、好ましくは30〜55モル%である。プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する
骨格の含有量が25モル%よりも低いと、プロピレン・エチレンブロック共重合体の耐衝撃性が低下する。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が、60モル%よりも高い
と透明性が低下する。
【0022】
なお、本発明の積層フィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および(B)の室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量を
適正な範囲内とすることにより、透明性が低下しにくくなるとともに、耐衝撃性の低下が生じにくくなる。
【0023】
本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)は、好適にはメタロセン触媒の存在下に、第一重合工程([工程1])でプロピレン単独重合体もしくはプロピレンと少量のエチレンとからなるプロピレン共重合体を製造後、第二重合工程([工程2])でプロピレンとエチレンとを共重合してプロピレン・エチレン共重合体ゴムを製造して得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。
【0024】
本発明において使用されるメタロセン触媒としては、メタロセン化合物、ならびに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒であり、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、本願出願人による国際出願(WO01/27124号パンフレット)に例示されている以下に示すような架橋性メタロセン化合物が用いられる。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式[I]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10
11、R12、R13、R14は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。このような炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N-メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0027】
また、一般式[I]において、置換基R5〜R12は隣接する置換基と相互に結合して環
を形成してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基等を挙げることができる。
【0028】
上記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環に置換するR1、R2、R3、R4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR3が炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0029】
上記一般式[I]において、フルオレン環に置換するR5〜R12は炭素原子数1〜20
の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。置換基R5〜R12は、隣接する置換基が相互に結合
して環を形成してもよい。
【0030】
上記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは周期律表第14族元素であることが好ましく、より好ましくは炭素、ケイ素、ゲルマニウムであり、さらに好ましくは炭素原子である。このYに置換するR13、R14は炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましい。これらは相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくは、R14は炭素数6〜20のアリール(a
ryl)基である。アリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化
水素基の置換した飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基を挙げることができる。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このような置換基としては、フルオレニリデン基、10−ヒドロアントラセニリデン基、ジベンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
【0031】
また、上記一般式[I]で表されるメタロセン化合物は、R1、R4、R5またはR12
ら選ばれる置換基と架橋部のR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよい。
上記一般式[I]において、Mは好ましくは周期律表第4族遷移金属であり、さらに好ましくはTi、Zr、Hfである。また、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子
または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上のときは、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、炭化水素基の具体例としては前掲と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
【0032】
このような架橋メタロセン化合物としては、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ
フェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル-シクロペンタジエニル)(2,
7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル-シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブ
チルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(フェニル)メチレン(3−tert−ブチル−5−メチル-シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロベン
ゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、[3−(1’,1’,4’,4’,7’,7’,10’,10’−オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3−トリメチル−5−tert−ブチル−1,2,3,3a−テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド(下記式[II]参照)などが好ましく挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
なお、本発明において使用されるメタロセン触媒において、上記一般式[I]で表わされる第4族遷移金属化合物とともに用いられる、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体からなり、これらについては、本出願人による前記公報(WO01/27124号パンフレット)あるいは特開平11−315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0035】
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)は、二つ以
上の反応装置を直列に連結した重合装置を用い、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。
【0036】
[工程1]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンを単独重合もしくはプロピレンと少量のエチレンとを共重合させる。[工程1]では、プロピレンを単独重合もしくはプロピレンに対してエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程1]で製造されるプロピレン系重合体におけるDinsol中のエチレン
に由来する骨格の含有量を3モル%未満、好ましくは1.5モル%未満、さらに好ましくは0.5モル%未満とすることができる。
【0037】
[工程2]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程2]では、プロピレンに対するエチレンのフィード量を多くすることによって、[工程2]で製造されるプロピレン・エチレン共重合ゴムがDsolの主成分となるようにする。
【0038】
このようにすることにより、Dinsolに係る要件(1)〜(3)および(i)〜(iii)
は、[工程1]における重合条件の調整によって、Dsolに係る要件(4)〜(6)およ
び(iv)〜(vi)は、[工程2]における重合条件の調整によって、満足させることが可能となる。
【0039】
また、本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)が満足すべき物性については、使用するメタロセン触媒の化学構造により決定されることが多い。具体的には、要件(1)および(i)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、要件(3)および(iii)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和、要件(4)および(iv)DsolのGPCから求めた分子
量分布(Mw/Mn)、およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の融点については、主として、使用するメタロセン触媒を適切に選択することによって、本発明における要件を満足するように調節することができる。本発明において好ましく用いられるメタロセン触媒については前述の通りである。
【0040】
さらに、要件(2)および(ii)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量を3モ
ル%未満、好ましくは1.5モル%未満、さらに好ましくは0.5モル%未満とするためには、[工程1]において、プロピレンを単独重合することが好ましく、プロピレンとエチレンとを共重合させる場合は、エチレンのフィード量を少量とすることが好ましい。要件(5)および(v)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]については、[工程2]における水素などの分子量調節剤のフィード量などによって調節することが可能である。要件(6)および(vi)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については
、[工程2]におけるエチレンのフィード量などによって調節することが可能である。さらに、[工程1]と[工程2]とで製造する重合体の量比を調整することによって、DinsolとDsolとの組成比、およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)を適切に調節することが可能である。
【0041】
また、本発明において用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)は、前記方法の[工程1]で製造されるプロピレン系重合体と、前記方法の[工程2]で製造されるプロピレン・エチレン共重合体ゴムを、メタロセン化合物含有触媒の存在下で個別に製造した後に、これら物理的手段を用いてブレンドして製造してもよい。
【0042】
<エラストマー(E)>
本発明のフィルムには、耐衝撃性、透明性、柔軟性等の特性を付与する目的で、エラス
トマー(E)を添加することができる。
【0043】
エラストマー(E)としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(E−b)、水素添加ブロック共重体(E−c)、プロピレン・α−オレフィン共重合体(E−d)、その他の弾性重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0044】
本発明の積層フィルムに占めるエラストマー(E)の含有量は、付与される特性により異なるが、通常0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(E−a)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(E−a)においては、エチレンから誘導される構成単位とα−オレフィンから誘導される構成単位とのモル比(エチレンから誘導される構成単位/α−オレフィンから誘導される構成単位)は、通常は95/5〜15/85、好ましくは80/20〜25/75である。また、このエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−a)についてのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)は、通常は0.1g/10分以上、好ましくは0.5〜30g/10分の範囲内にあ
る。
【0045】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(E−b)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとのランダム共重合体ゴムである。上記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、前記と同じものが挙げられる。非共役ポリエチレンとしては、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロピリデン-5-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの非環状ジエン; 1,4-ヘキサジエ
ン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジ
エン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,7-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタ
ジエンなどの鎖状の非共役ジエン; 2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネンなどのトリ
エン等が挙げられる。これらの中では、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましく用いられる。エチレン・α−オレフィン・非共役ポ
リエンランダム共重合体(E−b)は、エチレンから誘導される構成単位が通常は94.9〜30モル%、好ましくは89.5〜40モル%であり、α−オレフィンから誘導される構成単位が通常は5〜45モル%、好ましくは10〜40モル%であり、非共役ポリエンから誘導される構成単位が通常は0.1〜25モル%、好ましくは0.5〜20モル%である。ただし、本発明では、エチレンから誘導される構成単位と、α−オレフィンから誘導される構成単位と、非共役ポリエンから誘導される構成単位との合計を100モル%とする。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(E−b)についてのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)は、0.05g/10分以上、好ましくは0.1〜30g/10分の範囲内にある。エチレン
・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(E−b)の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0046】
水素添加ブロック共重合体(E−c)は、ブロックの形態が下式(a)または(b)で表されるブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加率が通常は90モル%以上、好ましくは95モル%以上の水素添加ブロック共重合体である。
【0047】
【化3】

【0048】
上記式(a)または式(b)におけるXで示される重合ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。式(a)または(b)のYで示される重合ブロックを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。これらは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。nは通常は1〜5の整数、好ましくは1または2である。水素添加ブロック共重合体(E−c)の具体的な例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)等のスチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。水素添加前のブロック共重合体は、例えば不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、ブロック共重合を行わせる方法により製造することができる。詳細な製造方法は、例えば特公昭40−23798号公報などに記載されている。水素添加処理は、不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行うことができる。詳細な方法は、例えば特公昭42−8704号公報、同43−6636号公報、同46−20814号公報などに記載されている。共役ジエンモノマーとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2-結合量の割合は通常は20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%である。水素添加ブロック共重合体(E−c)としては市販品を使用することもできる。具体的なものとしては、クレイトンG1657(登録商標)(シェル化学(株)製)、セプトン2004(登録商標)((株)クラレ製)、
タフテックH1052(登録商標)(旭化成(株)製)などが挙げられる。
【0049】
プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム(E−d)は、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−d)においては、プロピレンから誘導される構成単位とα−オレフィンから誘導される構成単位とのモル比(プロピレンから誘導される構成単位/α−オレフィンから誘導される構成単位)が通常は95/5〜5/95、好ましくは80/15〜20/80である。また、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体ゴム(E−d)にお
いては、2種以上のα−オレフィンを使用しても良く、その1つはエチレンであってもよい。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム(E−d)についてのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が通常は0.1g/10分以上、好ましくは0.5〜30g/10分の範囲内にある。
【0050】
エラストマー(E)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
本発明において上記のエラストマー(E)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)100重量部に対して、通常は0〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲内の量で使用する。
【0051】
<ポリエチレン樹脂(C)>
本発明のフィルムには、耐衝撃性、透明性、柔軟性等の機能を付与する目的で、エラストマー(E)と共に、あるいはエラストマー(E)の代わりにポリエチレン樹脂(C)を
添加してもよい。
【0052】
例えば、透明性の低下を抑えながら耐衝撃性を付与させる場合、メタロセン触媒の存在下で、エチレンとC4以上のα−オレフィンとを共重合させて製造した、密度0.900〜0.930kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレンを添加することが好ましい。
【0053】
その他の例として、高速押出成形性を改良する場合、高圧法ポリエチレンを添加することが望ましい。ここで高圧法ポリエチレンとは、100kg/cm2以上の圧力において、パーオキサイドの存在下に、エチレンをラジカル重合することにより得られる、長鎖分岐を有するポリエチレンである。高圧法ポリエチレンの好ましいメルトフローレート(ASTMD1
238、190℃、荷重2.16kgで測定)は、通常は0.01〜100g/10分、好
ましくは0.1〜10g/10分の範囲内にある。また密度(ASTMD1505)は、
通常は0.900〜0.940g/cm3、好ましくは0.910〜0.930g/cm3の範囲内にある。
【0054】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)と、ポリエチレン樹脂(C
)とを含むフィルムに占めるポリエチレン樹脂(C)の含有量は、付与される特性により
異なるが、通常0〜20重量%、好ましくは3〜10重量部の範囲内にある。ポリエチレン樹脂(C)は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用すること
もできる。
【0055】
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)とエラストマー(E)とポリエチレン樹脂(C)とからなるフィルムの場合、プロピレン・エチレンブロック
共重合体(A)または(B)の量は、付与される特性により異なるが、通常80〜99重量%、好ましくは90〜99重量%の範囲内にある。また、エラストマー(E)とポリエチレン樹脂(C)の合計量は、プロピレン系ブロックランダム共重合体(A)または(B
)100重量部に対して、通常1〜10重量%、好ましくは3〜7重量%である。なお、エラストマーとポリエチレンとの比率は目的に応じて任意に調整することができる。
【0056】
<結晶核剤(D)>
本発明のフィルムには、透明性、耐熱性、成形性改良などのために必要に応じて結晶核剤(D)を添加してもよい。
【0057】
本発明で用いられる結晶核剤(D)の例としては、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトール化合物、有機リン酸エステル系化合物、ロジン酸塩系化合物、C4〜C12の脂肪族ジカルボン酸およびその金属塩などを挙げることができる。
【0058】
これらのうちでは、有機リン酸エステル系化合物が好ましい。有機リン酸エステル系化合物は、次に示す一般式[III]および/または[IV]で表わされる化合物である。
【0059】
【化4】

【0060】
前記の式[III]、[IV]中、R1は、炭素原子数1〜10の2価炭化水素基であり、R2
よびR3は、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であって、R2とR3とは同
じであっても異なっていてもよく、Mは、1〜3価の金属原子であり、nは1〜3の整数であり、mは1または2である。
【0061】
一般式[III]で表わされる有機リン酸エステル系化合物の具体例としては、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エ
チリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-
ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブ
チルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス-(2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル
)フォスフェート)、マグネシウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル)フォスフェート、カリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス
[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニ
ウム-トリス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、およびこれらの二種以上の混合物などを挙げることができる。
【0062】
一般式[IV]で表わされるヒドロキシアルミニウムフォスフェート化合物も使用可能な有機リン酸エステル系化合物であって、特にR2およびR3が共にtert-ブチル基である、一
般式[V]で表わされる化合物が好ましい。
【0063】
【化5】

【0064】
式[V]において、R1は、炭素原子数1〜10の2価炭化水素基であり、mは1または
2である。特に好ましい有機リン酸エステル系化合物は、一般式[VI]で表わされる化合物である。
【0065】
【化6】

【0066】
式[VI]において、R1は、メチレン基またはエチリデン基である。具体的には、ヒドロ
キシアルミニウム-ビス[2,2-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル)フォスフェート]、ま
たはヒドロキシアルミニウム-ビス[2,2-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル)フォスフ
ェート]である。前記ソルビトール系化合物としては、具体的には、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジ
リデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-
ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン
)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(
p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデ
ンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-
クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリ
デン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-ク
ロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデ
ンソルビトールもしくは1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトール等を挙げる
ことができる。特に、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベ
ンジリデン)ソルビトールまたは1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデ
ンソルビトールが好ましい。
【0067】
本発明で結晶核剤(D)として使用可能なC4〜C12の脂肪族ジカルボン酸およびその金属塩としては、具体的には、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、およびこれらのLi塩、Na塩、Mg塩、Ca塩、Ba塩、Al塩などを挙げることができる。また、本発明で結晶核剤(D)として使用可能な芳香族カルボン酸およびその金属塩としては、安息香酸、アリール置換酢酸、芳香族ジカルボン酸およびこれらの周期律表第1〜3族金属塩であり、具体的には、安息香酸、p-イソプロピル安息香酸
、o-第3級ブチル安息香酸、p-第3級ブチル安息香酸、モノフェニル酢酸、ジフェニル酢酸、フェニルジメチル酢酸、フタル酸、およびこれらのLi塩、Na塩、Mg塩、Ca塩、Ba塩、Al塩などを挙げることができる。
【0068】
本発明で用いられる結晶核剤(D)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)100重量部に対して、通常は0.05〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部の割合で添加される。
【0069】
<その他>
必要に応じて、本発明のフィルムには、プロピレン系樹脂(P)を添加してもよい。ここで使用されるプロピレン系樹脂(P)とは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)とは異なるプロピレンの単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を指す。ここでα−オレフィンとは、炭素数4から炭素数20のα−オレフィンを使用することができる。
【0070】
本発明のフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、ビタミン類、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、石油樹脂、ミネラルオイル等の添加物を含んでいてもよい。
【0071】
上記の各成分および必要に応じて各種添加剤を、例えばヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー等の混合機でブレンドした後、一軸乃至二軸の押出機を用いてペレット状とした後、得られたペレットなどを用いたフィルム成形により得られる。
【0072】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、例えば、多層インフレーションフィルム成形法、多層Tダイキャストフィルム成形法、プレス成形法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられ、好ましくは、多層Tダイキャストフィルム成形法である。
【0073】
また、本発明の積層フィルムは、複合フィルムであってもよい。複合フィルムとしては、基材に本発明の積層フィルムがラミネートされたフィルムが挙げられる。基材としては、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、延伸ポリプロピレン等が挙げられる。そして、基材に、本発明の積層フィル
ムをラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
【0074】
<熱融着性フィルム>
本発明では、フィルムに、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)を用いることで、透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度をバランスよく得ることできる。従って、本発明のフィルムは、熱融着性フィルムに好適に用いられる。
【0075】
また、熱融着性フィルムの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
熱融着性フィルムでは、包装体の生産性向上を図る上で、高速製袋性(低温シール性)が要求されているため、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)の融点は、145〜170℃、好ましくは156〜165℃である。特に、融点が146〜156℃の範囲にある熱融着性フィルムは、高い低温衝撃強度およびヒートシール強度を有しつつ、更なる高速製袋性を有するため、好適である。また、融点が170℃を超えると、低温シール性の観点から好ましくなく、また145℃未満では、耐熱性の観点から好ましくない。
【0076】
熱融着性フィルムでは、メルトフローレートは、0.1〜20g/10分、好ましくは3〜10g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあるとき、フィルムの成形加工性の観点から好ましい。
【0077】
本発明の積層フィルムは、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むヒートシール層と、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を含む少なくとも一つの中間層と、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むラミネート層が積層されてなることが好ましい。この積層フィルムの層比は、ヒートシール層が10〜30%、好ましくは20〜30%、中間層が40〜80%、好ましくは50〜70%、ラミネート層が10〜30%、好ましくは15〜20%である(ただし、ヒートシール層、中間層およびラミネート層の合計を100%とする)ことが好ましい。このような積層フィルムは、透明性を維持しつつ、優れた低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度およびヒートシール強度を付与できるため好ましい。従って、このような積層フィルムも、熱融着性フィルムに好適に用いられる。
【0078】
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)または(B)を含む層の融点は、145〜170℃、好ましくは156〜165℃である。特に、融点が146〜156℃の範囲にあるものは、高い低温衝撃強度および低温シール性を有するので好ましい。
【0079】
また、その他の積層フィルムとしては、本発明で用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)を含む層が、3層以上積層されたフィルムなどが好適に用いられる。これらのフィルムの場合、本発明で用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含む層を、ヒートシール層として用いることが望ましい。また、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)をヒートシール層およびラミネート層として使用し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を中間層として使用する三層構成のフィルムの場合、ヒートシール層およびラミネート層として使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、本発明の要件を満足するものであれば、ヒートシール層とラミネート層とが同一であっても異なっていてもよい。また、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)をヒートシール層として使用し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を中間層およびラミネート層として使用する三層構成のフィルムの場合、中間層およびラミネート層として使用するプロピレン・エチレンブ
ロック共重合体(B)は、本発明の要件を満足するものであれば、中間層とラミネート層とが同一であっても異なっていてもよい。さらに、このような積層フィルムも、熱融着性フィルムに好適に用いられる。また、ラミネート層として、メタロセン触媒の存在下で重合されてなるホモポリプロピレンまたはランダムポリプロピレンなどを使用してもよい。
【0080】
本発明の積層フィルムは、透明性、シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるため、常温から冷凍保存されるような食品の包装体、たとえば冷凍食品包装、サニタリー詰替パウチ包装、あるいは穀物や野菜等の重量物包装等に好適に用いられる。また、本発明の積層フィルムは、分子量分布が狭いことから、衛生性に優れるため、包装した食品の味覚が良好となる。
【実施例】
【0081】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性の測定方法は次の通りである。
(m1)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従って測定した。
【0082】
(m2)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで測定し
た第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
【0083】
(測定条件)
第1step : 10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step : 10℃/minで60℃まで降温する。
【0084】
第3step : 10℃/minで240℃まで昇温する。
(m3)室温n-デカン可溶部量(Dsol
最終生成物のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時
間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(以下、n-デカン不溶部:Dinsol)を濾別した。濾液を約3倍量のアセトン中入れ、n-デカン中に溶解していた成
分を析出させた(析出物(A))。析出物(A)とアセトンを濾別し、析出物を乾燥した。なお、濾液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
【0085】
n-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(wt%)=〔析出物(A)重量/サンプル重量〕×100。
(m4)Mw/Mn測定〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)〕
ウォーターズ社製GPC-150C Plusを用い以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞ
れ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼ
ン(和光純薬工業(株))および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株))0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー(株)製を用い、1000≦Mw
≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0086】
(m5)エチレンに由来する骨格の含有量
Dinsol、Dsol中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)を行った。プロピレン、エチレン、α-オレフィンの定量はダイアッド連鎖分布
より求めた。例えば、プロピレン−エチレン共重合体の場合、
【0087】
【数1】

【0088】
を用い、以下の計算式(Eq-1)および(Eq-2)により求めた。
【0089】
【数2】

【0090】
(m6)極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追
加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、
濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0091】
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)。
(m7)2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量の測定
13C−NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、プロピレンの2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量を測定した。
【0092】
(m8)フィルムのヒートシール強度(シール開始温度/最大ヒートシール強度)
JIS K 6781に準じてフィルムのヒートシール強度の測定を行った。なお、引張速度は200mm/min、チャック間距離は80mmである。
【0093】
ヒートシールサンプルは、フィルムを15mm巾の短冊片にサンプリングした。
ヒートシール条件、シール時間を1秒、圧力を0.2MPa・G(MPa・Gはゲージ
圧を意味する。以後、同じ)、シール幅5mmに設定してシールした。シールバーの上部温
度を変動させ、下部を70℃でヒートシールしたフィルムの両端を200mm/minで引張り、最
大強度を測定し、上部温度−ヒートシール強度の関係をプロットした図を作成した。このプロット図よりヒートシール強度が2.94Nになるシール温度をシール開始温度、ヒートシール強度が最大になる強度を最大ヒートシール強度として測定した。
【0094】
(m9)フィルムのインパクト試験
フィルムを5cm×5cmにサンプリングし、所定温度下でインパクトテスター(下から上へハンマーを突きあげる方式)で面衝撃強度を測定した(ハンマーの条件:先端1インチ、3.0J)。
【0095】
(m10)フィルムのヘイズ(HAZE)
ASTM D-1003に準拠して測定した。
(m11)フィルムのブロッキング性
MD方向10cm×TD方向10cmのフィルムのチルロール面どうしを重ね合わせ、50℃の恒温槽に200g/cm2の荷重下で3日間保持する。その後、23℃、湿度50%の室
内にて24時間以上状態調節した後、引張速度200mm/minで剥離させたときの剥離強度を測定し、剥離強度を試験片幅で割った値をブロッキング係数とし、耐ブロッキング性を評価した。ここで、ブロッキング係数が小さいほど、耐ブロッキング性に優れる。
【0096】
[製造例1]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)の製造
(1)固体触媒担体の製造
1リットル枝付フラスコにSiO2300gをサンプリングし、トルエン800mLを
入れ、スラリー化した後、5リットル4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、「MAO」とも記す。)のトルエン溶液(10重量%溶液)を2830mL加え、室温下で30分間攪拌した。1時間かけて110℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで降温した。冷却後、上澄みトルエン液を除去し、再びトルエンを加え、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0097】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5リットルの4つ口フラスコに[3-(1’,1’,4’,4’,7’,7
’,10’,10’-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと前記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を
行った。得られた[3-(1’,1’,4’,4’,7’,7’,10’,10’-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペ
ンタレン)]ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタ
ンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0098】
(3)前重合触媒の製造
前記(2)で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218mL、ヘプ
タン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを1212g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液を除去し、ヘプタンで2回洗浄した。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で4g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0099】
(4)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を1NL/時間、前記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として6.2g/時間、トリエチルア
ルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0100】
得られたスラリーは内容量100リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.09mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0101】
得られたスラリーを内容量2.4リットルの挟み込み管に移送し、ガス化させ、気固分離を行った後、480リットルの気相重合器にプロピレン単独重合体パウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.10(モル比)、水素/エチレン≒0(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。重合後、80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)が得られた。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)の物性を表1に示す。
【0102】
[製造例2]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)の製造
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法でプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)を製造した。
【0103】
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を1NL/時間、製造例1(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として6.2g/時間、トリエチ
ルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0104】
得られたスラリーは内容量100リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.09mol%になるように重合器へ供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0105】
得られたスラリーを内容量2.4リットルの挟み込み管に移送し、ガス化させ、気固分離を行った後、480リットルの気相重合器にプロピレン単独重合体パウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.10(モル比)、水素/エチレン≒0(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.9MPa/Gで重合を行った。重合後、80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)が得られた。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)の物性を表1に示す。
【0106】
[製造例3]プロピレン系ブロック共重合体(B1)の製造
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法でプロピレン系ブロック共重合体(B1)を製造した。
【0107】
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を1NL/時間、製造例1(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として6.2g/時間、トリエチ
ルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0108】
得られたスラリーは内容量100リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.09mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0109】
得られたスラリーを内容量2.4リットルの挟み込み管に移送し、ガス化させ、気固分離を行った後、480リットルの気相重合器にプロピレン単独重合体パウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.20(モル比)、水素/エチレン≒0(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.0MPa/Gで重合を行った。重合後、80℃で真空乾燥し、プロピレン系ブロック共重合体(B1)が得られた。得られたプロピレン系ブロック共重合体(B1)の物性を表1に示す。
【0110】
[製造例4]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)の製造
(1)固体触媒担体の製造
1リットル枝付フラスコにSiO2300gをサンプリングし、トルエン800mLを
入れ、スラリー化した後、5リットル4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、「MAO」とも記す。)のトルエン溶液(10重量%溶液)を2830mL加え、室温下で30分間攪拌した。1時間かけて110℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで降温した。冷却後、上澄みトルエン液を除去し、再びトルエンを加え、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0111】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内で、5リットルの4つ口フラスコにジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウム
ジクロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと前記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、3
0分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシ
クロペンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量
を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0112】
(3)前重合触媒の製造
前記(2)で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218mL、ヘプ
タン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを606g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液を除去し、ヘプタンで2回洗浄した。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で4g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0113】
(4)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を1NL/時間、前記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として10.0g/時間、トリエチル
アルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合を行なった。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0114】
得られたスラリーを内容量100リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.05mol%になるように重合器へ供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0115】
得られたスラリーを内容量2.4リットルの挟み込み管に移送し、ガス化させ、気固分離を行った後、480リットルの気相重合器にプロピレン単独重合体パウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.10(モル比)、水素/エチレン≒0(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。重合後、80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)が得られた。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)の物性を表1に示す。
【0116】
[製造例5]プロピレン系ブロック共重合体(B2)の製造
(1)固体触媒担体の製造
1リットル枝付フラスコにSiO2300gをサンプリングし、トルエン800mLを
入れ、スラリー化した後、5リットル4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、「MAO」とも記す。)のトルエン溶液(10wt%溶液)を2830mL加え、室温下で30分間攪拌した。1時間かけて110℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで降温した。冷却後、上澄みトルエン液を除去し、再びトルエンを加え、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0117】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内で、5リットル4つ口フラスコにジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジ
クロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと前記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペ
ンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.
5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0118】
(3)前重合触媒の製造
前記(2)で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218mL、ヘプ
タン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを606g挿入した後、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去し、ヘプタンで2回洗浄した。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で6g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0119】
(4)本重合
内容量58リットルのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を2NL/時間、前記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として11.0g
/時間、トリエチルアルミニウム2.5ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0120】
得られたスラリーは内容量100リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.02mol%になるように重合器へ供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0121】
得られたスラリーを内容量2.4リットルの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480リットルの気相重合器にプロピレン単独重合体パウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.50(モル比)、水素/エチレン≒0(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.7MPa/Gで重合を行った。重合後、80℃で真空乾燥し、プロピレン系ブロック共重合体(B2)が得られた。得られたプロピレン系ブロック共重合体(B2)の物性を表1に示す。
【0122】
[製造例6]
(1) 固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、n-デカン4420mlおよび2-エチルへキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液に無水フタル酸2
13gを添加し、130℃に加熱して1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
【0123】
こうして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶媒750mlを−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間かけて滴下した。滴下後、得られた混合物の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(以下「DIBP」と記す。)52.2gを添加し、この温度を維持して2時間攪拌を続けた。
【0124】
次いで、熱時濾過で固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再び懸濁させた後、再び110℃の温度で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱時濾過により固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
【0125】
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。
固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%およびDIBPを20重量%の量で含有していた。
【0126】
(2) 予備重合触媒の製造
前記(1)で得られた固体状チタン触媒成分56g、トリエチルアルミニウム8.0g
、ヘプタン80リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに導入し、内温5℃に保ちプロピレンを560g導入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。
【0127】
得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体状チタン触媒成分濃度で0.7g/リットルとなるよう、ヘプタンを加えて調整した。この予備重合触媒は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0128】
(3) 本重合
内容量100リットルの攪拌器付きベッセル重合器に、前記(2)で得られた予備重合
触媒スラリーを固体触媒成分として1.1g/時間、トリエチルアルミニウム4.5g/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン12.5g/時間を連続的に供給し、プロピレンを110kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が、0.8mol%、水素を気
相部の水素濃度が0.65mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.7M
Pa・Gで重合を行った。この反応における触媒をZN系触媒とする。
【0129】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを18kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が、2.4mol%、水素を気相部の水素濃度が1.4mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0130】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系ランダム共重合体(R1)を得た。得られたプロピレン系ランダム共重合体(R1)を、80℃で真空乾燥した。得られたプロピレン系ランダム共重合体(R1)の特性を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
[実施例1]
製造例1で製造されたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1) 100重量部
に対して、熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、熱安定
剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、平均粒子径3μmの合成シリカ0.2重量部、エルカ酸アミド0.15重量部をタンブラーで混合した。その後、ナカタニ機械(株)製二軸押出機(同方向2軸混練
機)を用いて230℃で溶融混練してペレット状のポリプロピレン樹脂組成物(A-1)を調
製し、ヒートシール層用樹脂組成物とした。
【0133】
製造例3で製造されたプロピレン系ブロック共重合体(B1) 100重量部に対して
、熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量
部、エルカ酸アミド0.15重量部をタンブラーで混合した。その後、ナカタニ機械(株)製二軸押出機(同方向2軸混練機)を用いて230℃で溶融混練してペレット状のポリ
プロピレン樹脂組成物(C-2)を調製し、中間層用樹脂組成物とした。
【0134】
製造例1で製造されたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1) 100重量部
に対して、熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、熱安定
剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)登録商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、エルカ酸アミド0.15重量部をタンブラーで混合した。その後、ナカタニ機械(株)製二軸押出機(同方向2軸混練機)を用いて230℃で溶融混練してペレット
状のポリプロピレン樹脂組成物(A-2)を調製し、ラミネート層用樹脂組成物とした。
【0135】
これらのペレット状のポリプロピレン樹脂組成物をSHIモダンマシナリー社製フィードブロック型のTダイ(ダイ幅800mm、リップ開度1.7mm)を備え付けた3種3層キャスト押出機(65mmφ×3)を用いて押出した。押出し条件は、ダイ設定温度250℃、チルロール温度30℃、加工速度50m/分とした。上述のとおりA-1をヒートシ
ール層、C-2を中間層、A-2をラミネート層に使用して3層フィルムを製造した。ヒートシール層、中間層およびラミネート層の厚みの割合は順に20%、60%および20%とした。3層フィルム全体の厚みは40μmであった。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度,シール開始温度,ブロッキング係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0136】
[実施例2]
ヒートシール層に含めるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)を、製造例2で製造されたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)に変更した以外は実施例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、シール開始温度、ブロッキング係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0137】
[実施例3]
中間層に含めるプロピレン系ブロック共重合体(B1)を、製造例5で製造したプロピレン系ブロック共重合体(B2)に変更した以外は実施例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、シール開始温度、ブロッキング係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0138】
[実施例4]
ヒートシール層およびラミネート層に含めるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)を、製造例4で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)に変更し、中間層に含めるプロピレン系ブロック共重合体(B1)を、製造例5で製造したプロピレン系ブロック共重合体(B2)に変更した以外は実施例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、シール開始温度、ブロッキング係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0139】
[実施例5]
ヒートシール層、中間層およびラミネート層の厚みの割合を順に10%、80%および10%と変更した以外は実施例4と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、シール開始温度、ブロッキング係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
[比較例1]
中間層に含めるプロピレン系ブロック共重合体(B1)を、製造例1で製造されたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)に変更した以外は実施例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、シール開始温度、ブロッキング係数を測定した。測定結果を表3に示す。
【0142】
[比較例2]
ヒートシール層、中間層およびラミネート層に含めるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)を、製造例5で製造したプロピレン系ブロック共重合体(B2)に変更した以外は比較例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、耐ブロッキング性を測定した。測定結果を表3に示す。
【0143】
[比較例3]
ヒートシール層、中間層およびラミネート層に含めるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)100重量部を、製造例6で製造されたプロピレン系ランダム共重合体(R1) 80重量部およびエチレン系エラストマー(三井化学(株)製タフマーA−40
85) 20重量部に変更した以外は比較例1と同様にして3層フィルムを製造した。得
られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、耐ブロッキング性を測定した。測定結果を表3に示す。
【0144】
[比較例4]
ヒートシール層、中間層およびラミネート層に含めるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)100重量部を、市販されているレトルト銘柄((株)プライムポリマー製:F−274NP(融点;161℃、MFR;3g/10分)) 90重量部およびエチ
レン系エラストマー(三井化学(株)製タフマーA−4085) 10重量部に変更した
以外は比較例1と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、耐ブロッキング性を測定した。測定結果を表3に示す。
【0145】
[比較例5]
中間層に含めるプロピレン系ランダム共重合体(R1) 80重量部およびエチレン系
エラストマー(三井化学(株)製タフマーA−4085) 20重量部を、市販されてい
るレトルト銘柄((株)プライムポリマー製:F−274NP) 90重量部およびエチレ
ン系エラストマー(三井化学(株)製タフマーA−4085) 10重量部に変更した以
外は比較例3と同様にして3層フィルムを製造した。得られたフィルムのヘイズ(HAZE)、インパクト強度、最大シール強度、耐ブロッキング性を測定した。測定結果を表3に示す。
【0146】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の積層フィルムは、透明性、低温シール性、耐ブロッキング性、低温衝撃強度、およびヒートシール強度のバランス性に優れるため、特に熱融着性フィルムとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、1〜20g/10分の範囲にあり、
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が、145〜170℃の範囲にあり、
下記(1)〜(3)を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜80重量
%と
下記(4)〜(6)を満たす室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜20重量%

から構成されるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むことを特徴とするフィルム;
(1)DinsolのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から求めた分
子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(2)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(3)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が
0.2モル%以下
(4)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(5)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜3.0dl/g
(6)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜25モル%。
【請求項2】
請求項1記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)を含むヒートシール層に、
メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、1〜20g/10分の範囲にあり、
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が、145〜170℃の範囲にあり、
下記(i)〜(iii)を満たす室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜70重量
%と
下記(iv)〜(vi)を満たす室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)10〜30重量%

から構成されるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を含む少なくとも一つ以上の中間層が積層されてなることを特徴とする積層フィルム;
(i)DinsolのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(ii)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が3モル%未満
(iii)Dinsol中のプロピレンの2,1−挿入結合量と1,3−挿入結合量との和が0.2モル%以下
(iv)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(v)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が2.0〜3.5dl/g
(vi)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が25モル%を超え60モル%以
下。
【請求項3】
請求項1記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むヒートシール層、
請求項2記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を含む少なくとも一つの中間層、および
請求項1記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むラミネート層が積層されてなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項4】
各層の層比が、ヒートシール層10〜30%、中間層40〜80%およびラミネート層10〜30%である(ただし、ヒートシール層、中間層およびラミネート層の合計を100%とする)ことを特徴とする請求項3記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)および/または(B)が、メタロセン触媒の存在下で重合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−185237(P2009−185237A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28757(P2008−28757)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】