説明

積層フィルム

【課題】紫外線を遮蔽することができ、それ自体が紫外線に対して長期に安定した耐光性を備え、屋外においても長期にわたって高い耐久性を備える積層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる積層フィルムであり、紫外線吸収剤の波長380nmにおける吸光係数εが2以上であり、積層フィルムの波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下であるとともに、積層フィルムを、121℃、100%RH、2atmの環境に100hr保持したときの伸度保持率が50%以上、かつ200℃にて10分間保持したときの熱収縮率が2%以下であることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を遮蔽することができる、耐光性の積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムは、汎用性が高く幅広い分野、条件下で使用されている。しかし、屋外にて長期間使用されると、水分による加水分解や紫外線による劣化によって、フィルムの機械的強度が低下したり、変色したりする。
加水分解を抑制するためには、ポリマー骨格中に極性基が少なく、かつ結晶性である熱可塑性樹脂を用いることが有効であり、芳香族ポリエステルフィルムは、良好な耐久性を備える。
【0003】
紫外線による劣化を防止するためには、従来から、紫外線吸収剤をフィルム中に練り込むことが検討されている。しかし、練り込みの場合、フィルムの機械的特性はある程度は維持されるが、フィルムの表層から入射した紫外線が紫外線吸収剤に吸収されるまでの部分において、紫外線によるフィルムの劣化は免れない。そこで、紫外線吸収剤を、熱可塑性樹脂フィルムのうえに塗布することで、耐光性を付与することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−096202号公報
【特許文献2】特開2004−351848号公報
【特許文献3】特開2006−326971号公報
【特許文献4】特開2008−024732号公報
【特許文献5】特開平10−329291号公報
【特許文献6】特開2005−015557号公報
【特許文献7】特開2005−120232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高い光線透過率を長期に亘り維持する必要がある用途、特に太陽電池の表面保護フィルムや太陽電池の基材フィルムの用途では、紫外線によるフィルムの白濁や黄変を完全に抑制することが望ましい。機械的強度が優れるため、太陽電池用の部材として、芳香族ポリエステルのフィルムが用いられているが、芳香族ポリエステルは、紫外線への暴露によって、芳香族ポリエステルを構成する芳香族環に望ましくない副反応が起こり、紫外線への暴露の初期から着色が発生する。
【0006】
本発明の目的は、紫外線を遮蔽することができ、それ自体が紫外線に対して長期に安定した耐光性を備え、屋外においても長期にわたって高い耐久性を備える積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる積層フィルムであり、紫外線吸収剤の波長380nmにおける吸光係数εが2以上であり、積層フィルムの波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下であるとともに、積層フィルムを、121℃、100%RH、2atmの環境に100時間保持したときの伸度保持率が50%以上、かつ200℃にて10分間保持したときの熱収縮率が2%以下であることを特徴とする積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線を遮蔽することができ、それ自体が紫外線に対して長期に安定した耐光性を備え、屋外においても長期にわたって高い耐久性を備える積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる。
【0010】
[ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルム]
本発明においては、基材としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムを用いる。このフィルムは、単層のフィルムであっても、複数の層から構成されるフィルムであってもよい。
【0011】
本発明の積層フィルムは、121℃、100%RH、2atmの環境に100時間保持したときの伸度保持率が50%以上の耐加水分解性を備える。この伸度保持率が50%以上であることによって、水分の存在する屋外に環境で、太陽電池の表面保護フィルムまたは基材フィルムとして必要な機械的特性を長期に亘り維持することができる。
【0012】
本発明に積層フィルムは、200℃に10分間保持したときの熱収縮率が2%以下である。積層フィルムを太陽電池の表面保護膜や基材として用いるためには、太陽電池の加工工程で、接着・封止・加熱スパッタといった、高い温度に曝される工程を経ることがあり、これらの工程での安定性を得るために、熱収縮率が2%以下であることが必要である。熱収縮率が2%以下であることによって、信頼性の高い太陽電池用基材を得ることができる。
これらの特性は、基材として、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムを用いることで得ることができる。
【0013】
[紫外線吸収剤を含む樹脂層]
基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムのうえに設けられる、紫外線吸収剤を含む樹脂層は、紫外線吸収剤とバインダーの樹脂からなる。
紫外線吸収剤を含む樹脂層の厚みは、好ましくは0.05〜20μm、さらに好ましくは0.1〜10μmである。この範囲の厚みであることで、十分な紫外線吸収性を得ることができ、また、樹脂層が剥離したり脆くなったりしない積層フィルムを得ることができる。
【0014】
[紫外線吸収剤]
本発明の積層フィルムは、波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、かつ300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下である。波長400〜900nmでの平均光線透過率は、好ましくは75%以上である。太陽電池の表面保護フィルムや、光入射側に用いる太陽電池用基材フィルムとして用いるためには、可視光域での高い光線透過率が必要であり、この特性が必要である。この条件を満足しないと、太陽電池の表面保護フィルムや、光入射側に用いる太陽電池用基材フィルムとして必要な光線透過率を得ることができない。この性質を得るために、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムのうえに、紫外線吸収剤を含有する樹脂の層を設ける。
【0015】
この目的で本発明において用いられる紫外線吸収剤は、波長380nmにおける吸光係数εが2以上、好ましくは3以上の紫外線吸収剤である。ここでいう吸光係数は、Lambert−Beerの式をもとにし、テトラヒドロフラン中に溶解させた紫外線吸収剤の吸光度を測定し、濃度の値から算出した吸光係数εである。
ε=A/(c×b)
上記式中、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)である。
吸光係数が2未満であると十分に紫外線を遮蔽することができず、積層フィルムに高い耐光性を付与することができない。
【0016】
紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サルチレート系紫外線吸収剤を挙げることができ、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いるが、これら全てが波長380nmにおける吸光係数が2以上の条件を満足するわけではないので、これら中から、選択して用いる必要がある。
波長380nmにおける吸光係数が2以上の条件を満足する紫外線吸収剤として、具体的には、例えば以下の紫外線吸収剤を用いることができる。
【0017】
2−(2−ヒドロキシー4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチルー4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニルエチル)フェノール、フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)4−メチル、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2−(4,6、−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)ロキシ]フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニシル)−1,3,5−トリアジン、ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−、C7−9分岐及び鎖状アルキルエステル2−(2−ヒドロキシー5−tert−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール。
【0018】
紫外線吸収剤を含む樹脂層における紫外線吸収剤の濃度は、樹脂層の重量を基準として、例えば0.1重量%以上、好ましくは1〜80重量%である。0.1重量%未満であると十分な紫外線の吸収効果が得られない。
【0019】
[樹脂]
本発明において紫外線吸収剤を含む樹脂層を構成する樹脂は、バインダーとして紫外線吸収剤を基材上に固着させる。この樹脂として、透明な樹脂を用いることが好ましく、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニルブチラール樹脂、セルロール樹脂、およびポリアミド樹脂を用いることができ、中でも、光安定性に優れるアクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。
【0020】
[その他の成分]
紫外線吸収剤を含有する樹脂層には、光安定剤を含有させてもよい。一般に、光安定剤には、クエンチャーとHALSの2種類があり、クエンチャーは、一般に励起状態にある活性分子(例えば、1重項酸素)を脱励起させる機能を有する。また、HALSは、紫外線により発生するラジカルを補足する捕捉剤として機能していると考えられている。
【0021】
本発明において、樹脂層に光安定剤を含有させる場合、光安定剤として、クエンチャーとHALSのいずれも用いることができる。光安定剤を含有させることにより、樹脂層の紫外線吸収剤および樹脂の長期耐光性をさらに向上させることができる。
【0022】
光安定剤を含有させる場合、その含有量は、紫外線吸収剤100重量部に対して、例えば0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜80重量部である。光安定剤は、分散して含有させることが好ましい。
【0023】
紫外線吸収剤を含有する樹脂層には、傷つきを防止のために微粒子を含んでもよい。この微粒子は、光の入射を妨げない粒径および含有量であることが好ましく、好ましい平均粒径は10〜500nm、好ましい濃度は、樹脂層の全重量を基準として0.05〜20重量%である。
【0024】
[ハードコート層]
屋外使用時にさらに高い耐久性を得るために、紫外線吸収剤を含む樹脂層のうえに、さらにハードコート層を設けてもよい。このハードコート層の厚みは、例えば0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。
【0025】
ハードコート層は、紫外線吸収剤を含む樹脂層と高い密着性を示す材料で構成されることが好ましい。例えば、無機酸化物や、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂を用いることができる。これらの樹脂成分にアルミナ、シリカ、マイカといった無機粒子を配合した混合物を用いてもよい。
【0026】
[易接着層]
基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムと紫外線吸収剤を含む樹脂層との密着性を向上させるために、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムと紫外線吸収剤を含む樹脂層との間に易接着層を設けることが好ましい。また、本発明の積層フィルムを他の基材と接着させる場合に優れた接着性を得るために、紫外線吸収剤を含む樹脂層を設けるのとは反対側の面に易接層を設けることが好ましい。
【0027】
易接着層の厚みは、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。易接着層の厚みが10nm未満であると密着性を向上させる効果が乏しく、200nmを超えると易接着層の凝集破壊が発生しやすくなり密着性が低下することがあり好ましくない。
【0028】
易接着層の構成材としては、ポリエステルフィルムと透明導電層の双方に優れた接着性を示す樹脂を用いるとよい。具体的にはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂を例示することができる。これらの樹脂は単独、または2種以上の混合物として用いることができる。
【0029】
[製造方法]
本発明に積層フィルムは以下の方法で製造することができる。
本発明において基材として用いられるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを溶融し、これらを溶融押出して未延伸シートとし、これを延伸することによって製造することができる。実用的な機械的強度を得るために二軸延伸することが好ましい。
【0030】
ここではフィルムの製造方法について、溶融押出後、逐次二軸延伸によりフィルムを製造する方法を例に詳述する。樹脂を、必要に応じて、通常の加熱または減圧雰囲気下における乾燥により水分を除去した後、通常の溶融押出温度、すなわち融点(「Tm」という)以上、(Tm+50℃)以下の温度で溶融し、ダイのスリットから押出して、樹脂のガラス転移温度(「Tg」という)以下に冷却した回転冷却ドラムの上で急冷固化することにより、非晶質の未延伸シートを得る。得られた未延伸シートは、Tg以上、(Tg+50℃)以下の温度で、縦方向に2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸し、次いで横方向にTg以上、(Tg+50℃)以下の温度で、2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸する。なお、縦延伸と横延伸を同時に行う同時2軸延伸も、縦横の機械的特性のバランスがとりやすいため、好ましい延伸方法である。
【0031】
縦横に延伸した二軸延伸フィルムは、好ましくはさらに樹脂の結晶化温度(以下「Tc」という)以上、(Tm−10℃)以下の温度で熱固定を行う。またその後の工程での熱収縮を抑制するため、縦方向および/または横方向に、弛緩率0.5〜15%の範囲で熱弛緩処理を行ってもよい。熱弛緩処理は、フィルム製造時に行ってもよく、巻き取った後に別の工程で熱処理を行ってもよい。巻き取った後の熱処理方法は特に限定されないが、特開平1−275031号公報に示されるような、フィルムを懸垂状態で弛緩熱処理する方法を例えば用いることができる。
【0032】
次に、易接着層を設ける場合の形成方法を説明する。易接着層を設ける方法としては、ポリエステルフィルムの製造過程で塗工により設ける方法が好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0033】
次に、紫外線吸収剤を含む樹脂層の形成方法を説明する。紫外線吸収剤を含む樹脂層は、易接着層の設けられた面に形成する場合、易接着層の設けられていない面に形成する場合のいずれも、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムのうえに、例えば塗布、蒸着によって設けることができる。塗布の場合、溶媒中に塗布層の組成物を分散または溶解した塗液を樹脂フィルムに塗布するウェットコーティングを例えば用いることができる。
【0034】
ウェットコーティングは、例えばローラ法、ディッブ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法を用いて行うことができる。また、汎用機によるスピン法やスプレー法も用いることができる。凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷のような湿式印刷を用いて塗布してもよい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択すればよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は以下の方法により評価した。なお、「部」は「重量部」を意味する。
【0036】
(1)耐加水分解性(破断点伸度保持率)
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、121℃・100%RH・2atm・濡れ飽和モードに設定した環境試験機内に100時間放置した。その後試料片を取り出し、その縦方向の破断強度を5回測定し、平均値を求めた。下記基準にて耐加水分解性を評価した。
○: 処理後の破断点伸度保持率50%以上
×: 処理後の破断点伸度保持率50%未満
なお、破断点伸度保持率は以下の式から算出した。
破断点伸度保持率=S100/S×100
ここで、S100 は100時間処理後の破断点伸度、Sは初期の破断点伸度である。
【0037】
(2)熱収縮率測定
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに所定の温度のオーブンで所定時間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。この熱処理前の標点間距離Lと熱処理後の標点間距離Lをそれぞれ測定し、熱処理後の寸法変化率を熱収縮率S(%)として下式により算出した。
S(%)=((L−L)/L)×100
【0038】
(3)波長400〜900nmの平均光線透過率
分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、波長400〜900nmの光線透過率を、2nm間隔で測定した。測定した各波長の光線透過率の平均から波長400〜900nmの平均光線透過率を算出した。
【0039】
(4)紫外線吸収剤の吸光係数測定
各紫外線吸収剤を吸光度が飽和しない程度までテトラヒドラフランに希釈した溶液を、分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、石英セルにサンプルを添加して測定することで吸光度を測定した。この値と溶液の濃度から吸光係数(ε)を下記式を用いて算出した。
ε=A/(c×b)
ここで、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)である。
【0040】
(5)耐光性(光線透過率維持率)
ダイプラ・ウィンテス(株)製のメタルウェザー試験機(型式:KW−R5TP−A、光源:水冷ジャケット式メタルハライドランプ)、フィルターKF−1(透過光波長295〜780nm)放射照度75mW/cm、ブラックパネル温度 63℃、スプレーなしで照射試験を行った。照射試験後のフィルムの光線透過率を評価し、照射前後の光線透過率維持率を評価した。
光線透過率維持率=Ta/Tb×100
【0041】
(6)波長300〜400nmの平均光線透過率
分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、波長300〜400nmの光線透過率を、2nm間隔で測定した。測定した各波長の光線透過率の平均から300〜400nmの平均光線透過率を算出した。
【0042】
[実施例1]
(ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムの作成)
固有粘度が0.63で、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給した。溶融温度305℃で溶融混練し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗膜厚みが90nmになるようにロールコーターで塗工し易接層を形成した。
【0043】
続いてテンターに供給し、140℃にて横方向に.3.3倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを245℃の温度で5秒間熱固定し、固有粘度が0.58dl/g、厚み125μmのフィルムとし、その後、このフィルムを懸垂状態で、弛緩率0.7%、温度205℃で熱弛緩させて、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムとした。
【0044】
(塗剤Aの調製)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル48部、イソフタル酸ジメチル14部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、固形分が25重量%のポリエステルの水分散体を得た。
【0045】
次に、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらに、メタクリル酸メチル30.1部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン21.9部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸39.4部、アクリルアミド8.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%重量のアクリルの水分散体を得た。
【0046】
一方で、シリカフィラー(平均粒径:100nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスZL)を0.2重量%、濡れ剤として、ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)の0.3重量%添加した水溶液を作成した。
上記のポリエステルの水分散体10重量部、アクリルの水分散体5重量部と水溶液85重量部を混合して、塗剤Aを作成した。
【0047】
(紫外線吸収剤を含む樹脂層の形成)
有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(Ciba社製)8重量部、バインダー樹脂としてアクリル樹脂のハルスハイブリッドUV−G13(日本触媒製)60重量部、イソシアネート硬化剤としてデスモジュールN3200(住化バイエルウレタン社製)0.6重量部、トルエン31重量部に分散させて固形分濃度34重量%、固形分中の紫外線吸収剤の濃度を19重量%の溶液として塗液を調製した。この塗液をバーコーターを用いてポリエステルフィルムの塗剤Aを塗布した面上に塗布、乾燥して、厚み6.3μmの紫外線吸収剤含有層を形成した。
この積層フィルムを用いて耐加水分解テスト及び光照射試験を行ったところ良好な耐久性を持つことが確認された。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2〜7]
紫外線吸収剤およびバインダー樹脂の種類、厚みを表1のとおりに変更した以外は実施1と同様にして積層フィルムを得た。表2に示すとおり、いずれも高い耐久性を持つことが確認された。
【0049】
[比較例1]
長波長を吸収する紫外線吸収剤を添加しない以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを用いた。表2に示すとおり耐光性が不十分な結果となった。
【0050】
[比較例2]
紫外線吸収剤を含む層を設置せずに、耐加水分解性試験及び耐光性試験を行った。結果表2に示すとおり耐光性が不十分な結果となった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
なお、実施例および比較例で用いた紫外線吸収剤は次のとおりである。
Tinuvin109: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin234: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin384: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin928: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin477: トリアジン系紫外線吸収剤
【0054】
バインダー樹脂は次のとおりである。
日本触媒社製 ハルスハイブリッド UV−G13: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を側鎖にもつアクリル樹脂
旭硝子製 ルミフロンクリヤーLF200: フッ素系樹脂
カネカ ゼムラック YC3835: アクリルシリコン系樹脂
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TSR145:
シリコン樹脂
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の積層フィルムは、太陽電池の表面保護フィルムおよび太陽電池の基材フィルムとして、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる積層フィルムであり、紫外線吸収剤の波長380nmにおける吸光係数εが2以上であり、積層フィルムの波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下であるとともに、積層フィルムを、121℃、100%RH、2atmの環境に100時間保持したときの伸度保持率が50%以上、かつ200℃にて10分間保持したときの熱収縮率が2%以下であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
太陽電池の表面保護フィルムとして用いられる請求項1記載の積層フィルム。
【請求項4】
太陽電池の基材フィルムとして用いられる請求項1記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2010−221655(P2010−221655A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74271(P2009−74271)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】