説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 液晶偏光板、位相差板等の液晶構成部材製造時に使用する粘着剤層保護用離型フィルムを構成する基材フィルム等、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造時に使用される各種光学用途の基材フィルム等、フィルム表面にオリゴマー起因の異物が存在することを嫌う用途に好適な積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物を固形分中70%以上含有する塗布液を塗布し、乾燥させることにより設けられた塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関して、詳しくはオリゴマー析出量が極力少ない積層ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)等、表示部材製造用等の光学用途のほか、フィルム表面にオリゴマー起因の異物が存在することを極端に嫌う用途に好適な積層ポリエステルフィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム上に接着性、帯電防止性等の各種機能を有する塗布層が設けられた積層ポリエステルフィルムが液晶偏光板、位相差板、PDP、有機EL等の表示部材製造用等をはじめ、各種光学用途等に使用されている。積層ポリエステルフィルム使用上の問題点として、高温下、塗布層表面に析出するオリゴマーが製造工程内において各種不具合を生じることが挙げられる。例えば、表示部材製造用途においてはフィルム表面に存在する異物が表示画面の輝度むら等の不具合を生じる場合がある。
【0003】
近年、IT(Information Technology)分野の躍進に伴い、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造時に使用される積層ポリエステルフィルムの品質向上と共にオリゴマーの析出に伴う各種不具合がさらに顕在化する傾向にある。
【0004】
LCD用ディスプレイ製造時に使用する粘着剤層保護用離型フィルムを構成する基材フィルム、ブラウン管(以下、CRTと略記する)用あるいはLCD用ディスプレイの反射防止フィルム用基材フィルム、タッチパネル用基材フィルム、液晶表示装置の構成部材であるプリズムレンズシート用基材フィルム、CRTのガラス飛散防止フィルム用基材フィルム、電子ペーパー用基材フィルム等には、特に優れた透明性が要求される。
【0005】
上述の各種基材フィルムとして積層ポリエステルフィルムを用いた場合、特に光を透過して見る、いわゆる視認性が極めて重視される用途でもあるため、フィルム表面の異物の存在なども、通常のフィルム用途では全く問題とならない異物でさえ、極力少ないことが望まれている。
【0006】
異物の一形態としてオリゴマーに着目した場合、オリゴマー析出防止策として、例えば、固相重合により原料中に含まれるオリゴマーの低減を図ったり、末端封鎖剤を用いてポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させたりする等の対策が講じられてきた。しかしながら、固相重合の場合には押出条件によっては押出時にオリゴマーが増加してしまったり、固相重合のためコストが上昇してしまったりする等の問題を抱えている。そのため、熱処理工程等の製造工程を経てもオリゴマーの析出が極力少ない積層ポリエステルフィルムが望まれている。
【特許文献1】特開平2003−191413号公報
【特許文献2】特開平2004−82370号公報
【特許文献3】特開平2004−256625号公報
【特許文献4】特開平2005−89622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、オリゴマー析出量が極力少ない積層ポリエステルフィルムを提供することにあり、例えば、液晶偏光板、位相差板等の液晶構成部材製造時に使用する粘着剤層保護用離型フィルムを構成する基材フィルム等、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造時に使用される各種光学用途の基材フィルム等、フィルム表面にオリゴマー起因の異物が存在することを嫌う用途に好適な積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物を固形分中70%以上含有する塗布液を塗布し、乾燥させることにより設けられた塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムの基体であるポリエステルフィルムは単層構成であっても積層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0011】
本発明においてフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す。
【0012】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、フィルム原料の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0013】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0014】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0015】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0016】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリマーを製造する任意の段階において添加することができる。
【0017】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0018】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0019】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常5〜250μm、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0020】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0021】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法とは、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0022】
さらに上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能となると共に、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるため、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0023】
次に本発明における塗布層の形成について説明する。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層は上述のインラインコーティングによりポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。なお、積層ポリエステルフィルムの製造が安価に対応可能な点でインラインコーティングの方が好ましく用いられる。
【0024】
インラインコーティングについては以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に縦延伸が終了して、横延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0025】
本発明においては少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物を固形分中70%以上含有する塗布層を有することを必須の要件とするものである。70重量%を下回る場合、塗布層中に含有するメラミン化合物以外で使用する化合物の種類によって、オリゴマー析出防止能が低下する。
【0026】
メラミン化合物としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。また、メラミン系化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよい。これらのメラミン化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0027】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布面上に種々の表面機能層が積層されたときの透明性の向上、種々の表面機能層との接着性を向上させる為にバインダーポリマーを併用することも可能である。
【0028】
本発明において使用する「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0029】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0030】
さらに塗布層中にはメラミン化合物以外の架橋剤を併用してもよく、具体例としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物が挙げられる。これらの架橋成分はバインダーポリマーと予め結合していてもよい。
【0031】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0032】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0033】
上述の一連の化合物を溶液または分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をフィルム上に塗布する要領にて積層フィルムを製造するのが好ましい。
【0034】
さらにインラインコーティングの場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をフィルム上に塗布する要領にて積層フィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は一種類のみでもよく、適宜、二種類以上を使用してもよい。
【0035】
本発明における積層フィルムに関して、フィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥後)は通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗布量が0.005g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、熱処理後、塗布層表面から析出するオリゴマー量が多くなる場合がある。一方、1g/mを超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0036】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0037】
本発明において、フィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0038】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0039】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層フィルムを構成するフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0040】
本発明における積層ポリエステルフィルムを熱処理(180℃、10分間)した後、塗布層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量は、通常1.5mg/m以下であり、好ましくは1.0mg/m以下、さらに好ましくは0.5mg/m以下である。オリゴマー量が1.5mg/mを超える場合、例えば、液晶構成部材製造時に使用する粘着剤層保護用途に使用した場合、粘着剤塗布後の乾燥工程において、乾燥温度をより高く設定した場合、塗布層表面に析出するオリゴマー量が多くなり、粘着剤の透明性が低下したり、粘着剤層の粘着力が低下したりする等の不具合を生じることがある。
【0041】
本発明においてオリゴマーとは、熱処理後、結晶化してフィルム表面に析出する低分子量物のうちの環状三量体と定義する。
【0042】
また、本発明における積層フィルムの全光線透過率は80%以上であることがLCD、PDP、有機EL等の表示部材製造時に使用される等の光学用途等、透明性を特に必要とされる用途に対応可能になるので好ましく、さらに好ましくは85%以上がよい。全光線透過率が80%未満の場合、透明性が不十分となり、例えば、光学的評価を伴う検査工程に使用する場合、異物の混入を見落としやすくなる等の不具合を生じる場合がある。
【発明の効果】
【0043】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、オリゴマー析出量が極力少ない積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0045】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0046】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0047】
(3)積層ポリエステルフィルムにおける一方の塗布層表面から抽出されるオリゴマー量の測定
予め、未熱処理の積層ポリエステルフィルムを空気中、180℃で10分間加熱する。その後、熱処理をした該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmの箱の内面にできるだけ密着させて箱形の形状とする。塗布層を設けている場合は塗布層面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0048】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0049】
なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0050】
(4)積層ポリエステルフィルムの全光線透過率の測定および評価方法
JIS−K7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aにより、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率(%)を測定した。測定した値は以下の基準で評価した。
○:全光線透過率が85%以上で、良好。
△:全光線透過率が80%以上、85%未満で、やや良好。
×:全光線透過率が80%未満で、不良
【0051】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
〈ポリエステルの製造〉
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.03部、平均粒径1.5μmのシリカ粒子を0.01部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0052】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・メラミン化合物
ヘキサメトキシメチルメラミン(A1)
アルキロールメラミン/尿素共縮合(大日本インキ化学工業製 ベッカミン)(A2)
・バインダーポリマー
ポリビニルアルコール系樹脂(B1)
ケン化度88モル%、重合度350のポリビニルアルコール
アクリル系樹脂(B2)
ジュリマーAT−M−918(日本純薬(株)製)
ポリエステル系樹脂(B3)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・架橋剤
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(C1)
オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒製 エポクロス)(C2)
【実施例1】
【0053】
製造したポリエチレンテレフタレートを180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次に得られた未延伸シートをまず、95℃で3.6倍に縦延伸し、下記塗布剤をバーコート方式により塗布した後、テンターに導き、横方向に4.3倍の逐次二軸延伸を行った。その後、230℃にて3秒間熱固定し、塗布量(乾燥後)が0.05g/mの下表1に示す組成で濃度10%の塗布液1を用いて形成された塗布層が設けられた、厚さ38μmのフィルムを得た。
【0054】
【表1】

【0055】
でき上がった積層ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、加熱後のオリゴマー析出量が少なく良好であった。
(実施例2〜実施例8)
【0056】
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムは表2に示すとおり、加熱後のオリゴマー析出量が少なく良好であった。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、塗布層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、加熱後のオリゴマー析出量が多かった。
【0058】
(比較例2〜比較例6)
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、加熱後のオリゴマー析出量が多かった。
【0059】
(比較例7)
実施例1において、塗布層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、加熱後のオリゴマー析出量が多かった。
【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、例えば、LCD、PDP、有機EL等、表示部材製造用等の光学用途のほか、フィルム表面にオリゴマー起因の異物が存在することを嫌う用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物を固形分中70%以上含有する塗布液を塗布し、乾燥させることにより設けられた塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2007−45023(P2007−45023A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232706(P2005−232706)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】