説明

積層ポリエステルラミネート紙の製造方法及びポリエステルラミネート紙製容器

【課題】
押出し性、容器加工性、色調及び密着性のいずれにも優れたポリエステルラミネート紙の製造方法、及びその方法により得られたポリエステルラミネート紙、並びにこれを用いた紙容器を提供する。
【解決手段】
ブチレンテレフタレート繰返し単位を主たる成分とする少なくとも2種のポリエステル樹脂を、紙の少なくとも一方の表面に共押出しによりラミネートする際、紙の表面側にラミネートする樹脂(A)として、250℃、剪断速度91.2(sec−1)における溶融粘度が500(Pa・S)以下の樹脂を使用し、当該樹脂(A)を含む層上で、紙とは反対側にラミネートする樹脂(B)として、250℃における溶融張力が1.0mN以上の樹脂を使用し、ラミネート後の膜厚比d(樹脂B)/d(樹脂A)が0.5〜50となるように、当該各樹脂(A)及び(B)をラミネートすることを特徴とする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とした特定の物性を有する複数のポリエステル樹脂を、紙の表面に積層してラミネートする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法に関する。詳しくは、押出し性や容器加工性、色調に優れ、更には紙とポリエステルフィルムとの密着性にも優れた積層ポリエステルラミネート紙の製造方法、及びその方法により得られる積層ポリエステルラミネート紙、並びにそれを用いた紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジやオーブン等により加熱調理する食品が広く普及しており、その容器のひとつとして、紙に合成樹脂をラミネートした容器(以下、ラミネート紙製容器と略称する)がある。該ラミネート紙製容器は、プラスチック製容器に比べて軽量、安価かつ高耐熱性の長所があり、加えて金属探知器による食品中の異物混入検査が可能である利点も備えており、ケーキや焼き菓子等の加熱調理容器を始め、駅、コンビニエンスストア、食料品店等で販売される弁当用容器やおかずカップ、冷凍食品用トレー等として利用されている。
【0003】
ラミネート紙製容器に使用される合成樹脂としては、ポリメチルペンテン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、中でもポリエステル系樹脂が、食品へのプラスチック臭、紙臭の臭い移りや食品の味変わりの観点から最も優れており、更には耐熱性や加工性も良好であるなど、性能のバランスに優れている為、様々な食品分野で用いられている。
【0004】
特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称することがある)を含むポリエステルをラミネートした紙よりなる食品包装用容器が開示され、特に押出加工前後での樹脂の極限粘度の比率を特定値以上に保持することにより、ヒートシール性が改善されることが開示されている。しかし、実施例に具体的に開示されているポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称することがある)のみであり、特定値以下の溶融粘度を有するPBTと、特定値以上の溶融張力を有するPBTとを積層してラミネートすることにより、押出し性、容器加工性、色調、紙とPBTの密着性のいずれにも優れたラミネート紙が得られることについては何ら示唆されていない。
【0005】
特許文献2には、PBTを押出しラミネートした電子レンジ加熱用紙容器が開示され、PBT樹脂を使用した容器がPET樹脂を使用した容器に比べて、耐熱性、食品汚染性、食品の付着性に優れ、酸素透過性やヒートシール性に優れることが開示されている。この特許文献2では、PBT樹脂と紙との密着性を良くするために、紙をコロナ放電にて前処理したものを使用する必要があり、単にPBT樹脂を紙上にラミネートしただけでは密着性が十分でなく、製造コストがかかるという問題があった。
また、特定値以下の溶融粘度を有するPBTと、特定値以上の溶融張力を有するPBTとを積層してラミネートすることにより、押出し性、容器加工性、色調、紙とPBTの密着性のいずれにも優れたラミネート紙が得られることについては何ら示唆されていない。
【0006】
特許文献3には、末端カルボキシル基含有量が60ミリ当量/kg未満であるPBT樹脂を、耐熱紙にラミネートした積層体を成形してなる加熱調理用耐熱性紙容器は、成形性、耐熱性に優れ、食品へのポリマー臭の移行がなく、高温での加熱調理用の耐熱性容器として好適であることが開示されている。この特許文献3においても、PBT樹脂と紙との密着性を良くするために、紙をコロナ放電にて前処理したものが使用されており、単にPBT樹脂を紙上にラミネートしただけでは密着性が十分でないという問題があった。
また、特定値以下の溶融粘度を有するPBTと、特定値以上の溶融張力を有するPBTとを積層してラミネートすることにより、押出し性、容器加工性、色調、紙とPBTの密着性のいずれにも優れたラミネート紙が得られることについては何ら示唆されておらず、これらの特性が総合的に良好なラミネート紙が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開昭55−166247号公報
【特許文献2】特開昭64−70620号公報
【特許文献3】特開2000−93296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、押出し性、容器加工性、色調及び密着性のいずれにも優れた積層ポリエステルラミネート紙の製造方法、及びその方法により得られた積層ポリエステルラミネート紙、並びにこれを用いた紙製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定値以下の比較的低い溶融粘度を有するポリエステル樹脂と、特定値以上の溶融張力を有するポリエステル樹脂とを、紙上にこの順で、且つ、特定の膜厚比となるように、積層してラミネートすることにより、押出し性、容器加工性、色調、紙とPBTの密着性のいずれにも優れた、総合的に良好な特性を有する積層ラミネート紙が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主たる成分とする少なくとも2種のポリエステル樹脂を、紙の少なくとも一方の表面に、共押出しによりラミネートする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法において、紙の表面側にラミネートするポリエステル樹脂(A)として、250℃、剪断速度91.2(sec−1)における溶融粘度が500(Pa・S)以下の樹脂を使用し、当該樹脂(A)を含む層上で、紙とは反対側にラミネートするポリエステル樹脂(B)として、250℃における溶融張力が1.0mN以上の樹脂を使用し、ラミネート後の膜厚比d(樹脂B)/d(樹脂A)が0.5〜50となるように、当該各樹脂(A)及び(B)をラミネートすることを特徴とする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法、に存する。また、その製造方法により得られたポリエステルラミネート紙、及び、これを成形加工してなるポリエステルラミネート紙製容器、に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来のラミネート紙を製造する際に見られたフィルムの蛇行やネックインなどが著しく改良され、押出し性、容器加工性、色調及び密着性のいずれにも優れた積層ポリエステルラミネート紙を得ることができ、特には電子レンジやオーブンにて加熱調理される耐熱性の食品包装容器などの原紙として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で使用するブチレンテレフタレート繰り返し単位を主成分とするポリエステル樹脂(A)及び(B)とは、紙上に共押出しによりラミネートされるポリエステルであって、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオール、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を用いて重合することにより得られるポリエステルである。主たる繰り返し単位とは、ブチレンテレフタレート単位が、全多価カルボン酸−多価アルコール単位中の70モル%以上であることを意味し、好ましくは80モル%以上、更には90モル%、特には95モル%以上であるのが好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂(A)及び(B)の製造の際に用いることができるテレフタル酸以外の多価カルボン酸成分の例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、或いは上記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル等の多価カルボン酸の低級アルキルエステル類等)が挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は単独でテレフタル酸と共に用いても良いし、複数をテレフタル酸と混合して用いても良い。
【0015】
一方、1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分の一例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式多価アルコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等の芳香族多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これら多価アルコール成分は単独で1,4−ブタンジオールと共に用いても良いし、複数を1,4−ブタンジオールと混合して用いても良い。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂(A)及び(B)は、本発明の要件を満たせば、単独であってもよいし、或いは末端カルボキシル基濃度、融点、触媒量等の異なる複数のポリエステルの混合物を溶融し成形したものであってもよい。
【0017】
また、本発明で使用するポリエステル樹脂(A)及び(B)を製造する際には、触媒としては通常チタン化合物が使用され、具体例としては、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が挙げられる。これらの中ではテトラアルキルチタネートが好ましく、その中ではテトラブチルチタネートが特に好ましい。
【0018】
触媒としては、チタン化合物の他に、スズ化合物が触媒として併用されていても良い。スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などが挙げられる。
【0019】
また、チタン化合物の他に、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物の他、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、それらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの反応助剤を併用してもよい。
【0020】
本発明においては、紙の表面上にラミネートするポリエステル樹脂(A)として、250℃、剪断速度91.2(sec−1)における溶融粘度が500(Pa・S)以下のポリエステル樹脂を使用することを特徴とする。この溶融粘度は、例えば東洋精機(株)キャピログラフにより測定することができる。これにより、ポリエステル樹脂層(A)の表面にラミネートするポリエステル樹脂層(B)に使用するポリエステル樹脂の溶融張力が比較的高い場合であっても、紙とポリエステル積層フィルムとの密着性を高めることが可能となる。溶融粘度が500(Pa・S)を超えると紙との密着性が低下し、容器加工性も低下する傾向がある。溶融粘度の上限は、好ましくは450(Pa・S)以下、より好ましくは400(Pa・S)以下、更に好ましくは380(Pa・S)以下、特には350(Pa・S)以下であり、一方下限としては100(Pa・S)以上が好ましく、150(Pa・S)以上がより好ましく、200(Pa・s)が更に好ましい。この特定の溶融粘度を有するポリエステル樹脂は、ポリエステル製造工程において、重合時間、減圧度、温度等の条件を調節することにより、得ることができる。
【0021】
また、本発明においては、ポリエステル樹脂(A)を含む層上で、紙とは反対側にラミネートされるポリエステル樹脂(B)として、250℃における溶融張力が1.0mN以上のポリエステル樹脂を使用することを特徴とする。これにより、高速ラミネート性が良好な積層ラミネート紙を得ることができる。ここで、溶融張力は、例えば東洋精機(株)製キャピログラフを用いて求めることができる。溶融張力の上限は、好ましくは10mN以下であり、より好ましくは7.0mN以下、更に好ましくは5.0mN以下、最も好ましくは3.0mN以下であり、一方下限としては、1.1mN以上が好ましく、1.2mN以上がより好ましい。この特定の溶融張力を有するポリエステル樹脂は、ポリエステル製造工程において、重合時間、減圧度、温度等の条件を調節することにより、得ることができる。
【0022】
溶融張力が1.0(mN)未満であると、押出し時のネックイン現象が大きく、ラミネート後の中心部と端部のポリエステル層の厚みの差が著しく大きくなったり、ラミネート紙を容器へ成形加工する際や容器が屈曲した際に、ポリエステル層にクラックやピンホールが発生する場合がある。一方、溶融張力が10(mN)を大きく越えると、押出し量が制限され、高速押出し性が低下する傾向がある他、紙との密着性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)及び(B)は、溶融重合法でも、溶融重合反応後に固相重合する方法のいずれでも製造することができ、また、連続法と回分法のいずれでもよいが、連続法による溶融重合法の方が、重合したペレットの可塑化時の押出機スクリュ負荷が均一であり、紙上のフィルム厚みムラが少ないなど押出し安定性の観点で好ましい。一方、後述の固相重合法により製造されたペレットは、スクリュ負荷が不均一となり易く、スクリュ負荷上限近くで押し出している場合、瞬時の過負荷によるスクリュ停止等が発生する場合があったり、紙上フィルムの厚みムラも大きくなる場合があるので、生産効率上の観点からは溶融重合法の方が好ましい。
【0024】
本発明において溶融重合法を採用する場合の方法に特に制限はないが、直列連続槽型反応器を用いて連続的に重合することが好ましい。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を、1基又は複数基のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180〜265℃の温度、好ましくは6.67〜133kPa、より好ましくは9.33〜101kPaの圧力で、攪拌下に2〜5時間で連続的にエステル化反応させる。次いで、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、1基又は複数基の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは210〜280℃、より好ましくは220〜265℃の温度、好ましくは26.7kPa以下、より好ましくは20kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜5時間で連続的に重縮合反応させることができる。重縮合反応により得られたポリブチレンテレフタレート樹脂は、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷されたのちに、ペレタイザーで切断されて通常ペレット状とされる。
【0025】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)及び(B)は、溶融重合の後に固相重合を行うことにより製造することもできる。例えば、回分法等による溶融重合法で、エステル交換反応又はエステル化反応と重縮合反応を行い、所望の固有粘度有するポリエステル樹脂を得た後、該樹脂を1.33〜26.6kPaの減圧下、160〜170℃で、1〜2時間加熱する等のマイルドな条件下で固相重合することにより、製造可能である。
【0026】
用いるエステル化反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などを挙げることができる。エステル化反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.5dl/g以上、更には0.6dl/g以上、特には0.7dl/g以上が好ましく、一方上限は1.1dl/g以下、更には1.0dl/g以下、特には0.9dl/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の固有粘度が0.5dl/g未満であると、成形品の機械的強度が低下するおそれがある。固有粘度が1.1dl/gを超えると、樹脂(A)の溶融粘度が高くなり、流動性が低下して、成形性が低下するおそれがあり、また、ポリエステル樹脂(A)と紙面との密着性が低下するおそれがある。
【0028】
一方、本発明のポリエステル樹脂(B)の固有粘度は、1.0dl/g以上、更には1.1dl/g以上、特には1.2dl/g以上が好ましく、一方上限は2.5dl/g以下、更には2.0dl/g以下、特には1.8dl/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)の固有粘度が1.0dl/g未満であると、成形品の機械的強度が低下するおそれがある。固有粘度が2.5dl/gを超えると、樹脂(B)の溶融粘度が高くなり、押出し機スクリュ負荷が増大し押し出し量に制限されたり、ペレットの生産性が著しく低下するおそれがある。なお、本発明においてPBTの固有粘度は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて30℃で測定した溶液粘度から求められる値である。
【0029】
本発明で使用されるポリエステル樹脂(A)及び(B)の降温結晶化温度は、ラミネート後の容器の耐熱性の点から、170℃以上が好ましく、175℃以上がより好ましい。本発明において、降温結晶化温度は、示差走査熱量計で、降温速度20℃/分の条件で測定した結晶化温度を意味し、この降温結晶化温度は、PBTが溶融した状態から降温速度20℃/分で冷却したときに現れる結晶化による発熱ピークの温度である。
【0030】
本発明で使用されるポリエステル樹脂(A)及び(B)の末端カルボキシル基量は、通常50eq/t以下である。好ましくは30eq/t以下であり、より好ましくは25eq/t以下である。末端カルボキシル基量は、PBTをベンジルアルコール等の有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム等のベンジルアルコール溶液を用いて中和滴定することにより求めることができる。PBTの末端カルボキシル基量を50eq/t以下とすることにより、特に本発明の樹脂組成物の熱老化安定性(滞留安定性)を改善することができ、また、耐加水分解性を著しく高めることができる。
【0031】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)及び(B)は、各々、チタン原子とスズ原子の合計含有量が100ppm以下であるのが好ましい。これらの原子は、重合反応の触媒残渣であるチタン化合物やスズ化合物として含有されるものである。触媒として、チタン化合物以外にスズ化合物を併用しない場合は、ポリエステル樹脂(A)及び(B)は実質的にスズ原子を含まないため、チタン原子の含有量が100ppm以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
【0032】
更に、本発明においては、ポリエステル樹脂(A)及び(B)中の、各々のチタン原子の含有量自体を特定量とすることが、ラミネート紙の色調変化が少ないという点で好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂(A)及び(B)中の各々のチタン原子含有量の下限が、好ましくは10ppm以上、より好ましくは15ppm以上、更に好ましくは20ppm以上である。一方上限は、好ましくは90ppm以下、より好ましくは85ppm以下、更に好ましくは80ppm以下、特に好ましくは70ppm下である。チタン原子の含有量が100ppmより多い場合は、押出ラミネートの際にポリエステルのネックイン現象が大きくなったり、押出しラミネート後のポリエステルの黄変やフィッシュアイが著しくなる傾向がある他、食品を充填した容器を高温で長時間加熱した際に、外観変化や食品の接触部が味変わり等を起こす場合もある。一方、10ppmより少ない場合は、ポリエステル重合効率が低下する傾向がある。なお、チタン原子又はスズ原子の含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Induced Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂(A)及び(B)には、更に本発明の特性を損なわない範囲において、強化充填剤を配合することができる。強化充填剤としては有機物であっても無機物であっても良い。具体例としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスビーズ、モンモリロナイト、マイカ、タルク、カオリン、炭素繊維、ウィスカー、ワラストナイト、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等が挙げられる。これらは単独で用いても複数配合しても良い。
【0034】
また本発明のポリエステル樹脂(A)及び(B)には、本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエステル以外の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミドやポリフェニレンエーテル等のエンジニアリングプラスチックス、ゴム等)、有機架橋粒子、無機粒子等、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤、印刷性改良剤等の第3成分が適量配合されていても良い。
【0035】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)及び(B)に、上述した種々の添加剤や他の樹脂を配合する方法は、公知の方法であれば特に限定されず、例えば、(1)ポリエステル樹脂の製造段階で添加する方法、(2)ペレット状のポリエステル樹脂にドライブレンドする方法、(3)ポリエステル樹脂の一部を他の樹脂又は添加物等と予め混合したマスターバッチを製造し、これを残りのポリエステル樹脂と混合する方法、又は(4)ポリエステル樹脂をラミネートする際の溶融混練中に添加する方法等が挙げられる。
【0036】
本発明に使用される紙とは、日本製紙連合会の分類に基づく紙、板紙のほか、不織布も含まれる。日本製紙連合会の分類に基づく紙としては、コップ原紙などの加工原紙、純白ロール紙、クラフト紙などの包装用紙、上質紙、インクジェット紙などの印刷・情報用紙、ポリエステル繊維などの合成樹脂製繊維を配合した機能紙などが挙げられ、板紙としては、コートボール紙などが挙げられる。中でも、紙器用板紙、純白ロール紙、晒クラフト紙が食品用容器成形の観点の点で好ましい。紙は全面が着色されたもの、あらかじめ表面に文字、模様、絵などが印刷されたものであってよい。
【0037】
また、本発明の紙の、JIS P8119に準拠した測定により求められる平滑度は、ポリエステルとの密着性の点で、10秒以上が好ましく、より好ましくは50秒以上であり、更に好ましくは100秒以上であり、特に好ましくは200秒以上である。平滑度が10秒未満であると、紙と密着させるために、ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を下げる必要が出て来る為、Tダイから紙面上のラミネートに至るフィルムのネッキング現象が大きく、生産歩留まりが低下する場合があるので好ましくない。また、紙の秤量は、通常10〜500g/m、好ましくは15〜400g/m、更に好ましくは20〜300g/mである。
【0038】
本発明に係るポリエステルラミネート紙は、紙上に、薄膜状にした上記ポリエステル樹脂(A)及び(B)を、この順でラミネートすることによって得られ、少なくとも一方の面に積層ラミネートしたもののほか、双方の面にラミネートしたものも含む。ラミネートすることにより、紙に離型性、耐熱性、耐水性、および耐油性などの機能を付与することができる。ポリエステル樹脂をラミネートしない紙の面は、そのままでもよいし、ポリエステル樹脂組成物や他樹脂製のフィルムまたはシート、もしくは、これらの積層体をラミネートしてもよい。他の樹脂製フィルムまたはシートは、あらかじめ着色されていてもよく、文字、模様、絵などを印刷されたものであってもよい。この他の樹脂製フィルムまたはシートに絵などを印刷し、この表面にポリエステル層を形成すると、絵などが表面に露出せず、外観の美麗なラミネート紙とすることができる。他の樹脂製フィルムまたはシートとしては、ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂、アルミニウム箔などが挙げられ、また、発泡体であってもよい。
【0039】
本発明においては、上述したポリエステル樹脂(A)及び(B)を、上記の紙上にラミネートする際に、ラミネート後の各樹脂の膜厚比[d(樹脂B)/d(樹脂A)](以下、この膜厚比をd(B)/d(A)とする)が、0.5〜50となるように、当該各樹脂をラミネートすることを特徴とする。これにより、押出し性、容器加工性、密着性のいずれにも優れたラミネート紙を得ることができる。d(B)/d(A)が0.5未満であると、ネッキングが大きくなり、ラミネート速度を低下させる傾向があり、一方50を大きく超えると、密着性及び容器加工性が低下する傾向がある。上述した膜厚比を0.5〜50の範囲とするには、後述する共押出し条件のうち、2台の押出機の押出し量を調節することにより可能となる。
上記の膜厚比d(B)/d(A)は、押出し性、容器加工性、密着性のいずれにも優れたラミネート紙を得ることができるという点で、下限は1.0以上、更には2.0以上、特には3.0以上が好ましく、上限は30以下、より好ましくは20以下、更には10以下、特には8以下が好ましい。
【0040】
本発明において、ポリエステル樹脂層(A)及び(B)をラミネートした後の、ポリエステルラミネートフィルム全体の厚みに特に制限は無いが、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μm、特には10〜25μmである。1μm未満では、成形加工時にピンホール等の欠陥が生じやすく、100μmを超えると容器加工性が低下する傾向がある。
【0041】
本発明のポリエステルラミネート紙を成形する方法は特に限定されるものではなく、公知の種々の方法を採用することができる。具体例としては、充分に乾燥したチップ状のポリエステル樹脂(A)及び(B)を、各々別の押出機にて溶融混練し、導管により例えばフィードブロック型積層ダイで合流させた溶融積層フィルムを基材の紙上に連続的に共押出しし、チルロールで冷却、加圧しながら巻き取ることによってポリエステル樹脂でラミネートされた紙を得ることができる。
共押出しの際のエアギャップは、通常15cm以下、好ましくは10cm以下、更に好ましくは8cm以下である。15cmを超えると、ラミネートされるまでに溶融フィルムの温度が下がり、紙との密着性が著しく低下する傾向がある。
【0042】
ポリエステルラミネート紙を成形する際の、ポリエステル樹脂(A)及び(B)の押出し温度は、通常樹脂温度で230〜320℃であり、240〜310℃が好ましく、250〜305℃がより好ましく、255〜300℃が更に好ましく、特には260〜295℃が好ましい。樹脂温度が320℃を超えると、熱分解によりネックイン現象や耳暴れが大きくなり、ポリエステルの高速押出しが困難となったり、トリミング量が大きくなったりして、押出し性が低下する傾向がある他、ラミネートされたポリエステルが黄変したり、保臭性や保味性が不十分となる傾向がある。また、チルロール温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上である。
また、本発明においては、ナイロンやEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)等のガスバリア性の樹脂層を、ポリエステル樹脂(A)からなる層とポリエステル樹脂(B)からなる層の間に、接着層を介して共押出しすることにより、ガスバリア性の良い積層ラミネート紙を製造することもできる。
【0043】
このようにして得られた本発明のポリエステルラミネート紙は、密着性、耐熱性、成形性に優れた樹脂材料として紙製容器に好適であり、水分、油分を含む食品等の保存あるいは、冷凍食品や冷蔵食品の電子レンジ加熱、オーブンレンジ加熱等の高温での耐熱性の要求される食品用の紙製容器に好適に使用できる。
【0044】
本発明のラミネート紙製容器は、上述したポリエステルラミネート紙を適当な大きさにカッティングし、平板状にして多数枚積み重ねたときには、一枚または多数枚を一度に成形金型に移送し、または、ロール状に巻回したときには、巻き戻しながら成形金型に移送して、熱成形することによって得られる。熱成形方法は、従来から知られている方法でよく、例えば、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法などが挙げられる。加熱成形の際の温度は、通常90〜160℃、好ましくは100〜150℃、更に好ましくは110〜140℃である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの例に限定されない。なお、ラミネートするポリエステル樹脂の物性測定法、ポリエステルラミネート紙の特性評価法、及びポリエステル樹脂の製造法は以下のとおりである。
【0046】
[ポリエステル樹脂の物性測定法]
(1)熱特性
ポリエステル樹脂試料を約10mg削り出し、セイコーインスツルメント社製のDSC(示差走査熱量計「DSC220U型」)を使用し、窒素雰囲気下、アルミパンに封入した試料を、30〜300℃の範囲で±20℃/分のスピードで昇降温し、ポリエステル樹脂の融点(Tm)℃、降温結晶化温度(Tc)℃を測定した。
(2)固有粘度
原料ポリエステルを120℃で約6時間熱風乾燥した後、ウベローデ型粘度計を使用し、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒(30℃)を用いて、固有粘度[η](dl/g)を測定した。
【0047】
(3)Ti原子含有量
Induced Coupled Plasma(ICP)によりポリエステル樹脂中のチタン触媒金属濃度(重量比)を定量した。
(4)溶融張力及び溶融粘度
ポリエステル樹脂を120℃で約6時間乾燥した後、東洋精機(株)キャピログラフによりシリンダー温度250℃における溶融張力(mN)を測定した。引き取りスピードは20m/分、キャピラリは、径/長=0.5mm/5mmを使用し、ピストンスピード=5mm/分とした。シリンダー内にペレット10gを投入した後、5分間かけ溶融し、6〜7分時の平均値を溶融張力として採用した。
【0048】
一方、溶融粘度は同様に乾燥した原料ポリエステルを東洋精機(株)キャピログラフによりシリンダー温度250℃における溶融粘度(Pa・S)を測定した。引き取りスピードは20m/分、キャピラリは、径/長=1.0mm/30mmを使用した。シリンダ内ーにペレット20gを投入した後、3分間かけ溶融し、剪断速度91.2(sec−1)における溶融粘度を採用した。
【0049】
[ポリエステルラミネート紙の特性評価法]
(1)ラミネート層厚み
ラミネート紙を、幅方向の両端部および中央部の3か所で切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、型式:S−2500)を使用して、1000倍に拡大して写真を撮影した。この拡大写真に写っている薄膜状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の部分を、JIS1級金尺を使用して測定し、3か所の測定結果の平均値をラミネート層の厚さ(μm)として算出した。
(2)押出し性評価
ダイ巾値を(W(A))、紙上にラミネートされたPBT巾を押出方向1m間隔で10点測定した平均値を(W(B))、両端部付近において膜厚が18ミクロンを超える部分のPBT巾方向長さの合計を(W(C))として、ネックイン量(%)、トリミング量(%)及び取り巾量(%)を下記式により算出し、いずれも10%以下となる最速のラインスピードを、表中の押出ラミネート速度とした。この押出ラミネート速度が、190m/分を超える場合を◎、130〜190m/分の場合を○、130m/分未満を×として押出し性を評価した。
ネックイン量(%)={[W(A)−W(B)]/W(A)}×100
トリミング量(%)=[W(C)/W(B)]×100
取り巾量(%)={[W(B)−W(C)]/W(A)}×100
【0050】
(3)密着性評価
紙基材にポリエステル樹脂を押出ラミネートする際、紙と溶融ポリエステルの間に200mm角のアルミ箔片を一片がMD方向(押出方向)に対して垂直となるよう挿入し、ポリエステルと紙が密着していない部分を有するラミネートサンプルを得た。次いでラミネートサンプルから幅15mm、長さ150mmの短冊状に切り出した。この短冊サンプルは、密着部位75mmと非密着部位75mmからなるようにした。非密着部位のポリエステル端と紙端それぞれを引張り試験機のチャックに挟み、200mm/min.のスピードで引張り、ポリエステルフィルムと紙の密着性を下記基準で評価した。尚、試(試料数n=10本で実施した。
○:引張り試験機による試験では、試験片10本すべてでポリエステルフィルムが延性破壊し、ポリエステル端と紙端を手で強く引っ張った場合も、同様にフィルムが延性破壊した。
×:引張り試験機による試験中にポリエステルフィルムと紙間での5mm以上剥離が、1本以上の試験片で観察された。
【0051】
(4)色調評価
ポリエステルラミネート紙の色調を目視にて下記基準で評価した。
◎:板紙の白さに比べて殆ど変化無いレベル。
○:紙の白さに比べるとやや黄色変化が有る。
△:紙本来の白さに比べると黄変量が大きい。
(5)容器加工性評価
ポリエステルラミネート紙を箱型(D×W×H=30×180×200mm)の雄雌金型を有する熱プレス機に30枚重ねて入れ、130℃で3秒間の成形加工した。加工性は下記基準で評価した。尚、試験は同じ条件で10個(試験個数n=10)作成し、目視評価で実施した。
○:成形後、紙製容器の外観に変化はない。
×:成形後、ポリエステルフィルムと紙が一部に剥離していた。
【0052】
[ポリエステル樹脂(A)及び(B)の製造法]
テレフタル酸1モルに対して1,4−ブタンジオールを1.8モルの割合で両原料をスラリー調製槽に供給し、攪拌装置で混合して調製したスラリーを温度230℃、圧力78.7kPa(590mmHg)に調整したエステル化反応槽に連続的に供給すると共に、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(PBT収量中50ppm又は200ppm)を連続的に供給し、攪拌装置による攪拌下に、滞留時間を3時間としてエステル化反応させて、エステル化反応率97.5%のオリゴマーを得た。
【0053】
エステル化反応により得られたオリゴマーを温度250℃、圧力2.66kPa(20mmHg)に調整した第1重縮合反応槽に連続的に供給し、攪拌装置による攪拌下に滞留時間2時間で重縮合反応させ、固有粘度0.250dl/gのプレポリマーを得た。そのプレポリマーを温度250℃、圧力0.133kPa(1mmHg)に調整した第2重縮合反応槽に連続的に供給し、攪拌装置による攪拌下に滞留時間2.5〜5.5時間で重縮合反応を更に進めた。次いで、ポリマー抜き出しダイに移送し、ダイスから円柱状にポリマーを押出し、20℃の冷却水で0.9秒間冷却した後、カッターを用いてカットし、固有粘度[η]=0.85〜1.44のポリブチレンテレフタレート粒状ペレットを得た。得られたポリエステル樹脂(A)及び(B)は、表1及び表2に示す物性を有するものであった。
【0054】
[実施例1〜4及び比較例1〜5]
下記表1及び表2に記載の各ポリエステル(PBT)樹脂(A)及び(B)のペレットを、各々熱風乾燥機にて120℃×6時間かけて乾燥した。次いで、60mmの単軸押出機のホッパーにPBT樹脂(A)を、また、120mmの単軸押出機のホッパーにPBT樹脂(B)を各々投入し、溶融混練した各々の樹脂(A)及び(B)を、導管を通してフィードブロックタイプの積層Tダイ(リップ幅1500mm、エアギャップ70mm、リップギャップ1.0mm)で合流させ、いずれも樹脂温度290℃で、紙上に溶融積層フィルムを連続的に共押出しした。この共押出しした積層フィルムを、紙と共に30℃にコントロールしたチロールで冷却、加圧しながら巻き取ることにより、表1及び表2に記載の厚みとなるラミネート紙を製造した。
【0055】
なお、比較例3では、導管の接続を変更し、60mmの単軸押出機にPBT樹脂(B)を、また、120mmの単軸押出機にPBT樹脂(A)を投入した。
ここで用いた紙は、平滑度30秒、35g/mの紙である。得られたラミネート紙より、130℃の熱プレス成形機を用いて箱形容器を作成し、種々評価を行った。その結果を表1及び表2に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
(1)表1の実施例1〜4より、溶融粘度が500(Pa・S)以下のPBT樹脂(A)と、溶融張力が1.0mN以上のPBT樹脂(B)を、膜厚比d(B)/d(A)が0.5〜50の範囲内となるようラミネートした場合には、押出し性、密着性、容器加工性、色調のいずれにも優れるラミネート紙が得られることが分かる。
(2)表1の実施例1〜4と表2の比較例1とを比較すると、PBT樹脂(B)の溶融張力が1.0mNを下まわると、押出ラミネート速度が遅く、押出し性及び容器加工性が劣ることが分かる。
(3)表1の実施例1と表2の比較例2及び5とを比較すると、PBT樹脂(A)の溶融粘度が500(Pa.S)を超える場合には、紙とポリエステル樹脂層との密着性が悪く、容器加工性も劣ることが分かる。
(4)表1の実施例1と表2の比較例3及び4を比較すると、膜厚比d(B)/d(A)が0.5よりも低いと押出ラミネート速度が遅く押出し性が劣り、また、膜厚比d(B)/d(A)が50を超えると密着性及び容器加工性が劣ることが分かる。
(5)表1の実施例1と表2の比較例5とを比較すると、PBT樹脂(B)中のチタン原子含有量が100ppmを大きく超えると、押出し性が劣り、紙の黄変量が大きくなる傾向があることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主たる成分とする少なくとも2種のポリエステル樹脂を、紙の少なくとも一方の表面に、共押出しによりラミネートする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法において、紙の表面側にラミネートするポリエステル樹脂(A)として、250℃、剪断速度91.2(sec−1)における溶融粘度が500(Pa・S)以下の樹脂を使用し、当該樹脂(A)を含む層上で、紙とは反対側にラミネートするポリエステル樹脂(B)として、250℃における溶融張力が1.0mN以上の樹脂を使用し、ラミネート後の膜厚比d(樹脂B)/d(樹脂A)が0.5〜50となるように、当該各樹脂(A)及び(B)をラミネートすることを特徴とする積層ポリエステルラミネート紙の製造方法。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(B)が、チタン原子を10〜100ppm(重量比)含有する請求項1に記載の積層ポリエステルラミネート紙の製造方法。
【請求項3】
紙の平滑度(JIS P8119に準拠した測定法による)が、10秒以上である請求項1又は2に記載の積層ポリエステルラミネート紙の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの方法により製造されたことを特徴とする積層ポリエステルラミネート紙。
【請求項5】
請求項4に記載の積層ポリエステルラミネート紙を成形加工してなることを特徴とするポリエステルラミネート紙製容器。

【公開番号】特開2006−111007(P2006−111007A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267924(P2005−267924)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】