説明

積層体、電子部品搬送用部材及びこれを用いた電子部品搬送体

【課題】 帯電防止性、被着体への接着性、高温条件下での耐ブロッキング性、及び透明性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルム層上に、接着性樹脂層、及び2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層が積層されてなり、前記共重合体が、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体1g中に0.7〜3.0mmol有し、ガラス転移温度が50℃以上100℃以下である共重合体である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも接着性樹脂層と帯電防止層とを含む積層体及び電子部品搬送用部材と、これを用いた電子部品搬送体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、IC、トランジスタ、コンデンサー、抵抗、ダイオードなどの小型電子部品は、ポケットが連続的にエンボス成型されたプラスチック製キャリアテープに収納、輸送、保管されるが、その際に内容物の脱落を抑止する蓋部材として熱シール可能なカバーテープが用いられている。電子部品は、使用の際にカバーテープを剥離して取り出されるが、半導体素子は一般に静電気に弱く、カバーテープ剥離時の静電気や、輸送時の振動等による摩擦で発生する静電気によりこれら電子部品が破壊や劣化を起こしてしまうという問題があり、静電対策が重要課題となっている。このため樹脂フィルム、熱接着層及び帯電防止層からなるカバーテープが提案されている。
【0003】
例えば透明熱可塑性樹脂フィルム層と、低融点ポリエステルや低融点ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる熱接着層と、錫、アンチモン及び/又はインジウムの酸化物微粒子20〜80質量%と透明樹脂80〜15質量%とからなり10〜10Ωの表面抵抗値を有する帯電防止層を備えたカバーテープが提案されている(特許文献1)。しかし帯電防止層を塗布形成する必要があり作業性が良くなく、また高価な金属酸化物微粒子を含むため価格が高くなってしまう。
【0004】
また、4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤をウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等に分散させた組成物を熱接着性樹脂層面に塗布することにより帯電防止性ブロッキング防止層が形成されたカバーテープが提案されている(特許文献2)。しかし得られるテープの表面抵抗値は1011〜1013Ωのオーダーで、十分な帯電防止性があるとは言えない。また界面活性剤を分散させる方法はブリードが生じシール性が不安定となり、帯電防止性も低下する虞がある。
【0005】
更に、エチレン酢酸ビニル共重合体からなる接着層上にアクリル樹脂からなるオーバーコート層を有するカバーテープも提案されているが(特許文献3)、実際上はブロッキング防止剤として架橋微粒子等を添加する必要があるため透明度の低いテープしか得られていない。
【特許文献1】特開平7−251860号公報
【特許文献2】特開2004−051105号公報
【特許文献3】特開2003−181999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、帯電防止性、被着体への接着性、高温条件下での耐ブロッキング性、及び透明性に優れた積層体及び電子部品搬送用部材と、これを用いた電子部品搬送体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、帯電防止層に、特定のカチオン性基を含有する構造を持ち特定範囲のガラス転移温度を有するポリマーを用いることにより上記課題を解決することを見出し本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は、樹脂フィルム層上に、接着性樹脂層、及び2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層が積層されてなり、前記共重合体が、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体1g中に0.7〜3.0mmol有し、ガラス転移温度が50℃以上100℃以下である共重合体であることを特徴とする積層体に存する。
【0008】
好ましくは共重合体を含む層の23℃、60%RHにおける表面抵抗値が1.0×1012Ω以下である。また好ましくはラジカル重合性単量体の1種以上が(メタ)アクリル酸エステルである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」の表記は「メタクリル酸及び/又はアクリル酸」を指す。
また好ましくは前記ラジカル重合性単量体の1種以上が上記一般式(I)の構造を有する。
【0009】
本発明の別の要旨は、このような積層体からなることを特徴とする電子部品搬送用部材に存する。特にこのような積層体を、電子部品を収納、輸送、保管するためのキャリアテープやカバーテープとして用いると好ましい。
本発明の更に別の要旨は、電子部品を収容する電子部品収容部と、前記電子部品収容部を覆うカバーテープとを備えた電子部品搬送体であって、カバーテープが前記積層体からなることを特徴とする電子部品搬送体に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯電防止性、被着体への接着性、高温条件下での耐ブロッキング性、及び透明性に優れた積層体を得ることができる。
また、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体中に含むので、ブリードが生じることがなくシール性に悪影響を及ぼすことがないし、帯電防止性を半永久的に有する利点がある。
【0011】
この積層体は電子部品搬送用部材として有用であり、特にIC、トランジスタ、コンデンサー、抵抗、ダイオードなどの半導体、電子部品を収納、輸送、保管するためのキャリアテープやカバーテープなどに用いると、テープの耐ブロッキング性に優れ、カバーテープとキャリアテープとを熱接着する際の接着性に優れる。また帯電防止性に優れるため、キャリアテープとカバーテープとを剥離して収納されている電子部品を取り出す際に、剥離帯電による電子部品のカバーテープへの付着及び電子部品の静電破壊を防止できる。また摩擦による静電気の発生も抑えることができ、電子部品の破壊や劣化を抑制できる。
【0012】
更に本積層体は耐ブロッキング性に優れるため、ロール状に巻き取った際にブロッキングするのを防止でき、またカバーテープやキャリアテープとして用いた場合に、高温条件下で長期保存された電子部品がテープに付着して取り出せなくなることが防止できる。さらに、得られる積層体の透明度が高いためカバーテープとして使用した場合に視認性に優れる。
【0013】
従ってカバーテープに本積層体を用いた電子部品搬送体は、電子部品収容部とカバーテープとの接着性が良く、高温条件下での耐ブロッキング性や透明性に優れ、かつ輸送時や剥離時の静電気の発生を抑えることができ、電子部品に破壊や劣化を抑制できる利点がある。
なお本発明においては上記した1以上の効果があればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係わる積層体の層構成は、樹脂フィルム層上に、接着性樹脂層、及び2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層が積層されてなり、この共重合体は、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体1g中に0.7〜3.0mmol有し、かつガラス転移温度が50℃以上100℃以下である。好ましくは樹脂フィルム層上に、接着性樹脂層、2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層が、この順に積層されてなる。
【0015】
上記共重合体が4級アンモニウム塩型カチオン性基を上記範囲含むことで、これを含む層はいわゆる帯電防止層として働く(以下、この層を帯電防止層と称する)。そして共重合体のガラス転移温度(Tg)を特定範囲とすることで耐ブロッキング特性を向上させることができる。前記特許文献3ではアクリル樹脂を用いたオーバーコート層が提案されているが、耐ブロッキング性が十分ではなく、ブロッキング防止剤として別に架橋微粒子等を添加している。本発明者の検討によれば、これは樹脂のガラス転移温度が50℃以下と低いためと考えられる。本発明ではガラス転移温度が50℃以上100℃以下のポリマーを用いることで耐ブロッキング性を十分なものとしたので、別にブロッキング防止剤を含む必要が無く、透明度の高い積層体が得られる利点がある。但し必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲でブロッキング防止剤を含むことを排除するものではない。
【0016】
本発明に用いる樹脂フィルム層は、他の層を支持しうる強度を有し、接着、剥離に耐える適当な柔軟性を有していればよい。樹脂フィルム層の材質は、上記目的に叶うものであれば特に限定されないが、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、2軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、2軸延伸ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の各種樹脂を使用しうる。なかでも2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが好ましい。これら樹脂は1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
樹脂フィルム層の厚みは特に限定はされないが、通常10μm〜300μmである。このフィルム層は1枚からなっていてもよいが、同一又は異なるフィルムを2枚又は3枚貼り合わせてフィルム層としてもよい。貼り合わせたフィルムを用いると引張り強度が向上しカール防止を抑制できる利点がある。
接着性樹脂層は、本発明に係わる積層体を他の樹脂等と接着しうるものであればよく、接着性樹脂の材質は特に限定されないが、実用性の点から好ましくは熱接着性樹脂又は感圧接着性(粘着性)樹脂であり、熱又は圧力により積層体と他の樹脂層等と接着しうるものである。
【0018】
熱接着性樹脂としては、上記目的に叶うものであれば特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、或いは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等を使用しうる。
【0019】
感圧接着性(粘着性)樹脂としては、上記目的に叶うものであれば特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体ポリウレタン樹脂等を使用しうる。
これら接着性樹脂は1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
これら接着性樹脂に対しては、必要に応じて粘着性付与剤等、他の任意の添加剤を加えてもよい。粘着性付与剤としては、特に限定されないが、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン・インデン樹脂等を使用しうる。添加量は特に限定されないが、好ましくは接着性樹脂100質量部に対して1〜30質量部である。
【0021】
接着性樹脂層の厚みは特に限定はされないが、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。ただし通常100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。下限より厚いほど強い接着性が出やすい傾向があるが、上限より薄いほど作業性が高く接着作業が簡便かつ短時間になる傾向がある。
本発明の接着性樹脂層の形成方法は、特に限定されないが、接着性樹脂に、必要により溶媒や添加剤を加えた組成物を、例えばグラビアコート法、バーコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、エアーナイフ法などの各種コーティング方法によって樹脂フィルム層上に塗布することにより接着性樹脂層が形成される。コーティング方法、組成物の粘度等は、得たい接着性樹脂層の厚みによって適宜選択すればよい。
【0022】
本発明の積層体を例えばカバーテープに用いた場合、接着性樹脂層はカバーテープとキャリアテープとを接着する際の接着性を良くするが、逆に保管時などカバーテープをロール状に巻いた際にブロッキングを起こしやすくなるので、ブロッキングを防止する層を設ける必要がある。
このため本発明においては、更に、耐ブロッキング性と帯電防止性を兼ね備えた層として、2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体であって、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体1g中に0.7〜3.0mmol有し、ガラス転移温度が50℃以上100℃以下である共重合体を含む層を設ける。以下、本層を帯電防止層と称する。
【0023】
本発明に用いる2種以上のラジカル重合性単量体の種類は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、α−オレフィンなどを使用しうる。ラジカル重合性単量体の少なくとも1種は(メタ)アクリル酸エステルであることが望ましい。より望ましくはラジカル重合性単量体の2種が(メタ)アクリル酸エステルであり、最も望ましくは全てのラジカル重合性単量体が(メタ)アクリル酸エステルである。
【0024】
共重合体中に4級アンモニウム塩型カチオン性基を持たせるためには、通常、上記ラジカル重合性単量体の1種以上を4級アンモニウム塩型カチオン性単量体とする。
4級アンモニウム塩型カチオン性単量体の種類は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジベンジルアミノエチルエステル、(メタ)アクリルアミドジメチルプロピルアミン、(メタ)アクリルアミドジエチルプロピルアミン等の、塩化アルキル、塩化ベンジル、臭化アルキル、臭化ベンジル、CHClCOOR、(RSO等による変性物が挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。塩化アルキルとしては例えば塩化メチル、塩化エチル、臭化アルキルとしては例えば臭化メチル、臭化エチルが挙げられる。R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、又はベンジル基を表す。CHClCOORとしては例えばモノクロロ酢酸メチルエステル、モノクロロ酢酸エチルエステル、モノクロロ酢酸ブチルエステル、モノクロロ酢酸ベンジルエステルなどが挙げられる。(RSOとしては例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジベンジル硫酸などが挙げられる。
【0025】
好ましくは、4級アンモニウム塩型カチオン性単量体は(メタ)アクリル酸エステル構造又は(メタ)アクリルアミド構造を有する。より好ましくは下記一般式(I)の構造を有する。
【0026】
【化2】

【0027】
(但し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、ベンジル基又はCHCOORを表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を表し、Xは塩素イオン、臭素イオン又はRSOイオンを表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を表し、Zは2価の連結基であり酸素原子又はNHを表す。)
【0028】
これら単量体は1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、共重合体に含まれるこれらの4級アンモニウム塩型カチオン性基の含有量(カチオン性基含有量)は0.7mmol/g以上とし、3.0mmol/g以下とする。好ましい下限値は0.8mmol/gであり、より好ましくは1.0mmol/gであり、更に好ましくは1.2mmol/gである。好ましい上限値は2.5mmol/gであり、更に好ましくは2.0mmol/gである。下限値より含有量が多いほど帯電防止性能が高まる傾向にあり、上限値より含有量が少ないほど樹脂の吸湿性が低減され高温高湿条件下での耐ブロッキング性が向上する傾向にある。
【0029】
本発明においては、共重合体のガラス転移温度は50℃以上、100℃以下とする。この範囲とすることで接着性と耐ブロッキング性の両方に優れた積層体が得られる。好ましい下限値は60℃であり、更に好ましくは70℃である。好ましい上限値は90℃であり、更に好ましくは80℃である。ガラス転移温度が下限値より高いほど耐ブロッキング性が高まる傾向にある。ガラス転移温度が上限値より低いほど接着性が高まる傾向にある。
【0030】
本明細書中において共重合体のガラス転移温度は、以下の計算式から求められる値をいう。式中の符号の意義は以下に示す通りである。なお本発明においてガラス転移温度は摂氏温度(℃)で表すが、下記式においてはガラス転移温度は絶対温度(K)で表される。
【0031】
(数1)
1/Tg={W(a)/Tg(a)}+{W(b)/Tg(b)}+{W(c)/Tg(c)}+・・・
Tg:重合体のガラス転移温度(K)
Tg(a):単量体(a)の単独重合体のガラス転移温度(K)
Tg(b):単量体(b)の単独重合体のガラス転移温度(K)
Tg(c):単量体(c)の単独重合体のガラス転移温度(K)
W(a):重合体における単量体(a)から成る構造単位の質量分率
W(b):重合体における単量体(b)から成る構造単位の質量分率
W(c):重合体における単量体(c)から成る構造単位の質量分率
【0032】
このため共重合体のガラス転移温度がこの範囲となるようにラジカル重合性単量体の種類及び量を選ぶ必要がある。例えば、メタクリル酸メチルのホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度は100℃であり、メタクリル酸エチルのホモポリマーのガラス転移温度は65℃、メタクリル酸シクロヘキシルのホモポリマーのガラス転移温度は65℃、メタクリル酸イソブチルのホモポリマーのガラス転移温度は53℃、スチレンのホモポリマーのガラス転移温度は100℃である。このような、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上であるラジカル重合性単量体を少なくとも1種含むことが好ましい。その含有量は、全単量体の40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。但し90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下である。
【0033】
上記共重合体には、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の単量体を共重合してもよい。例えば帯電防止層の皮膜強度や基材への密着性を向上させる目的で官能基を有する単量体を共重合することもできる。官能基を有する単量体は、限定はされないが例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸グリシジルなどである。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。官能基を有する単量体を用いる場合の含有量は、好ましくは、全単量体の0.1質量%〜10質量%である。
【0034】
本発明に係わる共重合体には、必要に応じて他の任意の添加剤を加えてもよい。本発明の効果を著しく損なわない範囲で、界面活性剤や導電性金属酸化物などの帯電防止剤や、有機フィラー、無機フィラー、脂肪酸アミドなどのブロッキング防止剤を少量含ませてもよい。但し好ましくはこれら帯電防止剤やブロッキング防止剤を含まない。
帯電防止層の厚みは特に限定はされないが、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。ただし通常5μm以下であり、好ましくは1μm以下である。下限より厚いほど帯電防止性能及び耐ブロッキング性が高まる傾向にあり、上限より薄いほど積層体の接着性が向上する傾向がある。
【0035】
本発明の共重合体の製造法は、特に限定されないが、通常はラジカル重合によって製造され、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれも可能である。なかでも極性の高い有機溶媒中で溶液重合によって製造することが好ましい。有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒などを用いることができる。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物などを用いることができる。
【0036】
本発明の帯電防止層の形成方法は、特に限定されないが、得られた共重合体に、必要により溶媒や添加剤を加えた組成物を、例えばグラビアコート法、バーコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、エアーナイフ法などの各種コーティング方法によって接着性樹脂層上に塗布することにより帯電防止層が形成される。コーティング方法、組成物の粘度等は、得たい帯電防止層の厚みによって適宜選択すればよい。
【0037】
接着性樹脂層上に上記の耐ブロッキング性に優れた帯電防止層を形成することにより、帯電防止性に優れ、且つ接着性樹脂層の接着性を損なわずに優れた耐ブロッキング性を得ることができる。また本帯電防止層は透明性にも優れるので、透明性に優れた積層体が得られ、カバーテープやキャリアテープなど電子部品搬送用部材として使用した場合に、中に封入された電子部品を、目視でき、或いは光センサーなどによって確実に検出でき好ましい。本発明の積層体全体としてのヘイズは10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下であり、更に好ましくは6%以下である。ヘイズは低いほど良いが、通常1%以上である。
【0038】
こうして得られた積層体の、帯電防止層表面の表面抵抗値は、23℃、60%RHの条件下で測定した時に1.0×1012Ω以下であることが好ましい。より好ましくは1.0×1011Ω以下、更に好ましくは1.0×1010Ω以下である。表面抵抗値が低いほど、帯電防止性能が高く、積層体にゴミや埃が付着しにくく、電子部品搬送用部材として使用した場合に、静電気による電子部品の破壊・劣化を抑えることができる。また剥離性が安定するので電子部品の取り出し時の飛び出しなどによる実装不具合を低減できる。表面抵抗値は低いほど好ましいが、通常、1.0×10Ω以上である。
【0039】
本発明においては、樹脂フィルム層、接着性樹脂層、及び2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層(帯電防止層)は、直接積層してもよく、また必要に応じて他の層を間に挟んでもよいし、最外層の外側に更に層を形成してもよい。
例えば、それぞれの層の密着性を高めるため、各層の間にプライマー層を形成してもよい。プライマーとしては例えばポリウレタン系、ポリエステル系などのアンカーコート剤を用いることができる。プライマー層を設ける場合は、その厚みは通常、5μm以下である。或いは積層体と他の樹脂等とのヒートシール時の密着性を高めるために、クッション材的な役割を担う中間層を樹脂フィルム層と接着性樹脂層との間に設けてもよい。例えばポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0040】
また、必要に応じて樹脂フィルム層の外側にも帯電防止層を設けてもよい。
本発明に係わる積層体は電子部品搬送用部材として有用であり、特にIC、トランジスタ、コンデンサー、抵抗、ダイオードなどの半導体、電子部品を収納、輸送、保管するためのキャリアテープやカバーテープなどに用いると、テープの耐ブロッキング性に優れ、カバーテープとキャリアテープとを熱接着する際の接着性に優れる。また帯電防止性に優れるため、キャリアテープとカバーテープとを剥離して収納されている電子部品を取り出す際に、剥離帯電による電子部品のカバーテープへの付着及び電子部品の静電破壊を防止できる。また摩擦による静電気の発生も抑えることができ、電子部品の破壊や劣化を抑制できる。
【0041】
更に本積層体は耐ブロッキング性に優れるため、ロール状に巻き取った際にブロッキングするのを防止でき、またカバーテープやキャリアテープとして用いた場合に、高温条件下で長期保存された電子部品がテープに付着して取り出せなくなることが防止できる。さらに、得られる積層体の透明度が高いためカバーテープとして使用した場合に視認性に優れる。
【0042】
従って本発明に係わる積層体は電子部品を収容する電子部品収容部と、前記電子部品収容部を覆うカバーテープとを備えた電子部品搬送体のカバーテープとして好適である。カバーテープに本積層体を用いた電子部品搬送体は、電子部品収容部とカバーテープとの接着性が良く、高温条件下での耐ブロッキング性や透明性に優れ、かつ輸送時や剥離時の静電気の発生を抑えることができ、電子部品に破壊や劣化を抑制できる利点がある。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[測定方法及び評価方法]
(1)ヒートシール強度
実施例及び比較例で作成した積層体と、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面とを重ね合わせ、120℃×1kgf/cm×1秒の条件でヒートシールを行った。次いでこれを幅15mmの短冊状にカットし、23℃、60%RHの条件下に24時間以上養生した。その後、同条件下で剥離試験を行い接着力を測定した。剥離条件は、180°剥離で剥離速度は300mm/分とした。
ヒートシール強度の評価基準は以下の通りである。
○ :接着力が3N/15mm以上
× :接着力が3N/15mm未満
【0044】
(2)耐ブロッキング性
実施例及び比較例で作成した積層体を2枚重ねて、70℃にて50gf/cmで加圧して24時間放置した後に室温まで戻した。次いで、フィルムを手で剥離して密着の有無を調べた。
耐ブロッキング性の評価基準は以下の通りである。
○:密着なし、軽く剥離する。
×:密着あり。
【0045】
(3)表面抵抗値
実施例及び比較例で作成した積層体を、23℃、60%RHの条件下で24時間以上養生した後に、帯電防止層表面の表面抵抗値(Ω)を測定した。表面抵抗値の測定は高田理研製HIGH MEGOHM METERを用いて23℃、湿度60%RHの条件下で行った。
【0046】
(4)透明性
ヘイズメーター(日本電色工業製 MODEL1001DP)によって積層体のヘイズ(HAZE)をJIS K7105 に準拠して測定した。
【0047】
(5)ガラス転移温度
共重合体のガラス転移温度は以下の式を用いて計算により求めた。式中の符号の意義は以下に示す通りである。なおガラス転移温度は絶対温度(K)で表される。
【0048】
(数2)
1/Tg={W(a)/Tg(a)}+{W(b)/Tg(b)}+{W(c)/Tg(c)}+・・・
Tg:重合体のガラス転移温度(K)
Tg(a):単量体(a)の単独重合体のガラス転移温度(K)
Tg(b):単量体(b)の単独重合体のガラス転移温度(K)
Tg(c):単量体(c)の単独重合体のガラス転移温度(K)
W(a):重合体における単量体(a)から成る構造単位の質量分率
W(b):重合体における単量体(b)から成る構造単位の質量分率
W(c):重合体における単量体(c)から成る構造単位の質量分率
【0049】
なお、実施例及び比較例で用いた各単量体の単独重合体のガラス転移温度(℃)は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル 100℃
EMA:メタクリル酸エチル 65℃
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル 65℃
IBMA:メタクリル酸イソブチル 53℃
BA:アクリル酸ブチル −54℃
DMC:メタクリロイルオキシエチル(トリメチル)アンモニウムクロリド 50℃
【0050】
[4級アンモニウム塩型カチオン性基を有する共重合体の製造]
<製造例1>
窒素導入管、コンデンサーを備えたフラスコに、メタクリル酸メチル(25質量部)、メタクリル酸シクロヘキシル(20質量部)、メタクリル酸イソブチル(30質量部)、メタクリロイルオキシエチル(トリメチル)アンモニウムクロリドの80質量%水溶液(41.3質量部)、ソルミックスA−11(エタノール/メタノール/イソプロパノール混合溶媒、154質量部)を入れ、反応系内を窒素で置換した後に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(1.1質量部)を添加し、80℃に昇温して8時間保持し、重合を行った。
【0051】
得られた共重合体の4級アンモニウム塩型カチオン性基の含有量(カチオン性基含有量)を計算により求めたところ1.47mmol/gであった。またガラス転移温度を計算により求めたところ64℃であった。
【0052】
<製造例2〜4>
重合に供する各単量体の種類及び量(質量部)を表−1の通りとした以外は製造例1と同様にして、4級アンモニウム塩基構造を有する共重合体の製造を行った。但し、製造例5のみ、重合に使用する溶媒としてソルミックスA−11:トルエン=8:2(質量比)の混合溶媒を用いた。
得られた共重合体のカチオン性基含有量及びガラス転移温度を併せて表−1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
なお表中の略号の意味は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
EMA:メタクリル酸エチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
IBMA:メタクリル酸イソブチル
BA:アクリル酸ブチル
DMC:メタクリロイルオキシエチル(トリメチル)アンモニウムクロリド
(表中のDMCの質量は80質量%水溶液としての質量である。)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0055】
[積層体の作製]
<実施例1>
片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、熱接着性樹脂として酸変性ポリオレフィン系の非水分散体(三菱化学製サーフレンAP−343)をバーコーターで塗布し100℃にて乾燥して、厚さが20μmの熱接着層を形成した。
その後、製造例1で得られた共重合体を熱接着性樹脂層の上にバーコーターで塗布し100℃にて乾燥して、帯電防止層を0.5μmの厚さに形成した。このようにして2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層/帯電防止層からなる積層体を作製した。
【0056】
<実施例2>
製造例1で得られた共重合体に替えて製造例2で得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層/帯電防止層からなる積層体を作製した。
【0057】
<実施例3>
製造例1で得られた共重合体に替えて製造例3で得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層/帯電防止層からなる積層体を作製した。
【0058】
<比較例1>
製造例1で得られた共重合体に替えて製造例4で得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層/帯電防止層からなる積層体を作製した。
【0059】
<比較例2>
製造例1で得られた共重合体に替えて製造例5で得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層/帯電防止層からなる積層体を作製した。
【0060】
<比較例3>
片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、熱接着性樹脂として酸変性ポリオレフィン系の非水分散体(三菱化学製サーフレンAP−343)をバーコーターで塗布し100℃にて乾燥して、厚さが20μmの熱接着層を形成した。このようにして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/熱接着性樹脂層の2層からなる積層体を作製した。
【0061】
[積層体の評価]
実施例1〜3及び比較例1〜3について、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、表面抵抗値、透明性(ヘイズ)を測定した。結果を表−2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
帯電防止層にガラス転移温度が50℃以上100℃以下の4級アンモニウム塩基構造を有する共重合体を用いた実施例1〜3の積層体は、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、表面抵抗値、透明性(ヘイズ)の全てに優れるのに対し、ガラス転移温度が50℃未満の4級アンモニウム塩基構造を有する共重合体を用いた比較例1の積層体は、耐ブロッキング性が悪くカバーテープとして実用に耐えないものであった。カチオン濃度が低いカチオン性共重合体を用いた比較例2の積層体は、表面抵抗値が高くカバーテープとして実用に耐えないものであった。また帯電防止層を設けなかった比較例3の積層体も、表面抵抗値が高くカバーテープとして実用に耐えないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム層上に、接着性樹脂層、及び2種以上のラジカル重合性単量体の共重合体を含む層が積層されてなり、
前記共重合体が、4級アンモニウム塩型カチオン性基を共重合体1g中に0.7〜3.0mmol有し、ガラス転移温度が50℃以上100℃以下である共重合体である、ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記共重合体を含む層の、23℃、60%RHにおける表面抵抗値が1.0×1012Ω以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ラジカル重合性単量体の1種以上が下記一般式(I)の構造を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【化1】

(但し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、ベンジル基又はCHCOORを表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を表し、Xは塩素イオン、臭素イオン又はRSOイオンを表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を表し、Zは2価の連結基であり酸素原子又はNHを表す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とする電子部品搬送用部材。
【請求項5】
電子部品を収容する電子部品収容部と、前記電子部品収容部を覆うカバーテープとを備えた電子部品搬送体であって、前記カバーテープが請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とする電子部品搬送体。

【公開番号】特開2007−1258(P2007−1258A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186965(P2005−186965)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】