説明

積層体及びそれを用いた太陽電池

【課題】電池製造工程の熱処理に耐え、実用的な耐久性を兼ね備えた軽量の積層体及びそれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の積層体は、第1面と第2面を有するガラス板と、ガラス板の第1面に形成された導電膜と、導電膜上に形成された光活性層とを備えた積層体であって、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなり、10μm〜2.2mmの厚みを有し、ガラス板の第2面に樹脂が形成されてなることを特徴とする。
また、本発明の太陽電池は、第1面と第2面を有するガラス板と、ガラス板の第1面に形成された導電膜と、導電膜上に形成された光活性層とを備えた積層体と、透光性基材と、透光性基材の片面に形成された透明電極と、積層体と透明電極とに間に封入された電解液とを備え、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなり、10μm〜2.2mmの厚みを有し、ガラス板の第2面に樹脂が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、特に太陽電池に用いる積層体及びそれを用いた太陽電池、特に色素増感型太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、太陽電池は次世代のクリーンエネルギー源として大いに注目を集めている。中でも色素増感型太陽電池は製造が容易で、電池製造にかかる環境負荷が小さいこと、室内での発電効率に優れることなどから近年特に注目を集めている。従来、太陽電池はガラス基板上に発電材料を配置した構造のものが用いられているが、ガラス基板の重量が大きいこと、或いは曲面形状のものが製造できないことが施工上の制約条件となっている。
【0003】
また、本技術分野においては、軽量で柔軟性に富んだ太陽電池の開発が強く求められている。尚、太陽電池が発電するための光源は必ずしも太陽光である必要は無く人工光でも良いが、人工光を利用した発電装置も含めて本願では太陽電池と表現する。
【0004】
軽量で柔軟性に富んだ太陽電池を作製するには基板材料としてガラスの代わりに樹脂を用いることが考えられるが、一般に樹脂は耐熱性が低いため、半導体電極(光活性層)を基板に形成するための熱工程に耐えない。この問題を解決するために、マイクロ波を用いて基板上の光活性物質のみを選択的に加熱する色素増感型電池作製方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】内田、「ナノ結晶酸化チタン膜のマイクロ波焼成と光電子移動」、光触媒、光機能材料研究会、16、p31−38(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のように、マイクロ波加熱技術を用いることで樹脂を基板とした軽量で柔軟性に富んだ色素増感型太陽電池を製造することが出来る。しかしならが樹脂基板を用いた太陽電池を屋外で使用すると、樹脂基板が紫外線等によって劣化しやすい、もしくは、樹脂のガス透過性が高いために電池内封入物(電解液成分)が樹脂を透過して揮発するという、耐久性上の問題があり、実用的な電池を製造することは困難であった。さらにマイクロ波照射装置が高価であり、産業面への応用が困難なことも欠点の一つである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、電池製造工程の熱処理に耐え、実用的な耐久性を兼ね備えた軽量の積層体及びそれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、歪点の高いガラス板の表面に樹脂を形成した積層体を太陽電池の部材として用いることによって、経済性、軽量化、安全性及び耐久性が優れた太陽電池を得ることができることを見出し、本発明として提案するものである。
【0008】
すなわち、本発明の積層体は、第1面と第2面を有するガラス板と、ガラス板の第1面に形成された導電膜と、導電膜上に形成された光活性層とを備えた積層体であって、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなり、10μm〜2.2mmの厚みを有し、ガラス板の第2面に樹脂が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の太陽電池は、第1面と第2面を有するガラス板と、ガラス板の第1面に形成された導電膜と、導電膜上に形成された光活性層とを備えた積層体と、透光性基材と、透光性基材の片面に形成された透明電極と、積層体と透明電極とに間に封入された電解液とを備え、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなり、10μm〜2.2mmの厚みを有し、ガラス板の第2面に樹脂が形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、上記した構成を有しているため、それを用いた太陽電池が、電池製造工程の熱処理に耐え、実用的な耐久性を兼ね備え、軽量となる。すなわち、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなるため、酸化チタン等からなる光活性層をガラス板上に形成する際、高価な装置を必要とするマイクロ波を使用せずに、汎用性の高い熱処理装置を使用でき、製造効率が高く、コストを低く抑えることができる。しかも、光活性層を、高温でガラス板上に焼き付けても、ガラスの歪点が熱処理温度より高いため、ガラス板が変形することがない。またガラス板の厚みが2.2mm以下であるため、太陽電池の軽量化が図れるとともに、ガラス板の表面に形成された樹脂がガラス板の破損を抑制し、仮に破損したとしても、飛散することがない。また、本発明の積層体は、基材としてガラス板を使用しているため、太陽電池の電解液が積層体を通って外部に揮発することが無くあるいは外部から水分やガスが侵入することが無く、太陽電池の長期安定性に優れる。さらに、ガラス板にクラックが生じたとしても、その表面に形成された樹脂により電解液の流出を防止できる。
【0011】
従って、本発明の積層体を用いた太陽電池は、経済性、軽量化、安全性及び耐久性に優れるため、これを設置する構造体に負担をかけることが無く、屋外での使用に充分耐えることができ実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、光活性層は、紫外光、可視光、近赤外光、太陽光、照明光等の光の照射によって、電子と正孔とを発生する材料からなり、例えば、色素増感型太陽電池では、酸化チタン粉末からなり、酸化チタン粉末の表面には、光を吸収させるための色素が化学吸着させてある。また、導電膜は、生じた電子を外部回路へと導くための導体としての役割を担い、通常ITO、FTO、ATOまたは金属薄膜からなる。
【0013】
本発明の積層体は、ガラス板が、10μm〜0.8mmの厚みを有する。ガラス板が0.8mmよりも厚いと、軽量化の効果が低くなり、ガラス板が10μmよりも薄いと、柔軟性(可撓性)に優れるが破損し易くなる。
【0014】
またガラス板は、20μm〜0.3mmの厚みを有することが好ましい。このようにすれば、太陽電池の更なる軽量化が図れるとともに、柔軟性に富み、設置場所の適用範囲が拡がる。より好ましいガラス板の厚みは、30μm〜0.2mmであり、さらに好ましいガラス板の厚みは、40μm〜0.1mmである。
【0015】
またガラス板の柔軟性(可撓性)を決定する因子としては、ガラス板の厚みの他に、ガラス板の弾性率が重要となる。従って、ガラス板は、弾性率が100GPa以下であることが好ましい。このようにすれば、ガラスの柔軟性(可撓性)が損なわれることが無い。弾性率は、90GPa以下であることがより好ましく、80GPa以下であることがさらに好ましい。
【0016】
またガラス板は、その表面を研磨することによって作製しても良いが、研磨加工による手間、コストが嵩み、また研磨によって生じたガラス表面の傷が強度を低下させるため、ガラス板の第1面及び/又は第2面が無研磨面であることが好ましく、第1面及び第2面の両面が無研磨面であることがより好ましい。肉薄で無研磨面を有するガラス板を大量に且つ安価に製造するには、オーバーフロー法、スロットダウン法、リドロー法等で成形することが適している。
【0017】
ガラス板の表面に樹脂を形成する方法としては、熱圧着法が好適である。熱圧着法は、加熱によって樹脂を軟化させガラス板の表面に圧着する方法であり、接着剤を使用しないため、長期の屋外での使用等によって接着剤が劣化し剥離が生じる虞がない。尚、ここで言う接着剤とは粘着性の接着層を指し、樹脂表面に形成された密着性を向上させるための表面改質層等は含まれない。この熱圧着法においては、ガラス板と樹脂の熱膨張係数の違いによって冷却時に応力が発生する。一般にガラスは樹脂に比較して熱膨張係数が小さいため、応力を低減するためにはガラスの熱膨張係数が大きい方が好ましい。ただし、あまり熱膨張係数が大きすぎると光活性層をガラス板の表面に焼き付ける際、ガラス板が反ったり割れたりするため、ガラス板の熱膨張係数の好適な範囲は、30〜380℃の温度範囲において、20×10-7/℃〜150×10-7/℃である。より好ましい範囲は、25×10-7/℃〜130×10-7/℃であり、さらに好ましい範囲は、30×10-7/℃〜110×10-7/℃である。
【0018】
本発明の積層体は、太陽電池の部材として好適に使用可能であるが、太陽電池は屋外に設置される場合が想定されるため、飛来物等による物理的衝撃により破損する恐れが有り、そのような場合でも落下の危険が小さいことが必要とされる。破損時の落下を防止するためには、破損によって破片が飛散せず一体性を保つことが要求される。そのためには太陽電池に加わる衝撃を伸びによって吸収し、破断しにくい材料で太陽電池を構成することが好ましい。よって本発明に用いられる樹脂の破断伸びは200%以上、より好ましくは300%以上、さらに好ましくは400%以上であると良い。さらに引っ張り応力に対する強度が高い方が破断を起こしにくいため、樹脂の引っ張り強度は10MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましい。
【0019】
また樹脂は、電解液が揮発しないように、水分透過性の小さい材料であることが好ましく、具体的には樹脂の水分透過性が8×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることが好ましく、6×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることがより好ましい。
【0020】
また、太陽電池は建造物や乗り物(自動車、船舶等)に取り付けて使用されることが多い。従って火災に晒される危険があり、その際、延焼を増長するような可燃性の高い材料で電池を構成することは避ける必要がある。従って、樹脂は難燃性であることが好ましく、具体的にはUL94規格において94V−2グレードよりも高い難燃性の樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは94V−1グレード以上、より好ましくは94V−0グレードの難燃性を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
上記した構成において、樹脂は、実用的な耐久性を有する樹脂であれば各種のものが使用可能であるが、直鎖状の分子構造を有する共重合体樹脂が耐久性に優れるため好ましく、フッ素化合物からなる樹脂(フッ素樹脂)が特に耐久性に優れ、外部環境や電池に用いる内部材料に対する化学的な安定性に優れるためにより好ましい。なかでもテトラフロロエチレンヘキサフロロプロピレンビニリデンフルオライド(THV)からなる樹脂は溶融温度が100〜200℃と低く熱圧着が容易であることから特に好ましい。この他にもフロリネーテッドエチレンプロピレン(FEP)、パーフロロアルキルビニル(PFA)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、エチレンテトラフロロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフロロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフロロエチレン(ECTFE)などのフッ素系樹脂も使用可能である。
【0022】
また樹脂の厚みは特に限定されないが、柔軟性と強度を確保する必要から、0.03〜3mmであることが好ましく、0.05〜1mmであるとより好ましい。
【0023】
本発明の太陽電池は、上記した積層体と、透光性基材と、透光性基材の片面に形成された透明電極と、積層体と透明電極との間に封入された電解液とを備えたことを特徴としている。尚、電解液は、色素増感型太陽電池の場合、ヨウ素電解質溶液とすることが好ましい。
【0024】
上記した構成において、積層体が有するガラス板及び樹脂をそれぞれ第1のガラス板及び第1の樹脂としたとき、透光性基材は、第1面及び第2面を有する第2のガラス板と、第2のガラス板の第1面に形成された第2の樹脂とからなることが好ましい。このようにすれば、第2のガラス板の第1面に形成された第2の樹脂が第2のガラス板の破損を抑制し、仮に破損したとしても、飛散することがない。また、第2のガラス板によって電解液が外部に揮発することがない。尚、この場合、透明電極は第2のガラス板の第2面に形成される。
【0025】
また、透光性基材に用いられる第2のガラス板は、10μm〜2.2mmの厚みを有することが好ましい。このようにすれば、太陽電池の軽量化がより一層図られる。
【0026】
また、第1のガラス板及び/又は第2のガラス板は、20μm〜0.3mmの厚みを有することが好ましい。このようにすれば、太陽電池の更なる軽量化が図れるとともに、柔軟性に富み、設置場所の適用範囲が拡がる。より好ましい第1のガラス板及び/又は第2のガラス板の厚みは、30μm〜0.2mmであり、さらに好ましい第1のガラス板及び/又は第2のガラス板の厚みは、40μm〜0.1mmである。また、第1のガラス板と第2のガラス板の厚みは、同一でなくても良い。
【0027】
さらに、第2のガラス板は、高温での加熱処理が必要ないため、物理強化、或いは化学強化処理を施した強化ガラスであれば、実用的な強度及び安全性が増す。
【0028】
尚、透光性基材には太陽電池の発電効率を増加させるために白金等の貴金属の薄膜を形成することも可能である。
【0029】
また第1のガラス板及び/又は第2のガラス板は、弾性率が100GPa以下であることが好ましい。このようにすれば、ガラスの柔軟性(可撓性)が損なわれることが無い。弾性率は、90GPa以下であることがより好ましく、80GPa以下であることがさらに好ましい。
【0030】
またガラス板は、その表面を研磨することによって作製しても良いが、研磨加工による手間、コストが嵩み、また研磨によって生じたガラス表面の傷が強度を低下させるため、第1のガラス板及び/又は第2のガラス板の第1面又は第2面が無研磨面であることが好ましく、第1面及び第2面の両面が無研磨面であることがより好ましい。肉薄で無研磨面を有するガラス板を大量に且つ安価に製造するには、オーバーフロー法、スロットダウン法、リドロー法等で成形することが適している。
【0031】
第1のガラス板の表面及び第2のガラス板の表面にそれぞれ第1の樹脂及び第2の樹脂を形成する方法としては、熱圧着法が好適である。熱圧着法は、加熱によって樹脂を軟化させガラス板の表面に圧着する方法であり、接着剤を使用しないため、長期の屋外での使用等によって接着剤が劣化し剥離が生じる虞がない。この熱圧着法においては、ガラス板と樹脂の熱膨張係数の違いによって冷却時に応力が発生する。一般にガラスは樹脂に比較して熱膨張係数が小さいため、応力を低減するためにはガラスの熱膨張係数が大きい方が好ましい。ただし、あまり熱膨張係数が大きすぎると光活性層を第1のガラス板の表面に焼き付ける際、ガラス板が反ったり割れたりするため、第1のガラス板の熱膨張係数の好適な範囲は、30〜380℃の温度範囲において、20×10-7/℃〜150×10-7/℃である。より好ましい範囲は、25×10-7/℃〜130×10-7/℃であり、さらに好ましい範囲は、30×10-7/℃〜110×10-7/℃である。尚、第2のガラス板の熱膨張係数は、太陽電池の反りを考慮して第1のガラス板の熱膨張係数を一致させることが好ましい。
【0032】
また透光性基材は、光活性層を焼き付ける必要がないため、第2の樹脂のみによって構成されていてもよい。この場合、第2の樹脂は、電解液中の水分が樹脂を通して外部に揮発しないようにあるいは外部から水分やガスが電解液中に侵入しないように、水分透過性の小さい材料であることが好ましく、具体的には第2の樹脂の水分透過性が8×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることが好ましく、6×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることがより好ましい。
【0033】
積層体における樹脂の場合と同様の理由から、本発明に用いられる第1の樹脂及び/又は第2の樹脂の破断伸びは200%以上、より好ましくは300%以上、さらに好ましくは400%以上であると良い。さらに引っ張り応力に対する強度が高い方が破断を起こしにくいため、本発明に用いられる第1の樹脂及び/又は第2の樹脂の引っ張り強度は10MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましい。
【0034】
また積層体における樹脂の場合と同様の理由から、本発明で使用される第1の樹脂及び/又は第2の樹脂は難燃性であることが好ましく、具体的にはUL94規格において94V−2グレードよりも高い難燃性の樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは94V−1グレード以上、より好ましくは94V−0グレードの難燃性を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
上記した構成において、第1の樹脂及び第2の樹脂は、実用的な耐久性を有する樹脂であれば各種のものが使用可能であるが、直鎖状の分子構造を有する共重合体樹脂が耐久性に優れるため好ましく、フッ素化合物からなる樹脂(フッ素樹脂)が特に耐久性に優れ、外部環境や電池に用いる内部材料に対する化学的な安定性に優れるためにより好ましい。なかでも、テトラフロロエチレンヘキサフロロプロピレンビニリデンフルオライド(THV)からなる樹脂は溶融温度が100〜200℃と低く熱圧着が容易であることから特に好ましい。この他にもフロリネーテッドエチレンプロピレン(FEP)、パーフロロアルキルビニル(PFA)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、エチレンテトラフロロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフロロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフロロエチレン(ECTFE)などのフッ素系樹脂も使用可能である。
【0036】
また第1の樹脂及び/又は第2の樹脂の厚みは特に限定されないが、柔軟性と強度を確保する必要から、0.03〜3mmであることが好ましく、0.05〜1mmであることがより好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明による実施例を、図および表に基づいて説明する。図1は、本発明の積層体の説明図であり、図2は、本発明の色素増感型太陽電池の説明図である。図3は、本発明の他の色素増感型太陽電池の説明図である。表1は、本発明の実施例1〜5、表2は、実施例6〜8、表3は、実施例9〜12、表4は、比較例1〜3を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
図1に示すように、実施例1〜5及び比較例1、2の積層体1は、第1面2aと第2面2bを有する第1のガラス板2と、第1のガラス板2の第1面2aに形成された導電膜3と、導電膜3上に形成された光活性層4と、第1のガラス板2の第2面2bに形成された第1の樹脂5を備えている。
【0043】
導電膜3はITO膜からなり、スパッタリング法により形成されている。また光活性層4はTiO2粉末をスラリー状にしてITO面にコーティングしたのち500℃で1時間焼成することによって形成してあり、TiO2粉末の表面には色素が化学吸着している。第1の樹脂5は140℃に加熱しながら2気圧で加圧することによって熱圧着法によってガラス板2と貼り合せてある。
【0044】
尚、第1のガラス板2として、実施例1では、日本電気硝子社製BLCを用い、実施例2〜12及び比較例1及び3では日本電気硝子社製OA−10を用い、比較例2では、日本電気硝子社製LG‐71を用いた。第1のガラス板2の厚み及び特性は、表1〜4に示した通りである。また第1の樹脂5は、表1〜4に示すような材質、厚み及び特性を有する樹脂からなる。比較例1の積層体は、第1のガラス板の厚みが3mmと厚く、第1の樹脂5が形成されていない。
【0045】
図2に示すように、実施例6の色素増感型太陽電池10は、実施例2に示した積層体1と、第2のガラス板6aとその第1面6aaに形成した第2の樹脂(THVフィルム)6bとからなる透光性基材6と、透光性基材6の片面に形成された透明電極(ITO膜)7と、さらに透明電極7上に形成されたPt膜からなる対極8と、積層体1の導電膜3と対極8とに間に封入された電解液9とを備えている。尚、電解液9は、ヨウ素電解質溶液からなり、光活性層4に含浸した状態で存在している。また、この色素増感型太陽電池10では、第1の樹脂5と第2の樹脂6bとはそれぞれ第1のガラス板及び第2のガラス板に同時に熱圧着することによって、積層体1と透光性基材6とを貼り合わせてある。ここで、実施例6〜8の第2のガラス板は、第1のガラス板と同一のものを用い、実施例6〜12の第2の樹脂は、第1の樹脂と同一のものを用いた。
【0046】
図3に示すように、実施例9〜12の色素増感型太陽電池20は、それぞれ実施例2〜5の積層体1と、第1の樹脂5と同一の第2の樹脂6bとからなる透光性基材6と、透光性基材6の片面に形成された透明電極(ITO膜)7と、さらに透明電極7上に形成されたPt膜からなる対極8と、積層体1の導電膜3と対極8とに間に封入された電解液9とを備えている以外は、実施例6と同様に構成されている。
【0047】
また、実施例1の第1のガラス板は、リドロー法によって、実施例2〜12及び比較例1、3の第1のガラス板及び第2のガラス板は、いずれもオーバーフロー法によって成形され、それらの表面はいずれも無研磨面となっているが、比較例2の第1のガラス板は、ロール成形法によって成形され、その両表面は成形後光学研磨されている。
【0048】
また、比較例3の色素増感型太陽電池(図示せず)は、比較例1に示した積層体と、第2のガラス板のみからなる透光性基材と、透光性基材の片面に形成された透明電極(ITO膜)と、さらに透明電極上に形成されたPt膜からなる対極と、積層体の導電膜と対極とに間に封入された電解液とを備えている。
【0049】
表1に示すように、実施例1〜5の積層体は、ガラス板の厚みが薄いため、軽量である。特に実施例1〜3の積層体は、ガラス板の厚さが比較例1の1/30以下であるため、柔軟性にも優れる。また実施例6〜12の色素増感型太陽電池も、ガラス板の厚みが薄いため、軽量である。特に実施例6、9及び10の色素増感型太陽電池は、ガラス板の厚みが0.1mmと薄いため、柔軟性にも優れる。その中でも実施例9、10は、第2のガラス板を備えていないため、より軽量で柔軟性も高い。また、実施例6〜12の色素増感型太陽電池は、第1の樹脂及び第2の樹脂によって、電解液の揮発を抑制できるとともに、第1のガラス板又は第2のガラス板にクラックが生じたとしても、電解液の流出を阻止できる。
【0050】
これに対して、比較例1の積層体及び比較例3の色素増感型太陽電池は、ガラス板の表面に樹脂がないため、実用的な強度及び安全性を得るためにはガラス板の厚みを厚くする必要が有り、重量が大きく剛直なものであった。比較例2の積層体は、第1のガラス板は厚みが薄いが、歪点の低いガラスからなるため、軽量で柔軟な積層体が得られたものの、光活性層の焼結の際にガラス板が軟化変形した。
【0051】
尚、ガラス板の歪点は、ファイバーエロンゲーション法によって測定した。また弾性率は、共振式弾性率測定装置によって測定した。熱膨張係数は、ディラトメーターによって測定した。また、樹脂の破断伸びは、引っ張り試験機によって、水分透過性はJIS K 7126:1987 プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験法によって測定した。さらに、樹脂の難燃性はUL94規格によって評価した。また、積層体及び太陽電池の柔軟性は、人力によって容易に曲げられる場合を“良好”とし、そうではない場合を“柔軟性無し”と評価した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の積層体の説明図である。
【図2】本発明における実施例6の色素増感型太陽電池の説明図である。
【図3】本発明における実施例9〜12の色素増感型太陽電池の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 積層体
2 第1のガラス板
2a 第1面
2b 第2面
3 導電膜(ITO膜)
4 光活性層
5 第1の樹脂
6 透光性基材
6a 第2のガラス板
6aa 第1面
6ab 第2面
6b 第2の樹脂
7 透明電極(ITO膜)
8 対極(Pt膜)
9 電解液(ヨウ素電解質溶液)
10、20 色素増感型太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面を有するガラス板と、ガラス板の第1面に形成された導電膜と、導電膜上に形成された光活性層とを備えた積層体であって、ガラス板が、400℃以上の歪点を有するガラスからなり、10μm〜2.2mmの厚みを有し、ガラス板の第2面に樹脂が形成されてなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
ガラス板が、20μm〜0.3mmの厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
ガラス板は、弾性率が100GPa以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
ガラス板は、第1面及び/又は第2面が無研磨面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
ガラス板は、熱膨張係数が30〜380℃の温度範囲において、20×10-7/℃〜150×10-7/℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
樹脂は、破断伸びが200%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
樹脂は、引っ張り強度が10MPa以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
樹脂は、水分透過性が、8×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
樹脂が、UL94規格の94V−2グレード又はそれよりも高い難燃性を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
樹脂が、直鎖状の分子構造を有する共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1〜9に記載の積層体。
【請求項11】
樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
フッ素樹脂が、テトラフロロエチレンヘキサフロロプロピレンビニリデンフルオライドからなる樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
樹脂がガラス板の第2面に熱圧着によって接着してなることを特徴とする請求項1〜12に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の積層体と、透光性基材と、透光性基材の片面に形成された透明電極と、積層体と透明電極との間に封入された電解液とを備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項15】
積層体が有するガラス板及び樹脂をそれぞれ第1のガラス板及び第1の樹脂としたとき、透光性基材が、第1面及び第2面を有する第2のガラス板と、第2のガラス板の第1面に形成された第2の樹脂とからなることを特徴とする請求項14に記載の太陽電池。
【請求項16】
第2のガラス板が、10μm〜2.2mmの厚みを有することを特徴とする請求項15に記載の太陽電池。
【請求項17】
第2のガラス板が、20μm〜0.3mmの厚みを有することを特徴とする請求項15に記載の太陽電池。
【請求項18】
第2のガラス板は、弾性率が100GPa以下であることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項19】
第2のガラス板は、第1面及び/又は第2面が無研磨面であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項20】
第2の樹脂が第2のガラス板の第1面に熱圧着によって接着してなることを特徴とする請求項15〜19に記載の太陽電池。
【請求項21】
透光性基材が、第2の樹脂のみからなることを特徴とする請求項14に記載の太陽電池。
【請求項22】
第2の樹脂は、破断伸びが200%以上であることを特徴とする請求項15〜21のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項23】
第2の樹脂は、引っ張り強度が10MPa以上であることを特徴とする請求項15〜22のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項24】
第2の樹脂が、UL94規格の94V−2グレード又はそれよりも高い難燃性を有することを特徴とする請求項15〜23のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項25】
第2の樹脂が、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項15〜24のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項26】
フッ素樹脂が、直鎖状の分子構造を有する共重合体樹脂であることを特徴とする請求項25に記載の太陽電池。
【請求項27】
フッ素樹脂が、テトラフロロエチレンヘキサフロロプロピレンビニリデンフルオライドからなる樹脂であることを特徴とする請求項25又は26に記載の太陽電池。
【請求項28】
第2の樹脂は、水分透過性が、8×10-11ml・cm/cm2・s・Pa以下であることを特徴とする請求項16〜27のいずれかに記載の太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−282783(P2008−282783A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143757(P2007−143757)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】