説明

積層体

【課題】複合体と基材との接着性に優れ、有機無機複合体を水媒体で膨潤させることによって、基材上にゲルに接着した積層体を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性モノマーの重合体と、水膨潤性粘土鉱物とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体の層を、基材上に設けた積層体であって、該ラジカル重合性モノマーが、所定の構造式下記構造式(1)等を有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマーを含み、更に、該有機無機複合体が、実質的に液状物質を含まず、且つ、基材との接着強度が2N/cm以上であることを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性に優れた有機無機複合体と基材が積層した積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲルは生態系と同じように多くの水を蓄えたソフトマテリアルで他の材料には無いユニークな性質を持っており、既に、農園芸用の保水材、水のう、おむつ、コンタクトレンズなどとして実用化されている。その他、止水材、保護材料、ダンピング材・振動防止材、低摩擦材料などや、更には、温度などの外部刺激に応答してゲルの体積、透明性などが変化する刺激応答性を利用して、弁、バルプ、スイッチ、薬物放出、人工筋肉、分離膜などへの応用が提案され多くの研究が行われている(非特許文献1、2)。しかし、ゲルは多くの水を含んでいるために機械的強度が弱く、実用化は限定された分野領域に限られているのが現状である。
【0003】
近年、ポリロタキサンやカテナンなどを架橋点として用いたトポロジカルなゲル(非特許文献3)、ゲルを構成する有機高分子がインターペネトレートネットワーク(IPN)構造的な網目構造を有するダブルネットワークゲル(非特許文献4)、更に、有機高分子と無機粘土鉱物とからなるナノコンポジット型ゲル(特許文献1、非特許文献5)が開発され、従来のゲルに比べ、高強度で高延伸性を示すゲルが得られるようになっている。この中で最も力学的特性に優れているのはナノコンポジット型ゲルである。しかし、このナノコンポジット型ゲルも引張破壊試験における破断強度は最大で1MPa程度であり、通常のプラスチィック材料の10分の1以下の強度で単独で使用するには限界があった。
【0004】
ゲルをガラス、プラスチィック、金属、セラミックスなど機械的強度に優れる基材に接着させて積層させることにより、用途が大きく広がることが期待される。例えば、角材などの表面を柔軟なゲル材料で覆ったり、振動吸収性に優れたゲルを基材の間に挟みこんだり、パイプなどの内壁を低摩擦性のゲルを覆うなどによりゲルの特性を生かした材料を提供することが可能となる。しかし、一般に多くの水を含んだゲルとこれら基材とを接着させることは、接着させるための接着剤も無く、困難であった。また、パップ剤などとして粘着剤をプラスチィック基材に塗布し、水媒体を含浸させて使用する方法は一般に知られているが、良好な粘着性を有する粘着剤は含水状態では非常に弱く、使用分野が限定されるという問題があった。
【0005】
ところで、上記特許文献1以外にも粘土鉱物を使用した有機無機複合体及びそのゲルに関する技術が開示されている。例えば、特許文献2(実施例3)では、アクリル酸2−メトキシエチル、粘土鉱物及び水を含有する溶液をガラス板上でゲル化させヒドロゲルを製造する実施例が記載されている。この実施例で製造されたヒドロゲルとガラス基板との接着強度を測定すると、0.02N/cmであった(本明細書に比較例2として記載)。
【0006】
また、特許文献3(合成例4、実施例7)では、アクリル酸2−メトキシエチルとN−イソプロピルアクリルアミドの混合モノマー、粘土鉱物及び水を含有する溶液をガラス板間でゲル化させてヒドロゲルを製造する技術が記載されている。更に、製造したヒドロゲルをポリプロピレン製トレイに載せ、乾燥させ、その後、テトラヒドロフランで膨潤させることが記載されている。この実施例で製造されたヒドロゲルとガラス基板との接着強度、ヒドロゲルとポリプロピレンとの接着強度、乾燥ゲルとポリプロピレンとの接着強度、テトラヒドロフランで膨潤させたゲルとポリプロピレンとの接着強度は非常に低いものであった。(本明細書に比較例3として記載)。
【0007】
以上の如く、有機無機複合体のゲル及びその乾燥物と基材との接着性に優れた積層体に関する技術は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−53629号
【特許文献2】特開2006−169314号(実施例3)
【特許文献3】特開2009−269971号(合成例4、実施例7)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】季刊化学総説「有機高分子ゲル」、日本化学会編、学会出版センター(1990)
【非特許文献2】荻野一善、長田義仁、伏見隆夫、山内愛造、「ゲル」、産業図書、(1991)
【非特許文献3】Yasushi Okumura, Kohzo Ito, Advanced Materials, Vol. 13, No. 7, page 485-487, (2001).
【非特許文献4】Yoshimi Tanaka, Jian Ping Gong, Yoshihito Osada, Progress in Polymer Science, Vol. 30, No. 1, page 1-9, (2005).
【非特許文献5】Kazutoshi Haraguchi, Toru Takehisa, Advanced Materials, Vol. 14, No. 16, page 1120-1124, (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、柔軟性と高強度を併せ持つ有機無機複合体及びそのゲルとガラスやプラスティクス材料等の基材とが良好な接着強度で積層された積層体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定構造の(メタ)アクリル酸エステルを含むラジカル重合性モノマーの重合体と粘土鉱物からなる有機無機複合体を用いた場合、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体(C)の層を、基材(D)上に設けた積層体であって、
該ラジカル重合性モノマー(A)が、下記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A1)を含み、
更に、該有機無機複合体(C)が、実質的に液状物質を含まず、
且つ、基材(D)との接着強度が2N/cm以上であることを特徴とする積層体を提供する。
【0013】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【0014】
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【0015】
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基、nは2〜50の整数である。)
【0016】
また、本発明は、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とからなる三次元網目中に液状物質を含んだ有機無機複合ゲル(E)の層を、基材(D)上に設けた積層体であって、
該ラジカル重合性モノマー(A)が、上記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A1)を含み、
該有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との接着強度が0.1N/cm以上であることを特徴とする積層体を提供する。
【0017】
更に、本発明は、上記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなり、実質的に液状物質を含有せず、任意の形状に腑形された有機無機複合体(C)全体、又は表面部分のみを水又は溶剤で膨潤させ、膨潤した表面を接触面として基材(D)上に積層させ、基材上の膨潤した有機無機複合体(C)を乾燥させ、次いで、乾燥した有機無機複合体(C)に液状物質を含浸させることによって、有機無機複合ゲル(E)とすることを特徴とする上記積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層体は、柔軟な有機無機複合体と高強度のガラスやプラスティクス材料などの基材とが良好な接着強度で積層したものに関するものであり、柔軟性と高強度を併せ持つ複合体を提供することができる。また、有機無機複合体は高い水膨潤性を有し、吸水後も基材と良好な接着性を保持し、水などの多く液状物質を含んだゲルと基材とが良好な接着強度で積層した積層体を提供することが可能である。
【0019】
本発明の積層体は、各種保護材料、ダンピング材料、振動防止材料、ライニングパイプなどとして、医療介護分野、機械分野、建築建材分野など初めてとして幅広い分野において使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の積層体の構造を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の積層体の構造は、例えば、図1の形態である。図1中、X有機無機複合体を示し、有機無機複合体(C)又は有機無機複合ゲル(E)を意味し、Dは基材(D)を意味している。図で示されている如く、本発明の積層体は、有機無機複合体(X)と基材(D)が単純に接着した積層体1(図1a参照)、基材(D1)と基材(D2)が有機無機複合体(X)を挟みこんだ構造の積層体2(図1b参照)、有機無機複合体(X1)と有機無機複合体(X2)が基材(D)を挟みこんだ構造の積層体3(図1c参照)、更には、これらが複数積み重なった積層体4〜6(図1d〜f参照)が含まれる。
【0022】
以上の如く、図1は板状の有機無機複合体(X)と基材(D)が積層した構造の積層体の例の模式図を示しており、図1〜6は板状の積層体の厚み方向、図7と8は面方向からの構造を示している。模式図1では板状の構造体の例を示しているが、複合体(X)や基材(D)の形状は積層可能なものであるならば制限されなく、フィルム状、シート状、ブロック状、箱型、或いは、ロット状、棒状、湾曲した表面を有する形状であっても良い。例えば、基材(D)の形状が、円形の断面を有する棒状(円柱状)である場合、棒状の基材(D)の曲面(側面)全体を有機無機複合体(C)又は有機無機複合ゲル(E)の薄膜で覆う形態であってもよい。
【0023】
また、積層する有機無機複合体(X)と基材(D)の面積は制限されなく、どちら一方の面積が大きくても構わない。また、基材(D)上に有機無機複合体(X)の小型片が多数接着した積層体7(図1g)、反対に、有機無機複合体(X)上に基材(D)の小型片が多数接着した積層体8(図1h)も含まれる。
【0024】
積層体2における2つの有機無機複合体(X)の組成、或いは、積層体3における2つの基材(D)の材質は異なるものを用いても構わない。同じように、積層体4〜6では複数の組成の有機無機複合体(X)、及び異なる材質の基材(D)を用いても良い。更に、積層体7と8において、複数ある小型片の有機無機複合体(X)の組成や基材(D)の材質は異なっていても良い。また、積層体7と8は、積層体2や3、或いは積層体4〜6のような積層構造であっても良い。
【0025】
基材(D)と実質的に液状物質を含まない有機無機複合体(C)との接着性は使用する基材(D)の材質などで異なるが、180°剥離試験を行った際の剥離強度が2N/cm以上、好ましくは3N/cm以上である。剥離強度の上限は、場合によっては有機無機複合体(C)の破壊強度を超える場合があるため、規定することが出来ないが、剥離される場合には、通常、30N/cm未満である。また、ガラス板や金属板など180°剥離試験が困難な場合は、90°剥離試験で代用することも可能である。
【0026】
本発明の実質的に液状物質を含まない有機無機複合体(C)とは、有機無機複合体(C)が基材(D)との剥離強度が2N/cm未満とならない程度の少量の液状物質を含有する場合があることであり、その液状物質の含有量(液状物質の質量/有機無機複合体の質量)は通常、0.7未満、好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。少量の液状物質を含有する例としては、吸湿による水の含有、或いは、粘着性や接着性を向上させることを目的にタッキファイヤーとして液状の樹脂や化合物を添加する場合が挙げられる。
【0027】
また、本発明の実質的に液状物質を含まない有機無機複合体(C)は、それ自身柔軟な材料であり、優れた力学的強度と延伸性を有する。本発明における柔軟な状態とは、フィルムやロットなど折り曲げ可能な形状の場合、90°、特に好ましくは180°折り曲げても、フィルムにクラックが生じたり、破壊したりすることのないことである。尚、折り曲げる際のフィルム厚は0.1mm以上である。また、本発明の有機無機複合体(C)は柔軟性と共に、それ自身優れた強度と延伸性を有している。引張破壊試験を行った際の破断伸度((破断時の長さ−初期長さ)×100/初期長さ)は50%以上、好ましくは100%以上であり、最大強度は0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上である。また、本発明の有機無機複合体(C)は、高い変形回復性を有する。長さL0の試料をLだけ引き延ばし、直ぐに応力を除去し弛緩させる。変形方向の試料長は弛緩と同時に大きく収縮し、その後、ゆっくりと変化する。応力除去後、1分以上経過した時点の変形方向の試料長をL1とすると、変形回復率(R=(L1−L0)×100/L);Lは変形量、L1は変形後の変形方向の試料の長さ、L0は変形前の変形方向の試料の長さ)は50%以上、好ましくは60%以上である。
【0028】
液状物質を含んだ有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との積層体の場合、基材(D)と有機無機複合ゲル(E)との接着性は使用する基材(D)の材質などで異なるが、180°剥離試験を行った際の剥離強度が0.1N/cm以上、好ましくは0.2N/cm以上である。剥離強度の上限は、有機無機複合ゲル(E)の破壊強度を超える場合があるため、規定することが出来ないが、剥離される場合には、通常、20N/cm未満である。また、ガラス板や金属板など180°剥離試験が困難な場合は、90°剥離試験で代用することも可能である。なお、本発明では剥離強度が有機無機複合体(C)のゲルの破壊強度を超える場合があるが、本発明の有機無機複合体(C)を水などの液状物質で膨潤させて得られるゲルは、ゲル材料としては非常に強い強度を有するものである。
【0029】
本発明の有機無機複合ゲル(E)は機械的に優れた靱性、つまり強さと伸びを併せ持つ。破断伸度は100%以上、好ましくは150%以上、特に好ましくは200%以上の延伸性を示すものであり、最大強度が5kPa以上、好ましくは10kPa以上のものである。伸張度と最大強度の上限は、通常、伸張度は5000%以下、最大強度は10MPa以下、好ましくは張度が4000%以下、最大強度が5MPa以下のものである。尚、ゲルの強度や破断伸度はゲルの膨潤度により大きく異なり、膨潤度が大きくなるほど、強度や破断伸度は低くなる。強度と破断伸度に対する上記値は、膨潤度が3〜8倍のゲルに対するものである。
【0030】
また、本発明の液状物質を含んだ有機無機複合ゲル(E)は、本発明の有機無機複合体(C)中に液状物質を含有したものであり、その量(液状物質の質量/有機無機複合体の質量)は通常、0.7〜100、好ましくは0.8〜50、特に好ましくは1〜30である。含有量が100を越えると有機無機複合ゲル(E)の力学強度が損なわれる場合がある。
【0031】
本発明で使用するラジカル重合性モノマー(A)は、必須成分として下記構造式(1)〜(3)のラジカル重合性モノマー(A1)を含むものである。これらは併用しても構わない。構造式(1)のモノマーとしては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレートなどが挙げられる。構造式(2)のモノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどが挙げられる。構造式(3)のモノマーとしては、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレートなどが挙げられる。特に、構造式(1)のモノマーとしては、メトキシエチルアクリレートを、構造式(2)のモノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレートやヒドロキシプロピルアクリレートを、構造式(3)のモノマーとしては、Rが水素原子、Rがメチル基、Rがエチレン基、n=3〜25の構造式のモノマーが好ましいものとして挙げることができる。
【0032】
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【0033】
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【0034】
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基、nは2〜50の整数である。)
【0035】
また、上記ラジカル重合性モノマー(A1)のいずれか1種以上と、N−置換(メタ)アクリルアミドの中の少なくとも1種以上のラジカル重合性モノマー(A2)を併用することができる。N−置換(メタ)アクリルアミドを併用することで水膨潤性が向上するとともに、水膨潤後も基材との接着性に優れた積層体を得ることができる。N-置換(メタ)アクリルアミドとして、N−メチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンを挙げることができる。中でも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンが特に好ましい。
【0036】
上記ラジカル重合性モノマー(A1)とラジカル重合性モノマー(A2)とを併用する場合、混合の割合は使用目的などにより異なるが、通常、ラジカル重合性モノマー(A1)98〜30重量%、ラジカル重合性モノマー(A2)2〜70重量%、好ましくはラジカル重合性モノマー(A1)95〜35重量%、ラジカル重合性モノマー(A2)5〜65重量%である。ラジカル重合性モノマー(A2)が70重量%を越えると有機無機複合体(C)の柔軟性が損なわれ、良好な接着強度の積層体が得られなかったり、クラックが発生するなどの問題が生じやすくなる。
【0037】
また、本発明が目的とする効果を損なわない範囲内で上述した以外のラジカル重合性モノマーを使用することは可能である。上述した以外のラジカル重合性モノマーの使用量はモノマーの種類や使用目的などにより異なるが、通常、全ラジカル重合性モノマー中の0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0038】
本発明の水膨潤性粘土鉱物(B)は、層状粘土鉱物であり、層間が水で膨潤し易い水膨潤性層状粘土鉱物である。水に均一分散可能な水膨潤性層状粘土鉱物が好ましく用いられる。特に好ましくは水中で分子レベル、すなわち単一層、若しくはそれに近いレベルで剥離し均一分散可能な水膨潤性層状粘土鉱物である。層状粘土鉱物としては、具体的には、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などの膨潤性粘土鉱物が用いられる。より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。これら水膨潤性粘土鉱物は混合して用いても構わない。
【0039】
上記水膨潤性粘土鉱物は前記ラジカル重合性モノマーを含有する溶液中で微細かつ均一に分散することが必要で、特に該溶液中に溶解することが望ましい。ここで溶解とは、粘土鉱物の沈殿を生じるような大きな凝集体が無い状態を意味する。より好ましくは1〜10層程度のナノメーターレベルの厚みで分散しているもの、特に好ましくは1〜2層程度の厚みで分散しているものである。
【0040】
本発明における有機無機複合体に含有される水膨潤性粘土鉱物(B)の質量割合は、(水膨潤性粘土鉱物(B)の質量(W))÷(ラジカル重合性モノマー(A)の重合体の質量(W))で計算される値であり、水膨潤性粘土鉱物(B)の質量及びラジカル重合性モノマー(A)の重合体の質量は、製造後の有機無機複合体を焼成して、焼成前後の質量から求めることができる。但し、重合収率が高い場合には、有機無機複合体の調製に使用した水膨潤性粘土鉱物(B)の質量とラジカル重合性モノマー(A)の質量から簡易的に算出すことも可能である。
【0041】
本発明の有機無機複合体に含有される水膨潤性粘土鉱物(B)の質量割合(W/W)は、0.01〜2であることが好ましく、より好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.03〜0.7である。
【0042】
本発明の有機無機複合体(C)は、上記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A)を用いて得られる重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体(C)であり、(1)ラジカル重合性モノマー(A)を重合させた後、混練機などで水膨潤性粘土鉱物(B)と混練し複合化する方法や、(2)水存在下でラジカル重合性モノマー(A)の重合物と水膨潤性粘土鉱物を混練し複合化する方法、更に(3)ラジカル重合性モノマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)を溶媒中で均質混合分散させた後、水膨潤性粘土鉱物の存在下でラジカル重合性モノマー(A)を重合させ、ラジカル重合性モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物との複合体を得る方法などの方法で得ることが可能である。
【0043】
具体的には、ラジカル重合性モノマー(A)を水溶液に溶解し、モノマーを重合させた後、別途水に均質分散させておいた粘土鉱物を添加し、攪拌機や混練機などで均質に分散混合させる。次いで、ポリマーと粘土鉱物の分散混合液を乾燥などの方法で溶媒を除去することにより複合体を得る方法や、ラジカル重合性モノマー(A)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水などの溶媒からなる均質混合溶液を調製した後、重合開始剤と必要に応じて触媒を添加し、ラジカル重合性モノマー(A)を重合させて、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)との沈殿物やゲル状の複合体を得、次いで、乾燥などの方法で溶媒を除去ことにより有機無機複合体(C)を得る方法などを挙げることができる。中でも、ラジカル重合性モノマー(A)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水などからなる均質混合な重合溶液中でラジカル重合性モノマーを重合させる方法は、力学的性質に優れた有機無機複合体が得られやすいなどの理由から特に好ましい。
【0044】
未反応モノマーやオリゴマー或いは重合開始剤などを除去する目的で重合後に得られた沈殿物やゲル状の複合体を必要に応じて、水や熱水、有機溶媒、或いは水蒸気などを用いて洗浄・精製することも可能である。
【0045】
本発明では重合溶液として使用する溶媒として、水が特に好ましいが、水と均質に混合する有機溶媒を混合して使用することも可能である。水に均質に混合する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。これら有機溶媒の量は特に規定されないが、通常、重合に使用する全溶媒中の60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。60質量%を越えると水膨潤性粘土鉱物(B)の分散性を損なう場合がある。
【0046】
重合を行う際の溶媒の使用量は使用するモノマーや粘土鉱物の種類や量、使用目的などにより異なるため一概には規定できないが、通常、モノマー(A)と粘土鉱物(B)の合計質量100質量部に対して、溶媒は100〜10000質量部、好ましくは200〜5000質量部が使用される。10000質量部を越えると重合効率が低下する場合があり、100質量部未満では重合溶液の調製が難しくなる場合がある。
【0047】
上述したラジカル重合性モノマー(A)を重合させる重合反応は、例えば、過酸化物の存在、加熱又は紫外線照射などの慣用の方法を用いたラジカル重合により行わせることができる。ラジカル重合開始剤及び触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤及び触媒のうちから適宜選択して用いることができる。特に好ましいものとして、粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0048】
具体的には、重合開始剤としては、過酸化物、例えば、ペルオキソ二硫化カリウムやペルオキソ二硫化アンモニウム、アゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501、VA−057などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有するラジカル開始剤なども用いられる。
【0049】
また触媒として、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は用いる重合溶液やラジカル重合性モノマー、重合触媒及び開始剤の種類などに合わせて設定される。通常、0〜100℃の範囲が用いられる。重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量などの重合条件により異なり、一概には規定できないが、一般に数十秒〜数十時間の間で行う。
【0050】
また、ラジカル重合性モノマー(A)の重合後、溶媒を除去する方法については、特に制限されることはなく、室温での風乾、加熱、及び/又は減圧による溶媒除去法など公知の方法が可能である。また、基材(D)上で乾燥させることも可能で、下記で説明するが重合後に得られるヒドロゲル状の有機無機複合体を上述した基材(D)上で乾燥させることにより、本発明の有機無機複合体(C)と基材(D)との積層体(図1の積層体1)を得ることができる。また、基材上で乾燥させる場合、基材として、ポリエチレン製やポリプロピレン製のシートやフィルムなどの基材、或いは、シリコーンやフッ素系などの離型剤などで表面処理を施された基材を用いた場合、ヒドロゲル状の有機無機複合体を乾燥させた後、有機無機複合体(C)を基材から剥離させることが可能である。
【0051】
また、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成しているか否かは、複合体が巨視的な相分離していないこと、更には、複合体が水や有機溶媒などの溶媒で膨潤することによりゲル化し、ゲルの力学的特性が優れていることを確認すること、或いは、膨潤性を示さない場合は、水膨潤性粘土鉱物(B)と複合化することにより複合体の力学的特性が向上すること、特に、三次元架橋体に特徴的に現れる伸縮挙動を確認することで、三次元網目構造の形成を容易に確認できる。つまり、高分子ゲルでは三次元網目構造が形成されていることが知られており、ゲルを形成することで三次元網目構造が形成していることが確認できる。更に、力学的特性に優れることは変形により応力が集中する架橋点の相互作用が強いことを意味する。
【0052】
また、本発明の有機無機複合ゲル(E)は、水や有機溶媒などの液状物質で膨潤した有機無機複合体(C)であり、上記方法でラジカル重合性モノマーを重合させた後に得られるラジカル重合性モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)とのからなるゲル状の複合体を用いることができる。更に、上記方法で得られた有機無機複合体(C)を液状物質に浸漬させたり、接触させる方法などで液状物質を含浸させることにより有機無機複合ゲル(E)を得ることができる。
【0053】
本発明の液状物質とは20〜30℃の温度域で流動性を示し液体状である物質で、水や公知の有機溶媒、重合物、或いは常温溶融塩(イオン液体)を挙げることができる。有機溶媒としては例えば、エタノール、メタノール、グリセリンなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエンなどの芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールなどを挙げることができる。重合物としては、20〜30℃の温度範囲で液状の有機高分子を挙げることができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。イオン液体としては、20〜30℃の温度範囲で液状の常温溶融塩であるもので、イミダゾリーム塩、ピリジニウム塩などの室温で液状の公知のイオン液体が用いられる。これらは単独で用いたり、複数を混合して用いても構わない。
【0054】
本発明の基材(D)は、プラスチックス材料、金属材料、ガラス、セラミックス、木材などが用いられる。プラスチックス材料には特に制限は無いが、有機無機複合体(C)との積層体の場合、ポリエチレンとポリプロピレンに対しては接着強度が十分に得られない場合があるため、ポリエチレンとポリプロピレン以外の材料を用いることが好ましい。得に、ポリプロピレン以外の材料を用いることが好ましい。
【0055】
尚、有機無機複合ゲル(E)との積層体の場合、ポリエチレンやポリプロピレンに対する接着強度は有機無機複合ゲル(E)自身の強度と比べ、十分に高いことから使用することができる。
【0056】
その他、プラステック材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド類、ポリステレンなどのポリビニル類、ポリイソプレンなどのゴム類、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン類、ポリイミド、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。金属材料としては、所謂、機械材料として一般的に使用される金属材料で、スチール、炭素鋼、ステンレス鋼、含鉄合金などの鋼鉄材料や、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びこれらの合金などの非鉄金属材料が好ましく用いられる。ガラスとしては、ケイ酸塩を主成分とした通常のケイ酸ガラスが好ましく用いられる。セラミックス材料としては、陶磁器や陶磁器製タイルが好ましく用いられる。木材としては、通常の製材或いは集成材が使用可能である。表面にニスや塗料を塗装した化粧材を用いることができる。
【0057】
これら基材の形状は、有機無機複合体(C)や有機無機複合ゲル(E)を積層可能な形状であれば特に制限はなく、塊状、フィルム、シート、パイプ状、板状、管状、筒状、棒状、箱状、湾曲状などの形状が可能である。
【0058】
基材(D)と有機無機複合体(C)とを積層する方法は、エポキシ系やアクリル系接着剤などの公知の接着剤を使用する方法、有機無機複合体(C)の含水物や有機溶媒を含んだ含液物、或いはこれら水や有機溶媒を表面部のみに含んだ部分膨潤物を調製した後、これら膨潤体の膨潤面を接触面として基材(D)上に載せた状態で有機無機複合体(C)中の溶液を乾燥させる方法などを挙げることができる。特に、後者の方法は、接着剤を用いないで良好な接着強度を有する積層体を得ることが可能となり好ましい。
【0059】
有機無機複合体(C)を水、或いは有機溶媒に浸漬、或いは接触させて、有機無機複合体全体、若しくは表面部分を部分的に膨潤させ、膨潤した面を基材への接触面として膨潤した有機無機複合体(C)と基材(D)を積層させる。次いで、膨潤した有機無機複合体を乾燥し、水或いは有機溶媒を除去することにより、有機無機複合体(C)と基材(D)との積層体を得ることができる。
【0060】
また、有機無機複合体(C)を得る際に、ラジカル重合性モノマーを重合させた後に得られるラジカル重合性モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)とからなるゲル状の複合体を基材(D)と積層し、基材に積層した状態でゲル状の複合体を乾燥させることにより、積層体を得ることもできる。
【0061】
有機無機複合体(C)の表面部分を膨潤させる方法において、溶媒として揮発性の高い有機溶媒を使用すると、基材と積層させた後、乾燥させ易くなる。図1の積層体2〜6のような構造の積層体とする場合、有機無機複合体(C)の表面部のみを揮発性の高い有機溶媒で膨潤させ、基材(D)と接着させた後、有機溶媒を乾燥させる方法は特に有効な方法である。この場合の有機溶媒としては、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン類などを挙げることができる。
【0062】
本発明における有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との積層体の製造法は、上記した有機無機複合体(C)と基材(D)との積層体を得た後、有機無機複合体(C)を液状物質に浸漬させたり、接触させることにより得ることができる。なお、有機無機複合体(C)に液状物質を含浸させる際に、含浸性を向上させる目的で目的とする液状物質を揮発性が高く低粘度の有機溶媒などで希釈し、希釈した液状物質を有機無機複合体(C)に含浸させた後、乾燥などの方法により、揮発性の高い液状物質だけを除去する方法を用いることもできる。
【0063】
また、本発明の有機無機複合ゲル(E)は、ゲル表面に存在する水や溶媒などの液状物質を除去すると粘着性が現れる。更に、液状物質を除去したゲル表面を加熱すると接着性が増す。そのため、不織布などに接触させたり、加熱したり、風乾したりするなどの公知の方法で有機無機複合ゲル(E)表面の液状物質を除去した後、液状物質が除去された表面を接触面として、基材(D)に積層することにより、有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との積層体が得られる。
【0064】
更に、この表面が加熱された状態で基材(D)に接触させて基材(D)上に積層する方法により、有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との接着強度の高い積層体を得ることができる。ゲルを加熱する方法も公知の方法が可能であり、有機無機複合ゲル(E)を高温の液状物質に浸漬させたり、接触させる方法、ドライヤーなどで加熱する方法、或いは、基材(D)を加熱する方法も可能である。また、ヒドロゲルを加熱した後、表面の液状物質を除去しても構わない。この方法により、図1の積層体2〜6の構造の積層体を好ましく得ることができる。加熱時の有機無機複合ゲル(E)の温度は、使用するラジカル重合性モノマーの種類などにより異なるが、通常、25〜100℃、好ましくは30〜80℃の範囲である。
【0065】
また、有機無機複合ゲル(E)と積層させるための基材(D)としては、金属類、プラステックス、セラミックス、木材、中でも特に、プラステックスとセラミックスが特に好ましい。
【実施例】
【0066】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(1)複合体1の製造
ラシカル重合性モノマーとして、メトキシエチルアクリレート(MEA)(アクリックス C−1:東亜合成株式会社製、構造式(1)の化合物であり、Rは水素原子、Rはエチレン基、Rはメチル基である)とジメチルアクリルアミド(DMAA:興人株式会社製)を使用した。粘土鉱物は水膨潤性の合成ヘクトライト(商品名 ラポナイトXLG、日本シリカ株式会社製)を用いた。溶媒は超純水を用い、水は使用前に窒素でバブリングさせて含有酸素を除去してから使用した。
【0067】
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに純水47.5g入れたものに、撹拌下で0.8gの合成ヘクトライトと4.6gのMEA、1.5gのDMAAを入れ(MEA/DMAA=75/25 重量/重量、粘土/モノマー=0.13)、更に、触媒としてテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)40μL、重合開始剤水溶液(純水10gとペルオキソ二硫化カリウム(KPS:関東化学株式会社製)0.2g)2.5mLを加え、透明な均質溶液を得た。厚さ3mm、15cm2のガラス板製調製容器に重合溶液を窒素雰囲気下で入れた後、20℃で24時間保持することで重合を進行させた。重合後、重合液全体がゲル化しており、透明で十分な強度と高い伸縮性を有するゲルが得られた。得られたゲルを流水で洗浄した。洗浄したゲルを40℃で24時間、更に、80℃で6時間乾燥させ複合体1(膜厚0.4mm)を得た。尚、複合体1は吸水率や力学測定を行う前に室温(24±2℃、相対湿度45±15%)で3日以上保持させた。複合体1の合成に使用したモノマーとクレイの質量、モノマー質量とクレイの質量の比(クレイ量(計))などを表1にまとめている。クレイ量は仕込値から算出したもの(クレイ量(計))と複合体を焼成して算出した実測値(クレイ量(測))を示している。仕込値と実測値は良く一致している。また、焼成試験から得られた複合体1の吸湿量(吸湿した水の質量/複合体1の質量)は0.03%であり、実質的に液状物質を含有していないことが判る。
【0068】
複合体1は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表1に複合体1の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体1は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が6倍の場合の引張破壊試験結果を表1に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる。尚、Wはゲル中の水の質量、Wは複合体1の質量である。
【0069】
実測による複合体中のクレイ量(測)は、複合体1を650℃で焼成して、焼成前後の質量比より算出した。焼成は熱質量計(TGA)を用いて、昇温速度を毎分10℃で行った。TGAは、セイコー電子工業株式会社製のTG/DTA220を用いた。
(2)積層体の製造
得られた複合体1を純水に約2分間浸漬させ、複合体1のゲルを得た。水膨潤度は約1.5倍であったゲルをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラー、100ミクロン厚、東レ株式会社製)の上に載せ、室温で1時間、50℃で2時間保持し乾燥させた。複合体1とPETフィルムとの積層体が得られた。接着性は良く、手で剥離しようとしても剥離できなかった。180°剥離試験を行ったところ、剥離強度は5N/cmであった。次いで、この積層体を純水に30分間浸漬させた。複合体1は膨潤しゲル(厚み1.1mm)となった。水膨潤度(W/W)は約6であった。ゲルとPETは良く接着していた。180°剥離を行ったが、剥離する前にゲルが破断した。ゲルの破断時の負荷荷重が1.6N/cmであり、1.6N/cm以上の剥離強度を有することが確認された。ゲルの膨潤度(W/W)は約2倍であった。尚、PETフィルムとの積層体を水に一日間浸漬させた。膨潤度は約30倍であった。30倍に膨潤してもPETフィルムと積層体との接着性は良好で、ゲルが破壊しても剥離することはなかった。
【0070】
同様な手順で、複合体1をガラス板(スライドガラス、松波硝子工業株式会社製S1225)、アルミニウム(東海アルミ箔株式会社製ラボホイル)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(住友化学株式会社製、テクノロイS001)、ポリイミド(東レ・デュポン株式会社製、カプトンH)のフィルム、タイルと積層させた。いずれも接着性に優れ、ガラス板、PMMA、ポリイミド、及びタイルに対しては複合体1が破断し負荷荷重から、剥離強度は少なくとも7N/cm以上、アルミニウムに対しては5N/cmであった。尚、ガラス板とタイルに対しては90°剥離試験を行った。
【0071】
アルミニウム、PMMA及びポリイミドとの積層体を水に浸漬し、同様な手順で、ゲルと基材との積層体とした。いずれの場合もゲルと基材とは接着性に優れており、PMMAとポリイミドに対しては剥離を始める前にゲルが破壊された。負荷荷重から剥離強度は1.6N/cm以上であった。一方、アルミニウムに対しては、剥離強度は1N/cmであった。ゲルの膨潤度は約2倍であった。
【0072】
(比較例1)
複合体1とポリプロピレン製シートとの積層体を実施例1の「(2)積層体の製造」と同様に下記の手順で作成した。
【0073】
複合体1を純水に約2分間浸漬させ、複合体1のゲルを製造し、ポリプロピレンフィルムの上に載せ、室温で1時間、50℃で2時間保持し乾燥させた。複合体1とポリプロピレンフィルムとの積層体が得られた。
【0074】
180°剥離試験を行ったところ剥離強度は1.1N/cmであり、実施例1に比べて弱いものであった。180°剥離強度は島津製作所株式会社製のオートグラフを用いた。初期サンプル長は30mm、サンプル幅は15mm、引張速度は毎分200mmで試験を行った。
【0075】
(比較例2:特許文献2の実施例3の追試)
MEA2.6g、合成ヘクトライト1.6g、水20g、を均一に混合して反応溶液を調製した。
【0076】
別に、N,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製)95g、重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)5gを、均一に混合して重合開始剤の溶液を調製した。
【0077】
その後、上記反応溶液全量に、重合開始剤の溶液80μlを入れ、超音波分散機で、均一に分散させた後、バーコーターを用いて厚み150μmになるようにガラス板に塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射しMEAを重合させて、薄膜状の有機無機複合ヒドロゲルを作製した。
【0078】
ガラス板と積層した薄膜状の有機無機複合ヒドロゲルの180°剥離試験を行ったところ剥離強度は0.02N/cmであり、実施例1に比べて非常に弱いものであった。180°若しくは90°剥離強度は島津製作所株式会社製のオートグラフを用いた。初期サンプル長は30mm、サンプル幅は15mm、引張速度は毎分200mmで試験を行った。
【0079】
(比較例3:特許文献3の合成例4及び実施例7の追試)
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに純水48g入れたものに、撹拌下で0.8gの合成ヘクトライト、5.2gのMEA、1.13gのN−イソプロピルアクリルアミド(NIPA、興人株式会社製)、TEMED32μL、KPS水溶液2mLを加え、透明な均質溶液を得た。重合溶液を窒素雰囲気下で厚さ2mm、15cm2のガラス製ゲル調製容器中に入れ、20℃で24時間保持することで重合を進行させて、厚さ2mmのゲルフィルムがガラス板に挟まれた積層体(REF3−1)を製造した。
【0080】
得られたゲルフィルムをポリプロピレン製のトレイに載せて積層体(REF3−2)を製造し、約1日間室温で保持し水を乾燥させることにより積層体(REF3−3)を製造した。その後、テトラヒドロフラン(THF)に1日間浸漬させ、THF含有ゲルとポリプロピレンとの積層体(REF3−4)を得た。
【0081】
上記の製造過程で形成された各積層体における有機無機複合体の剥離強度を測定したところ、下記の如く非常に低い接着強度であった。
REF3−1:0.02N/cm(ヒドロゲルとガラス基板との接着強度)
REF3−2:0.01N/cm(ヒドロゲルとポリプロピレンとの接着強度)
REF3−3:0.4N/cm(乾燥体とポリプロピレンとの接着強度)
REF3−4:0.01N/cm(テトラヒドロフランで膨潤させたゲルとポリプロピレンとの接着強度)
【0082】
(実施例2)
実施例1において、MEAの代わりにメトキシポリエチレングリコールアクリレート(13EG、NKエステル AM−230G:新中村化学工業株式会社製、構造式(3)の化合物であり、Rは水素原子、Rはエチレン基、Rはメチル基、nは23である)を3.6g、DMAAを4.3g使用して(13EG/DMAA=46/54 重量/重量、粘土/モノマー=0.1)、実施例1と同じ方法でそれぞれ複合体2を調製した。複合体2に使用したモノマーとクレイの質量、複合体中のクレイ量を表1にまとめている。クレイの仕込値と実測値は良く一致している。また、焼成試験から得られた複合体2の吸湿量(吸湿した水の質量/複合体2の質量)は0.12%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。
複合体2は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表1に複合体2の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体2は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が6倍の場合の引張破壊試験結果を表1に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる。
実施例1と同じように、複合体2を純水に浸漬し、PETフィルムと複合体2との積層体を得た。この積層体の180°剥離試験を行ったが、複合体2が破断した。破断時の負荷荷重から少なくとも10N/cm以上の剥離強度であることが確認された。積層体を30分間水に浸漬させて複合体2を膨潤させゲルとしたが、ゲルとPETフィルムは良好に接着していた。この180°剥離強度の測定を行ったが、剥離する前にゲルが破壊した。ゲル破断時の負荷荷重から、剥離強度は少なくとも0.7N/cm以上であることが確認された。尚、ゲルの膨潤度(W/W)は3倍であった。
同様な手順で、複合体2をガラス板、アルミニウムと積層させた。いずれも接着性に優れ、剥離強度はアルミニウムに対しては4N/cm、ガラス板に対しては5N/cmであった。尚、ガラス板に対しては90°剥離試験を行った。
アルミニウムとの積層体を水に浸漬し、同様な手順で、複合体2のゲルと基材との積層体とした。ゲルとアルミニウムとは接着性に優れていた。剥離試験では、剥離を始める前にゲルが破壊され、負荷荷重から剥離強度は0.6N/cm以上であった。ゲルの膨潤度は約3倍であった。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、MEAだけを6.5g用いて、合成例1と同様な方法で、複合体3を調製した。複合体3の合成に使用したモノマーとクレイの質量、複合体中のクレイ量などを表1にまとめている。クレイの仕込値と実測値は良く一致している。また、複合体3の吸湿量は0.01%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。
【0084】
複合体3は、重合後、実施例1と同じ方法で洗浄した後、PETフィルムに載せて乾燥させ、複合体3とPETフィルムとの積層体が得た。接着性は良好で、180°剥離強度は6.2N/cmであった。同様な手順で、ガラス板、アルミニウム、ポリイミドフィルムと積層させた。いずれも基材とも良好に接着しており、180°(90°)剥離強度は、ガラス板が5N/cm、アルミニウムが3N/cm、ポリイミドフィルムが5.3N/cmであった。
【0085】
複合体3自身は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表1に複合体3の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、引張試験機で800%延伸させた後、直ぐに弛緩させた。1時間後のサンプル長から算出した変形回復率は95%であった。
【0086】
(実施例4)
実施例1において、MEAの代わりにメトキシトリエチレングリコールアクリレート(3EG、ライトアクリレートMTG−A:共栄社化学株式会社製、構造式(3)の化合物であり、Rは水素原子、Rはエチレン基、Rはメチル基、nは3である)を7.6g、DMAAを1.5g、合成ヘクトライトを2.0g使用して(3EG/DMAA=84/16 重量/重量、粘土/モノマー=0.22)、実施例1と同じ方法でそれぞれ複合体4を調製した。複合体4に使用したモノマーとクレイの質量、複合体中のクレイ量を表1にまとめている。クレイの仕込値と実測値は良く一致している。また、複合体4の吸湿量は0.03%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。
【0087】
複合体4は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表1に複合体4の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体4は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が6倍の場合の引張破壊試験結果を表1に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる。
【0088】
実施例1と同じように、複合体4を純水に浸漬し、PETフィルムと複合体4との積層体を得た。この積層体の180°剥離強度は5.3N/cmであった。積層体を30分間水に浸漬させて複合体2を膨潤させゲルとした。膨潤度は約7倍であった。ゲルとPETフィルムは良好に接着していた。この180°剥離強度の測定を行ったが、剥離する前にゲルが破壊した。ゲル破断時の負荷荷重から、剥離強度は少なくとも1.1N/cm以上であった。ゲルの膨潤度は3であった。
【0089】
(実施例5)
MEAの代わりにヒドロキシプロピルアクリレート(HPA、ライトエステルHOP−A:共栄社化学株式会社製、構造式(2)の化合物であり、Rは水素原子、Rは炭素数3の分岐したアルキレン基である)を5.2g、DMAA1.0gとした以外は実施例1と同じ方法で複合体5を調製した。複合体5の合成に使用したモノマーとクレイの質量、クレイの質量などを表1にまとめている。クレイの仕込値と実測値は良く一致している。また、複合体5の吸湿量は0.03%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。
【0090】
複合体5は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表1に複合体5の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体5は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が6倍の場合の引張破壊試験結果を表1に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる。
【0091】
実施例1と同じように、複合体5を純水に浸漬し、PETフィルムと複合体5との積層体を得た。この積層体の180°剥離強度は7N/cmであった。積層体を30分間水に浸漬させて複合体2を膨潤させゲルとした。膨潤度は約7倍であった。ゲルとPETフィルムは良好に接着していた。この180°剥離強度の測定を行ったが、剥離する前にゲルが破壊した。ゲル破断時の負荷荷重から、剥離強度は少なくとも3.2N/cm以上であった。
【0092】
(実施例6)
実施例1において、MEAを5.8g、DMAAの代わりにメトキシポリエチレングリコールアクリレート(9EG、NKエステル AM−90G:新中村化学工業株式会社製、構造式(3)の化合物であり、Rは水素原子、Rはエチレン基、Rはメチル基、nは9である)を2.4g、合成ヘクトライトを2.5g(MEA/9EG=71/29、粘土/モノマー=0.3)を用いて、実施例1と同じ手順で複合体6を得た。複合体6の吸湿量は0.05%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。実施例1と同じように複合体6を純水に浸漬させた後、PETフィルム上に載せて乾燥させることにより、複合体6とPETとの積層体を得た。接着性は良好で、複合体6が破壊しても剥離しなかった。剥離強度は少なくとも3N/cm以上であることが判った。この積層体を純水に30分間浸漬させた。複合体6はゲル化した。膨潤度は2倍であった。ゲルと基材との接着性は良好で剥離が開始する前にゲルが破断した。破断時の負荷荷重から剥離強度は0.6N/cm以上であることが確認された。
【0093】
また、同様な方法でガラス板との積層体を調製した。ガラスとの接着性は良好で、複合体6が破壊しても剥離されなかった。ガラスとの剥離強度は少なくとも3N/cm以上であることが判った。
【0094】
複合体6は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表2に複合体6の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体6は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が4倍の場合の引張破壊試験結果を表2に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる。
【0095】
(実施例7)
実施例1において、MEAを4.7g、DMAAを0.9g、更に、9EGを2.4g用いて、実施例1と同じ手順で複合体7を得た。複合体7の吸湿量は0.03%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。実施例1と同じように複合体7を純水に浸漬させた後、PETフィルム上に載せて乾燥させることにより、複合体7とPETとの積層体を得た。接着性は良好で、180°剥離強度は約7N/cmであった。同様にアルミ、ガラスに対して接着させて接着強度を測定した。アルミに対してはサンプルが破断し破断強度をから、接着強度は10N/cm以上、ガラスに対する接着強度は7N/cmであり、優れたものであった。この積層体を純水に5分間浸漬させた。複合体7はゲル化した。膨潤度は2倍であった。ゲルと基材との接着性は良好で剥離が開始する前にゲルが破断した。剥離強度は負荷荷重から4.5N/cm以上であることが確認された。尚、ガラス板に対しては90°剥離試験を行った。
【0096】
複合体7は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表2に複合体7の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。また、複合体7は水膨潤性に優れ、水膨潤度(W/W)が6倍の場合の引張破壊試験結果を表2に示している。ゲルとしては非常に高い伸びと強度を併せ持つことが確認できる
【0097】
(実施例8)
実施例3において、合成ヘクトライトを2.0g用いて、実施例3と同様な方法で、複合体8を調製した。複合体8の合成に使用したモノマーとクレイの質量、複合体中のクレイ量などを表2にまとめている。クレイの仕込値と実測値は良く一致している。また、複合体8の吸湿量は0.02%であり、実質的に液状物質を含有していないことが確認できた。複合体8をアセトンに1分間浸漬し、PETフィルムとガラスの上に載せ乾燥させた。複合体8とPETフィルム及びガラスとの積層体が得られた。接着性は良好で、180°剥離強度はPETに対してフィルムが破断し11N/cm以上、ガラス板は9.2であった。
複合体8自身は柔軟で180°に折り曲げても割れたり、クラックが発生することは無かった。表2に複合体8の引張破壊試験結果を示している。高い伸張性を有する複合体であることが確認できる。
【0098】
(実施例9)
実施例1で得られた複合体1とPETとの積層体において、積層体をアセトン/メタノール(1/1)に約20秒浸漬した。しばらくすると複合体1の表面に粘着性が見られた。粘着性のある複合体1にPETフィルムを載せ、しっかりと加圧した。室温で1時間、80℃で2時間加熱し、有機溶媒を揮発させた。2枚のPETフィルムの間に複合体1が挟まった積層体が得られた。2枚のPETフィルムを引張、180°剥離試験を行ったところ、剥離強度は約5N/cmであった。
【0099】
(実施例10)
実施例2で得られた複合体2を幅2mm、長さ40mmの大きさに切り、短冊状の複合体2をPETフィルムの上に5mmの間隔で5枚並べ、実施例2と同じ方法で、複合体2とPETフィルムとの積層体を作成した。この積層体をメタノールに約20秒浸漬させると、複合体表面に粘着性が現れた。実施例9と同じように、積層体の複合体2にPETを貼り付け、室温で1時間、80℃で2時間乾燥させて、メタノールを揮発させた。2枚のPETフィルムの間に複合体2が挟まった積層体が得られた。2枚のPETフィルムを引張ったが、途中、複合体2が破断した。剥離強度は約10N/cm以上であった。
更に、積層体を約3時間水に浸漬させた。複合体2はゲルとなった。ゲルの膨潤度は約4倍であった。複合体2のゲルと2枚のPETとの積層体を冷蔵庫に入れ、3日間保持した。2枚のPETフィルムを引張り、ゲルとの接着強度を調べた。途中、ゲルが破断した。剥離強度は0.5N/cm以上であった。
【0100】
(実施例11)
実施例1において、クレイの使用量を2.0g(クレイ/モノマー=0.33(仕込))とした以外は実施例1と同じ方法で複合体10を得た。複合体10を3×5cmに切り、40℃の純水に20分間浸漬した。膨潤度は約650%であった。ゲルの表面の水を不織布(ワイプオールX70,日本製紙クレシア株式会社製)で拭き取った。ゲルの両面をPETフィルムで挟みこんだ。PET/ゲル/PETの積層体をポリエチレン製の袋に入れ、約5gの荷重を加え、25℃で3日間保持した。ゲルとPETは完全に接着していた。180°剥離試験を行ったが、PETとゲルの界面が剥離する前にゲルが破壊した。剥離強度は0.8N/cm以上であった。ゲル自身(膨潤度650%)の力学特性を測定したところ、破断強度は330kPa、破断伸度は880%であり、非常に強いものであった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【符号の説明】
【0103】
D、D1、D2、D3、Dn:基材
X、X1、X2、X3、Xn:有機無機複合体(C)又は有機無機複合体(E)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体(C)の層を、基材(D)上に設けた積層体であって、
該ラジカル重合性モノマー(A)が、下記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A1)を含み、
更に、該有機無機複合体(C)が、実質的に液状物質を含まず、
且つ、基材(D)との接着強度が2N/cm以上であることを特徴とする積層体。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基、nは2〜50の整数である。)
【請求項2】
前記重合体が、構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のモノマー(A1)を98〜30重量%、N-置換(メタ)アクリルアミドの中から選択される1種以上のラジカル重合性モノマー(A2)を2〜70重量%含有するラジカル重合性モノマー(A)を重合して得られる重合体である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との質量比(W/W)が0.01〜2の範囲にある請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とからなる三次元網目中に液状物質を含んだ有機無機複合ゲル(E)の層を、基材(D)上に設けた積層体であって、
該ラジカル重合性モノマー(A)が、下記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A1)を含み、
該有機無機複合ゲル(E)と基材(D)との接着強度が0.1N/cm以上であることを特徴とする積層体。
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基、nは2〜50の整数である。)
【請求項5】
下記構造式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性モノマー(A)の重合体と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなり、実質的に液状物質を含有せず、任意の形状に腑形された有機無機複合体(C)全体、又は表面部分のみを水又は溶剤で膨潤させ、膨潤した表面を接触面として基材(D)上に積層させ、基材上の膨潤した有機無機複合体(C)を乾燥させ、次いで、乾燥した有機無機複合体(C)に液状物質を含浸させることによって、有機無機複合ゲル(E)とすることを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
【化7】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【化8】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【化9】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数2〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜2のアルキル基、nは2〜50の整数である。)
【請求項6】
前記有機無機複合ゲル(E)表面の液状物質を除去した後、該表面を接触面として基材(D)上に積層する請求項5記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記有機無機複合ゲル(E)を基材(D)上に積層後、前記接触面を加熱する請求項6記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の積層体を製造し、次いで、前記有機無機複合ゲル(E)を乾燥する請求項1記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−156782(P2011−156782A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21128(P2010−21128)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000173751)一般財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】