説明

積層体

【課題】ポリエステル系感圧性粘着剤組成物層を含む積層体として、粘着力及び耐熱保持性を向上させることができる積層体を提供する。
【解決手段】感圧性粘着剤組成物層Aと、前記感圧性粘着剤組成物層Aの両面に設けられた感圧性粘着剤組成物層Bとを含む積層体であって、前記感圧性粘着剤組成物層Aは、200℃における貯蔵弾性率が25〜40kPaであるポリエステル樹脂により形成されており、前記感圧性粘着剤組成物層Bは、200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaであるポリエステル樹脂により形成されている、積層体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系感圧性粘着剤組成物層を含み、粘着テープや粘着シート等に好適な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系感圧性粘着剤は、アクリル系感圧性粘着剤と比較して低臭気である、生分解性を付与できるなどの利点がある。しかし、ポリエステル系感圧性粘着剤組成物に用いるポリエステルは、分子の両末端に架橋剤と反応可能な官能基がある為、高分子量のものを用いると、架橋点間の距離が長くなることによって耐熱保持性が低下するおそれがあった。また、耐熱保持性の低下を避けるために低分子量のものを用いると、架橋点間の距離が短くなることによって、粘着力が低下するおそれがあった。
【0003】
耐熱性等を向上させるために、特許文献1には、ガラス転移温度(Tg)が異なる2種類のポリエステルをブレンドしたポリエステル系感圧性接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−145633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のポリエステル系感圧性接着剤組成物では、粘着力及び耐熱保持性を向上させるには未だ不充分であった。
【0006】
そこで、本発明は、ポリエステル系感圧性粘着剤組成物層を含む積層体として、粘着力及び耐熱保持性を向上させることができる積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の積層体は、感圧性粘着剤組成物層Aと、前記感圧性粘着剤組成物層Aの両面に設けられた感圧性粘着剤組成物層Bとを含む積層体であって、前記感圧性粘着剤組成物層Aは、200℃における貯蔵弾性率が25〜40kPaであるポリエステル樹脂により形成されており、前記感圧性粘着剤組成物層Bは、200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaであるポリエステル樹脂により形成されている、積層体である。
【0008】
本発明の積層体によれば、上記構成を有することにより、粘着力及び耐熱保持性を向上させることができる。
【0009】
本発明において、粘着力及び耐熱保持性をより向上させるには、前記感圧性粘着剤組成物層Aの厚さが10〜200μmであり、かつ前記感圧性粘着剤組成物層Bの厚さが5〜30μmであることが好ましい。
【0010】
本発明では、前記感圧性粘着剤組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂が、いずれも架橋されていることが好ましい。ポリエステル樹脂を架橋させることによって凝集力が高まるため、粘着力をより向上させることができるからである。
【0011】
本発明では、前記感圧性粘着剤組成物層Aを形成するポリエステル樹脂のゲル分率が70〜95重量%であり、かつ前記感圧性粘着剤組成物層Bを形成するポリエステル樹脂のゲル分率が30〜65重量%であることが好ましい。ゲル分率が前記範囲内であれば、粘着剤として適した凝集力が得られ、粘着力及び耐熱保持性をより向上させることができるからである。この場合、前記ポリエステル樹脂を架橋するための架橋剤が、3官能以上の多価イソシアネートであることが好ましい。ポリエステル樹脂のゲル分率を前記の好適な範囲内に容易に制御できるからである。
【0012】
本発明では、前記感圧性粘着剤組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂が、植物由来のジカルボン酸と、植物由来のジオールとから製造されていることが好ましい。植物由来の原料を使用することによって、地球環境への負荷を低減することができるからである。
【0013】
上述した本発明の効果を有効に発揮させるには、本発明の積層体を粘着テープ又は粘着シートに適用することが好ましい。
【0014】
本発明の積層体は、JIS C 2107に基づいて測定された粘着力が10N/20mm以上であり、かつ0.5kgの荷重に対する耐熱保持温度が100℃以上であることが好ましい。なお、上記粘着力及び耐熱保持温度は、いずれも後述する実施例に記載の方法で測定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。図1に示す積層体は、感圧性粘着剤組成物層A(以下、単に「組成物層A」ともいう)と、組成物層Aの両面に設けられた感圧性粘着剤組成物層B(以下、単に「組成物層B」ともいう)とを含む積層体である。
【0018】
組成物層Aは、200℃における貯蔵弾性率が25〜40kPaであるポリエステル樹脂により形成されている。また、組成物層Bは、200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaであるポリエステル樹脂により形成されている。本発明では、組成物層A及びBが上記特定の範囲内の貯蔵弾性率を有するため、粘着力及び耐熱保持性を向上させることができる。なお、上記の貯蔵弾性率の値は、具体的には後述する実施例に記載された測定方法で測定される値である。
【0019】
また、本発明の積層体は、金属腐食性のある酸官能基の含有量を低減できるため、電子用途の接合にも適しており、また低臭気なので、家庭での接着用テープとしても使用することが可能である。
【0020】
さらに、本発明の積層体は紫外線照射による架橋工程が不要なので、任意の着色が可能である。なお、従来のアクリル系感圧性粘着剤で厚手の粘着テープや粘着シートを得る際には、紫外線重合などが用いられているが、この場合、紫外線が粘着剤を透過する必要がある為、薄い着色しかできないという課題があった。
【0021】
上記貯蔵弾性率を調整する方法としては、種々の方法があるが、例えば、貯蔵弾性率を上げる場合は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして、高Tgのモノマーを使用すればよい。高Tgのモノマーとしては、セバシン酸、プロパンジオール、ブタンジオールなどの脂肪族モノマーを挙げることができる。また、貯蔵弾性率を下げる場合は、例えば、後述する架橋剤の配合量を低減すればよい。
【0022】
組成物層Aを形成するポリエステル樹脂の200℃における貯蔵弾性率は、耐熱保持性をより向上させるには、27kPa以上であることが好ましく、30kPa以上であることがより好ましい。また、粘着力をより向上させるには、38kPa以下であることが好ましく、35kPa以下であることがより好ましい。上記観点を総合すると、組成物層Aを形成するポリエステル樹脂の200℃における貯蔵弾性率は、25〜40kPaであり、27〜38kPaであることが好ましく、30〜35kPaであることがより好ましい。
【0023】
組成物層Bを形成するポリエステル樹脂の200℃における貯蔵弾性率は、耐熱保持性をより向上させるには、12kPa以上であることが好ましく、13kPa以上であることがより好ましい。また、粘着力をより向上させるには、18kPa以下であることが好ましく、17kPa以下であることがより好ましい。上記観点を総合すると、組成物層Bを形成するポリエステル樹脂の200℃における貯蔵弾性率は、10〜20kPaであり、12〜18kPaであることが好ましく、13〜17kPaであることがより好ましい。なお、図1に示す積層体において、上側の組成物層Bを形成するポリエステル樹脂と、下側の組成物層Bを形成するポリエステル樹脂とは、200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaである限り、同一のポリエステル樹脂であっても、異なるポリエステル樹脂であってもよい。
【0024】
組成物層Aの厚さは10〜200μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。組成物層Aの厚さが10μm以上であれば、粘着力をより向上させることができる。また、組成物層Aの厚さが200μm以下であれば、耐熱保持性をより向上させることができる。
【0025】
組成物層Bの厚さは5〜30μmであることが好ましい。組成物層Bの厚さが5μm以上であれば、粘着力をより向上させることができる。また、組成物層Bの厚さが30μm以下であれば、耐熱保持性をより向上させることができる。
【0026】
また、粘着力及び耐熱保持性を向上させる観点から、組成物層Bの厚さより組成物層Aの厚さが厚いことが好ましく、厚さの比が、A:B=4:1〜40:1の範囲内であることがより好ましい。
【0027】
組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂を調製するためのジカルボン酸成分は、脂肪族系二塩基酸成分として以下に示す多価カルボン酸、又はそのアルキルエステル若しくは酸無水物、あるいは植物由来のダイマー酸を使用できる。例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸類が挙げられる。なかでも、環境負荷の低減の観点から、植物由来のジカルボン酸が好ましく、特に植物由来のダイマー酸やセバシン酸が好ましい。
【0028】
また、本発明では、上記ジカルボン酸成分として、本発明の効果を損なわない程度に芳香族系二塩基酸も使用できる。芳香族系二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。
【0029】
組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂を調製するためのジオール成分としては、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、植物由来のダイマージオール等が挙げられる。なかでも、環境負荷の低減の観点から、植物由来のジオールが好ましく、特に植物由来のダイマージオールや1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0030】
ダイマー酸やダイマージオールが粘着剤を形成するポリマーに好ましく用いられる理由は、沸点が高いため縮合重合の際に蒸発しにくい点と、アルキルの側鎖を有しているので、低Tgのポリマーを得ることができる点にある。
【0031】
組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂の調製方法(縮合方法)は、縮合反応で生成する縮合水やモノアルコールを、反応系内に不活性ガスを吹き込み不活性ガスと共に反応系外に吹き出す方法や、減圧下で溜去する方法等で進められ、生産性を考慮すると、重合時間を短縮できる減圧法が好ましい。反応温度や減圧度は限定されないが、反応温度は、通常、180〜260℃であり、好ましくは190〜220℃である。反応温度を180℃以上とすることにより、重合速度の低下を防止できる。また、反応温度を260℃以下とすることにより、得られる樹脂の劣化を防止できる。一方、減圧度は、通常、0.1〜10kPaであり、好ましくは0.5〜4kPaである。減圧度を0.1kPa以上とすることにより、製造コストを低減できる。また、減圧度を10kPa以下とすることにより、重合速度の低下を防止できる。
【0032】
縮合反応に用いられる触媒としては、公知のポリエステルの重合触媒が使用でき、例えば、チタン系、錫系、アンチモン系、亜鉛系、ゲルマニウム系等の種々の金属化合物や、p−トルエンスルホン酸や硫酸等の強酸化合物を使用することができる。
【0033】
本発明では、架橋剤により上記ポリエステル樹脂を架橋してもよい。架橋剤は、特に限定されないが、ゲル分率を粘着剤として好適な範囲に容易に制御するには、3官能以上の多価イソシアネートを使用することが好ましい。この様な架橋剤としてはポリイソシアネートが使用でき、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたポリイソシアネートを使用することができる。これらの架橋剤は2種以上を併用しても良い。なお、前記多価イソシアネートの配合量は、用いるイソシアネートの種類によって異なるが、架橋後のポリエステル樹脂のゲル分率が、後述する好適な範囲内となるように適宜調整すればよい。
【0034】
組成物層Aを形成するポリエステル樹脂のゲル分率は、粘着剤として適した凝集力が得られ、粘着力及び耐熱保持性をより向上させる観点から、70〜95重量%であることが好ましく、75〜95重量%であることがより好ましく、75〜90重量%であることが更に好ましく、80〜90重量%であることが更により好ましい。同様の観点から、組成物層Bを形成するポリエステル樹脂のゲル分率は、30〜65重量%であることが好ましく、35〜60重量%であることがより好ましく、40〜60重量%であることが更に好ましく、40〜55重量%であることが更により好ましい。
【0035】
上記ポリエステル樹脂のゲル分率は、架橋剤の配合量、加熱温度、加熱時間等で調整できる。なお、上記のゲル分率の値は、具体的には後述する実施例に記載された測定方法で測定される値である。
【0036】
本発明では、高ゲル分率化を目的に、ゲル化剤を用いてもよい。ゲル化剤としては、テトラ−n−ブチルチタネート、チタンテトライソプロポキシド、ブチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレートなどが挙げられる。これらの触媒は2種以上を併用しても良い。
【0037】
本発明の積層体の形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が例示できる。まず、組成物層Aを形成するためのポリエステル樹脂含有粘着剤溶液A(図示せず)と、組成物層Bを形成するためのポリエステル樹脂含有粘着剤溶液B(図示せず)とをそれぞれ調製し、剥離処理した支持体(図示せず)にそれぞれ塗布し、乾燥させることによって、組成物層Aを形成するためのシートA(図示せず)と、組成物層Bを形成するためのシートB(図示せず)とを形成する。次いで、シートAの両面にシートBを貼り合わせ、適宜、熟成させることによって本発明の積層体を得ることができる。なお、積層体の態様としては、粘着シート、粘着テープ等が挙げられる。
【0038】
本発明によれば、例えば、JIS C 2107に基づいて測定された粘着力が10N/20mm以上であり、かつ0.5kgの荷重に対する耐熱保持温度が100℃以上である積層体を提供できる。なお、上記粘着力の上限は特に限定されないが、例えば20N/20mm以下である。上記耐熱保持温度の上限についても特に限定されないが、例えば200℃以下である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について比較例と併せて説明するが、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は「重量部」を示す。
【0040】
<ポリエステル樹脂溶液a−1の作製方法>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、ダイマージオール(クローダジャパン社製、プリポール2033、重量平均分子量:534)35部、セバシン酸(豊国製油社製)100部、1,4−ブタンジオール(和光純薬工業社製)40部、及びチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業社製)0.5部を仕込み、0.8kPaに減圧し、200℃で6時間重合を行った後、固形分濃度が50重量%になるようにトルエンで希釈して、ポリエステル樹脂溶液a−1を得た。
【0041】
<ポリエステル樹脂溶液a−2の作製方法>
ダイマージオールの配合量を17部、1,4−ブタンジオールの配合量を42部としたこと以外は、ポリエステル樹脂溶液a−1と同様にして、ポリエステル樹脂溶液a−2を得た。
【0042】
<ポリエステル樹脂溶液a−3の作製方法>
ダイマージオールの配合量を52部、1,4−ブタンジオールの配合量を38部としたこと以外は、ポリエステル樹脂溶液a−1と同様にして、ポリエステル樹脂溶液a−3を得た。
【0043】
<ポリエステル樹脂溶液a−4の作製方法>
ダイマージオールの配合量を8部、1,4−ブタンジオールの配合量を45部としたこと以外は、ポリエステル樹脂溶液a−1と同様にして、ポリエステル樹脂溶液a−4を得た。
【0044】
<ポリエステル樹脂溶液bの作製方法>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、ダイマージオール(クローダジャパン社製、プリポール2033、重量平均分子量:534)100部、ダイマー酸(クローダジャパン社製、プリポール1009、重量平均分子量:566)99部、及びチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業社製)0.5部を仕込み、0.8kPaに減圧し、200℃で6時間重合を行った後、固形分濃度が50重量%になるようにトルエンで希釈して、ポリエステル樹脂溶液bを得た。
【0045】
<実施例1>
ポリエステル樹脂溶液a−1(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)15部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが100μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−1を得た。別途、ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)1.5部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが10μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−1を得た。次いで、シートA−1(中心層)の両面にシートB−1(外側層)をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、実施例1の粘着シートを得た。
【0046】
<実施例2>
ポリエステル樹脂溶液a−1(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製) 15部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが30μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−2を得た。別途、ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)1.5部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが5μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−2を得た。次いで、シートA−2の両面にシートB−2をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、実施例2の粘着シートを得た。
【0047】
<実施例3>
ポリエステル樹脂溶液a−1(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)15部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが200μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−3を得た。別途、ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)1.5部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが30μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−3を得た。次いで、シートA−3の両面にシートB−3をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、実施例3の粘着シートを得た。
【0048】
<実施例4>
ポリエステル樹脂溶液a−2(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)20部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが200μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−4を得た。別途、ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)1.2部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが5μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−4を得た。次いで、シートA−4の両面にシートB−4をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、実施例4の粘着シートを得た。
【0049】
<実施例5>
ポリエステル樹脂溶液a−3(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)13部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが100μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−5を得た。別途、ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)2.5部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが10μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−5を得た。次いで、シートA−5の両面にシートB−5をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、実施例5の粘着シートを得た。
【0050】
<比較例1>
ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)2.5部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが100μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−6を得た。次いで、得られたシートB−6を中心層とし、この両面に、実施例1で得られたシートB−1をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例1の粘着シートを得た。
【0051】
<比較例2>
ポリエステル樹脂溶液b(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)1.0部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが10μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートB−7を得た。次いで、実施例1で得られたシートA−1の両面に、シートB−7をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例2の粘着シートを得た。
【0052】
<比較例3>
ポリエステル樹脂溶液a−3(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)13部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが10μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−6を得た。次いで、実施例1で得られたシートA−1の両面にシートA−6をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例3の粘着シートを得た。
【0053】
<比較例4>
実施例1で得られたシートB−1を、単層シートのまま50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例4の粘着シートを得た。
【0054】
<比較例5>
実施例1で得られたシートA−1を、単層シートのまま50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例5の粘着シートを得た。
【0055】
<比較例6>
ポリエステル樹脂溶液a−4(固形分重量で100部)と、ポリイソシアネート系架橋剤であるデュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ社製)15部と、チタン系触媒であるTC750(マツモトファインケミカル社製)0.1部とを配合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を乾燥後の厚さが100μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布し、100℃で3分間乾燥することによって架橋させ、シートA−7を得た。次いで、シートA−7の両面に実施例1で得られたシートB−1をハンドローラーで貼り合せて積層し、更に50℃の雰囲気で3日間熟成させ、比較例6の粘着シートを得た。
【0056】
上記シートA−1〜A−7及びシートB−1〜B−7、並びに実施例及び比較例の粘着シートについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
<貯蔵弾性率G’>
乾燥後(架橋後)で積層前のシートA−1〜A−7及びシートB−1〜B−7について、それぞれ直径8mmφの円形状に切り抜いた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がし、更に厚さが3mmになるように複数枚貼り合せて、測定サンプルを作製した。この測定サンプルを、パラレルプレート(せん断試験用)を用いて、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」により、周波数1Hz、測定範囲−70〜200℃、昇温速度5℃/分の条件で測定し、温度200℃における測定値を貯蔵弾性率G’とした。
【0058】
<ゲル分率>
乾燥後(架橋後)で積層前のシートA−1〜A−7及びシートB−1〜B−7について、それぞれ5cm×5cmのサイズで切り出した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がし、更に0.2μm径の孔を有するポリテトラフルオロエチレンシート(日東電工社製、商品名「NTF1122」)に包んだ後、該ポリテトラフルオロエチレンシートの縁部を凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とした。つまり、該浸漬前重量は、粘着剤組成物層と、ポリテトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、ポリテトラフルオロエチレンシートと凧糸との総重量も測定しておき、該重量を包袋重量とした。次に、上記ポリテトラフルオロエチレンシートで包んだ状態のサンプルを、トルエン(50mL)中に浸漬し、23℃にて7日間静置した。その後、上記サンプルを取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間乾燥してトルエンを除去した後、サンプルの重量を測定し、該重量を浸漬後重量とした。そして、下記の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=(浸漬後重量−包袋重量)/(浸漬前重量−包袋重量)×100
【0059】
<粘着力>
各実施例及び比較例で得られた粘着シートの一方の面に、コロナ処理を施した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けて、長さ110mm×幅20mmに切り出して、これを測定片とした。この測定片をステンレス鋼板に貼付し、測定片上で2kgのローラーを一往復させて圧着した後、JIS C 2107(180度引き剥がし法)に基づいて粘着力の測定を行なった。ただし、引張り速度は300mm/分とした。
【0060】
<耐熱保持性>
各実施例及び比較例で得られた粘着シートの一方の面に、厚さ90μmのアルミテープを貼付し、10mm×100mmに切り出して、これを測定片とした。この測定片の一方の先端から20mmをベークライト板(125mm×25mm、厚み2mm)に貼付し、貼付箇所上で5kgのローラーを一往復させて圧着し、80℃の雰囲気下で圧着直後から30分放置した後に、他方の先端に0.5kgの分銅をかけ、最低測定温度を60℃とし、昇温速度1℃/分の条件で昇温していき、貼付状態の保持が可能な最高温度(耐熱保持温度)を調べた。耐熱保持温度が高いほど耐熱保持性が良好であることを示す。なお、比較例2,3,5は、測定温度が60℃の段階で貼付状態の保持ができなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、本発明の実施例は、粘着力及び耐熱保持性のいずれもが良好な値を示した。一方、比較例は、粘着力及び耐熱保持性の少なくとも一方について、実施例に比べ顕著に劣る結果が得られた。
【符号の説明】
【0063】
A 感圧性粘着剤組成物層(200℃における貯蔵弾性率が25〜40kPaであるポリエステル樹脂により形成)
B 感圧性粘着剤組成物層(200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaであるポリエステル樹脂により形成)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧性粘着剤組成物層Aと、前記感圧性粘着剤組成物層Aの両面に設けられた感圧性粘着剤組成物層Bとを含む積層体であって、
前記感圧性粘着剤組成物層Aは、200℃における貯蔵弾性率が25〜40kPaであるポリエステル樹脂により形成されており、
前記感圧性粘着剤組成物層Bは、200℃における貯蔵弾性率が10〜20kPaであるポリエステル樹脂により形成されている、積層体。
【請求項2】
前記感圧性粘着剤組成物層Aの厚さが、10〜200μmであり、
前記感圧性粘着剤組成物層Bの厚さが、5〜30μmである請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記感圧性粘着剤組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂が、いずれも架橋されている請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記感圧性粘着剤組成物層Aを形成するポリエステル樹脂のゲル分率が、70〜95重量%であり、
前記感圧性粘着剤組成物層Bを形成するポリエステル樹脂のゲル分率が、30〜65重量%である請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂を架橋するための架橋剤が、3官能以上の多価イソシアネートである請求項3又は4記載の積層体。
【請求項6】
前記感圧性粘着剤組成物層A及びBを形成するポリエステル樹脂が、植物由来のジカルボン酸と、植物由来のジオールとから製造されている請求項1〜5のいずれか1項記載の積層体。
【請求項7】
粘着テープ又は粘着シートである請求項1〜6のいずれか1項記載の積層体。
【請求項8】
JIS C 2107に基づいて測定された粘着力が10N/20mm以上であり、かつ0.5kgの荷重に対する耐熱保持温度が100℃以上である請求項1〜7のいずれか1項記載の積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36278(P2012−36278A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176616(P2010−176616)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】