積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置
【課題】高周波成分における感度を向上させるとともに、帯域を広く利用することができる積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】積層圧電体1120は、無機材料を主成分とする圧電体が4層の圧電体1121,1122,1123,1124を1単位として4n層に積層され、圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2共振モードで共振する。圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有する。積層圧電体1120は、電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、1単位中の4層の圧電体1121,1122,1123,1124のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、1単位中の4層の圧電体1121,1122,1123,1124のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように圧電体を積層している。
【解決手段】積層圧電体1120は、無機材料を主成分とする圧電体が4層の圧電体1121,1122,1123,1124を1単位として4n層に積層され、圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2共振モードで共振する。圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有する。積層圧電体1120は、電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、1単位中の4層の圧電体1121,1122,1123,1124のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、1単位中の4層の圧電体1121,1122,1123,1124のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように圧電体を積層している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波トランスデューサにはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の無機圧電材料を主成分とする圧電体が多く用いられており、所定の共振周波数の電気信号が与えられて共振することで超音波を出力する。また、この超音波トランスデューサは、出力した超音波の反射波を受信すると電気信号に変換することができる。このような超音波トランスデューサは、医用超音波診断装置、超音波探傷装置及びソナー等の装置において用いられている。近年では、このような装置においては、高診断価値を得るために、画像の高解像化及び高分解能化が求められている。
【0003】
このような問題に鑑み、超音波トランスデューサの高周波化及び高感度化を達成するために、従来、複数の圧電体を積層して超音波トランスデューサを形成するようにしたものがある。この超音波トランスデューサを積層圧電体ということがある。この積層圧電体は、2つの圧電体層を分極方向が隣接するもの同士互いに逆となるように積層し、積層方向の両端面に電極を被着して形成するようにしたものである(例えば、特許文献1)。このような積層圧電体は、両端面が振動の「腹」となり、mλ/2(mは正整数)共振が得られるように構成されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2758199号公報
【特許文献2】特開平4−211600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献に記載の技術では、高周波成分における感度が増強されるが、このような効果が期待できるのは、特定の周波数帯に限定されている。すなわち、このような特定の周波数帯の周辺では、個々の圧電体のひずみ量が互いに打ち消し合って共振が得られなくなり、感度が低下してしまう。したがって、利用できる周波数帯域が限定的であり、実用的でない。近年では、感度の向上のため、圧電体を4層に積層した積層圧電体が利用されるが、上記特許文献1に記載の技術のようにして圧電体を積層した場合には、上述した問題が顕著となる。
【0006】
本発明の課題は、高周波成分における感度を向上させるとともに、帯域を広く利用することができる積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、無機圧電材料を主成分とする圧電体が、4層の圧電体を1単位として4n(nは正整数)層に積層され、該圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2(mは正整数)共振モードで共振する積層圧電体であって、
前記圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有し、
電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように前記圧電体が積層されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層圧電体において、
各層の圧電体が電気的に並列に接続されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、超音波探触子において、
請求項1又は2に記載の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に対して電圧を印加することによって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を前記積層圧電体が受信して電気信号に変換することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、超音波診断装置において、
請求項3に記載の超音波探触子と、
前記積層圧電体に対して電圧を印加するための送信信号を前記超音波探触子に送信する送信部と、
前記超音波探触子にて変換された電気信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された超音波画像データに基づく超音波画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波成分における感度を向上させるとともに、帯域を広く利用することができる積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る積層圧電体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る積層圧電体の概略構成を示す断面図である。
【図3】2層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図4】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図5】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図6】2層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図7】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図8】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図9】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図10】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図11】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図12】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図13】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図14】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図15】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図16】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振共振次数毎に表して説明する図である。
【図17】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図18】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図19】本実施の形態に係る超音波探触子の概略構成を示す断面図である。
【図20】本実施の形態に係る超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図21】超音波診断装置本体の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本実施の形態に係る積層圧電体について説明する。図1は、4層の圧電体を積層し、電気的に並列に接続して構成した積層圧電体を示す。図2は、4層の圧電体を積層し、電気的に直列に接続して構成した積層圧電体を示す。本実施の形態では、図1及び図2の何れに示される積層圧電体についても適用することができる。
【0015】
4層の圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体1は、図1に示すように、4つの圧電体2〜5が厚み方向に積層されて構成されている。
【0016】
圧電体2〜5は、無機圧電材料を主成分とした無機圧電体によって構成されている。本実施の形態において適用可能な無機圧電材料としては、従来から用いられている水晶、圧電セラミックスPZT、PLZTや、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PT、LiTaO3、KNbO3、ZnO、AlNなどの薄膜などである。なお、これらの無機圧電材料と有機高分子材料を併用したコンポジット圧電体を適用してもよい。また、主成分として、上述した無機圧電材料が含まれていればよく、無機圧電材料以外の成分が含まれていてもよい。本実施の形態では、圧電体2〜5は、それぞれ、PZTを主成分とする圧電セラミックにより構成されている。
各圧電体2〜5は、それぞれ、ポーリング処理により、厚み方向の何れか一方向に向いた残留分極が施されている。本実施の形態では、積層圧電体1に電圧が印加されたときに、電界の向きと残留分極の向きとについて、圧電体2〜5のうちの何れか1つのみが対向する関係、又は、一致する関係となるように、各圧電体2〜5の残留分極の向きを設定する。このように残留分極の向きを設定する理由については、後述する。
また、各層の圧電体2〜5の厚さは、同一に設定されている。なお、送受信する超音波の帯域を更に広げるために、各層の圧電体2〜5の厚さを同一とせず、それぞれ異ならせるようにしてもよい。すなわち、積層圧電体1における振動の波長を考慮し、圧電体の界面の位置と振動の「腹」及び「節」の位置とがずれるように、各層の圧電体の厚さをそれぞれ設定するようにしてもよい。例えば、隣接する圧電体間で、厚さを20〜25%程度異ならせるように設定することができる。
【0017】
積層された圧電体2〜5の両端面及び界面にそれぞれ電極層6〜10が配置されている。電極層6〜10は、例えば、焼成、真空蒸着あるいはスパッタリング等により、圧電体2〜5と一体化される。電極層に適用可能な材料としては、Ag-Pdペーストや金、銀、銅、白金、ニッケル、クロム、それらの合金等である。電極層7,9は、それぞれ端子11に接続されており、電極層6,8,10は、それぞれ端子12に接続されている。
端子11,12は、所定周波数の駆動電圧を出力する電圧発生器にそれぞれ接続される。
【0018】
このように構成された積層圧電体1は、両端が自由端となっているため、mλ/2(mは正整数)共振モードで共振する。このときの積層圧電体1の基本共振周波数f(0)は、下記式(1)のようにして求めることができる。下記式(1)において、vは音速を示し、hは積層圧電体の厚さを示している。なお、ここでは、電極層の厚みについては考慮していない。
f(0)=v/2h・・・(1)
【0019】
このように構成された積層圧電体1に対して電圧を印加して励振すると、各圧電体2〜5が同期して伸縮を行う。その結果、積層圧電体1は、振動の「腹」と「節」とがそれぞれ、積層圧電体1の両端面又は界面となるような共振を発生させる。
【0020】
また、4層の圧電体が電気的に直列接続された積層圧電体20は、図2に示すように、4つの圧電体21〜24が厚み方向に積層されて構成されている。各層の圧電体21〜24の成分、分極の向き及び厚さの設定については、図1に示して上述した積層圧電体1と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
積層圧電体20は、積層された圧電体21〜24の両端面にそれぞれ電極層25,26が配置されている。電極層25は、端子27に接続されており、電極層26は、端子28に接続されている。
端子27,28は、所定周波数の駆動電圧を出力する電圧発生器にそれぞれ接続される。
【0022】
このように構成された積層圧電体20も、上述した4つの圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体1と同様に共振を発生させることができる。
【0023】
ここで、圧電層毎の残留分極の向き及び電界の向きと、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する。
【0024】
先ず、図3を参照して、2つの圧電体を積層して電気的に直列接続された積層圧電体を例に説明する。図3(A)に示すように、2つの圧電体が直列接続された積層圧電体1000の各層の圧電体1001,1002は、何れも同方向となるように残留分極の向き(以下、分極方向ということがある。)が設定されている。すなわち、何れの圧電体1001,1002も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。なお、以下の説明において、図中、圧電体上に表された矢印によって、残留分極の向きを示す。このような積層圧電体1000に対し、端子1005,1006を介して電圧を印加し、電極層1003における電圧の極性が正で、電極層1004における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図3(A)に示す。ここで、λ/2共振モードは、積層圧電体全体の厚みによって導出される基本共振周波数にて積層圧電体を共振させるモードであり、2λ/2共振モードは、基本共振周波数の2倍の周波数(2次共振)にて積層圧電体を共振させるモードである。図3(A)に示す例において、電界の向き(以下、電界方向ということがある。)は、何れの層の圧電体1001,1002においても分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1001,1002におけるひずみ量S1,S2は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S1=sin0−sin(−π/2)=1・・・(2)
S2=sinπ/2−sin0=1・・・(3)
(以下、圧電体のひずみ量は、圧電体1001,1002のひずみ量S1,S2を1とした場合の相対値で表す。)
よって、各層の圧電体1001,1002は同相で歪むため、積層圧電体1000全体のひずみ量は、
S1+S2=2・・・(4)
となり、積層圧電体1000の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1001,1002におけるひずみ量S3,S4は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S3=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(5)
S4=sin3π/2−sinπ/2=−2・・・(6)
よって、各層の圧電体1001,1002は逆相で歪むため、積層圧電体1000全体のひずみ量は、
S3+S4=0・・・(7)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1000の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1000全体のひずみ量を求めることができる。
【0025】
一方、図3(B)に示す例では、積層圧電体1010は、圧電体1011及び圧電体1012の分極方向が互いに逆方向となるように設定されている。このような積層圧電体1010に対し、端子1015,1016を介して電圧を印加し、電極層1013おける電圧の極性が正で、電極層1014おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図3(B)に示す。このとき、圧電体1011については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1012については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1011,1012におけるひずみ量S5,S6は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S5=sin0−sin(−π/2)=1・・・(8)
S6=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(9)
よって、各層の圧電体1011,1012は逆相で歪むため、積層圧電体1010全体のひずみ量は、
S5+S6=0・・・(10)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1010の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1011,1012におけるひずみ量の変位量S7,S8は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S7=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(11)
S8=−(sin3π/2−sinπ/2)=2・・・(12)
よって、各層の圧電体1011,1012は同相で歪むため、積層圧電体1010全体のひずみ量は、
S3+S4=4・・・(13)
となり、積層圧電体1010の共振が、4倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1010全体のひずみ量を求めることができる。
【0026】
以上説明したようにして求められる、2つの圧電体が積層されて電気的に直列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図4に示す表によって表すことができる。図4中、分極方向と電界方向とが一致する関係となる場合を「○」で示し、対向する関係となる場合を「×」にて示している。なお、印加される電圧の極性は周期的に変動するため、電界方向も周期的に変動する。そのため、電界方向と分極方向との関係についても周期的に変動する。また、図4に示される各パターンにおける各圧電体の分極方向をそれぞれ反転させたものとしても、図4に示されるものと同様の結果が得られる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図5に示す。
【0027】
図4及び図5に示すように、パターンAでは、奇数次の共振の場合には、積層圧電体のひずみ量が2倍である共振が見られる一方、偶数次の共振の場合には、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンBでは、周波数が基本共振周波数の2倍(2次共振)及び6倍(6次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。
【0028】
以上の結果から、パターンA及びパターンBの何れにおいても、高次周波数において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。
【0029】
次に、図6を参照して、2つの圧電体を積層して電気的に並列接続された積層圧電体を例に説明する。図6(A)に示すように、並列接続された積層圧電体1030の各層の圧電体1031,1032は、分極方向が互いに逆方向となるように設定されている。すなわち、圧電体1031は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1032は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1030に対し、端子1036,1037を介して電圧を印加し、電極層1033,1035における電圧の極性が正で、電極層1034における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図6(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1031,1032においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1031,1032におけるひずみ量S9,S10は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S9=sin0−sin(−π/2)=1・・・(14)
S10=sinπ/2−sin0=1・・・(15)
よって、各層の圧電体1031,1032は同相で歪むため、積層圧電体1030全体のひずみ量は、
S9+S10=2・・・(16)
となり、積層圧電体1030の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1031,1032におけるひずみ量S11,S12は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S11=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(17)
S12=sin3π/2−sinπ/2=−2・・・(18)
よって、各層の圧電体1031,1032は逆相で歪むため、積層圧電体1030全体のひずみ量は、
S11+S12=0・・・(19)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1030の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1030全体のひずみ量を求めることができる。
【0030】
一方、図6(B)に示す例では、積層圧電体1040の各層の圧電体1041,1042は、何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1041,1042も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1040に対し、端子1046,1047を介して電圧を印加し、電極層1043,1045おける電圧の極性が正で、電極層1044おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図6(B)に示す。このとき、圧電体1041については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1042については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1041,1042におけるひずみ量S13,S14は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S13=sin0−sin(−π/2)=1・・・(20)
S14=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(21)
よって、各層の圧電体1041,1042は逆相で歪むため、積層圧電体1040全体のひずみ量は、
S13+S14=0・・・(22)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1040の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1041,1042におけるひずみ量S15,S16は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S15=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(23)
S16=−(sin3π/2−sinπ/2)=2・・・(24)
よって、各層の圧電体1041,1042は同相で歪むため、積層圧電体1040全体のひずみ量は、
S15+S16=4・・・(25)
となり、積層圧電体1040の共振が、4倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1040全体のひずみ量を求めることができる。
【0031】
以上説明したようにして求められる、2つの圧電体が積層されて電気的に並列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図7に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図8に示す。
図7及び図8に示すように、パターンC及びパターンDの何れにおいても、直列接続された積層圧電体と同様に、高次共振において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。
【0032】
次に、図9及び図10を参照して、4つの圧電体を積層して電気的に直列接続された積層圧電体を例に説明する。図9(A)に示すように、直列接続された積層圧電体1050の各層の圧電体1051〜1054は、何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1051〜1054も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1050に対し、端子1057,1058を介して電圧を印加し、電極層1055における電圧の極性が正で、電極層1056における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図9(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1051〜1054においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1051〜1054におけるひずみ量S17〜S20は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S17=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(26)
S18=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(27)
S19=sinπ/4−sin0=0.7・・・(28)
S20=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(29)
よって、各層の圧電体1051〜1054は何れも同相で歪むため、積層圧電体1050全体のひずみ量は、
S17+S18+S19+S20=2・・・(30)
となり、積層圧電体1050の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1051〜1054におけるひずみ量S21〜S24は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S21=sin0−sin(−π/2)=1・・・(31)
S22=sinπ/2−sin0=1・・・(32)
S23=sinπ−sinπ/2=−1・・・(33)
S24=sin3π/2−sinπ=−1・・・(34)
よって、圧電体1051と圧電体1052との組合せ、及び、圧電体1053と圧電体1054との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1050全体のひずみ量は、
S21+S22+S23+S24=0・・・(35)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1050の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1050全体のひずみ量を求めることができる。
【0033】
一方、図9(B)に示す例では、積層圧電体1060は、各層の圧電体1061〜1064の分極方向が交互に反転するように設定されている。すなわち、圧電体1061,1063は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1062,1064は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1060に対し、端子1067,1068を介して電圧を印加し、電極層1065おける電圧の極性が正で、電極層1066おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図9(B)に示す。このとき、圧電体1061,1063については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1062,1064については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1061〜1064におけるひずみ量S25〜S28は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S25=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(36)
S26=−{sin0−sin(−π/4)}=−0.7・・・(37)
S27=sinπ/4−sin0=0.7・・・(38)
S28=−(sinπ/2−sinπ/4)=−0.3・・・(39)
よって、圧電体1061と圧電体1063との組合せ、及び、圧電体1062と圧電体1064との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1060全体のひずみ量は、
S25+S26+S27+S28=0・・・(40)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1060の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1061〜1064におけるひずみ量S29〜S32はそれぞれ、下記式によって表すことができる。
S29=sin0−sin(−π/2)=1・・・(41)
S30=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(42)
S31=sinπ−sinπ/2=−1・・・(43)
S32=−(sin3π/2−sinπ)=1・・・(44)
よって、圧電体1061と圧電体1064との組合せ、及び、圧電体1062と圧電体1063との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1060全体のひずみ量は、
S29+S30+S31+S32=0・・・(45)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1060の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1060全体のひずみ量を求めることができる。
【0034】
さらに、図10に示す例では、積層圧電体1070は、各層の圧電体1071〜1074の分極方向が、何れか1つのみ異なるように設定されている。すなわち、圧電体1071,1072,1074は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1073は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1070に対し、端子1077,1078を介して電圧を印加し、電極層1075おける電圧の極性が正で、電極層1076おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図10に示す。このとき、圧電体1071,1072,1074については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1073については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1071〜1074におけるひずみ量S33〜S36はそれぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S33=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(46)
S34=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(47)
S35=−(sinπ/4−sin0)=−0.7・・・(48)
S36=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(49)
よって、圧電体1071,1072,1074はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1073は、圧電体1071,1072,1074とは逆相で歪むため、積層圧電体1070全体のひずみ量は、
S33+S34+S35+S36=0.6・・・(50)
となり、積層圧電体1070の共振が、0.6倍のひずみ量となって表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1071〜1074におけるひずみ量S37〜S40はそれぞれ、下記式によって表すことができる。
S37=sin0−sin(−π/2)=1・・・(51)
S38=sinπ/2−sin0=1・・・(52)
S39=−(sinπ−sinπ/2)=1・・・(53)
S40=sin3π/2−sinπ=−1・・・(54)
よって、圧電体1071,1072,1073はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1074は、圧電体1071,1072,1073とは逆相で歪むため、積層圧電体1070全体のひずみ量は、
S37+S38+S39+S40=2・・・(55)
となり、積層圧電体1070の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1070全体のひずみ量を求めることができる。
【0035】
以上説明したようにして求められる、4つの圧電体が積層されて電気的に直列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図11に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図12及び図13に示す。
【0036】
図11〜図13に示すように、パターンEのように、分極方向と電界方向とが全ての圧電体において一致する関係にあるか対向する関係となる場合には、奇数次の共振であるときには、積層圧電体のひずみ量が2倍である共振が見られる一方、偶数次の共振であるときには、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンFのように、分極方向と電界方向とが一致する関係にある圧電体と対向する関係にある圧電体とが交互となる場合には、周波数が基本共振周波数の4倍(4次共振)であるときに、積層圧電体のひずみ量が8倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンGのように、最上層及び最下層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にあり、中間層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にある場合、並びに、最上層及び最下層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にあり、中間層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にある場合には、周波数が基本共振周波数の奇数次である場合に共振が見られる。パターンGでは、特に、周波数が基本共振周波数の3倍(3次共振)及び5倍(5次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4.8倍となって共振する点に特徴がみられる。一方、周波数が基本共振周波数の偶数時である場合には、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンHのように、最下層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にあり、最上層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にある場合、並びに、最下層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にあり、最上層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にある場合には、周波数が基本共振周波数の2倍(2次共振)及び6倍(6次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンI〜Lのように、分極方向と電界方向とが一致する関係にある圧電体が1つのみ存在する場合、及び、分極方向と電界方向とが対向する関係にある圧電体が1つのみ存在する場合には、周波数が基本共振周波数の4倍(4次共振)であるときをピークとして、次数が1〜7次までの何れにおいても、積層圧電体の共振が見られる。
【0037】
以上の結果から、パターンE、パターンG及びパターンHは何れも、高次周波数において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。また、パターンFは、ある特定の高次周波数においては感度が極めて良好であるが、利用できる周波数帯が当該特定の周波数とその近傍に限定され、極めて狭くなる。
一方、パターンI〜パターンLは何れも、高次周波数においてひずみ量が増幅されて積層圧電体が共振されるので、比較的高い感度が得られる。また、パターンI〜パターンLは何れも、1次数から7次数までの何れの周波数においても積層圧電体の共振が得られるので、広帯域で利用することができる。
【0038】
次に、図14及び図15を参照して、4つの圧電体を積層して電気的に並列接続された積層圧電体を例に説明する。図14(A)に示すように、積層圧電体1080は、各層の圧電体1081〜1084の分極方向が交互に反転するように設定されている。すなわち、圧電体1081,1083は、上層から下層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1082,1084は、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1080に対し、端子1090,1091を介して電圧を印加し、電極層1086,1088における電圧の極性が正で、電極層1085,1087,1089における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図14(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1081〜1084においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1081〜1084におけるひずみ量S41〜S44は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S41=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(56)
S42=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(57)
S43=sinπ/4−sin0=0.7・・・(58)
S44=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(59)
よって、各層の圧電体1081〜1084は何れも同相で歪むため、積層圧電体1080全体のひずみ量は、
S41+S42+S43+S44=2・・・(60)
となり、積層圧電体1080の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1081〜1084におけるひずみ量S45〜S48は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S45=sin0−sin(−π/2)=1・・・(61)
S46=sinπ/2−sin0=1・・・(62)
S47=sinπ−sinπ/2=−1・・・(63)
S48=sin3π/2−sinπ=−1・・・(64)
よって、圧電体1081と圧電体1082との組合せ、及び、圧電体1083と圧電体1084との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1080全体のひずみ量は、
S45+S46+S47+S48=0・・・(65)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1080の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1080全体のひずみ量を求めることができる。
【0039】
一方、図14(B)に示す例では、積層圧電体1100は、各層の圧電体1101〜1104が何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1101〜1104も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1100に対し、端子1110,1111を介して電圧を印加し、電極層1106,1108における電圧の極性が正で、電極層1105,1107,1109における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図14(B)に示す。このとき、圧電体1102,1104については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1101,1103については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1101〜1104におけるひずみ量S49〜S52は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S49=−{sin(−π/4)−sin(−π/2)}=−0.3・・・(66)
S50=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(67)
S51=−(sinπ/4−sin0)=−0.7・・・(68)
S52=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(69)
よって、圧電体1101と圧電体1103との組合せ、及び、圧電体1102と圧電体1104との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1100全体のひずみ量は、
S49+S51+S52+S53=0・・・(70)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1100の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1101〜1104におけるひずみ量S53〜S56は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S53=−{sin0−sin(−π/2)}=−1・・・(71)
S54=sinπ/2−sin0=1・・・(72)
S55=−(sinπ−sinπ/2)=1・・・(73)
S56=sin3π/2−sinπ=−1・・・(74)
よって、圧電体1101と圧電体1104との組合せ、及び、圧電体1102と圧電体1103との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1100全体のひずみ量は、
S53+S54+S55+S56=0・・・(75)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1100の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1100全体のひずみ量を求めることができる。
【0040】
さらに、図15に示す例では、積層圧電体1120は、各層の圧電体1121〜1124の分極方向が、何れか1つのみ異なるように設定されている。すなわち、圧電体1121,1122,1124は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1123は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1120に対し、端子1130,1131を介して電圧を印加し、電極層1126,1128における電圧の極性が正で、電極層1125,1127,1129における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図15に示す。このとき、圧電体1122,1123,1124については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1121については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1121〜1124におけるひずみ量S57〜S60は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S57=−{sin(−π/4)−sin(−π/2)}=−0.3・・・(76)
S58=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(77)
S59=sinπ/4−sin0=0.7・・・(78)
S60=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(79)
よって、圧電体1122,1123,1124はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1121は、圧電体1122,1123,1124とは逆相で歪むため、積層圧電体1120全体のひずみ量は、
S57+S58+S59+S60=1.4・・・(80)
となり、積層圧電体1120の共振が、1.4倍のひずみ量となって表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1121〜1124におけるひずみ量S61〜S64は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S61=−{sin0−sin(−π/2)}=−1・・・(81)
S62=sinπ/2−sin0=1・・・(82)
S63=sinπ−sinπ/2=−1・・・(83)
S64=sin3π/2−sinπ=−1・・・(84)
よって、圧電体1121,1123,1124はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1122は、圧電体1121,1123,1124とは逆相で歪むため、積層圧電体1120全体のひずみ量は、
S61+S62+S63+S64=−2・・・(85)
となり、積層圧電体1120の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1120全体のひずみ量を求めることができる。
【0041】
以上説明したようにして求められる、4つの圧電体が積層されて電気的に並列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図16に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図17及び図18に示す。
【0042】
図16〜図18に示すように、並列接続された積層圧電体においても、直列接続された積層圧電体と同様の結果が見られる。すなわち、各層の圧電体が直列接続であるか並列接続であるかにかかわらず、各層の圧電体毎の分極方向及び電界方向の関係がどのようになっているかによって、励振されたときの積層圧電体全体のひずみ量が定まる。
【0043】
上述したように、4つの圧電体が電気的に直列接続された積層圧電体及び並列接続された積層圧電体は、何れも同様の効果を得ることができるが、以下の点で、4つの圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体が有利である。すなわち、複数の圧電体を積層して電気的に直列接続した場合には、コンデンサ容量が積層圧電体全体の厚みに反比例するため、積層圧電体全体の厚みが大きくなるほど電気的インピーダンスが高くなる。そのため、積層圧電体の励振を制御するシステム側とのインピーダンス整合を考慮する必要がある。一方、複数の圧電体を積層して電気的に並列接続した場合には、圧電体を積層した分だけコンデンサ容量が大きくなるので、電気的インピーダンスを下げることができる。そのため、システム側とのインピーダンス整合の問題は低減される。さらに、積層圧電体を素子化する際に、インピーダンスを下げるために素子ピッチを大きくする必要がなく、例えば、超音波診断装置に適用した場合には、方位分解能を低下させることがない。
【0044】
以上の結果から、本実施の形態に適用する好ましい積層圧電体としては、例えば、図11中に示されたパターンI〜パターンL、及び、図16中に示されたパターンQ〜パターンTのように、残留分極の向きと、電界の向きとが、4層の圧電体のうちの1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、4層の圧電体のうちの1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように、圧電体を積層して構成したものということができる。このような構成とすることによれば、高周波領域において感度のよい積層圧電体とすることができる。また、ピーク間において圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなる帯域がないため、共振を利用できる周波数帯を広帯域で持たせることができ、実用的である。
【0045】
なお、上述した説明では、4つの圧電体を積層して積層圧電体を形成したものを例としたが、圧電体の積層数は4の整数倍であっても同様の効果を得ることができる。この場合、分極方向と電界方向との関係を4つの圧電体を1単位とし、単位毎に考慮すればよい。
【0046】
次に、上述した積層圧電体を適用した超音波探触子について説明する。本実施の形態において適用される超音波探触子は、医用超音波診断装置の主要構成部品であって、電気信号が与えられることにより超音波を送信し、超音波を受信することより電気信号を出力する機能を有するものである。また、以下の説明において、超音波探触子としてリニア電子スキャンプローブを採用しているが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0047】
超音波探触子30は、図19に示すように、例えば、図上正面視下方から、バッキング層31と、バッキング層31上に積層された圧電層32と、圧電層上に積層された音響整合層33と、音響整合層33上に積層された音響レンズ34とを備えて構成されている。
【0048】
バッキング層31は、圧電層32を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、バッキング層31は、圧電層32の被検体に音波を送受信する方向と反対の板面に装着され、被検体の方向の反対側から発生する超音波を吸収する。
【0049】
バッキング層31を構成するバッキング材としては、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した複合材料、さらには複合材料を粉砕したのち、上述した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等と混合し、硬化させた材料を用いることができる。音響インピーダンスを調整するために、マコールガラス等の無機材料や空隙を有する多孔質材料を用いることもできる。
【0050】
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料、及び/又は、エポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電層32やこれを含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。
【0051】
圧電層32は、上述した積層圧電体を所定ピッチにダイシングして、複数に素子化して構成したものである。これらの素子は、方位方向に一次元アレイ状に配列される。素子の個数は任意であるが、本実施の形態では、例えば、192個としている。なお、圧電層32は、素子が二次元アレイ状に配列されるように積層圧電体をダイシングしたものとしてもよい。
【0052】
音響整合層33は、圧電層32と被検体の間の音響インピーダンスを整合させ、境界面での反射を抑制するものである。音響整合層33は、圧電層32の、超音波の送受信が行われる送受信方向である被検体側に装着される。音響整合層33は、圧電層32と被検体との概ね中間の音響インピーダンスを有する。
【0053】
音響整合層33に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(例えばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものが適用できる。
【0054】
音響整合層33は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上、より好ましくは4層以上である。音響整合層33の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定めるのが好ましい。音響整合層33の層厚が適切になされないと、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動してしまう場合がある。結果、残響時間の増加、反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こす場合がある。このような音響整合層の厚さとしては、通常、概ね20〜500μmの範囲のものが用いられる。
【0055】
音響レンズ34は、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されるものである。すなわち、音響レンズ34は、超音波探触子30の被検体と接する側に設けられ、圧電層32にて発生された超音波を、被検体に効率よく入射させる。音響レンズ34は、例えば、被検体と接する部分で凸型、凹型、球面型あるいは非球面型のレンズ形状を有し、被検体に入射される超音波を、撮像断面と直交する厚さ方向で収束させる。
【0056】
音響レンズ34は、概ね被検体及び音響整合層33の中間の音響インピーダンスを有する軟質の高分子材料により形成される。
【0057】
音響レンズ34を構成する素材としては、従来公知のシリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム、あるいは、ポリメチルペンテンやポリスチレンなどのポリオレフィン等が適用可能である。これらのうち、シリコーン系ゴム及びブタジエン系ゴムを用いることが好ましい。
【0058】
次に、以上のようにして構成された超音波探触子30を備えた超音波診断装置について説明する。
【0059】
本実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図20及び図21に示すように、上述した超音波探触子30と、超音波探触子30とケーブル50を介して接続され、超音波探触子30に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子30に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子30にて受信された反射超音波に応じて生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体40とを備えて構成している。
【0060】
超音波診断装置本体40は、例えば、図21に示すように、操作入力部41と、送信部42と、受信部43と、画像生成部44と、メモリ部45と、DSC(Digital Scan Converter)46と、表示部47と、制御部48とを備えて構成されている。
【0061】
操作入力部41は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部48に出力する。
【0062】
送信部42は、制御部48の制御に従って、超音波探触子30にケーブル50を介して所定電圧の電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子30に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部42は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングをチャンネル毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。ここで、チャンネルは、素子化された積層圧電体の1素子に対応している。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
【0063】
受信部43は、制御部48の制御に従って、超音波探触子30からケーブル50を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部43は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、チャンネル毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をA/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、チャンネル毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0064】
画像生成部44は、受信部43からの音線データに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部44は、Bモード画像データの他、Aモード画像データ、Mモード画像データ及びドプラ法による画像データが生成できるものであってもよい。
【0065】
メモリ部45は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部44から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、フレーム画像データとして記憶することができる。そして、記憶されたフレーム画像データは、制御部48の制御に従って、DSC46に送信される。
【0066】
DSC46は、メモリ部45より受信したフレーム画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部47に出力する。
【0067】
表示部47は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部47は、DSC46から出力された画像信号に従って表示画面上に画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンタ等の印刷装置等を適用してもよい。
【0068】
制御部48は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0069】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、積層圧電体1(20)は、無機圧電材料を主成分とする圧電体2〜5(21〜24)が4層の圧電体を1単位として4n層に積層され、圧電体2〜5(21〜24)の厚み伸縮によって生じるmλ/2共振モードで共振する。圧電体2〜5(21〜24)は、それぞれ厚み方向に残留分極を有する。積層圧電体1(20)は、電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、1単位中の4層の圧電体2〜5(21〜24)のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、1単位中の4層の圧電体2〜5(21〜24)のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように圧電体2〜5(21〜24)が積層されている。その結果、高周波領域において感度のよい積層圧電体とすることができる。また、ピーク間において圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなる帯域がないため、共振を利用できる周波数帯を広帯域で持たせることができ、実用的となる。
【0070】
また、本発明の実施の形態によれば、積層圧電体1は、各層の圧電体2〜5が電気的に並列に接続されるように構成している。その結果、コンデンサ容量を上げて電気的インピーダンスを下げることができるので、積層圧電体の励振を制御するシステム側とのインピーダンス整合の影響を低減させることができる。
【0071】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 積層圧電体
2〜5 圧電体
6〜10 電極層
20 積層圧電体
21〜24 圧電体
25,26 電極層
30 超音波探触子
32 圧電層
40 超音波診断装置本体
42 送信部
43 受信部
44 画像生成部
47 表示部
48 制御部
S 超音波診断装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波トランスデューサにはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の無機圧電材料を主成分とする圧電体が多く用いられており、所定の共振周波数の電気信号が与えられて共振することで超音波を出力する。また、この超音波トランスデューサは、出力した超音波の反射波を受信すると電気信号に変換することができる。このような超音波トランスデューサは、医用超音波診断装置、超音波探傷装置及びソナー等の装置において用いられている。近年では、このような装置においては、高診断価値を得るために、画像の高解像化及び高分解能化が求められている。
【0003】
このような問題に鑑み、超音波トランスデューサの高周波化及び高感度化を達成するために、従来、複数の圧電体を積層して超音波トランスデューサを形成するようにしたものがある。この超音波トランスデューサを積層圧電体ということがある。この積層圧電体は、2つの圧電体層を分極方向が隣接するもの同士互いに逆となるように積層し、積層方向の両端面に電極を被着して形成するようにしたものである(例えば、特許文献1)。このような積層圧電体は、両端面が振動の「腹」となり、mλ/2(mは正整数)共振が得られるように構成されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2758199号公報
【特許文献2】特開平4−211600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献に記載の技術では、高周波成分における感度が増強されるが、このような効果が期待できるのは、特定の周波数帯に限定されている。すなわち、このような特定の周波数帯の周辺では、個々の圧電体のひずみ量が互いに打ち消し合って共振が得られなくなり、感度が低下してしまう。したがって、利用できる周波数帯域が限定的であり、実用的でない。近年では、感度の向上のため、圧電体を4層に積層した積層圧電体が利用されるが、上記特許文献1に記載の技術のようにして圧電体を積層した場合には、上述した問題が顕著となる。
【0006】
本発明の課題は、高周波成分における感度を向上させるとともに、帯域を広く利用することができる積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、無機圧電材料を主成分とする圧電体が、4層の圧電体を1単位として4n(nは正整数)層に積層され、該圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2(mは正整数)共振モードで共振する積層圧電体であって、
前記圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有し、
電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように前記圧電体が積層されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層圧電体において、
各層の圧電体が電気的に並列に接続されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、超音波探触子において、
請求項1又は2に記載の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に対して電圧を印加することによって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を前記積層圧電体が受信して電気信号に変換することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、超音波診断装置において、
請求項3に記載の超音波探触子と、
前記積層圧電体に対して電圧を印加するための送信信号を前記超音波探触子に送信する送信部と、
前記超音波探触子にて変換された電気信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された超音波画像データに基づく超音波画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波成分における感度を向上させるとともに、帯域を広く利用することができる積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る積層圧電体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る積層圧電体の概略構成を示す断面図である。
【図3】2層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図4】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図5】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図6】2層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図7】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図8】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図9】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図10】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図11】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振次数毎に表して説明する図である。
【図12】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図13】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図14】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図15】4層積層圧電体における分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する図である。
【図16】分極方向及び電界方向と、積層圧電体のひずみ量との関係を共振共振次数毎に表して説明する図である。
【図17】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図18】共振次数と積層圧電体のひずみ量との関係を表したグラフである。
【図19】本実施の形態に係る超音波探触子の概略構成を示す断面図である。
【図20】本実施の形態に係る超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図21】超音波診断装置本体の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本実施の形態に係る積層圧電体について説明する。図1は、4層の圧電体を積層し、電気的に並列に接続して構成した積層圧電体を示す。図2は、4層の圧電体を積層し、電気的に直列に接続して構成した積層圧電体を示す。本実施の形態では、図1及び図2の何れに示される積層圧電体についても適用することができる。
【0015】
4層の圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体1は、図1に示すように、4つの圧電体2〜5が厚み方向に積層されて構成されている。
【0016】
圧電体2〜5は、無機圧電材料を主成分とした無機圧電体によって構成されている。本実施の形態において適用可能な無機圧電材料としては、従来から用いられている水晶、圧電セラミックスPZT、PLZTや、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PT、LiTaO3、KNbO3、ZnO、AlNなどの薄膜などである。なお、これらの無機圧電材料と有機高分子材料を併用したコンポジット圧電体を適用してもよい。また、主成分として、上述した無機圧電材料が含まれていればよく、無機圧電材料以外の成分が含まれていてもよい。本実施の形態では、圧電体2〜5は、それぞれ、PZTを主成分とする圧電セラミックにより構成されている。
各圧電体2〜5は、それぞれ、ポーリング処理により、厚み方向の何れか一方向に向いた残留分極が施されている。本実施の形態では、積層圧電体1に電圧が印加されたときに、電界の向きと残留分極の向きとについて、圧電体2〜5のうちの何れか1つのみが対向する関係、又は、一致する関係となるように、各圧電体2〜5の残留分極の向きを設定する。このように残留分極の向きを設定する理由については、後述する。
また、各層の圧電体2〜5の厚さは、同一に設定されている。なお、送受信する超音波の帯域を更に広げるために、各層の圧電体2〜5の厚さを同一とせず、それぞれ異ならせるようにしてもよい。すなわち、積層圧電体1における振動の波長を考慮し、圧電体の界面の位置と振動の「腹」及び「節」の位置とがずれるように、各層の圧電体の厚さをそれぞれ設定するようにしてもよい。例えば、隣接する圧電体間で、厚さを20〜25%程度異ならせるように設定することができる。
【0017】
積層された圧電体2〜5の両端面及び界面にそれぞれ電極層6〜10が配置されている。電極層6〜10は、例えば、焼成、真空蒸着あるいはスパッタリング等により、圧電体2〜5と一体化される。電極層に適用可能な材料としては、Ag-Pdペーストや金、銀、銅、白金、ニッケル、クロム、それらの合金等である。電極層7,9は、それぞれ端子11に接続されており、電極層6,8,10は、それぞれ端子12に接続されている。
端子11,12は、所定周波数の駆動電圧を出力する電圧発生器にそれぞれ接続される。
【0018】
このように構成された積層圧電体1は、両端が自由端となっているため、mλ/2(mは正整数)共振モードで共振する。このときの積層圧電体1の基本共振周波数f(0)は、下記式(1)のようにして求めることができる。下記式(1)において、vは音速を示し、hは積層圧電体の厚さを示している。なお、ここでは、電極層の厚みについては考慮していない。
f(0)=v/2h・・・(1)
【0019】
このように構成された積層圧電体1に対して電圧を印加して励振すると、各圧電体2〜5が同期して伸縮を行う。その結果、積層圧電体1は、振動の「腹」と「節」とがそれぞれ、積層圧電体1の両端面又は界面となるような共振を発生させる。
【0020】
また、4層の圧電体が電気的に直列接続された積層圧電体20は、図2に示すように、4つの圧電体21〜24が厚み方向に積層されて構成されている。各層の圧電体21〜24の成分、分極の向き及び厚さの設定については、図1に示して上述した積層圧電体1と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
積層圧電体20は、積層された圧電体21〜24の両端面にそれぞれ電極層25,26が配置されている。電極層25は、端子27に接続されており、電極層26は、端子28に接続されている。
端子27,28は、所定周波数の駆動電圧を出力する電圧発生器にそれぞれ接続される。
【0022】
このように構成された積層圧電体20も、上述した4つの圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体1と同様に共振を発生させることができる。
【0023】
ここで、圧電層毎の残留分極の向き及び電界の向きと、積層圧電体のひずみ量との関係について説明する。
【0024】
先ず、図3を参照して、2つの圧電体を積層して電気的に直列接続された積層圧電体を例に説明する。図3(A)に示すように、2つの圧電体が直列接続された積層圧電体1000の各層の圧電体1001,1002は、何れも同方向となるように残留分極の向き(以下、分極方向ということがある。)が設定されている。すなわち、何れの圧電体1001,1002も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。なお、以下の説明において、図中、圧電体上に表された矢印によって、残留分極の向きを示す。このような積層圧電体1000に対し、端子1005,1006を介して電圧を印加し、電極層1003における電圧の極性が正で、電極層1004における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図3(A)に示す。ここで、λ/2共振モードは、積層圧電体全体の厚みによって導出される基本共振周波数にて積層圧電体を共振させるモードであり、2λ/2共振モードは、基本共振周波数の2倍の周波数(2次共振)にて積層圧電体を共振させるモードである。図3(A)に示す例において、電界の向き(以下、電界方向ということがある。)は、何れの層の圧電体1001,1002においても分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1001,1002におけるひずみ量S1,S2は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S1=sin0−sin(−π/2)=1・・・(2)
S2=sinπ/2−sin0=1・・・(3)
(以下、圧電体のひずみ量は、圧電体1001,1002のひずみ量S1,S2を1とした場合の相対値で表す。)
よって、各層の圧電体1001,1002は同相で歪むため、積層圧電体1000全体のひずみ量は、
S1+S2=2・・・(4)
となり、積層圧電体1000の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1001,1002におけるひずみ量S3,S4は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S3=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(5)
S4=sin3π/2−sinπ/2=−2・・・(6)
よって、各層の圧電体1001,1002は逆相で歪むため、積層圧電体1000全体のひずみ量は、
S3+S4=0・・・(7)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1000の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1000全体のひずみ量を求めることができる。
【0025】
一方、図3(B)に示す例では、積層圧電体1010は、圧電体1011及び圧電体1012の分極方向が互いに逆方向となるように設定されている。このような積層圧電体1010に対し、端子1015,1016を介して電圧を印加し、電極層1013おける電圧の極性が正で、電極層1014おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図3(B)に示す。このとき、圧電体1011については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1012については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1011,1012におけるひずみ量S5,S6は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S5=sin0−sin(−π/2)=1・・・(8)
S6=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(9)
よって、各層の圧電体1011,1012は逆相で歪むため、積層圧電体1010全体のひずみ量は、
S5+S6=0・・・(10)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1010の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1011,1012におけるひずみ量の変位量S7,S8は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S7=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(11)
S8=−(sin3π/2−sinπ/2)=2・・・(12)
よって、各層の圧電体1011,1012は同相で歪むため、積層圧電体1010全体のひずみ量は、
S3+S4=4・・・(13)
となり、積層圧電体1010の共振が、4倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1010全体のひずみ量を求めることができる。
【0026】
以上説明したようにして求められる、2つの圧電体が積層されて電気的に直列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図4に示す表によって表すことができる。図4中、分極方向と電界方向とが一致する関係となる場合を「○」で示し、対向する関係となる場合を「×」にて示している。なお、印加される電圧の極性は周期的に変動するため、電界方向も周期的に変動する。そのため、電界方向と分極方向との関係についても周期的に変動する。また、図4に示される各パターンにおける各圧電体の分極方向をそれぞれ反転させたものとしても、図4に示されるものと同様の結果が得られる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図5に示す。
【0027】
図4及び図5に示すように、パターンAでは、奇数次の共振の場合には、積層圧電体のひずみ量が2倍である共振が見られる一方、偶数次の共振の場合には、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンBでは、周波数が基本共振周波数の2倍(2次共振)及び6倍(6次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。
【0028】
以上の結果から、パターンA及びパターンBの何れにおいても、高次周波数において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。
【0029】
次に、図6を参照して、2つの圧電体を積層して電気的に並列接続された積層圧電体を例に説明する。図6(A)に示すように、並列接続された積層圧電体1030の各層の圧電体1031,1032は、分極方向が互いに逆方向となるように設定されている。すなわち、圧電体1031は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1032は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1030に対し、端子1036,1037を介して電圧を印加し、電極層1033,1035における電圧の極性が正で、電極層1034における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図6(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1031,1032においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1031,1032におけるひずみ量S9,S10は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S9=sin0−sin(−π/2)=1・・・(14)
S10=sinπ/2−sin0=1・・・(15)
よって、各層の圧電体1031,1032は同相で歪むため、積層圧電体1030全体のひずみ量は、
S9+S10=2・・・(16)
となり、積層圧電体1030の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1031,1032におけるひずみ量S11,S12は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S11=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(17)
S12=sin3π/2−sinπ/2=−2・・・(18)
よって、各層の圧電体1031,1032は逆相で歪むため、積層圧電体1030全体のひずみ量は、
S11+S12=0・・・(19)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1030の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1030全体のひずみ量を求めることができる。
【0030】
一方、図6(B)に示す例では、積層圧電体1040の各層の圧電体1041,1042は、何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1041,1042も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1040に対し、端子1046,1047を介して電圧を印加し、電極層1043,1045おける電圧の極性が正で、電極層1044おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図6(B)に示す。このとき、圧電体1041については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1042については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1041,1042におけるひずみ量S13,S14は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S13=sin0−sin(−π/2)=1・・・(20)
S14=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(21)
よって、各層の圧電体1041,1042は逆相で歪むため、積層圧電体1040全体のひずみ量は、
S13+S14=0・・・(22)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1040の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1041,1042におけるひずみ量S15,S16は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S15=sinπ/2−sin(−π/2)=2・・・(23)
S16=−(sin3π/2−sinπ/2)=2・・・(24)
よって、各層の圧電体1041,1042は同相で歪むため、積層圧電体1040全体のひずみ量は、
S15+S16=4・・・(25)
となり、積層圧電体1040の共振が、4倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1040全体のひずみ量を求めることができる。
【0031】
以上説明したようにして求められる、2つの圧電体が積層されて電気的に並列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図7に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図8に示す。
図7及び図8に示すように、パターンC及びパターンDの何れにおいても、直列接続された積層圧電体と同様に、高次共振において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。
【0032】
次に、図9及び図10を参照して、4つの圧電体を積層して電気的に直列接続された積層圧電体を例に説明する。図9(A)に示すように、直列接続された積層圧電体1050の各層の圧電体1051〜1054は、何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1051〜1054も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1050に対し、端子1057,1058を介して電圧を印加し、電極層1055における電圧の極性が正で、電極層1056における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図9(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1051〜1054においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1051〜1054におけるひずみ量S17〜S20は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S17=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(26)
S18=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(27)
S19=sinπ/4−sin0=0.7・・・(28)
S20=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(29)
よって、各層の圧電体1051〜1054は何れも同相で歪むため、積層圧電体1050全体のひずみ量は、
S17+S18+S19+S20=2・・・(30)
となり、積層圧電体1050の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1051〜1054におけるひずみ量S21〜S24は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S21=sin0−sin(−π/2)=1・・・(31)
S22=sinπ/2−sin0=1・・・(32)
S23=sinπ−sinπ/2=−1・・・(33)
S24=sin3π/2−sinπ=−1・・・(34)
よって、圧電体1051と圧電体1052との組合せ、及び、圧電体1053と圧電体1054との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1050全体のひずみ量は、
S21+S22+S23+S24=0・・・(35)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1050の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1050全体のひずみ量を求めることができる。
【0033】
一方、図9(B)に示す例では、積層圧電体1060は、各層の圧電体1061〜1064の分極方向が交互に反転するように設定されている。すなわち、圧電体1061,1063は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1062,1064は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1060に対し、端子1067,1068を介して電圧を印加し、電極層1065おける電圧の極性が正で、電極層1066おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図9(B)に示す。このとき、圧電体1061,1063については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1062,1064については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1061〜1064におけるひずみ量S25〜S28は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S25=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(36)
S26=−{sin0−sin(−π/4)}=−0.7・・・(37)
S27=sinπ/4−sin0=0.7・・・(38)
S28=−(sinπ/2−sinπ/4)=−0.3・・・(39)
よって、圧電体1061と圧電体1063との組合せ、及び、圧電体1062と圧電体1064との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1060全体のひずみ量は、
S25+S26+S27+S28=0・・・(40)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1060の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1061〜1064におけるひずみ量S29〜S32はそれぞれ、下記式によって表すことができる。
S29=sin0−sin(−π/2)=1・・・(41)
S30=−(sinπ/2−sin0)=−1・・・(42)
S31=sinπ−sinπ/2=−1・・・(43)
S32=−(sin3π/2−sinπ)=1・・・(44)
よって、圧電体1061と圧電体1064との組合せ、及び、圧電体1062と圧電体1063との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1060全体のひずみ量は、
S29+S30+S31+S32=0・・・(45)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1060の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1060全体のひずみ量を求めることができる。
【0034】
さらに、図10に示す例では、積層圧電体1070は、各層の圧電体1071〜1074の分極方向が、何れか1つのみ異なるように設定されている。すなわち、圧電体1071,1072,1074は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1073は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1070に対し、端子1077,1078を介して電圧を印加し、電極層1075おける電圧の極性が正で、電極層1076おける電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図10に示す。このとき、圧電体1071,1072,1074については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1073については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1071〜1074におけるひずみ量S33〜S36はそれぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S33=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(46)
S34=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(47)
S35=−(sinπ/4−sin0)=−0.7・・・(48)
S36=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(49)
よって、圧電体1071,1072,1074はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1073は、圧電体1071,1072,1074とは逆相で歪むため、積層圧電体1070全体のひずみ量は、
S33+S34+S35+S36=0.6・・・(50)
となり、積層圧電体1070の共振が、0.6倍のひずみ量となって表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1071〜1074におけるひずみ量S37〜S40はそれぞれ、下記式によって表すことができる。
S37=sin0−sin(−π/2)=1・・・(51)
S38=sinπ/2−sin0=1・・・(52)
S39=−(sinπ−sinπ/2)=1・・・(53)
S40=sin3π/2−sinπ=−1・・・(54)
よって、圧電体1071,1072,1073はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1074は、圧電体1071,1072,1073とは逆相で歪むため、積層圧電体1070全体のひずみ量は、
S37+S38+S39+S40=2・・・(55)
となり、積層圧電体1070の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1070全体のひずみ量を求めることができる。
【0035】
以上説明したようにして求められる、4つの圧電体が積層されて電気的に直列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図11に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図12及び図13に示す。
【0036】
図11〜図13に示すように、パターンEのように、分極方向と電界方向とが全ての圧電体において一致する関係にあるか対向する関係となる場合には、奇数次の共振であるときには、積層圧電体のひずみ量が2倍である共振が見られる一方、偶数次の共振であるときには、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンFのように、分極方向と電界方向とが一致する関係にある圧電体と対向する関係にある圧電体とが交互となる場合には、周波数が基本共振周波数の4倍(4次共振)であるときに、積層圧電体のひずみ量が8倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンGのように、最上層及び最下層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にあり、中間層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にある場合、並びに、最上層及び最下層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にあり、中間層に配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にある場合には、周波数が基本共振周波数の奇数次である場合に共振が見られる。パターンGでは、特に、周波数が基本共振周波数の3倍(3次共振)及び5倍(5次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4.8倍となって共振する点に特徴がみられる。一方、周波数が基本共振周波数の偶数時である場合には、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンHのように、最下層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にあり、最上層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にある場合、並びに、最下層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが対向する関係にあり、最上層及びこれに隣接して配置される圧電体においては分極方向と電界方向とが一致する関係にある場合には、周波数が基本共振周波数の2倍(2次共振)及び6倍(6次共振)である場合に、積層圧電体のひずみ量が4倍である共振が見られる一方、他の次数においては、積層圧電体の共振は見られない。また、パターンI〜Lのように、分極方向と電界方向とが一致する関係にある圧電体が1つのみ存在する場合、及び、分極方向と電界方向とが対向する関係にある圧電体が1つのみ存在する場合には、周波数が基本共振周波数の4倍(4次共振)であるときをピークとして、次数が1〜7次までの何れにおいても、積層圧電体の共振が見られる。
【0037】
以上の結果から、パターンE、パターンG及びパターンHは何れも、高次周波数において感度の高い結果が得られるが、ピーク間においては、圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなり、利用することができない周波数帯が存在することとなる。また、パターンFは、ある特定の高次周波数においては感度が極めて良好であるが、利用できる周波数帯が当該特定の周波数とその近傍に限定され、極めて狭くなる。
一方、パターンI〜パターンLは何れも、高次周波数においてひずみ量が増幅されて積層圧電体が共振されるので、比較的高い感度が得られる。また、パターンI〜パターンLは何れも、1次数から7次数までの何れの周波数においても積層圧電体の共振が得られるので、広帯域で利用することができる。
【0038】
次に、図14及び図15を参照して、4つの圧電体を積層して電気的に並列接続された積層圧電体を例に説明する。図14(A)に示すように、積層圧電体1080は、各層の圧電体1081〜1084の分極方向が交互に反転するように設定されている。すなわち、圧電体1081,1083は、上層から下層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1082,1084は、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1080に対し、端子1090,1091を介して電圧を印加し、電極層1086,1088における電圧の極性が正で、電極層1085,1087,1089における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図14(A)に示す。このとき、電界方向は、何れの層の圧電体1081〜1084においても、分極方向と一致する。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1081〜1084におけるひずみ量S41〜S44は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S41=sin(−π/4)−sin(−π/2)=0.3・・・(56)
S42=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(57)
S43=sinπ/4−sin0=0.7・・・(58)
S44=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(59)
よって、各層の圧電体1081〜1084は何れも同相で歪むため、積層圧電体1080全体のひずみ量は、
S41+S42+S43+S44=2・・・(60)
となり、積層圧電体1080の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1081〜1084におけるひずみ量S45〜S48は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S45=sin0−sin(−π/2)=1・・・(61)
S46=sinπ/2−sin0=1・・・(62)
S47=sinπ−sinπ/2=−1・・・(63)
S48=sin3π/2−sinπ=−1・・・(64)
よって、圧電体1081と圧電体1082との組合せ、及び、圧電体1083と圧電体1084との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1080全体のひずみ量は、
S45+S46+S47+S48=0・・・(65)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1080の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1080全体のひずみ量を求めることができる。
【0039】
一方、図14(B)に示す例では、積層圧電体1100は、各層の圧電体1101〜1104が何れも同方向となるように分極方向が設定されている。すなわち、何れの圧電体1101〜1104も、下層から上層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1100に対し、端子1110,1111を介して電圧を印加し、電極層1106,1108における電圧の極性が正で、電極層1105,1107,1109における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図14(B)に示す。このとき、圧電体1102,1104については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1101,1103については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1101〜1104におけるひずみ量S49〜S52は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S49=−{sin(−π/4)−sin(−π/2)}=−0.3・・・(66)
S50=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(67)
S51=−(sinπ/4−sin0)=−0.7・・・(68)
S52=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(69)
よって、圧電体1101と圧電体1103との組合せ、及び、圧電体1102と圧電体1104との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1100全体のひずみ量は、
S49+S51+S52+S53=0・・・(70)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1100の共振が見えなくなる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1101〜1104におけるひずみ量S53〜S56は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S53=−{sin0−sin(−π/2)}=−1・・・(71)
S54=sinπ/2−sin0=1・・・(72)
S55=−(sinπ−sinπ/2)=1・・・(73)
S56=sin3π/2−sinπ=−1・・・(74)
よって、圧電体1101と圧電体1104との組合せ、及び、圧電体1102と圧電体1103との組合せでそれぞれ同相で歪むが、組合せ間では逆相となるため、積層圧電体1100全体のひずみ量は、
S53+S54+S55+S56=0・・・(75)
となり、各層のひずみ量が相殺され、積層圧電体1100の共振が見えなくなる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1100全体のひずみ量を求めることができる。
【0040】
さらに、図15に示す例では、積層圧電体1120は、各層の圧電体1121〜1124の分極方向が、何れか1つのみ異なるように設定されている。すなわち、圧電体1121,1122,1124は、下層から上層に向けて分極方向が設定されており、圧電体1123は、上層から下層に向けて分極方向が設定されている。このような積層圧電体1120に対し、端子1130,1131を介して電圧を印加し、電極層1126,1128における電圧の極性が正で、電極層1125,1127,1129における電圧の極性が負であるときの、λ/2共振モードによって共振させた場合と、2λ/2共振モードによって共振させた場合とのそれぞれのひずみ量の推移を図15に示す。このとき、圧電体1122,1123,1124については、電界方向と分極方向とが一致する関係となるが、圧電体1121については、電界方向と分極方向とが対向する関係となる。したがって、λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1121〜1124におけるひずみ量S57〜S60は、それぞれ、下記式によって表すことができる。なお、ひずみ量は、小数第二位を四捨五入して表している。
S57=−{sin(−π/4)−sin(−π/2)}=−0.3・・・(76)
S58=sin0−sin(−π/4)=0.7・・・(77)
S59=sinπ/4−sin0=0.7・・・(78)
S60=sinπ/2−sinπ/4=0.3・・・(79)
よって、圧電体1122,1123,1124はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1121は、圧電体1122,1123,1124とは逆相で歪むため、積層圧電体1120全体のひずみ量は、
S57+S58+S59+S60=1.4・・・(80)
となり、積層圧電体1120の共振が、1.4倍のひずみ量となって表れる。
また、2λ/2共振モードによって共振させたときの、各層の圧電体1121〜1124におけるひずみ量S61〜S64は、それぞれ、下記式によって表すことができる。
S61=−{sin0−sin(−π/2)}=−1・・・(81)
S62=sinπ/2−sin0=1・・・(82)
S63=sinπ−sinπ/2=−1・・・(83)
S64=sin3π/2−sinπ=−1・・・(84)
よって、圧電体1121,1123,1124はそれぞれ同相で歪むが、圧電体1122は、圧電体1121,1123,1124とは逆相で歪むため、積層圧電体1120全体のひずみ量は、
S61+S62+S63+S64=−2・・・(85)
となり、積層圧電体1120の共振が、2倍のひずみ量に増幅されて表れる。
3λ/2以上の共振モードについても同様にして積層圧電体1120全体のひずみ量を求めることができる。
【0041】
以上説明したようにして求められる、4つの圧電体が積層されて電気的に並列接続された積層圧電体の分極方向及び電界方向と、積層圧電体全体のひずみ量との関係については、図16に示す表によって表すことができる。そして、共振次数と、積層圧電体全体のひずみ量との関係についてパターン毎にプロットした結果を図17及び図18に示す。
【0042】
図16〜図18に示すように、並列接続された積層圧電体においても、直列接続された積層圧電体と同様の結果が見られる。すなわち、各層の圧電体が直列接続であるか並列接続であるかにかかわらず、各層の圧電体毎の分極方向及び電界方向の関係がどのようになっているかによって、励振されたときの積層圧電体全体のひずみ量が定まる。
【0043】
上述したように、4つの圧電体が電気的に直列接続された積層圧電体及び並列接続された積層圧電体は、何れも同様の効果を得ることができるが、以下の点で、4つの圧電体が電気的に並列接続された積層圧電体が有利である。すなわち、複数の圧電体を積層して電気的に直列接続した場合には、コンデンサ容量が積層圧電体全体の厚みに反比例するため、積層圧電体全体の厚みが大きくなるほど電気的インピーダンスが高くなる。そのため、積層圧電体の励振を制御するシステム側とのインピーダンス整合を考慮する必要がある。一方、複数の圧電体を積層して電気的に並列接続した場合には、圧電体を積層した分だけコンデンサ容量が大きくなるので、電気的インピーダンスを下げることができる。そのため、システム側とのインピーダンス整合の問題は低減される。さらに、積層圧電体を素子化する際に、インピーダンスを下げるために素子ピッチを大きくする必要がなく、例えば、超音波診断装置に適用した場合には、方位分解能を低下させることがない。
【0044】
以上の結果から、本実施の形態に適用する好ましい積層圧電体としては、例えば、図11中に示されたパターンI〜パターンL、及び、図16中に示されたパターンQ〜パターンTのように、残留分極の向きと、電界の向きとが、4層の圧電体のうちの1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、4層の圧電体のうちの1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように、圧電体を積層して構成したものということができる。このような構成とすることによれば、高周波領域において感度のよい積層圧電体とすることができる。また、ピーク間において圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなる帯域がないため、共振を利用できる周波数帯を広帯域で持たせることができ、実用的である。
【0045】
なお、上述した説明では、4つの圧電体を積層して積層圧電体を形成したものを例としたが、圧電体の積層数は4の整数倍であっても同様の効果を得ることができる。この場合、分極方向と電界方向との関係を4つの圧電体を1単位とし、単位毎に考慮すればよい。
【0046】
次に、上述した積層圧電体を適用した超音波探触子について説明する。本実施の形態において適用される超音波探触子は、医用超音波診断装置の主要構成部品であって、電気信号が与えられることにより超音波を送信し、超音波を受信することより電気信号を出力する機能を有するものである。また、以下の説明において、超音波探触子としてリニア電子スキャンプローブを採用しているが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0047】
超音波探触子30は、図19に示すように、例えば、図上正面視下方から、バッキング層31と、バッキング層31上に積層された圧電層32と、圧電層上に積層された音響整合層33と、音響整合層33上に積層された音響レンズ34とを備えて構成されている。
【0048】
バッキング層31は、圧電層32を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、バッキング層31は、圧電層32の被検体に音波を送受信する方向と反対の板面に装着され、被検体の方向の反対側から発生する超音波を吸収する。
【0049】
バッキング層31を構成するバッキング材としては、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した複合材料、さらには複合材料を粉砕したのち、上述した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等と混合し、硬化させた材料を用いることができる。音響インピーダンスを調整するために、マコールガラス等の無機材料や空隙を有する多孔質材料を用いることもできる。
【0050】
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料、及び/又は、エポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電層32やこれを含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。
【0051】
圧電層32は、上述した積層圧電体を所定ピッチにダイシングして、複数に素子化して構成したものである。これらの素子は、方位方向に一次元アレイ状に配列される。素子の個数は任意であるが、本実施の形態では、例えば、192個としている。なお、圧電層32は、素子が二次元アレイ状に配列されるように積層圧電体をダイシングしたものとしてもよい。
【0052】
音響整合層33は、圧電層32と被検体の間の音響インピーダンスを整合させ、境界面での反射を抑制するものである。音響整合層33は、圧電層32の、超音波の送受信が行われる送受信方向である被検体側に装着される。音響整合層33は、圧電層32と被検体との概ね中間の音響インピーダンスを有する。
【0053】
音響整合層33に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(例えばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものが適用できる。
【0054】
音響整合層33は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上、より好ましくは4層以上である。音響整合層33の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定めるのが好ましい。音響整合層33の層厚が適切になされないと、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動してしまう場合がある。結果、残響時間の増加、反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こす場合がある。このような音響整合層の厚さとしては、通常、概ね20〜500μmの範囲のものが用いられる。
【0055】
音響レンズ34は、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されるものである。すなわち、音響レンズ34は、超音波探触子30の被検体と接する側に設けられ、圧電層32にて発生された超音波を、被検体に効率よく入射させる。音響レンズ34は、例えば、被検体と接する部分で凸型、凹型、球面型あるいは非球面型のレンズ形状を有し、被検体に入射される超音波を、撮像断面と直交する厚さ方向で収束させる。
【0056】
音響レンズ34は、概ね被検体及び音響整合層33の中間の音響インピーダンスを有する軟質の高分子材料により形成される。
【0057】
音響レンズ34を構成する素材としては、従来公知のシリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム、あるいは、ポリメチルペンテンやポリスチレンなどのポリオレフィン等が適用可能である。これらのうち、シリコーン系ゴム及びブタジエン系ゴムを用いることが好ましい。
【0058】
次に、以上のようにして構成された超音波探触子30を備えた超音波診断装置について説明する。
【0059】
本実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図20及び図21に示すように、上述した超音波探触子30と、超音波探触子30とケーブル50を介して接続され、超音波探触子30に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子30に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子30にて受信された反射超音波に応じて生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体40とを備えて構成している。
【0060】
超音波診断装置本体40は、例えば、図21に示すように、操作入力部41と、送信部42と、受信部43と、画像生成部44と、メモリ部45と、DSC(Digital Scan Converter)46と、表示部47と、制御部48とを備えて構成されている。
【0061】
操作入力部41は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部48に出力する。
【0062】
送信部42は、制御部48の制御に従って、超音波探触子30にケーブル50を介して所定電圧の電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子30に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部42は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングをチャンネル毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。ここで、チャンネルは、素子化された積層圧電体の1素子に対応している。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
【0063】
受信部43は、制御部48の制御に従って、超音波探触子30からケーブル50を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部43は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、チャンネル毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をA/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、チャンネル毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0064】
画像生成部44は、受信部43からの音線データに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部44は、Bモード画像データの他、Aモード画像データ、Mモード画像データ及びドプラ法による画像データが生成できるものであってもよい。
【0065】
メモリ部45は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部44から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、フレーム画像データとして記憶することができる。そして、記憶されたフレーム画像データは、制御部48の制御に従って、DSC46に送信される。
【0066】
DSC46は、メモリ部45より受信したフレーム画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部47に出力する。
【0067】
表示部47は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部47は、DSC46から出力された画像信号に従って表示画面上に画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンタ等の印刷装置等を適用してもよい。
【0068】
制御部48は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0069】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、積層圧電体1(20)は、無機圧電材料を主成分とする圧電体2〜5(21〜24)が4層の圧電体を1単位として4n層に積層され、圧電体2〜5(21〜24)の厚み伸縮によって生じるmλ/2共振モードで共振する。圧電体2〜5(21〜24)は、それぞれ厚み方向に残留分極を有する。積層圧電体1(20)は、電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、1単位中の4層の圧電体2〜5(21〜24)のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、1単位中の4層の圧電体2〜5(21〜24)のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように圧電体2〜5(21〜24)が積層されている。その結果、高周波領域において感度のよい積層圧電体とすることができる。また、ピーク間において圧電体同士でひずみ量が相殺されて積層圧電体全体での共振が得られなくなる帯域がないため、共振を利用できる周波数帯を広帯域で持たせることができ、実用的となる。
【0070】
また、本発明の実施の形態によれば、積層圧電体1は、各層の圧電体2〜5が電気的に並列に接続されるように構成している。その結果、コンデンサ容量を上げて電気的インピーダンスを下げることができるので、積層圧電体の励振を制御するシステム側とのインピーダンス整合の影響を低減させることができる。
【0071】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。積層圧電体、超音波探触子及び超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 積層圧電体
2〜5 圧電体
6〜10 電極層
20 積層圧電体
21〜24 圧電体
25,26 電極層
30 超音波探触子
32 圧電層
40 超音波診断装置本体
42 送信部
43 受信部
44 画像生成部
47 表示部
48 制御部
S 超音波診断装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機圧電材料を主成分とする圧電体が、4層の圧電体を1単位として4n(nは正整数)層に積層され、該圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2(mは正整数)共振モードで共振する積層圧電体であって、
前記圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有し、
電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように前記圧電体が積層されていることを特徴とする積層圧電体。
【請求項2】
各層の圧電体が電気的に並列に接続されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の積層圧電体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に対して電圧を印加することによって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を前記積層圧電体が受信して電気信号に変換することを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波探触子と、
前記積層圧電体に対して電圧を印加するための送信信号を前記超音波探触子に送信する送信部と、
前記超音波探触子にて変換された電気信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された超音波画像データに基づく超音波画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
無機圧電材料を主成分とする圧電体が、4層の圧電体を1単位として4n(nは正整数)層に積層され、該圧電体の厚み伸縮によって生じるmλ/2(mは正整数)共振モードで共振する積層圧電体であって、
前記圧電体は、それぞれ厚み方向に残留分極を有し、
電圧が印加されたときの電界の向きと、残留分極の向きとが、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが対向して他の3つが一致する関係、又は、前記1単位中の4層の圧電体のうち1つのみが一致して他の3つが対向する関係となるように前記圧電体が積層されていることを特徴とする積層圧電体。
【請求項2】
各層の圧電体が電気的に並列に接続されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の積層圧電体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に対して電圧を印加することによって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を前記積層圧電体が受信して電気信号に変換することを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波探触子と、
前記積層圧電体に対して電圧を印加するための送信信号を前記超音波探触子に送信する送信部と、
前記超音波探触子にて変換された電気信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された超音波画像データに基づく超音波画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−222474(P2012−222474A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84157(P2011−84157)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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