説明

積層型光学素子、積層型回折光学素子及びその成形方法と光学材料

【課題】 エネルギー硬化性樹脂によって成形した光学性能を発揮する成形層自身の変形、割れ、ひび、または基板と前記成形層との界面での破壊を抑制し、光学性能の低下のない光学素子の構成、光学材料、それにより成形した光学素子、回折光学素子、積層型光学素子、積層型回折光学素子の提供。
【解決手段】 透明基板の少なくとも一方の面に、エネルギー硬化性樹脂により成形された成形層と前記透明基板との中間層として成形層と同種の材料を用いて成形された重合度の低い複数の緩和層を有する事を特徴とする積層型光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折光学素子及び回折光学素子等の光学素子に使用される光学素子の構成、材料に関するものであり、特に重合収縮等の応力負荷による欠陥(ひび、割れ等)の生じない光学素子の構成、材料及びそれにより成形した光学素子、回折光学素子に関し、特に積層型光学素子、積層型回折光学素子及びその成形方法及び光学材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー硬化性樹脂を用いた成型品の優れた転写性、生産性、光学特性等の観点から、ガラス基板等の部材の上にエネルギー硬化性樹脂を用いてレリーフパターン、階段形状、キノフォーム等を成形した、基板と一体のレプリカレンズが使用、考案されており、ガラス基板上にエネルギー硬化性樹脂を用いた回折格子を金型で成形する事で、色収差を減じる回折光学素子等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながらこのようにエネルギー硬化樹脂を用いて微細な形状を有する層をガラス基板上に直接成形することでは、成形層自身の硬化収縮等による応力負荷によって形成された形状等が歪によりクラック等の問題を有してしまうことがある。成形形状が微細であるほど、歪、クラック等によって設計形状からのズレは光学性能(回折効率等)へ大きく影響する。
【0004】
そのため従来はレンズ用材料として、硬化した後により大きな柔軟性を示す樹脂を用いたり、架橋剤、柔軟剤等を大量に添加する事によって、また成形層と異なる弾性を示す異なる材料の層を中間層として設ける事で対応してきた。そのため単独であるならばレンズ用材料として優れた光学特性を有する樹脂であっても脆性の問題から使用を断念したり、または異なった材料と積層、混成体にする事によって、または多量の添加剤を混入させることによって光学特性を犠牲にして光学素子に使用しなければならない事があった。
【特許文献1】特開2004−126499号公報
【特許文献2】特開平09−127321号公報
【特許文献3】特開平09−127322号公報
【特許文献4】特開平11−044808号公報
【特許文献5】特開平11−044810号公報
【特許文献6】特開昭60−202128号公報
【特許文献7】特開平03−054217号公報
【特許文献8】特開平03−054206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回折光学素子の先行例においては、広い波長範囲で高い回折効率を有する構成を得るために、相対的に屈折率分散の低い材料と屈折率分散の高い材料のお互いの回折面を対向させて組み合わせて構成させている。
【0006】
具体的には、特許文献2の場合は、屈折率分散の低い材料としてBMS81(n=1.64、ν=60.1:オハラ製)を、屈折率分散の高い材料としてプラスチック光学材料PC(n=1.58、ν=30.5:帝人化成)を用いている。同様に特許文献3の場合は、屈折率分散の低い材料としてLaL14(n=1.698、ν=55.5:オハラ製)、アクリル樹脂(n=1.49、ν=57.7)、Cytop(登録商標)(n=1.34149、ν=93.8:旭硝子製)を、屈折率分散の高い材料としてプラスチック光学材料PC(n=1.58、ν=30.5:帝人化成)を用いている。
【0007】
特許文献4及び特許文献5の場合は、屈折率分散の低い材料としてRC−C001(n=1.525、ν=50.8:大日本インキ製)、PMMA(n=1.4917、ν=57.4)、BMS81(n=1.64、ν=60.1:オハラ製)を、屈折率分散の高い材料としてプラスチック光学材料PC(n=1.58、ν=30.5:帝人化成)、PS(n=1.5918、ν=31.1)、等を用いている。
【0008】
このように回折光学素子等の光学素子においては、上記記載の様に使用する材料の屈折率、アッベ数等の光学特性の範囲が厳しく限定される。また成形した回折光学素子の形状も光学性能に影響してくる。特に形状変化に関して、エネルギー硬化性樹脂の硬化の際に生じる重合収縮や、成形後の外的環境(温度、湿度等)による応力負荷、離型時等に生じる外的な衝撃による圧力負荷よって、基板上に成形された成形層自身の変形、割れ、ひび、または基板と成形層との界面での破壊が生じる事が多々ある。こうした結果が光学的欠陥となり、光学性能を低下させてしまう。
【0009】
そこで本発明の目的は、エネルギー硬化性樹脂によって成形した光学性能を発揮する成形層自身の変形、割れ、ひび、または基板と前記成形層との界面での破壊を抑制し、光学性能の低下のない光学素子の構成、光学材料、それにより成形した光学素子、回折光学素子、積層型光学素子、積層型回折光学素子およびその成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、前述の課題を解決するために、以下の構成である光学素子、該光学素子の成形方法、該成形方法によって成形された該光学素子、および以下の材料構成によって成形された該光学素子を提供している。
【0011】
本発明の積層型光学素子、積層型回折光学素子は、透明基板の少なくとも一方の面に、エネルギー硬化性樹脂により成形された成形層と前記透明基板との中間層として成形層と同種の材料を用いて成形された重合度の低い複数の緩和層を有する事を特徴とする積層型光学素子である。
【0012】
また本発明は、前記記載の成形層、緩和層が前記透明基板と一体化していることを特徴とする積層型光学素子を提供している。
【0013】
また本発明は前記記載の緩和層の重合度が、重合禁止剤の種類および添加量が全重量割合の0.0005%〜5%の範囲で含有する事により、重合開始剤の種類および添加量が全重量割合の0.005〜10%の範囲で含有する事により、成形層より低く調整されており、膜厚が1μm〜500μmである事を特徴とする積層型光学素子を提供している。
【0014】
また本発明は、前記記載の光学素子が、使用波長域全域で特定次数(設計次数)の回折効率を高くするようにした積層型回折光学素子であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、前記記載の積層型回折光学素子と、前記記載の積層型回折光学素子と同様の層構成で異なる光学特性、もしくは異なる層構成および光学特性とを、お互いの回折面を対向させて組み合わせることにより構成されていることを特徴とする積層型回折光学素子を提供している。
【0016】
また本発明は、前記記載の光学素子を成形するに際して、成形型を用いて成形することを特徴とする成形方法を提供している。
【0017】
また本発明は、前記記載の成形方法において、熱重合もしくは光重合により成形物を得る事を特徴とする成形方法提供している。
【0018】
また本発明は、前記記載の光学素子の材料として、少なくともカルバゾール骨格を有する物質を含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする光学材料を提供している。
【0019】
また本発明は、少なくともN−ビニルカルバゾールを含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする前記に記載の光学材料を提供している。
【0020】
また本発明は、少なくともポリ(N−ビニルカルバゾール)を含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする前記に記載の光学材料を提供している。
【0021】
また本発明は、少なくとも架橋剤としてアジピン酸ジビニルを含有する樹脂を主材料とする事を特徴とする前記に記載の光学材料を提供している。
【0022】
また本発明は、少なくともN−ビニルカルバゾールとポリ(N−ビニルカルバゾール)、アジピン酸ジビニルおよび光重合開始剤からなることを特徴とする前記に記載の光学材料を提供している。
【0023】
また本発明は、前記光学材料の組成が、ポリ(N−ビニルカルバゾール):5〜30重量%、アジピン酸ジビニル:全重量割合の5〜30%の範囲であることを特徴とする前記に記載の光学材料を提供している。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、平坦層として適宜、膜厚および重合禁止剤、重合開始剤を適量に含有する緩和層を透明基板と成形層の中間層に設けることで、成形した成形層にかかる応力負荷を平坦層が緩和し、緩和層は成形層と同種の樹脂を使用している事から光学性能をほぼ変えることなく、割れ防止性を兼ね備えた積層型回折光学素子を実現できる。
【0025】
従って、脆性の大きな樹脂を用いた場合でも、異なる性質を有する樹脂体にして組み合わせることなく、その樹脂種類単独で用いることで光学素子を形成することが可能であり、その光学材料、該光学材料を用いた光学素子の成形方法、該成形方法によって成形された光学素子、及び該光学素子を有する光学系を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【0027】
本発明の光学素子を図1に示す。すなわち、透明基板11の少なくとも一方の面にエネルギー硬化性樹脂12により成形層13が成形されており、透明基板11と成形層13の中間層として、成形層13と同種の材料から構成された緩和層14が形成されている積層型回折光学素子である。
【0028】
通常、レプリカレンズを作製する場合、透明基板11の一方の面にエネルギー硬化性樹脂12を用いて成形層13としてプリズム面、レンチキュラーレンズ面、フレネルレンズ面等の種々のレンズ面を直接に成形する。成形層13が単層もしくは複数層であって透明基板11と一体化している場合、成形層13としては成形後の内外的環境による経時変化を抑制するために、比較的高エネルギー(光、熱等)で硬化をさせる事が好ましい。しかしその際、硬化度合と共に成形層13は一般に高弾性化し、脆く硬くなる傾向にある。そのため硬化時の重合収縮による内部応力、成形後の外的環境(温度、湿度等)による応力負荷、または離型時等に加わる外的な衝撃による圧力負荷よって、基板上に強固に固定、成形された成形層13には変形、割れ、ひび、または透明基板11と成形層13との界面での破壊が生じてしまう。
【0029】
本発明では透明基板11と成形層13の間に、成形層13と同種の材料で構成された緩和層14を形成することにより、前記事由により成形層13にかかる応力の緩和をする事ができ、成形層13の問題発生を抑制し、光学性能の低下を防ぐことができる。
【0030】
緩和層14の厚さは特に制限はないが好ましくは1〜500μmの範囲であり、フレネルレンズ等の微細な形状を成形層13に成形する場合は好ましくは1〜100μm、更に好ましくは1〜50μmの範囲である。緩和層14の厚さが1μm未満の範囲であると成形層13から緩和層14にかかる応力を十分緩和する事が困難となり、逆に500μmよりも十分に厚すぎると緩和層14自身の光学歪及び厚み方向の弾性率等の物性制御が困難である。
【0031】
また、緩和層14の屈折率、アッベ数等の光学特性はベース樹脂、添加剤等の組成で変化するが、好ましくはレプリカレンズとしての機能を発生させる成形層13に影響がない程度の光学特性に調整する事が望ましく、更には成形層13と同様の光学特性にする事が望ましい。具体的には成形層13、緩和層14の屈折率、アッベ数としてはそれぞれndで1.50〜1.80、νdで13〜60の範囲が望ましい。
【0032】
成形層13及び緩和層14を形成するエネルギー硬化性樹脂12としては、光(紫外線、電子線等)、熱重合開始剤を含有し硬化が進行するモノマー、オリゴマー、ポリマー等であれば特に限定されるものではないが、例えば、エステル系、アクリル系、ビニル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、フェノール系、尿素系、メラミン系などのモノマーやオリゴマーを配合したものが挙げられる。また必要に応じて本発明の積層体を構成する各層には、透明性等の光学特性を損なわない範囲で、架橋剤、重合促進剤、離型剤、増感剤、粘度調整剤、溶剤等を配合する事が可能である。また、無機・有機ハイブリット樹脂ならびに透明性を損なわない酸化ケイ素、酸化ジルコニア、ITO、酸化錫等の無機微粒子を分散させた上記樹脂なども使用できる。
【0033】
本発明の成形層13、緩和層14を形成するエネルギー硬化性樹脂12は特に上記に制限する事はないが、耐熱性、耐溶剤性の観点から架橋アクリル系樹脂、架橋ビニル系樹脂であることが望ましい。該架橋アクリル系樹脂、該架橋ビニル系樹脂は、架橋性単量体50〜99重量%及び種々の重合体を主体とし、その重合体を溶解含有しても良い不飽和単量体50〜1重量%よりなる混合物を重合硬化して得られる樹脂である。前記架橋性単量体には分子内に少なくとも2個以上の不飽和エチレン基を有する単量体であることが好ましく、例えば特許文献6、特許文献7および特許文献8等に記載されている架橋性単量体を使用することができ、また複数の架橋性単量体を組み合わせて使用することも可能である。架橋剤の配合量としては特に全重量割合の5.0%以上、30.0%以下が好ましい。架橋剤の添加量が多すぎると白濁の原因となり光学的散乱が生じてしまうため、更に好ましくは5.0%以上、20.0%以下であることが望ましい。
【0034】
本発明の構成にかかる緩和層14の樹脂は、成形層13と同種の材料であり、硬化後、成形層13の樹脂よりも充分重合度が低く比較的柔軟であることが必要である。その緩和層14を形成するエネルギー硬化性樹脂12としては、基本的には成形層13と同種の樹脂であり、異なる点としては緩和層14の樹脂が調整された重合禁止剤を適量含有することによって、または調整された光、熱重合開始剤を成形層13の樹脂よりも重合度が低くなるよう適量含有することによって、応力緩和が可能な柔軟である緩和層14を形成できる。または成形層13の樹脂が含有する光もしくは熱重合開始剤と異なるエネルギーバンドを有する光もしくは熱重合開始剤を緩和層14の樹脂が含有する事によって、照射に用いる光源の波長もしくは温度を調整することで、最適化した光照射、熱処理により応力緩和が可能な柔軟である緩和層14を形成できる。
【0035】
具体的な重合禁止剤としては例えば、ヒドロキノン、2、6−ジーt−ブチルーp−クレゾール、2、2−メチレンービスー(4−メチルー6−t−ブチルフェノール)、1、1、3−トリスー(2−メチルー4−ヒドロキシー5−t−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系化合物、ジラウリル チオジプロピオネート等の硫黄系化合物、トリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、フェノチアジン等のアミン系化合物などを好適なものとして挙げることができる。なお、モノマー主成分に対する重合禁止剤の添加比率は、光源、光照射量、更には、成形時の酸素存在量、付加的な加熱温度、重合後の着色に応じて、適宜選択することができ、2種類以上の重合禁止剤を組み合わせて使用も出来る。得られる成形体の目標とする重合度に応じて、調整することもできる。重合禁止剤の添加量としては、使用する樹脂全体量に対して0.0005〜5%程度の範囲の添加が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.5重量%が好適である。
【0036】
また、具体的に光重合開始剤としては例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4、4’−ジフェニルベンゾフェノン、4、4’−ジフェノキシベンゾフェノン、などを好適なものとして挙げることができる。なお、モノマー主成分に対する光重合開始剤の添加比率は、光源、光照射量、更には成形時の酸素存在量、付加的な加熱温度に応じて、適宜選択することができ、2種類以上の重合開始剤を組み合わせて使用も出来る。また、得られる成形体の目標とする重合度に応じて、調整することもできる。光重合開始剤の添加比率に関して、原料体全体における光重合開始剤の含有率は全重量割合の0.005〜10%の範囲に選択することが好ましい。
【0037】
また熱重合開始剤としては例えば、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等を、好適なものとして挙げることができる。なお、モノマー主成分に対する、熱重合開始剤の添加比率は、加熱温度、更には成形時の酸素存在量に応じて、適宜選択することができ、2種類以上の重合開始剤を組み合わせて使用も出来る。また、得られる成形体の目標とする重合度に応じて、調整することもできる。熱重合開始剤の添加比率に関して、原料体全体における熱重合開始剤の含有率は全重量割合の0.005〜10%の範囲に選択することが好ましい。
【0038】
また、成形手順の優位から各層において、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を使い分ける事も可能である。
【0039】
また、該成形材料の硬化により形成される緩和層14と同条件で作製したフィルムの引っ張り弾性率Eとしては、この値によって一概に制限される事はないが1.5〜2.6×10Pa(周波数10Hz、25℃±2℃、膜厚50μm)の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは1.8〜2.4×10Pa(周波数10Hz、25℃±2℃、膜厚50μm)の範囲にあることが望ましい。
【0040】
光学素子となる層の成形順序としては、透明基板11上の少なくとも一方の面に緩和層14を成形した後、緩和層14の上に成形層13を成形している。
【0041】
成形体を作製する型の概略を図2に示す。成型体の成形方法について図3に概略を示す。
【0042】
光学素子の成形を行う型としては、目的とするレンズ面形状、例えば平面構造を有する形状に対応する型21(図2〔a〕)、回折格子を有する形状に対応する型22(図2〔b〕)を使用する。成形方法としては例えば前記架橋ビニル系樹脂を成形層13、同様のビニル系樹脂と最適化された重合禁止剤を配合したものを緩和層14の形成に用いた場合、流動性を示す緩和層14の樹脂を初めに型21上に適当量を滴下する。緩和層14の樹脂を型21上に滴下したその上から規定の透明基板11を圧接して、光照射もしくは熱により成形しつつ、重合を行う。圧接の際、樹脂中に空気等の気泡が混入しないよう充分に注意する必要がある。空気の泡を成形体に取り込んでしまうと、その部位を透過する光に散乱が生じてしまうからである。重合後、型21から離型することによって、透明基板11と一体化した平坦層である緩和層14が得られる。
【0043】
この時、形成された緩和層14はあらかじめ調整された重合禁止剤を原料体である樹脂に含有するため光照射もしくは熱エネルギーによって、極端に重合度が大きくなる事はなく、比較的低弾性のままである。続いて成形層13の形成においては、緩和層14の樹脂に重合禁止剤を含有しない樹脂を用いて成形されるものであり、型22上に成形層13を形成する樹脂を適当量に滴下する。その上から先に得た緩和層14と一体化した透明基板11を成形層13と緩和層14が重なる様に圧接して、光照射もしくは熱により成形しつつ、重合を行う。その後、型22から離型することによって、透明基板11と一体化した平坦層である緩和層14及びその上に積層された型22の形状を転写した回折格子を有する層である成形層13を有する積層型回折光学素子が得られる。
【0044】
また、成形方法としては例えば前記架橋ビニル系樹脂を成形層13、同様の架橋ビニル系樹脂に成形層13よりも重合度が小さくなるように最適化した光もしくは熱重合開始剤を配合した樹脂を緩和層14形成に用いた場合、流動性を示す緩和層14の樹脂を初めに型21上に適当量を滴下する。緩和層14の樹脂を型21上に滴下したその上から規定の透明基板11を圧接して、光照射もしくは熱により成形しつつ、重合を行う。重合後、型21から離型することによって、透明基板11と一体化した平坦層である緩和層14が得られる。
【0045】
この時、形成された緩和層14はあらかじめ量を調整された重合開始剤を樹脂に含有するため光照射もしくは熱エネルギーによって、極端に重合度が大きくなる事はなく、比較的低弾性のままである。続いて成形層13の形成においては、光もしくは熱硬化によって緩和層14の樹脂よりも重合度が充分大きくなるよう重合開始剤を配合した樹脂を用いて成形されるものであり、型22上に成形層13を形成する樹脂を適当量に滴下する。その上から先に得た緩和層14と一体化した透明基板11を成形層13と緩和層14が重なる様に圧接して、光照射もしくは熱により成形しつつ、重合を行う。その後、型22から離型することによって、透明基板11と一体化した平坦層である緩和層14及びその上に積層された型22の形状を転写した回折格子を有する層である成形層13を有する積層型回折光学素子が得られる。
【0046】
成形の際、用いる樹脂が結晶性等を有しており流動性が小さく滴下が困難であるならば型21、22及び樹脂をヒーター31、ディスペンサー32等で適宜加熱して樹脂を溶融状態のまま用いる事も出来る。その際、加熱によって原材料の硬化が進行しない程度の温度に調整する事が望ましい。また樹脂が溶剤に溶解している場合に型成形する手法では、所望の形状を良く保存する成形体とするために、利用した溶剤を徐々に蒸発除去することにより行われることになるが、モノマー主成分としては溶媒を使用することなく室温で流動体、もしくは加熱により溶融可能なモノマーを用いた方が所望の形状を良く保存する成形体を相対的に短い作業時間で作製することができる。
【0047】
これら成形方法によって得られる樹脂の成形体は、目的とする形状に単一の工程で形成でき、高い成形加工の再現性が達成できる。
【0048】
成形型21、22と透明基板11の間に供給されるエネルギー硬化性樹脂12は、成形する層を一定に形成させるために一定の粘度に調整、保持することが必要である。粘度範囲は形成する層の厚さによっても異なるが、一般的には50〜5000mPa・sの範囲の粘度にすることが好ましい。この範囲の粘度に調整することによりディスペンサー32を用いて安定的に吐出量を調整することが出来る。更に好ましくは100〜1000mPa・sの範囲に調整する事が好ましい。粘度が50mPa・s未満の場合には少量の滴下の調整が困難であり、また滴下ノズルより液が飛散するといった現象が生じる。
【0049】
また5000mPa・s以上の粘度においては、本発明の光学材料はえい糸性を持つためノズルから糸を引き所望の個所以外に付着する可能性がある。粘度の調整方法としては、ベースとなる樹脂の単量体に対して、その重合体を相溶させる事が有効である。そうすることで光学特性を変えることなく粘度の最適化を図る事ができる。重合体の添加量は全重量割合の5重量%以上、30重量%以下であることが望ましい。上記の範囲であれば成形に好ましい粘度範囲に調整することが出来る。
【0050】
この構成をとることによって、成形層13にかかる内部応力、外力による応力負荷を緩和層14が吸収、緩和してくれる。また緩和層14は成形層13と同種の材料にて形成されていることからほぼ同様の光学特性を有することとなり、積層型となっても光学素子として回折効率等の光学性能の損失は小さい。
【実施例】
【0051】
以下本発明の実施例について更に具体的に説明するが、本発明がそれらによって何ら制約されるものではない。
【0052】
本発明の実施例においては、各化合物を表1の割合で混合調整した組成1〜9の樹脂を用いた。N−ビニルカルバゾール(東京化成工業株式会社製:以下VCz)、ポリN−ビニルカルバゾール(東京化成工業株式会社製:以下PVCz)、光重合開始剤としてイルガキュア184(登録商標)(チバスペシャリティ・ケミカル製:以下IC−184)、架橋剤としてアジピン酸ジビニル(信越酢酸ビニル株式会社製:以下ADV)、離型剤としてメガファック1405(大日本インキ化学工業株式会社製:以下MF−1405)及び重合禁止剤としてノンフレックスF(精工化学株式会社製:以下NF−F)を適宜混合し、80℃で3時間加熱溶融した。完全に溶融した事を確認し、本実施例の光硬化型樹脂33を得た。
【0053】
【表1】

【0054】
成形体を作製する型は図2に示した。円柱形状SUS種の表面上に銅めっきを厚さ400μmに形成させた平坦型、およびピッチ80μm、格子高さ10μm、頂角45°の回折格子を有する型を準備した。次いで無電解ニッケルめっきを平坦型の平坦部位上、および回折格子を有する型のパターン部位上に施し、本発明の実施例に用いるレンズ型21、22とした。金型には温度を与えるため、透明基板11、光硬化型樹脂33、金型の線膨張係数を考慮に入れ金型を作製した。
【0055】
本発明の実施例における成型品の成形方法について図3の模式図を用いてその概略を説明する。図3において、平坦型21もしくは回折格子を有する型22に光硬化型樹脂33(表1内組成1〜9)を滴下し、その上から透明基板11を圧着させて押し広げ、所望の形状になったところで、光源34から光を照射し光硬化性樹脂33を硬化させて、透明基板11と共に硬化物を離型することで成形を行う。型21、22は必要に応じてヒーター31で加熱する事が出来る。本実施例の成形時の型温度は80℃とした。積層する工程は先に得られた透明基板11と一体の成形体を用いて、積層させたい材料、型形状に代えて前記と同様の工程を繰り返す。
【0056】
本発明の実施例における透明基板11としては、硝材BK7、厚さ3mm、Φ40mmを用いた。
【0057】
<分光光度計を用いた透過率測定>
分光光度計(U4000、(株)日立製作所)を用い、波長280−800nmにおける透過率及び反射率を測定した。本測定に用いた光硬化型樹脂33の組成比率は表1に示した通りである。透過率測定を行うためのサンプルは80℃にて保温した表1の光硬化型樹脂33を各約0.15gを80℃の平坦型21の上にディスペンサー32を用いて吐出した。平坦型21の温度は温度制御によって±1.0℃以内に制御されている。その平坦型21上に50μmのスペーサー35を置き、80℃に保温された透明基板11(BK7:オハラ製)を吐出液上に載せ、液を平坦型21と透明基板11の間に充填させた。更に、透明基板11方向から中心波長365nmの紫外線40mW/cmで1000秒(40J)照射し硬化させ、平坦型21から離型させた。得られた成形膜は透明基板11と一体化しており温度を室温まで自然に冷却させた。こうして本実施例光硬化型樹脂33を用いた透過率測定用サンプルを得た。
【0058】
<動的粘弾性装置によるせん断弾性率測定>
動的粘弾性測定装置(Rheogel E4000、ユービーエム(株))を用い、温度依存性−20−250℃、5℃/min、周波数10Hzの条件でせん断弾性率Gを測定した。サンプルは5mm×25mm、膜厚50μmとした。本測定に用いた光硬化型樹脂33の組成比率は表1に示した通りである。動的粘弾性測定を行うためのサンプルは80℃にて保温した表1の光硬化型樹脂33を各約0.15gを80℃の平坦型21の上にディスペンサー32を用いて吐出した。平坦型21の温度は温度制御によって±1.0℃以内に制御されている。
【0059】
その平坦型21上に50μmのスペーサー35を置き、80℃に保温された透明基板11(BK7:オハラ製)を吐出液上に載せ、液を平坦型21と透明基板11の間に充填させた。更に、透明基板11方向から中心波長365nmの紫外線40mW/cmで1000秒(40J)照射し硬化させ、平坦型21から離型させた。得られた成形膜は透明基板11と一体化しており温度を室温まで自然に冷却させた後、カッター等を用いて欠損なく透明基板11から成形膜を剥がし、次いで規定の測定形状5mm×25mmの短冊状にカットした。こうして本実施例光硬化型樹脂33を用いた動的粘弾性測定用サンプルを得た。
【0060】
各組成1〜9を上記同様に硬化させた時に得られた成形膜について硬化時の透過率(365nm)、黄変の確認、せん断弾性率測定結果(周波数10Hz、25℃±1℃)を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
重合禁止剤を添加した組成2〜5にかけて添加量が増加するほど透過率及びせん断弾性率は低下した。組成5においては重合禁止剤の添加量が多いため比較的大きな黄変の結果となり、光学素子としては透過率の面からあまり適当ではない。また組成1、6、7において光重合開始剤が増加するほど、透過率は低下傾向を示しせん断弾性率は上昇傾向を示した。
【0063】
以下実験例1〜9、比較例1〜4に実際に組成1〜9を組み合わせて、型を用いて積層型回折光学素子を成形した例を示す。
【0064】
〔実験例1〕
80℃にて保温した組成1樹脂0.15gを80℃の回折格子を有する型22の上にディスペンサー32を用いて吐出した。型22の温度は温度制御によって±1.0℃以内に制御されている。その型22上に50μmのスペーサー35を置き、80℃に保温された透明基板11(BK7:オハラ製)を吐出液上に載せ、液を型22と透明基板11の間に充填させた。更に、透明基板11方向から中心波長365nmの紫外線40mW/cmで1000秒(40J)照射し硬化させ、型22から離型させた。得られた成型体は透明基板11と一体化しており温度を室温まで自然に冷却させた。結果、組成1樹脂を用いた回折格子を有する成形層13(透明基板11+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例1の回折光学素子を得た。
【0065】
〔実験例2〕
80℃にて保温した組成2樹脂0.15gを80℃の平坦型21の上にディスペンサー32を用いて吐出した。平坦型21の温度は温度制御によって±1.0℃以内に制御されている。その平坦型21上に50μmのスペーサー35を置き、80℃に保温された透明基板11(BK7:オハラ製)を吐出液上に載せ、液を平坦型21と透明基板11の間に充填させた。更に、透明基板11方向から中心波長365nmの紫外線40mW/cmで1000秒(40J)照射し硬化させ、平坦型21から離型させた。得られた成型体は透明基板11と一体化しており温度を室温まで自然に冷却させた。結果、組成2樹脂を用いた平坦な緩和層14を得た。
【0066】
次いで80℃にて保温した組成1樹脂0.15gを80℃の回折格子を有する型22の上にディスペンサー32を用いて吐出した。型22の温度は温度制御によって±1.0℃以内に制御されている。その型22上に50μmのスペーサー35を置き、あらかじめ80℃に保温しておいた前述の透明基板11と一体の組成2樹脂を用いて成形された緩和層14(透明基板11+組成2樹脂の緩和層14)を緩和層14側が型22上の吐出液上に付くように載せ、液を型22と(透明基板11+組成2樹脂の緩和層14)の間に充填させた。更に、透明基板11方向から中心波長365nmの紫外線40mW/cmで1000秒(40J)照射し硬化させ、型22から離型させた。得られた成型体は透明基板11と一体化しており温度を室温まで自然に冷却させた。
その結果、組成2樹脂を用いた緩和層14と一体化した組成1樹脂を用いた回折格子を有する成形層13(透明基板11+組成2樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例2の積層型回折光学素子を得た。
【0067】
〔実験例3〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成3樹脂を用いた(透明基板11+組成3樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例3の積層型回折光学素子を得た。
【0068】
〔実験例4〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成4樹脂を用いた(透明基板11+組成4樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例4の積層型回折光学素子を得た。
【0069】
〔実験例5〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成5樹脂を用いた(透明基板11+組成5樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例5の積層型回折光学素子を得た。
【0070】
〔実験例6〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成6樹脂を用いた(透明基板11+組成6樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例6の積層型回折光学素子を得た。
【0071】
〔実験例7〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成7樹脂を用いた(透明基板11+組成7樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例7の積層型回折光学素子を得た。
【0072】
〔実験例8〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成8樹脂を用いた(透明基板11+組成8樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例8の積層型回折光学素子を得た。
【0073】
〔実験例9〕
実験例2と同様の工程により、緩和層14として組成9樹脂を用いた(透明基板11+組成9樹脂の緩和層14+組成1樹脂の回折格子を有する成形層13)である実験例9の積層型回折光学素子を得た。
【0074】
〔比較例1〕
緩和層14の膜厚を100μmにした以外は実験例2に準じた。
【0075】
〔比較例2〕
緩和層14の膜厚を100μmにした以外は実験例3に準じた。
【0076】
〔比較例3〕
緩和層14の膜厚を100μmにした以外は実験例6に準じた。
【0077】
〔比較例4〕
緩和層14の膜厚を100μmにした以外は実験例9に準じた。
【0078】
上記により得た光学素子の割れ状況を表3に示す。成形により得られた各光学素子は24時間室温(23〜24℃)に放置後、高温高湿環境試験(温度60℃、湿度90%)に一定時間(0〜240、480、1000時間)投入し割れの発生を確認した。
【0079】
【表3】

【0080】
実験例1において組成1樹脂を成形層13とした場合、高温高湿環境試験に投入する前の成形後から半日程度の室温放置で成形層13全面にクラックを生じ割れた。
【0081】
実験例2〜5において組成2〜5樹脂を緩和層14とし、組成1樹脂を成形層13とした場合、重合禁止剤の配合量の増加と共に高温高湿耐久試験に対する成形層13の耐久時間が増加した。その際、割れに関して、実験例2で得た成形層13は240時間で取り出し後、全面にクラックを生じ割れた。実験例3、実験例4で得た成形層13は、それぞれ480、1000時間で取り出し後、クラックもしくは格子形状に沿った輪体割れを生じ割れた。実験例5で得た成形層13は高温高湿環境耐久試験1000時間経過後も割れを発生することはなかった。
【0082】
実験例6において光重合開始剤を組成1樹脂より少なく含有する組成6樹脂を緩和層14とし、組成1樹脂を成形層13とした場合、重合禁止剤を含有する組成3樹脂を用いた実験例3とほぼ同様の高温高湿耐久試験結果を示した。成形層13は一部にクラックもしくは格子形状に沿った輪体割れを生じ割れた。
【0083】
実験例7において光重合開始剤を組成1樹脂より多く含有する組成7樹脂を緩和層14とし、組成1樹脂を成形層13とした場合、高温高湿環境試験に投入する前の成形後から半日程度の室温放置で成形層13全面にクラックを生じ割れた。
【0084】
実験例8において光重合開始剤を組成1樹脂より少なく含有する及び重合禁止剤を含有する組成8樹脂を緩和層14とし、組成1樹脂を成形層13とした場合、重合禁止剤を含有しない組成6樹脂を用いた実験例6より高い耐久強度を示した。割れに関して、組成1樹脂を用いた成形層13は一部にクラックもしくは格子形状に沿った輪体割れを生じ割れた。
【0085】
実験例9において光重合開始剤を組成1樹脂より多く含有する及び重合禁止剤を含有する組成9樹脂を緩和層14とし、組成1樹脂を成形層13とした場合、高温高湿環境試験に投入する前の成形後から半日程度の室温放置で成形層13全面にクラックを生じ割れた。
【0086】
比較例1、2において、それぞれ実験例2、3の倍の膜厚を緩和層14とした場合、実験例2、3と比較し、それぞれ倍の膜厚を有する比較例1、2の方が高い耐久試験結果を示した。
【0087】
比較例3において、実験例6の倍の膜厚を緩和層14とした場合、実験例6と比較し、倍の膜厚を有する比較例3の方が高い耐久試験結果を示した。
【0088】
比較例4において、実験例9の倍の膜厚を緩和層14とした場合、実験例9と比較し、倍の膜厚を有する比較例4の方が高い耐久試験結果を示した。
【0089】
表3の結果から明らかな通り、実験例1を基準にして、平坦層として重合禁止剤、重合開始剤を適量に含有する緩和層14を透明基板11と成形層13の中間層に設けることで、組成1で成形した成形層13の応力負荷を柔軟な緩和層14が緩和し、割れ防止性を兼ね備えた積層型回折光学素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の光学素子の構成を示す図である。
【図2】実施例に用いたレンズ型の形状を示す図で[a]は平坦型を示し[b]は回折格子を有する型を示す。
【図3】本発明の実施例における成型品の成形方法についての模式図で[a]は平坦型を示し[b]は回折格子を有する型を示す。
【符号の説明】
【0091】
11 透明基板
12 エネルギー硬化性樹脂
13 成形層
14 緩和層
21 平坦型
22 回折格子を有する型
31 ヒーター、
32 ディスペンサー
33 本発明の光硬化型樹脂
34 光源
35 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の少なくとも一方の面に、エネルギー硬化性樹脂により成形された成形層と前記透明基板との中間層として成形層と同種の材料を用いて成形された重合度の低い複数の緩和層を有する事を特徴とする積層型光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の成形層、緩和層が前記透明基板と一体化していることを特徴とする積層型光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緩和層の重合度が、重合禁止剤の種類および添加量が全重量割合の0.0005%〜5%の範囲で含有する事により、重合開始剤の種類および添加量が全重量割合の0.005〜10%の範囲で含有する事により、成形層より低く調整されており、膜厚が1μm〜500μmである事を特徴とする積層型光学素子。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の光学素子が、使用波長域全域で特定次数の回折効率を高くするようにした回折光学素子であることを特徴とする積層型回折光学素子。
【請求項5】
請求項4に記載の積層型回折光学素子と、請求項4に記載の積層型回折光学素子と同様の層構成で異なる光学性能、もしくは異なる層構成および光学性能を有する光学素子とを、お互いの回折面を対向させて組み合わせることにより構成されていることを特徴とする積層型回折光学素子。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の光学素子を成形するに際して、成形型を用いて成形することを特徴とする光学素子の成形方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光学素子の成形方法において、熱重合もしくは光重合により成形物を得る事を特徴とする光学素子の成形方法。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の光学素子の材料として、少なくともカルバゾール骨格を有する物質を含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする光学材料。
【請求項9】
少なくともN−ビニルカルバゾールを含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする請求項8に記載の光学材料。
【請求項10】
少なくともポリ(N−ビニルカルバゾール)を含む硬化性樹脂を主材料とする事を特徴とする請求項8に記載の光学材料。
【請求項11】
少なくとも架橋剤としてアジピン酸ジビニルを含有する樹脂を主材料とする事を特徴とする請求項8に記載の光学材料。
【請求項12】
少なくともN−ビニルカルバゾールとポリ(N−ビニルカルバゾール)、アジピン酸ジビニルおよび光重合開始剤からなることを特徴とする請求項8乃至11いずれかに記載の光学材料。
【請求項13】
前記光学材料の組成が、ポリ(N−ビニルカルバゾール):5〜30重量%、アジピン酸ジビニル:全重量割合の5〜30%の範囲であることを特徴とする請求項12に記載の光学材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235007(P2006−235007A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46679(P2005−46679)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】