説明

積層型熱交換器

【課題】 蓄熱材としての第3流体の流通を円滑に行い、伝熱性を向上させること。
【解決手段】 蓄熱材が流通する第3流路13の第3インナーフィン10を、その長手方向中央および幅方向中央に平面十字状のマニホールド用隙間16が形成されるように、第3インナーフィン10を平面4分割にする。さらに、第3流路13に介装される一対の第3スペーサ3に連通孔17を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源流体である第1熱交換媒体と熱回収流体である第2熱交換媒体とが蓄熱材を介して熱交換される蓄熱型熱交換器に最適な積層型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の蓄熱型熱交換器は、第1流路と第2流路とが壁面を介して互いに伝熱的に接するように構成し、第1流路に熱源流体を、第2流路に熱回収流体を流通させ、且つ各流路に壁面を接して蓄熱材を配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−336974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層型熱交換器は、第3熱交換媒体である蓄熱材が第3流路内で均一の温度に維持しにくい欠点があった。これは、特に蓄熱材に粘性がある場合、その流路内の第3インナーフィンの存在により、熱交換媒体の流動が円滑に行われないためである。
そこで、本発明は第3熱交換媒体の流動を可能なかぎり、円滑に行いうる積層型熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ外周を閉塞する環状の第1スペーサ(1)、第2スペーサ(2)を介した第1プレート(4)と第2プレート(5)と、その長手方向両端のみに一対の第3スペーサ(3)を介して外周の両側が開放された第3プレート(6)との積層体でエレメント(7)を構成し、
第1プレート(4)と第2プレート(5)との間に第1流路(11)が形成され、第2プレート(5)と第3プレート(6)との間に第2流路(12)が形成され、第3プレート(6)と第1プレート(4)との間に第3流路(13)が形成され、
第1流路(11)に第1インナーフィン(8)が介装され、第2流路(12)に第2インナーフィン(9)が介装され、第3流路(13)に第3インナーフィン(10)が介装され、
複数の前記エレメント(7)が積層されてコア(14)を構成し、そのコア(14)がケーシング(15)に被嵌されて熱交換器を構成し、
前記第3インナーフィン(10)は、その長手方向の中心および幅方向の中心に平面十字状のマニホールド用隙間(16)が存在するように、そのフィン(10)が平面四分割されてなり、一対の前記第3スペーサ(3)は、前記長手方向に連通孔(17)が形成され、
前記各第1流路〜第3流路に第1熱交換媒体(18),第2熱交換媒体(19),第3熱交換媒体(20)が流通すると共に、第3熱交換媒体(20)が前記ケーシング(15)内に流通することを特徴とする積層型熱交換器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
第1流路(11)と第2流路(12)と第3流路(13)の各平面は略同一で、第3流路(13)の流路断面が第1流路(11)および第2流路(12)のそれに比べて大きくされ、その第3流路(13)の第3熱交換媒体(20)を蓄熱材とした積層型熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記第1プレート(4),第2プレート(5),第3プレート(6)は、平面方形に形成され、その一方の対角位置に第2流体連通孔(21)が設けられ、他方の対角位置には第1流体連通孔(22)が形成され、一対の第3スペーサ(3)にそれらに整合する第2流体連通孔(21)および第1流体連通孔(22)が形成され、
前記第1スペーサ(1)は、平面方形で前記一方の対角位置に第2流体連通孔(21)が形成され、第2スペーサ(2)は、平面方形で前記他方の対角位置に第1流体連通孔(22)が形成された積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、互いに隣接する第1流路11と第2流路12と第3流路13に、それぞれ第1熱交換媒体18と第2熱交換媒体19と第3熱交換媒体20が流通し、互いに熱交換されるものにおいて、その第3流路13の第3インナーフィン10は、長手方向中心および幅方向中心に平面十字状のマニホールド用隙間16が存在するように、そのインナーフィン10が平面4分割されているから、比較的粘性の高い第3熱交換媒体20であっても、第3流路13の各部に円滑に流通し、迅速に均一な温度になる。さらには、第3スペーサ3に連通孔17が設けられており、それによってケーシング15内の第3熱交換媒体20を各第3流路13に円滑に流通しうる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、第3流路13の流路断面を第1流路11、第2流路12のそれより大きくし、第3流路13の第3熱交換媒体20として蓄熱材を用いたから、蓄熱容量を大とし、第1熱交換媒体18、第2熱交換媒体19の熱エネルギーをより多く蓄熱しうる。そして、その蓄熱エネルギーを必要な時に、より多く放出させることができる効果を有する。
請求項3に記載の構成によれば、第1熱交換媒体18および第2熱交換媒体19を多数の第1流路11、第2流路12に供給するとともに、第3熱交換媒体20をケーシング15を介し、各第3流路13に円滑に供給することができる。しかも構造が簡単で組立て容易な信頼性の高い積層型熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の積層型熱交換器を構成するエレメントの分解斜視図。
【図2】同積層型熱交換器の要部縦断面図。
【図3】図2のIII-III矢視断面図。
【図4】同図2の側面図。
【図5】同平面図。
【図6】図5のVI-VI矢視断面図。
【図7】図6のVII部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
本発明の積層型熱交換器は、図2に示すごとくコア14と、その外周を被嵌するケーシング15とからなる。コア14は図1に示す平面矩形のエレメント7を複数積重ね、その上下両端に端板26を配置したものである。そのエレメント7は、第1プレート4と第2プレート5と第3プレート6との間に第1スペーサ1、第2スペーサ2、第3スペーサ3を介装したものである。第1スペーサ1、第2スペーサ2は、外周が閉塞された平面方形の環状に形成され、第3スペーサ3は後述する第3流路13の幅方向両側が開放されるように配置された一対の矩形の板材からなる。
【0011】
そして、第1プレート4と第2プレート5との間に第1流路11を形成し、第2プレート5と第3プレート6との間に第2流路12を形成し、第3プレート6と第1プレート4との間に第3流路13を形成する。そして、第1流路11内に第1インナーフィン8が介装され、第2流路12内に第2インナーフィン9が介装され、第3流路13内に第3インナーフィン10が介装される。
【0012】
第1プレート4、第2プレート5、第3プレート6および第3スペーサ3には、一方の対角位置に一対の第2流体連通孔21が設けられ、他方の対角位置に一対の第1流体連通孔22が形成されている。さらに、第1スペーサ1には前記一方の対角位置に一対の第2流体連通孔21が形成され、第2スペーサ2には他方の対角位置に一対の第1流体連通孔22が形成されている。このような各部品の積層体からなるエレメント7を多数段積層するとともに、その上下両端に端板26を配置する。
この例では、第3スペーサ3および、第3インナーフィン10の厚みを、第1スペーサ1、第1インナーフィン8,第2スペーサ2、第2インナーフィン9の厚みの2〜3倍にして、第3熱交換媒体20の熱容量を他のそれらに比べて大きくしている。
【0013】
また、この例では上端の端板26に図5に示すごとく、前記一方の対角位置に一対の第2流体連通孔21が穿設され、その開口縁に第2パイプ24の端部が接続される。そして、他方の対角位置に一対の第1流体連通孔22が設けられ、その開口縁に第1パイプ23の端部が接続される。さらに、端板26の幅方向中央位置でその長手方向両端部寄りの位置に一対の第3流体連通孔27が穿設され、その孔縁部に第3パイプ25の一端がそれぞれ接続される。
【0014】
このしてようになるコア14は、互いに接触する部品間がろう付け固定される。さらに、その外周にケーシング15が被嵌されて熱交換器を完成する。
そして、一方の第1パイプ23から第1熱交換媒体18を流通させ、それを図1に示すごとく第1インナーフィン8が存在する第1流路11内を流通させ、他方の第1パイプ23からそれを流出させる。また、一方の第2パイプ24から第2熱交換媒体19を流通させ、それを図1のごとく第2インナーフィン9が介装された第2流路12内を流通させ、他方の第2パイプ24からそれを流出させる。
【0015】
また、第3パイプ25を介してケーシング15内には第3熱交換媒体20が充填され、それが第3インナーフィン10を有する第3流路13内に供給される。この第3熱交換媒体20は、ケーシング15内において、各第3流路13の内部を幅方向に流通するとともに、マニホールド用隙間16を介して第3流路13内に迅速に流通し、マニホールド用隙間16を介してさらに各第3インナーフィン10の矩形流路内に供給される。さらには、第3スペーサ3の連通孔17を介して第3熱交換媒体20が第3流路13内に流通する。
【0016】
(作用)
第1熱交換媒体18、第2熱交換媒体19のいずれか一方が熱源流体であり、他方が熱回収流体である。そして、第3熱交換媒体20が蓄熱材である。そして、第1熱交換媒体18と第2熱交換媒体19との間に熱交換が行われるとともに、第1熱交換媒体18と第3熱交換媒体20との間および第2熱交換媒体19と第3熱交換媒体20との間に熱交換が行われる。そして、第3熱交換媒体20に蓄熱される。このとき、第3熱交換媒体20はマニホールド用隙間16の存在により第3流路13各部に迅速に流通し、温度分布を迅速に均一にする。それにより、効率の良い蓄熱が第3熱交換媒体20に行われる。
【0017】
そして、第3熱交換媒体20からは、蓄熱されたエネルギーが必要に応じ、第1熱交換媒体18、第2熱交換媒体19に、熱交換により引渡される。このときも、第3熱交換媒体20が第3流路13内部を流通することにより、効率よく伝熱される。第3熱交換媒体20としては、従来知られている公知の各種流動体或いは半流動体を用いることができる。
熱源流体としては高温の流体を、熱回収流体としては水等を使用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 第1スペーサ
2 第2スペーサ
3 第3スペーサ
4 第1プレート
5 第2プレート
6 第3プレート
7 エレメント
8 第1インナーフィン
9 第2インナーフィン
【0019】
10 第3インナーフィン
11 第1流路
12 第2流路
13 第3流路
14 コア
15 ケーシング
16 マニホールド用隙間
17 連通孔
18 第1熱交換媒体
19 第2熱交換媒体
20 第3熱交換媒体
【0020】
21 第2流体連通孔
22 第1流体連通孔
23 第1パイプ
24 第2パイプ
25 第3パイプ
26 端板
27 第3流体連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ外周を閉塞する環状の第1スペーサ(1)、第2スペーサ(2)を介した第1プレート(4)と第2プレート(5)と、その長手方向両端のみに一対の第3スペーサ(3)を介して外周の両側が開放された第3プレート(6)との積層体でエレメント(7)を構成し、
第1プレート(4)と第2プレート(5)との間に第1流路(11)が形成され、第2プレート(5)と第3プレート(6)との間に第2流路(12)が形成され、第3プレート(6)と第1プレート(4)との間に第3流路(13)が形成され、
第1流路(11)に第1インナーフィン(8)が介装され、第2流路(12)に第2インナーフィン(9)が介装され、第3流路(13)に第3インナーフィン(10)が介装され、
複数の前記エレメント(7)が積層されてコア(14)を構成し、そのコア(14)がケーシング(15)に被嵌されて熱交換器を構成し、
前記第3インナーフィン(10)は、その長手方向の中心および幅方向の中心に平面十字状のマニホールド用隙間(16)が存在するように、そのフィン(10)が平面四分割されてなり、一対の前記第3スペーサ(3)は、前記長手方向に連通孔(17)が形成され、
前記各第1流路〜第3流路に第1熱交換媒体(18),第2熱交換媒体(19),第3熱交換媒体(20)が流通すると共に、第3熱交換媒体(20)が前記ケーシング(15)内に流通することを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
第1流路(11)と第2流路(12)と第3流路(13)の各平面は略同一で、第3流路(13)の流路断面が第1流路(11)および第2流路(12)のそれに比べて大きくされ、その第3流路(13)の第3熱交換媒体(20)を蓄熱材とした積層型熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1プレート(4),第2プレート(5),第3プレート(6)は、平面方形に形成され、その一方の対角位置に第2流体連通孔(21)が設けられ、他方の対角位置には第1流体連通孔(22)が形成され、一対の第3スペーサ(3)にそれらに整合する第2流体連通孔(21)および第1流体連通孔(22)が形成され、
前記第1スペーサ(1)は、平面方形で前記一方の対角位置に第2流体連通孔(21)が形成され、第2スペーサ(2)は、平面方形で前記他方の対角位置に第1流体連通孔(22)が形成された積層型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169526(P2011−169526A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34617(P2010−34617)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】