説明

積層型熱交換器

【課題】簡素な構成で熱交換性能の向上を図ることができる積層型熱交換器を提供する。
【解決手段】流路管3内にインナーフィン33を設け、ストレートフィンで構成されたインナーフィン33を、流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるように配置し、インナーフィン33の板部34に、当該板部34の一部を切り起こすことにより形成されるとともに板部34に対して捻られたルーバ5と、熱媒体が流通可能な貫通孔6とを、流路管幅方向に沿って複数設け、インナーフィン33における1つの山部8を構成する一方の板部34に形成されるルーバ5を第1ルーバ51とし、他方の板部34に形成されるルーバ5を第2ルーバ52としたとき、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8において、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体が流通する流路管と熱交換対象物とが交互に積層された積層型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を内蔵した半導体モジュール等の発熱体の放熱を行うために、発熱体を両面から挟持するように流路管を配設して構成される積層型熱交換器が知られている。このような積層型熱交換器では、発熱体と流路管とが交互に積層された構成となっており、積層された複数の流路管は、連通部材によって連通され、熱媒体が各流路管に流通するよう構成されている。
【0003】
この種の積層型熱交換器において、熱交換能力を向上させるために、流路管内に仕切部材を配設して1つの流路管内に熱媒体通路を流路管の積層方向に2段形成するとともに、2段に形成された熱媒体通路のそれぞれにインナーフィンを配置したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、この種の積層型熱交換器では、連通部材から各流路管に熱媒体が分配される構成になっているため、流路管内の熱媒体の流速が小さくなる。このような流路管内の微小流量域における熱交換性能の向上を図るために、インナーフィンとして、流路管内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することで熱媒体の混合を促進させるウェーブフィンを用い、当該ウェーブフィンを流路管の積層方向に複数段積層したものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−191527号公報
【特許文献2】特開2010−10418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェーブフィンは形状が複雑であるため、加工コストが増大するという問題がある。すなわち、従来のストレートフィンは、量産性に優れたローラ成形法によって成形していたのに対し、ウェーブフィンは、その形状上、ローラ成形法によっては成形できず、結果的にプレス成形をせざるを得なくなる。
【0007】
そして、プレス成形によってウェーブフィンを成形する場合でも、プレス時にフィン材料が破れる虞があるので、ウェーブフィンを1山または2山ずつプレス(ショット)する必要がある。このため、1つのウェーブフィンを成形するための加工時間および加工工程が非常に多くなり、大量生産には適さない。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、簡素な構成で熱交換性能の向上を図ることができる積層型熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、流路管(3)内には、熱媒体と流路管(3)との伝熱面積を増大させるインナーフィン(33)が設けられており、インナーフィン(33)は、流路管幅方向に延びる複数の板部(34)と、隣り合う板部(34)間を繋ぐ頂部(35)とを有し、流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるとともに、流路管(3)の積層方向に直交する断面形状が直線状となるストレートフィンであり、インナーフィン(33)の板部(34)には、当該板部(34)の一部を切り起こすことにより形成されたルーバ(5)が流路管幅方向に沿って複数設けられており、ルーバ(5)は、板部(34)に対して予め定めた捻り角度(θ)で捻られており、インナーフィン(33)の板部(34)には、ルーバ(5)を設けることにより、熱媒体が流通可能な複数の貫通孔(6)が形成されており、インナーフィン(33)における、1つの頂部(35)と、当該頂部(35)に接続される2つの板部(34)とから構成される部分を山部(8)とし、1つの山部(8)を構成する一方の板部(34)に形成されるルーバ(5)を第1ルーバ(51)とし、他方の板部(34)に形成されるルーバ(5)を第2ルーバ(52)としたとき、1つのインナーフィン(33)を構成する複数の山部(8)のうち少なくとも1つの山部(8)において、流路管(3)の長手方向に互いに対向している第1ルーバ(51)および第2ルーバ(52)は、捻り方向が反転していることを特徴としている。
【0010】
このように、流路管(3)内に、流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるようにインナーフィン(33)を配置するとともに、インナーフィン(33)の板部(34)にルーバ(5)を形成することで、流路管(3)内の熱媒体は、ルーバ(5)に隣接する貫通孔(6)を通過して流れる。このとき、貫通孔(6)を通過する熱媒体は、板部(34)に対して捻られたルーバ(5)に沿って流れるため、当該貫通孔(6)を通過する熱媒体の流れ方向は、流路管(3)の長手方向に対して流路管幅方向の一側もしくは他側に傾斜する。
【0011】
そして、流路管(3)の長手方向に互いに対向している第1ルーバ(51)および第2ルーバ(52)の捻り方向を反転させることで、第1ルーバ(51)と隣接する貫通孔(6)を通過する熱媒体の流れ方向と、第2ルーバ(52)と隣接する貫通孔(6)を通過する熱媒体の流れ方向とを反転させることができる。すなわち、第1ルーバ(51)により、流路管(3)の長手方向に対して流路管幅方向の一側に傾斜する熱媒体流れを形成するとともに、第2ルーバ(52)により、流路管(3)の長手方向に対して流路管幅方向の他側に傾斜する熱媒体流れを形成することができる。
【0012】
これにより、流路管(3)内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、流路管(3)内の熱媒体の混合を促進でき、熱交換性能の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、インナーフィン(33)としてストレートフィンを用いているため、インナーフィン(33)としてウェーブフィンを用いる場合に対して、積層型熱交換器の構成を簡素な構成とすることができる。その結果、簡素な構成で、熱交換性能の向上を図ることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の積層型熱交換器において、インナーフィン(33)は、ローラ成形により形成されていてもよい。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の積層型熱交換器において、ルーバ(5)の板部(34)に対する捻り角度(θ)は、0°より大きく、かつ、90°より小さくなっていてもよい。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型熱交換器において、インナーフィン(33)は、流路管(3)の積層方向に複数積層されていてもよい。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型熱交換器において、インナーフィン(33)は、流路管(3)内に1つ配置されていてもよい。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る積層型熱交換器1を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を示しており、(a)が流路管積層方向から見た模式的な平面図、(b)が流路管幅方向から見た正面図である。
【図4】(a)は図3(b)のB−B断面図、(b)は図3(b)のC−C断面図である。
【図5】第2実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【図6】第3実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【図7】第4実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【図8】第5実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【図9】第6実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本第1実施形態に係る積層型熱交換器1を示す正面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の積層型熱交換器1は、熱交換対象物としての複数の電子部品2を両面から冷却するもので、熱媒体を流通させる熱媒体流路(図示せず)を有する扁平形状の複数の流路管3と、複数の流路管3を連通する連通部材4とを備えている。複数の流路管3は、電子部品2を両面から挟持できるように複数個積層配置されている。
【0023】
本実施形態では、電子部品2として、IGBT等の半導体素子とダイオードとを内蔵した半導体モジュールを用いている。当該半導体モジュールは、自動車用インバータ、産業機器のモータ駆動インバータ、ビル空調用のエアコンインバータ等に用いるものとすることができる。なお、電子部品2としては、上記半導体モジュール以外にも、例えば、パワートランジスタ、パワーFET、IGBT等を用いることもできる。
【0024】
図2は、図1のA−A断面図である。図2に示すように、本実施形態の流路管3は、いわゆるドロンカップ構造となっている。すなわち、流路管3は、一対の外殻プレート31と、一対の外殻プレート31の間に配置される中間プレート32とを有している。これにより、外殻プレート31と中間プレート32との間には、熱媒体流路がそれぞれ形成されている。したがって、流路管3には、熱媒体流路が流路管3の厚み方向、すなわち流路管3の積層方向(以下、流路管積層方向という)に二段形成されている。
【0025】
流路管3内には、熱媒体と流路管3との伝熱面積を増大させるインナーフィン33が設けられている。本実施形態では、インナーフィン33は、外殻プレート31と中間プレート32との間の熱媒体流路に1つずつ設けられている。このインナーフィン33の詳細については後述する。
【0026】
図1に戻り、電子部品2は、流路管3の一対の外殻プレート31それぞれに対して2個ずつ設けられている。各外殻プレート31に設けられた2つの電子部品2は、それぞれ熱媒体の流れ方向に直列に配置されている。
【0027】
また、流路管3の外殻プレート31における長手方向両端部には、外側、すなわち隣り合う他の流路管3側に突出する略円筒状のフランジ部300が形成されている。そして、隣り合う流路管3のフランジ部300同士をろう付けにより接合することにより、複数の流路管3を連通する連通部材4が形成されている。
【0028】
複数の流路管3のうち積層方向最外側に配置される流路管3を外側流路管3aとしたとき、2つの外側流路管3aのうち一方の外側流路管3aの長手方向両端部には、熱媒体を積層型熱交換器1に導入するための熱媒体導入口401と、熱媒体を積層型熱交換器1から排出するための熱媒体排出口402とがそれぞれ接続されている。熱媒体導入口401および熱媒体排出口402は、ろう付けにより一方の外側流路管3aに接合されている。なお、本実施形態の流路管3、連通部材4、熱媒体導入口401および熱媒体排出口402は、アルミニウム製である。
【0029】
熱媒体導入口401から導入された熱媒体は、連通部材4を通って長手方向における一方の端部から各流路管3に流入し、それぞれの熱媒体流路内を他方の端部に向かって流れる。そして、熱媒体は、連通部材4を通って熱媒体排出口402から排出される。このように、熱媒体が熱媒体流路を流通する間に、電子部品2との間で熱交換を行って、電子部品2を冷却するようになっている。なお、熱媒体としては、本実施形態ではエチレングリコール系の不凍液が混入した水を用いている。
【0030】
ここで、流路管3の長手方向(以下、流路管長手方向という)および流路管積層方向に対してともに直交する方向を、流路管幅方向という。
【0031】
図3は本第1実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を示しており、(a)が流路管積層方向から見た模式的な平面図、(b)が流路管幅方向から見た正面図である。なお、図3(a)における実線矢印は、熱媒体の流れを示している。
【0032】
図3に示すように、インナーフィン33は、流路管幅方向に延びる複数の板部34と、隣り合う板部34間を繋ぐ頂部35とを有する波形状に形成されている。より詳細には、インナーフィン33は、流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるとともに、前記積層方向に直交する断面形状が直線状となるストレートフィンである。本実施形態では、インナーフィン33は、薄板金属材料(例えば、アルミニウム板)にローラ成形法を施すことにより成形されている。
【0033】
図4(a)は図3(b)のB−B断面図、図4(b)は図3(b)のC−C断面図である。なお、図4(a)、(b)において、二点鎖線は、インナーフィン33の板厚方向(以下、フィン板厚方向という)における中心線を示している。
【0034】
図3および図4に示すように、インナーフィン33の板部34には、板部34の一部を切り起こすことにより鎧窓状のルーバ5が一体形成されている。ルーバ5は、板部34に対して予め定めた角度(以下、捻り角度θという)で捻られており、流路管幅方向に沿って板部34に複数設けられている。そして、板部34における隣接するルーバ5間には、ルーバ5を設けることにより、熱媒体が流通可能な複数の貫通孔6が形成されている。
【0035】
そして、貫通孔6に隣接するルーバ5の捻り方向によって、当該貫通孔6を流通する熱媒体の流れ方向が変化するようになっている。ここで、ルーバ5の捻り角度θは0°より大きく、かつ、90°より小さくなっている。したがって、貫通孔6を通過した熱媒体は、流路管長手方向に対して、流路管幅方向の一側(図4の紙面左側)もしくは他側(図4の紙面右側)に傾斜して流れるようになっている。
【0036】
本実施形態では、ひとつの板部34に形成された複数のルーバ5は、流路管幅方向一側に位置する複数のルーバ5を含む一側ルーバ群50Aと、流路管幅方向他側に位置する複数のルーバ5を含む他側ルーバ群50Bとに二分されている。そして、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5の捻り方向と、他側ルーバ群50Bに属するルーバ5の捻り方向とが異なっている。
【0037】
板部34の流路管幅方向一側の端部は、ルーバ5が形成されていない一側平面部71となっている。同様に、板部34の流路管幅方向他側の端部は、ルーバ5が形成されていない他側平面部72となっている。
【0038】
板部34の流路管幅方向における略中央部、すなわち一側ルーバ群50Aと他側ルーバ群50Bとの間は、ルーバ5が形成されない中央平面部73として構成されている。この中央平面部73を挟んで、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5の捻り方向と、他側ルーバ群50Bに属するルーバ5の捻り方向とが反転している。このため、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5に隣接する貫通孔6を通過する熱媒体の流れ方向と、他側ルーバ群50Bに属するルーバ5に隣接する貫通孔6を通過する熱媒体の流れ方向とが反転している。
【0039】
なお、本実施形態では、一側ルーバ群50Aおよび他側ルーバ群50Bの、ルーバ5の捻り角度θおよびルーバ5の枚数はそれぞれ等しくなっている。すなわち、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5と、他側ルーバ群50Bに属するルーバ5とが、中央平面部73を挟んで対称形状となっている。
【0040】
ここで、インナーフィン33における、1つの頂部35と、当該頂部35に接続される2つの板部34とから構成される部分を山部8という。また、1つの山部8を構成する一方の板部34に形成されるルーバ5を第1ルーバ51といい、他方の板部34に形成されるルーバ5を第2ルーバ52という。
【0041】
本実施形態では、1つのインナーフィン33を構成する全ての山部8において、第1ルーバ51および第2ルーバ52は、流路管長手方向に互いに対向している。また、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が互いに反転している。
【0042】
より詳細には、1つのインナーフィン33における隣り合う2つの板部34のうち、一方の板部34に形成されるルーバ5により、流路管幅方向の外側に向かう熱媒体流れが形成され、他方の板部34に形成されるルーバ5により、流路管幅方向内側に向かう熱媒体流れが形成される。そして、1つのインナーフィン33において、流路管幅方向外側に向かう熱媒体流れを形成するルーバ5が設けられた板部34(以下、外側流れ形成板部34Aという)と、流路管幅方向内側に向かう熱媒体流れを形成するルーバ5が設けられた板部34(以下、内側流れ形成板部34B)とが、交互に配置されている。
【0043】
以上説明したように、流路管3内に、流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるようにインナーフィン33を配置するとともに、インナーフィン33の板部34にルーバ5を形成することで、流路管3内の熱媒体は、ルーバ5に隣接する貫通孔6を通過して流れる。このとき、貫通孔6を通過する熱媒体は、板部34に対して捻られたルーバ5に沿って流れるため、当該貫通孔6を通過する熱媒体の流れ方向は、流路管長手方向に対して流路管幅方向の一側もしくは他側に傾斜する。
【0044】
そして、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向を反転させることで、第1ルーバ51と隣接する貫通孔6を通過する熱媒体の流れ方向と、第2ルーバ52と隣接する貫通孔6を通過する熱媒体の流れ方向とを反転させることができる。すなわち、第1ルーバ51により、流路管長手方向に対して流路管幅方向の外側に傾斜する熱媒体流れを形成するとともに、第2ルーバ52により、流路管長手方向に対して流路管幅方向の内側に傾斜する熱媒体流れを形成することができる。
【0045】
したがって、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができる。これにより、流路管3内の熱媒体の混合が促進されるので、熱交換性能の向上を図ることができる。
【0046】
また、インナーフィン33としてストレートフィンを用いることで、インナーフィン33としてウェーブフィンを用いる場合に対して、積層型熱交換器の構成を簡素な構成とすることができる。その結果、簡素な構成で、熱交換性能の向上を図ることができる。また、インナーフィン33をローラ成形にて形成することができるので、積層型熱交換器を容易に大量生産することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、1つのインナーフィン33において外側流れ形成板部34Aおよび内側流れ形成板部34Bを交互に配置しているので、流路管3内の熱媒体の混合をより促進することができ、熱交換性能をより確実に向上させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、1つのインナーフィン33における外側流れ形成板部34Aおよび内側流れ形成板部34Bの配置が異なっている。図5は、本第2実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうちの1つの山部8(以下、反転山部80という)において、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が互いに反転している。一方、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうち反転山部80以外の山部8においては、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が同じになっている。換言すると、1つのインナーフィン33において、熱媒体流れ上流側(図5における左側)に外側流れ形成板部34Aが複数配置されており、熱媒体流れ下流側に内側流れ形成板部34Bが複数配置されている。
【0050】
本実施形態によっても、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、1つのインナーフィン33における外側流れ形成板部34Aおよび内側流れ形成板部34Bの配置が異なっている。図6は、本第3実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【0052】
図6に示すように、本実施形態では、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうち一部の山部8において、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が互いに反転している。より詳細には、1つのインナーフィン33において、外側流れ形成板部34Aおよび内側流れ形成板部34Bが、それぞれ2つずつ交互に配置されている。
【0053】
本実施形態によっても、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図7に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態と比較して、1つの板部34に形成される複数のルーバ5の捻り方向が全て同じになっている点が異なるものである。図7は、本第4実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【0055】
図7に示すように、本実施形態では、インナーフィン33の板部34において、一側ルーバ群に属するルーバ5の捻り方向と、他側ルーバ群に属するルーバ5の捻り方向とが同じになっている。また、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52は、捻り方向が互いに反転している。
【0056】
より詳細には、1つのインナーフィン33における隣り合う2つの板部34のうち、一方の板部34に形成されるルーバ5により、流路管幅方向の一側に向かう熱媒体流れが形成され、他方の板部34に形成されるルーバ5により、流路管幅方向他側に向かう熱媒体流れが形成される。また、1つのインナーフィン33において、流路管幅方向一側に向かう熱媒体流れを形成するルーバ5が設けられた板部34(以下、一側流れ形成板部34Cという)と、流路管幅方向他側に向かう熱媒体流れを形成するルーバ5が設けられた板部34(以下、他側流れ形成板部34D)とが、交互に配置されている。
【0057】
本実施形態によっても、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図8に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第4実施形態と比較して、1つのインナーフィン33における一側流れ形成板部34Cおよび他側流れ形成板部34Dの配置が異なっている。図8は、本第5実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【0059】
図8に示すように、本実施形態では、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうちの1つの山部8(以下、反転山部81という)において、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が互いに反転している。一方、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうち反転山部81以外の山部8においては、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が同じになっている。換言すると、1つのインナーフィン33において、熱媒体流れ上流側(図8における左側)に一側流れ形成板部34Cが複数配置されており、熱媒体流れ下流側に他側流れ形成板部34Dが複数配置されている。
【0060】
本実施形態によっても、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図9に基づいて説明する。本第6実施形態は、上記第4実施形態と比較して、1つのインナーフィン33における一側流れ形成板部34Cおよび他側流れ形成板部34Dの配置が異なっている。図9は、本第6実施形態に係る積層型熱交換器1のインナーフィン33を流路管積層方向から見た模式的な平面図である。
【0062】
図9に示すように、本実施形態では、1つのインナーフィン33を構成する複数の山部8のうち一部の山部8において、流路管長手方向に互いに対向している第1ルーバ51および第2ルーバ52の捻り方向が互いに反転している。より詳細には、1つのインナーフィン33において、一側流れ形成板部34Cおよび他側流れ形成板部34Dが、それぞれ2つずつ交互に配置されている。
【0063】
本実施形態によっても、流路管3内に流路管幅方向の熱媒体流れを形成することができるので、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0065】
(1)上述の実施形態では、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5と他側ルーバ群50Bに属するルーバとを、中央平面部73を挟んで対称形状とした例について説明したが、これに限らず、一側ルーバ群50Aに属するルーバ5と他側ルーバ群50Bに属するルーバとが、中央平面部73を挟んで非対称形状となっていてもよい。
【0066】
(2)上述の実施形態では、1つの流路管3内に2つのインナーフィン33を積層配置した例について説明したが、これに限らず、1つの流路管3内に1つのインナーフィンを配置してもよい。この場合におけるインナーフィンのフィン高さは、第1〜第4実施形態のインナーフィン33のフィン高さの約2倍となっている。また、1つの流路管3内に3つ以上のインナーフィン33を積層配置してもよい。
【符号の説明】
【0067】
2 電子部品(熱交換対象物)
3 流路管
4 連通部材
5 ルーバ
6 貫通孔
8 山部
33 インナーフィン
34 板部
35 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流通する熱媒体流路を有する複数の流路管(3)と、
前記複数の流路管(3)を連通する連通部材(4)とを備え、
前記複数の流路管(3)は、前記流路管(3)と交互に配置される熱交換対象物(2)を両面から挟持できるように積層配置されている積層型熱交換器であって、
前記流路管(3)の長手方向および前記流路管(3)の積層方向に対してともに直交する方向を、流路管幅方向としたとき、
前記流路管(3)内には、前記熱媒体と前記流路管(3)との伝熱面積を増大させるインナーフィン(33)が設けられており、
前記インナーフィン(33)は、前記流路管幅方向に延びる複数の板部(34)と、隣り合う前記板部(34)間を繋ぐ頂部(35)とを有し、前記流路管幅方向に直交する断面形状が波状となるとともに、前記流路管(3)の積層方向に直交する断面形状が直線状となるストレートフィンであり、
前記インナーフィン(33)の前記板部(34)には、当該板部(34)の一部を切り起こすことにより形成されたルーバ(5)が前記流路管幅方向に沿って複数設けられており、
前記ルーバ(5)は、前記板部(34)に対して予め定めた捻り角度(θ)で捻られており、
前記インナーフィン(33)の前記板部(34)には、前記ルーバ(5)を設けることにより、熱媒体が流通可能な複数の貫通孔(6)が形成されており、
前記インナーフィン(33)における、1つの前記頂部(35)と、当該頂部(35)に接続される2つの前記板部(34)とから構成される部分を山部(8)とし、
1つの前記山部(8)を構成する一方の前記板部(34)に形成される前記ルーバ(5)を第1ルーバ(51)とし、他方の前記板部(34)に形成される前記ルーバ(5)を第2ルーバ(52)としたとき、
1つの前記インナーフィン(33)を構成する複数の前記山部(8)のうち少なくとも1つの前記山部(8)において、前記流路管(3)の長手方向に互いに対向している前記第1ルーバ(51)および前記第2ルーバ(52)は、捻り方向が反転していることを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項2】
前記インナーフィン(33)は、ローラ成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型熱交換器。
【請求項3】
前記ルーバ(5)の前記板部(34)に対する捻り角度(θ)は、0°より大きく、かつ、90°より小さいことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の積層型熱交換器。
【請求項4】
前記インナーフィン(33)は、前記流路管(3)の積層方向に複数積層されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型熱交換器。
【請求項5】
前記インナーフィン(33)は、前記流路管(3)内に1つ配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−242089(P2011−242089A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116547(P2010−116547)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】