説明

積層型電子部品およびその製造方法

【課題】部品本体における複数の内部電極の露出端に析出しためっき析出物を成長させることによって、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜を形成した後、熱処理すると、部品本体中のめっき液等の水分が蒸発除去されるが、めっき膜の存在により、水分の放出が妨げられるばかりでなく、めっき膜にブリスタ(膨れ不良)が生じることがある。
【解決手段】内部電極5,6の引出し部9,12に、露出端10,13を複数の部分に分割するための切込み15,16を形成する。それによって、めっき膜17,18には、切込み15,16の位置において積層方向に延びるスリット19,20が形成される。スリット19,20は、水分の放出経路を提供し、熱処理の際、部品本体2の内部から水分をより抜けやすくし、めっき膜17,18にブリスタを生じにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層型電子部品およびその製造方法に関するもので、特に、外部電極が複数の内部電極と電気的に接続されるようにして直接めっきにより形成された積層型電子部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサに代表される積層型電子部品は、一般に、たとえば誘電体セラミックからなる積層された複数の機能材料層と、機能材料層間の界面に沿って形成された複数の層状の内部電極とを含む、積層構造の部品本体を備えている。部品本体のたとえば一方および他方端面には、それぞれ、複数の内部電極の各端部が露出していて、これら内部電極の各端部を互いに電気的に接続するように、外部電極が形成されている。
【0003】
外部電極の形成にあたっては、一般に、金属成分とガラス成分とを含む導電性ペーストを部品本体の端面上に塗布し、次いで焼き付けることにより、ペースト電極層がまず形成される。ペースト電極層は、内部電極相互の電気的接続の役割を果たす。次に、ペースト電極層上に、たとえばニッケルを主成分とする第1のめっき層が形成され、さらにその上に、たとえば錫または金を主成分とする第2のめっき層が形成される。第2のめっき層は、はんだぬれ性を確保するためのものであり、第1のめっき層は、はんだ接合時のはんだ喰われを防止する役割を果たしている。
【0004】
上述のように、外部電極は、典型的には、ペースト電極層、第1のめっき層および第2のめっき層の3層構造より構成される。
【0005】
しかし、ペースト電極層は、その厚みが数十μm〜数百μmと大きい。したがって、積層型電子部品の寸法を一定の規格値に収めるためには、このペースト電極層の体積を確保する必要が生じる分、不所望にも、静電容量確保のための実効体積を減少させる必要が生じる。一方、めっき層はその厚みが数μm程度であるため、仮にめっき層のみで外部電極を構成できれば、静電容量確保のための実効体積をより多く確保することができる。
【0006】
たとえば、特開昭63−169014号公報(特許文献1)には、部品本体の、内部電極が露出した側壁面の全面に対し、側壁面に露出した内部電極が短絡されるように、無電解めっきによって導電性金属膜を析出させ、この導電性金属膜を外部電極とすることが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている外部電極の形成方法では、内部電極の露出した端部に直接めっきを行なうため、内部電極と絶縁体層との間の界面に沿って部品本体中にめっき液が浸入することがある。また、めっき液以外の水分が部品本体中に浸入することもある。
【0008】
他方、外部電極となるめっき膜の、部品本体への固着力強化を目的として、めっき工程の後に800℃程度以上の温度で熱処理を行なうことがある。この場合、通常であれば、部品本体中の水分は熱処理によって蒸発除去されることになる。しかしながら、めっき工程の後では、部品本体中の水分の放出経路がめっき膜によって覆われており、そのため、水分の放出が妨げられるばかりでなく、めっき膜にブリスタ(膨れ不良)が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−169014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記のような問題点を解決し得る積層型電子部品およびその製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、複数の内部電極が内部に形成された、積層構造の部品本体と、複数の内部電極に電気的に接続されるように部品本体の外表面上に直接形成された、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜とを備え、各内部電極は、主要部と主要部から延びる引出し部とを有し、引出し部の端部には、上記めっき膜と接触するように部品本体の外表面に露出する露出端が形成されている、積層型電子部品にまず向けられる。
【0012】
このような積層型電子部品において、上述した技術的課題を解決するため、各引出し部には、露出端を複数の部分に分割するための切込みが形成されていて、複数の引出し部に形成された複数の切込みは、部品本体の積層方向に整列しており、めっき膜には、切込みの位置において積層方向に延びるスリットが形成されていることを特徴としている。
【0013】
上述した切込みによって分割された露出端の各部分の長手方向寸法は0.6mm以下であることが好ましい。
【0014】
また、切込みの開放端の幅方向寸法は10μm以下であることが好ましい。
【0015】
また、外部電極は、上記スリットを埋める状態でめっき膜上に形成される上層めっき膜をさらに含むことが好ましい。
【0016】
この発明は、上記外部電極として、第1および第2の外部電極を備え、上記内部電極として、第1の外部電極に電気的に接続される複数の第1の内部電極と第2の外部電極に電気的に接続される複数の第2の内部電極とを備え、第1および第2の外部電極ならびに第1および第2の内部電極の各露出端が、部品本体の1つの面上に位置される、積層型電子部品において有利に適用される。
【0017】
この発明は、また、積層型電子部品の製造方法にも向けられる。
【0018】
この発明に係る積層型電子部品の製造方法は、複数の内部電極が内部に形成された、積層構造の部品本体を準備する、部品本体準備工程と、複数の内部電極に電気的に接続されるように、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜を部品本体の外表面上に直接形成する、外部電極形成工程とを備える。
【0019】
上記部品本体準備工程において準備される部品本体に形成された各内部電極は、主要部と主要部から延びる引出し部とを有し、引出し部の端部には、めっき膜と接触するように部品本体の外表面に露出する露出端が形成されていて、各引出し部には、露出端を複数の部分に分割するための切込みが形成されていて、複数の引出し部に形成された複数の切込みは、部品本体の積層方向に整列している。
【0020】
上記外部電極形成工程は、各露出端に析出しためっき析出物を少なくとも積層方向に成長させることによって、切込みの位置において積層方向に延びるスリットが形成されるようにめっき膜を形成する、めっき工程を含む。
【0021】
さらに、この発明に係る製造方法は、めっき工程の後、部品本体を熱処理する、熱処理工程を備える。
【0022】
上記外部電極形成工程は、熱処理工程の後、スリットを埋めながらめっき膜上に上層めっき膜を形成する工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、内部電極の引出し部には、露出端を複数の部分に分割する切込みが形成され、その結果、この切込みの位置に対応して、めっき膜にスリットが形成される。このスリットは、水分の放出経路となり得るものである。そのため、部品本体の内部にある水分の放出経路の長さを考えたとき、めっき膜にスリットが形成されない場合に比べて、この発明のように、めっき膜にスリットが形成されると、水分の放出経路の長さをより短くすることができ、熱処理の際、部品本体の内部から水分をより抜けやすくすることができる。したがって、この発明によれば、熱処理の結果、めっき膜にブリスタが生じることを有利に抑制することができる。
【0024】
この発明において、上記切込みによって分割された露出端の各部分の長手方向寸法が0.6mm以下であると、上記の効果がより確実に奏される。
【0025】
また、上記切込みの開放端の幅方向寸法が10μm以下であると、めっき膜のスリットを埋める状態でめっき膜上に上層めっき膜を形成するに際して、下地のめっき膜のスリットを架橋するように上層めっき膜をめっき成長させることがより容易になる。
【0026】
上述のように、外部電極が、スリットを埋める状態で下地のめっき膜上に形成される上層めっき膜をさらに含んでいると、各外部電極の表面が分割されず一様な膜によって与えられるので、たとえばリフローはんだによる積層型電子部品の実装性、特に位置合わせ精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態による積層型電子部品1に備える部品本体2の内部構造を示す平面図であり、(A)は第1の内部電極5が位置する面に沿う断面を示し、(B)は第2の内部電極6が位置する面に沿う断面を示す。
【図2】図1に示した部品本体2の正面図である。
【図3】図1(A)に対応する図であって、部品本体2に外部電極3および4の一部となる下地めっき膜17および18を形成した状態を示す平面図であり、第1の内部電極5が位置する面に沿う断面を示す。
【図4】図3に示した段階にある部品本体2の正面図である。
【図5】図1(A)に対応する図であって、図3に示した下地めっき膜17および18上に上層めっき膜21および22を形成した状態を示す平面図であり、第1の内部電極5が位置する面に沿う断面を示す。
【図6】図5に示した段階にある部品本体2、すなわち完成品としての積層型電子部品1の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、図6に示すように、この発明の一実施形態による積層型電子部品1は、部品本体2を備え、部品本体2の外表面上には第1および第2の外部電極3および4が形成される。
【0029】
部品本体2は、図1および図2に示すように、その内部に複数の第1の内部電極5および複数の第2の内部電極6を形成している。より詳細には、部品本体2は、積層された複数の機能材料層7をもって構成される積層構造を有し、第1および第2の内部電極5および6は、機能材料層7間の界面に沿って形成される。第1の内部電極5と第2の内部電極6とは、積層方向に見て交互に配置される。内部電極5および6は、たとえば、ニッケルを主成分としている。
【0030】
積層型電子部品1が積層セラミックコンデンサを構成するとき、機能材料層7は、誘電体セラミックから構成される。なお、積層型電子部品1は、その他、インダクタ、サーミスタ、圧電部品などを構成するものであってもよい。したがって、積層型電子部品1の機能に応じて、機能材料層7は、誘電体セラミックの他、磁性体セラミック、半導体セラミック、圧電体セラミックなどから構成されてもよく、さらには、セラミック以外のたとえば樹脂を含む材料から構成されてもよい。
【0031】
第1の内部電極5は、図1(A)に示すように、主要部8と主要部8から延びる引出し部9とを有し、引出し部9の端部には、部品本体2の外表面に露出する露出端10が形成されている。第2の内部電極6は、図1(B)に示すように、主要部11と主要部11から延びる引出し部12とを有し、引出し部12の端部には、部品本体2の外表面に露出する露出端13が形成されている。この実施形態では、第1の内部電極5の露出端10および第2の内部電極6の露出端13ならびに第1および第2の外部電極3および4がともに部品本体2の1つの側面14に形成されているが、このことは、この発明にとって本質的なことではない。したがって、露出端や外部電極は部品本体2のいずれの面に形成されてもよい。
【0032】
第1および第2の内部電極5および6の引出し部9および12の各々には、それぞれ、露出端10および13の各々を複数の部分に分割するための切込み15および16が形成されている。また、図2に示すように、複数の第1の内部電極5の複数の引出し部9に形成された複数の切込み15は、部品本体2の積層方向に整列している。同様に、複数の第2の内部電極6の複数の引出し部12に形成された複数の切込み16も、部品本体2の積層方向に整列している。
【0033】
切込み15および16の形状は、図示のものでは、矩形とされたが、たとえば三角形のような他の形状とされてもよい。
【0034】
以下に、積層型電子部品1の製造方法、特に、外部電極3および4の形成方法を明らかにすることによって、外部電極3および4の構造を明らかにする。
【0035】
まず、上述したような構造を有する部品本体2を得た後、内部電極5および6の露出端10および13の露出を十分なものとするため、部品本体2の表面に対して研磨処理を施しておくことが好ましい。
【0036】
次に、図3および図4に示すように、外部電極3および4の下地となるめっき膜17および18が部品本体2の側面14上に直接形成される。この下地めっき膜17および18を形成するためのめっき方法は、めっき液中の金属イオンを通電によって析出させる電解めっき法であっても、還元剤を用いて析出させる無電解めっき法であってもよい。
【0037】
下地めっき膜17および18は、部品本体2における内部電極5および6の各々の露出端10および13に、めっき液中の金属イオンを析出させ、この析出しためっき析出物をさらに成長させ、内部電極5および6のそれぞれの隣り合う露出端10および13を積層方向に架橋する状態とすることによって形成される。
【0038】
このとき、露出端10および13は、それぞれ、切込み15および16によって分断されているため、切込み15および16の位置では、露出端10および13の各端縁から側面14の延びる方向にめっき成長した分以外には、めっき膜が形成されない。したがって、下地めっき膜17および18には、それぞれ、切込み15および16の位置において積層方向に延びるスリット19および20が形成される。
【0039】
図4では、スリット19および20が部品本体2の積層方向に沿って延びる状態で形成されているが、スリット19および20は途中の任意の箇所で途絶えていてもよい。すなわち、下地めっき膜17および18は、それぞれ、スリット19および20で区画される各部分が一部互いにつながっていてもよい。
【0040】
上述した下地めっき膜17および18は、たとえば銅を主成分とすることが好ましい。銅は、良好な導電性を示し、かつめっき処理時のつきまわり性が良好であるので、めっき処理の能率化を図れ、かつ外部電極3および4の、部品本体2に対する固着力を高めることができるからである。
【0041】
図6に示すように、外部電極3および4は、部品本体2の側面14上に形成されるだけでなく、各々の端縁が側面14に隣接する1対の主面上にまで届くように形成されている。このような形態の外部電極3および4を能率的に形成することを可能にするため、図示しないが、部品本体2の主面の、側面14に隣接する端部上ならびに/または部品本体2の外層部に、ダミー導体が形成されてもよい。このようなダミー導体は、電気的特性の発現に実質的に寄与するものではないが、めっき膜の形成のための金属イオンの析出をもたらし、かつめっき成長を促進するように作用する。
【0042】
次に、洗浄が行なわれた後、部品本体2が熱処理される。熱処理温度としては、たとえば600℃以上、好ましくは800℃以上の温度が採用される。この熱処理は、下地めっき膜17および18の、部品本体2への固着力強化を目的とするばかりでなく、部品本体2中のめっき液等の水分を蒸発除去することを目的としている。蒸発除去されるべき水分の少なくとも一部は、下地めっき膜17および18に形成されたスリット19および20を通して外部に放出される。したがって、このようなスリットが形成されない場合に比べると、部品本体2の内部から水分をより抜けやすくすることができる。そのため、めっき膜17および18にブリスタを生じにくくすることができる。
【0043】
上述したスリット19および20は、下地めっき膜17および18の連続して延びる部分の寸法をより小さくすることによって、水分の放出経路をより短くし、その結果、水分の放出効果をより高めるように作用する。したがって、水分の放出効果をより高めるためには、下地めっき膜17および18の、スリット19および20によって分割される各部分の寸法をより小さくすることが有効である。下地めっき膜17および18の、スリット19および20によって分割される各部分の寸法をより小さくするには、引出し部9および12の切込み15および16によって分割された露出端10および13の各部分の長手方向寸法L1およびL2(図2参照)をより短くすればよい。後述する実験例からわかるように、切込み15および16によって分割された露出端10および13の各部分の長手方向寸法L1およびL2は、いずれも、0.6mm以下であることが、水分の放出効果を高めるのに有効である。
【0044】
また、切込みによって分割された露出端の各部分の長手方向寸法をより短くするため、1個の引出し部において複数の切込みを形成し、露出端を3分割以上の分割としてもよい。
【0045】
次に、必要に応じて、上記下地めっき膜17および18上に、図5に示すように、上層めっき膜21および22がそれぞれ形成される。上層めっき膜21および22は、下地めっき膜17および18にあるスリット19および20を埋めるように形成されることが好ましい。上層めっき膜21および22は、たとえば、ニッケルを主成分とするめっき層からなるはんだバリア層と、はんだぬれ性を付与するためにはんだバリア層上に形成される、錫または金を主成分とするめっき層からなるはんだぬれ性付与層とからなる2層構造とされる。
【0046】
このように、上層めっき膜21および22が形成されると、外部電極3および4の各々の表面が分割されず一様な膜によって与えられることになるので、後述する実験例からわかるように、たとえばリフローはんだによる積層型電子部品1の実装性、特に位置合わせ精度を高めることができる。
【0047】
また、上層めっき膜21および22を形成するにあたり、下地めっき膜21および22のスリット19および20を架橋するように上層めっき膜21および22をめっき成長させることをより容易にするには、後述する実験例からわかるように、引出し部9および12に形成される切込み15および16の開放端の幅方向寸法W(図1参照)を10μm以下にし、それによって、下地めっき膜17および18のスリット19および20の幅方向寸法をより短くすることが好ましい。
【0048】
上述の上層めっき膜21および22の形成の後、洗浄が行なわれ、積層型電子部品1が完成される。
【0049】
なお、図示した積層型電子部品1は、2個の外部電極3および4を備える2端子型のものであるが、この発明は3端子以上の多端子型の積層型電子部品にも適用することができる。
【0050】
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0051】
この実験例では、以下のような工程に従って、試料となる積層セラミックコンデンサを作製した。
【0052】
(1)部品本体準備
(2)電解銅めっきによる下地めっき膜形成
(3)熱処理
(4)電解ニッケルめっきによる上層めっき膜形成
(5)電解錫めっきによる上層めっき膜形成
上記(1)〜(5)の各工程の詳細は以下のとおりである。
【0053】
(1)部品本体準備
図1および図2に示すような構造を有する積層セラミックコンデンサ用部品本体として、表1に示すような試料1〜5の各々に係る部品本体を準備した。
【0054】
試料1〜5の各々に係る部品本体は、共通して、長さ3.2mm、幅1.6mmおよび高さ1.6mmであって、機能材料層がチタン酸バリウム系誘電体セラミックからなり、内部電極がニッケルを主成分とし、隣り合う内部電極間の機能材料層の厚みが6μmであり、内部電極の積層数が431であった。
【0055】
また、試料1〜5の各々において、内部電極の引出し部の切込みの開放端の幅方向寸法は、表1の「切込み幅」の欄に示すとおりとし、露出端の切込みによって分割された各部分の長手方向寸法は、表1の「露出端長さ」の欄に示すとおりとした。表1の「露出端長さ」における「L1」および「L2」は、図2に示した「L1」および「L2」に対応している。なお、試料4については、引出し部に切込みを形成せず、よって、表1では、「切込み幅」が0であり、「L1」が1mmおよび「L2」が0mmであると表示した。
【0056】
いずれの部品本体についても、焼成後、バレル研磨を実施し、内部電極の露出端を十分に露出させた。
【0057】
(2)電解銅めっきによる下地めっき膜形成
次に、各試料につき、500個の部品本体を、容積300mlの水平回転バレル中に投入し、それに加えて、直径0.7mmのメディアを100ml投入し、バレルを周速2.6m/分にて回転させながら、電解銅めっきを実施した。
【0058】
この電解銅めっきでは、まず、以下のCuストライク浴を用いながら、電流密度を0.10A/dmとし、約1μmの膜厚が得られるまで、Cuストライクめっきを実施した。
〈Cuストライク浴〉
・ピロリン酸銅:14g/L
・ピロリン酸:120g/L
・シュウ酸カリウム:10g/L
・pH:8.7
・浴温:25℃。
【0059】
次いで、純水による洗浄を実施した後、以下のCu厚付け浴を用いながら、電流密度を0.30A/dmとし、約5μmの膜厚が得られるまで、Cu厚付けめっきを実施した。
〈Cu厚付け浴〉
・上村工業社製「ピロブライトプロセス」
・pH:8.6
・浴温:55℃。
【0060】
次いで、純水による洗浄を実施した。
【0061】
以上の電解銅めっきを終えた段階で、得られた下地めっき膜を観察したところ、試料1〜3および5では、内部電極の引出し部に形成された切込みの位置において、積層方向に延びるスリットが形成されていた。
【0062】
(3)熱処理
次に、窒素雰囲気中において、800℃の温度で20分間キープする熱処理を実施した。
【0063】
この熱処理を終えた段階で、表1に示すように、「ブリスタ発生率」を評価した。より詳細には、各試料について、500個の部品本体を金属顕微鏡で観察して、ブリスタが発生している部品本体の数を求め、ブリスタが発生している部品本体の数の比率を「ブリスタ発生率」として求めた。ここで、ブリスタが発生している部品本体とは、上記銅めっき膜において、直径20μm以上の膨れが1つ以上存在するものと定義した。
【0064】
(4)電解ニッケルめっきによる上層めっき膜形成
次に、各試料につき、30mlの部品本体を、容積300mlの水平回転バレル中に投入し、それに加えて、直径0.7mmのはんだボールを70ml投入し、バレル回転数20rpmにて回転させながら、電解ニッケルめっきを実施した。
【0065】
この電解ニッケルめっきでは、ワット浴(弱酸性Ni浴)を用い、浴温を60℃とし、pHを4.2とし、電流密度を0.20A/dmとしながら60分間通電し、約4μmの膜厚のニッケルめっき膜を得た。
【0066】
次いで、純水による洗浄を実施した。
【0067】
以上の電解ニッケルめっきを終えた段階で、試料1〜3および5について、下地めっき膜のスリットを埋めるような架橋がニッケルめっき膜によって達成されているか否かを評価した結果が、表1の「ニッケルめっき膜による架橋」の欄に示されている。「ニッケルめっき膜による架橋」の欄において、「○」は架橋が達成されていることを示し、「×」は架橋が達成されていないことを示している。
【0068】
(5)電解錫めっきによる上層めっき膜形成
次に、電解錫めっき浴として石原薬品社製「NB−RZS」を用い、浴温を30℃とし、pHを4.5とし、電流密度を0.10A/dmとしながら60分間通電し、約4μmの膜厚の錫めっき膜を得たことを除いて、上記電解ニッケルめっきと同じ装置および条件にて電解錫めっきを実施した。
【0069】
次いで、純水による洗浄を実施した。
【0070】
以上のようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表1に示すように、「セルフアライメント性」を評価した。「セルフアライメント性」は、積層セラミックコンデンサを基板のランドの中心から長手方向へ0.15mmずらして載置し、リフロー後の積層セラミックコンデンサの位置を観察し、積層セラミックコンデンサが基板のランドの中心に戻っていないものを不良と判定し、表1において、50個中、1個以上の積層セラミックコンデンサについて不良と判定された場合を「×」で示し、それ以外の場合を「○」で示した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1からわかるように、試料4では、「露出端長さ」が0.6mmを超える1mmであり、しかも切込みが形成されなかったため、「セルフアライメント性」は「○」であったものの、「ブリスタ発生率」は100%となった。
【0073】
これに対して、試料1〜3および5では、切込みが形成され、よって下地めっき膜となる銅めっき膜にスリットが形成されたため、「ブリスタ発生率」を30%以下に低減できた。
【0074】
特に、試料1、2および5では、「露出端長さ」が「L1」および「L2」とも0.6mm以下であるため、「ブリスタ発生率」を0%とすることができた。
【0075】
また、試料1〜3では、「切込み幅」を10μm以下としたため、「ニッケルめっき膜による架橋」が「○」となり、応じて「セルフアライメント性」が「○」となった。
【符号の説明】
【0076】
1 積層型電子部品
2 部品本体
3,4 外部電極
5,6 内部電極
7 機能材料層
9,12 引出し部
10,13 露出端
14 側面
15,16 切込み
17,18 下地めっき膜
19,20 スリット
21,22 上層めっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極が内部に形成された、積層構造の部品本体と、
複数の前記内部電極に電気的に接続されるように前記部品本体の外表面上に直接形成された、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜と
を備え、
各前記内部電極は、主要部と前記主要部から延びる引出し部とを有し、前記引出し部の端部には、前記めっき膜と接触するように前記部品本体の外表面に露出する露出端が形成されている、
積層型電子部品であって、
各前記引出し部には、前記露出端を複数の部分に分割するための切込みが形成されていて、複数の前記引出し部に形成された複数の前記切込みは、前記部品本体の積層方向に整列しており、
前記めっき膜には、前記切込みの位置において前記積層方向に延びるスリットが形成されている、
積層型電子部品。
【請求項2】
前記切込みによって分割された前記露出端の各部分の長手方向寸法は0.6mm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記切込みの開放端の幅方向寸法は10μm以下である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記外部電極は、前記スリットを埋める状態で前記めっき膜上に形成される上層めっき膜をさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記外部電極は、第1および第2の外部電極を備え、前記内部電極は、前記第1の外部電極に電気的に接続される複数の第1の前記内部電極と前記第2の外部電極に電気的に接続される複数の第2の前記内部電極とを備え、前記第1および第2の外部電極ならびに前記第1および第2の内部電極の各前記露出端は、前記部品本体の1つの面上に位置される、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項6】
複数の内部電極が内部に形成された、積層構造の部品本体を準備する、部品本体準備工程と、
複数の前記内部電極に電気的に接続されるように、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜を前記部品本体の外表面上に直接形成する、外部電極形成工程と
を備え、
前記部品本体準備工程において準備される前記部品本体に形成された各前記内部電極は、主要部と前記主要部から延びる引出し部とを有し、前記引出し部の端部には、前記めっき膜と接触するように前記部品本体の外表面に露出する露出端が形成されていて、各前記引出し部には、前記露出端を複数の部分に分割するための切込みが形成されていて、複数の前記引出し部に形成された複数の前記切込みは、前記部品本体の積層方向に整列しており、
前記外部電極形成工程は、各前記露出端に析出しためっき析出物を少なくとも前記積層方向に成長させることによって、前記切込みの位置において前記積層方向に延びるスリットが形成されるように前記めっき膜を形成する、めっき工程を含み、
前記めっき工程の後、前記部品本体を熱処理する、熱処理工程をさらに備える、
積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記外部電極形成工程は、前記熱処理工程の後、前記スリットを埋めながら前記めっき膜上に上層めっき膜を形成する工程をさらに含む、請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142478(P2012−142478A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−388(P2011−388)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】