説明

積層型高周波モジュール

【課題】アナログ回路部とデジタル回路部とを有しながらも、特性を劣化させることなく小型化が可能な積層型高周波モジュールを実現する。
【解決手段】積層体100は、複数の誘電体層101−118を積層してなる。誘電体層101−103は下層領域であり、デジタル回路が配設される。誘電体層104−115は中間層領域であり、デジタル回路とアナログ回路とが、積層体10を平面視して重ならないように配設される。誘電体層116−118は上層領域であり、デジタル回路が配設される。上層領域の上部にあたる積層体100の天面には、デジタルICが実装されている。下層領域と中間層領域との間には内層グランド電極401が略全面に配設され、中間層領域と上層領域との間には内層グランド電極402が略全面に配設される。中間層領域では、デジタル配線と内層グランド電極が積層方向に交互に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定機能の高周波回路が積層体および該積層体に実装されるICにより一体形成された積層型高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数の通信仕様に対応可能な高周波モジュールが各種考案されている。このような高周波モジュールの中には、Bluetooth(登録商標)やW−LAN(無線LAN)用のデジタルICを備えるものがある。このようなデジタルICを用いる場合、当該デジタルICを含むデジタル回路部と、BPF(バンドパスフィルタ)等のRF処理部を含むアナログ回路部とを、高周波モジュールに備えなればならない。この際、デジタル回路部とアナログ回路部とが、互いに電磁干渉しないように構造的な工夫を行わなければ、高周波モジュールとしての特性が劣化してしまう。
【0003】
このため、例えば、特許文献1の高周波モジュールでは、デジタル回路部とアナログ回路部とを完全に分離して個別に形成し、それぞれのグランド電極が、平面視して重なるように配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−145570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の高周波モジュールでは、デジタル回路部とアナログ回路部とを完全に分離して形成するため、例えば、デジタル回路部に、アナログ回路の形成可能な大きさのスペースがあっても、当該スペースにアナログ回路を形成することはできない。したがって、高周波モジュールを小型化することが、容易ではなかった。
【0006】
この発明の目的は、アナログ回路部とデジタル回路部とを有しながらも、特性を劣化させることなく小型化が可能な積層型高周波モジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、それぞれの上面もしくは下面の少なくとも一方の面に所定の電極パターンが形成された誘電体層を積層してなる積層体を含む積層型高周波モジュールに関する。この積層型高周波モジュールでは、積層体の上層領域と下層領域とに、デジタル回路用電極パターンが形成されている。上層領域と下層領域とによって積層方向に挟まれる中間層領域には、デジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンとが形成されている。中間層領域におけるデジタル回路用電極パターンの形成領域とアナログ回路用電極パターンの形成領域とは、積層体を平面視して個別の領域に配置されている。中間層領域と上層領域、および中間層領域と下層領域の間には、積層体を平面視して略全面に形成された第1の内層グランド電極が形成されている。
【0008】
この構成では、単一の積層体内に、デジタル回路部とアナログ回路部とが同時に形成される。中間層領域では、積層体を平面視した状態で、デジタル回路用電極パターンの形成領域とアナログ回路用電極パターンの形成領域とが重ならないように配置されている。したがって、これら中間層領域でのデジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンの電磁界結合が抑制される。また、中間層領域のアナログ回路用電極パターンの形成領域と、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターンの形成領域とは、積層体を平面視した状態で重なり合うものの、これらの間には略全面にグランド電極が配置されているので、これら中間層領域のアナログ回路用電極パターンと上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターンとの間の電磁界結合も抑制される。
【0009】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、中間層領域のデジタル回路用電極パターンは複数層に形成されている。各層のデジタル回路用電極パターンの間には、第2の内層グランド電極が形成されている。
【0010】
この構成では、各層のデジタル回路用電極パターンが、アナログ回路用電極パターンとよりも、平面視して重なり合う第2の内層グランド電極と強く電磁界結合する。これにより、デジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンとの電磁界結合を、さらに抑制することができる。
【0011】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、第2の内層グランド電極は、積層方向から見てデジタル回路用電極パターンの形成領域にのみ形成されている。
【0012】
この構成では、第2の内層グランド電極とアナログ回路用電極パターンとが、積層体を平面視して重なり合わない。これにより、第2の内層グランド電極とアナログ回路用電極パターンとの電磁界結合を抑制することができる。
【0013】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターンの電極形成密度は、中間層領域のデジタル回路用電極パターンの電極形成密度よりも高い。
【0014】
この構成では、アナログ回路用電極パターンと異なる層領域で且つ第1の内層グランド電極を介して配設される上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターンを高密度化することで、アナログ回路用電極パターンとデジタル回路用電極パターンとの電磁界結合を抑制しながらも、積層体の低背化、小型化が可能になる。
【0015】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、中間層領域におけるデジタル回路用電極パターンの形成領域とアナログ回路用電極パターンの形成領域との間には、第1の内層グランド電極に導通する導電性ビアが形成されている。
【0016】
この構成では、中間層領域のデジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンとの間にグランドに導通する導電性ビアが存在することで、中間層領域のデジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンとの間の電磁界結合を、さらに抑制することができる。
【0017】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、積層方向から見て、中間層領域のアナログ回路用電極パターンの形成領域における積層体の側壁側には、第1の内層グランド電極に導通する第2の導電性ビアが形成されている。
【0018】
この構成では、アナログ回路用電極パターンが、グランドに接続する導電性ビアに挟まれる構造となる。これにより、さらにアナログ回路用電極パターンと、それ以外の回路要素(例えば、上層領域や下層領域のデジタル回路用電極パターンや、実装されるIC等)や、積層体外の回路要素との電磁界結合を抑制できる。
【0019】
また、この発明の積層型高周波モジュールでは、中間層領域のデジタル回路用電極パターンの形成領域に、第1の内層グランド電極および第2の内層グランド電極にそれぞれ導通する複数の第3の導電性ビアが形成されている。
【0020】
この構成では、中間層領域のデジタル回路用電極パターンに近接して、グランドに接続する複数の導電性ビアが配設される構造となる。これにより、中間層領域のデジタル回路のグランドがより安定するとともに、デジタル回路用電極パターンが他の回路要素と電磁界結合することをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、アナログ回路部とデジタル回路部とを兼ね備え、優れた通信特性を有する小型の積層型高周波モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る積層型高周波モジュールの回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る積層型高周波モジュールの積層構造を概略的に示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る積層型高周波モジュールの各層の平面図を示す積み図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る積層型高周波モジュールについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、FM変調通信信号と、Bluetooth通信信号と、W−LAN通信信号とを、送受信する積層型高周波モジュールを例に説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係る積層型高周波モジュール10の回路構成を示す図である。図2は本実施形態に係る積層型高周波モジュール10の積層構造を概略的に示す側面断面図である。図3は本実施形態に係る積層型高周波モジュール10の各層の平面図を示す積み図である。
【0025】
積層型高周波モジュール10は、デジタル回路ICであるベースバンドIC21およびフロントエンドIC22を含むデジタル回路部200と、BPF(バンドパスフィルタ)31B,31Wを含むアナログ回路部300とを有する。
【0026】
ベースバンドIC21は、図示しないDC−DCコンバータからの電源供給を受けて駆動する。ベースバンドIC21は、FM送信信号をアンテナ90txを介して送信し、FM受信信号をアンテナ90rxを介して受信する。ベースバンドIC21は、Bluetooth通信信号を、BPF31Bおよびアンテナ90Bを介して送受信する。ベースバンドIC21は、W−LAN通信信号を、フロントエンドIC22、BPF31Wおよびアンテナ90Wを介して送受信する。
【0027】
フロントエンドIC22は、スイッチIC、アンプ、フィルタ等を備える。フロントエンドIC22は、W−LAN送信時には、ベースバンドIC21からのW−LAN通信信号を、フィルタ処理および増幅処理してBPF31Wへ出力する。フロントエンドIC22は、W−LAN受信時には、BPF31WからのW−LAN通信信号をフィルタ処理してベースバンドIC21へ出力する。
【0028】
これらデジタル回路部200およびアナログ回路部300を有する積層型高周波モジュール10は、図2に示すように、積層体100および当該積層体100の天面に実装された実装型回路素子(図2におけるベースバンドIC21およびフロントエンドIC22に相当する。)によって実現される。
【0029】
積層体100は、複数の誘電体層を積層した構造からなる。本実施形態では、図2、図3に示すように、18層の誘電体層101〜118を用いた例を示す。なお、図2、図3では、グランド接続用のビアホール以外は図示を省略しているが、積層体100の各誘電体層101〜118のそれぞれには、図1に示す積層型高周波モジュール10の回路を実現するように、複数のビアホールが形成されている。
【0030】
積層体の最下層である誘電体層101の下面には、複数の外部接続用ランド500ioおよび複数の外部グランド電極500Gが形成されている。複数の外部接続用ランド500ioは、下面の端辺に沿って配列形成されている。複数の外部グランド電極500Gは、誘電体層101の下面の略中央の領域に、配列形成されている。
【0031】
誘電体層102は、誘電体層101の上面側に配設されている。誘電体層102の上面には、デジタル回路用電極パターン201が形成されている。デジタル回路用電極パターン201は、誘電体層102の略全面に形成されている。
【0032】
誘電体層103は、誘電体層102の上面側に配設されている。誘電体層103の上面には、略全面に内層グランド電極401(本発明の「第1の内層グランド電極」に相当する。)が形成されている。内層グランド電極401は、誘電体層101〜103に形成された複数の導電性ビア401THを介して、外部グランド電極500Gに接続されている。
【0033】
誘電体層104,105,106は、電極パターンが形成されていない誘電体層であり、誘電体層103の上面側に、誘電体層104、誘電体層105、誘電体層106の順に積層して配設されている。これらの誘電体層104,105,106は、後述のデジタル回路用電極パターン203およびアナログ回路用電極パターン301と、誘電体層103の内層グランド電極401との間隔調整のための層である。そして、これら電極パターンを有さない誘電体層の積層数および厚さを適宜設定することで、例えば、アナログ回路用電極パターン301と内層グランド電極401とが所定間隔に形成され、アナログ回路用電極パターン301で形成する各回路素子(インダクタやキャパシタ)が所定の素子値となるように設定される。
【0034】
これら誘電体層101〜103により構成される部分積層部が、本発明の下層領域に相当する。
【0035】
誘電体層107は、誘電体層106の上面側に配設されている。誘電体層107の上面を半分に分割する一方の領域には、デジタル回路用電極パターン203が形成されている。なお、以下では、この一方の領域をデジタル配線領域ZnDと称する。誘電体層107の上面の他方の領域には、電極が形成されていない。なお、以下では、この他方の領域をアナログ配線領域ZnAと称する。
【0036】
誘電体層108は、誘電体層107の上面側に配設されている。誘電体層108のデジタル配線領域ZnDには、内層グランド電極403が形成されている。誘電体層108のアナログ配線領域ZnAには、アナログ回路用電極パターン301が形成されている。
【0037】
誘電体層109は、誘電体層108の上面側に配設されている。誘電体層109のデジタル配線領域ZnDには、デジタル回路用電極パターン203が形成されている。誘電体層109のアナログ配線領域ZnAには、アナログ回路用電極パターン301が形成されている。
【0038】
誘電体層110は、誘電体層109の上面側に配設されている。誘電体層110のデジタル配線領域ZnDには、内層グランド電極403が形成されている。誘電体層110のアナログ配線領域ZnAには、アナログ回路用電極パターン301が形成されている。
【0039】
誘電体層111は、誘電体層110の上面側に配設されている。誘電体層111のデジタル配線領域ZnDには、デジタル回路用電極パターン203が形成されている。誘電体層111のアナログ配線領域ZnAには、アナログ回路用電極パターン301が形成されている。
【0040】
誘電体層112は、誘電体層111の上面側に配設されている。誘電体層112のデジタル配線領域ZnDには、内層グランド電極403が形成されている。誘電体層112のアナログ配線領域ZnAには、電極が形成されていない。
【0041】
誘電体層113は、誘電体層112の上面側に配設されている。誘電体層113のデジタル配線領域ZnDには、デジタル回路用電極パターン203が形成されている。誘電体層113のアナログ配線領域ZnAには、電極が形成されていない。
【0042】
なお、誘電体層108,110,112に形成された内層グランド電極403は、各誘電体層に形成された複数の導電性ビア402THにより、互いに接続されている。また、誘電体層108の内層グランド電極403は、誘電体層104〜108に形成された導電性ビア402THにより、誘電体層103の上面の内層グランド電極401に接続されている。また、誘電体層112の内層グランド電極403は、誘電体層113〜115に形成された導電性ビア402THにより、後述する内層グランド電極402に接続されている。
【0043】
これら誘電体層104〜115により構成される部分と後述の誘電体層114,115とからなる部分積層部が、本発明の中間層領域に相当する。そして、中間層領域の誘電体層104〜115におけるアナログ配線領域ZnAにより、図1のアナログ回路形成領域300を構成することができる。
【0044】
そして、これら誘電体層104〜115から構成される中間層領域では、積層体100を平面視して(積層方向に沿った方向に見て)、デジタル回路用電極パターン203とアナログ回路用電極パターン301とが、重なり合わない異なる領域(デジタル配線領域ZnDおよびアナログ配線領域ZnA)に、それぞれ個別に形成されている。これにより、中間層領域内でのデジタル回路用電極パターン203とアナログ回路用電極パターン301との電磁界結合を抑制することができる。
【0045】
さらに、デジタル配線領域ZnDでは、デジタル回路用電極パターン203と内層グランド電極403とが積層方向に沿って交互に配設されているので、デジタル回路用電極パターン203に対して、内層グランド電極403がアナログ回路用電極パターン301よりも近接して配置される。これにより、デジタル回路用電極パターン203は、アナログ回路用電極パターン301とよりも、内層グランド電極403と、より強く電磁界結合し、デジタル回路パターンに対して安定したグランド特性が得られる。さらに、デジタル回路用電極パターン203とアナログ回路用電極パターン301との電磁界結合をさらに抑制することができる。
【0046】
またさらに、デジタル配線領域ZnDに複数の導電性ビア402THを形成することで、デジタル回路用電極パターン203のグランド特性をさらに向上させることができる。
【0047】
誘電体層114は、誘電体層113の上面側に配設されている。誘電体層114には、電極パターンが形成されていない。この誘電体層114は、上述の誘電体層104,105,106と同様に、デジタル回路用電極パターン203およびアナログ回路用電極パターン301と、後述する誘電体層115の内層グランド電極402との間隔調整のための層である。
【0048】
誘電体層115は、誘電体層114の上面側に配設されている。誘電体層115には、略全面に内層グランド電極402(本発明の「第1の内層グランド電極」に相当する。)が形成されている。内層グランド電極402は、誘電体層113〜115に形成された複数の導電性ビア402THを介して、誘電体層112の内層グランド電極403に接続されている。
【0049】
また、内層グランド電極402は、誘電体層104〜115に形成された導電性ビア400THにより、誘電体層103の内層グランド電極401に接続している。この際、導電性ビア400THは、中間層領域のデジタル配線領域ZnDとアナログ配線領域ZnAとの境界面付近に形成されている。このような位置に導電性ビア400THを形成することで、中間層領域のデジタル回路用電極パターン203とアナログ回路用電極パターン301との間に導電性ビア400THからなるグランドが配設される。これにより、中間層領域でのデジタル回路用電極パターン203とアナログ回路用電極パターン301との電磁界結合を、さらに抑制することができる。なお、詳細は図示していないが、導電性ビア400THは、中間層領域のデジタル配線領域ZnDとアナログ配線領域ZnAとの境界面(図2の奥行き方向)に沿って、所定間隔で複数本形成すると、より電磁界結合を抑制することができ、有効である。また、このような中間層領域のデジタル配線領域ZnDとアナログ配線領域ZnAとの境界面付近の導電性ビア400THは、特性や仕様に応じて省略することも可能である。
【0050】
誘電体層116は、誘電体層115の上面側に配設され、誘電体層117は、誘電体層116の上面側に配設されている。誘電体層116,117には、デジタル回路用電極パターン202が形成されている。デジタル回路用電極パターン202は、誘電体層116,117の略全面に形成されている。
【0051】
誘電体層118は、誘電体層117の上面側に配設され、積層体100の最上層である。誘電体層118の上面、すなわち積層体100の天面には、IC実装用ランド電極510を含む所定の電極パターンが形成されている。そして、IC実装用ランド電極510に、ベースバンドIC21およびフロントエンドIC22が実装されている。
【0052】
これら誘電体層116〜118による部分積層部が、本発明の上層領域に相当する。そして、下層領域の全域、上層領域の全域、積層体に実装されるデジタルIC群、および中間層領域のデジタル配線領域ZnDにより、図1のデジタル回路形成領域200を構成することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、デジタルICを天面に実装した単一の積層体100のみで、デジタル回路とアナログ回路とを備えた積層型高周波モジュール1を形成することができる。この際、中間層領域において、デジタル配線領域ZnDとアナログ配線領域ZnAとが、平面視して重なり合わないように形成されているので、デジタル回路とアナログ回路との電磁界結合を抑制することができる。これにより、例えばデジタルICを含むデジタル回路からのノイズがRF回路として機能するアナログ回路に流入することを抑制でき、優れた通信特性の積層型高周波モジュールを小型に形成することができる。
【0054】
さらに、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターン201,202は、中間層領域のアナログ回路用電極パターン301に対して、積層体100を平面視して重なり合うが、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターン201,202と中間層領域のアナログ回路用電極パターン301との間には、それぞれ内層グランド電極401,402が配設されている。したがって、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターン201,202と中間層領域のアナログ回路用電極パターン301との間の電磁界結合も抑制することができる。
【0055】
また、さらに、下層領域の誘電体層102のデジタル回路用電極パターン201および上層領域の誘電体層116,117のデジタル回路用電極パターン202は、中間層領域の誘電体層107,109,111,113に形成されたデジタル回路用電極パターン203よりも、誘電体層の単位面積当たりにおける電極パターンが形成された面積の割合が大きい。このように、上層領域および下層領域のデジタル回路用電極パターン201,202を高密度化することで、上述のように電磁界結合を抑制しながら、積層体100を低背化、小型化することができる。
【0056】
また、図2に示すように、誘電体層104〜115に対して、アナログ配線領域ZnAにおける積層体100の側壁面側に、複数の導電性ビア400THを設けるとよい。このような位置に導電性ビア400THを形成することで、アナログ回路用電極パターン301が、外部の回路要素、および、積層体100の外部を介する上層領域のデジタル回路用電極パターン202に対して電磁界結合することも抑制することができる。なお、これらアナログ配線領域ZnAにおける積層体100の側壁面側の複数の導電性ビア400THは、特性や仕様に応じて省略することも可能である。
【0057】
なお、上述の積層数や電極配線パターンや導電性ビアの配設パターン等は、本願発明の一例を示すものであり、例えば、中間層領域のデジタル配線が一層だけであったり、電極パターンを形成しない層が省略されたり、各領域の誘電体層数が異なるような場合であって、本願の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10−積層型高周波モジュール、21−ベースバンドIC、22−フロントエンドIC、31B,31W−BPF、90tx,90rx,90B,90W−アンテナ、100−積層体、101〜118−誘電体層、201,202,203−デジタル回路用電極パターン、300−アナログ回路形成領域、301−アナログ回路用電極パターン、401,402,403−内層グランド電極、400TH,401TH,402TH−導電性ビア、500io−外部接続用ランド、500G−外部グランド電極、510−IC実装用ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの上面もしくは下面の少なくとも一方の面に所定の電極パターンが形成された誘電体層を積層してなる積層体を含む積層型高周波モジュールであって、
前記積層体は該積層体の上面を含む上層領域と、下面を含む下層領域と、前記上層領域と下層領域の間に形成された中間層領域とを含み、
前記中間層領域と前記上層領域、および前記中間層領域と前記下層領域の間には、前記積層体を平面視して略全面に形成された第1の内層グランド電極が形成されるとともに、
前記積層体の上層領域と下層領域とには、デジタル回路用電極パターンが形成され、
前記上層領域と前記下層領域とによって積層方向に挟まれる中間層領域には、前記デジタル回路用電極パターンとアナログ回路用電極パターンとが形成され、
前記中間層領域における前記デジタル回路用電極パターンの形成領域と前記アナログ回路用電極パターンの形成領域とは、前記積層体を平面視して個別の領域に配置されている、積層型高周波モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型高周波モジュールであって、
前記中間層領域の前記デジタル回路用電極パターンは複数層に形成されており、各層のデジタル回路用電極パターンの間には、第2の内層グランド電極が形成されている、積層型高周波モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の積層型高周波モジュールであって、
前記第2の内層グランド電極は、積層方向から見て前記デジタル回路用電極パターンの形成領域にのみ形成されている、積層型高周波モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層型高周波モジュールであって、
前記上層領域および前記下層領域のデジタル回路用電極パターンの電極形成密度は、前記中間層領域のデジタル回路用電極パターンの電極形成密度よりも高い、積層型高周波モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の積層型高周波モジュールであって、
前記中間層領域における前記デジタル回路用電極パターンの形成領域と前記アナログ回路用電極パターンの形成領域との間には、前記第1の内層グランド電極に導通する導電性ビアが形成されている、積層型高周波モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の積層型高周波モジュールであって、
積層方向から見て、前記中間層領域の前記アナログ回路用電極パターンの形成領域における前記積層体の側壁側には、前記第1の内層グランド電極に導通する第2の導電性ビアが形成されている、積層型高周波モジュール。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の積層型高周波モジュールであって、
前記中間層領域の前記デジタル回路用電極パターンの形成領域には、前記第1の内層グランド電極および前記第2の内層グランド電極にそれぞれ導通する複数の第3の導電性ビアが形成されている、積層型高周波モジュール。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−243835(P2011−243835A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116146(P2010−116146)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】