説明

積層基板、積層体及びその製造方法

【課題】積層基板において様々な情報を複数の基板における情報記録部にそれぞれ記録し、前記積層基板における内層側となる情報記録部の情報を確実に読み取る。
【解決手段】積層された複数の第1〜第3基板部12、14、16は、透明なプレート状の絶縁部18a〜18cと、前記絶縁部18a〜18cの表面に張り付けられる導体箔20a〜20cから構成され、第1〜第3基板部12、14、16には、それぞれ露光処理時の情報が記録された第1〜第3情報記録領域24、26、28がそれぞれ設けられている。そして、第1基板部12の上部に積層される第2基板部14には、第1情報記録領域24の上部となる位置に開口した第1窓部62が形成され、第2基板部14の上部に積層される第3基板部16には、第1及び第2情報記録領域24、26の上部となる位置に第2窓部64が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層基板、積層体及びその製造方法に関し、一層詳細には、複数の基板に情報が記録された積層基板、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、露光装置において、感光材料からなるシート体を露光ステージに位置決め固定し、この露光ステージをシート体と共に移動させる一方、レーザビームを所望の画像パターンに従い変調してシート体を露光走査することにより、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフィルタや多層プリント配線基板等を製造するための技術開発が進められている。
【0003】
ところで、例えば、特許文献1には、半導体LSIのパターンが露光された半導体チップに対してそれぞれ各種番号や名称等が書き込まれたチップ個別情報領域が設けられ、前記半導体チップに、万が一、不良が生じた場合には、前記チップ個別情報を読み取ることにより解析を行い、製造工程において生じた半導体チップの不具合箇所や原因の特定を行う方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−142379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述したようなプリント配線基板では、その回路面積を増大させる目的で回路が形成された複数の基板層と絶縁材料からなる絶縁層とを交互に積層し、前記基板層及び絶縁層をプレスを介して圧着することにより1枚の基板とした積層基板が採用されている。この場合、積層基板は、各基板層同士が電気的に接続されている。
【0006】
ところで、このような積層基板において、特許文献1に開示された情報領域を設けようとした場合に、前記積層基板では下層に配置された基板層が、上層となるように配置された他の基板層によって覆われているため、下層となる基板層に設けられた情報領域が他の基板層によって覆われ、前記情報領域の情報を読み取ることが困難となる不都合がある。
【0007】
本発明は、前記の種々の課題を考慮してなされたものであり、積層基板において積層された複数の導電層の情報記録部に様々な情報をそれぞれ記録し、前記情報記録部の情報を容易且つ確実に、しかも、迅速に読み取ることが可能な積層基板、積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数の基板が積層された積層基板において、
少なくとも第1絶縁層を有する第1基板と、透過性を有する第2絶縁層を備えた第2基板とを有し、
前記第1基板には、前記第1絶縁層に設けられて回路が形成される第1導電層と、前記第1絶縁層の表面に設けられ、前記回路が形成される際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された第1情報記録部とを備え、
前記第2基板には、前記第1情報記録部と対向する開口部が設けられ、
前記第1基板に対して前記第2基板が積層された際に、前記第1情報記録部の情報が、前記第2基板の開口部を介して読み取り可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、積層基板における第1基板には、回路が形成される際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された情報記録部が設けられると共に、透過性を有する第2絶縁層を備えた第2基板を前記第1基板に対して積層させた際に、外層側となる第2基板には、前記第1基板の情報記録部と対向する位置に開口部が形成されている。そして、第1基板の情報記録に記録された情報を、第2絶縁層を介して前記外層側となる第2基板の開口部から読み取る。
【0010】
従って、複数の基板が積層された積層基板において、第1基板の情報記録部に記録された情報を作業者による目視やX線を用いた読取装置によって迅速且つ確実に読み取ることができるため、前記積層基板において不具合等が生じた場合に前記情報に基づいて不具合箇所や原因の特定を迅速に行うことが可能となる。
【0011】
また、情報記録部に、第1導電層に対して露光処理が行われる際の露光条件を記録することにより、積層基板に不具合が生じた際に前記情報記録部から前記露光条件を読み取って解析を行うことにより、前記露光条件の設定に起因した不具合を解明することができる。
【0012】
さらに、情報記録部は、第1導電層に対する露光処理によって回路を形成する際に、情報を記録するとよい。これにより、第1導電層に対して露光処理を行う際に併せて情報記録部の情報の記録作業を行うことができるため、前記積層基板を製造する際の生産性を向上させることが可能となる。
【0013】
さらにまた、積層された少なくとも2つのパターン形成層を備えた積層体であって、
前記少なくとも2つのパターン形成層は、所望のパターンが形成されたパターン形成部と、
前記パターンが形成される際の情報及び前記パターンに固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された情報記録部と、
をそれぞれ備え、
下層となるパターン形成層の前記情報記録部と上層となるパターン形成層の前記情報記録部とが、前記パターン形成層の積層方向と略直交する方向に互いにオフセットして配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、積層された少なくとも2つのパターン形成層には、所望のパターンを有するパターン形成部と、前記パターンが形成される際の情報や前記パターンに固有の情報が記録された情報記録部が形成され、前記情報記録部は、上層側となるパターン形成層と下層側となるパターン形成層とで積層方向と略直交方向にオフセットするように配置されている。
【0015】
従って、複数のパターン形成層が積層された積層体において、情報記録部同士が重なり合うことがなく、例えば、下層となるパターン形成層の情報記録部に記録された情報を作業者による目視やX線を用いた読取装置によって迅速且つ確実に読み取ることができる。その結果、積層体を構成するパターン形成層に何らかの不具合が生じた場合にも、前記情報記録部から情報を読み取って解析を行うことにより、前記不具合を解明することができる。
【0016】
またさらに、本発明は、複数の基板が積層される積層基板を製造する積層基板の製造方法において、
第1基板の第1絶縁層に設けられる第1導電層に対して露光処理を行うことにより回路を焼き付けると共に、前記露光処理が行われた際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された第1情報記録部を形成する工程と、
前記第1基板に対して透過性を有する第2絶縁層を備えた第2基板を積層する工程と、
前記第2絶縁層の表面に形成された第2導電層に対して露光処理により回路を焼き付け、前記第2導電層にエッチング処理を行うことにより前記回路以外の不要な部分を除去して、前記第1情報記録部と対向する開口部を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、第1導電層に対して回路を焼き付ける露光処理時に、露光処理が行われた際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方を記録した情報記録部を形成し、透過性を有する第2絶縁層を有する第2基板を前記第1導電層を有する第1基板に対して積層した後に、前記回路以外の不要な部位を除去すると共に、前記情報記録部と対向する第2基板の第2導電層を除去して開口部を形成している。
【0018】
このように、積層基板の製造工程において、露光工程で第1基板に対して回路を形成する際の情報や前記回路に固有の情報を記録し、且つ、内層側となる別の導電層における情報記録部を読み取るための開口部をエッチング工程で外層側の第2基板に形成することができる。そのため、従来の積層基板の製造工程を利用して、前記情報記録部及び開口部を有し、内層側となる第1基板の情報を読み取り可能な積層基板を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0020】
すなわち、積層基板における第1基板に、回路が形成される際の情報や前記回路に固有の情報が記録された情報記録部を設け、前記第1基板に対して透過性を有する絶縁層を備えた第2基板を積層した際に、前記第2基板に形成された開口部を介して該第2基板から第1基板における情報記録部の情報を読み取ることができる。そのため、複数の基板を有する積層基板においても、情報記録部に記録された情報を作業者による目視やX線を用いた読取装置によって確実に読み取ることができ、前記情報に基づいて積層基板の不具合箇所や原因の特定を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る積層基板の製造方法について前記製造方法によって形成される積層基板との関係において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0022】
図1〜図3において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る積層基板を示す。なお、ここでは、3層からなる積層基板10について説明する。
【0023】
この積層基板10は、積層された複数の第1〜第3基板部12、14、16からなり、前記第1〜第3基板部12、14、16は、透明な樹脂製材料(例えば、エポキシ樹脂)からなるプレート状の絶縁部18a〜18cと、前記絶縁部18a〜18cの表面に張り付けられ、回路22a〜22cを形成し、金属製材料からなる導体箔20a〜20c(図3参照)から構成されている。なお、積層基板10では、第1基板部(第1基板)12が最下層に設けられ、第3基板部(第2基板)16が最上層となるように配設されている。
【0024】
第1〜第3基板部12、14、16は、図4に示されるように、薄板材から略矩形状に形成され、前記第1〜第3基板部12、14、16は略同一形状に形成されている。
【0025】
また、第1〜第3基板部12、14、16の表面には、エッチング処理によって導体箔20a〜20cから所望のパターンとなる回路22a〜22cが形成されると共に、前記回路22a〜22cと隣接して前記第1〜第3基板部12、14、16が露光処理された際の露光情報が記録された第1〜第3情報記録領域24、26、28がそれぞれ設けられている。そして、前記第1〜第3基板部12、14、16は、図示しない導電部材を介して互いに電気的に接続されている。
【0026】
第1〜第3情報記録領域24、26、28は、図2及び図3に示されるように、第1〜第3基板部12、14、16を積層させた際に、前記第1〜第3情報記録領域24、26、28が積層基板10における鉛直方向に互いに重なり合わない位置に形成される。換言すれば、第1〜第3情報記録領域24、26、28は、第1〜第3基板部12、14、16の略水平面上に沿った位置がそれぞれ異なるように所定間隔離間してそれぞれ形成されている。
【0027】
また、第1〜第3情報記録領域24、26、28には、図5に示されるように、例えば、第1〜第3基板部12、14、16の名称又は番号A1〜A3、露光工程における露光レーザ出力B1〜B3、アライメント誤差C1〜C3、焦点距離D1〜D3、雰囲気温度E1〜E3、露光日時F1〜F3が列記されるように記録されている。
【0028】
詳細には、第1〜第3基板部12、14、16の名称又は番号A1〜A3は、第1〜第3情報記録領域24、26、28を読み取る場合に複数の第1〜第3基板部12、14、16のうちのどの基板部の情報であるかを認識するために記録され、露光レーザ出力B1〜B3は、露光装置40における露光ヘッド54a〜54jから第1〜第3基板部12、14、16へと出力されるレーザ出力の値であり、アライメント誤差C1〜C3は、前記露光装置40の露光ステージ48(後述する)における第1〜第3基板部12、14、16の位置ずれ誤差を示すものである。さらに、焦点距離D1〜D3は、前記露光ヘッド54a〜54jから第1〜第3基板部12、14、16へとレーザ光を出力する際のピントを示し、雰囲気温度E1〜E3は露光処理が行われる際の第1〜第3基板部12、14、16周辺の雰囲気温度を示している。なお、露光日時F1〜F3は、露光処理が行われた日時を示している。
【0029】
なお、第1〜第3情報記録領域24、26、28に記録される情報は、上述した内容に限定されるものではなく、例えば、第1〜第3基板部12、14、16の製造番号(シリアルナンバー)を記録するようにしてもよい。
【0030】
本発明の実施の形態に係る積層基板10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその製造方法について説明する。なお、ここでは、積層基板10において最下層となる第1基板部12から順次形成する場合について図6を参照しながら説明する。
【0031】
先ず、絶縁部(第1絶縁層)18aの表面に導体箔(第1導電層)20aが張り付けられた第1基板部12に感光剤(フォトレジスト)を塗布し、前記第1基板部12を露光装置40にセットして露光処理を行う。
【0032】
この露光処理を行う露光装置40は、図7に示されるように、複数の脚部42によって支持された定盤44を備え、この定盤44上には、2本のガイドレール46を介して露光ステージ48が矢印方向に往復移動可能に設置される。そして、露光ステージ48に、感光剤が塗布された基板(第1基板部12)が吸着保持される。
【0033】
定盤44の中央部には、ガイドレール46を跨ぐようにして門型のコラム50が設置され、前記コラム50の一方の側部には、露光ステージ48に保持された基板の位置を検出するCCDカメラ52が固定され、他方の側部には、前記基板に対して画像を露光記録する複数の露光ヘッド54a〜54jが保持されたスキャナ56が設けられている。前記CCDカメラ52には、ロッドレンズ58を介してストロボ60が装着されている。
【0034】
そして、このような露光装置40の露光ステージ48に第1基板部12が保持された後に、前記第1基板部12を露光ステージ48と共にスキャナ56側へと移動させ、前記スキャナ56に設けられた複数の露光ヘッド54a〜54jから出力されるレーザ光によって前記第1基板部12に対して所望のパターンとなる回路22a〜22cを記録する露光処理が行われる。
【0035】
その際、ストロボ60の発光に伴ってCCDカメラ52で第1基板部12が撮像され、前記第1基板部12のアライメント誤差C1を検出する。
【0036】
また、上述した露光処理が行われる際、前記回路22aに隣接するように第1情報記録領域(情報記録部)24が形成され、前記第1情報記録領域24では、この露光処理における様々な情報(例えば、第1基板部12の名称A1、露光処理時における露光レーザ出力B1、アライメント誤差C1、焦点距離D1、雰囲気温度E1、露光日時F1)が列記されるように順番に記録される。
【0037】
次に、露光処理が行われた第1基板部12に対して現像処理が行われ、その後に、前記第1基板部12に対して所望のパターンを有する回路22aを形成するためにエッチング処理が行われて前記回路22a及び第1情報記録領域24以外の不要となる導体箔20aが剥離される。これにより、第1基板部12には、回路22aと第1情報記録領域24のみが残存した状態となる。なお、この際に、第1情報記録領域24の周囲を回路22aと所定間隔だけ離間するように導体箔20aを剥離しておくことにより、前記第1情報記録領域24の位置を明確とすることができる。
【0038】
次いで、不要となった感光剤の除去を行うことにより絶縁部18aの表面に導体箔20aからなる回路22aを備えた第1基板部12が形成される。
【0039】
次に、第2基板部(第2基板)14となる導体箔(第2導電層)20bが表面に施された又は施されるべき絶縁部(第2絶縁層)18bを第1基板部12の上面に積層し、図示しない圧力プレス機によって第1基板部12と第2基板部14とを加熱した状態で熱圧着させることにより、前記第1及び第2基板部12、14が一体的に圧着される。この際、第1基板部12と第2基板部14との間には、第2基板部14の絶縁部18bが挟持されているため、前記第1基板部12と第2基板部14とが直接的に接触することがない。
【0040】
そして、第2基板部14に対して前記第1基板部12と同様に感光剤の塗布、露光処理を行う。この際、第2基板部14には、その表面に形成された回路22bに隣接するように第2情報記録領域26が形成される。換言すれば、この第2情報記録領域26は、所望のパターンを有する回路22bと予め重複しない位置に設けられる。
【0041】
そして、前記第2情報記録領域26には、この露光処理における様々な情報が記録される。
【0042】
次に、現像処理が行われた後に、前記第2基板部14に対してエッチング処理を行う。その際、第2基板部14には、所望のパターンとなる回路22bが形成されると共に、第1基板部12の第1情報記録領域24の上部側となる導体箔20bがエッチング処理によって剥離され、前記第1情報記録領域24の外形状より若干大きく開口した第1窓部(開口部)62が形成される。すなわち、第2基板部14における第1情報記録領域24の上方にあたる位置には、予め回路22bが形成されないようにそのパターンが形成されている。
【0043】
これにより、第2基板部14と第1基板部12との間に配設された絶縁部18bが透明な樹脂製材料から形成されているため、前記第2基板部14の表面に形成された第1窓部62を介して第2基板部14の上方から下層となる第1基板部12の第1情報記録領域24を読み取ることができる。
【0044】
そして、第2基板部14に塗布された感光剤を除去することにより、前記第2基板部14が第1基板部12に対して積層された状態で積層基板10が形成される。なお、第2基板部14の回路22bは、図示しない導電部材を介して第1基板部12の回路22aと電気的に接続されている。
【0045】
最後に、第3基板部16となる導体箔20cが表面に施された又は施されるべき絶縁部18cを第2基板部14の上部に積層し、図示しない圧力プレス機によって第3基板部16が積層された第1及び第2基板部12、14に対して熱圧着させる。これにより、第1及び第2基板部12、14に対して第3基板部16が一体的に圧着されて積層基板10が形成される。
【0046】
そして、第3基板部16に対して前記第1及び第2基板部12、14と同様に感光剤の塗布、露光処理、現像処理が順番に行われ、その後に、前記第3基板部16に対してエッチング処理が行われる。この際、第3基板部16には、露光処理において所望のパターンとなる回路22cが形成されると共に、前記回路22cに隣接して第3情報記録領域28が形成される。
【0047】
次に、第1及び第2基板部12、14における第1及び第2情報記録領域24、26の上部側となる部位がエッチング処理によって剥離されて第2窓部(開口部)64が形成される。前記第2窓部64は、前記第1及び第2情報記録領域24、26の外形状より若干大きく開口して形成されている。なお、第1及び第2情報記録領域24、26の上部側となる部位に形成される第2窓部64は単一の場合に限定されるものではなく、第1情報記録領域24と第2情報記録領域26に対応した一組の窓部をそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0048】
すなわち、第3基板部16における第1及び第2情報記録領域24、26の上方にあたる位置には、予め回路22cが形成されないようにそのパターンが形成されている。
【0049】
そして、第3基板部16に塗布された感光剤を除去することにより、前記第3基板部16が第1及び第2基板部12、14に対して積層された積層基板10が形成される。なお、この第3基板部16の回路22cは、図示しない導電部材を介して第1及び第2基板部12、14の回路22a、22bと電気的に接続されている。
【0050】
このように第1〜第3基板部12、14、16が互いに絶縁部18b、18cを挟んだ状態で略平行に積層され、一体的に積層された第1〜第3基板部12、14、16を含む積層基板10が形成される。
【0051】
また、上述した積層基板10の製造方法では、第1基板部12を形成した後に、該第1基板部12の上部に第2基板部14を積層した状態で回路22bを形成し、その後に、積層された第1及び第2基板部12、14に対して第3基板部16を積層して回路22cを形成するようにしているが、第1〜第3基板部12、14、16に対してそれぞれ回路22a〜22cをそれぞれ別個に形成した後に、前記第1〜第3基板部12、14、16を積層させて熱圧着によって積層基板10としてもよい。
【0052】
なお、この積層基板10は、例えば、プリント配線基板(PWB:Printed Wiring Board)、液晶表示装置(LCD)の製造用のカラーフィルタ、TFT、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)等に好適に用いることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態では、第1〜第3基板部12、14、16を順次積層させて積層基板10を形成する際に、前記第1〜第3基板部12、14、16に設けられ、各基板部における露光情報が記録された第1〜第3情報記録領域24、26、28を略水平方向に互いにオフセットするように形成している。換言すれば、第1〜第3情報記録領域24、26、28は略鉛直方向に重なり合うことがないように形成している。
【0054】
また、第2基板部14には、最下層となる第1基板部12の第1情報記録領域24の上方となるように第1窓部62が形成され、第3基板部16には、第1及び第2基板部12、14の第1及び第2情報記録領域24、26の上方となる位置に第2窓部64が形成されている。
【0055】
これにより、積層基板10において最上層となる第3基板部16の上方から第1及び第2窓部62、64、第1〜第3基板部12、14、16の間に挟持された透明体からなる絶縁部18b、18cを介して第1及び第2情報記録領域24、26に記録された情報を確実に読み取ることができる。また、第3情報記録領域28は、最上層に設けられた第3基板部16に設けられているため上方から直接読み取ることができる。
【0056】
以上のように、前記第1〜第3情報記録領域24、26、28に記録された第1〜第3基板部12、14、16の露光情報を作業者による目視やX線を用いた読取装置によって読み取ることができるため、積層基板10において、万が一、不具合等が生じた場合に前記情報に基づいて解析を行い、前記第1〜第3基板部12、14、16における不具合箇所や原因の特定を迅速且つ確実に行うことが可能となる。
【0057】
また、何らかの理由により露光不良が生じた第1〜第3基板部12、14、16に対し、前記露光情報に基づいてその後の処理を行わないようにすることも可能である。特に、長尺状の基板に対して順次処理を行うような場合に有効である。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、第1〜第3基板部12、14、16の3層からなる積層基板10について説明したが、少なくとも2枚以上の基板部が積層された構成であれば特に基板部の数量には限定されるものではない。
【0059】
一方、第1〜第3基板部12、14、16の第1〜第3情報記録領域24、26、28に製造番号をそれぞれ記録し、前記製造番号を通じて図示しない管理サーバに送信することにより積層基板10を一元的に管理するようにしてもよい。
【0060】
詳細には、単一の積層基板10における各製造工程(露光、現像、エッチング、積層プレス)における様々な情報を前記管理サーバに送信することにより、製造番号に基づいた積層基板10の工程及び第1〜第3基板部12、14、16の露光情報を一括管理することができる。また、第1〜第3基板部12、14、16において何らかの不具合が生じた場合に、前記管理サーバに問い合わせ及び/又は確認することにより、前記第1〜第3基板部12、14、16のいずれの基板部に不具合が生じているかを迅速且つ確実に把握することができる。
【0061】
そして、上述した不具合が生じている箇所に応じて装置(例えば、露光装置40)側の調整、補修を行うことが可能となり、前記不具合の再発を防止することができる。
【0062】
なお、積層基板10では、下層となる第1及び第2基板部12、14における第1及び第2情報記録領域24、26を読み取るために導体箔20b、20cを剥離して第1及び第2窓部62、64を形成する場合に限定されるものではなく、予め第1及び第2情報記録領域24、26の上部側を導体箔20b、20cで覆うことないように第2及び第3基板部14、16の回路パターンを形成するようにしてもよい。この場合にも、第2及び第3基板部14、16の下部に設けられた透明な絶縁部18b、18cを通じて第1及び第2情報記録領域24、26を確実に読み取ることが可能となる。
【0063】
さらに、積層基板10における第1〜第3基板部12、14、16の露光情報の記録手段としては、導体箔20a〜20cより形成された第1〜第3情報記録領域24、26、28に限定されるものではなく、例えば、前記第1〜第3基板部12、14、16における露光情報をそれぞれバーコードに変換し、前記バーコードを第1〜第3基板部12、14、16に対して貼着するようにしてもよい。この場合にも、第1及び第2基板部12、14に貼着されたバーコードを第1及び第2窓部62、64を通じて第3基板部16の上方より確実に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る積層基板の外観斜視図である。
【図2】図1の積層基板を上方から見た平面図である。
【図3】図1の積層基板の縦断面図である。
【図4】図1の積層基板において積層された第1〜第3基板部を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図5】図1の積層基板における第1〜第3基板部に設けられた第1〜第3情報記録領域の拡大平面図である。
【図6】図1の積層基板を製造する際の概略製造フロー図である。
【図7】図1の積層基板において露光作業を行うための露光装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10…積層基板 12…第1基板部
14…第2基板部 16…第3基板部
18a〜18c…絶縁部 20a〜20c…導体箔
22a〜22c…回路 24…第1情報記録領域
26…第2情報記録領域 28…第3情報記録領域
40…露光装置 48…露光ステージ
54a〜54j…露光ヘッド 62…第1窓部
64…第2窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が積層された積層基板において、
少なくとも第1絶縁層を有する第1基板と、透過性を有する第2絶縁層を備えた第2基板とを有し、
前記第1基板には、前記第1絶縁層に設けられて回路が形成される第1導電層と、前記第1絶縁層の表面に設けられ、前記回路が形成される際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された情報記録部とを備え、
前記第2基板には、前記情報記録部と対向する開口部が設けられ、
前記第1基板に対して前記第2基板が積層された際に、前記情報記録部の情報が、前記第2基板の開口部を介して読み取り可能であることを特徴とする積層基板。
【請求項2】
請求項1記載の積層基板において、
前記情報記録部には、前記第1導電層に対して露光処理を行う際の露光条件が記録されることを特徴とする積層基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層基板において、
前記情報記録部には、前記第1導電層に対する露光処理によって前記回路が形成される際に、前記情報が記録されることを特徴とする積層基板。
【請求項4】
積層された少なくとも2つのパターン形成層を備えた積層体であって、
前記少なくとも2つのパターン形成層は、所望のパターンが形成されたパターン形成部と、
前記パターンが形成される際の情報及び前記パターンに固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された情報記録部と、
をそれぞれ備え、
下層となるパターン形成層の前記情報記録部と上層となるパターン形成層の前記情報記録部とが、前記パターン形成層の積層方向と略直交する方向に互いにオフセットして配置されることを特徴とする積層体。
【請求項5】
複数の基板が積層される積層基板を製造する積層基板の製造方法において、
第1基板の第1絶縁層に設けられる第1導電層に対して露光処理を行うことにより回路を焼き付けると共に、前記露光処理が行われた際の情報及び前記回路に固有の情報の少なくともいずれか一方が記録された情報記録部を形成する工程と、
前記第1基板に対して透過性を有する第2絶縁層を備えた第2基板を積層する工程と、
前記第2絶縁層の表面に形成された第2導電層に対して露光処理により回路を焼き付け、前記第2導電層にエッチング処理を行うことにより前記回路以外の不要な部分を除去して、前記情報記録部と対向する開口部を形成する工程と、
を有することを特徴とする積層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−245325(P2006−245325A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59399(P2005−59399)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】