説明

積層構造体

【課題】 本発明の目的は、補修基材面の表面経時変化を施工後確認可能な視認性を持ち、補修、補強施工後の問題発生時の対応等に有用な、補修、または補強工法により得られるコンクリート積層構造体を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、上から、(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層、(C)プライマーの透明な硬化物層、(D)コンクリート基体の少なくとも4つの層から構成されてなり、前記(A)、(B)、(C)層を通してコンクリート基体(D)の表面を視認観察できることを特徴とするコンクリート積層構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度依存性が小さい光硬化性のために施工時間を短縮でき、作業性良好なばかりでなく、補修基材面の表面経時変化を確認可能な視認性を持つため、補修、または補強施工後の問題発生時の対応等に有用な、光硬化性繊維強化プリプレグシート補修、または補強工法等により得られるコンクリート積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは耐用年数が長いため、道路や鉄道のトンネル、橋脚、支柱や、屋内外の床面、建物の構造等、さまざまな分野で幅広く利用されている。しかしながら近年、1)コンクリートの中性化;長時間大気中の二酸化炭素ガスに暴露されたことにより、強いアルカリ性を持つコンクリートの中性化が進行し、内部の鉄筋まで到達後、鉄筋の腐食が進行、堆積が増大してコンクリートクラックを生じる、2)コンクリートの塩害;塩化物イオンによって鉄筋表面の酸化皮膜が侵される、3)アルカリ骨材反応;コンクリート中のアルカリ分と骨材のシリカ成分の反応から膨張性のゲル化物質を生成し、これが吸水膨張してコンクリートのひび割れ等を発生させる、等の化学的な問題を生じているのに加え、地震、地盤沈下等により、設計以上の負荷がかかり、結果としてひび割れ、崩壊、崩落、等の物理的問題も生じている。
【0003】
これらの課題を解決するために、各種補強、補修等のメンテナンス法が多く提案されている。例えば、コンクリート基材面上にビニルエステル樹脂をプライマーとして塗布、硬化させ、プライマー層の表面にビニルエステル系のパテ組成物を塗布し、この上にビニルエステル樹脂を炭素繊維シートに含浸させて硬化させ補強する方法(特許文献1)、水系エマルジョン樹脂と粉体からなるモルタルでコンクリート表面を下地処理した後、ラジカル重合性樹脂、光重合開始剤、充填材、強化繊維からなる光硬化性プリプレグシートを貼り付け、端部をパテで封止する方法(特許文献2)、光硬化開始剤を含む熱硬化性樹脂を床面に塗布し、その上に光硬化開始剤を含む熱硬化性樹脂に無機質または有機質充填材を配合した配合物を塗布し、その上に光硬化性プリプレグシートを貼り付ける方法(特許文献3)、光硬化性防水材の被覆工法(特許文献4)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3602713号公報
【特許文献2】特開2004−181934号公報
【特許文献3】特開2004−293161号公報
【特許文献4】特開平11−228649号公報
【0005】
しかしながら、これらの補修、補強方法では、現場での作業性が悪かったり、コンクリート基材面にモルタルを塗工する、あるいは、パテ、接着剤等では、充填材量が多い、あるいは使用される充填材がタルク、炭酸カルシウム等であるため、硬化物の透明性が低く、施工後のコンクリート表面の経時劣化が視認できない、あるいは、繊維シートが炭素繊維であるため、高強度が得られるが、コンクリート表面の経時劣化が視認追跡できない、あるいはプライマー、パテ等が1液型でないため現場での配合操作を有し、結果施工にかかる時間が長くなる、あるいは乾燥性が良くないため硬化物表面性能が劣る、等の課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、補修基材面の表面経時変化を施工後確認可能な視認性を持ち、補修、補強施工後の問題発生時の対応等に有用な、補修、または補強工法により得られるコンクリート積層構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、上から、
(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、
(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層
(C)プライマーの透明な硬化物層、
(D)コンクリート基体
の少なくとも4つの層から構成されてなり、前記(A)、(B)、(C)層を通してコンクリート基体(D)の表面を視認観察できることを特徴とするコンクリート積層構造体に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層構造体では、光硬化法にて積層するため、常温硬化法等で必ず絡む、施工前配合操作が不要であり、また、硬化時の温度依存性が小さいため、作業効率を良好にできるだけでなく、積層に使用する材料層が全てほば透明であるため、基体表面の経時変化(劣化、クラックの発生等)が観察視認でき、問題発生の有無を早期に発見できるため、メンテナンス等が早期に可能な、極めて有用な積層構造体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の前記(A)、(B)、(C)層を通してコンクリート基体(D)の表面を視認観察できるとは、印刷時のフォントサイズ8ポイントの文字を記載した紙をコンクリート板表面に載せ、その上に前記(A)(B)(C)からなる積層硬化物を置いた場合に、文字がはっきり読み取れる状態を意味するものである。これは例えば、前記(A)、(B)、(C)層を通して日本経済新聞の本文記事が読みとれる状態を意味している。
【0012】
本発明の(A)層に使用する光硬化性繊維強化プリプレグシートは、不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなる樹脂組成物をあらかじめ繊維強化材に含浸してフィルムで挟んだものである。
【0013】
本発明の(B)層に使用するパテ組成物は、不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるもので、充填剤を含む場合でも実質的に透明、即ち、厚み2mmの板にした際に、その板を通して印刷時のフォントサイズ8ポイントの文字が明瞭に読み取れるものである。
【0014】
さらに、(C)層に使用するプライマーは、不飽和基含有重合性樹脂系プライマーであっても良いし、ウレタン樹脂系プライマーであっても良い。勿論、光硬化性樹脂プライマーであるのが一番良い。その硬化物は、透明で視認性に優れるものであることが重要である。
【0015】
本発明のコンクリート基体(D)とは、土木建築物に通常使用されるセメントコンクリートの硬化物であれば全て包含されるものである。
【0016】
[光線透過率]
本発明において用いられる「光線透過率」なる技術用語は、前記(A)、(B)、(C)からなる本発明の積層構造体の積層硬化物について、23℃の雰囲気で、JIS K 7105 規定に基づき、次に述べる測定方法で測定されるものである。
<測定方法>
1)PETフィルムを貼ったガラス板に、10℃環境下で、プライマーをハケ等で塗布する。光硬化系プライマーa、bは、約250g/m、1液ウレタン系プライマーcは、約150g/m塗布する。その後、光硬化系プライマーは、10cmの距離から30分間、40Wのケミカルランプ2本で光照射、または晴天時屋外にて15分間光照射し、硬化させる。1液ウレタン系プライマーは、そのまま約3時間放置して硬化養生する。
次に、光硬化性パテを約500g/m、ローラーで均一に塗布し、すぐに、光硬化プリプレグシートの片面フィルムを剥がし、剥がした面を供試体の端部より、未硬化のパテ層との間に気泡が入らないように貼り付ける。
3)0.5〜5mm厚の光硬化プリプレグシート貼り付け終了後、10cmの距離から60分間、40Wのケミカルランプ2本で光照射、または晴天時屋外にて30分間光照射し、硬化させて積層硬化物を得る。
4)この積層硬化物から、5cm×5cmの試験片を切り出し、23℃、湿度50%の恒温室に2日以上放置する。
5)あらかじめ状態調節を施しておいた装置(日本電色工業株式会社製「NDH−300A」に、4)で準備した試験片を取り付け固定する。
6)測定される全光線透過率(TL)を光線透過率とする。
【0017】
本発明の積層構造体は、前記(A)、(B)、(C)の3層からなる硬化物の光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上に制御されていることが重要である。該硬化物の光線透過率がこの範囲内に制御される形でコンクリート表面に被着、積層されることにより、コンクリート表面の経時劣化を確認可能な視認性を獲得することができる。50%未満である場合、コンクリート表面の経時変化を容易に視認できない。
【0018】
また、前記(A)、(B)、(C)層からなる硬化物のそれぞれの厚み、または、これらの合計の厚みとしては、コンクリート表面を視認できれば特に限定されるものではないが、好ましくは、合計の厚みとしては、10mm以下、好ましくは0.5〜8mmである。好ましくは(A)層の厚みは、0.5〜5mmで、(B)層の厚みは、0.01〜2mmで、(C)層の厚みは、0.01〜1mmである。
【0019】
本発明における、(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層、(C)プライマーの透明な硬化物層、に使用される、不飽和基含有重合性樹脂としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、等公知のものを使用することができる。これらの樹脂の数平均分子量は300より大きいものであり、樹脂の粘度や樹脂硬化物の物性の点で500〜5000のものが好ましい。また、これらの樹脂は単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上併用しても良い。
【0020】
なお、本発明における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCという)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0021】
上述エポキシ(メタ)アクリレートとは、1分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応せしめて、エポキシ基に不飽和一塩基酸の酸基が付加してなる不飽和基含有樹脂を指称し、好ましくはジ(メタ)アクリレートおよび/またはトリ(メタ)アクリレートにかかるものである。不飽和基含有エポキシ樹脂の平均エポキシ当量が、好ましくは100〜500なる範囲内にあるようなエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを、エステル化触媒の存在下で反応せしめて得られるものである。
【0022】
上述ポリエステル(メタ)アクリレートとは、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステル、若しくは不飽和ポリエステルをいい、飽和ポリエステル若しくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応せしめて得られるものである。
【0023】
上述不飽和ポリエステルとは、α,β−不飽和二塩基酸叉はその酸無水物と、芳香族飽和二塩基酸叉はその酸無水物と、グリコール類の重縮合によって製造され、場合によっては酸成分として脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸を併用したり、一塩基酸類、モノアルコール類、ジシクロペンタジエン系化合物、アリルエーテル系化合物との付加反応、または脱水縮合反応等によって、公知の方法で合成し、得られるものである。また、ビニルエステル樹脂とは、不飽和ポリエステルの末端をビニル変性したもの、及びエポキシ樹脂骨格の末端をビニル変性したものである。
【0024】
上述ウレタン(メタ)アクリレートとは、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を含むものである。かかるウレタン(メタ)アクリレートは、例えばポリイソシアネートとポリエステルポリオール、またはポリエーテルポリオール等のポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル化合物とをイソシアネート基と水酸基との当量比がほぼ同じとなるように反応させて得られるものであり、具体的には、先ずポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得、次いでこのプレポリマーに水酸基含有(メタ)アクリル化合物を反応せしめて得られるものである。
【0025】
本発明における、(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層、(C)プライマーの透明な硬化物層、に使用される、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、クロルスチレン等のスチレン系不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等の誘導体、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等、公知のものを使用することができる。これらは単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上併用しても良い。
【0026】
本発明における、不飽和基含有重合性樹脂は、通常、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を用いて溶解し、熱硬化性樹脂組成物として使用されるが、不飽和基含有重合性樹脂およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用比率としては、好ましくは、前記重合性樹脂10〜95重量部に対して、前記不飽和単量体5〜90重量部、より好ましくは、前記重合性樹脂20〜90重量部に対して、前記不飽和単量体10〜80重量部である。
【0027】
本発明における(C)層としてのウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、湿気硬化型1液型のものが好ましく使用される。ウレタン結合を主体とする重合体で、遊離イソシアネート基を含んでいるため、熱または触媒の作用をうけてイソシアネート基同士が反応したり、イソシアネート基と水、ポリオール等活性水素含有化合物とが反応して硬化する。こうしたものとしては、例えば、市販品として、ポリライトプライマーPD、ポリライトプライマーPC、プライアディックT−150−35(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0028】
また、(C)層は、コンクリート施工で好ましく用いられる公知のエポキシ樹脂を、施工性を損なわない範囲で用いても良い。
【0029】
本発明における、(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層、(C)プライマーの透明な硬化物層、に使用される光硬化剤としては、紫外光領域に感光性を有するもの、可視光領域に感光性を有するものを使用するのが好ましい。これらの添加量としては、上記不飽和基含有重合性樹脂と重合性不飽和単量体からなる樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部添加される。これらは単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上併用して用いても良い。
【0030】
本発明では、さらに、重合開始剤として有機過酸化物を添加して使用することができる。具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知のものが使用される。ラジカル重合開始剤の添加量は、上記不飽和基含有重合性樹脂と重合性不飽和単量体からなる樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部である。これらは単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上併用して用いても良い。
【0031】
本発明では、重合開始剤として有機過酸化物を使用する場合には、公知の硬化促進剤が好ましく使用される。硬化促進剤としては、有機酸の金属塩類、特にコバルト塩、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセチルアセトンコバルトや、アミン類;N,N−ジメチルアミノ−p−ベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等が挙げられる。これらの添加量は、不飽和基含有重合性樹脂と重合性不飽和単量体からなる樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは0.001〜5重量部使用する。なお、硬化促進剤は予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。
【0032】
本発明では、空気乾燥性補助剤として、公知のものを使用することができる。特に、有機酸の金属塩類、特にコバルト塩、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等が好ましく使用され、その添加量は、不飽和基含有重合性樹脂と重合性不飽和単量体からなる樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは0.001〜5重量部である。
【0033】
本発明の(A)層の上には、滑り止め樹脂/骨材、あるいは樹脂塗膜層を設けても良い。滑り止め樹脂、樹脂塗膜層に使用する樹脂としては、特に限定されるものではないが、公知のものを適宜使用することができる。例えば、(A)層、(B)層、(C)層に使用する重合性不飽和基含有樹脂や、アクリル系樹脂、エマルジョン系樹脂等、透明性を損なわないものが好ましく使用される。
【0034】
本発明で用いる繊維強化材としては、透明性、強度性能等を損なわない限り、材質、形状等、特に限定されるものではないが、例えばガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、天然繊維或いはこれらを組合わせて使用することが可能であり、施工性、経済性等を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維、有機繊維である。繊維の形態は、平織り、朱子織り、マット状、クロス状等があるが、透明性、シート製造性が損なわれなければ特に限定するものではない。また、特にガラス繊維の場合、具体的にはミルドファイバーと呼ばれるもの、あるいはガラスロービングをチョップドストランドにカットしたもの等を使用可能である。この場合のガラス長は、10μm程度の短いものから、2インチ程度の長いものまで幅広く使用することができる。これらは、少なくとも一種単独で、場合により2種以上併用して使用することが可能である。また、有機繊維の場合、具体的にはアラミド、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、フェノール樹脂等が挙げられ、その形態としては、織物状のマット等が挙げられるが特に限定されるものではない。強化繊維を使用する場合の配合量は、樹脂組成物、あるいはそのプリプレグシート全重量に対して、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%配合する。プリプレグシートとしての厚みは、好ましくは0.5〜5mm、重量は、好ましくは0.5〜4.0kg/mである。
【0035】
本発明に使用される充填材としては、透明性、視認性、強度物性、耐水性、耐薬品性等の諸性能を損なわない限り、材質等、特に限定されるものではないが、例えば、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム粉、水酸化アルミニウム、ガラス粉、ガラスパウダー、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、クレー、アルミナ粉、珪砂、硅石粉、タルク、シリカパウダー、シラスバルーン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、有機系バルーン、マイカ、セルロース糸、雲母粉末などが挙げられ、表面処理剤で表面処理されたものから未処理品まで幅広く使用することが可能である。これらの中でも、透明性の保持や、材料粘性の観点から、ヒュームドシリカ、ガラスパウダー、ガラス粉、シリカパウダー、水酸化アルミニウム等が特に好ましい。
【0036】
上記充填材は、性能を損なわない範囲内で、単独で使用しても、二種以上併用して用いても良い。また、無機充填材の添加量としては、不飽和基含有重合性樹脂と不飽和単量体の合計100重量部に対し、0〜100重量部添加可能であるが、透明性、視認性等の性能を維持するには、0〜50重量部の添加が好ましい。
【0037】
本発明では、カップリング剤を好ましく使用することができる。カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、公知のものを使用することができる。例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基やフェノキシ基を有するシリル基と(メタ)アクロイル基とを有する化合物であり、具体的には(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは1種単独でも併用しても構わない。更に、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基やアミノ基を有するシランカップリング剤を併用しても良い。これらは、不飽和基含有重合性樹脂と不飽和単量体との合計100重量部に対して、0.5〜20重量部配合される。
【0038】
更に、本発明では、性能を損なわない範囲で、重合禁止剤、増粘剤、着色剤等を配合することができる。
【0039】
重合禁止剤としては、代表的なものを挙げれば、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール若しくはモノ−t−ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン類;ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール類:p−ベンゾキノン、ナフトキノンなどのキノン類;ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、または2,5−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、ナフテン酸銅の如き銅塩などがある。これらは通常、不飽和基含有重合性樹脂と不飽和単量体との合計100重量部に対して、0.001〜2重量部配合される。
【0040】
増粘剤としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、イソシアネート系増粘剤、膨潤性熱可塑性樹脂パウダーも場合により使用することができる。増粘剤の配合量としては、好ましくは不飽和基含有重合性樹脂と不飽和単量体の合計100重量部に対し、0.2〜20重量部とすることが好ましい。かかる配合量であれば、良好な増粘性となり、組成物、シート材料の作業性や成形性を維持することができる。
【0041】
本発明では、光線透過率、視認性を低下させない範囲で有れば、着色剤を使用しても良い。具体的には、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等の無機顔料や、フタロシアニンブルー等の有機顔料、染料等が挙げられる。これら着色剤の配合量としては、好ましくは不飽和基含有重合性樹脂と不飽和単量体の合計100重量部に対し、好ましくは0〜10重量部以下である。
【0042】
更に、本発明においては、性能を損なわない範囲で不飽和基含有重合性樹脂組成物に、各種添加剤、減粘剤、破泡剤、消泡剤、等を配合することができる
【0043】
本発明の積層構造体は、道路や鉄道のトンネル、橋脚、床盤、支柱や、屋内外の床面、壁、天井、建物の構造等土木建築物のコンクリートが使用されている部位において、幅広く使用することができる。
【0044】
本発明において、紫外光とは280〜380nm、可視光とは380〜780nmの波長領域の光線を指す。本発明の積層構造体に使用する光源としては、光重合開始剤の感光波長域に分光分布を有する光源で有れば特に限定するものでは無く、例えばナトリウムランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、メタルハライドランプ、水銀灯、高圧水銀灯、太陽光等を好ましく使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また表中の配合の単位は、重量部を示すものである。
【0046】
<プライマーa用樹脂の製造>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにジエチレングリコール3モル、トリエチレングリコール7モル、オルソフタル酸6.5モル、メチルテトラヒドロ無水フタル酸 3.5モルを仕込み、この合計に対し、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5重量%、トルハイドロキノン0.1重量%添加し、205℃で15時間反応させた後、135℃まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを所定量投入し4時間反応させた後、80℃まで冷却してから、不揮発分60%となるようヒドロキシエチルメタクリレートを投入し樹脂を得た。
【0047】
<プライマーb用樹脂の製造1>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた三口フラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量が188なるエピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製)1850g、メタクリル酸860g、ハイドロキノン1.36gおよびトリエチルアミン10.8gを仕込み、110℃まで昇温させ、同温度で10時間反応させ、酸価5.5のエポキシアクリレートとした。これに不揮発分70%となるようヒドロキシエチルメタクリレートを投入しプライマーb用樹脂1を得た。
【0048】
<プライマーb用樹脂の製造2>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた三口フラスコに、ジエチレングリコール4.5モル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル1モル、フマル酸4.8モルを仕込み、窒素気流下、190℃にて15時間脱水縮合反応を行い、トルハイドロキノン300ppmを添加し、不揮発分65%となるようヒドロキシエチルメタクリレートを投入しプライマーb用樹脂2を得た。
【0049】
<プライマーb用樹脂の調製>
前記プライマーb用樹脂1;50部に、プライマーb用樹脂2;50部を加え、プライマーb用樹脂を得た。
【0050】
<パテd用樹脂の製造>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた三口フラスコに、ジエチレングリコール4.74モル、フマル酸2.75モル、メチルテトラヒドロ無水フタル酸1.83モルを仕込み、窒素気流下、200℃にて10時間脱水縮合反応を行い、トルハイドロキノン300ppmを添加し、不揮発分65%となるようメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート(1/1)を投入し樹脂を得た。
【0051】
<パテe用樹脂の製造>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにジエチレングリコール5モル、トリエチレングリコール5モル、オルソフタル酸6モル、メチルテトラヒドロ無水フタル酸4モルを仕込み、この合計に対し、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5重量%、トルハイドロキノン0.1重量%添加し、205℃で15時間反応させた後、135℃まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを所定量投入し4時間反応させた後、80℃まで冷却してから、不揮発分75%となるようヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート(1/1)を投入し樹脂を得た。
【0052】
[プライマーaの調製]
上記プライマーa用樹脂100部、カップリング剤A−174(日本ユニカー製)3部、6%ナフテン酸コバルト0.15部、イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)1部を配合し、プライマーaを得た。
【0053】
[プライマーbの調製]
上記プライマーb用樹脂100部、カップリング剤A−174(日本ユニカー製)3部、6%ナフテン酸コバルト0.2部、イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)1部を配合し、プライマーbを得た。
[プライマーcの準備]
プライマーcとしては、1液湿気硬化型ウレタン系プライマー;ポリライトプライマーPD(大日本インキ化学工業(株)製)を準備した。
【0054】
[パテdの調製]
上記パテd用樹脂100部、イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)0.5部、イルガキュア819(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)0.2部、揺変付与剤0.4部、消泡剤0.1部、アエロジル200を3部、ガラスパウダー(日本フリット(株)製)を10部配合し、パテdを得た。
【0055】
[パテeの調製]
上記パテe用樹脂100部、イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)0.5部、カップリング剤A−174(日本ユニカー製)1部、揺変付与剤0.4部、消泡剤0.1部、アエロジル200を4部配合し、パテeを得た。
【0056】
[パテfの調製]
ディックライト UE−3505(大日本インキ化学工業(株)製品)100部、タルク80部、炭酸カルシウム30部、イルガキュア1800(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)2部を配合しパテfを得た。
【0057】
[シートgの調製]
ディオン 9102−01NP(大日本インキ化学工業(株)製品)に、消泡剤とイルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ製)とアクリル粉末を混合したコンパウンドを、ガラス繊維#450チョップドストランドマット1ply、ガラスコンテントが約30%になるように含浸し、その上下をPETフィルムで被覆し、厚み約1.3mmの光硬化プリプレグシートgとした。
【0058】
[シートhの調製]
ディオン 9102−01NP(大日本インキ化学工業(株)製品)に、消泡剤とイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ製光硬化剤)とアクリル粉末を混合したコンパウンドを、ガラス繊維#450チョップドストランドマット1ply、ガラス繊維#203ガラスクロス(平織り)1ply、ガラス含有量が約30%になるように含浸し、その上下をPETフィルムで被覆し、厚み約1.7mmの光硬化プリプレグシートhとした。
[トップコート樹脂の準備]
アクリディック A−801、バーノック DN−980S(何れも大日本インキ化学工業(株)製品)を所定量配合し、透明アクリルウレタン系塗料とした。
【0059】
●実施例1〜5、比較例1
上記プライマー、パテ、光硬化プリプレグシート、トップコート用樹脂を、下記表1に示す組み合わせで以下の如く、積層構造体を作成した。
【0060】
<コンクリート舗道板の準備>
JIS準拠のコンクリート舗道板(30cm×30cm)の表面を、コンクリートカンナで処理し、粉塵を取り除いた。その後、積層後の視認性確認のために、処理表面に、鉛筆で数値等のフォントサイズ8ポイントの文字を記入しておく。
【0061】
<ガラス板の準備>
光線透過率測定用積層体作成のため、ガラス板にPETフィルムを貼り付け固定し、準備する。
【0062】
<積層構造体作成手順>
1)上記で準備したコンクリート舗道板、またはPETフィルム貼りガラス板に、10℃環境下で、プライマーをハケ等で塗布する。光硬化系プライマーa、bは、約250g/m、1液ウレタン系プライマーcは、約150g/m塗布する。その後、光硬化系プライマーは、10cmの距離から30分間、40Wのケミカルランプ2本で光照射、または晴天時屋外にて15分間光照射し、硬化させる。1液ウレタン系プライマーは、そのまま約3時間放置して養生する。
次に、光硬化性パテを約500g/m、ローラーで均一に塗布し、すぐに、光硬化プリプレグシートの片面フィルムを剥がし、剥がした面を供試体の端部より、パテ層との間に気泡が入らないように貼り付ける。
光硬化プリプレグシートの貼り付け終了後、10cmの距離から60分間、40Wのケミカルランプ2本で光照射、または晴天時屋外にて30分間光照射して、パテ層、プリプレグ層を同時に硬化させて、積層構造体を得た。
5)トップコート樹脂塗布の場合は、3)終了後、所定量のトップコート樹脂を積層構造体最上面に塗布し、屋内外にて乾燥させて、積層構造体を得る。
【0063】
[光線透過率]
上記PETフィルム貼りガラス板にて得た積層硬化物から、5cm×5cmの大きさに機械的に切り出した試片について、23℃の雰囲気で、JIS K 7105 規定に基づき、あらかじめ状態調節を施しておいた装置(日本電色工業株式会社製「NDH−300A」に試片を取り付け固定し、光線透過率を測定、その結果を表1に示した。
[接着強度、破壊状態]
上述の如く作成したコンクリート積層構造体の被覆面に、建研式コンクリート付着強度試験用アタッチメントをエポキシ樹脂系接着剤で固定し、ディスクサンダーにてアタッチメントに沿って切り込みを入れ、専用測定機にて建研式接着強度を測定した。またその時の破壊状況を確認した。
[視認性]
上述コンクリート舗道板に記載したフォントサイズ8ポイントの数値等の文字が、積層後の構造体の上からはっきり読めるか否かを目視で確認する。
【0064】
実施例1〜5においては、光線透過率の高い、透明性に優れた積層構造体が得られ、これまでの方法による構造体では得られなかった、基体表面の視認性が良好なものとなった。一方、比較例1では、付着強度、破壊状態は良好なものの、光線透過率低く、透明性得られず、基体表面の様子や記入した文字等は、全く視認できないものであった。
【0065】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の積層構造体は、土木建築分野で利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から、
(A)光硬化性繊維強化プリプレグシートの透明な硬化物層、
(B)不飽和基含有重合性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体、及び光硬化剤からなるパテ組成物の透明な硬化物層
(C)プライマーの透明な硬化物層、
(D)コンクリート基体
の少なくとも4つの層から構成されてなり、前記(A)、(B)、(C)層を通してコンクリート基体(D)の表面を視認観察できることを特徴とするコンクリート積層構造体。
【請求項2】
前記(A)層、(B)層、及び(C)層の3層からなる積層硬化物の光線透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート積層構造体。
【請求項3】
前記(A)層の光硬化性繊維強化プリプレグシートが、実質的に透明であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート積層構造体。
【請求項4】
前記(A)層の光硬化性繊維強化プリプレグシートが、エポキシメタクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、から選ばれる1種以上の不飽和基含有重合性樹脂とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体からなる樹脂組成物、ガラス繊維強化材、及び光硬化剤とからなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート積層構造体。
【請求項5】
前記(B)層のパテ組成物が、充填剤を含みながら実質的に透明であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート積層構造体。
【請求項6】
前記(B)層のパテ組成物が、エポキシメタクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、から選ばれる1種以上の不飽和基含有重合性樹脂とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体からなる樹脂組成物と、光硬化剤とからなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート積層構造体。
【請求項7】
前記(C)層の透明なプライマーが、(a)不飽和基含有重合性樹脂、(b)重合性不飽和単量体、及び(c)重合開始剤、からなる硬化性不飽和樹脂組成物、または、湿気硬化性ウレタン樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜2何れか一つに記載のコンクリート積層構造体。
【請求項8】
前記(A)層と前記(B)層とが一体として硬化させたものであることを特徴とする請求項1〜2何れか一つに記載のコンクリート積層構造体。


【公開番号】特開2006−272837(P2006−272837A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97868(P2005−97868)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】