説明

積層構造

【課題】 常温のみならず高温においても、基材、特にポリプロピレン層と繊維強化熱硬化性樹脂層との層間剥離強度が高く、基材層を構成する、例えば母管の熱膨張を抑えられる積層構造の提供。
【解決手段】 基材に繊維強化熱硬化性樹脂層が積層された積層構造において、基材から順に表面処理層、金属層、繊維強化熱硬化性樹脂層が積層されたことを特徴とする積層構造であり、特に前記基材が非金属からなり、表面処理が施されたことを特徴とし、また前記表面処理が、サンドブラスト法による処理であることを特徴とし、さらに前記金属層が、表面処理が施された層または金属が点在している層であることを特徴とする。前記積層構造における金属層と繊維強化熱硬化性樹脂層の間に、プライマー層が介在していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場の輸送配管または、上下水道、農・水産業、半導体製造、温泉施設、食品、自動車部品等の種々の分野に用いられ、耐薬、特にアルカリの流体に対して優れ、層間剥離強度が優れているとともに温度変化が生じる配管部材、等において熱膨張を抑えることが可能な積層構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂は耐薬・耐熱性に優れているが、ポリプロピレン単体では熱膨張が大きく、温度変化が生じる各種工場内に配管部材として用いられた場合、配管が蛇行するという問題点があった。その為、機械的強度を向上させる目的で、ポリプロピレン層表面をトルオール等の溶剤で清拭した後、塩素含有量が20〜40重量%の塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解させて塗布及び完全に乾燥させ第1塗布層を形成後、その上にさらに前記塩素化ポリプロピレン希釈液を塗布する第2塗布層を形成し、未乾燥状態でポリエステル繊維マットを積層し、該繊維マットに該塩素化ポリプロピレン第2塗布層を浸透させ、さらにその上に不飽和ポリエステル、スチレン、ジアリルフタレート等の樹脂前駆体を塗布し含浸させる。最終的に繊維マットを積層しその上に樹脂前駆体を塗布含浸させる作業を所定回数繰返して繊維強化熱硬化性樹脂層を積層する方法が提案されている(特許文献1参照)。その効果は、一層目の繊維マットに塩素化ポリプロピレン第2塗布層が含浸し、さらに該塩素化ポリプロピレン第1塗布層は該塩素化ポリプロピレン第2塗布層の溶剤で膨潤あるいは溶解して塩素化ポリプロピレン第2塗布層と一体化する為、ポリプロピレン層と繊維強化熱硬化性樹脂層との密着性が大幅に向上するものであった。
【0003】
また、ポリプロピレン層表面をバーナーの火炎によって加熱軟化させた上で、その上から、ポリプロピレン基材と接触する側に起毛層を有するテープ状の繊維材料を圧着させ、その後冷却させ、さらに該繊維材料の上に、プレポリマー、モノマー及び硬化剤からなる含浸液中に浸漬させたガラス繊維織布を圧着及び硬化させ、繊維強化熱硬化性樹脂層を積層する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。その効果は、起毛層が火炎処理によって加熱軟化された基材表面に食込み、また、硬化した繊維強化熱硬化性樹脂層が繊維材料に食込んで強固な投錨効果を発揮し、さらに火炎処理によって基材表面が若干炭化されることにより、該表面に接する繊維材料及び繊維強化熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂に対する親和力が向上するものであった。
【0004】
【特許文献1】特許第3535441号
【特許文献2】特公平5−10225号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の方法の積層構造では、高温におけるポリプロピレン層と繊維強化熱硬化性樹脂層との接着性が乏しい。即ち、層間剥離強度が不十分で、電解工場等の配管において、高温・高圧で使用される場合、管及び管継手の融着接合部周辺での機械的強度不足による漏れ又は破壊という問題が生じるおそれがあった。
【0006】
また、ポリプロピレン層表面を火炎処理して積層する方法においても、製造方法の過程において加熱軟化させるので、加熱後の冷却中にポリプロピレン層の収縮が起こり、ポリプロピレン層の成形後の形状が安定しないという問題が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、常温のみならず高温においても、基材、特にポリプロピレン層と繊維強化熱硬化性樹脂層との層間剥離強度が高く、基材、例えば配管部材、等の熱膨張を抑えられる積層構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層構造は、基材に繊維強化熱硬化性樹脂層が積層された積層構造において、基材から順に表面処理層、金属層、繊維強化熱硬化性樹脂層が積層されたことを第1の特徴とする。
【0009】
また、前記基材が非金属からなり、表面処理が施されたことを第2の特徴とする。
【0010】
さらに、前記表面処理がサンドブラスト法による処理であることを第3の特徴とする。
【0011】
さらに、前記金属層が、表面処理が施された層または金属が点在している層であることを第4の特徴とする。
【0012】
また、前記積層構造における金属層と繊維強化熱硬化性樹脂層の間に、プライマー層が介在していることを第5の特徴とする。
【0013】
さらに、前記プライマー層が、ポリウレタンからなることを第6の特徴とする。
【0014】
さらに、前記プライマー層が、少なくともイソシアネート系ポリウレタンを含むことを第7の特徴とする。
【0015】
さらに、前記プライマー層が、変性の異なる少なくとも2層のポリウレタンからなることを第8の特徴とする。
【0016】
また、前記基材が、樹脂からなることを第9の特徴とする。
【0017】
さらに、前記基材が、オレフィン系樹脂からなることを第10の特徴とする。
【0018】
また、前記積層構造が配管部材に用いられることを第11の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記の如き構成上の特徴を有することにより、化学工場の輸送配管または、上下水道、農・水産業、半導体製造、温泉施設、食品、自動車部品等の種々の分野に用いられ、耐薬、特にアルカリの流体に対して優れ、層間剥離強度が優れているとともに温度変化が生じる配管部材、等において熱膨張を抑えることが可能な積層構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、配管部材は、配管の管自体、管を結合する継ぎ手、バルブ、アクチュエーターの筐体及びタンク等の部材であって、予め成形されたもの、現場施工により成形される管自体、既存の配管を補強、補修するものを含む。
【0021】
本発明において、非金属からなる基材とは、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子ポリエチレン(UHMWPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、架橋ポリエチレン(CRPE)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(C−PVC)、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HEP)、ポリビニリデンフルオライド−ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−PCTFE)等のフッ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、酢酸繊維素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、10等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミノビスマレイミド、芳香族ポリエステル、ポリトリアジン、ポリエーテル−エーテルケトン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂、アルミナペリリア、マグネシウム等の焼結酸化物、炭素、ケイ素、炭化ホウ素等の焼結炭化物、無機物質、ケイ酸塩を主原料とする陶製等の非金属が挙げられるが、特にオレフィン系樹脂が熱膨張を抑える効果が大きい為、好適に用いられる。さらにオレフィン系樹脂の中でもポリプロピレン製の基材に対して最も熱膨張防止効果を発揮できる。
【0022】
本発明における基材における表面処理層とは、基材と金属層、および繊維強化熱硬化性樹脂層との結合を強化する意味で基材への表面処理により形成された層(または層状部分)であって、基材の表面が処理されたことによって変形あるいは変性された層(または層状の部分)、あるいは表面処理材を基材表面に適用することによって形成された層を意図する。
【0023】
本発明における基材に対する表面処理とは、基材と金属層との結合を強化する意味で基材へ適用される処理であって、サンドブラスト、酸化処理、紫外処理、電離性放射線処理等を含む。また、前記のごとく、基材の表面に接着改善を図るための処理剤を適用して処理剤層を形成することも含まれる。この内、層間剥離強度を効果的に改善する上でサンドブラストが好ましい。
【0024】
サンドブラスト法による処理は、公知のサンドブラスト法が適用できる。
【0025】
処理剤を適用する場合は、通常の塗装用装置を用いて処理剤を基材上に適用することで実施できる。
【0026】
本発明における金属層の金属とは、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(Al2O3)、鉄(Fe)、酸化第一鉄(FeO)、酸化第二鉄(Fe2O3)、白金(Pt)、ステンレスなどが挙げられ、特により酸化劣化の影響が小さい亜鉛、スズ、アルミニウム、酸化アルミニウムが好適に用いられる。該金属層の厚さは20〜500μm、望ましくは20〜60μmで積層される。20μmより厚ければ基材との層間剥離強度が十分であり、500μmより薄ければ該積層構造物の製造時の作業効率が良く、コストが抑えられ、また、成形後の重量は軽量である。
【0027】
本発明の前記金属層自体は、金属シートの積層、金属メッキ、金属蒸着、等により形成される。またその金属層の表面処理は、ショットブラスト、ワイヤブラッシング、針金ブラッシング、スチールブラスト、アルミナブラスト、放電加工等によって実施される。また、金属層は、金属溶射などによって、基材の表面に施された表面処理層に不連続状態に金属が点在して溶着した不連続金属層であってもよい。金属溶射により形成された点在金属層の場合、効率的で、接着性のよい積層体が得られる。
【0028】
本発明のポリウレタンは、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合を持つ高分子化合物の総称であって、ジイソシアネート(ポリイソシアネート)とグリコール(ポリオール)との重付加反応、脱塩酸剤の存在下でジアミンにグリコールのビスクロルギ酸エステルを作用させる反応、ビスカルバミン酸エステルとグリコールとのエステル交換反応、ジアミンと炭酸エチレンとの反応などによって得られるものがある。この内、工業的に主として製造されるものは、ジイソシアネート(ポリイソシアネート)とグリコール(ポリオール)との重付加反応により得られるポリウレタン(イソシアネート系ポリウレタン)である。
【0029】
本発明におけるポリウレタンのイソシアネート成分とは、分子中にイソシアネート基を有する化合物であり、好ましくは1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。該化合物としては、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(以下MDIと記す)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、HMDIの3量体、HMDI 3molとトリメチロールプロパン1molの反応物、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、トリス−(P−イソシアネートフェニル)チオフォスフェイトなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上の混合物として用いられ必要により溶剤で希釈したものも好ましく使用できる。上記溶剤としては、n−ヘキサン、クロロホルム、キシレン、テトラクロロエチレン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アセトン、エーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、ジオキサン、四塩化炭素、灯油等が挙げられる。
【0030】
本発明におけるイソシアネート成分と反応してポリウレタンを構成するポリオール成分(ポリエーテル型またはポリエステル型)には、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコール、等が例示される。
【0031】
好適には、伸縮性に富み配管部材の変形が吸収され、繊維強化熱硬化性樹脂層の剥離を抑制する為、以下のものが用いられる。第1のプライマー層として、MDI変性ポリイソシアネート類の液状樹脂を、それぞれの厚さが10〜500μm、望ましくは10〜300μmとなるように塗布積層させる。第2のプライマー層として、トリレンジイソシアネート(以下TDIと記す)変性ポリイソシアネート類の液状樹脂を、それぞれの厚さが10〜500μm、望ましくは10〜300μmとなるように塗布積層させる。
【0032】
それぞれのプライマー層の厚さが10μmより厚ければ、金属層またはプライマー層との層間剥離強度は十分であり、300μmより薄ければ該積層構造物の製造時の作業効率が良く、コストを抑えられる。
【0033】
本発明において、繊維強化熱硬化性樹脂層の形成用材料の熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられ、特に不飽和ポリエステルが好適に用いられる。補強繊維は、ガラス繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、又はカーボン繊維が挙げられ、ガラス繊維が好適に用いられる。また、その形状は、ガラスクロス(GC)、チョップドストランドマット(M)、ロービングクロス(WR)、サーフェーシングクロス(SC)等が作業性効率を考慮すると、好適なものとして挙げられる。また、繊維強化熱硬化性樹脂層として、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコンパウンド(SMC)も適用できる。さらに、熱硬化性樹脂や補強繊維の他に必要に応じて硬化剤、増粘剤、充填剤、着色剤等を添加して構成される。
【0034】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂層は、厚さが1〜30mm、望ましくは1.5〜10mmとなるように積層する。厚さが1mmより厚ければ、機械的強度及び層間剥離強度は十分であり、基材の熱膨張を抑えることができる。また、30mmより薄ければ熱硬化性樹脂や補強繊維の材料費は最小限でかつ機械的強度は十分であり、また、作業時間も短くなることによって、コストが抑えられる。
【0035】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂層は、熱硬化する前のバルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコンパウンド(SMC)を金属層の上に付着、巻きつけ、貼り付ける等の手段により層状に適用して、熱を加えて硬化させることにより形成できる。
【0036】
本発明において、特に、処理層がブラスト処理層であり、プライマー層を形成する場合であって、ブラスト処理層とプライマー層の間に金属層を介在させ、そのプライマー層として、特定のMDI変性ポリウレタン層、2層目にTDI変性ポリウレタン層を積層した場合は、特に以下のような優れた効果が得られる。
(1)基材にサンドブラスト処理した上に金属点在層を積層して、その上から1層目にMDI変性ポリウレタン層、2層目にTDI変性ポリウレタン層を積層し、さらにその上に繊維強化熱硬化性樹脂層を積層することによって、常温及び高温での層間剥離強度が従来の積層構造より大幅に向上する。
(2)層間剥離強度が向上される為、温度変化が生じる各種工場の配管でも、熱膨張の小さい繊維強化熱硬化性樹脂層によりポリプロピレン管の熱膨張が抑えられ、配管が蛇行することを防止することができる。
(3)本発明の積層構造をフランジ、バルブ等の配管部材に用いることにより、接続面からのシール性能が増す。さらに、機械的強度が向上すると同時に、雰囲気中等からの耐薬性能も向上する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図面に示す実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明が本実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0038】
〔実施例1〕
図1及び図2に基づいて第一の実施の形態を説明する。1は繊維強化熱硬化性樹脂補強管である。2はポリプロピレン製の管である。この実施形態において、ポリプロピレン管が基材となる。3はサンドブラスト処理層で、ポリプロピレン管2外表面をサンドブラストして形成されている。4は亜鉛点在層で、サンドブラスト処理層3の表面に亜鉛を溶射させ厚さ約30μmの層が形成されている。5はMDI変性ポリウレタン層で、MDI変性ポリイソシアネート類を含む一液型ポリウレタン塗料(パイオニヤシーラー#2014、九州塗料工業(株))を亜鉛点在層4表面に塗布して形成されている。6はTDI変性ポリウレタン層で、MDI変性ポリウレタン層5表面にTDI変性ポリイソシアネート類を含む一液型ポリウレタン塗料(パイオニヤシーラー#100、九州塗料工業(株))を塗布して形成されている。7は繊維強化熱硬化性樹脂層で、TDI変性ポリウレタン層6表面にガラス繊維に不飽和ポリエステル樹脂を含侵させた層からなる厚さ約6mmで形成されている。尚、本実施の形態においては、ポリウレタン層が二層形成されているが、一層でも良い。本実施の形態の繊維強化熱硬化性樹脂補強管1を化学工場の温度変化が生じる配管で用いることにより、ポリプロピレン管の熱膨張が抑えられ、配管が蛇行することを防止することができる。
【0039】
〔実施例2〕
次に、図3に基づいて第二の実施の形態を説明する。10は繊維強化熱硬化性樹脂補強フランジで、ポリプロピレン製のフランジ(基材)9表面に前記第一の実施の形態と同様に各層が形成されている。8は最外表面を形成する繊維強化熱硬化性樹脂層である。この実施形態において、ポリプロピレン製のフランジ9が基材となる。繊維強化熱硬化性樹脂補強フランジ10を化学工場等で用いた場合、配管接続面からのシール性能が増す。さらに、機械的強度が向上すると同時に、雰囲気中等からの耐薬性能も向上する。
【0040】
〔実施例3〕
次に、図4に基づいて第三の実施の形態を説明する。13は繊維強化熱硬化性樹脂補強バタフライバルブで、ポリプロピレン製のバタフライバルブ本体(基材)12の表面に前記第一の実施の形態と同様に各層が形成されている。11は最外表面を形成する繊維強化熱硬化性樹脂層である。この実施形態において、ポリプロピレン製のバタフライバルブ本体12が基材となる。繊維強化熱硬化性樹脂補強バタフライバルブ13を化学工場等で用いた場合、接続面からのシール性能が増す。さらに、機械的強度が向上しバルブの耐久性が向上すると同時に、雰囲気中等からの耐薬性能も向上する。
【0041】
次に、本発明における積層構造について、第一の実施の形態に基づいて、繊維強化熱硬化性樹脂補強ポリプロピレン管の層間剥離強度をJIS K 6850「剛性被接着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じ、試験片によって、23℃及び90℃での接着強さで確認した。各々の試験片は以下の要領で作製した。それぞれの接着強さの結果を表1に示す。また、温度別での接着強さの比較を図5に示す。
【0042】
実施例1に対応する試験片1の作成
ポリプロピレン管の代わりに縦400mm、横300mm、肉厚10mmのポリプロピレンプレートを用いた以外は第一の実施の形態と同様の方法で実施例1に対応する試験片1を得た。
【0043】
試験片2の作成
実施例1において、MDI変性ポリイソシアネート類を含む一液型ポリウレタン塗料の代わりにポリイソシアネート化合物及び塩素化ポリプロピレン等を含むプライマー(K−500、住友スリーエム(株))を用いた以外は実施例1と同様の方法で試験片2を得た。
【0044】
比較用試験片1
ポリプロピレン管(肉厚約4mm)の外表面を加熱処理し、その上からポリエチレンテレフタレート不織布を接合し、さらに繊維強化熱硬化性樹脂層(肉厚約5mm)を積層した市販の繊維強化熱硬化性樹脂補強ポリプロピレン管から切り出して比較用試験片1を得た。
【0045】
比較用試験片2
ポリプロピレン管(肉厚約6mm)の外表面を加熱軟化し、その上から約1.5mmマス目のガラスクロスを圧着し、その上から繊維強化熱硬化性樹脂層(肉厚約3mm)を積層した市販の繊維強化熱硬化性樹脂補強ポリプロピレン管から切り出して比較用試験片2を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
表1及び図5より、本発明の積層構造である本発明による試験片1及び2の接着強さ、すなわち層間剥離強度は、比較用試験片1及び比較用試験片2より得られた従来の積層構造より大幅に向上されており、特に90℃において顕著である。
【0048】
次に、本発明における積層構造について、第一の実施の形態に基づいて繊維強化熱硬化性樹脂補強ポリプロピレン管の90℃における管の伸縮率をポリプロピレン管と共に以下の要領で試験した。それぞれの伸縮率を表2に示す。
【0049】
<試験及び測定方法>
以下の要領で作成した本発明対応試験管と比較用試験管の、各々の同一断面上対角な位置4点を通る長手方向を測定し、その平均値を各々の管の全長とする。各々予め15℃にて全長を測定し、90℃に加熱した恒温槽に各々の管を入れ、6時間後に取り出し、間髪入れずに常温時に測定した同じ箇所を測定し、平均値を取り、管の全長を測定する。15℃時と90℃時の管の全長の差(伸縮量)と常温時の全長との比を伸縮率として表し、本発明対応試験管と比較用試験管との伸縮率の差で、本発明の熱膨張抑制効果を確認した。
【0050】
<本発明対応試験管>
実施例1の管を呼び径125mm、肉厚12.8mm、長さ約4mのポリプロピレン製の管を基材とし、MDI変性ポリウレタン層をパイオニアシーラー#2014の代わりにパイオニヤシーラー#403を用い、繊維強化熱硬化性樹脂層の厚さを約6mmのものから厚さ約2.7mmもので形成させた以外は第一の実施の形態と同様の方法で本発明に対応する試験管を得た。
【0051】
<比較用試験管>
前記本発明に対応する試験管に用いた基材である呼び径125mm、肉厚12.8mm、長さ約4mのポリプロピレン製の管を比較用試験管とした。
【0052】
【表2】

【0053】
表2より、本発明の積層構造である本発明対応試験管の伸縮率は、比較用試験管に比べ、伸縮率が1/6になり、熱膨張抑制効果が顕著にでていることが判る。よって、高温流体が流れる配管ラインに本発明の積層構造を用いた管を配管しても、従来のように管が蛇行することなく、初期状態とほぼ同状態で配管が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の積層構造をポリプロピレン管に用いた時の要部拡大縦断面図。
【図2】本発明の積層構造をポリプロピレン管に用いた時の各層を示す模式図。
【図3】本発明の積層構造をフランジに用いた時の一部切欠斜視図。
【図4】本発明の積層構造をバタフライバルブに用いた時の一部切欠斜視図。
【図5】温度別での接着強さの比較。
【符号の説明】
【0055】
1 繊維強化熱硬化性樹脂補強管
2 ポリプロピレン管(基材)
3 サンドブラスト処理層
4 亜鉛点在層
5 MDI系ポリウレタン層(プライマー層)
6 TDI系ポリウレタン層(プライマー層)
7 繊維強化熱硬化性樹脂層
8 繊維強化熱硬化性樹脂層
9 フランジ(基材)
10 繊維強化熱硬化性樹脂補強フランジ
11 繊維強化熱硬化性樹脂層
12 バタフライバルブ本体(基材)
13 繊維強化熱硬化性樹脂補強バタフライバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に繊維強化熱硬化性樹脂層が積層された積層構造において、基材から順に表面処理層、金属層、繊維強化熱硬化性樹脂層が積層されたことを特徴とする積層構造。
【請求項2】
前記基材が非金属からなり、表面処理が施されたことを特徴とする請求項1記載の積層構造。
【請求項3】
前記表面処理が、サンドブラスト法による処理であることを特徴とする請求項1または2記載の積層構造。
【請求項4】
前記金属層が、表面処理が施された層または金属が点在している層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造。
【請求項5】
前記積層構造における金属層と繊維強化熱硬化性樹脂層の間に、プライマー層が介在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造。
【請求項6】
前記プライマー層が、ポリウレタンからなることを特徴とする請求項5記載の積層構造。
【請求項7】
前記プライマー層が、少なくともイソシアネート系ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項5または6記載の積層構造。
【請求項8】
前記プライマー層が、変性の異なる少なくとも2層のポリウレタンからなることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の積層構造。
【請求項9】
前記基材が、樹脂からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層構造。
【請求項10】
樹脂が、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の積層構造。
【請求項11】
前記積層構造が配管部材に用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−150759(P2006−150759A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344833(P2004−344833)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】