説明

積層用ポリエチレン系樹脂材料、それを用いた積層体、発泡加工紙並びに断熱容器及びその製造方法

【課題】加熱によって十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料、それを用いた発泡性積層体、発泡層を有した発泡加工紙及びそれを使用したカップなどの断熱容器を提供する。
【解決手段】高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(C)100重量部に対して、0.001〜1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性してなることを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料、それを用いた発泡性積層体、発泡層を有した発泡加工紙、並びにそれを使用したカップなどの断熱容器およびその製造方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層(ラミネート)用ポリエチレン系樹脂材料、それを用いた積層体、発泡加工紙並びに断熱容器及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ラミネート時の成形加工性が良好で、加熱によって十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料、その樹脂材料を用いた発泡性積層体、該発泡性積層体から得られる発泡加工紙、並びに該発泡性積層体を使用したカップなどの断熱容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装材等の積層体に供せられる、積層(ラミネート)用樹脂または積層用樹脂組成物としては、低密度ポリエチレン樹脂、あるいは低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との組成物等が一般的に用いられている(例えば、特許文献1〜11等参照。)。
しかしながら、昨今においては、生産性の向上や環境問題等から、より高速化が要求され、より厳しい加工条件やダウンゲージ、ロスの削減などが求められている。
これらの要求に伴い、ラミネート加工時のドローレゾナンスやネックインが小さく、ロスが少ない等の成形加工性の安定性、あるいはダウンゲージに伴う、機械的強度の向上等の諸性能に優れる樹脂材料が要求されている。これらの要求を満足させるために、広い分子量分布を有する樹脂組成物や、溶融張力の高い低密度ポリエチレン樹脂とメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との組成物等が提案されているが、いまだ十分な性能を満足するに至っていない。
【0003】
また、紙基材を用いたラミネート製品、例えば、紙容器や発泡紙コップ等の断熱容器などに供せられる積層用ポリエチレン樹脂、その組成物においても、成形加工性に優れ、より高い発泡性能に優れた材料が求められている。
例えば、断熱性を有する容器としては、従来は合成樹脂製の発泡体が多く使用されている。また、廃棄し易く印刷適性の良い容器として、紙を複数枚使用した断熱紙容器や、紙基材の両面をポリエチレン樹脂層で積層された材料を使用し、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させ断熱性を付与した紙容器がある。
【0004】
また、紙を基材とした技術としては、紙の少なくとも一面にポリエチレンを押出ラミネートし、他面には、蒸気圧保持層を形成させ加熱により、表面に不規則な凹凸模様を有する加工紙を製造する技術がある(例えば、特許文献12参照。)。
さらに、胴部材の片側壁面に熱可塑性樹脂フィルムがラミネートまたはコーティングされ、加熱によりフィルムを発泡させて発泡断熱層を形成させる技術が提案されている(例えば、特許文献13参照。)。
また、容器胴部材及び底部材からなる紙製容器において、容器胴部材の外壁面の一部に有機溶剤含有インキによる印刷を施し、胴部材外壁面全体を熱可塑性合成樹脂フィルムで被覆されている紙容器を加熱することにより、印刷部分に比較的厚い発泡層を存在させる技術が提案されている(例えば、特許文献14参照。)。
また、少なくとも外面側からシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン−αオレフィン共重合体の発泡層、紙を主体とする基材層、熱可塑性樹脂層とを備えた積層体からなる発泡加工紙、積層体が提案されている(例えば、特許文献15、16参照。)。
こうして得られた発泡層を保有する加工紙、発泡積層体は、発泡層により容器とした際に、手とのなじみがよく滑りにくく、断熱性に優れるとともに、紙を複数枚使用した断熱性容器に比較し、コストが安いというメリットがある。
また、特許文献17においては、紙容器における胴部材原材料シートの紙基材の少なくとも片面に、溶融状態の熱可塑性樹脂をTダイから紙基材に接するまでの時間が0.11〜0.33秒となるように押出ラミネートしてなる紙製容器の胴部材原材料シートが示され、低密度ポリエチレンを2種混合してMFRを調整した組成物が開示されている。
【0005】
しかし、従来の発泡層を有する加工紙、および積層体は、発泡性が十分とは言えず、更なる発泡性の改良が望まれていた。また、発泡性を向上させようとして、MFRを高くすると、発泡層の外観が不良となることや、押出ラミネート加工時の加工性が不安定となる等の問題があった。
【特許文献1】特開平09−234837号公報
【特許文献2】特開平10−120841号公報
【特許文献3】特開平10−278196号公報
【特許文献4】特開2000−052514号公報
【特許文献5】特開2000−053823号公報
【特許文献6】特開2002−127333号公報
【特許文献7】特開2003−276131号公報
【特許文献8】特開2004−256613号公報
【特許文献9】特開2005−008667号公報
【特許文献10】特開2005−153899号公報
【特許文献11】特開2000−265388号公報
【特許文献12】特公昭48−32283号公報
【特許文献13】特開昭57−110439号公報
【特許文献14】特開平07−232774号公報
【特許文献15】特開平10−128928号公報
【特許文献16】特開2007−168178号公報
【特許文献17】特開2008−105747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、特定の2種の高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂をラジカル発生剤で変性したポリエチレン系樹脂材料であって、従来のラミネート時の成形加工性を改良し、特に、紙基材中に包含される水分等が加熱によって蒸発する水蒸気等で十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られ、紙カップ等の断熱容器に好適に使用される積層用ポリエチレン系樹脂材料、それを用いた発泡性積層体、高い発泡層(セル)を有した発泡加工紙及びカップなどの断熱容器・その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、性状の異なる2種の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂を用い、特に特定のMFRと密度を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)5〜95重量%と、特定の密度とMFRを有し、特定範囲のメモリーエフェクト(ME)値を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)95〜5重量%とから構成されるポリエチレン系樹脂組成物(C)をラジカル発生剤で変性したポリエチレン系樹脂材料(X)が、押出ラミネート加工時のネックインが小さく、かつ成形安定性等の諸性能に優れるポリエチレン系樹脂材料となることを、見出した。また、紙を主体とする基材の片面に、該ポリエチレン系樹脂材料(X)からなるポリエチレン系樹脂層(I)を少なくとも一層形成した積層体、好ましくは、さらにもう一方の面に、基材から放出される水蒸気等を保持する特定の融点を有する熱可塑性樹脂(D)を用いた熱可塑性樹脂層(II)を形成した積層体を、加熱することにより、ポリエチレン系樹脂層(I)が発泡して、発泡(セル)層が高く、均一で、発泡層の外観が良好な発泡加工紙が得られることを見出した。さらに、該積層体を用いて、容器に成形した後、加熱発泡させることにより優れた性能を有するカップ等の断熱容器が得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(C)100重量部に対して、0.001〜1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性してなることを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)は、それぞれ高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)及び(B1)であり、且つ積層用ポリエチレン系樹脂材料が下記(x1)〜(x3)の特性を満足することを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
(x1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分である。
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(x3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記低密度ポリエチレン樹脂(A1)が下記(a1)〜(a2)の特性を満足し、前記低密度ポリエチレン樹脂(B1)が下記(b1)〜(b3)の特性を満足することを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
(a1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート[MFR(a)]が0.05〜100g/10分である。
(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート[MFR(b)]が0.05〜100g/10分である。
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.7以上である。
【0011】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記低密度ポリエチレン樹脂(A1)のMFR(a)と低密度ポリエチレン樹脂(B1)のMFR(b)との比[MFR(a)/MFR(b)]が下記式(1)を満足することを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
式(1): MFR(a)/MFR(b) >1
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と基材との少なくとも2層を含むことを特徴とする積層体が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記基材は、紙を主体とした基材であることを特徴とする積層体が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、紙を主体とした基材の一方の面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で形成した発泡させるためのポリエチレン樹脂層(I)と、該基材の他の面に、基材から放出される水蒸気または揮発ガスを保持するための熱可塑性樹脂(D)で形成した熱可塑性樹脂層(II)からなることを特徴とする積層体が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、積層用ポリエチレン樹脂材料(X)と熱可塑性樹脂(D)との融点差が下記式(2)を満足することを特徴とする積層体が提供される。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第6〜8のいずれかの発明に係る積層体を加熱し、少なくとも紙を主体とする基材中の水蒸気または揮発ガスでポリエチレン樹脂層(I)を発泡させてなることを特徴とする発泡加工紙が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、ポリエチレン樹脂層(I)を発泡させて形成した発泡セルの高さが370μm以上であることを特徴とする発泡加工紙が提供される。
【0015】
また、本発明の第11の発明によれば、第6〜8のいずれかの発明に係る積層体を用いてなる断熱容器であって、断熱容器は、積層体を用いて成型した容器を、加熱することにより、少なくとも紙を主体とする基材中の水蒸気または揮発ガスでポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させてなることを特徴とする断熱容器が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、カップ状容器であることを特徴する断熱容器が提供される。
【0016】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で、少なくとも紙を主体とする基材の一方の面に、厚さが20〜100μmのポリエチレン樹脂層(I)を形成し、該基材の他面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)より高い融点を有する熱可塑性樹脂(D)で、厚さが10〜100μmの熱可塑性樹脂層(II)を形成した積層体を、容器に成形した後、温度100〜200℃に加熱して、該基材から放出される水蒸気または揮発ガスによってポリエチレン樹脂層(I)を発泡させることを特徴とする断熱容器の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、ポリエチレン樹脂層(I)を形成する積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と基材から放出される水蒸気または揮発ガスを保持する熱可塑性樹脂(D)との融点差が下記式(2)を満足することを特徴とする断熱容器の製造方法が提供される。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]
【0017】
本発明は、上記した如く、積層用ポリエチレン系樹脂材料などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第1の発明において、ラジカル発生剤は、環状有機過酸化物類等の有機過酸化物、ジヒドロ芳香族又はジクミル化合物であることを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料。
(2)第13又は14の発明に係る断熱容器の製造方法により得られることを特徴とする断熱容器。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、性状の異なる2種の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂をラジカル発生剤で変性した変性ポリエチレン樹脂からなる積層(ラミネート)用ポリエチレン樹脂材料であって、分子量分布や溶融弾性等の調整条件が広く、ラミネート成形の加工条件の選択幅が広くなり、成形安定性、発泡性等の諸性能が大幅に改良される。特に、好ましくは特定のMFRと密度を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)5〜95重量%と、特定の密度、MFRを有し、特定範囲のメモリーエフェクト(ME)値を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)95〜5重量%とから構成される、2種の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを用いたポリエチレン系樹脂組成物(C)をラジカル発生剤で変性したポリエチレン系樹脂材料(X)が、ラミネート成形時のネックインが小さく、ロスも少なく、成形安定性等の諸性能に優れる。
また、紙を主体とする基材の片面に、該積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で形成したポリエチレン系樹脂層(I)を少なくとも一層有する発泡性積層体、好ましくは、さらにもう一方の面に、基材から放出される水蒸気等を保持する特定の融点を有する熱可塑性樹脂(D)を用いた熱可塑性樹脂層(II)を有する積層体を加熱することにより、ポリエチレン系樹脂層(I)が発泡して、発泡(セル)層が高く、均一で、発泡層の外観が良好な発泡加工紙を提供することができる。
さらに、該積層体を用いて容器に成形した後、加熱発泡させることにより、優れた断熱性能を有するカップ等の断熱容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の積層用ポリエチレン樹脂材料、それを用いた発泡性積層体、発泡加工紙、並びに断熱容器およびその製造方法について、項目毎に詳細に説明する。
【0020】
I.積層用ポリエチレン樹脂材料
本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料は、高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(変性用原料樹脂)(C)100重量部に対して、0.001〜1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性したことを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)である。
【0021】
[変性用原料樹脂]
1.高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)
本発明に係る高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)とは、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂、エチレンとビニルエステルとの共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、それらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、変性用原料樹脂(C)としては、2種の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂組成物、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体との組成物、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との組成物等が好ましく、特に高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂を主体とした組成物がラミネート成形時の成形加工性等がよいことから、より好ましい。
【0022】
(1)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂
本発明において、上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(低密度ポリエチレン樹脂と称することもある)とは、JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート(MFR、以下MFRと省略することもある。)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜90g/10分、より好ましくは0.1〜80g/10分の範囲で選択される。
上記メルトフローレート(MFR)が0.01g/10分未満では、高速加工性が悪化し、ハンドリングが悪くなる。一方、メルトフローレート(MFR)が100g/10分を超えるものは、押出ラミネート成形加工時の加工安定性が悪化し、好ましくない。
【0023】
また、試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度は、0.905〜0.940g/cm、好ましくは0.907〜0.938g/cm、0.910〜0.937g/cmの範囲で選択される。上記密度が0.905g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪く、ハンドリングが悪くなるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0024】
(2)エチレンとビニルエステルとの共重合体
上記エチレンとビニルエステル共重合体は、エチレンを主成分とし、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。
これらの中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。
また、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。さらに、ビニルエステル含有量は3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
【0025】
(3)エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体
また、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸、その誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸のアルキルエステル共重合体;エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体等の二元共重合体又は多元共重合体等が挙げられる。
【0026】
すなわち、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル等を挙げることができる。
この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0027】
2.低密度ポリエチレン樹脂組成物
本発明において、変性用原料樹脂として、高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)の好ましい態様は、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(低密度ポリエチレン樹脂とも称す)(A1)及び(B1)の2種を混合した低密度ポリエチレン系樹脂組成物(C1)であり、好ましくは特定の高MFRの低密度ポリエチレン樹脂(A1)と特定の低MFRと高メモリーエフェクト(ME)を有する低密度ポリエチレン樹脂(B1)との組成物であって、下記(a1)〜(a2)の要件を満足する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)95〜5重量%と、該(A1)樹脂以外の下記(b1)〜(b3)の要件を満足する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)95〜5重量%とからなる低密度ポリエチレン樹脂組成物である。
(a1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(a)が0.01〜100g/10分である。
(a2)試験温度23℃、JIS−K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b)が0.01〜100g/10分である。
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.7以上である。
【0028】
(1)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)は、(a1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFRが0.01〜100g/10分、(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cm以下を満足する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂である。
【0029】
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)のMFRについては、(a1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(a)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、より好ましくは0.1〜70g/10分の範囲である。
上記MFRが0.01g/10分未満では、押出ラミネート加工時の高速加工性等が悪化し好ましくない。また、MFRが100g/10分を超えるものは、押出ラミネート加工性が不安定となる懸念生じるため、好ましくない。
【0030】
また、上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)の密度については、(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cm、好ましくは密度0.907〜0.937g/cm、より好ましくは0.910〜0.935g/cmの範囲である。上記密度が0.905g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪く、ハンドリングが悪くなる懸念が生じるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0031】
(2)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)は、(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b)が0.01〜100g/10分、(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cm、(b3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.7以上を満足する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂である。
【0032】
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)のMFRについては、(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、より好ましくは0.1〜70g/10分である。
上記MFR(b)が0.01g/10分未満では、押出ラミネート加工時の高速加工性が悪化し、また、MFRが100g/10分を超えるものは、押出ラミネート加工時の加工安定性が悪化する懸念が生じるので、好ましくない。
【0033】
また、上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)の密度については、(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cm、好ましくは密度0.907〜0.937g/cm、より好ましくは0.910〜0.935g/cmの範囲である。上記密度が0.905g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪く、ハンドリングが悪くなる懸念が生じるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0034】
さらに、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)のメモリーエフェクトは、(b3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.7以上、好ましくは1.95以上、より好ましくは2.0以上である。メモリーエフェクトが1.7未満では、後述のポリエチレン系樹脂組成物(C)を調整する際の調製範囲が限定され、押出ラミネートなど加工時のネックインの過多の原因となり、加工性の不安定要因となるばかりでなく、発泡倍率の向上が望めず、均一な発泡セルが得られないものとなる懸念が生じるので、好ましくない。
【0035】
また、本発明の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂組成物の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)のMFR(a)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)のMFR(b)との関係が、下記式(1)、好ましくは式(1−1)を満足することが望ましい。
MFR(a)/MFR(b)>1 −−−−−(1)
MFR(a)/MFR(b)>2 −−−−−(1−1)
【0036】
上記の式(1)を満足することにより、ラミネート成形時の成形性がより円滑となり、ネックインによるロスも大幅に改良される。また、発泡加工紙や断熱容器の製造の際の発泡性が良好となる。
【0037】
(3)低密度ポリエチレン樹脂(A1)と樹脂(B1)との配合割合
上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)の配合割合は、樹脂(A1)5〜95重量%と、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)95〜5重量%、好ましくは樹脂(A1)10〜90重量%と樹脂(B1)90〜10重量%、より好ましくは樹脂(A1)15〜85重量%と樹脂(B1)85〜15重量%の範囲である。
上記樹脂(A1)が5重量%未満で、樹脂(B1)95重量%を超える場合、または樹脂(A1)が95重量%を超え、樹脂(B1)5重量%未満では、ポリエチレン樹脂組成物(C)の諸物性が調整できない等の不都合が生じる懸念が生じ、惹いては、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の押出ラミネート加工時のネックインや加工時の安定性が悪くなる等の不都合が生じるおそれがある。
【0038】
(4)高圧ラジカル重合法
(i)重合条件
本発明に係る高圧ラジカル重合法は、酸素、有機過酸化物などのラジカル開始剤の存在下において、超高圧下、塊状または溶液重合によって製造される。
重合温度は、100〜300℃、好ましくは120〜280℃、より好ましくは150〜250℃の範囲で重合される。重合温度が100℃未満では、収率の低下や安定した製品を製造できないおそれがあり、一方、300℃を超える場合には、反応が安定せずに、分子量の大きい重合体を得ることが難しくなる。
また、重合圧力は、50〜400MPa、好ましくは70〜350MPa、より好ましくは100〜300MPaの条件下であり、重合圧力が50MPa未満では、充分な分子量のものが得られず、加工性や物性の低下が生じ、一方、400MPaを超える場合には、安定的な製造運転が行い難いものとなる。
【0039】
(ii)重合操作
製造に際しては、基本的には、通常の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンの製造設備及び技術を利用することができる。反応器の形式としては、攪拌翼付のオートクレーブ型、又はチューブラー型のものを使用することができ、必要に応じて、複数個の反応器を直列又は並列に接続して多段重合をすることもできる。更に、オートクレーブ型反応器の場合には、反応器内部を複数ゾーンに仕切ることにより、温度分布を設けたり、より厳密な温度制御をすることも可能である。このような操作によって、メモリーエフェクト等を制御することが可能である。
【0040】
(iii)ラジカル開始剤
ラジカル開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジt−ブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイド、i−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、1,1−ビスt−ブチルパーキシシクロヘキサン、2,2−ビスt−ブチルパーオキシオクタン、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等の有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160〜200℃のものが好ましい。
【0041】
上記ラジカル開始剤の配合量は、特に限定されないが、ポリエチレン100重量部に対し、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部の範囲である。また必要ならば、連鎖移動剤等を用いて、分子量調節などを行ってもよい。
【0042】
上記連鎖移動剤としては、水素、プロピレン、ブテン−1、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族炭化水素又はハロゲン置換炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロパラフィン類、クロロホルム、四塩化炭素、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族カルボニル化合物、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、並びに芳香族化合物、例えばトルエン、ジエチルベンゼン及びキシレンのような化合物が挙げられる。
【0043】
[ポリエチレン系樹脂組成物(C)(変性用原料樹脂)の変性]
本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、変性用原料樹脂としての、上記高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の性状の異なる高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%からなるポリエチレン系樹脂組成物(C)に、ラジカル発生剤を配合し、変性したことを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料であり、好ましくはそれらが低密度ポリエチレン樹脂であり、特に特定の高MFRを有する低密度ポリエチレン樹脂(A1)、および低MFRで高メモリーエフェクトを有する低密度ポリエチレン樹脂(B1)を選択し、ラジカル発生剤の存在下で、変性したものである。
以下変性方法について詳述する。
【0044】
上記変性で得られる組成物においては、(1)高MFRのポリエチレン樹脂(A1)と低MFRの低密度ポリエチレン樹脂(B1)を組み合わせ、かつ少量のラジカル発生剤を使用して変性することにより、ポリエチレン樹脂に微架橋が起こり、ME(メルトエフェクト)値の向上と調製を容易にコントロールすることができること、(2)ラミネート加工時のネックインの改良が可能であること、(3)発泡セルの高さと均一性の向上と、発泡体セルの破泡が防止され、製品外観の向上等が図れる。
【0045】
1.変性方法
上記性状の異なる2種の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)の変性方法としては、押出機内で樹脂とラジカル発生剤を同時に溶融混練して、反応させる溶融反応法、または有機溶媒に樹脂とラジカル発生剤を溶解し、加温混合攪拌しながら反応させる溶液反応法等が好適に用いられる。
【0046】
上記変性を好適に行うためには、ラジカル反応前に、樹脂とラジカル発生剤とを定量ブレンドし、均一に分散することが必要である。これは、ラジカル反応設備に定量供給装置により計量しながら樹脂とラジカル発生剤を供給する方法、樹脂とラジカル発生剤とをタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどの混合装置を用いてドライブレンドしてからラジカル反応設備に供給する方法、ドライブレンドした後、押出機で溶融ブレンドした後にラジカル反応設備に供給する方法、押出機に樹脂とラジカル発生剤をそれぞれ定量供給しながら溶融ブレンドしてからラジカル反応設備に供給する方法などが用いられる。
【0047】
上記ラジカル発生剤の存在下で変性反応を行う場合においては、ラジカル反応を抑制した温度で十分に樹脂中にラジカル発生剤を分散させることが肝要であり、そのためには、ラジカル反応を抑制できる混練温度の選定が重要となる。
変性時のラジカル反応温度[T(1)](℃)は、下記の関係式(2)を満たすことが望ましく、関係式(2)’を満たすことがより好ましい。
関係式(2):T60+30<T(1)<T60+120
関係式(2)’:T60+40<T(1)<T60+110
(式中、T60は、ラジカル発生剤の1時間半減期温度[℃]を表す。)
【0048】
また、溶融ブレンド法では、ラジカル反応に必要な樹脂とラジカル発生剤の全量を溶融ブレンドする方法、ラジカル発生剤の全量と樹脂の一部だけを溶融ブレンドしておきラジカル反応時に希釈ブレンドする方法等を用いることができるが、ラジカル反応に必要な樹脂とラジカル発生剤の全量を溶融ブレンドする方法の方が好適である。
溶融ブレンドでは、ラジカル反応を抑制した温度で十分に樹脂中にラジカル発生剤を分散させることが目的である。そのためには、ラジカル反応を抑制できる混練温度の選定が重要となる。本発明では、この混練温度[T(2)](℃)は、下記関係式(3)を満たすことが好ましい。
関係式(3):Tm<T(2)<T60+5
(式中、Tmは、樹脂の融点[℃]を表し、T60は、ラジカル発生剤の1時間半減期温度[℃]を表す。)
【0049】
溶融混練であるため、樹脂の融点(Tm)以下での混練は、実質的に不可能である。また、混練温度が上記式(3)の上限を超えると、無視し得ない量のラジカル発生剤が分解するので好ましくない。さらに、ラジカル発生剤の分解速度は、高温ほど速くなるため、ラジカル反応をさせない溶融ブレンドをするためには、できるだけ低温で混練することが望ましく、下記関係式(3)’で行うことがより好ましい。
関係式(3)’:Tm<T(2)<T60−3
(式中、Tmは、樹脂の融点[℃]を表し、T60は、ラジカル発生剤の1時間半減期温度[℃]を表す。)
【0050】
本発明に係るポリエチレン樹脂材料(X)を製造する好ましい方法として、ポリエチレンとラジカル発生剤とを、上記の関係式(2)又は(2)’を満たす温度T(1)で溶融混練する工程を含むことを特徴とする方法でも良いし、また、別の方法として、ポリエチレンとラジカル発生剤とを、上記の関係式(3)又は(3)’を満たす温度T(2)で溶融混練する第一工程と、次いで、前記第一工程の生成物を前記の関係式(2)又は(2)’を満たす温度T(1)で溶融混練する第二工程を含むことを特徴とする方法でも良い。
【0051】
2.ラジカル発生剤
上記ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族、ジクミル化合物等が挙げられる。
その有機過酸化物としては、例えば、(i)t−ブチルハイドロパーオサキイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(ii)メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(iii)イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(iv)ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルヘキシン)−3、ジ−t−アミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、(v)2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール、(vi)t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、(vii)ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカルボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類、(viii)3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等の環状有機過酸化物類などが挙げられる。中でも好ましいのは、環状有機過酸化物類である。
【0052】
ラジカル発生剤の配合量は、性状の異なる高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)100重量部に対し、0.001〜1.0重量部、好ましくは0.002〜0.5重量部、より好ましくは特0.003〜0.3重量部であることが好ましい。ラジカル発生剤の配合量が1.0重量部を超えると、流動性の悪化や、成形後のフィルム中のゲルやフィッシュアイの発生原因となるおそれが生じる。
【0053】
3.積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)
本発明の変性後の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、(x1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFRが0.1〜100g/10分、好ましくは、0.3〜80g/10分、より好ましくは0.5〜70g/10分である。
MFRが0.1g/10分未満では、押出ラミネート時の高速加工性が悪く、発泡セルが大きくならない可能性がある。また、MFRが100g/10分を超えるものは、押出ラミネート時の加工安定性が悪くなり、発泡セルが破裂する可能性が生じる。
【0054】
また、上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、(x2)密度が0.905〜0.940g/cm3、好ましくは0.907〜0.937g/cm、より好ましくは0.910〜0.935g/cmの範囲である。上記密度が、0.910g/cm未満では、ラミネート成形樹脂のすべりが悪く、ハンドリングが悪くなる懸念が生じるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0055】
さらに、上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、(x3)メモリーエフェクト(ME)が1.5以上、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.7以上である。MEが1.5以上であれば、発泡セル高さを十分に高くでき、押出ラミネートなど加工時のネックインが大きくならないので、加工性も安定する。特に、メモリーエフェクト(ME)が、1.5未満では、発泡セルが十分に高くならず、かつ均一な発泡セルが得られない可能性がある。
【0056】
(1)メモリーエフェクト(ME)の測定法
上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の(x3)および高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B)の(b3)のメモリーエフェクト(ME)は、JIS K7210で使用されるメルトインデクサー(三鈴エリー(株)製半自動メルトテンション計)を使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、以下のようにして測定される。
【0057】
装置に2.095mmφのMFR測定用ノズルをセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS−3033)を用いて測定する。
測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD(2.095mm)として、次式によりMEが求められる(ただし、実測値は少数点第2位で四捨五入を行った)。
ME=D/D
【0058】
(2)添加剤等
本発明では、上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の特性を損ねない範囲で、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を配合してもよい。
また、上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の特性を損ねない範囲で、前記のラジカル重合法ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のポリオレフィン系樹脂等を配合しても構わない。
【0059】
II.積層体
本発明の積層体は、上記積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を少なくとも1層有する基材との積層体であって、この積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、ラミネート成形時に、前記[発明の効果]の項に記載されるような優れた諸性質を発揮する。
【0060】
1.基材
上記基材として、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのプロピレン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などのナイロン又はポリアミド系樹脂;ポリアクリロニトリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、セロハンなどのセルロース系ポリマーなどのフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物)、アルミニウム、鉄、銅、またはこれらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、金、銀、アルミニウム等の金属またはこれら金属の酸化物以外の化合物等の蒸着フィルム、上質紙、クラフト紙、板紙、グラシン紙、合成紙等の紙類、セロファン、織布、不織布等が用いられる。
【0061】
2.積層体の用途
本発明の積層体は、上記の基材と積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いて、通例のラミネート方法で種々様々の積層体を製造できる。
なお、本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、特にラミネート積層体を製造する際のラミネート性能(高速成形加性、ドローダウン性、低ネックイン等)に優れ、目的、用途によって、各種基材と積層できる。
【0062】
したがって、本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いた積層体は、包装用材料、容器等として活用される。例えば、Al等金属に押出ラミネートした各種の積層フィルムないしシートは、菓子、スナック、即席ラーメン、ふりかけ、粉末スープなどの乾燥食品、ハム、ソーセージ、畜肉などの肉製品、こんにゃく、漬け物、味噌、液状スープなどの水物食品、液体容器などの各種食品や液体洗剤、液体薬品などの食品分野に使用される袋、容器包装にも、その優れた接着性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、ホットタック性、破袋強度、自動充填包装適性などの特性を活かして、有効に使用することができる。また、牛乳等の乳製品、果汁、お茶、酒等の紙容器、あるいは、輸液バッグ、容器用の医療用分野等に好適に使用される。
特に、本発明の断熱容器は、均一で、高い発泡セルを有し、外観性、印刷性、保温性等に優れ、かつ比較的耐熱性を有することから、沸騰水をもちいたカップ麺、スープ用容器や、電子レンジ用容器、トレー等としても好適に使用される。
【0063】
3.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、特に制約はないが、溶融樹脂をダイレクトに積層する押出ラミネート法、事前にフィルムとしたものを積層するサンドイッチラミネート法、ドライラミネート法、共押出法等により、各種基材に押出コーティング或いは基材と共押出することによって得ることができる。
【0064】
押出ラミネート法は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。
また、サンドイッチラミネート法は、基材と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法である。
また、ドライラミネート法は、紙と積層するフィルムを貼合する接着剤および/または接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤および/または接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
また、共押出法は、複数の押出機を使用して、基材を構成する樹脂と本発明の積層用ポリエチレン系樹脂組成物とをともに共押出して共押出ダイスの出口手前で合接させて積層体を製造する方法である。
【0065】
4.発泡性積層体
本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、特にラミネートによる積層体を製造する際のラミネート性能(高速成形加性、ドローダウン性、低ネックイン等)に優れるばかりでなく、紙カップ等の断熱性材料の製造時の発泡特性にも、優れるという特性を有している。紙を主体とする基材を使用した発泡加工紙、断熱容器等を製造する際に、特異な効果を発揮するものである。
以下に、本発明の発泡性積層体について、さらに詳述する。
【0066】
本発明の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と紙を主体とする基材との積層体は、紙を主体とした基材の一方の面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いて形成されたポリエチレン樹脂層(I)を設けた積層体であって、一般の加工紙として使用できるものの、該積層体を加熱することにより、主に紙基材に包含する水分を蒸発させて、ポリエチレン樹脂層(I)を発泡させることができる発泡性積層体を得ることができる。
【0067】
本明細書中における発泡性とは、加熱により発泡する性質を指す。発泡性がよいとは、主に高い発泡倍率を得ることができる状態を指し、紙基材が包含する主に水分が加熱されることよって発生する水蒸気で、積層体の厚さ方向に発泡セルが生長する際の発泡セルの高さが尺度になる。また、発泡セル高さの均一性も尺度に取り入れられる。
【0068】
(1)紙を主体とする基材
本発明において、紙を主体とする基材は、基材に含まれた水分等の蒸気、揮発ガスによって、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。
本発明において、紙を主体とする基材とは、(i)紙、あるいは(ii)予め紙に加熱により揮発性ガスを発生する物質をコーティングした基材、ラミネート成形過程で紙とポリエチレン樹脂層(I)間に加熱により、揮発性ガスを発生する物質をコーティングしたもの、(iii)紙を主体とする基材中へ、加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合した基材を意味するものである。
【0069】
本発明においては、主に紙に含まれる水分が加熱によって発生される水蒸気の作用によって、基材表面のポリエチレン樹脂層(I)を発泡させるものであるが、加熱分解によって発生する揮発ガスによって、基材表面のポリエチレン樹脂層(I)を発泡させることができるものでも良く、特に限定されるものではない。
【0070】
上記(i)紙としては、上質紙、クラフト紙、アート紙、再生紙、合成紙、樹脂とゼオライト、炭酸カルシウム等の無機物含有するシート等が挙げられる。
該紙の坪量は、100〜400g/m、特に150〜350g/mが好ましい。また、紙の含水率は、4〜15%、好ましくは5〜13%、より好ましくは5〜12%程度のものが例示される。
【0071】
また、(ii)紙に、熱により揮発性ガスを発生する物質をコーティングした基材としては、紙に、溶剤系インキや水溶性のインキ、塗料、接着剤をコーティングした基材等が挙げられ、例えば、特開2000−238225号公報等にみられるように、基材とポリエチレン樹脂層(I)間に、発泡性物質を添加した接着剤層を設け、加熱によって発生する発泡性物質から発生する揮発性ガスによって、基材表面のポリエチレン樹脂層(I)の発泡を促進させることが可能である。
【0072】
また、(iii)基材中に、加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合した基材に使用される揮発性ガスを発生する物質としては、無機または有機の発泡剤、含水ポリマー、発泡剤内包のマイクロカプセル等が挙げられ、例えば、特開2002−145239号公報等にみられるように、抄紙工程において熱発泡性の発泡剤を添加して抄紙した紙、あるいは紙に発泡剤を内包するマイクロカプセル、含水させた吸水性ポリマー等を配合した基材等などが挙げられる。
さらに、紙を主体とする基材には、パルプ紙や合成紙等の紙にインクなどで絵や文字、模様などを印刷することもできる。
【0073】
(2)ポリエチレン樹脂層(I)
本発明に係るポリエチレン樹脂層(I)は、前記高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(C)100重量部に対して、0.001〜1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性してなる積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で構成され、下記(x1)〜(x3)の要件を満足する積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)が望ましい。
(x1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFRが0.1〜50g/10分である。
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(x3)メモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【0074】
本発明に係るポリエチレン樹脂層(I)は、紙を主体とする基材の少なくとも片面に、通例のラミネート方法で、ポリエチレン系樹脂材料(X)を積層して形成し、紙を主体とする基材に包含される主に水分を、加熱によって蒸発、発泡させるものであって、発泡倍率が高く、均一な発泡セルを形成させるためには、ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点が80〜120℃の範囲、好ましくは90〜110℃程度の融点範囲内で選択することにより達成することができる。
【0075】
ポリエチレン樹脂層(I)の厚みについては、特に限定されないが、通例では20〜100μmであり、発泡層厚みを高くするという点で、30〜100μmが好ましい。ポリエチレン樹脂層(I)の厚みが20μm未満では、発泡層厚みを十分に高くすることができないおそれが生じる。
【0076】
(3)熱可塑性樹脂層(II)
本発明において、使用される熱可塑性樹脂層(II)には、熱可塑性樹脂(D)が用いられ、例えば、高・中・低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチル−ペンテン−1樹脂等の炭素数2〜10のα−オレフィンの単独重合体またはそれらの相互共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらとの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂等の、紙基材と接着性の乏しい樹脂を使用する場合においては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸との共重合体等の通例の接着性樹脂等を介して、積層体としても良い。
【0077】
また、上記熱可塑性樹脂層(II)には、必要に応じて、上記熱可塑性樹脂層(II)の特性を損ねない範囲で、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を配合してもよい。
【0078】
さらに、熱可塑性樹脂層(II)の厚みについては、特に限定されないが、発泡層厚みを高くするという点で、10〜100μm、特に20〜100μmが好ましい。熱可塑性樹脂層(II)の厚みが10μm未満では、発泡層厚みを十分に高くすることができない。
【0079】
(4)発泡性積層体の層構成
本発明に係る発泡積層体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、該層間、あるいはその内及び/又は外層等に、他の層を設けてもよく、例えば、外側から、{ポリエチレンフィルム層/発泡性ポリエチレン樹脂層(I)/基材/熱可塑性樹脂層(II)}、{ポリエチレンフィルム層/バリア層/接着層/発泡性ポリエチレン樹脂層(I)/基材/熱可塑性樹脂層(II)}、{発泡性ポリエチレン樹脂層(I)/基材/熱可塑性樹脂層(II)/バリア層/熱可塑性樹脂層(II)}のように、基材とポリエチレン樹脂層(I)または、さらに熱可塑性樹脂層(II)を設けた積層体の内及び/又は外層、あるいは該層間に、一層または複数層のフィルム層、装飾層、補強層、接着剤層、バリア層等を設けてもよい。
また、必要に応じて、印刷等を施しても良い。印刷は、部分的または全面的に着色インキで印刷してもよい。また、必要に応じて発泡性インキを使用して、部分的または全面的に発泡部位を設けてもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0080】
上記装飾層としては、印刷された紙、フィルム、不織布、織布等が挙げられる。
また、補強層とは、基材に積層された発泡性ポリエチレン樹脂層(I)が加熱によって発泡されるときに、発泡層が破裂しないように、発泡性ポリエチレン樹脂層(I)の外層にポリエチレン樹脂フィルムなどを積層して、発泡層の過度の発泡による破裂防止や、不ぞろいの発泡セルを均一に矯正する、あるいはフィルム、不織布等を積層して、機械的強度を持たせるなどの役割を果たすものである。樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等でよい。
【0081】
また、接着剤層を形成する樹脂としては、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフトした変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等ホットメルト、通常の接着剤等が挙げられる。
さらに、バリア層を形成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
【0082】
5.発泡性積層体の製造方法
本発明において、発泡性積層体を製造する方法としては、紙を主体とする基材の片面へポリエチレン樹脂層(I)を積層し、あるいは他方の面に、熱可塑性樹脂層(II)をさらに積層できる方法であれば、特に制約はないが、溶融樹脂をダイレクトに積層する押出ラミネート加工、事前にフィルムとしたものを積層するサンドラミネート加工、ドライラミネート加工する方法等が挙げられる。
【0083】
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。
また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に、溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、さらに、ドライラミネート加工は、紙と積層するフィルムを貼合する接着剤および/または接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤および/または接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる紙を主体とする基材の熱可塑性樹脂層(II)が形成される側で、基材と熱可塑性樹脂層(II)との間に、バリア性を向上させるため、上記アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルム等を積層させることが容易である。
【0084】
III.発泡加工紙
本発明の発泡加工紙は、上記の発泡性積層体を加熱し、ポリエチレン樹脂層(I)を発泡させて得られるものである。すなわち、上記発泡性積層体を発泡させる際に、ポリエチレン樹脂層(I)と、基材から放出される水蒸気および/または揮発ガス(以下、水蒸気等とも称す)を保持する熱可塑性樹脂層(II)とが下記式(2)を満足させるように、行うことが好ましい。
ここで、基材から放出される水蒸気等を保持するとは、所定の加熱条件で基材から放出された水蒸気等を(I)層側に拡散させ、(I)層を優先的に発泡させるよう、水蒸気等をバリアすることを指す。この式(2)を満足させるように行うと、加熱による発泡処理条件を広くすることができるうえ、ポリエチレン樹脂層(I)を優先的に発泡させることができるので好ましい。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、基材中の水蒸気等を保持する熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]
【0085】
発泡加工紙の発泡セルの高さは、370μm以上、好ましくは400μm以上とすることが望ましい。発泡セルの高さが370μm未満であると、十分な断熱性が得られない。
【0086】
加熱方法としては、特に制限はないが、熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等が挙げられる。加熱温度には、特に制約はないが、紙中の水分を蒸発させ、発泡層樹脂が溶融する温度でなければならず、例えば、100〜140℃が好ましい。加熱時間は、10秒間〜10分間が好ましい。加熱温度が100℃未満、加熱時間が10秒未満であると、十分な発泡セル高さが得られない場合がある。
【0087】
IV.断熱容器およびその製造方法
断熱容器、特にカップの製造方法は、少なくとも、紙を主体とする基材の一方の面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いて、加熱によって基材から放出される水蒸気等によって、発泡される厚さが20〜100μmのポリエチレン樹脂層(I)を形成し、基材の他面に、熱可塑性樹脂(D)を用いて、基材から放出される水蒸気等を保持する厚さ10〜100μmの熱可塑性樹脂層(II)が形成された発泡性積層体を形成し、ついで容器に成形後、加熱温度100〜200℃で加熱して、基材から放出される水蒸気等によって、ポリエチレン樹脂層(I)を発泡させることを特徴とする。
【0088】
上記断熱容器の製造方法においても、前記発泡加工紙の製造方法と、基本的には同様である。
上記基材にラミネートする方法においては、通例のラミネート方法が適用される。押出ラミネートにおいては、ダイス直下の樹脂温度200〜350℃、好ましくは260〜350℃、より好ましくは270〜350℃の範囲で行われる。また、成形速度は、10〜400m/分、好ましくは10〜350m/分で行われ、必要に応じて、基材とポリエチレン樹脂との接着性を向上させるためにコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理フレーム処理、等を行っても良い。また、必要に応じて、アンカーコート剤を塗布しても良い。
【0089】
このようにして製造された発泡積層体を、ロール巻き原反もしくは連続的に繰り出して、発泡積層体から胴部材用ブランクと底板部材用ブランクを打ち抜きし、常用のカップ成型機で、胴部材と底板部材を接合させてカップ状等に成型した後、回分式あるいは転送するベルトコンベヤーに輸送されて熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等が具備する加熱炉、オーブントンネル等で加熱発泡されて、断熱性容器が成形される。
【0090】
特に、連続的に製造されるためには、好ましくは、加熱によって基材から放出される水蒸気等によって、発泡される積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と、基材から放出される水蒸気等を保持する熱可塑性樹脂(D)との融点差が、次の式(2)の関係を満足させるようにすることが望ましい。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、基材中の水蒸気等を保持する熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]
【0091】
これにより、押出ラミネート等の高速成形性もよく、連続的に、発泡倍率が高く、均一な発泡セルを有する発泡層を形成することが可能になり、外観性が良く、印刷性、生産性が向上する。また、加熱時間は、10秒間〜10分間が好ましい。加熱温度が100℃未満、加熱時間が10秒未満であると、十分な発泡セル高さが得られない場合がある。また、加熱温度が200℃を超え、および/または加熱時間が5分間を超える場合には、生成した発泡セルが加熱過多になって、発泡セルにへたり等が生じ、製品のばらつきの原因となるおそれが生じる。
【0092】
このように、本発明の断熱容器の製造方法においては、低MFRで高MEの高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(A)と高MFRの高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなる組成物(C)をラジカル発生剤で変性した積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いることにより、押出ラミネート加工時の成形性と、ロスが少なく、かつ、発泡倍率が高く、均一な発泡セルが形成された発泡層となり、断熱性、外観の良好性等に優れた断熱性容器を容易に得ることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において用いたポリエチレン樹脂、その物性、得られた発泡性積層体等の試験方法は、以下の通りである。
【0094】
1.物性等の評価試験方法
(1)MFR:
JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定した。
(2)密度:
ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件で16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、タテヨコ2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃でJIS K7112に準拠して、測定した。
(3)メモリーエフェクト(ME):
JIS K7210で使用されるメルトインデクサー(三鈴エリー(株)製半自動ME計)を用いて測定した。
(i)測定条件:
シリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、次のように実施した。
装置に2.095mmφのMFR測定用ノズルセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS−3033)を用いて測定する。
測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD(2.095mm)として、次式によりMEを求めた。
ME=D/D
【0095】
(4)融点:
ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打抜いてサンプルとした。
測定は、下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、第二昇温の最高ピーク高さの温度を融点とした。
(a)装置:セイコーインスツルメンツ製DSC220
(b)昇降温条件:
第一昇温:30℃から200℃までを40℃/分
降温:200℃から20℃までを10℃/分
第二昇温:20℃から200℃までを10℃/分
(c)温度保持時間:第一昇温後5分間、降温後5分
(d)サンプル量:5mg
(e)リファレンス:アルミニウム
【0096】
(5)加工性:
ポリエチレン樹脂層(I)を押出ラミネートする際、加工が安定的に行えるかを目視にて評価した。評価基準は、次のとおりである。
○:溶融膜が安定して、加工できる。
×:溶融膜が不安定で、均一な厚みのサンプル採取が不能。
【0097】
(6)発泡性:
発泡積層体の断面を顕微鏡で50倍に拡大観察し、発泡層の厚さを測定し、発泡セル高さとした。
【0098】
2.原料ポリエチレン樹脂
用いた原料ポリエチレン樹脂の物性等を下記表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
3.積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の製造例
下記表2に示す割合で、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(A)の所定量と、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(B)の所定量で構成される樹脂組成物100重量部に対し、ラジカル発生剤として3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン(化薬アクゾ(株)製トリゴノックス301:純度41%、一時間半減期温度が146℃)を所定量計量し、ヘンシェルミキサーにて2分間混合し、混合物を40mmφ単軸押出機にて窒素シールの下、出口樹脂温度240℃、押出機滞留時間90秒の条件にて溶融混合し、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)として、樹脂材料(X1〜X6)を得た。物性などの評価結果等を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
[実施例1〜5]
坪量157g/m、含水率7%の紙基材の片面に、コロナ処理(30W・min/m)を施し、40φ押出機、ダイス有効幅360mmの押出ラミネーターを用い、ポリオレフィン樹脂層(II)を構成する材料として、MFR10g/10分、密度0.936g/cm、融点129℃のポリエチレン樹脂(IIa)を、樹脂温度320℃、加工速度20m/min、20μm厚にて、押出ラミネート加工し、ポリオレフィン樹脂層(II)と紙基材との積層体を得た。
上記積層体のポリオレフィン樹脂層(II)と反対面の紙基材面に、コロナ処理(30W・min/m)を施し、40φ押出機、ダイス有効幅360mmの押出ラミネーターを用い、樹脂温度320℃、加工速度20m/min、40μm厚にて、ポリエチレン樹脂層(I)を構成する材料として、積層用ポリエチレン樹脂材料(X1〜X5)を用いて、押出ラミネート加工し、ポリエチレン樹脂層(I)と紙基材とポリオレフィン樹脂層(II)からなる発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体を130℃のオーブン中に2分間放置後オーブンから取り出し、常温にて放冷して発泡加工紙を得た。その評価結果等を表3に示す。
【0103】
[比較例1〜4]
ポリエチレン樹脂層(I)に使用する樹脂として、樹脂(A)の高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂A1、A2と、樹脂(B)の高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂B1、B2を単独で用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡性積層体を得た。その評価結果等を表3に示す。
【0104】
[比較例5]
ポリエチレン樹脂層(I)に使用する樹脂として、積層用ポリエチレン樹脂材料(X6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体を130℃のオーブン中に2分間放置後オーブンから取り出し、常温にて放冷して発泡加工紙を得た。その評価結果等を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
表1〜3に示すように、本発明の構成要件を満足する実施例1〜5は、いずれも溶融膜の安定性がよく、かつ発泡も均一で、発泡セルの高さも高い製品が得られた。
一方、比較例1、2においては、成形加工性が悪く、ラミネートができなかった。また、比較例3〜5においては、発泡セルが低く、発泡セルの均一性にも欠け、外観が悪く、本発明の目標する製品が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、ラミネート時の成形加工性が良好で、加熱によって十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料、その樹脂材料を用いた発泡性積層体、該発泡性積層体から得られる発泡加工紙、並びに該発泡性積層体を使用したカップなどの断熱容器及びその製造方法を提供でき、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(A)5〜95重量%と、該ポリエチレン系樹脂(A)以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B)95〜5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(C)100重量部に対して、0.001〜1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性してなることを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂(A)及び(B)は、それぞれ高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(A1)及び(B1)であり、且つ積層用ポリエチレン系樹脂材料が下記(x1)〜(x3)の特性を満足することを特徴とする請求項1に記載の積層用ポリエチレン系樹脂材料。
(x1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分である。
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(x3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【請求項3】
前記低密度ポリエチレン樹脂(A1)が下記(a1)〜(a2)の特性を満足し、前記低密度ポリエチレン樹脂(B1)が下記(b1)〜(b3)の特性を満足することを特徴とする請求項2に記載の積層用ポリエチレン系樹脂材料。
(a1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート[MFR(a)]が0.05〜100g/10分である。
(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート[MFR(b)]が0.05〜100g/10分である。
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cmである。
(b3)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.7以上である。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレン樹脂(A1)のMFR(a)と低密度ポリエチレン樹脂(B1)のMFR(b)との比[MFR(a)/MFR(b)]が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項3に記載の積層用ポリエチレン系樹脂材料。
式(1): MFR(a)/MFR(b) >1
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と基材との少なくとも2層を含むことを特徴とする積層体。
【請求項6】
前記基材は、紙を主体とした基材であることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
紙を主体とした基材の一方の面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で形成した発泡させるためのポリエチレン樹脂層(I)と、該基材の他の面に、基材から放出される水蒸気または揮発ガスを保持するための熱可塑性樹脂(D)で形成した熱可塑性樹脂層(II)からなることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
積層用ポリエチレン樹脂材料(X)と熱可塑性樹脂(D)との融点差が下記式(2)を満足することを特徴とする請求項7に記載の積層体。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の積層体を加熱し、少なくとも紙を主体とする基材中の水蒸気または揮発ガスでポリエチレン樹脂層(I)を発泡させてなることを特徴とする発泡加工紙。
【請求項10】
ポリエチレン樹脂層(I)を発泡させて形成した発泡セルの高さが370μm以上であることを特徴とする請求項9に記載の発泡加工紙。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の積層体を用いてなる断熱容器であって、
断熱容器は、積層体を用いて成型した容器を、加熱することにより、少なくとも紙を主体とする基材中の水蒸気または揮発ガスでポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させてなることを特徴とする断熱容器。
【請求項12】
カップ状容器であることを特徴する請求項11に記載の断熱容器。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)で、少なくとも紙を主体とする基材の一方の面に、厚さが20〜100μmのポリエチレン樹脂層(I)を形成し、該基材の他面に、積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)より高い融点を有する熱可塑性樹脂(D)で、厚さが10〜100μmの熱可塑性樹脂層(II)を形成した積層体を、容器に成形した後、温度100〜200℃に加熱して、該基材から放出される水蒸気または揮発ガスによってポリエチレン樹脂層(I)を発泡させることを特徴とする断熱容器の製造方法。
【請求項14】
ポリエチレン樹脂層(I)を形成する積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)と基材から放出される水蒸気または揮発ガスを保持する熱可塑性樹脂(D)との融点差が下記式(2)を満足することを特徴とする請求項13に記載の断熱容器の製造方法。
式(2): Tm(D)−Tm(X)≧10
[ただし、Tm(X)は、ポリエチレン樹脂層(I)の積層用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点Tm(℃)であり、Tm(D)は、熱可塑性樹脂層(II)の熱可塑性樹脂(D)の融点Tm(℃)である。]

【公開番号】特開2010−144134(P2010−144134A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325806(P2008−325806)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】