説明

積層複合体及びその製造方法

【課題】本発明は、目視では印刷画像を視認することができず、もしくは、印刷画像の存在に気付き難い上に、偏光板を重ねると、パターン状の潜像が見え、真偽判定が可能となり、偽造防止性を付与する積層複合体を提供する。特に、個別IDや写真、本人確認等の個別の情報を潜像にすることによって、偽造、変造、改ざんなどの不正行為が困難な積層複合体とその製造方法を提供する。
【解決手段】基材上の少なくとも一部に光化学的に配向し得る配向層がパターン状に設けてあり、光配向された前記配向層を被覆するように高分子液晶層を設けてなることを特徴とする積層複合体及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層複合体およびその製造方法に係わり、偏光板を用いて潜像を見ることを可能にすることによって、潜像を利用した真偽判定を可能とする偽造防止性を情報記録媒体および偽造防止対象物に付与する積層複合体およびその製造方法に関する。特には、パターン状の潜像、個別IDや写真、本人確認等の個別の情報を見ることを可能とする、偽造、変造、改ざんなどの不正行為が困難な積層複合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレジットカード、有価証券、及び証明書類のような情報記録媒体の偽造を防止する技術として、潜像を用いた方法が知られている。そのような方法としては、例えば、1)万線の開口部を利用して隠し文字等の潜像を書き込み、万線を隠蔽することにより潜像を可視化する万線画、及び2)フィラーを含有する透明インキメジウムを印刷することにより潜像を形成し、印刷部を鉛筆で擦ることによりその芯の粉を印刷部に付着させて潜像を可視化する鉛筆出し印刷(デコマット)がある。
【0003】
しかしながら、方法1)及び2)では、潜像は注意深く観察すると解読されてしまう。そのため、これら方法1)及び2)は、本格的な偽造防止技術としてよりは、むしろ遊び用として利用されている。
【0004】
より本格的な偽造防止技術としては、例えば、3)熱を加えることにより発色する、白色若しくは無色透明の不可逆性感熱発色インキを用いて潜像を形成する方法、及び4)酸化チタンのように金属よりも硬いフィラーを含有させた白色インキを白色紙に印刷して潜像を形成し、印刷部をコイン等で擦ることにより潜像を可視化する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、方法3)は、潜像を可視化するために熱源装置を必要とする。しかも、方法3)では、可視化した潜像を再度不可視化することはできない。また、方法4)では、マット調のニス層を設けることにより文字等は不可視化されるため、可視化した潜像を再度不可視化することはできない。すなわち、方法3)及び4)は、一回限りの用途に限定されている。
【0006】
潜像の可視化と不可視化とを繰り返し行うことが可能な技術として、例えば、5)熱を加えることにより可逆的に発色若しくは消色し、しばらく放置すると元の状態に戻る可逆性感熱発色インキ(サーモクロミックインキ)を用いて潜像を形成する或いは画像を隠蔽する方法、6)光、特には紫外線を照射することにより発色するフォトクロミックインキを白色若しくは無色透明のインキとして用いて潜像を形成する方法、7)紫外線を照射することにより発光する有機タイプ或いは無機タイプの蛍光インキを白色若しくは無色透明のインキとして用いて潜像を形成する方法が知られている。
【0007】
しかしながら、方法5)で使用するサーモクロミックインキは、耐性、特に耐熱性が低いという問題がある。また、方法6)で使用するフォトクロミックインキは、耐性、特に耐光性が低いという問題がある。方法7)で有機タイプの蛍光インキを使用する場合、印刷インキ中にごく少量の蛍光体を含有させるだけで十分な発光を実現することができるが、有機蛍光体は耐光性が低いという問題がある。また、方法7)で無機タイプの蛍光インキを使用する場合、十分な発光を実現するためには印刷インキ中に大量の蛍光体を含有させる必要がある(10〜20%程度)。そのため、無機タイプの蛍光インキを用いて形成した潜像は目視により解読され易く、したがって、そのデザイン等に工夫を凝らす必要がある。このように、上記方法5)〜7)は、耐性等により用途を制約されている。
【0008】
また、潜像の可視化と不可視化とを繰り返し行うことが可能な偽造防止技術としては、例えば、8)スクリーンの網点や万線のモアレ(干渉縞)を利用して潜像を形成する方法が知られている。この方法は網点や万線のピッチや角度を部分的に変えて潜像を形成し、この潜像上に整然と配列した網点あるいは万線を有する透明フィルムを重ねることにより潜像を可視化するものである。この方法8)によると、潜像の可視化は透明フィルムを用いることのみで実現されるため、潜像の可視化と不可視化とを容易に及び繰り返し行うことができ、しかも、耐性による用途の制約もない。しかしながら、8)は複雑な潜像を形成することができないという問題を有している。
【0009】
潜像の可視化と不可視化とを繰り返し行うことが可能な他の偽造防止技術としては、例えば、9)磁性インキを用いて潜像を形成する方法がある。この方法は、磁気記録に充分な保持力(約3000Oe以上或いは約24kA/m以上)を有する磁性層をパターン状に磁化させることで潜像を形成し、磁性層上に鉄粉を振りかけることにより潜像を可視化するものである。しかしながら、この方法9)では、潜像を書き換えて偽造することが容易であり、しかも、潜像を表示させる工程は複雑であり且つ特別な検出装置を必要とする。
【0010】
潜像の可視化と不可視化とを繰り返し行うことが可能なさらに他の偽造防止技術としては、例えば、10)赤外光を吸収するインキを用いて潜像を形成し、この潜像上に可視光を透過せずに赤外光を透過させる層を設ける方法が知られている。しかしながら、この方法は、潜像を可視化するために赤外線カメラ等を必要とし、装置が大掛かりとなるという問題を有している。また、可視領域の光は吸収せずに白色もしくは無色であり且つ赤外領域の光を吸収するインキ(IVインキ)を用いた方法も知られているが、この方法も同様に赤外線カメラ等を必要とする。
【0011】
これらの方法9)及び10)によると、潜像の可視化と不可視化とを繰り返し行うこと及び複雑な潜像を形成することができ、潜像の耐性による用途の制約もない。しかしながら、上述のように方法9)および10)は、潜像の可視化に特別な装置を必要としている。
【0012】
潜像の可視化と不可視化を繰り返し行うことが可能なさらに他の偽造防止技術としては、例えば、11)フィルムや液晶層面上に配向、無配向の部分を設け潜像を形成し、偏光板を介してみることで、識別できる方法が知られている。(例えば、特許文献1参照。)しかし、この構成では潜像をパターンにするためには、印刷と乾燥の間に、一部に偏光UVをかけなければならず、マスキング等の複雑な工程が入り、さらに個別IDや写真、本人確認等の個別の情報を入れる場合は、個々に装置の設定が必要となるため困難であるという問題点がある。
【0013】
以下に特許文献を記す。
【特許文献1】特開平8−43804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、目視では印刷画像を視認することができず、もしくは、印刷画像の存在に気付き難い上に、偏光板を重ねると、パターン状の潜像が見え、真偽判定が可能となり、偽造防止性を付与する積層複合体を提供する。特に、個別IDや写真、本人確認等の個別の情報を潜像にすることによって、偽造、変造、改ざんなどの不正行為が困難な積層複合体とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、まず、請求項1に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に光化学的に配向し得る配向層がパターン状に設けてあり、光配向された前記配向層を被覆するように高分子液晶層を設けてなることを特徴とする積層複合体である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、基材上に少なくとも一部に2層以上の光化学的に配光し得る配向層がそれぞれ異なるパターンもしくは同一のパターン状に設けてあり、前記2層以上の配向層のそれぞれの層が異なる角度に光配向された前記配向層を被覆するように高分子液晶層を設けてなることを特徴とする積層複合体である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記高分子液晶層上に保護層を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の積層複合体である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記基材が透明材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層複合体である。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記基材が光反射性を持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層複合体である。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記配向層の下側又は高分子液晶層の上側に回折構造層が設けてあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層複合体である。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層複合体において、
高分子液晶層の上に反射層が設け、その反射層上に接着層が設けてあり、かつ前記接着層と反対側の基材面に剥離保護層が設けてなることを特徴とする積層複合体である。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層複合体において、
高分子液晶層を形成した反対側の基材面に粘着層を設けてなることを特徴とする複合積層体である。
【0023】
請求項9に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に光化学的に配向し得る配向層をパターン状に形成し、前記配向層に光配向処理を施し、その光配向された配向層を被覆するように高分子液晶を塗布・乾燥して高分子液晶層を設けることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の積層複合体の製造方法である。
【0024】
請求項10に記載の発明は、前記配向層をパターン状に印刷形成する印刷方式がインクジェット印刷方式であることを特徴とする請求項9記載の積層複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、配向層がパターン状に設けてあり、その上に液晶層を設けるので、目視では印刷画像を視認することができず、もしくは、印刷画像の存在に気付き難い上に、直線偏光板を当てて見ると、パターン状の潜像を見ることができる。さらに、第1の配向層と第2の配向層がパターン状に印刷してある積層複合体は、異なる方向に配向しているため、直線偏光板を当てて見ると、パターン状の潜像画像を見ることができ、直線偏光板を回転させると、反転した画像や、異なる画像を見ることができる。さらに、配向層をインクジェット印刷にすることによりオンデマンド印刷が可能となり、個別IDや写真、本人確認等の個別の情報を潜像画像として印刷することが容易にできるため、偽造、変造、
改ざんなどの不正行為が困難な積層複合体とその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の積層複合体の一実施例を示す平面図であり、図2は図1の積層複合体に直線偏光板を重ねて見たときの平面図であり、図3は図1の積層複合体のX―X’における断面図であり、図4はその断面の説明図である。また、図5は本発明の積層複合体の一実施例の直線偏光板を図2とは異なる角度で重ねて見たときの平面図であり、図6は図5の積層複合体の断面の説明図である。さらに、図7は本発明の積層複合体の一実施例に直線偏光板を図2、図5とは異なる角度で重ねて見たときの平面図であり、図8は図7の積層複合体の断面の説明図である。図9および図10は本発明の積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【0027】
図1に示す積層複合体1の平面図において、配向層および高分子液晶層は透明で目視では見ることができず、基材が見える。
【0028】
基材11は、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂、天然樹脂のフィルム、合成紙、紙、ガラスなどから単独で選択されたもの、または上記より選択されて組み合わされた複合体等が使用可能である。この基材は、反射性を持っているものが最も好ましいが、光を透過する無延伸のものでも良い。反射性を持っている基材は、反射性を有するものであれば特に限定されるものではなく、各種金属、合金等の蒸着膜、スパッタリング膜等を付与したものを用いることができる。例えば、金属としてAl、Cr、Ni、Cu、Ag等があり、合金としてはPt−Rh、Ni−Cr等がある。
【0029】
図1の積層複合体に、基材が反射性を持っていないものは上下に、持っているものは上に、直線偏光板を重ねて見ると、高分子液晶層31の配向部と非配向部の区別ができるため、図2のように高分子液晶層31の配向部分のみを見ることができ、配向層で印刷したパターンと同様のロゴや写真等の解像度の高い潜像が出現する。
【0030】
高分子液晶層31および配向層21は、通常に塗布した状態では、特定の結晶構造を有していないランダムな分子状態に形成されている。図4のように、高分子液晶層は高分子液晶層の下層の配向層21が配向している方向に従って配向され、配向層21は偏向光を照射することにより偏向光の方向に従って配向される。配向層21は、例えば、特開平6−287453等で知られる、光反応性エテン基を有する、線状および環状のポリマーまたはオリゴマー等があげられる。
【0031】
偏光板(フィルム)は、PVA延伸フィルムにヨードを吸収させたPVA−ヨウ素型、二色性染料型、金属または金属化合物含有型、ポリエン型などの高分子結晶型が考えられ、特にPVA‐ヨウ素型、二色性染料型フィルムが用いられる。
【0032】
図6に示す積層複合体は、配向層を2層持ち、保護層と粘着層を設け、ステッカーの状態にして、偽造防止付与部材に付与するものである。第1の配向層を印刷後、ある向きの偏向光を照射して配向させてから乾燥し、第2の配向層を印刷後、第1の偏向光とは異なる角度の偏向光を照射し、乾燥することにより、第1の配向層とは別の角度で配向させる。
【0033】
この積層複合体は、目視では配向層および高分子液晶層は透明で見ることができず基材が見え、ある方向で直線偏光板をかざすと図2のような第2の配向層により配向した高分子液晶層部分のみ見ることができる。この偏光板を回転させ、偏光板の角度を変えてみると、第1の配向層により配向した高分子液晶層の部分のみ見ることができるので、図2の
潜像と反転した図5のような潜像を見ることができる。偏光板を回転させて見たとき、第1の配向層および第2の配向層のパターンによっては、潜像が反転する、もしくは異なる潜像にすることが可能である。
【0034】
配向層21は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルコーター法、フレキソ印刷法等の既知の塗布手段により塗工できるが、インクジェットを代表例とする無版の印刷法によると前記オンデマンド印刷が可能である。配向層は一度偏向光で硬化されると、もう一度角度の異なる偏向光を照射しても、配向の角度は一度目に照射された角度のまま変化しないため、第1の配向層を印刷後、偏向光を照射した後に、第2の配向層を印刷し、異なる角度の偏向光で照射すれば、第2の配向層部分のみ配向の角度を変えることが可能となり、高分子液晶層も配向層の角度に従って配向するため、マスクすることなく、液晶層の配向の角度をパターン状に変えることができる。さらに、配向層を前記無版の印刷法を代表例とするインクジェットでパターン状に印刷すれば、オンデマンド印刷が可能となる。
【0035】
保護層32は高分子液晶層を外傷から保護し、また画像形成時の熱圧から画像形成痕による潜像画像の視認を防ぐ役割を持つもので、使用される樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂‐酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド樹脂等の従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線または電子線硬化樹脂を単独あるいは、混合して用いられる。さらに、潜像パターンの目視防止のために、樹脂を架橋する硬化剤、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、シリコンワックス等のワックス類、或いは炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリカ、アルミナ、タルク等の体質顔料、シリコーン油脂等の油脂類を透明性を損なわない範囲で添加することができる。この保護層32に用いる樹脂は、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルコーター法等の既知の塗布手段およびオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の印刷手段により塗工する。
【0036】
粘着層36は、一般的な接着材料を用いることができ、常温で粘着性を持たせたものであってもなくても良い。その材料としては、例えば、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコーン系及びポリイソブチル系等の粘着剤を上げることができる。これら粘着剤には、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、及びビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、およびアクリルニトリル等に代表される改質成分、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、及び酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0037】
図8に示す積層複合体は、配向層を3層持ち、保護層と粘着層を設け、ステッカーの状態にして、偽造防止対象物に付与するものである。第1の配向層を印刷後、ある角度の偏向光を照射して配向させ、第2の配向層を印刷後、第1の偏向光とは異なる角度の偏向光を照射して乾燥し、第3の配向層を印刷後、第1および第2の配向層と異なる角度の偏向光を照射することにより、第1、第2および第3の配向層はそれぞれ別の方向に配向される。
【0038】
この積層複合体は、目視では配向層および高分子液晶層は透明で見ることができず基材が見え、ある方向で直線偏光板を重ねて見ると図2のような第2の配向層により配向した高分子液晶層部分のみ見ることができる。この偏光板を回転させ、偏光板の角度を変えてみると、第1の配向層により配向した高分子液晶層の部分のみ見ることができるので、図2の潜像と反転した図5のような潜像を見ることができる。さらに、別の角度まで偏光板を回転させると、パターン状に印刷した第3の配向層の上で配向した高分子液晶層のみを見ることができるため、異なる潜像をみることができる。
【0039】
図9に示す積層複合体は、偽造防止付与部材にホットスタンプ、または熱転写方式により付与するものであるため、基材11側に剥離保護層37を、基材11とは反対側に反射層33および接着層35を設けた。偽造防止性を付与する対象物に対し、積層複合体を基材11側からホットスタンプまたは転写ヘッドで加熱および加圧し、接着層35により対象物に貼り付けられ、剥離保護層37により基材11と剥離保護層37の界面で剥離され、転写される。
【0040】
接着層35は、一般的な接着材料を用いることができる。そのような接着材料としては、例えば、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、並びにアクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコーン系及びポリイソブチル系等の接着剤を上げることができる。これら接着材料には、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、及びビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、およびアクリルニトリル等に代表される改質成分、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、及び酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。この粘着層は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、及びスクリーン印刷法等の印刷法並びにバーコート法、グラビア法、及びロールコート法等の既知の塗布方法により形成することができる。
【0041】
図10に示す積層複合体は、高分子液晶層の上に回折構造層34を設けたもので、回折格子に係る微小な凹凸がエンボスされてなるホログラム等エンボス部が設けられている。目視ではホログラム画像を見ることができ、観察する位置、角度によって画像あるいは色が変化して観察される。さらに、偏光板をかざして見ることにより、ホログラム画像が遮断され、潜像が見える。
【0042】
回折構造層34は、高分子液晶層31の上でも配向層の下でも良く、配向層と高分子液晶層の間でなければ良い。また、回折構造層の画像をより見やすくするために金属薄膜層を設けても良い。金属箔膜層は真空蒸着法もしくはスパッタリング法にて形成する。
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0044】
厚さ50μmのPET基材上にAlを真空蒸着法にて約60nmの金属膜を成膜して金属反射層を形成した。その上に、第1の配向層をグラビア法を用いて印刷し、オーブンで乾燥後、偏向UV光で硬化した。その上に第2の配向層をインクジェット印刷法を用いて、パターン状に印刷しオーブンで乾燥後、第1の偏向光と45度異なる角度で偏向UV光を照射した。その後、高分子液晶インキをグラビア法を用いて印刷し、乾燥後UV光を照射し、積層複合体を得た。その上に、下記に示す保護層の組成からなる保護層用インキをオフセット印刷法にて約3μm塗布して保護層を形成し、積層複合体を得た。
【0045】
[保護層の組成]
アンカーメジウム(FDSメジウムTPロ:東洋インキ製造(株)製)
100重量部
トップコートニス(マットOPニス3H:(株)T&K TOKA(株)製
100重量部
得られた積層複合体は、目視では潜像画像が全く視認できず、アルミ層が見えているが、直線偏光板を重ねて見るとパターン状の潜像を見ることができ、直線偏光板を回転させると、反転した潜像画像を見ることができ、良好な潜像を有する画像形成媒体を得た。潜像を利用した情報記録媒体の真偽を判定するのに用いられ得る積層複合体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による積層複合体の一実施例を示す平面図である。
【図2】本発明による一実施例としての積層複合体に偏光板をかざして見たときの平面図である。
【図3】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【図4】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【図5】本発明による一実施例としての積層複合体に直線偏光板をかざして見たときの平面図である。
【図6】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【図7】本発明による一実施例としての積層複合体に直線偏光板をざして見たときの平面図である。
【図8】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【図9】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【図10】本発明による積層複合体の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 積層複合体
2 積層複合体付与部材
3 直線偏光板
11 基材
21 第1の配向層
22 第2の配向層
23 第3の配向層
31 高分子液晶層
32 保護層
33 反射層
34 回折構造層
35 接着層
36 粘着層
37 剥離保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に光化学的に配向し得る配向層がパターン状に設けてあり、光配向された前記配向層を被覆するように高分子液晶層を設けてなることを特徴とする積層複合体。
【請求項2】
基材上の少なくとも一部に2層以上の光化学的に配光し得る配向層がそれぞれ異なるパターンもしくは同一のパターン状に設けてあり、前記2層以上の配向層のそれぞれの層が異なる角度に光配向された前記配向層を被覆するように高分子液晶層を設けてなることを特徴とする積層複合体。
【請求項3】
前記高分子液晶層上に保護層を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の積層複合体。
【請求項4】
前記基材が透明材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層複合体。
【請求項5】
前記基材が光反射性を持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層複合体。
【請求項6】
前記配向層の下側又は高分子液晶層の上側に回折構造層を設けてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層複合体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層複合体において、
高分子液晶層の上に反射層を設け、その反射層上にさらに接着層を設けてあり、かつ前記接着層と反対側の基材面に剥離保護層が設けてなることを特徴とする積層複合体。
【請求項8】
前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層複合体において、
高分子液晶層を形成した反対側の基材面に粘着層を設けてなることを特徴とする複合積層体。
【請求項9】
基材上の少なくとも一部に光化学的に配向し得る配向層をパターン状に形成し、前記配向層に光配向処理を施し、その光配向された配向層を被覆するように高分子液晶を塗布・乾燥して高分子液晶層を設けることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の積層複合体の製造方法。
【請求項10】
前記配向層をパターン状に印刷形成する印刷方式がインクジェット印刷方式であることを特徴とする請求項9記載の積層複合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−139178(P2006−139178A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330328(P2004−330328)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】