説明

積重治具

【課題】表面平滑性を損なうことなく小さな収納スペースで保持治具を積み重ねることのできる積重治具を提供すること。
【解決手段】治具本体51と前記治具本体51の表面に形成された弾性部材52とを備えて成る保持治具50を積み重ねる積重治具1であって、前記治具本体51の端部下面に接する下部接触面10と、前記保持治具50及びこの保持治具50に積み重ねられて隣接する保持治具50同士が非接触状態となる緩衝部11とを備えて成ることを特徴とする積重治具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積重治具に関し、さらに詳しくは、表面平滑性を損なうことなく小さな収納スペースで保持治具を積み重ねることのできる積重治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップコンデンサ等の小型部品等を製造する際等に、この小型部品等を製造可能な小型部品用部材等をその表面に粘着保持することのできる保持治具が用いられている。このような保持治具は、通常、粘着性表面を有する弾性部材と、この弾性部材を支持する治具本体とを備えて成る。例えば、特許文献1には、「この発明の一実施例による電子部品チップ用ホルダ21を示す斜視図である。ホルダ21は、たとえば金属または樹脂のような材料からなる板状の本体22を備える。本体22上には、粘着膜23が形成され、それによって、この粘着膜23の表面に粘着面24が与えられる。」と記載されている(0029欄及び図1参照。)。
【0003】
このような保持治具は、粘着性表面を保護するため、製造後から検査梱包までの間の未使用時、出荷時等に、例えばPE、PET等の保護シートが粘着性表面に貼付される。粘着性表面に保護シートが貼付された保持治具はコンテナ内に積み重ねて収納され、所望により、このコンテナはさらに幾段にも載置される。このようにして、保持治具は、収納され、保存され、搬送され、及び/又は、出荷される。
【0004】
ところが、粘着性表面に保護シートを貼付すると、通常、粘着性表面と保護シートとの間に気泡が取り込まれ、保護シートを剥離した後に粘着性表面に気泡跡が残ってしまうという問題がある。また、粘着性表面と保護シートとの間に気泡が取り込まれていない場合であっても、保護シートを剥離した後に粘着性表面に剥離シワ、剥離スジ等が生じることがあり、特に粘着性表面が強力な粘着力を有していると、粘着性表面に剥離シワ、剥離スジ等が多く発生するという問題がある。このように、粘着性表面を保護するために保護シートを貼付すると、粘着性表面に、気泡跡、剥離シワ、剥離スジ等が生じて、前記粘着性表面の表面平滑性が低下し、保持治具として所期の機能を発揮することができなくなる。
【0005】
また、粘着性表面に保護シートが貼付された保持治具は一般的な箱形のコンテナに収納されて保存等されるので、その収納スペースが大きくなるという問題がある。
【0006】
ところで、粘着性表面に保護シートを貼付することなく保持治具を収納する収納ボックスとして、例えば、「上面及び側面の少なくとも1つの面に開口部を有し、かつ、下面及び側面の少なくとも1つの面に、粘着性保持治具を出し入れする際に前記粘着性保持治具同士が接触しない間隔を設けて、前記粘着性保持治具を固定する固定手段が複数設けられた本体と、前記開口部を密閉し、前記粘着性保持治具を収納状態にしたときの高さと同一の高さ又はそれよりもわずかに高い高さを有する密閉空間を、前記本体と共に形成する蓋体とを備え、積み重ねたときに上面及び下面に位置する面が位置ズレを防止可能な形状とされている前記粘着性保持治具を収納する収納ボックス」が挙げられる(特許文献2)。
【0007】
この収納ボックスは、弾性部材への異物の付着を防止することができ、表面平滑性を損なうこともなく、かつ、優れた操作性で、保持治具を収納することができる。この収納ボックスは、少数の保持治具を収納することもできるが、その収納スペースをより一層小さくすることができれば、小ロット生産における収納、保存、搬送及び輸送にも効率よく対応することができる。
【0008】
【特許文献1】特許第2682250号明細書
【特許文献2】特開2007−91230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、表面平滑性を損なうことなく小さな収納スペースで保持治具を積み重ねることのできる積重治具を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、治具本体と前記治具本体の表面に形成された弾性部材とを備えて成る保持治具を積み重ねる積重治具であって、前記治具本体の端部下面に接する下部接触面と、前記保持治具及びこの保持治具に積み重ねられて隣接する保持治具同士が非接触状態となる緩衝部とを備えて成ることを特徴とする積重治具であり、
請求項2は、前記治具本体の端部上面に接する上部接触面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の積重治具であり、
請求項3は、前記緩衝部は、前記下部接触面と前記上部接触面とで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積重治具であり、
請求項4は、前記緩衝部は、枠状、棒状、鉤型であることを特徴とする請求項3に記載の積重治具であり、
請求項5は、前記上部接触面と前記下部接触面とは、前記治具本体を挿入可能な溝を形成していることを特徴とする請求項2に記載の積重治具であり、
請求項6は、前記積重治具は、弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の積重治具であり
請求項7は、前記緩衝部は、枠状、棒状、鉤型であることを特徴とする請求項6に記載の積重治具である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る積重治具は、下部接触面と緩衝部とを備えて成るから、この発明に係る積重治具を介して積み重ねられた保持治具それぞれは非接触状態で隣接して積み重ねられた他の保持治具によって保護される。故に、この発明に係る積重治具で積み重ねられた保持治具は、粘着性表面を保護するために保護シートが貼付されなくてもよく、粘着性表面の表面平滑性を維持することができる。また、この発明に係る積重治具は、保存等する保持治具が少数であっても十分に対応することができるから、保持治具を小さな収納スペースで積み重ねることができる。したがって、この発明に係る収納ボックスによれば、表面平滑性を損なうことなく小さな収納スペースで保持治具を積み重ねることのできる積重治具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、この発明に係る積重治具によって積み重ねられる保持治具を、図を参照して、説明する。この保持治具50は、図8に示されるように、治具本体51と、治具本体51の表面に形成されて成る弾性部材52とを有し、その弾性部材52の粘着性表面に弾性部材52の粘着力で被粘着物を保持することができる。
【0013】
治具本体51は、弾性部材52を保持又は支持する。治具本体51は、平滑な表面を有する、方形を成す盤状体に形成されているが、弾性部材52を保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。この例における治具本体51は280×180mmの矩形に形成されている。治具本体51は、弾性部材52を保持又は支持可能な厚さを有していればよく、治具本体51は均一な厚さを有しているのが特によい。治具本体51を形成する材料としては、弾性部材52を保持又は支持可能な材料であればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、金属箔、樹脂フィルム、樹脂板、セラミックス等を挙げることができる。
【0014】
弾性部材52は、多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計され、例えば、図8に示されるように、治具本体51の表面に方形を成す盤状体に成形されている。弾性部材52すなわち粘着性表面は、例えば後述する粘着性材料の硬化物で形成され、被粘着物を粘着保持することのできる粘着力、例えば、1〜50g/mmの粘着力を有している。弾性部材52の粘着力は、特開2007−165397号公報に記載の「信越ポリマー法」に従って測定することができる。弾性部材52は、被粘着物を粘着保持する粘着性表面が平滑であるのがよく、具体的には、例えば、粘着性表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下に調整されている。十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mm等の条件で測定する。また、弾性部材52は5〜60の表面硬度(JIS K6253[デュロメータE])を有している。
【0015】
弾性部材52を形成する材料としては、弾性部材に前記粘着力を付与することのできる粘着性材料であればよい。このような粘着性材料としては、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、特開2007−307529号公報に記載の「シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着成分(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性シリコーンゴム組成物」、特開2007−307529号公報に記載の「シリコーン生ゴム(a)と、粘着成分(c)と、シリカ系充填材(e)と、有機過酸化物(f)とを含有する粘着性シリコーンゴム組成物」が好ましい。
【0016】
保持治具50に粘着保持される被粘着物は、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、被粘着物は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら被粘着物の中でも、この発明に係る保持治具が粘着保持するのに好適な被粘着物として、小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。
【0017】
この発明に係る第1態様の積重治具における一実施例である積重治具を、図面を参照して、説明する。この積重治具1は、図1及び図2に示されるように、治具本体の端部下面に接する下部接触面10と、保持治具及びこの保持治具に積み重ねられて隣接する他の保持治具同士が非接触状態となる緩衝部11と、治具本体の端部上面に接する上部接触面12と、治具本体の端面に当接する当接面13とを備えて成り、緩衝部11は下部接触面10と上部接触面20とで形成されている。
【0018】
このような構成を有する積重治具1は、図1及び図2に示されるように、積み重ねられる保持治具を囲繞するように枠状を成し、図3に示されるように、積み重ねられる2つの保持治具間に配置される。積重治具1が枠状に形成されていると、後述するように、積重状態において弾性部材への異物の付着を効果的に防止することができる。
【0019】
この積重治具1は、積み重ねられる保持治具の輪郭形状とほぼ同じ形状の周壁部22からなる枠体に形成され、周壁部22の高さ方向略中央部から内側に略水平に突出する緩衝部11が一巡するように形成されている。
【0020】
周壁部22は、その内側表面が当接面13とされており、より詳細には、図2に示されるように、緩衝部11よりも上側に位置する周壁部22の内側表面が緩衝部11の上に載置される治具本体の端面に当接する上側当接面20とされ、緩衝部11よりも下側に位置する周壁部22の内側表面が緩衝部11の下に配置される治具本体の端面に当接する下側当接面21とされている。周壁部22が当接面13を備えていると、積み重ねた保持治具の水平方向への移動が規制され、多数の保持治具を積み重ねる場合にも安定して積み重ねることができる。したがって、この例において、周壁部22は当接面13に治具本体が当接するように治具本体の寸法と同じ寸法に形成されている。この周壁部22の高さは後述する緩衝部11の高さよりも大きければよく、通常、上側当接面20及び下側当接面21の合計高さが治具本体の厚さ以下になるように調整される。この例において、周壁部22の高さは、図3に示されるように、上側当接面20及び下側当接面21の合計高さが治具本体の厚さと一致するように、調整されている。
【0021】
緩衝部11は、積層した保持治具同士を非接触状態にすることができ、その上面が下部接触面10とされ、その下面が上部接触面12とされている。緩衝部11の内側への突出量すなわち下部接触面10及び上部接触面12の幅(内側に向かう長さ)は、治具本体の端部下面及び端部上面に接することができる限り特に限定されないが、緩衝部11の高さ(下部接触面10と上部接触面12との距離)は、図3に示されるように、周壁部22の高さより小さく、かつ、下部接触面10に載置された保持治具と上部接触面12が載置された他の保持治具とが非接触状態となる距離に調整されている。緩衝部11の高さは、収納スペースを小さくすることができると共に、多数の保持治具を積み重ねたときの安定性が高くなる点で、例えば、保持治具の合計厚さに対して105〜120%程度であるのが好ましい。
【0022】
積重治具1は、保持治具を支持可能な強度を有し、治具本体との接触により粉塵が生じにくい材料で形成されればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属、ポリアセタール等の樹脂等を挙げることができる。
【0023】
この積重治具1の使用方法を、3つの保持治具を積み重ねる場合を例にして、説明する。図3に示されるように、3つの保持治具を積み重ねる場合には、同様に形成された2つの積重治具1A及び1Bを用いる。まず、収納予定位置等に保持治具50Aを配置して、保持治具50Aの治具本体51A上に積重治具1Aを載置する。このとき、治具本体51Aの端部上面を積重治具1Aの上部接触面12に接触させると共に、治具本体51Aの端面を積重治具1Aの下側当接面21に当接させる。そうすると、保持治具50A及び積重治具1Aは一体となって、積重治具1Aに対する保持治具50Aの相対的な移動が防止される。次いで、積重治具1Aの上に保持治具50Bを積み重ねる。このとき、保持治具50Bの治具本体51Bの端部下面を積重治具1Aの下部接触面10に接触させると共に、治具本体51Bの端面を積重治具1Aの上側当接面20に当接させる。そうすると、保持治具50A、積重治具1A及び保持治具50Bは一体となって、積重治具1Aに対する保持治具50Bの相対的な移動が防止される。次いで、保持治具50Bの上に積重治具1Bを、積重治具1Aと同様にして、載置し、積重治具1Bの上に第3の保持治具50Cを、保持治具50Bと同様にして、積み重ねる。そうすると、保持治具50A、積重治具1A、保持治具50B、積重治具1B及び保持治具50Cは一体となって、積重治具及び保持治具それぞれの相対的な移動が防止される。
【0024】
このようにして積み重ねられた保持治具50C又は積重治具1Bの上に、所望により、保持治具50Cを収納可能な凹部を有する蓋部材(図3において破線で示す。)を積み重ねる。このようにして積み重ねられた保持治具を搬送等する際には、保持治具及び積重治具の積重体にゴムバンド等をかけて、保持治具及び積重治具の積重状態を保持することができる。
【0025】
このようにして、2つの積重治具1A及び1Bを用いて3つの保持治具50A、50B及び50Cを積み重ねることができる。そして、このように積み重ねられた保持治具は、粘着性表面を保護するための保護シートが貼付される必要がないから、粘着性表面の表面平滑性を維持することができると共に、保持治具同士が非接触状態で積み重ねられるから、積み重ねるべき保持治具が少数であっても小さな収納スペースで積み重ねることができる。
【0026】
また、積重治具1が枠状に形成されていると、保持治具の弾性部材は緩衝部11、他の保持治具の治具本体によって密閉された空間に収納されるから、保護シート等を貼付しなくても、積み重ねられている間に粘着性表面に異物が付着することを効果的に防止することができる。さらに、積重治具1で保持治具50が積み重ねられていると、前記のように、積重治具1及び保持治具50の水平方向の移動を効果的に規制することができる。
【0027】
この発明に係る第1態様の積重治具における一実施例は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、積重治具1すなわち周壁部22は枠状に形成されているが、この発明において、積重治具は、図4(a)に示されるように、一方向に延在してなる棒状又は柱状に形成されてもよく、また、図4(b)に示されるように、L字状に屈曲してなる鉤型に形成されてもよい。棒状又は柱状に形成された積重治具2は、例えば、保持治具の対向する辺上好ましくは各辺上に配置され、鉤型に形成された積重治具3は、例えば、保持治具の対向する隅部上好ましくは各隅部上に配置される。
【0028】
積重治具1において、周壁部22は治具本体の寸法と同じ寸法に形成され、治具本体の端部に当接する上側当接面20及び下側当接面21が形成されているが、この発明において、周壁部の寸法は治具本体の寸法よりも大きく調整されて、積重治具が上側当接面及び下側当接面を有してなくてもよい。また、積重治具1において、当接面13は治具本体の端面全面に当接するように形成されているが、この発明において、当接面は設けられていなくてもよく、また、周壁部の一部に設けられてもよい。
【0029】
積重治具1において、緩衝部11は周壁部22の高さ方向略中央部に形成されているが、この発明において、緩衝部は周壁部の高さ方向略中央部に形成されなくてもよい。例えば、緩衝部が周壁部の下端に形成されて積重治具が下側当接面を有してなくてもよく、緩衝部が周壁部の上端に形成されて積重治具が上側当接面を有してなくてもよい。また、緩衝部は周壁部と同じ高さに形成されてもよい。換言すると、積重治具が緩衝部のみで形成されてもよい。
【0030】
積重治具1において、緩衝部11は周壁部22の高さ方向略中央部から内側に略水平に突出しているが、この発明において、下部接触面に治具本体を載置することができ、及び/又は、上部接触面が治具本体に載置されることができる限り、緩衝部は水平に突出していなくてもよい。
【0031】
積重治具1は、積重治具及び保持治具の水平方向の移動を効果的に規制することができるが、所望により、係止部材が設けられてもよい。係止部材としては、例えば、周壁部の下面に形成された係止片と、周壁部の上面に形成され、この係止片と係止する係止部とからなる係止部材、周壁部に厚さ方向に貫通形成された孔を貫通するボルトとこのボルトと螺合するナットとからなる係止部材等が挙げられる。
【0032】
積重治具1の使用方法において、3つの保持治具50A、50B及び50Cを積み重ねる場合を説明したが、この発明において、積重治具は、2又は4以上の保持治具を積み重ねる場合にも用いることができ、積み重ねられる保持治具の数は特に限定されない。また、前記方法において、同様に形成された2つの積重治具1A及び1Bを用いているが、この発明において、使用される積重治具は同様に形成されてなくてもよく、例えば、枠状の積重治具、棒状の積重治具及び鉤型の積重治具等を任意に組み合わせて用いることができる。
【0033】
この発明に係る第2態様の積重治具における一実施例である保持治具を、図を参照して、説明する。この積重治具5は、図5に示されるように、治具本体の端部下面に接する下部接触面15と、保持治具及びこの保持治具に積み重ねられて隣接する他の保持治具同士が非接触状態となる緩衝部16と、治具本体の端部上面に接する上部接触面17と、治具本体の端面に当接する当接面18とを備えて成り、上部接触面17と下部接触面15とが治具本体を挿入支持することのできる溝30を形成している。
【0034】
このような構成を有する積重治具5は、図5に示されるように、積み重ねられる保持治具を囲繞するように枠状を成し、図6に示されるように、積み重ねられる保持治具に装着される。積重治具5が枠状に形成されていると、積重状態において弾性部材に異物が付着することを効果的に防止することができる。
【0035】
この積重治具5は、積み重ねられる保持治具の輪郭形状とほぼ同じ形状の緩衝部16からなる枠体に形成され、緩衝部16の高さ方向上部から内側に略水平方向に互いに並行に突出する一対の支持片31、32が一巡するように形成されている。
【0036】
緩衝部16は、その内表面が溝30に挿入支持される治具本体の形状及び寸法と同じ形状及び寸法に形成されている。この緩衝部16の高さは隣接して積み重ねられた保持治具同士が非接触状態となるように調整されている。緩衝部16の高さは、収納スペースを小さくすることができると共に、多数の保持治具を積み重ねたときの安定性が高くなる点で、例えば、保持治具の合計厚さに対して105〜120%程度であるのが好ましい。
【0037】
一対の支持片は、上側支持片31と下側支持片32とからなり、治具本体を挿入支持する溝30を形成する。より詳細には、図5に示されるように、下側支持片32の上面(溝30の内側表面)が治具本体の端面下面に接する下部接触面15とされ、上側支持片31の下面(溝30の内側表面)が治具本体の端面上面に接する上部接触面17とされ、下側支持片32と上側支持片31との間にある緩衝部16の内表面が治具本体の端面に当接する当接面18とされている。すなわち、一対の支持片31、32は、緩衝部16から内側に突出して溝30を形成することによって治具本体を支持すると共に積み重ねた保持治具の水平方向への移動を規制する。したがって、一対の支持片31、32は、治具本体の厚さ以下の間隔で形成されている。一対の支持片31、32の内側への突出量すなわち下部接触面15及び上部接触面17の幅(内側に向かう長さ)は、治具本体の端部下面及び端部上面に接することができる限り特に限定されない。
【0038】
緩衝部16は、緩衝部16の高さ方向上部から外側に略水平方向に突出する把持部33が一巡するように形成されている。この把持部33は、積重治具1を治具本体に装着する際、保持治具と積重治具とからなる装着体を操作する際等に、利用される。
【0039】
積重治具5は、保持治具を支持可能な強度を有し、治具本体との接触により粉塵が生じにくい材料で形成されればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属、ポリアセタール等の樹脂等を挙げることができる。特に、枠状に形成されている積重治具5は、治具本体への装着が容易になる点で、前記特性に加えて弾性を有する弾性材料であるのがよく、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。
【0040】
この積重治具5の使用方法を、3つの保持治具を積み重ねる場合を例にして、説明する。図6に示されるように、3つの保持治具を積み重ねる場合には、同様に形成された3つの積重治具5A、5B及び5Cを用いる。まず、保持治具50A、50B及び50Cそれぞれに積重治具5A、5B及び5Cを装着する。すなわち、積重治具5Aを変形させて治具本体51Aの端面を溝30内に挿入し、積重治具5Aと保持治具50Aとからなる装着体35Aとする。このとき、治具本体51Aの端部上面を積重治具5Aの上部接触面17に接触させ、治具本体51Aの端部下面を積重治具5Aの下部接触面15に接触させると共に、治具本体51Aの端面を積重治具5Aの当接面18に当接させる。そうすると、保持治具50A及び積重治具5Aは一体となり、積重治具5Aに対する保持治具50Aの相対的な移動が防止される。同様にして、積重治具5Bと保持治具50Bとからなる装着体35B及び積重治具5Cと保持治具50Cとからなる装着体35Cとする。
【0041】
一体にした装着体35Aを収納予定位置等に配置して、装着体35A上に装着体35Bを積み重ね、装着体35B上に装着体35Cを順次積み重ねる。このようにして積み重ねられた装着体35C上に、所望により、保持治具50Cを収納可能な凹部を有する蓋部材(例えば図3において破線で示される蓋部材等)を積み重ねる。このようにして積み重ねられた保持治具を搬送等する際には、装着体の積重体にゴムバンド等をかけて、装着体の積重状態を保持することができる。
【0042】
このようにして、3つの積重治具5A、5B及び5Cを用いて3つの保持治具50A、50B及び50Cを積み重ねることができる。そして、このように積み重ねられた保持治具は、粘着性表面を保護するための保護シートが貼付される必要がないから、粘着性表面の表面平滑性を維持することができると共に、保持治具同士が非接触状態で積み重ねられるから、積み重ねるべき保持治具が少数であっても小さな収納スペースで積み重ねることができる。
【0043】
また、積重治具5が枠状に形成されていると、保持治具の弾性部材は緩衝部16、他の保持治具の治具本体によって密閉空間に収納されるから、保護シート等を貼付しなくても、積み重ねられている間に粘着性表面に異物が付着することを効果的に防止することができる。
【0044】
この発明に係る第1態様の積重治具における一実施例は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、積重治具5すなわち緩衝部16は枠状に形成されているが、この発明において、積重治具は、図7(a)に示されるように、一方向に延在してなる棒状又は柱状に形成されてもよく、また、図7(b)に示されるように、L字状に屈曲してなる鉤型に形成されてもよい。棒状又は柱状に形成された積重治具6は、例えば、保持治具の対向する辺好ましくは各辺に装着され、鉤型に形成された積重治具7は、例えば、保持治具の対向する隅部上好ましくは各隅部上に積重治具が装着される。
【0045】
積重治具5において、緩衝部16は治具本体の形状及び寸法と同じ形状及び寸法に形成され、当接面18が形成されているが、この発明において、緩衝部の寸法は治具本体の寸法よりも大きく調整され、緩衝部が当接面を有してなくてもよい。また、積重治具5において、当接面18は治具本体の端面全面に当接するように形成されているが、この発明において、当接面は設けられていなくてもよく、また、緩衝部の一部に設けられてもよい。
【0046】
積重治具5において、一対の支持片31、32は緩衝部16の高さ方向上部に形成されているが、この発明において、下側支持片が緩衝部に形成されていれば上部支持片が形成されてなくてもよく、また、一対の支持片は緩衝部の高さ方向上部に形成されなくてもよい。また、積重治具5において、一対の支持片31、32は緩衝部16の高さ方向上部から内側に略水平方向に互い略並行に突出しているが、この発明において、下部接触面が治具本体を支持することができ、及び/又は、上部接触面が治具本体を支持することができる限り、一対の支持片は水平に突出していなくてもよい。
【0047】
積重治具5は、所望により、係止部材が設けられてもよい。係止部材としては、例えば、緩衝部の下面に形成された係止片と、緩衝部の上面に形成され、この係止片と係止する係止部とからなる係止部材、緩衝部に厚さ方向に貫通形成された孔を貫通するボルトとこのボルトと螺合するナットとからなる係止部材等が挙げられる。
【0048】
積重治具5において、把持部33は緩衝部に形成されているが、この発明において、把持部は形成されていなくてもよい。
【0049】
積重治具5の使用方法において、3つの保持治具50A、50B及び50Cを積み重ねる場合を説明したが、この発明において、積重治具は、2又は4以上の保持治具を積み重ねる場合にも用いることができ、積み重ねられる保持治具の数は特に限定されない。また、前記方法において、同様に形成された3つの積重治具5A、5B及び5Cを用いているが、この発明において、使用される積重治具は同様に形成されてなくてもよく、例えば、枠状の積重治具、棒状の積重治具及び鉤型の積重治具等を任意に組み合わせて用いることができる。さらに、前記方法において、上側支持片31及び把持部33が上方となるように装着体35A〜110Cを積み重ねたが、この発明においては、装着体における上側支持片及び把持部が下方となるように、積み重ねることもできる。
【0050】
この発明に係る第1態様の積重治具及びこの発明に係る第2態様の積重治具は、前記材料を用いて、通常の加工方法、例えば、成形、研削等により、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、この発明に係る第1態様の積重治具における一実施例である積重治具を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線における断面を示す断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る第1態様の積重治具を用いて保持治具を積み重ねた状態を説明する説明図である。
【図4】図4は、この発明に係る第1態様の積重治具における別の一実施例である積重治具を示す平面図であり、図4(a)は、この発明に係る第1態様の積重治具における別の一実施例である棒状の積重治具を示す平面図であり、図4(b)は、この発明に係る第1態様の積重治具におけるまた別の一実施例である鉤型の積重治具を示す平面図である。
【図5】図5は、この発明に係る第2態様の積重治具における一実施例である積重治具の断面を示す断面図である。
【図6】図6は、この発明に係る第2態様の積重治具を用いて保持治具を積み重ねた状態を説明する説明図である。
【図7】図7は、この発明に係る第2態様の積重治具における別の一実施例である積重治具を示す図であり、図7(a)は、この発明に係る第2態様の積重治具における別の一実施例である棒状の積重治具を示す斜視図であり、図7(b)は、この発明に係る第2態様の積重治具におけるまた別の一実施例である鉤型の積重治具を示す平面図である。
【図8】図8は、この発明に係る積重治具によって積み重ねられる保持治具の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1、1A、1B、2、3、5、5A、5B、5C、6、7 積重治具
10、15 下部接触面
11、16 緩衝部
12、17 上部接触面
13、18 当接面
20 上側当接面
21 下側当接面
22 周壁部
30 溝
31 上側支持片
32 下側支持片
33 把持部
35A、35B、35C 装着体
50、50A、50B、50C 保持治具
51、51A、51B、51C 治具本体
52 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と前記治具本体の表面に形成された弾性部材とを備えて成る保持治具を積み重ねる積重治具であって、
前記治具本体の端部下面に接する下部接触面と、前記保持治具及びこの保持治具に積み重ねられて隣接する保持治具同士が非接触状態となる緩衝部とを備えて成ることを特徴とする積重治具。
【請求項2】
前記治具本体の端部上面に接する上部接触面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の積重治具。
【請求項3】
前記緩衝部は、前記下部接触面と前記上部接触面とで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積重治具。
【請求項4】
前記積重治具は、枠状、棒状、鉤型を成していることを特徴とする請求項3に記載の積重治具。
【請求項5】
前記上部接触面と前記下部接触面とは、前記治具本体を挿入可能な溝を形成していることを特徴とする請求項2に記載の積重治具。
【請求項6】
前記積重治具は、弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の積重治具。
【請求項7】
前記積重治具は、枠状、棒状、鉤型を成していることを特徴とする請求項6に記載の積重治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−234650(P2009−234650A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86126(P2008−86126)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】