説明

穴検査対象物の検査装置

【課題】各貫通穴の形状が異なっていても貫通穴の大きさが所定値以内であれば良品とするような良否判定を行える穴検査対象物の検査装置を提供する。
【解決手段】貫通穴が形成された後に搬送路の所定の位置を通過する穴検査対象物の一方の面に光を照射する光照射手段11と、前記所定の位置を通過する際に光が照射された穴検査対象物の一方の面の裏側である他方の面を所定時間間隔で撮像する撮像手段12と、良否判定装置13とを備え、良否判定装置13は、撮像手段により所定時間間隔で撮像された前後の各画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値を求める輝度演算処理手段21と、X=(ALp−p−ΣAp−p−(ALp−p−ΣBp−pに基づいて判定値Xを算出する判定値算出処理手段22と、判定値Xに基づいて穴検査対象物の貫通穴の良否を判定する判定処理手段23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の貫通穴が形成された穴検査対象物の穴の良否を判定するための穴検査対象物の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明フィルムに多数の通気用の貫通穴を開けた穴検査対象物としての食品個包装用フィルムの貫通穴の良否判定は、目視検査により行われていた。食品個包装用フィルムの貫通穴の良否判定においては、各貫通穴の形状が異なっていても貫通穴の大きさが所定値以内であれば、良品と判定している。このような、貫通穴の良否判定は、検査者の勘に頼らざるを得ず、判定結果にばらつきが生じる。
そこで、上記貫通穴の良否判定の自動化を図るために、貫通穴の良品パターンを学習しておき、検査画像と良品パターン画像とを比較するパターンマッチング法を採用することが考えられる(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−091785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パターンマッチング法では、形状認識のため、貫通穴の形状が多少異なっている場合(貫通穴の大きさが多少ばらついている場合)に、良品であっても不良と判定してしまうので、食品個包装用フィルムの貫通穴の良否判定のように、各貫通穴の形状が異なっていても貫通穴の大きさが所定値以内であれば良品とする良否判定には向かない。
本発明は、各貫通穴の形状が異なっていても貫通穴の大きさが所定値以内であれば良品とするような良否判定を行える穴検査対象物の検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る穴検査対象物の検査装置は、穴開け加工対象物を繰り出して巻き取る過程において穴開け加工対象物の面に穴開け加工対象物の送り方向及び送り方向と直交する方向に互いに隣り合うように複数の貫通穴が形成された穴検査対象物の検査装置であって、貫通穴が形成された後に搬送路の所定の位置を通過する穴検査対象物の一方の面に光を照射する光照射手段と、前記所定の位置を通過する際に光が照射された穴検査対象物の一方の面の裏側である他方の面を所定時間間隔で撮像する撮像手段と、良否判定装置とを備え、良否判定装置は、撮像手段により所定時間間隔で撮像された前後の各画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値を求める輝度演算処理手段と、X=(ALp−p−ΣAp−p−(ALp−p−ΣBp−p・・・(1)(ここで、ALp−p;良品を撮影した画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、ΣAp−p;前画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、ΣBp−p;後画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、乗数nは整数である)に基づいて判定値Xを算出する判定値算出処理手段と、判定値Xに基づいて穴検査対象物の貫通穴の良否を判定する判定処理手段とを備えたので、各貫通穴の形状が異なっていても貫通穴の大きさが所定値以内であれば良品とする良否判定を確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】検査設備の概略を示す図(実施形態)。
【図2】撮像手段により撮像される食品個包装用フィルムの一定領域を示す図(実施形態)。
【図3】前画像データ、又は、後画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値の求め方を説明した図(実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態の検査装置の検査対象となる穴検査対象物としてのフィルムは、例えば、厚さ1mm以下の穴開け加工対象物としての透明フィルムに多数の通気用の貫通穴を開けた食品個包装用フィルムである。例えば、食品を個々に当該食品個包装用フィルムで包装した個々の個包装食品を大袋内に複数個入れ、当該大袋内に賞味期限延長剤(エージレス、シリカゲル、脱酸素材等)を1個入れて大袋を密封した商品を製造した場合、食品個包装用フィルムの貫通穴を介して大袋内部と食品個包装品内との通気性が確保され、賞味期限延長剤の効果により、複数の個包装食品の品質、味を守ることができるようになる。この場合、貫通穴の大きさは、空気の流通機能が維持できる程度の大きさ(例えば0.1mmφ〜0.3mmφ)に形成される。
【0008】
図1に示すように、検査設備1は、帯状の透明フィルム2が巻き付けられた巻出ロール3と、巻出ロール3より巻き出された透明フィルム2に貫通穴35(図2参照)を形成する貫通穴加工手段4と、貫通穴加工手段4によって透明フィルム2に複数の貫通穴35が形成された食品個包装用フィルム5を巻き取る巻取ロール6と、検査装置7とを備える。
【0009】
穴検査対象物としての食品個包装用フィルム5は、透明フィルム2を繰り出して巻き取る過程において透明フィルム2の面に透明フィルム2の送り方向及び送り方向と直交する方向に互いに隣り合うように貫通穴加工手段4によって形成される複数の貫通穴35を備え、検査装置7は、当該食品個包装用フィルム5に形成された複数の貫通穴35の良否を検査する装置である。食品個包装用フィルム5の巻取速度は、例えば、30m/分以上である。
【0010】
貫通穴加工手段4としては、透明フィルム2に貫通穴35を形成するための針状部4aを筒体の外周面に備えたロール型貫通穴開け加工機が用いられる。ロール型貫通穴開け加工機は、加熱された針状部4aを透明フィルム2に押し付けて貫通穴35を形成する。ロール型貫通穴開け加工機では、加熱された針状部4aの温度が高い場合には、貫通穴35の径が大きくなり、加熱された針状部4aの温度が低い場合には、貫通穴35の径が小さくなる。このロール型貫通穴開け加工機による貫通穴開け加工によれば、100mmの長さ当たり数10〜数百の貫通穴35を一定間隔で形成できる。
【0011】
検査装置7は、蛍光灯のような光照射手段11と、カメラのような撮像手段12と、良否判定装置13とを備える。
光照射手段11は、貫通穴35が形成された後に搬送路5R中の所定の位置を通過する食品個包装用フィルム5の一方の面5aに光を照射可能な位置に設けられる。
撮像手段12は、貫通穴35が形成された後に搬送路5R中の所定の位置を通過する際に光が照射された食品個包装用フィルム5の一方の面5aの裏側である他方の面5bを所定時間間隔で撮像可能な位置に設けられる。
即ち、光照射手段11と撮像手段12とが貫通穴加工後に所定の位置を通過する食品個包装用フィルム5を挟んで向かい合うように設置される。
【0012】
光照射手段11の前方には偏光フィルター15が設置される。従って、貫通穴加工後に所定の位置を通過する食品個包装用フィルム5の一方の面5aには偏光フィルター15を透過した光が照射される。
また、撮像手段12のレンズ16の前方には偏光フィルター17が設置される。
従って、偏光フィルター15;17による偏光特性によって光は食品個包装用フィルム5の貫通穴35の部分のみを透過し、撮像手段12には貫通穴35の部分のみが明るく、かつ、食品個包装用フィルム5の透明フィルム2の部分が暗くなった画像が撮像される。
【0013】
良否判定装置13は、輝度演算処理手段21と判定値演算処理手段22と判定処理手段23とを備える。輝度演算処理手段21、判定値演算処理手段22、判定処理手段23は、それぞれ、プログラムと、プログラムの手順に従って処理を行うコンピュータハードウエアとにより構成される。
【0014】
図1に示すように、例えば、貫通穴加工手段4により透明フィルム2に貫通穴35が形成された食品個包装用フィルム5が巻取ロール6で巻取られる過程において、光が照射される食品個包装用フィルム5の一方の面5aの裏側の他方の面5bにおける一定領域5X(図2参照)が撮像手段12により所定時間間隔で撮像され、撮像された画像データが良否判定装置13に順次出力される。撮像手段12が撮影を行う間隔である所定時間間隔は、食品個包装用フィルム5の巻取速度に対応して決められ、食品個包装用フィルム5の同じ部分を重複して撮像しないように設定されている。
【0015】
そして、良否判定装置13の輝度演算処理手段21は、撮像手段12により所定時間間隔で撮像された前後の画像データ31;32(図3参照)における輝度のピークツウピーク(Peak to Peak)値の平均値を計算する。
つまり、良否判定装置13の輝度演算処理手段21は、前画像データ31における輝度のピークツウピーク値の平均値、及び、当該前画像データ31の後に輝度演算処理手段21に入力される後画像データ32における輝度のピークツウピーク値の平均値を求める。
良否判定装置13の輝度演算処理手段21は、図3に示すように、前画像データ31中や後画像データ32中の複数の貫通穴列33;33…毎の輝度のピークツウピーク値を求め、これらピークツウピーク値の平均値を計算することにより、前画像データ31及び後画像データ32における輝度のピークツウピーク値の平均値を求める。
【0016】
そして、良否判定装置13の判定値算出処理手段22は、次の式(1)に基づいて、判定値Xを求める。尚、ALp−pは事前に求めておく。
X=(ALp−p−ΣAp−p−(ALp−p−ΣBp−p・・・(1)
ここで、
・ALp−p;良品を撮影した画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値
・ΣAp−p;前画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値
・ΣBp−p;後画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値
・乗数nは整数(例えば1〜9)
【0017】
そして、良否判定装置13の判定処理手段23は、上記式(1)により求められた判定値Xが予め決められた閾値内であれば、貫通穴35を「良」と決定する。即ち、実施形態では、食品個包装用フィルム5の状態や貫通穴加工手段4のコンディション、巻取機械の安定性等により貫通穴35の状態は変わるが、貫通穴35の大きさが所定値以内であれば良品であると判定する。尚、式(1)の乗数nは大きくすれば感度が良くなるので、差(ALp−p−ΣAp−p)や差(ALp−p−ΣBp−p)が明確になる値を決めればよい。
【0018】
上記式(1)により求められた判定値Xが予め決められた閾値内でなければ、前画像データ31又は後画像データ32中の貫通穴35が不良であると判定される。
良否判定装置13の判定処理手段23は、貫通穴35の良否判定により貫通穴35を「不良」と決定した場合に、巻取ロール6及び貫通穴加工手段4の駆動を停止して、食品個包装用フィルム5の製造を中止し、警告を出力する。警告を確認した作業管理者などは、貫通穴不良の原因を特定する。例えば、貫通穴加工手段4の針状部4aの破損、変形などの不具合の特定、貫通穴加工手段4の針状部4aの加熱量調整等を行って、貫通穴不良の原因を特定する。そして、貫通穴不良の原因を取り除いた後に、食品個包装用フィルム5の製造を再開させる。
【0019】
実施形態によれば、貫通穴35の形状が一定ではなく、各貫通穴35の形状が異なっていても貫通穴35の大きさが所定値以内であれば良品とする良否判定を確実に行える。例えば、貫通穴35の大きさが、所定の大きさ(仕様の大きさ)よりも大きい場合、又は、小さい場合に欠陥として検出できる。また、貫通穴35が開いていない場合も検出できる。即ち、貫通穴35の大きさが所定の大きさよりも極端に小さい場合や、貫通穴35が開いていない場合も検出できる。
また、食品個包装用フィルム5の巻取速度(搬送速度)に対応した撮像手段12の撮像間隔(所定時間間隔)で撮影された前後の画像データ31;32に基づいて良否判定処理を行うので、良否判定処理を高速に行える。
また、前後の画像データ31;32における輝度のピークツウピーク値の平均値を用いたので、良品と不良品との差が出やすくなり、不良品検出を確実に行える。
【0020】
尚、透過光を遮断する印刷がされているフィルムの場合は、偏光フィルター15;17は不要である。
また、穴検査対象物として食品個包装用フィルム5を例にして説明したが、穴検査対象物は、シート状、又は、板状のものでもよい。即ち、穴開け加工対象物を繰り出して巻き取る過程において穴開け加工対象物の面に穴開け加工対象物の送り方向及び送り方向と直交する方向に互いに隣り合うように複数の貫通穴が形成された穴検査対象物であればよい。
【符号の説明】
【0021】
1 検査設備、2 透明フィルム(穴開け加工対象物)、
5 食品個包装用フィルム(穴検査対象物)、5R 搬送路、7 検査装置、
11 光照射手段、12 撮像手段、13 良否判定装置、21 輝度演算処理手段、
22 判定値算出処理手段、23 判定処理手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴開け加工対象物を繰り出して巻き取る過程において穴開け加工対象物の面に穴開け加工対象物の送り方向及び送り方向と直交する方向に互いに隣り合うように複数の貫通穴が形成された穴検査対象物の検査装置であって、
貫通穴が形成された後に搬送路の所定の位置を通過する穴検査対象物の一方の面に光を照射する光照射手段と、前記所定の位置を通過する際に光が照射された穴検査対象物の一方の面の裏側である他方の面を所定時間間隔で撮像する撮像手段と、良否判定装置とを備え、
良否判定装置は、撮像手段により所定時間間隔で撮像された前後の各画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値を求める輝度演算処理手段と、以下の計算式(1)に基づいて判定値Xを算出する判定値算出処理手段と、判定値Xに基づいて穴検査対象物の貫通穴の良否を判定する判定処理手段とを備えたことを特徴とする穴検査対象物の検査装置。
X=(ALp−p−ΣAp−p−(ALp−p−ΣBp−p・・・(1)
ここで、
ALp−p;良品を撮影した画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、
ΣAp−p;前画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、
ΣBp−p;後画像データにおける輝度のピークツウピーク値の平均値、
乗数nは整数。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83109(P2012−83109A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226809(P2010−226809)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(394000873)株式会社エム・アイ・エル (8)
【出願人】(594000815)株式会社石井 (1)
【Fターム(参考)】