説明

空中位置提示装置

【課題】航空交通管制に係るディスプレイ空間に表示される航空機相互の位置関係を直感的に正確に把握可能な空中位置提示装置を提供する。
【解決手段】空中画像形成装置50は3次元空間に航空機位置57aおよび1個あるいは複数の高度表示マーク57bで構成される複数の輝点57を生起する。表示スクリーン12上に表示される航空機水平位置24と空中画像形成装置50により3次元空間に形成される航空機位置57aの位置は連動して制御される。高度表示マーク57bは所定の高度毎に航空機水平位置24と航空機位置57aとの間の直線上に形成される。したがって、3次元空間に形成された航空機位置57aおよび高度表示マーク57bと、表示スクリーン12に表示された航空機水平位置24より航空機の位置を正確に把握できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を使用して立体可視像を空中に描く技術に関し、特に空中に描かれた画像の位置を明確に表示する空中位置提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から立体表示技術に関しては多くの研究が行われ実用化されている。例えば、右眼用と左眼用の画像を別々に表示させて相互の視差情報により立体視させるもの、ホログラフィ技術を用いてある光源から光を3次元物体に照射した際に発生するはずの波面を再現することによってこの3次元物体を認識せしめるもの、可動スクリーンなどに映像を投射してこのスクリーンを動かすことで投射像が動くように視認されるもの等がある。
【0003】
一方、上記の立体表示技術による立体表示装置とは別に、高出力レーザ光を集光させて空気中に微小な高温領域を生起させ、該高温領域の空気をプラズマ化して発光させることによって空中の描画予定位置に輝点を発生させ画像を形成する空中画像形成装置が提供されている(特許文献1参照)。
【0004】
図5は空中画像形成装置50の概要図である。空中画像形成装置50は、図5に示すとおり、不可視光例えば赤外域の高出力のレーザ光52を出射するレーザ光源51と、入射するレーザ光52を集光し移動方向bの方向に移動可能に保持されたレンズ54と、レンズ54を透過したレーザ光52をミラー56に向けて反射するミラー55と、ミラー55で反射されたレーザ光52を反射するミラー56で構成される。ミラー55は軸58を中心として回転方向cの方向に回転可能に保持され、ミラー56は軸59を中心として回転方向dの方向に回転可能に保持されている。したがって、ミラー56で反射されるレーザ光52の方向はミラー55、56の回転角を制御することにより任意の方向に設定できる。
【0005】
レーザ光52はレンズ54により集光され焦点で空気中に微小な高温領域を生起させ該高温領域の空気をプラズマ化して発光させ輝点57が生成される。レーザ光源51から輝点57までの光路長はレンズ54の位置により確定する。軸X、Y、Zの3次元空間において、ミラー55の回転方向cの回転は前記焦点の軸X方向の移動に対応し、ミラー56の回転方向dの回転は前記焦点の軸Y方向の移動に対応し、レンズ54の移動方向bの移動は前記焦点の軸Z方向の移動に対応する。図示しない制御手段によりレンズ54の位置とミラー55、56の回転角が制御され画像形成予定位置に輝点57が生起される。シャッタ53は輝点57を生起させない場合に回転方向aの方向に回転してレーザ光52の光路に挿入される。
【0006】
例えば1/1000秒程度の周期で複数の輝点57を異なった位置に生起させ、空中に立体画像を形成できる。
【0007】
一方、航空交通管制において、航空管制官は、空中を飛行する航空機相互の位置関係を把握しながらそれぞれの航空機に的確な指示を与えて互いに接近しないようにすることで円滑な航空交通を実現し航空事故の発生を防止しているが、従来技術によれば、2次元画面に表示された航空機の位置情報と、付随的に数値表示される航空機の高度情報などを手掛かりにして航空機相互の空間的位置関係をその都度思考により組み立てて把握する必要がある。これは航空管制官に大きな心的負担を与え疲労を生じる恐れがあるが、上述の空中画像形成装置50を航空交通管制に応用した場合、複数の航空機の画像を3次元空間に表示でき、航空管制官の負荷を軽減できるものと期待できる。
【特許文献1】特開2003−233339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の空中画像形成装置50は、複数の航空機の画像を3次元空間に立体的に表示できるが、これらの画像は空中に浮いており、航空交通管制で重要な航空機相互の位置関係を正確に把握することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不可視域のレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を集光させ焦点で気体をプラズマ化し3次元空間の予定の位置に輝点を生起させる輝点生起用光学系と、前記3次元空間の下面、側面あるいは上面の2次元画像を表示する表示手段を有することを特徴とする空中位置提示装置である。例えば、前記3次元空間が航空交通管制に係るディスプレイ空間であり、航空機の位置が前記輝点で示されるものである。
【0010】
しかも、前記表示手段は前記2次元画像の表示平面に対する前記輝点からの垂直線と前記2次元画像の表示平面の交点に前記輝点の投影像を表示し、前記輝点と前記投影像との間に単一または複数個の補助輝点を生起させる。
【0011】
しかも、可視域レーザ光を出射する可視域レーザ光源を備え、前記可視域レーザ光を前記2次元画像の表示平面に平行する扇状平面光束に変換する変換手段を備え、前記2次元画像の表示平面と前記扇状平面光束の間隔を変更する変更手段を備えている。したがって、3次元空間に浮いた輝点の位置を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、航空交通管制に係るディスプレイ空間に表示される複数の航空機の相互位置関係を正確に把握することができ、航空管制官の心的負担と疲労を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
例えば1/1000秒程度の周期で複数の輝点を立体画像形成の予定位置に順次生起させる。観察者は残像により空中に立体画像を視認できる。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例について図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施例による空中位置提示装置の概略構成図である。図2は、本発明の実施例による空中位置提示装置の動作の概略を示す図である。図3は、本発明の実施例による空中位置提示装置の変形例を示す図である。図4は、航空機位置57aを表示する画像の一例を示す図である。
【0015】
本発明の実施例による空中位置提示装置は、図1に示すとおり、制御装置13により制御され3次元空間の予定の位置に輝点57を生起させる単一あるいは複数の空中画像形成装置50と、制御装置13により制御され単一あるいは複数の表示スクリーン12に連続してつなぎ目のない3次元空間の下面の2次元画像を投射表示する裏面投射式の単一または複数の映像投射装置11と、空中画像形成装置50で発生する赤外域の高出力レーザの反射・散乱光を遮断し観察者Mを保護する遮蔽板14で構成される。空中画像形成装置50は天井近傍に配設されるがその構成の詳細は背景技術にて図5を参照して説明したとおりである。観察者Mは制御装置13により制御される3次元空間の立体画像と連動して制御される表示スクリーン12上の画像を同時に観察できる。
【0016】
本発明の実施例による空中位置提示装置は、図2に示すとおり、3次元空間および表示スクリーン12上に画像を形成する。図2において、制御装置13の指令を受け映像投射装置11は表示スクリーン12に3次元空間の下面の地形を示す等高線21と、滑走路22と、滑走路22へ着陸するための進路の水平位置を示す航空機進路23と、航空機水平位置24と、当該航空機の便名と高度などを表わす航空機数値情報25などの画像を表示する。空中画像形成装置50は制御装置13の指令を受け3次元空間に航空機位置57aおよび1個あるいは複数の高度表示マーク57bで構成される複数の輝点57を生起する。
【0017】
表示スクリーン12上に表示される航空機水平位置24と空中画像形成装置50により3次元空間に形成される航空機位置57aの位置はともに制御装置13により連動して制御される。制御装置13は、高度表示マーク57bを所定の高度毎に航空機水平位置24と航空機位置57aとの間の直線上に形成し、航空機数値情報25で表示する高度表示と連動制御する。航空機位置57aの形状は、例えば図4(1)に示す複数の輝点57の集合体で形成することにより図4(2)で示すように航空機の進行方向を提示可能である。
【0018】
本発明の実施例による空中位置提示装置は以上の構成であるから、3次元空間に形成された航空機位置57aおよび高度表示マーク57bと、表示スクリーン12に表示された航空機水平位置24より航空機の位置を正確に把握できる。したがって、本発明により、航空交通管制に係る3次元ディスプレイ空間に表示される複数の航空機の相互位置関係を直感的に正確に把握することができ、航空管制官の心的負担と疲労を軽減できる。
【0019】
図3は、図1、2に示す実施例に、より容易に航空機の位置を正確に把握できる手段を追加した空中位置提示装置の概要を示す図である。当該空中位置提示装置に追加される手段は、図3に示すとおり、図示しない可視域レーザ光源から出射される可視域レーザ光31と、可視域レーザ光31を水平方向に折り曲げるミラー32と、可視域レーザ光31を表示スクリーン12に平行する扇状平面光束34に変換するロッドレンズ33で構成される。ミラー32とロッドレンズ33は一体で上下移動可能に支持され、表示スクリーン12と扇状平面光束34の間隔(高度)は観察者Mの指示する高度値を受信した制御装置13により前記高度値に設定される。扇状平面光束34は例えば3次元空間に薄いスモークを存在させることにより視認され、航空機の高度を容易に把握可能となる。なお、図3において図2と同じ符号で示す部品は図2と同じものなので説明は省略する。
【0020】
図3に示す実施例では、1個の扇状平面光束34が表示されているが、ミラー32とロッドレンズ33を高速で上下移動させ所定の複数の高度を通過する時だけ可視域レーザ光31を出射させることにより複数の高度に対応して複数の扇状平面光束34が視認されるようにしてもよい。この場合、各高度に対応して可視域レーザ光31の波長を変化させ扇状平面光束34の色を変化させるのが望ましい。
【0021】
図に示す実施例では、レンズ54を光軸方向に移動させてレーザ光源51から焦点までの光路長を変化させて輝点57の位置を制御しているが、レンズ54の代わりに流体レンズを配設し印加電圧を変化させて焦点距離を変え輝点57の位置を制御する構成でも本発明は適用可能である。レーザ光源51は赤外域のレーザ光52を出射する光源で構成されているが、紫外域のレーザ光を出射する光源でもよい。また、3次空間の下面の画像表示手段は映像投射装置11と表示スクリーン12で構成されているが、代わりに例えば液晶パネルまたはCRTで置き換えてもよい。また、本実施例は航空交通管制に係る3次元ディスプレイ空間を構成するものであるが、本発明は広告・展示あるいは娯楽等において効果的な3次元ディスプレイ空間を構成できる可能性を有する。上述のように本発明は図示例に限定されるものではなく種々の変形例を包含する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、レーザ光を使用して立体可視像を空中に描く技術に関し、特に空中に描かれた画像の位置を明確に表示する空中位置提示装置に利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例による空中位置提示装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例による空中位置提示装置の動作の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施例による空中位置提示装置の変形例を示す図である。
【図4】航空機位置を表示する画像の一例を示す図である。
【図5】空中画像形成装置の概要図である。
【符号の説明】
【0024】
11 映像投射装置
12 表示スクリーン
13 制御装置
14 遮蔽板
21 等高線
22 滑走路
23 航空機進路
24 航空機水平位置
25 航空機数値情報
31 可視域レーザ光
32 ミラー
33 ロッドレンズ
34 扇状平面光束
50 空中画像形成装置
51 レーザ光源
52 レーザ光
53 シャッタ
54 レンズ
55 ミラー
56 ミラー
57 輝点
57a 航空機位置
57b 高度表示マーク
58 軸
59 軸
a 回転方向
b 移動方向
c 回転方向
d 回転方向
M 観察者
X 軸
Y 軸
Z 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可視域のレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を集光させ焦点で気体をプラズマ化し3次元空間の予定の位置に輝点を生起させる輝点生起用光学系と、前記3次元空間の下面、側面あるいは上面の2次元画像を表示する表示手段を有することを特徴とする空中位置提示装置。
【請求項2】
前記3次元空間が航空交通管制に係るディスプレイ空間であり、航空機の位置が前記輝点で示されることを特徴とする請求項1記載の空中位置提示装置。
【請求項3】
前記表示手段は前記2次元画像の表示平面に対する前記輝点からの垂直線と前記2次元画像の表示平面の交点に前記輝点の投影像を表示することを特徴とする請求項1または2項記載の空中位置提示装置。
【請求項4】
前記輝点と前記投影像との間に単一または複数個の補助輝点を生起させることを特徴とする請求項1または2項記載の空中位置提示装置。
【請求項5】
可視域レーザ光を出射する可視域レーザ光源を備え、前記可視域レーザ光を前記2次元画像の表示平面に平行する扇状平面光束に変換する変換手段を備え、前記2次元画像の表示平面と前記扇状平面光束の間隔を変更する変更手段を備えたことを特徴とする請求項1または2項記載の空中位置提示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−122919(P2010−122919A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296148(P2008−296148)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】