説明

空中線調整装置、空中線の調整方法

【課題】狭域通信システムの空中線の調整を簡易に行うことを可能にする。
【解決手段】狭域通信システムの空中線を調整するために用いられる空中線調整装置は、地上子と本体部とを備える。モードAに設定されたとき、地上子は狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する。本体部は空中線が生成した誘起電圧を表示する。オペレータは誘起電圧が最大となるように空中線の角度を調整する。モードBに設定されたとき、本体部は、空中線に狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射させる。地上子は、受信した電波の信号レベルを検出して本体部に送信する。オペレータは、信号レベルに基づいて本体部に表示された電界強度が所定の基準を満たすように、空中線の出力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭域通信システムで用いられる空中線を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路の料金収受処理などに、狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)システムが用いられている。こうしたシステムは、有料道路を例に挙げると、車両に積載される車載器と、路側に設置される路側機の空中線との間で無線通信を行うことにより、料金収受に必要な情報通信を行う。
【0003】
狭域通信システムの事業者は、路側に空中線を設置するとき、適切な範囲に電波が届くように空中線の角度を調整する。更に、所定の範囲内でサービスを提供するために適切な電波の強度を確保するために、空中線の出力を調整する。こうした空中線の調整が簡易に実行できることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、作業者の熟練度に影響されることなく、迅速且つ確実に単一指向性空中線を最大感度が得られる向きに調整することを目的とする単一指向性空中線の方向調整装置が記載されている。この装置は、軸受によって回転自在に支持された単一指向性の空中線を受信信号レベルが最大となる向きへ回転させる方向調整装置であって、空中線をモータで回転させ、空中線の受信信号レベルを方向制御器で逐次検出して、受信信号レベルが最大値となる空中線の回転角度を検出し、この検出結果に基づいてモータへ駆動信号を出力して受信信号レベルが最大となる向きへ空中線を回転させる。
【特許文献1】特開平8‐293722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、狭域通信システムの空中線の調整を容易にする空中線調整装置及び空中線の調整方法を提供することである。
本発明の他の目的は、狭域通信システムの空中線の調整を簡易な構成により可能にする空中線調整装置及び空中線の調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明による空中線調整装置は、狭域通信システムの空中線(4)を調整するために用いられる空中線調整装置であって、電源を備え、空中線(4)の通信範囲に配置され、電源から供給される電力を用いて狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する地上子(8‐1〜8‐N)と、空中線(4)に接続され、空中線(4)が生成した誘起電圧を表示する本体部(6)とを備える。
【0008】
本発明による空中線調整装置において、本体部(6)は、地上子(8‐1〜8‐N)に輻射開始信号を無線で送信する地上子通信部(16)を備える。地上子(8‐1〜8‐N)は、輻射開始信号に応答して、狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する。
【0009】
本発明による空中線調整装置において、地上子(8‐1〜8‐N)は複数である。複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々は、設定信号に応答してモードAとモードBとのいずれか一方に選択的に設定される。モードAに設定されたとき、複数の地上子(8‐1〜8‐N)のうちの少なくとも1つは、狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する。モードBに設定されたとき、複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々は、狭域通信システムで使用される周波数の電波を受信し、受信した電波の信号レベルを示す信号レベルデータを無線通信により本体部(6)に送信する。本体部(6)は、入力操作に応答してモードAとモードBとのいずれか一方に選択的に設定される。モードAに設定されたとき、本体部(6)は空中線(4)が生成した誘起電圧を表示する。モードBに設定されたとき、本体部(6)は、空中線(4)に狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射することを指令する指令信号を送信し、複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々から受信した信号レベルデータに基づいて電界強度を表示する。
【0010】
本発明による空中線調整装置において、設定信号は、本体部(6)の入力装置に対する入力操作に応答して、本体部(6)から無線通信により複数の地上子(8‐1〜8‐N)に送信される。
【0011】
本発明による空中線調整装置は、狭域通信システムの空中線(4)を調整するために用いられる空中線調整装置であって、空中線(4)の通信範囲に配置される複数の地上子(8‐1〜8‐N)と、空中線(4)に接続される本体部(6)とを具備する。複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々は、狭域通信システムで使用される周波数の電波を受信したとき、複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々を個別に特定する識別子と、受信した電波の信号レベルを示す信号レベルデータとを無線通信により本体部(6)に送信する。本体部(6)は、所定の入力操作に応答して、空中線(4)に狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射することを指令する指令信号を送信する空中線通信部(12)と、複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々から受信した信号レベルデータに示される電界強度を識別子に対応づけて表示する表示部とを備える。
【0012】
本発明による空中線(4)の調整方法は、狭域通信システムの通信範囲に地上子(8‐1〜8‐N)を配置するステップと、本体部(6)を、狭域通信システムの空中線(4)に接続され、空中線(4)が生成した誘起電圧を表示するモードAに設定するステップ(S4)と、地上子(8‐1〜8‐N)を狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射するモードAに設定するステップ(S10)と、本体部(6)に表示された誘起電圧が最大となるように空中線(4)の角度を調整するステップ(S14)と、地上子(8‐1〜8‐N)を、狭域通信システムで使用される周波数の電波の信号レベルを検出し、検出された信号レベルを示す信号レベルデータを無線で送信するモードBに設定するステップ(S26)と、本体部(6)を、地上子(8‐1〜8‐N)から受信した信号レベルデータに基づいて得られた電界強度の強度を表示するモードBに設定するステップ(S24)と、本体部(6)に表示された電界強度が所定の基準を満たすように空中線(4)が輻射する電波の強度を調整するステップ(S36)とを備える。
【0013】
本発明による空中線(4)の調整方法は、固定した状態で使用される空中線(4)を用いた狭域通信システムの通信範囲に、狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する地上子(8‐1〜8‐N)を配置するステップと、検出器(6)により空中線(4)が地上子から受信する電波を受信して生成する誘起電圧を検出し、検出された誘起電圧が最大となるように空中線(4)の角度を調節するステップ(S14)とを備える。
【0014】
本発明による空中線(4)の調整方法は更に、検出器(6)から地上子(8‐1〜8‐N)に対して狭域通信システムで使用される周波数の電波の輻射を開始することを指令する信号を無線で送信するステップ(S8)を備える。
【0015】
本発明による空中線(4)の調整方法は、固定した状態で使用される空中線(4)を用いた狭域通信システムの通信範囲に、狭域通信システムで使用される周波数の電波の信号レベルを検出する複数の地上子(8‐1〜8‐N)を配置するステップと、空中線(4)から狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射するステップ(S30)と、複数の地上子(8‐1〜8‐N)の各々が空中線(4)から輻射された電波の信号レベルを検出して信号レベルデータを生成するステップ(S32)と、信号レベルデータに示された電界強度を表示装置(20)に表示するステップ(S34)と、表示装置(20)に表示された電界強度を参照しながら空中線(4)が輻射する電波の強度を調整するステップ(S36)とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、狭域通信システムの空中線の調整を容易にする空中線調整装置及び空中線の調整方法が提供される。
更に本発明によれば、狭域通信システムの空中線の調整を簡易な構成により可能にする空中線調整装置及び空中線の調整方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本実施の形態における空中線調整システムの概略構成を示す。空中線調整システムは、路上に存在する車両と路側に設置される調整対象空中線4との狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)において、調整対象空中線4を調整するために用いられる。
【0018】
空中線調整システムは、空中線調整装置本体部6と、空中線調整装置地上子群8とを含む。空中線調整装置本体部6は、携帯可能な装置である。空中線調整装置本体部6は、調整対象空中線4を調整するときに、調整対象空中線4に情報通信可能とするために接続される。この接続は無線でもよいが、調整対象空中線4側が通常備えている有線インタフェースを用いた有線接続の方が簡易である。空中線調整装置本体部6は、調整対象空中線4の狭域通信と同じ程度の範囲でワイヤレス通信を行う機能を有する。このワイヤレス通信の周波数帯は、狭域通信の周波数帯と異なっている必要がある。
【0019】
空中線調整装置地上子群8は、道路2に置いて使用される複数の空中線調整装置地上子を含む。各々の空中線調整装置地上子は、調整対象空中線4の調整の目的となるサービスで使用される目的サービス周波数の電波を輻射する機能と、目的サービス周波数の電波を受信してその電界強度を検出する機能を有する。各々の空中線調整装置地上子は、空中線調整装置本体部6とワイヤレス通信を行う機能を有する。
【0020】
図2は、空中線調整システムの機能ブロック図である。調整対象のアンテナを持つ狭域通信システム10は、調整対象空中線4と、その調整対象空中線4を介して車両に設置される車載器と情報通信を行い料金収受等の業務を行うコンピュータを備える。
【0021】
空中線調整装置本体部6は、有線通信インタフェースである空中線調整信号インタフェース部12、演算制御装置を含む制御・処理部14、無線通信インタフェースである地上子通信部16、入力装置である操作部18及び表示装置である表示部20を備える携帯型のコンピュータである。
【0022】
調整対象空中線4の調整を行うとき、空中線調整信号インタフェース部12が調整対象空中線4に電気的に接続される。地上子通信部16は、空中線調整装置地上子群8を構成する空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nの各々が備える地上子通信部30と無線通信を行う。
【0023】
各々の空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、地上子アンテナ部22、地上子受・発信部24、設定部26、地上子制御・処理部及び地上子通信部30を備え、独立電源によって動作する携帯型のコンピュータである。地上子アンテナ部22は地上子受・発信部24に制御されて調整対象空中線4と狭域通信の周波数で無線通信を行う。地上子通信部30は空中線調整装置本体部6の地上子通信部16と無線通信を行う。設定部26には設定情報が記録される。地上子制御・処理部28は演算制御装置を含み、各々の空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nを制御する。
【0024】
本実施の形態における空中線調整システムは、モードAとモードBの調整モードを有し、いずれか一方の調整モードに選択的に設定されて使用される。モードAは、空中線中心軸の振れ角・俯角調整モードであり、調整対象空中線4の角度を調整する場合に選択される。モードBは、地上電界強度の調整モードであり、調整対象空中線4の輻射する電波による電界強度を調整する場合に選択される。
【0025】
図3は、モードAにおける空中線調整システムを示す。調整の対象となる目的サービスを提供する調整対象空中線4は、所定位置に設置されている。オペレータは、この調整対象空中線4の角度を調整するとき、道路2上の目的サービスが提供される範囲の中心位置(調整対象空中線の中心線が到達する目的の地上位置)に、空中線調整対象地上子群8のうちの少なくとも1つである空中線調整装置地上子8‐1を配置する。オペレータは、空中線調整装置本体部6を調整対象空中線4に接続する。以後、オペレータは空中線調整装置本体部6を手許に持って調整を行う。
【0026】
モードAの以降の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。オペレータは、空中線調整装置本体部6の操作部18に対して入力操作を行うことにより、空中線調整システムをモードA(空中線中心軸の振れ角・俯角調整モード)に設定する(ステップS2)。空中線調整装置本体部6は、モードAに設定されたことを記憶する(ステップS4)。
【0027】
オペレータは、空中線調整のための計測を開始するために操作部18に対して所定の入力操作を行う(ステップS6)。空中線調整装置本体部6は、モードAの計測を行うための設定を行う。空中線調整装置本体部6の地上子通信部16は、空中線調整装置地上子8‐1に対して、モードAの計測開始を指令する計測開始信号をワイヤレス通信によって送信する(ステップS8)。
【0028】
計測開始信号を受信した空中線調整装置地上子8‐1は、モードAに設定されたことを設定部26に記憶し、自身が備える独立電源から供給される電力を用いて、目的サービスの狭域通信の周波数帯の電波を輻射する。このモードAの設定は、オペレータが空中線調整装置地上子8‐1を道路2上に配置する際に、空中線調整装置地上子8‐1が備える入力装置によって行ってもよい(ステップS10)。
【0029】
調整対象空中線4は、空中線調整装置地上子8‐1が輻射した電波を受けて誘起電圧を生成する。モードAに設定された空中線調整装置本体部6は、ステップS8における計測開始後、空中線調整信号インタフェース部12を介してその誘起電圧を受信し検出する。検出値は、所定の時間間隔で生成され、表示部20に表示される。望ましくは、表示部20には実質的にリアルタイムで誘起電圧が表示される。この表示には、数値の絶対値は必ずしも必要ではない。そのため、数値の相対的な増減が直感的に分かりやすい表示、例えば調整対象空中線4で誘起した受信信号レベル値をバーグラフ表示等の擬似アナログ表示で行われることが望ましい(ステップS12)。
【0030】
調整対象空中線4は、振れ角(水平面内の回転方向の角度)と俯角(鉛直面内で水平方向から下向きの角度)とをそれぞれ調整できるように設置されている。オペレータが振れ角や俯角を調整すると、それに対応して空中線調整装置地上子8‐1の輻射する電波によって調整対象空中線4に誘起される電圧が変化する。オペレータは、表示部20に表示される電圧の値を見て、調整対象空中線4の誘起電圧が最大となるように調整対象空中線4の振れ角と俯角を調整する(ステップS14)。
【0031】
オペレータは、表示部20に表示される誘起電圧が最大となることにより調整対象空中線4の角度が最適な向きに調整されたと判断すると、操作部18に対して、調整を完了することを示す入力操作を行う(ステップS16)。空中線調整装置本体部6は、調整対象空中線4の誘起電圧の計測を終了し、表示部20に対する誘起電圧の計測を中止する。空中線調整装置本体部6は、空中線調整装置地上子8‐1に対してワイヤレス通信により計測を終了することを示す計測終了信号を送信する(ステップS18)。計測終了信号を受信した空中線調整装置地上子8‐1は、電波の輻射を停止する(ステップS20)。
【0032】
図5は、モードBにおける空中線調整システムを示す。オペレータは、モードAにおいて振れ角・俯角の調整が完了すると、次にモードBにおいて電界強度を調整する。オペレータは、空中線調整装置地上子群8に属する複数の空中線調整装置地上子8‐1〜8‐N(図5の例ではN=5)を、道路2上の目的サービスが提供される範囲に分散的に設定される電界強度判定の主要代表位置に配置する。これらの空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、目的サービスが提供される範囲内の周縁付近に配置されることが望ましい。オペレータは、空中線調整装置本体部6を調整対象空中線4に接続した状態でモードBの計測を行う。
【0033】
モードBの以降の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。オペレータは、空中線調整装置本体部6の操作部18に対して入力操作を行うことにより、空中線調整システムをモードB(地上電界強度の調整モード)に設定する(ステップS22)。モードBの設定に伴って、オペレータは、使用する地上子の最大個数を操作部18に対して入力する。空中線調整装置本体部6は、モードBに設定されたという情報と、使用する地上子の最大個数とを記憶する。この最大個数は、空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nに対して識別子を割り当てるためと、それらの地上子と空中線調整装置本体部6との通信を設定するために用いられる。空中線調整装置本体部6は、モードBに設定することを指令するモードB設定信号を、使用する地上子の最大個数と共に地上子通信部16を介したワイヤレス通信により空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nに送信する(ステップS24)。モードB設定信号を受信した空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、モードBに設定されたという情報と、使用する地上子の最大個数とを設定部26に記憶する(ステップS26)。
【0034】
オペレータは、操作部18に対してモードBの計測を開始するための入力操作を行う(ステップS28)。空中線調整装置本体部6は、調整対象空中線4を調整の目的となる狭域通信サービスの周波数帯で、計測用に予め決められた基準強度の電波を輻射するように制御する(ステップS30)。
【0035】
モードBに設定された各々の空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、目的となる狭域通信サービスの周波数の電波を受信し、その電界強度を検出する。ステップS30で調整対象空中線4が電波の輻射を開始すると、空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、それぞれが配置された場所における調整対象空中線4から受信した電波の信号レベル(電界強度を示す値でもよい)を検出する。空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nの各々は、検出した信号レベルを、予め記憶している自地上子の識別子(1〜Nのいずれかを他と区別して特定する識別子)と共に、地上子通信部30を介してワイヤレス通信にて空中線調整装置本体部6に送信する。信号レベルの検出と送信とは、所定の時間間隔で自動的に実行される。好ましくは、受信信号のレベルの検出と送信は実質的にリアルタイムで行われる(ステップS32)。
【0036】
空中線調整装置本体部6は、受信した信号レベルを電界強度を示す値に変換し、受信した識別子と対応づけて表示部20に表示する。表示部20には、各々の空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nを個別に特定する識別子と、それぞれの空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nにおける電界強度値とが対応づけられたリストが表示される。この表示は、設定された地上子の最大個数に応じた表示領域を画面上に生成して行われる。この表示は刻々と逐次的に更新される。この表示は、電界強度の相対的な大小関係のみならず大きさを知ることができることが望ましく、例えば電界強度を示す数値によって表示される(ステップS34)。
【0037】
調整対象のアンテナを持つ狭域通信システム10は、調整対象空中線4が輻射する電波の強度を調整できるように構成されている。オペレータが空中線調整装置本体部6の操作部18に対して操作を行うと、空中線調整信号インタフェース部12を介して調整対象空中線4が輻射する電波の強度が調整される。あるいはこの調整は、オペレータが調整対象のアンテナを持つ狭域通信システム10の調整機能を直接操作することによって行ってもよい。オペレータが電波の強度を調整すると、その調整結果が表示部20に表示される電界強度のリストに反映される。オペレータは、表示部20を参照して、すべての電界強度値が、目的サービスを実現するために予め計画された最低基準を上回るように、あるいは必要以上の強度の電波が輻射されないように、調整対象空中線4を調整することにより、あるいはそれを駆動する装置の送信部の出力を増減することにより、電波の強度を調整する(ステップS36)。
【0038】
オペレータは、表示部20に表示される全ての電界強度値が所望の範囲内に入って調整が完了したと判断すると、操作部18に対して、調整を完了することを示す入力操作を行う(ステップS38)。空中線調整装置本体部6は、電波の輻射を中止するように調整対象空中線4を制御する。空中線調整装置本体部6は、モードBの計測を終了する計測終了信号を空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nに送信する(ステップS40)。計測終了信号を受信した空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nは、電界強度の検出と送信を終了する(ステップS42)。
【0039】
オペレータは、調整対象空中線4の角度と電界強度との調整を終えると、道路2上に配置された空中線調整装置地上子8‐1〜8‐Nを回収し、空中線調整装置本体部6を調整対象空中線4から外す。以上の調整作業を終えた調整対象空中線4は、目的となる狭域通信サービスが提供される範囲に最適な方向を向き、適切な強度の電波を輻射する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】空中線調整システムの概略構成を示す。
【図2】空中線調整システムの機能ブロック図である。
【図3】モードAにおける空中線調整システムを示す。
【図4】モードAの動作を示すフローチャートである。
【図5】モードBにおける空中線調整システムを示す。
【図6】モードBの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
2 道路
4 調整対象空中線
6 空中線調整装置本体部
8 空中線調整装置地上子群
8‐1〜8‐N 空中線調整装置地上子
10 調整対象のアンテナを持つ狭域通信システム
12 空中線調整信号インタフェース部
14 制御・処理部
16 地上子通信部
18 操作部
20 表示部
22 地上子アンテナ部
24 地上子受・発信部
26 設定部
28 地上子制御・処理部
30 地上子通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭域通信システムの空中線を調整するために用いられる空中線調整装置であって、
電源を備え、前記空中線の通信範囲に配置され、前記電源から供給される電力を用いて前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する地上子と、
前記空中線に接続され、前記空中線が生成した誘起電圧を表示する本体部
とを具備する
空中線調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載された空中線調整装置であって、
前記本体部は、前記地上子に輻射開始信号を無線で送信する地上子通信部を備え、
前記地上子は、前記輻射開始信号に応答して、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する
空中線調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された空中線調整装置であって、
前記地上子は複数であり、前記複数の地上子の各々は、設定信号に応答してモードAとモードBとのいずれか一方に選択的に設定され、
前記モードAに設定されたとき、前記複数の地上子のうちの少なくとも1つは、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射し、
前記モードBに設定されたとき、前記複数の地上子の各々は、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を受信し、受信した電波の信号レベルを示す信号レベルデータを無線通信により前記本体部に送信し、
前記本体部は、入力操作に応答して前記モードAと前記モードBとのいずれか一方に選択的に設定され、
前記モードAに設定されたとき、前記本体部は前記空中線が生成した誘起電圧を表示し、
前記モードBに設定されたとき、前記本体部は、前記空中線に前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射することを指令する指令信号を送信し、前記複数の地上子の各々から受信した前記信号レベルデータに基づいて電界強度を表示する
空中線調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載された空中線調整装置であって、
前記設定信号は、前記本体部の入力装置に対する入力操作に応答して、前記本体部から無線通信により前記複数の地上子に送信される
空中線調整装置。
【請求項5】
狭域通信システムの空中線を調整するために用いられる空中線調整装置であって、
前記空中線の通信範囲に配置される複数の地上子と、
前記空中線に接続される本体部とを具備し、
前記複数の地上子の各々は、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を受信したとき、前記複数の地上子の各々を個別に特定する識別子と、受信した電波の信号レベルを示す信号レベルデータとを無線通信により前記本体部に送信し、
前記本体部は、
所定の入力操作に応答して、前記空中線に前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射することを指令する指令信号を送信する空中線通信部と、
前記複数の地上子の各々から受信した前記信号レベルデータに示される電界強度を前記識別子に対応づけて表示する表示部とを備える
空中線調整装置。
【請求項6】
狭域通信システムの通信範囲に地上子を配置するステップと、
本体部を、前記狭域通信システムの空中線に接続され、前記空中線が生成した誘起電圧を表示するモードAに設定するステップと、
前記地上子を前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射するモードAに設定するステップと、
前記本体部に表示された誘起電圧が最大となるように前記空中線の角度を調整するステップと、
前記地上子を、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波の信号レベルを検出し、検出された前記信号レベルを示す信号レベルデータを無線で送信するモードBに設定するステップと、
前記本体部を、前記地上子から受信した信号レベルデータに基づいて得られた電界強度を表示するモードBに設定するステップと、
前記本体部に表示された前記電界強度が所定の基準を満たすように前記空中線が輻射する電波の強度を調整するステップ
とを具備する空中線の調整方法。
【請求項7】
固定した状態で使用される空中線を用いた狭域通信システムの通信範囲に、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射する地上子を配置するステップと、
検出器により前記空中線が前記地上子から受信する電波を受信して生成する誘起電圧を検出し、検出された前記誘起電圧が最大となるように前記空中線の角度を調節するステップ
とを具備する空中線の調整方法。
【請求項8】
請求項7に記載された空中線の調整方法であって、
更に、前記検出器から前記地上子に対して前記狭域通信システムで使用される周波数の電波の輻射を開始することを指令する信号を無線で送信するステップ
を具備する空中線の調整方法。
【請求項9】
固定した状態で使用される空中線を用いた狭域通信システムの通信範囲に、前記狭域通信システムで使用される周波数の電波の信号レベルを検出する複数の地上子を配置するステップと、
前記空中線から前記狭域通信システムで使用される周波数の電波を輻射するステップと、
前記複数の地上子の各々が前記空中線から輻射された電波の前記信号レベルを検出して信号レベルデータを生成するステップと、
前記信号レベルデータに示された電界強度を表示装置に表示するステップと、
前記表示装置に表示された電界強度を参照しながら前記空中線が輻射する電波の強度を調整するステップ
とを具備する空中線の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−89242(P2009−89242A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258804(P2007−258804)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】