説明

空冷器

【課題】 低コストで、簡単な作業のみで、確実に送風器の振動を防止する。
【解決手段】 送風器2では枠体4の貫通孔6内に羽根8が配置されている。保護カバー10が貫通孔6にほぼ一致する風穴14を有し、これには指保護体22が形成されている。貫通孔6と風穴14とを一致させた状態に枠体4が保護カバー10に位置決めされ、保護カバー10と一体の押圧部38の爪40が、枠体4を保護カバー10側に押圧し、風穴14内のバネ部24の突部26が枠体4を保護カバー10と反対側に押圧している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器を空気冷却する空冷器に関し、特に、送風器をそれの保護カバーへ取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風器を保護カバーに取り付ける構造としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術によれば、送風器は、枠体に形成した貫通孔内に羽根が配置されている。枠体の4隅にはボルト止め用孔が貫通されている。機器の板状に形成された送風器取付部には、送風器の貫通孔に対応する風穴と、ボルト止め用孔に対応する位置決め孔とが形成されている。この送風器取付部の後方に送風器が配置され、前方に、風穴に対応する大きさの保護カバーが配置されている。保護カバーの4隅には、フック部が形成され、これらフック部は、対応するボルト挿通用孔を通って枠体の対応するボルト止め用孔内を通り、枠体の裏側に係合している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−143983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、保護カバーと送風器と送風器取付部との位置決めと保持とを一回の動作で行うことができる。しかし、フック部やボルト止め用孔には寸法公差があり、その寸法公差が大きいことが多い。その場合、送風器が固定されず、例えば横方向に振動して騒音を発生することがある。
【0005】
本発明は、送風器の振動を大幅に低減した状態に取り付けることができる空冷器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の空冷器は、送風手段を有している。送風手段は、枠体を備え、この枠体は、第1貫通孔を有している。第1貫通孔内に、羽が設けられている。この羽は、例えばモータによって駆動され、第1貫通孔の貫通方向に送風する。第1貫通孔にほぼ一致する第2貫通孔を保護カバーが有している。第2貫通孔内に指保護体が設けられている。第1及び第2の貫通孔を一致させた状態で、前記枠体が第2貫通孔の周囲の面に配置されている。この保護カバーの前記面に前記保護カバーと一体に複数の押圧部が設けられている。これら押圧部は、前記枠体の両外側に位置し、先端に係合爪を有し、これら係合爪が、前記枠体の背面に係合し、前記枠体を前記保護カバー側に押圧している。保護カバーに一体に設けられた可撓部が、前記送風手段に接触し、前記送風手段を押圧している。
【0007】
このように構成すると、送風器の枠体の保護カバーへの取付の際に寸法公差に起因して、隙間が生じても、押圧部と突部が枠体を両側から押圧しているので、羽根を回転させても、送風器の振動を抑制することができる。しかも、押圧部や可撓部は、保護カバーに一体に設けられているので、別途振動防止用の部品を準備したり、この部品を取り付けたりする作業が不要である。
【0008】
前記送風手段は、前記枠体から第1貫通孔内に伸びて前記羽を固定する橋部を有するものにできる。この場合、前記可撓部は、第2の貫通孔内に伸びる片持ち梁状に形成され、その先端に前記送風手段側に突出して設けられた凸部が前記橋部を押圧している。このように送風手段側に突出した凸部が、送風手段側の橋部を押圧するので、バランスよく振動を抑圧することができる。
【0009】
前記保護カバーと押圧部と凸部と可撓部とは、合成樹脂製にすることができる。このように構成すると、保護カバーの製造時に同時に押圧部や可撓部を製造することができ、工数や部品点数が増加することがない。
【0010】
前記枠体に凹部を設け、前記保護カバーに突部を設け、前記凹部に前記突部を進入させることによって、前記枠体が前記保護カバーに位置決めすることができる。このように構成すると、保護カバーと送風手段との位置決めと固定とを同時に行うことができ、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、低コストで、かつ簡単な作業のみで、確実に送風器の振動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の1実施形態の空冷器は、図1に示すように、送風手段、例えば送風器2を有している。送風器2は、枠体4を備えている。この枠体4は、例えば扁平な直方体状に形成され、その中央に円形の貫通孔6が形成されている。この貫通孔6内に羽根8が配置されている。この羽根8は、図2に示すように貫通孔6の一方の面側に所定角度、例えば90度間隔に設けた複数、例えば4つの橋部7によって貫通孔6の中心に位置するように、かつ固定されている。この羽8は、内蔵するモータ(図示せず)によって回転させられ、貫通孔6の貫通方向に送風する。
【0013】
空冷器は、送風器2の他に保護カバー10も有している。保護カバー10は、長方形状の板状部12を有し、その中央には、送風器2の貫通孔6に対応する大きさの貫通孔、例えば風穴14が形成されている。この風穴14には、風穴14の中央に位置する小円板状部16から風穴14の周縁部まで放射状に伸びた複数、例えば8つのリブ18が形成されている。この実施形態では、リブ18は、隣接するものと等角度、例えば45度の角度をなすように配置されている。風孔14を介して羽根8に指が接触するのを防止するために、指保護体として、複数例えば4つの円弧状部20が所定角度ごとに、例えば90度間隔にリブ18間に形成されている。
【0014】
円弧状部22が90度間隔に設けられているので、隣接するリブ18間に円弧状部20が形成されていないものが存在するが、これら円弧状部20が存在しない隣接する2つのリブ20の一方から他方に向けて、可撓部、例えばバネ部22が形成されている。バネ部22は、円弧状部20と同一円周上に位置する同一円周上に形成されている。これらバネ部22の先端部が、リブ18とは接続されて無く、片持ち梁状に形成されている。これらバネ部22の先端の一方の面側には、この一方の面よりも突出した状態に凸部24が形成されている。この凸部24が形成されている面側に送風機2が取り付けられ、これら凸部24は、各橋部7に接触し、送風機2を保護カバー10と反対側に押圧する。この保護カバー10は、例えば合成樹脂によって製造されており、そのため片持ち梁状に形成されたバネ部22は、風穴14の貫通方向に撓むことが可能である。また、バネ部22は、その先端がリブ18との間に隙間をあけているので、型抜きが容易である。
【0015】
板状部12の一方の面における風穴14の4隅に、位置決め用の突部28がそれぞれ形成されている。これら突部28に対応するように送風器2の枠体4にも、貫通孔6の4隅に、凹部、例えば貫通孔6の貫通方向に貫通した挿通孔30が形成されている。これら挿通孔30に各突部28を挿通することによって、枠体4が保護カバー10に対して位置決めされている。なお、保護カバー10は、図示していない機器、例えば電気機器の筐体に取り付けられるもので、そのために、板状部12の枠体4側の面における長手縁両側には、板状部12にほぼ垂直に矩形の壁部32、32が形成され、これら壁部32の外面側には、それぞれ2本の条体34が間隔をおいて平行に形成されている。
【0016】
また、これら壁部32、32の内面側には、枠体4の両側面に接近して、板状体36、36が形成されている。
【0017】
枠体4は、上述したように突部28を挿通孔30へ挿通することによって板状部12に位置決めされ、この位置決め状態で枠体4を固定するために、押圧部38が設けられている。
【0018】
押圧部38は、枠体4の両側面にほぼ接するように位置している。枠体4の両側に位置する押圧部38間の距離は、枠体4の幅寸法よりも幾分短く設定されている。各押圧部38は、板状部12と反対側に伸び、その先端は、枠体4の背面側まで伸び、先端には、それぞれ枠体4の背面に係合する係合爪40が形成されている。これら押圧部38は、保護カバー10と一体に合成樹脂によって形成されている。従って、押圧部38は、可撓性を有し、図3に示すように各押圧部38の係合爪40が枠体4の背面に係合している状態では、幾分撓んでおり、保護カバー10側に枠体4を押圧している。一方、上述したように、保護カバー10側のバネ部22の各凸部24が送風機2の橋部7を保護カバー10と反対側に押圧している。このように係合爪40と凸部24とによって、枠体4が両側から固定される。その結果、羽根8を回転させても、筐体4の振動を大幅に低減することができる。
【0019】
上記の実施形態では、押圧部38は、枠体4の両側に設けたが、板状部12の高さ寸法が上記の実施形態の場合よりも長く、枠体4の上下にも押圧部38を設けるスペースが或る場合には、これらスペースにも押圧部38を設けることもできる。上記の実施形態では、4つの押圧部38を設けたが、その数は任意に変更でき、最低限度、枠体4の両側に1個ずつ設ければよい。上記の実施形態では、バネ部22と凸部24とは、それぞれ4つ形成したが、これらの数は、バランスを考慮して、3つ以上形成することが望ましいが、数は必ずしも限定されるものではない。バネ部22は円弧状に形成したが、これに限ったものではなく、風穴14を横断したり、縦断したり、または斜めに横切るように形成することもできる。上記の実施形態では、貫通孔6の貫通方向に貫通した挿通孔30を形成したが、必ずしも貫通させる必要はなく、突部28が進入可能な凹部であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の空冷器の一方の方向から見た組み立て図である。
【図2】図1の空冷器の図1とは反対の方向から見た組み立て図である。
【図3】図1の空冷器の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 送風器(送風手段)
4 枠体
6 貫通孔(第1の貫通孔)
8 羽根
10 保護カバー
14 風穴(第2の貫通孔)
20 指保護体(円弧状部)
38 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貫通孔を有する枠体における第1貫通孔の貫通方向に送風するように第1貫通孔内に羽根を設けた送風手段と、
第1貫通孔にほぼ一致する第2貫通孔を有し、第2貫通孔内に指保護体が設けられ、第1及び第2の貫通孔を一致させた状態で、前記枠体が第2貫通孔の周囲の面に配置された保護カバーと、
この保護カバーの前記面に前記保護カバーと一体に設けられ、前記枠体の両外側に位置し、先端に係合爪を有し、これら係合爪が、前記枠体の背面に係合し、前記枠体を前記保護カバー側に押圧している複数の押圧部と、
前記保護カバーに一体に設けられ、前記送風手段に接触し、前記送風手段を押圧する可撓部とを、
具備する空冷器。
【請求項2】
請求項1記載の空冷器において、前記送風手段は、前記枠体から第1貫通孔内に伸びて前記羽を固定する橋部を有し、前記可撓部は、第2の貫通孔内に伸びる片持ち梁状に形成され、その先端に前記送風手段側に突出して設けられた凸部が前記橋部を押圧している空冷器。
【請求項3】
請求項2記載の空冷器において、前記保護カバーと前記押圧部材と前記凸部とは、合成樹脂製である空冷器。
【請求項4】
請求項1記載の空冷器において、前記枠体に凹部を設け、前記保護カバーに突部を設け、前記凹部に前記突部を進入させることによって、前記枠体が前記保護カバーに位置決めされる空冷器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281178(P2009−281178A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131831(P2008−131831)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】