説明

空気入りタイヤ

【課題】ビード部からサイドウォール部にわたる領域を補強しながらも、優れた耐久性を発揮することができる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ周方向に沿ってコード7を渦巻状に巻回してなる巻回体5,6が、カーカスプライ4の端部4aの外側と内側に設けられ、その外側巻回体5と内側巻回体6とでカーカスプライ4の端部4aを挟み込んでおり、外側巻回体5がリムフランジRFの外周側湾曲面よりもタイヤ径方向外側に突出する外周端5aを有し、外側巻回体5の外周側部分を構成するコード7oが、タイヤ径方向に振幅を有する波形状に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部、サイドウォール部、トレッド部及びカーカスプライを備えた空気入りタイヤに関し、特にビード部からサイドウォール部にわたる領域での補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13に示すように、一般的な空気入りタイヤのビード部31には、スチール製ビードワイヤの収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア31aと、断面三角形状の硬質ゴムからなるビードフィラー31bとが配設される。カーカスプライ34は、一対のビード部31の間に架け渡されるように配設され、端部34aがビードコア31aを介して外側に巻き上げた状態で係止される。タイヤは、ビード部31がリムフランジRFに内接するようにしてリムRに組み付けられる。
【0003】
このような従来タイヤにおいて、特に扁平率が低いタイヤにおいては、ビード部31からサイドウォール部32にわたる領域での剛性を高めるべく、スチール等からなるサイド補強層35が設けられることがある。かかるサイド補強層35は、タイヤの成型工程とは別工程で作成して貼り付けられ、特にコア成型においてサイド補強層35を貼り付ける場合には、事前にサイド補強層35を具備したビード部材を準備することができないため、これを貼り付けるための専用装置が必要になる。
【0004】
上記の如き補強構造に関し、下記特許文献1に記載のタイヤでは、ビードフィラーの外側面にタイヤ周方向に延在するコードを渦巻状に巻回添着して補強層を設けている。また、下記特許文献2に記載のタイヤでは、ビードコアを構成するスチールワイヤをタイヤ外周側に連続して巻き付けて補強部を設けている。これらは何れも操縦安定性の向上を図るものである。更に、下記特許文献3に記載のタイヤでは、カーカスプライの端部をタイヤ周方向に配列したコードによって両側から挟み込み、そのカーカスプライの端部の外側ではコードを高く積み上げている。
【0005】
しかしながら、上記の何れのタイヤにおいても、ビード部からサイドウォール部にわたる領域での補強効果が得られるものの、その反面、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたってリムとは接しない領域の剛性が高くなる傾向にある。そのため、走行時の負荷入力などによりタイヤが撓み変形すると、当該領域における歪みが大きくなり、タイヤの耐久性が損なわれるおそれがある。
【特許文献1】特開2003−48409号公報
【特許文献2】特開2006−264481号公報
【特許文献3】特表2003−514706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ビード部からサイドウォール部にわたる領域を補強しながらも、優れた耐久性を発揮することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記ビード部から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、前記一対のビード部の間に配設されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に沿ってコードを渦巻状に巻回してなる巻回体が、前記カーカスプライの端部の外側と内側に設けられ、その外側巻回体と内側巻回体とで前記カーカスプライの端部を挟み込んでおり、前記外側巻回体がリムフランジの外周側湾曲面よりもタイヤ径方向外側に突出する外周端を有し、前記外側巻回体の外周側部分を構成するコードが、タイヤ径方向に振幅を有する波形状に成形されているものである。
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、カーカスプライの端部がコードの巻回体により両側から挟み込まれたビード構造を有するものである。そして、その外側巻回体がリムフランジの外周側湾曲面よりもタイヤ径方向外側に突出する外周端を有しており、これによってビード部からサイドウォール部にわたる領域を補強できる。しかも、外側巻回体の外周側部分を構成するコードが、タイヤ径方向に振幅を有する波形状に成形されているため、タイヤが撓み変形する際には、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域が柔軟に伸縮し、当該領域での剛性の上昇を抑えて優れた耐久性を発揮することができる。
【0009】
本発明では、前記外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、タイヤ径方向外側に向かって振幅を徐々に大きくするものが好ましい。かかる構成によれば、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなるため、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなり、歪みの増加を抑えてタイヤの耐久性を効果的に高めることができる。
【0010】
本発明では、前記外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、タイヤ径方向外側に向かって波長を徐々に小さくするものが好ましい。かかる構成によれば、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなるため、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなり、歪みの増加を抑えてタイヤの耐久性を効果的に高めることができる。
【0011】
本発明では、前記外側巻回体の外周側部分が、前記波形状のコードの振幅をタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくする振幅変化領域と、その振幅変化領域の内周側にて、前記振幅変化領域の最小振幅よりも振幅を大きくした振幅大領域とを有し、前記振幅大領域の外周端がリム基準径位置からタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配されたものが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、振幅変化領域においては、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなって、タイヤの耐久性を高めることができる。それでいて、振幅変化領域の内周側に振幅大領域が形成されることにより、リムフランジの外周端付近に集中しがちな歪みを緩和して、ビード部の耐久性を高めることができる。
【0013】
本発明では、前記外側巻回体の外周側部分が、前記波形状のコードの波長をタイヤ径方向外側に向かって徐々に小さくする波長変化領域と、その波長変化領域の内周側にて、前記波長変化領域の最大波長よりも波長を小さくした波長小領域とを有し、前記波長小領域の外周端がリム基準径位置からタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配されたものが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、波長変化領域においては、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなって、タイヤの耐久性を高めることができる。それでいて、波長変化領域の内周側に波長小領域が形成されることにより、リムフランジの外周端付近に集中しがちな歪みを緩和して、ビード部の耐久性を高めることができる。
【0015】
本発明では、前記外側巻回体及び前記内側巻回体を構成するコードが、フィラメントを撚ったスチールコードであり、該スチールコードの1本当たりの引張り強力が0.5〜3.5kNであるものが好ましい。
【0016】
このようなスチールコードを使用することにより、ビード部のワイヤー強力を確保しながら、タイヤ剛性と耐久性を両立できるという点で有利である。また、外側巻回体と内側巻回体とを同じ材質とすることで、タイヤ成型時の部材の段替えロスを無くし生産性が向上するという点で有利である。
【0017】
本発明では、前記波形状のコードが配置される領域が、リム基準径位置から10mm以上タイヤ径方向外側であって且つタイヤ断面高さの45%以下にあるものが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、波形状のコードがリム径基準位置から10mm以上タイヤ径方向外側に配置されることにより、外側巻回体の内周側部分では剛性が確保され、タイヤのビード耐久性能を良好に維持できる。また、波形状のコードがリム径基準位置からタイヤ断面高さの45%以下に配置されることにより、歪みが集中し易いタイヤ最大幅位置の近辺には外側巻回体の外周端が配置されず、タイヤの一般耐久性能を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤを概略的に示すタイヤ子午線断面図である。図2は、そのビード部からサイドウォール部にわたる領域を示す部分断面図である。
【0020】
本発明の空気入りタイヤは、図1に示すように、一対のビード部1と、ビード部1から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3と、一対のビード部1の間に架け渡されるようにして配設されたカーカスプライ4と、を備えるものである。
【0021】
カーカスプライ4は、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをゴム被覆して形成される。該コードとしては、ポリエステルやレーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードが例示される。図示を省略しているが、カーカスプライ4のトレッド部3外周には、ベルトプライにより構成されたベルト層が配設され、更にその外周には必要に応じてベルト補強層が配設される。
【0022】
ビード部1では、タイヤ周方向に沿ってコード7を渦巻状に巻回してなる巻回体5,6が、カーカスプライ4の端部4aの外側と内側に設けられている。この端部4aは、その外側に位置する外側巻回体5と内側に位置する内側巻回体6とにより挟み込まれ、両巻回体5,6の間で係止されている。巻回体5,6は、何れもフィラメントを撚ったスチールコードにより構成され、その材質は互いに同じである。該スチールコードの1本当たりの引張り強力は0.5〜3.5kNである。
【0023】
外側巻回体5は、リムフランジRFの外周側湾曲面よりもタイヤ径方向外側に突出する外周端5aを有する。これにより、従来のサイド補強層を代替して或いは補完して、ビード部1からサイドウォール部2にわたる領域を補強できる。外周端5aは、リム基準径位置RPからタイヤ径方向外側に好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上となる位置に配される。
【0024】
外側巻回体5は、外周側部分を構成するコード7oが、図3,4に示すようなタイヤ径方向に振幅を有する波形状に成形されていると共に、内周側部分を構成するコード7iは、そのような振幅を有しない非波形状である。図4では、内周側から4周目以降が波形状に成形され、その波形状のコード7oが一定の振幅と波長で延在する例を示す。本明細書では、渦巻状に巻回されたコード7に対し、外周側部分を構成する波形状の部分に符号7oを付し、内周側部分を構成する非波形状の部分に符号7iを付して説明する。
【0025】
かかる構成によれば、タイヤが撓み変形するに際して、リムフランジRF近辺からサイドウォール部2にわたる領域(例えば図1における領域9)が柔軟に伸縮する。したがって、本来であれば外側巻回体5の配設により当該領域での剛性が上昇するところ、本発明では、この領域にてコード7を波形状とすることで剛性の上昇を抑え、優れた耐久性を発揮することができる。しかも、コード7oとコード7iとが連続していて、それらの間に段差などが形成されないため、該段差などに起因した故障の発生を免れ得る。
【0026】
内側巻回体6を構成するコード7は、外側巻回体5の内周側部分と同様に、振幅を有しない非波形状である。このため、カーカスプライ4の端部4aは、外側巻回体5の内周側部分と内側巻回体6とにより強固に係止される。また、ビード部1の下部周辺の剛性が適切に確保され、タイヤのビード耐久性能を良好に維持できると共に、リムRにビード部1を安定して嵌合することができる。
【0027】
本発明では、波形状のコード7oが配置される領域が、リム基準径位置RPから10mm以上タイヤ径方向外側にあることが好ましい。これにより、外側巻回体5の内周側部分での剛性を確保して、タイヤのビード耐久性能を良好に維持できる。また、波形状のコード7oが配置される領域は、リム基準径位置RPからタイヤ断面高さHの45%以下にあることが好ましい。これにより、歪みが集中し易いタイヤ最大幅位置WBの近辺には外側巻回体5の外周端5aが配置されず、タイヤの一般耐久性能を良好に維持できる。
【0028】
リム基準径位置RPとは、リムRのリム径を定める基準位置であり、リムRには正規リムが採用される。正規リムとは、JATMAに規定される標準リム、TRAに規定される"Design Rim"、或いはETRTOに規定される"Measuring Rim"が該当する。また、断面高さHは、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の状態で測定したものとする。正規内圧は、各規格の寸法測定時の内圧であり、乗用車の場合は180kPaが採用される。
【0029】
タイヤの撓み変形時に十分な柔軟性及び伸縮性を発揮する観点から、波形状のコード7oの振幅Aは0.5mm以上が好ましい。また、同じ理由から、コード7oの波長Lは3mm以上且つ30mm以下が好ましい。
【0030】
このように、本発明は、外側巻回体5を構成するコード7に対して、波形状の部分と非波形状の部分とを意図的に且つ連続的に設けたものであり、それによってビード部1からサイドウォール部2にわたる領域を補強しながらも、優れた耐久性を発揮できるものである。本発明では、コード7の巻回数や巻回密度、並びに波形状のコード7oの振幅や波長を適宜に調整することで、外側巻回体5の伸縮性を変化させることができ、リムフランジ近辺からサイドウォール部2にわたる領域の剛性を制御可能である。
【0031】
本発明の空気入りタイヤは、ビード部1からサイドウォール部2にわたる領域を補強でき、しかも優れた耐久性を発揮するため特に扁平タイヤとして有用であり、その扁平率(タイヤ断面高さH/タイヤ断面幅W×100)は例えば55%以下である。
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、ビード部1を構成するにあたり、上記の如き外側巻回体5と内側巻回体6とでカーカスプライ4の端部4aを挟み込む程度の改変で、その他は従来のタイヤ製造工程と同様にして製造を行うことができる。このように端部4aを挟み込む構造自体は公知であり、上述したサイド補強層の貼り付けに関する不具合は生じない。
【0033】
外側巻回体5及び内側巻回体6を構成するコード7は、例えば図5に示すような装置を用いて波形状に成形することができる。この装置では、コード7を挟んで配置された一対のギア8が、回転自在に支持されていると共に、不図示の移動機構によって互いに近接可能に構成されている。この一対のギア8をコード7に押し付けながら回転させることで、コード7を図3のような波形状に成形することができる。
【0034】
本発明の空気入りタイヤは、ビード部からサイドウォール部にわたる領域の構造以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用できる。
【0035】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、振幅を一定にして延在する例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、図6に示すような形状でも構わない。なお、図6及び後述する図7〜10では、視覚的に分かり易くするため、タイヤ径方向に隣り合うコード7oの波数を同じにして記載している。
【0036】
図6の例では、外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコード7oが、波長を一定にしつつ、タイヤ径方向外側に向かって振幅を徐々に大きくしている。かかる構成によれば、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなるため、歪みの増加が抑えられ、より優れた耐久性を発揮できる。
【0037】
この場合、タイヤ周方向において柔軟性を均一化する観点から、巻回したコードの1周分又は複周分ごとに振幅を異ならせることが好ましい。このような振幅の変化は、図5に示した装置において、ギア8のコード7への押し付け量を適宜に変化させることで実施できる。
【0038】
(2)前述の実施形態では、外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、波長を一定にして延在する例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示すような形状でも構わない。
【0039】
図7の例では、外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコード7oが、振幅を一定にしつつ、タイヤ径方向外側に向かって波長を徐々に小さくしている。かかる構成によれば、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなるため、歪みの増加が抑えられ、より優れた耐久性を発揮できる。
【0040】
この場合、タイヤ周方向において柔軟性を均一化する観点から、巻回したコードの1周分又は複周分ごとに波長を異ならせることが好ましい。このような波長の変化は、図5に示した装置を用いてコード7を波形状に成形するに際し、途中でギア8を歯のピッチが異なるものに交換するようにすればよい。
【0041】
(3)図8は、外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコード7oが、タイヤ径方向外側に向かって振幅を徐々に大きくしつつ、波長を徐々に小さくしている例である。この場合、振幅の変化による効果と波長の変化による効果とが相俟って、タイヤの撓みに対する柔軟性が大きく向上し、より優れた耐久性を発揮することができる。
【0042】
(4)図9は、外側巻回体の外周側部分が、コード7oの振幅をタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくする振幅変化領域11と、その振幅変化領域11の内周側にて、振幅変化領域11の最小振幅よりも振幅を大きくした振幅大領域12とを有する例である。この振幅大領域12の外周端は、リム基準径位置RPからタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配される。
【0043】
この場合、振幅変化領域11においては、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなって、タイヤの耐久性を高めることができる。それでいて、振幅変化領域11の内周側に振幅大領域12が形成されることにより、リムとの接触端となるリムフランジRFの外周端付近(リム基準径位置RPから15〜20mm上の辺り)での歪みの集中を緩和して、ビード部1の耐久性を高めることができる。
【0044】
(5)図10は、外側巻回体の外周側部分が、コード7oの波長をタイヤ径方向外側に向かって徐々に小さくする波長変化領域21と、その波長変化領域21の内周側にて、波長変化領域21の最大波長よりも波長を小さくした波長小領域22とを有する例である。この波長小領域22の外周端は、リム基準径位置RPからタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配される。
【0045】
この場合、波長変化領域21においては、タイヤの撓みに対する柔軟性がタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくなり、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域がタイヤの撓み変形に追従し易くなって、タイヤの耐久性を高めることができる。それでいて、波長変化領域21の内周側に波長小領域22が形成されることにより、リムとの接触端となるリムフランジRFの外周端付近(リム基準径位置RPから15〜20mm上の辺り)での歪みの集中を緩和して、ビード部1の耐久性を高めることができる。
【0046】
(6)前述の実施形態では、カーカスプライの端部の両側にそれぞれ1列のコードを配置し、それによって端部を挟み込んだ構造を示したが、本発明では、図11に例示するようにカーカスプライの端部を挟み込むコードが複数列であっても構わない。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0048】
(1)縦剛性
タイヤの径方向に最大負荷能力の70%相当の負荷Wをかけて圧縮し、図12の如き縦撓みと負荷の関係グラフを求めた。W1=W−α、W2=W+α、α=490N、W1,W2に対応する縦撓みをR1,R2とし、2α/(R1−R2)の式により縦剛性(N/mm)を算出した。試験では、17×7のリムにタイヤを装着し、空気圧を220kPa、負荷Wを3724Nとして測定を行った。従来例の結果を100として指数評価し、当該数値が小さいほど縦剛性が小さいことを示す。
【0049】
(2)一般耐久性
JISD4230に規定する方法により耐久性試験を行った。試験段階3を終えてもクラック等が確認されない場合は、継続してタイヤに速度および負荷を与えることとし、不具合が確認されるまでの試験時間を測定した。試験では、17×7のリムにタイヤを装着し、空気圧を180kPaとした。従来例の結果を100として指数評価し、当該数値が大きいほど試験時間が長く一般耐久性に優れていることを示す。
【0050】
(3)ビード耐久性
室温35〜55℃の試験室内において、空気圧を500kPaとしたタイヤを直径1700mmのドラムに押し当て、最大負荷能力の155%の荷重を負荷した状態で速度60km/hにて走行させ、ビード部に故障が確認されるまでの試験時間を測定した。試験では、17×7.5のリムにタイヤを装着して測定を行った。従来例の結果を100として指数評価し、当該数値が大きいほど試験時間が長くビード耐久性に優れていることを示す。
【0051】
従来例
図13に示すような一般的なビード構造を有するタイヤ(サイズ215/45R17)を従来例とした。ビードフィラーの先端の高さは33mm、サイド補強層の外周端の高さは42mm、カーカスプライの端部の巻き上げ高さは57mmとした。これらの高さ寸法は何れもリム基準径位置からの距離である。
【0052】
実施例1〜7
前述の実施形態で示したような、波形状のコードの挟み込みによるビード構造を有するタイヤ(サイズ215/45R17)を実施例1〜7とした。外側巻回体の外周端の高さは42mmであり、この高さ寸法はリム基準径位置からの距離である。実施例1では、波形状のコードの振幅と波長を一定とし、実施例2〜7では、波形状のコードの振幅及び/又は波長をタイヤ径方向外側に向かって徐々に変化させた。また、コードとしては、フィラメントを撚ったスチールコード(径:2.0mm、構成:2+7×0.35、引張り強力:2.4kN)を使用した。
【0053】
比較例
外側巻回体を構成するコードが非波形状であること以外は、実施例1と同じであるタイヤを比較例とした。各例の評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1より、実施例1〜7では、従来例よりも縦剛性が低下しており、それに起因して優れた一般耐久性を発揮できている。特に実施例5〜7では、一般耐久性だけでなくビード耐久性にも優れている。一方、比較例は、実施例1〜7と同じくカーカスプライの端部を巻回体で挟み込んだ構造を有するが、縦剛性が高いために一般耐久性が悪化している。
【0056】
実施例1〜7では、外側巻回体の外周側部分を構成するコードを波形状としながらも、その内周側部分を構成するコードについては振幅を有しない非波形状としているため、ビード部の下部周辺の剛性が確保され、優れたビード耐久性を発揮できている。一方、比較例では、外側巻回体を構成するコードが振幅を有しない非波形状であるものの、リムフランジ近辺からサイドウォール部にわたる領域の耐久性が低いことが影響して、ビード耐久性が悪化している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤを概略的に示すタイヤ子午線断面図
【図2】ビード部からサイドウォール部にわたる領域を示す部分断面図
【図3】波形状のコードを示す図
【図4】外側巻回体のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図5】コードを波形状に成形するための装置を説明する概略図
【図6】本発明の別実施形態に係る外側巻回体の外周側部分のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図7】本発明の別実施形態に係る外側巻回体の外周側部分のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図8】本発明の別実施形態に係る外側巻回体の外周側部分のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図9】本発明の別実施形態に係る外側巻回体の外周側部分のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図10】本発明の別実施形態に係る外側巻回体の外周側部分のコード形状を概略的に示す要部側面図
【図11】本発明の別実施形態に係るビード部からサイドウォール部にわたる領域を示す部分断面図
【図12】縦剛性の算出に用いるグラフの一例
【図13】従来の空気入りタイヤを概略的に示すタイヤ子午線断面図
【符号の説明】
【0058】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカスプライ
4a 端部
5 外側巻回体
5a 外周端
6 内側巻回体
7 コード
7i 外側巻回体の内周側部分を構成するコード
7o 外側巻回体の外周側部分を構成するコード
11 振幅変化領域
12 振幅大領域
21 波長変化領域
22 波長小領域
RF リムフランジ
RP リム基準径位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、前記ビード部から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、前記一対のビード部の間に配設されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤにおいて、
タイヤ周方向に沿ってコードを渦巻状に巻回してなる巻回体が、前記カーカスプライの端部の外側と内側に設けられ、その外側巻回体と内側巻回体とで前記カーカスプライの端部を挟み込んでおり、前記外側巻回体がリムフランジの外周側湾曲面よりもタイヤ径方向外側に突出する外周端を有し、前記外側巻回体の外周側部分を構成するコードが、タイヤ径方向に振幅を有する波形状に成形されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、タイヤ径方向外側に向かって振幅を徐々に大きくする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側巻回体の外周側部分を構成する波形状のコードが、タイヤ径方向外側に向かって波長を徐々に小さくする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記外側巻回体の外周側部分が、前記波形状のコードの振幅をタイヤ径方向外側に向かって徐々に大きくする振幅変化領域と、その振幅変化領域の内周側にて、前記振幅変化領域の最小振幅よりも振幅を大きくした振幅大領域とを有し、前記振幅大領域の外周端がリム基準径位置からタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配された請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記外側巻回体の外周側部分が、前記波形状のコードの波長をタイヤ径方向外側に向かって徐々に小さくする波長変化領域と、その波長変化領域の内周側にて、前記波長変化領域の最大波長よりも波長を小さくした波長小領域とを有し、前記波長小領域の外周端がリム基準径位置からタイヤ径方向外側に10〜15mmとなる位置に配された請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側巻回体及び前記内側巻回体を構成するコードが、フィラメントを撚ったスチールコードであり、該スチールコードの1本当たりの引張り強力が0.5〜3.5kNである請求項1〜5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記波形状のコードが配置される領域が、リム基準径位置から10mm以上タイヤ径方向外側であって且つタイヤ断面高さの45%以下にある請求項1〜6いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−255834(P2009−255834A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109258(P2008−109258)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】