説明

空気入りタイヤ

【課題】低転がり抵抗性能を維持しつつ高い操縦安定性を得ること。
【解決手段】カーカス層6のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対して所定の角度で配置されたコードを有する1対の交差ベルト72,73と、当該交差ベルトのタイヤ径方向内側において交差ベルトのコードよりもタイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有する補強ベルト71とを少なくとも有するベルト層7が配置された空気入りタイヤ1において、ベルト層7の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに、天然ゴム、または天然ゴムと合成ポリイソプレンゴムと合成ポリブタジエンとスチレン−ブタジエンゴムとの少なくとも2つの組み合わせからなる加硫可能なゴム100重量部に対し、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満有したゴム組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低転がり抵抗性能を維持しつつ高い操縦安定性を得る空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、転がり抵抗の低下を図っている。この空気入りタイヤは、トレッドゴムとベルト層との間に、タイヤ周方向に延在するコードを有するキャッププライが配設されている。そして、このキャッププライにおいて、コードを被覆するトッピングゴムとして、ジエン系ゴム100重量部に対し、タイヤ周方向に配向された短繊維を1〜10重量部配合したゴム組成物が用いられている。かかる空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をキャッププライのトッピングゴムに用いることで、タイヤ幅方向での拘束力に変更を加えないことで乗り心地性などを犠牲にせず、タイヤ周方向での拘束力を高めて転がり抵抗を低減しようとしている。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、操縦安定性の確保あるいは向上を図っている。この空気入りタイヤは、ベルト層が、金属製のモノフィラメントコードを引き揃えたコード配列体の表裏を、ゴム基材に短繊維を含有させた短繊維配合ゴムからなるトッピングゴムで被覆されている。かかる空気入りタイヤは、コード打ち込み本数の増加などを招くことなくベルト内面剛性を高め、操縦安定性の確保あるいは向上を図りながら軽量化を達成しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−76407号公報
【特許文献2】特開2002−120513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、低転がり抵抗性能を有する低燃費指向で、かつ操縦安定性の高い空気入りタイヤが要求されている。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低転がり抵抗性能を維持しつつ高い操縦安定性を得ることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部のカーカス層のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対して所定の角度で配置されたコードを有する1対の交差ベルトと、当該交差ベルトのタイヤ径方向内側において前記交差ベルトのコードよりもタイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有する補強ベルトとを少なくとも有するベルト層が配置された空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに、天然ゴム、または天然ゴムと合成ポリイソプレンゴムと合成ポリブタジエンとスチレン−ブタジエンゴムとの少なくとも2つの組み合わせからなる加硫可能なゴム100重量部に対し、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満有したゴム組成物を用いることを特徴とする。
【0008】
この空気入りタイヤによれば、上記ゴム組成物を、ベルト層の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに用いたことにより、トレッド部の発熱を抑制して低転がり抵抗性能を維持することができ、かつトレッド部の弾性率を向上して操縦安定性を向上することができる。
【0009】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記補強ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることを特徴とする。
【0010】
この空気入りタイヤによれば、補強ベルトのコードは、タイヤ周方向に対する角度が、交差ベルトよりも大きく、カーカス層のコードの角度に近似している。すなわち、ベルト層において補強ベルトは、カーカス層の動きを補助し、操縦安定性の向上に寄与している。この結果、補強ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることにより、低転がり抵抗性能を維持しつつ操縦安定性を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0011】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記コートゴムは、60[℃]で測定した損失正接tanδが0.14以下であり、かつ60[℃]で測定した弾性率E1が9.0[MPa]以上であることを特徴とする。
【0012】
0.14以下の損失正接tanδとすることで、低発熱性をより維持することが可能となり、9.0[MPa]以上の弾性率E1とすることで、操縦安定性をより向上することが可能となる。すなわち、この空気入りタイヤによれば、低転がり抵抗性能を維持しつつ操縦安定性を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0013】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記交差ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることを特徴とする。
【0014】
この空気入りタイヤによれば、交差ベルトは、空気入りタイヤの径成長を抑えるものである。すなわち、交差ベルトは、空気入りタイヤのタイヤ径方向の歪みを低減し、耐久性の向上に寄与している。この結果、交差ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることにより、さらに耐久性を向上することができる。しかも、前記ゴム組成物は、低発熱であることから熱劣化を抑制することができ、かつベルト層の層間のせん断歪みを抑制することで低転がり抵抗化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、低転がり抵抗性能を維持しつつ高い操縦安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの一部裁断子午断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの一部裁断子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面C(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから離れる側をいう。タイヤ赤道面Cとは、前記回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面C上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「C」を付す。なお、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されていることから、空気入りタイヤ1の回転軸を通る平面で該空気入りタイヤ1を切った場合の子午断面図(図1)においては、タイヤ赤道面Cの一側(図1において右側)のみを図示して当該一側のみを説明し、他側(図1において左側)の説明は省略する。
【0019】
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部2の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した際に路面と接触する接地面であるトレッド面21として形成されている。
【0020】
トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延在する周方向主溝22が複数設けられている。そして、トレッド面21は、複数の周方向主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線Cと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。なお、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23について、タイヤ周方向に交差するラグ溝が設けられていてもよい。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23について、サイプが設けられていてもよい。
【0021】
また、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、図1に示すように、カーカス層6と、ベルト層7とを備えている。
【0022】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア(図示せず)でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、少なくとも1層で構成されており、タイヤ周方向に対する角度が90度(±5度)でタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0023】
ベルト層7は、複数のベルトを積層した多層構造をなし、トレッド部2の内部においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。本実施の形態のベルト層7は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向かって少なくとも3つのベルト71,72,73を積層してなる。このベルト層7において、最もタイヤ径方向内側に配置されるベルト71は、補強ベルトであり、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、40度〜70度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。ベルト71のタイヤ径方向外側に配置されるベルト72,73は、1対の交差ベルトであり、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、15度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。ベルト72,73は、コードが互いに反対方向に傾き交差して設けられている。各ベルト71,72,73のコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0024】
すなわち、ベルト層7は、タイヤ周方向に対して所定の角度で配置されたコードを有する1対の交差ベルト72,73と、当該交差ベルト72,73のタイヤ径方向内側において交差ベルト72,73のコードよりもタイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有する補強ベルト71とを少なくとも有している。
【0025】
このような構成の空気入りタイヤ1において、ベルト層7の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに、天然ゴム、または天然ゴムと合成ポリイソプレンゴムと合成ポリブタジエンとスチレン−ブタジエンゴムとの少なくとも2つの組み合わせからなる加硫可能なゴム100重量部に対し、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満有したゴム組成物が用いられている。
【0026】
上記加硫可能なゴム100重量部に対し、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満有したゴム組成物は、ベルト層7のコートゴムに使用されている従来のゴム組成物と比較して、低発熱性を維持したまま弾性率を向上できることを発明者等が見出した。
【0027】
すなわち、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、前記ゴム組成物を、ベルト層7の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに用いたことにより、トレッド部2の発熱を抑制して低転がり抵抗性能を維持することが可能となり、かつトレッド部2の弾性率を向上して操縦安定性を向上することが可能となる。
【0028】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、補強ベルト71におけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いる。
【0029】
補強ベルト71のコードは、タイヤ周方向に対する角度が、交差ベルト72,73よりも大きく、カーカス層6のコードの角度に近似している。すなわち、ベルト層7において補強ベルト71は、カーカス層6の動きを補助し、操縦安定性の向上に寄与している。この結果、補強ベルト71におけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることにより、低転がり抵抗性能を維持しつつ操縦安定性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。
【0030】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、ベルト層7のコートゴムは、60[℃]で測定した損失正接tanδが0.14以下であり、かつ60[℃]で測定した弾性率E1が9.0[MPa]以上であることが好ましい。
【0031】
0.14以下の損失正接tanδとすることで、低発熱性をより維持することが可能となり、9.0[MPa]以上の弾性率E1とすることで、操縦安定性をより向上することが可能となる。すなわち、この空気入りタイヤ1によれば、低転がり抵抗性能を維持しつつ操縦安定性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。なお、ベルト層7のコートゴムは、60[℃]で測定した損失正接tanδは、0.05以上0.14以下であることがより好ましい。損失正接tanδが0.05以上であれば、コートゴムの伸びを損なうことなく低発熱性を維持することができ、耐久性と低発熱性との両立が可能となる。
【0032】
また、本実施の空気入りタイヤ1は、交差ベルト72,73におけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いる。
【0033】
交差ベルト72,73は、空気入りタイヤ1の径成長を抑えるものである。すなわち、交差ベルト72,73は、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の歪みを低減し、耐久性の向上に寄与している。この結果、交差ベルト72,73におけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることにより、さらに耐久性を向上することが可能になる。しかも、前記ゴム組成物は、低発熱であることから熱劣化を抑制することが可能であり、かつベルト層7の層間のせん断歪みを抑制することで低転がり抵抗化を図ることが可能である。
【実施例】
【0034】
本実施の形態では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、操縦安定性能、低転がり抵抗性能、および耐ベルト層間セパレーション性能に関する性能試験が行われた(図2参照)。なお、本実施例において、損失正接tanδおよび貯蔵弾性率E1は、ゴム組成物をシートに成形し、160[℃]の20分間の加硫条件で2[mm]厚の加硫ゴムシートを作製し、作製した加硫ゴムシートについて、東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、測定温度60[℃]、周波数20[Hz]、初期歪み(伸長)10[%]、振幅±2[%]の条件で測定した。
【0035】
この性能試験では、試験タイヤとして、タイヤサイズ275/80R22.5の重荷重用空気入りタイヤを、正規リムに組み付け、正規内圧を充填して使用した。なお、ここでいう正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0036】
評価方法は、操縦安定性の性能試験は、上記試験タイヤを、車両総重量25[t](6×2)の重荷重用試験車両に装着し、乾燥路において、レーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性についてテストドライバーによる官能評価によって行った。そして、この官能評価に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど、操縦安定性が優れていることを示している。
【0037】
低転がり抵抗性能の性能試験は、荷重(30.89[kN])を加えた上記試験タイヤを、ドラム径1707[mm]のドラム式転がり抵抗試験機にて、速度80[km/h]での転がり抵抗が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど、転がり抵抗が減少していることを示している。
【0038】
耐ベルト層間セパレーション性能の性能試験は、時速45[km/h]の走行速度で、正規荷重からステップ毎(24時間毎)に正規荷重の10[%]ずつ荷重を増加させ、タイヤが破壊するまでの走行距離で測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど、走行距離が長く、耐ベルト層間セパレーション性能が優れていることを示している。なお、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0039】
従来例、実施例1〜実施例3および比較例の空気入りタイヤは、ベルト層のコートゴムをなすゴム組成物として、加硫可能なゴムは、天然ゴム(タイ製:STR20)、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製:酸化亜鉛3種)、老化防止剤(FLEXSYS社製:SANTOFLEX 6PPD)、硫黄(アクゾノーベル株式会社製:クリステックス HS OT 20)、コバルト塩(大日本インキ化学工業株式会社製:COBALT NAPHYHENATE(10%ナフテン酸コバルト))、加硫促進剤(大内新興化学株式会社製:ノクセラーDZ)、カーボンブラック(昭和キャボット株式会社製:N326)が、図2に示す配合とされている。
【0040】
そして、実施例1〜実施例3および比較例の空気入りタイヤは、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチ(帝人(株)製:サルフロン(登録商標)3001)を用いているのに対し、従来例の空気入りタイヤは、当該マスターバッチを用いていない。
【0041】
また、実施例1〜実施例3の空気入りタイヤは、上記加硫可能なゴム100重量部に対し、マスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満の範囲で有している。これに対し、比較例の空気入りタイヤは、上記加硫可能なゴム100重量部に対し、マスターバッチを5重量部有している。
【0042】
図2の試験結果に示すように、実施例1〜実施例3の空気入りタイヤは、操縦安定性耐、低転がり抵抗性能が向上されていることが分かる。また、実施例1および実施例3の空気入りタイヤは、さらにベルト層間セパレーション性能が向上されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、低転がり抵抗性能を維持しつつ高い操縦安定性を得ることに適している。
【符号の説明】
【0044】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 周方向主溝
23 陸部
6 カーカス層
7 ベルト層
71 補強ベルト
72,73 交差ベルト
C タイヤ赤道面(タイヤ赤道線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部のカーカス層のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対して所定の角度で配置されたコードを有する1対の交差ベルトと、当該交差ベルトのタイヤ径方向内側において前記交差ベルトのコードよりもタイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有する補強ベルトとを少なくとも有するベルト層が配置された空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層の少なくとも1層におけるコードを被覆するコートゴムに、天然ゴム、または天然ゴムと合成ポリイソプレンゴムと合成ポリブタジエンとスチレン−ブタジエンゴムとの少なくとも2つの組み合わせからなる加硫可能なゴム100重量部に対し、パラ系アラミド繊維およびステアリン酸からなるマスターバッチを0.2重量部以上3.0重量部未満有したゴム組成物を用いることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記補強ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記コートゴムは、60[℃]で測定した損失正接tanδが0.14以下であり、かつ60[℃]で測定した弾性率E1が9.0[MPa]以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記交差ベルトにおけるコードを被覆するコートゴムに、前記ゴム組成物を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−111835(P2012−111835A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261516(P2010−261516)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】